説明

発熱体の製造方法および製造装置

【課題】発熱組成物に保水剤を連続的に積層する発熱体の製造方法および製造装置を開発
する。
【解決手段】搬送装置(搬送コンベヤー)15と積層開口を設けたベルト状の版体18で基材
シート17を挟着保持して移動し、積層開口に供給された粘体状の発熱組成物を基材シート
17上に積層し、ベルト状の版体18を基材シート17から離脱させ、搬送装置15で移動される
基材シート17上に積層された粘体状の発熱組成物上に粉体状の保水剤を積層し、さらに被
覆材シート39を積層し、発熱組成物および保水剤の外側周辺部をシールすると共に、所定
形状に打ち抜くことによって、ベルト状の版体18は損傷せず、発熱組成物および保水剤を
連続的に積層し、発熱体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート化(膜状化)した発熱組成物の上面に粉体状の保水剤を積層する発熱
体の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、いわゆる使い捨て型かいろとして、粉末状の発熱組成物を包装材内に封入した発
熱体が広く利用されてきたが、粉末状の発熱組成物は包装材内で分布に偏りが発生して、
温度分布が非均一となったり、製造段階での発熱問題が存在していた。
【0003】
この改善策として、本件発明者は、インキ状ないしクリーム状の発熱組成物がシート状
包材内に積層、封入されてなり、この包材の少なくとも一部が通気性を有するものであり
、しかも前記インキ状ないしクリーム状の発熱組成物の水分の一部を前記シート状包材に
吸収させてなる発熱体、およびインキ状ないしクリーム状の発熱組成物上面に鉄粉、炭素
成分又は吸水剤から選ばれた少なくとも1種が積層或いは散布されている発熱体を開発し
て、温度分布および製造性等を良好化した(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、粘調質(インキ状ないしクリーム状)の発熱組成物を膜状(薄板状)に積層す
る製造装置として、回転制御される筒状のドラム本体に、所望形状の抜孔が円周方向に設
けられるパターンロールと、パターンロール外周面に接離自在に設けるバックアップロー
ルと、パターンロール内で、抜孔側に指向させると共に、粘調質素材を薄板状と成す吐出
口を備える素材押出ノズルと、素材押出ノズルに粘調質素材を加圧送給するポンプと、パ
ターンロールとバックアップロール間およびプレスロールに基材シートを走行させる第一
走行手段と、基材シート上に第二走行手段によって走行させる被膜シートを積層被覆させ
るプレスロールと、被膜シートに接着剤を塗布する接着剤塗布部を設けた積層包装体の積
層装置を開発した(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
【特許文献1】特許第3344686号公報(特許請求の範囲、請求項4、6)
【特許文献2】特許第3164782号公報(特許請求の範囲、請求項1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、膜状に積層した粘調質(粘体状)の発熱組成物に粉体状の吸水剤(保水
剤)を連続的に積層する発熱体の製造方法および製造装置は未だ開発されていなかった。
この開発に際して解決すべき課題としては、第1に発熱組成物の積層装置を改良する点
、第2に積層された発熱組成物へ粉体状の保水剤を供給、積層する保水剤の積層装置を具
体化する点であった。
【0007】
第1の課題に関しては、発熱組成物の積層装置として、抜孔を設けると共に内部に素材
押出ノズルを有した板材で円筒状のパターンロールなどのドラムを使用すると、抜孔が部
分的であると共に、パターンロールとバックアップロールは接離押圧関係となっていた。
そのため、パターンロールを真円状に出来なかったり、変形し易かったり、芯ズレが発
生し易く、均一な接触状態の維持が出来ずに隙間が生じ、ドクターブレードによる擦り切
りが完全に行えず、発熱組成物がパターンロールに残留付着し機器故障を招来したり、非
円滑接触で肉厚が薄いパターンロールではドクターブレードが引っ掛かってパターンロー
ルを破損する恐れがあり、連続的で円滑な製造に支承を来し易かった点を改良することが
必要であった。
【0008】
第2の課題に関しては、発熱組成物の発熱速度は含有する水分量(バリヤー層を形成す
る過剰水や遊離水などの水分量)に大きく影響されるので、発熱組成物と保水剤の積層形
態関係(積層量や積層位置)を適正化したり、柔軟に設定可能にすることであった。
更に、保水剤の供給、積層に関して、発熱組成物に影響を及ぼさず、簡易装置で積層す
る必要があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記従来技術に基づく、発熱組成物に保水剤を連続的に積層する発熱体の製
造方法および製造装置は未だ開発されていなかった課題に鑑み、搬送装置(搬送コンベヤ
ー)と積層開口を設けたベルト状の版体で基材シートを挟着保持して移動し、積層開口に
供給された粘体状の発熱組成物を基材シート上に積層し、ベルト状の版体を基材シートか
ら離脱させ、搬送装置で移動される基材シート上に積層された粘体状の発熱組成物上に粉
体状の保水剤を積層し、さらに被覆材シートを積層し、発熱組成物および保水剤の外側周
辺部をシールすると共に、所定形状に打ち抜くことによって、ベルト状の版体は損傷せず
、発熱組成物および保水剤を連続的に積層し、発熱体を製造する様にして、上記課題を解
決する。
【発明の効果】
【0010】
要するに本発明は、搬送装置(搬送コンベヤー)と積層開口を設けたベルト状の版体で
基材シートを挟着保持して移動する様にしたので、積層開口を設けた版体はベルト状であ
ることにより、版体と第1素材供給装置は水平面状接触移動で均一な接触状態が維持され
、局部的な引っ掛かり、応力が発生せず、且つ、エンドレスベルトは変形自在であるため
に、版体の正常形態を維持して変形、損傷、機器故障せず、保守も容易で長期間に亘って
連続的に製造することが出来、又搬送コンベヤー、版体および基材シートは同時移動して
位置ズレが発生せずに連続移動することが出来、更に、伸縮性のある包材でも皺や伸びに
よる位置ズレが生ずることなく、基材シートに発熱組成物を積層することが出来る。
又、積層開口に供給された粘体状の発熱組成物を基材シート上に積層する様にしたので
、版体と同時移動する基材シートに積層開口と同一形状の発熱組成物を積層することが出
来、又ベルト状の版体を基材シートから離脱させる様にしたので、版体への保水剤付着を
防止することが出来、基材シート上の発熱組成物から版体を離型することにより、基材シ
ート上に積層開口と同一形状の発熱組成物を積層した状態で、且つ、挟着保持状態が解除
された基材シートを搬送コンベヤーで次工程の保水剤の積層工程へ搬送することが出来る

又、搬送装置で移動される基材シート上に積層された粘体状の発熱組成物上に粉体状の
保水剤を積層する様にしたので、版体の離脱後に保水剤を積層することにより、発熱組成
物の積層形状に係わらず、保水剤を自由な形状で積層することが出来、さらに被覆材シー
トを積層し、発熱組成物および保水剤の外側周辺部をシールすると共に、所定形状に打ち
抜く様にしたので、膜状の発熱組成物および保水剤を包材でサンドイッチ状態とした所定
形状の発熱体を連続的に製造することが出来る。
【0011】
搬送装置は上流部の傾斜搬送路と下流部の水平搬送路と成すと共に、ベルト状の版体を
傾斜搬送路と成し、搬送装置の傾斜搬送路とベルト状の版体で基材シートを傾斜状に挟着
保持して移動する様にしたので、粘度が高く比重が重い発熱組成物の供給位置を低くする
ことが出来、発熱組成物を圧送するポンプの負荷を小さくすることが出来る。
搬送装置が傾斜搬送路から水平搬送路に変化してベルト状の版体が基材シートから離脱
する様にしたので、搬送路中間部での角度変化により版体の離脱を容易に行うことが出来
、又搬送装置の水平搬送路で発熱組成物が積層された基材シートを移動する様にしたので
、版体離脱後の水平搬送により、積層された発熱組成物の型崩れを防止することが出来た
り、粉体の保水剤の積層および移動状態を安定的にすることが出来る。
【0012】
基材シート上に積層された発熱組成物に非接触で近接位置から保水剤を落下させて積層
する様にしたので、保水剤の供給時に積層された発熱組成物の型崩れを防止することが出
来る。
【0013】
保水剤供給装置に設けた計量供給部で保水剤を計量すると共に落下時期を設定して、発
熱組成物と保水剤の積層形態関係に対応すると共に、発熱組成物と基材シートの保水剤積
層領域に略一定厚さの保水剤を落下させる様にしたので、発熱組成物と保水剤の様々な積
層形態関係を容易に設定することが出来る。
【0014】
発熱組成物の積層形態は、隣接し、独立し、且つ、相互間に非積層領域を設けた分割積
層形態と成したので、製造された発熱体における非積層領域は薄く、多大な折れ曲がり容
易性を有して、発熱体の柔軟性を格段に向上することが出来、又エンドレスベルトの抜孔
は広面積で1箇所に集中せずに、エンドレスベルトの耐久性を向上することが出来る。
【0015】
又、分割積層された発熱組成物上および発熱組成物間の非積層領域の基材シート上に保
水剤を積層する様にしたので、発熱組成物の上面以外にも保水剤を分散配置して発熱体を
更に薄くして柔軟性を向上することが出来、更に、発熱組成物の間に保水剤が配置され、
発熱組成物間の間隔が維持されて温度分布の均一化や柔軟性を確保することが出来る。
又、分割積層された発熱組成物の外側周囲部の基材シート上に保水剤を積層する様にし
たので、保水剤の分散配置により発熱体を更に薄くすることが出来る。
又、分割積層された発熱組成物より保水剤を小面積で積層する様にしたので、発熱組成
物と保水剤は同一面積または同一比率面積等となって、発熱組成物のどの位置でも遊離水
分量が均等となり、発熱速度、発熱量などの発熱反応を円滑にすることが出来たり、発熱
組成物の上面だけに保水剤が積層されて、シール領域に保水剤が存在せず、シールを確実
にすることが出来たり、発熱組成物をシール領域直近まで拡大して、発熱面積、発熱量を
大きくすることが出来る。
【0016】
搬送装置のベルトを上下流中間部で回転自在な支持ロールで支持してベルトを屈曲し、
上流部を傾斜搬送路と成すと共に、下流部を水平搬送路と成したので、支持ロールなどの
簡易構成で搬送路の角度変更を容易に行うことが出来る。
【0017】
支持ロールに磁力吸引手段を設けたので、磁性材(鉄粉)を含有する発熱組成物は磁力
で吸引されて基材シートへの接着性が向上し、搬送路の角度変更時にも発熱組成物を基材
シートに吸引して型崩れを防止することが出来る。
【0018】
支持ロールは回転自在な中空円筒体の内部に磁石を設けたので、ベルトを支持する中空
円筒体と磁石は別体で製作やメンテナンスを容易に行うことが出来る。
又、磁力吸引手段の磁石は上面に矩形状の磁極を複数配列した多極性磁石と成したので
、磁力を強化して吸引力を向上することが出来、又矩形状の磁極の長手方向を搬送方向と
成すと共に、N極とS極を搬送方向の直交方向で交互に配列したので、搬送方向で磁力が
変化せず、安定的に吸引することが出来る。
又、磁極の間に矩形状の非磁極域を設けたので、磁力を更に強化することが出来る。
【0019】
第1素材供給装置は、供給ノズルの上下流方向に設けたノズル通路に吐出口を設けると
共に、積層開口を有し基材シートと共に連続搬送される版体に吐出口を摺接させたので、
ポンプから圧送された粘体組成物が外気非接触で版体の積層開口を介して基材シートに供
給することにより、粘体組成物を空気露出させず、水分蒸発や空気接触による性能や物性
の変化を防止して連続的に供給することが出来る。
又、供給ノズルの後方壁体をノズル通路側が高い傾斜壁と成し、該傾斜壁の下流端を版
体に摺接する摺切部と成すと共に、傾斜壁を押圧壁と成し、傾斜壁の下部を吐出溜まりと
成すと共に、該吐出溜まりをノズル通路直下の主吐出路と連通させて吐出口を形成したの
で、版体の積層開口へ主吐出路から粘体組成物を供給すると共に、相対移動する押圧壁で
内圧上昇した吐出溜まりの粘体組成物を積層開口へ緊密に充填し、積層後の製造工程じ充
填積層物の型崩れを防止することが出来、更に、下流端の摺切部による摺り切りで版体へ
の残留付着を防止したり、所望量を計量充填することが出来る。
【0020】
ノズル通路の中途部に大容積の上流溜まりを介在設置したので、流動性が低い粘体組成
物を吐出口に近接する上流溜まりで圧力付与して貯溜することにより、粘体組成物を吐出
口へ迅速に流動させ、版体の積層開口へ安定連続的に吐出、供給することが出来る。
【0021】
第2素材供給装置は、供給基体に設けた円筒状の計量空間に供給口および落下口を連通
すると共に、計量空間に計量ロールを回転自在に設け、該計量ロールの周面に計量凹部を
設けたので、簡易な装置で粉体状の保水剤を適正量、適正位置に供給することが出来る。
【0022】
計量凹部は隔壁で離隔した複数の計量溝で構成したので、偏りが発生せず、略一定厚さ
で保水剤を積層することが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
先ず、製造される発熱体1は、図1、2に示す様に、基材(一方の包材)2上面で、周
囲所定幅のシール領域3を除いた発熱領域4に、粘体状(粘調質)の発熱組成物5を積層
すると共に、該発熱組成物5上面などに粉体状の保水剤6を積層し、基材2および保水剤
6等を被覆材(他方の包材)7で被覆し、発熱体1周囲部のシール領域3における基材2
および被覆材7(上下2枚の包材)をシール(粘着、熱接着、熱融着)している。
そして、基材2または被覆材7の少なくとも一方は通気性を有して、発熱体1の使用時
に空気流通を可能と成すと共に、流通段階では発熱しない様に、発熱体1全体は気密性(
非通気性)の外装材(図示せず)に包装されている。
【0024】
発熱体1を構成する素材としては、例えば、発熱組成物5(製造時における粘体組成物
M)は、主に磁性材である鉄粉、水、塩類、活性炭が配合されると共に、増粘剤その他の
素材を配合して混合し、粘度を20℃で1〜7500Pa・s程度と成したインキ状ない
しクリーム状のものが挙げられる。
又、保水剤6としては、水や塩類の水溶液を円滑に且つ、大量に吸収する高分子材料(
吸水性ポリマー)が挙げられる。
【0025】
基材2に積層される発熱組成物5および保水剤6は、図2(c)に示す様に、発熱領域
4の全域に渡って広面積の面状体と成す他、図1、図2(a)、(b)、図3、4、5に
示す様に、小面積多数の積層物で一群を形成しても良く、発熱領域4において、隣接し、
独立し、且つ、相互間に細幅帯状の発熱組成物5の非積層領域8、8a…を設けて小面積多
数の積層領域9、9a…に発熱組成物5を積層しても良い。
そして、保水剤6は発熱組成物5の全面や一部に積層したり、積層領域9、9a…間の非
積層領域8、8a…や積層領域9、9a…から外側周囲部の発熱領域4の外側適宜幅に積層し
、又図5に示す様に、非積層領域8、8a…に保水剤6を非積層で発熱組成物5上だけに保
水剤6を積層しても良く、更に、発熱組成物5上の周囲一部を保水剤6の非積層区域10、
10a…と成しても良い。
【0026】
ここで、発熱組成物5と保水剤6の積層形態関係を纏めて説明すると、
発熱組成物5と保水剤6の両者を発熱領域4全体に沿って面状積層形態と成したり、発
熱組成物5と保水剤6の両者を分割積層形態と成したり、発熱組成物5を分割積層形態と
成すと共に保水剤6を面状積層形態と成す様に、基本的に3種類の発熱組成物5と保水剤
6の積層形態関係がある。
そして、両者共に面状積層形態や分割積層形態の時に、発熱組成物5と保水剤6を同一
面積(例えば、図2(c)や図5(a)の場合)と成したり、保水剤6を発熱組成物5に
比して縮小相似形(例えば、図5(b)の場合)と成し、又発熱組成物5が分割積層形態
で保水剤6が面状積層形態の時に、隣接する発熱組成物5(数個単位や全体の多数単位)
の間の非積層領域8、8a…に保水剤6を積層(例えば、図2(b)や図4の場合)したり
、この積層形態に加えて発熱組成物5の外側周囲部にも保水剤6を積層(例えば、図2(
a)や図3の場合)する、等の積層形態関係があり、発熱体1の用途や種類によって、発
熱組成物5と保水剤6の積層形態関係は適宜選択される。
【0027】
次に、発熱体1の製造装置について説明する。
図6に示す様に、上流部(図面では右側)が下方で、中間部および下流部を同一高さと
成した三角形位置に、3個の支持ロール11、11a、11bを回転自在に設けると共に、該支
持ロール11、11a、11bにエンドレスベルト12を巻装し、中間部の支持ロール11aで支持
されて直線搬送の搬送角度が変化され、上流部が登り傾斜の傾斜搬送路13および下流部が
水平の水平搬送路14から成る搬送コンベヤー(搬送装置)15を設けている。
循環駆動される搬送コンベヤー15(傾斜搬送路13)の始端上方部に、シートロール16か
ら繰り出され供給ロール16aで支持されて基材シート17(製造後における発熱体1の基材
2に相当)が供給されると共に、基材シート17を搬送コンベヤー15の傾斜搬送路13上で挟
着保持しながら移動する版体18を設けている。
【0028】
版体18は上流部が下方で下流部が上方で回転自在に設けた一対の支持ロール19、19aに
エンドレスベルト20を巻装して成り、上流部の支持ロール19は搬送コンベヤー15の上流部
の支持ロール11の略対向位置と成すと共に、下流部の支持ロール19aは搬送コンベヤー15
の下流部の支持ロール11bより下流側かつ上方側に配置している。
長円状のエンドレスベルト20は搬送コンベヤー15の傾斜搬送路13と同一傾斜角度、平行
と成し、循環駆動される版体18の傾斜搬送路21の上流部は、搬送コンベヤー15の傾斜搬送
路13とで基材シート17を挟着搬送し、搬送コンベヤー15が支持ロール11aで角度変化した
水平搬送路14と版体18の傾斜搬送路21の下流部は離隔状態となっている。
又、図7に示す様に、循環駆動される版体18のエンドレスベルト20には、隣接し、独立
し、且つ、相互間に非開口部22、22a…(発熱体1における非積層領域8、8a…に相当)
を有する様に、積層開口23となる多数の分割積層開口23a、23b…(発熱体1における積
層領域9、9a…に相当)を設けている。
【0029】
尚、版体18のエンドレスベルト20に設けた積層開口23の分割積層開口23a、23b…は、
発熱体1における小面積多数の積層物で一群を形成させたものに対応するものであり、発
熱体1の発熱領域4の積層物の形態に合わせて積層開口23が決定され、積層開口23(分割
積層開口23a、23b…)の形状等は適宜変更される。
【0030】
そして、図6に示す様に、搬送コンベヤー15の傾斜搬送路13と版体18の傾斜搬送路21で
基材シート17を挟着移動する傾斜した直線搬送路に、基材シート17に発熱組成物5を積層
する積層ラインにおける第1積層位置24を設定すると共に、該第1積層位置24の下流側で
基材シート17を搬送コンベヤー15の水平搬送路14で水平搬送させる水平の直線搬送路に、
発熱組成物5上などに保水剤6を積層する積層ラインにおける第2積層位置25を設定して
いる。
第1積層位置24において、版体18の上部に粘体状の粘体組成物M(発熱組成物5)を供
給する第1素材供給装置26を設けると共に、該第1素材供給装置26と同一位置で、基材シ
ート17を版体18とで挟着保持する搬送コンベヤー15を下方から支持するバックアップロー
ル(バックアップ体)27を設けている。
詳細な構成は後述するが、第1素材供給装置26としては、供給ノズル28の接続口29にポ
ンプ30で粘体組成物Mを圧送する供給配管31を接続すると共に、供給ノズル28の吐出口32
を版体18の積層開口23(分割積層開口23a、23b…)に対向(指向)させると共に、吐出
口32を版体18のエンドレスベルト20に摺接状態で配置している。
尚、第1素材供給装置26と対向位置のバックアップロール27および搬送コンベヤー15で
搬送角度変更の支持ロール11aは磁力を有したものと成している。
【0031】
又、積層ラインにおける第2積層位置25において、粘体組成物Mを積層した基材シート
17の上部に粉体状の保水剤6を供給する第2素材供給装置33を設けると共に、該第2素材
供給装置33と同一位置で、搬送コンベヤー15を下方から支持するバックアッププレート(
バックアップ体)34を設けている。
第2素材供給装置33としては、上部にホッパー35を、中間部に計量供給部36を、下部に
落下口37を夫々有し、落下口37を第1版18に指向させ、粘体組成物Mや基材シート17上な
どに保水剤6を落下させ積層する。
【0032】
尚、版体18のエンドレスベルト20は、厚さ0.3mmや0.4mmの薄板状のステンレ
ス板等の金属板、厚さ0.5〜2.0mmの樹脂製、ゴム製等の柔軟性素材シート、又は
これらの貼り合わせによる積層板で構成しているが、発熱組成物5等の厚さ等を考慮して
材質、構成等は適宜選択する。
又、版体18のエンドレスベルト20の厚さと積層開口23(分割積層開口23a、23b…)の
開口面積で発熱組成物5の積層量が決まり、第2素材供給装置33の計量供給部36の設定で
保水剤6の積層量が決まるため、発熱体1の用途に応じて版体18の厚さや形状、或いは、
第2素材供給装置33の具体的構成を設定する。
【0033】
基材シート17への粘体組成物Mおよび保水剤6の各積層工程に続いて、被覆材7の積層
工程などが設けられている。
搬送コンベヤー15の終端近傍で発熱組成物5(粘体組成物M)および保水剤6が積層さ
れた基材シート17の上方部に、シートロール38から繰り出され供給ロール38aで支持され
て被覆材シート39(製造後における発熱体1の被覆材7)が供給されると共に、被覆材シ
ート39または保水剤6などを含む基材シート17の接合面にホットメルト、コールドグルー
等の接着剤をスプレー状に塗布する接着剤塗布手段40を設けている。
基材シート17等と被覆材シート39の接合以降の搬送途中に、発熱体1の外形形状に適合
する様に、発熱領域4の外側周囲部のシール領域3を接着する上下一対の熱ロールなどか
ら成るシール手段41を設けると共に、シール領域3を所望幅で残存させて所望外形形状に
切断する上下一対のカッターロールなどから成る裁断手段42を設けている。
【0034】
尚、被覆材7の積層工程以降の各工程では、発熱組成物5および保水剤6が積層された
基材シート17や被覆材シート39が積層された発熱体シート43の搬送装置の図示を省略して
おり、且つ、搬送装置には磁力を有して下方から吸引支持することが好ましい。
又、積層開口23を有して循環駆動する版体18と、基材シート17を版体18とで挟着保持し
て循環駆動するする搬送コンベヤー15と、被覆材7の積層工程等に設けた図示しない搬送
装置は同速度で移動させている。
又、ホットメルト系接着剤をシール領域3および発熱領域4に塗布することにより、保
水剤6と被覆材シート39を接着して位置決め固定し、シール領域3で加熱接着する時に、
熱融着に比して低温度で加熱シールが可能となり、加熱接着が早いことによりラインスピ
ードをアップすることが出来、又接着剤を使用せずに熱融着しても良い。
【0035】
次に、連続搬送される版体18の積層開口23、23a…へ粘体組成物Mを吐出供給する第1
素材供給装置26について説明する。
図8に示す様に、第1素材供給装置26の供給ノズル28は中央上下流方向にノズル通路44
を貫設すると共に、該ノズル通路44の中途部に大容積の上流溜まり45を介在設置し、ノズ
ル通路44の上流側の接続口29に、基端側をポンプ30に接続した供給配管31の先端側を接続
し、ノズル通路44の下流側である供給ノズル28の下端に版体18に対向する吐出口32を設け
ている。
ノズル通路44を上下流方向に設けた供給ノズル28は前方壁体46、後方壁体48および2側
方の側方壁体(図示せず)から成り、供給ノズル28下端の吐出口32が版体18に摺接して供
給ノズル28のノズル通路44は外気遮断状態となっている。
【0036】
前方壁体46の前面壁47は、版体18に摺接する下端を下流側に後退させて傾斜させており
、かかる構成により、前方壁体46と版体18の摺接状態がスムーズになって引っ掛かりを防
止している。
又、後方壁体48の底面壁49を、後端(下流端)が版体18に摺接する様に下方と成すと共
に、ノズル通路44側の前端(上流端)を上方と成す状態で、傾斜壁50と成し、該傾斜壁50
の下流端を、版体18上の余剰の粘体組成物Mを掻き取り、摺り切り計量する摺切部51と成
している。
そして、傾斜壁50の下部を吐出溜まり52と成すと共に、傾斜壁50を吐出溜まり52内の粘
体組成物Mの押圧壁と成し、又吐出溜まり52とノズル通路44直下の主吐出路53が連通した
一体流動空間を吐出口32と成し、ノズル通路44の粘体組成物Mが主吐出路53および吐出溜
まり52に流動する様にしている。
尚、粘体組成物Mの押圧壁となる傾斜壁50の傾斜角度は、粘体組成物Mの粘度、ポンプ
30による付与圧力、圧送量、版体18の積層開口23、23a…の開口量、版体18の搬送速度な
どにより適宜設定するが、版体18の積層開口23、23a…へ粘体組成物Mを充填すると共に
、摺り切り出来れば、傾斜壁50の傾斜角度は限定されないが、例えば5〜60度、好まし
くは15〜45度が良い。
又、図示しないが、傾斜壁50は傾斜角度を中途部で変化させて2段傾斜としても良く、
或いは、全体的に傾斜状態であれば湾曲させても良い。
【0037】
次に、本発明に係る発熱体の製造方法について説明する。
図6に示す様に、循環駆動される搬送コンベヤー15と版体18でシートロール16から繰り
出される基材シート17を挟着保持しながら積層工程へ移動し、基材シート17が傾斜状態で
直線搬送される第1積層位置24では、第1素材供給装置26の吐出口32から押出される粘体
状の発熱組成物5は、吐出口32とエンドレスベルト20が摺接して所定量が摺り切り式で計
量されて、版体18の積層開口23(分割積層開口23a、23b…)に充填されて基材シート17
の上面に積層される。
【0038】
続いて、搬送コンベヤー15が傾斜搬送路13から水平搬送路14となると共に、版体18は傾
斜状態が維持されていることにより、発熱組成物5の積層物から版体18の積層開口23(分
割積層開口23a、23b…)が徐々に離型すると共に、版体18が基材シート17から離脱し、
基材シート17が水平状態で直線搬送される第2積層位置25では、第2素材供給装置33の落
下口37から落下される粉体状の保水剤6は、発熱組成物5や基材シート17等の上面に積層
される。
【0039】
積層工程が終了すると、図示しない搬送装置で、発熱組成物5および保水剤6が積層さ
れた基材シート17が被覆材積層工程へ搬送され、シートロール38から繰り出された被覆材
シート39の接合面または発熱組成物5および保水剤6が積層された基材シート17の接合面
に接着剤塗布手段40で接着剤が噴霧塗布され、図示の構成のものでは、搬送コンベヤー15
の支持ロール11bと供給ロール38aでこれらが面接着状態となり、接着剤の種類にもよる
が、仮接着される。
そして、2枚の包材シート(基材シート17と被覆材シート39)内に発熱組成物5および
保水剤6がサンドイッチ状態で搬送される発熱体シート43は、シール手段41により基材シ
ート17と被覆材シート39におけるシール領域3が熱接着等されると共に、裁断手段42で所
望(足裏用、目元用、矩形状等)の外形形状に打抜切断されて発熱体1が製造され、図示
しないが、非通気性(気密性)の外装材に包装される。
【0040】
次に、版体18の積層開口23(分割積層開口23a、23b…)に発熱組成物5を充填し、基
材シート17に積層する第1素材供給装置26の詳細な作用を説明する。
図8〜10に示す様に、搬送コンベヤー15で直線搬送される版体18の積層開口23、23a
…が供給ノズル28に到達すると、ポンプ30で圧力付与された供給ノズル28内の粘体組成物
Mは吐出口32から版体18の積層開口23、23a…に吐出されて充填し、基材シート17上に積
層する。
版体18に対して相対移動する後方壁体48の傾斜壁50は版体18(積層開口23、23a…およ
び非開口部22、22a…)上部で吐出溜まり52の粘体組成物Mを上流側に押圧し、吐出溜ま
り52の粘体組成物Mはローリングが発生すると共に、上流側(主吐出路53側)および下方
側(版体18側)に内圧が発生し、積層開口23、23a…に粘体組成物Mを押し込み、傾斜壁
50の下流端の摺切部51が余剰の粘体組成物Mを版体18上面から掻き取って、積層開口23、
23a…に充填された充填物Wの上部の粘体組成物Mを摺り切りする。
【0041】
又、連続搬送される版体18には間欠的に積層開口23、23a…が設けられていることによ
り、供給ノズル28から吐出される粘体組成物Mの吐出状況は変化し、即ち、版体18に設け
た積層開口23、23a…に粘体組成物Mを吐出して基材シート17に粘体組成物Mを積層する
状態(図9、10参照)と、版体18の非開口部22、22a…および積層開口23、23a…の充
填物Wで吐出口32が閉鎖された状態(図8参照)を繰り返す。
尚、供給ノズル28における粘体組成物Mの吐出状態と閉鎖状態は、供給ノズル28の吐出
口32の進行方向長さと版体18の積層開口23、23a…の進行方向長さにより相違し、積層開
口23、23a…が一面で広面積の場合には、図11に示す様に、積層開口23、23a…の上方
に吐出口32が全面的に位置する吐出状態と、図示しないが、非開口部22、22a…での閉鎖
状態と、積層開口23、23a…に吐出口32の一部が対向した状態が断続的に継続する。
積層開口23、23a…が分割積層開口23、23a…の場合には、図8〜10に示す様に、分
割積層開口23、23a…と非開口部22、22a…の両域に吐出口32が跨がる吐出状態と閉鎖状
態となる。
【0042】
図8に示す様に、直前の積層開口23zに粘体組成物M(充填物W)を充填完了(摺り切
りは一部未完)した状態では、吐出口32の主吐出路53および吐出溜まり52が非開口部22、
22a…に摺接すると共に、充填物Wの上部に位置した吐出口32が閉鎖状態では、ポンプ30
で供給配管31を介して粘体組成物Mが供給ノズル28の接続口29に圧送されていることによ
り、供給ノズル28内の上流溜まり45、ノズル通路44、ノズル通路44直下の主吐出路53と吐
出溜まり52から成る吐出口32が圧力付与(内圧上昇)状態となっている。
図9に示す様に、次の積層開口23への吐出開始状態では、上流側から圧力付与された粘
体組成物Mは吐出口32の主吐出路53から積層開口23へ吐出されて、吐出口32における主吐
出路53の付与圧力は低下し、版体18の継続搬送に応じた吐出継続により、図10に示す様
に、ノズル通路44や上流溜まり45から主吐出路53を介して吐出口32へ粘体組成物Mが圧送
され、吐出口32内は内圧低下するが満杯状態が維持され、版体18の積層開口23へ粘体組成
物Mが充填される。
そして、積層開口23への粘体組成物Mの充填が完了し、吐出口32が閉鎖状態となった時
に、ポンプ30からの粘体組成物Mの継続圧送により、供給ノズル28のノズル通路44、上流
溜まり45、吐出口32の付与圧力、内圧が上昇し(図8参照)、これらの吐出、充填(後述
する緊密均等充填を含む)、内圧低下、閉鎖(吐出停止)、内圧上昇などを繰り返す。
尚、図面における粘体組成物Mや充填物Wなどを多数のドットで表示すると共に、ドッ
トの密度で圧力付与状態や内圧上昇状態を合わせて表示している。
【0043】
次に、全体の吐出状態において、吐出口32に設けた吐出溜まり52の作用(緊密、均等充
填)を含み、充填状態を詳細に説明する。
先ず、後方壁体48の傾斜壁50で形成された吐出溜まり52の基本的作用としては、供給ノ
ズル28に対して版体18が移動することにより、吐出溜まり52の粘体組成物Mが版体18の積
層開口23、23a…の充填物Wと接触したり、非開口部22、22a…の上面と接触したり、或
いは、摺切部51で非開口部22、22a…や充填物W上の粘体組成物Mを摺り切って、掻き取
り、更に、吐出溜まり52が下流側が容積減少していることが相俟って、吐出溜まり52の粘
体組成物Mは傾斜壁50で上流方向に押圧されてローリングすると共に、内圧が上昇する。
又、吐出口32の閉鎖状態では、ポンプ30で圧送されノズル通路44から流動する粘体組成
物Mでも吐出溜まり52内の内圧が上昇し、傾斜壁50による押圧および内圧上昇により、粘
体組成物Mは上流側への押圧に加えて版体18方向(下方向)への押圧力、応力が発生する

【0044】
次に、吐出溜まり52の基本的作用を含んだ充填状態を充填開始時から順次説明する。
図9に示す様に、吐出口32の前端(上流端)59に積層開口23の前端(下流端)60が臨み
始めた対向開始当初は、ノズル通路44直下の主吐出路53から積層開口23に粘体組成物Mを
吐出供給し、図10に示す様に、積層開口23の後端(上流端)61が吐出口32の前端59を通
過後には積層開口23に初期充填物W1として粘体組成物Mが概ね充填される。
その状態からノズル通路44等の圧力がポンプ30による粘体組成物Mの圧送で上昇するこ
とと、吐出溜まり52の粘体組成物Mのローリング、内圧上昇、下方押圧力により、初期充
填物W1に対して粘体組成物Mが更に供給されて、緊密で均等な後期充填物W2が積層開
口23に充填される。
言い換えると、積層開口23、23a…への充填前に圧力付与され、内圧増加した吐出溜ま
り52の粘体組成物Mは積層開口23、23a…への初期充填物W1の充填不足時には、吐出溜
まり52の粘体組成物Mによる押圧力や内圧上昇などで充填が継続され、所定量、所定密度
の後期充填物W2が充填されることとなる。
そして、傾斜壁50の下流端の摺切部51では、後期充填物W2を摺り切り、所定量を計量
充填すると共に、非開口部22、22a…上の粘体組成物Mを掻き取って、エンドレスベルト
上面へ粘体組成物Mを残留させず、余剰の粘体組成物Mを吐出溜まり52に滞留させる。
【0045】
尚、図10に示す様に、積層開口23、23a…が分割積層開口23、23a…でその進行方向
長さが吐出口32の進行方向長さより短い場合には、積層開口23、23a…の後端61がノズル
通路44の前端59を通過直後から吐出口32内の圧力が上昇し、吐出溜まり52による緊密充填
作用が増強される。
又、図11に示す様に、積層開口23、23a…の進行方向長さが吐出口32の進行方向長さ
より長い場合でも、吐出溜まり52による充填作用が発生し、積層開口23、23a…の充填量
を概ね均等化する。
【0046】
又、ノズル通路44の中途部に設けた上流溜まり45においては、図8に示す様に、吐出口
32が閉鎖状態では、ポンプ30による圧力付与で内圧上昇状態であることに対して、版体18
の積層開口23、23a…への吐出によるノズル通路44の圧力低下に応じて、図9、10に示
す様に、大容量の上流溜まり45からノズル通路44へ粘体組成物Mが流動して吐出口32内な
どの圧力低下を低減し、ノズル通路44内を概ね満杯状態としている。
かかる上流溜まり45の作用により、吐出口32から版体18の積層開口23、23a…へ粘体組
成物Mを吐出すると共に、吐出溜まり52の圧力低下を低減して吐出溜まり52による緊密、
均等充填作用を促している。
【0047】
次に、第1素材供給装置26の下側に設けられるバックアップロール27および搬送コンベ
ヤー15の上下流中間部でエンドレスベルト12を角度変更して支持する支持ロール11aの具
体的構成について説明するが、第2素材供給装置33のの下側に設けられるバックアッププ
レート34に適用しても良く、以下、これらを支持ロール11a等と称して説明する。
図12に示す様に、支持ロール11a等は、固定軸62に中空円筒体63を回転自在に取付け
ると共に、該中空円筒体63の内部に、中空円筒体63の内面と非接触で近接位置に湾曲板状
の磁石64を非回転、位置固定(搬送コンベヤー15で傾斜と水平の角度変更箇所への対向状
態または第1、第2素材供給装置26、33への対向状態を固定)で配置しており、中空円筒
体63だけを回転フリーとしている。
図示のものでは、固定軸62にベアリング65、65aを介して左右一対のリング状側板66、
66aを回転自在に取付け、該側板66、66a間に磁力透過する中空円筒体63を取付ける一方
、中空円筒体63の内部で、固定軸62に取付けたリング体67、67a…に支持脚68、68a…を
半径方向に設けると共に、該支持脚68、68a…の先端に磁石64の背面を取付けている。
尚、支持ロール11a等の構造は、磁石64の磁力が磁性体を含有する粘体組成物に作用す
れば、その構成は適宜変更でき、例えば、回転自在な中空円筒体63を磁石64と成したり、
中空円筒体63の外周側に磁石64を設けても良い。
【0048】
又、支持ロール11a等に設けられる磁石64は、粘体組成物Mの磁性体を磁力吸着するも
のであれば、磁石64の形態は適宜変更でき、例えば、図示していないが、一般的な片面(
上面)にN極またはS極の1極を設けた磁石64と成したり、磁極配列や材質の工夫で磁力
(磁気)を1000×10-4〜3000×10-4テスラ程度に強化した磁石64としても良
く、その一例を図13、14に基づいて説明する。
例えば、複数のN極およびS極を少なくとも上面に着磁して磁極69、69a…を配列した
多極着磁磁石(多極性磁石)とすることが好ましく、図13(a)に示す様に、矩形状(
短冊状)の磁極69、69a…の長手方向を搬送コンベヤー15の搬送(流れ)方向と成し、搬
送方向の直交方向でN極およびS極を交互平行に配列している。
この多極性磁石64では、磁気の方向や強さを示す磁力線G(磁気力線)を一点鎖線の円
弧状矢印で示し、磁力線Gが上面のN極から出て空間(ベルト方向である上方)に広がり
上面のS極に集まること、即ち、磁力の方向が搬送方向に直交していることを示すと共に
、磁力(磁気)の強さは、図13(b)に示す様に、N極とS極の接近位置で強くなるこ
とを示している。
そのため、N極またはS極の矩形状の磁極69、69a…の幅(搬送方向に直交方向)は短
く(例えば、5〜10mm)することが好ましく、又全体的な磁力を強くしたり、矩形状
の磁極69、69a…の中央部でも十分な磁力を付与するために、磁石64の素材として鉄、ネ
オジム(希土類元素)およびほう素を主成分とした合金のネオジム磁石64が好ましい。
かかる構成により、搬送方向で同一磁力である磁石64の上方を通過する磁性体を含有す
る粘体組成物Mは基材シート17に磁力で吸着される。
尚、シート流れ方向と磁力の方向を平行にすると、強弱の磁力が交互に作用して、積層
された粘体組成物Mの型崩れが懸念される。
【0049】
又、磁極69、69a…の配列は矩形状のN極とS極を交互と成したが、図14(a)に示
す様に、片面にN極とS極を有して磁力方向がベルト搬送方向の直交方向となる磁石64、
64を複数設けても良い。
或いは、図14(b)に示す様に、交互に設けた矩形状のN極とS極の磁極69、69a…
の間に矩形状の非磁極域70、70a…を挟んでも良く、この多極性磁石では、磁力線Gが大
きく高く空間に出て、粘体組成物Mの磁性体に磁力が大きく作用する。
尚、磁石64は磁極配列を適宜設定する他、磁石64の形状としては、1枚板の湾曲板状の
他、図示していないが、上面が円弧状のかまぼこ状と成したり、磁性板に着磁板を設けて
複層板と成しても良い。
【0050】
次に、搬送コンベヤー15の水平搬送路14で基材シート17上に積層された発熱組成物5に
保水剤6を供給、積層する第2素材供給装置33について説明する。
図15、16に示す様に、搬送コンベヤー15の上方に、基材シート17の厚さ、発熱組成
物5の積層高さ、および粉体状の保水剤6の積層高さの合計高さに略相当する間隔を有し
て、基材シート17に積層された発熱組成物5に非接触で近接位置に第2素材供給装置33が
設置されている。
第2素材供給装置33の供給基体71の上下流方向に、上部にホッパー35が接続される供給
口72、降下通路73、計量供給部36、基材シート17上へ保水剤6を落下供給する落下口37を
、連通状態で順次設けており、落下口37から保水剤6を基材シート17に積層された発熱組
成物5に落下させる様にしている。
供給基体71の中間部に設けた計量供給部36としては、上方の降下通路73および下方の落
下口37に連通する円筒状の計量空間74に計量ロール75を回転自在に設け、回転軸線が搬送
方向の直交方向で水平な計量ロール75の周面に、図中、一点鎖線で示す発熱領域4内に所
望形状の計量凹部76を設けている。
【0051】
図15に示す計量凹部76では、基材シート17の幅方向(搬送方向の直交方向)に長い計
量溝77、77a…を円周方向に順次配設し、隣接する計量溝77、77a…の間を立設状の隔壁
78、78a…と成し、複数の計量溝77、77a…を隔壁78、78a…で区割、離隔している。
尚、幅方向に長い計量溝77、77a…は保水剤6を積層する発熱領域4に合致させる様に
、長短各種のものと成しているが、発熱組成物5と保水剤6の積層形態関係に対応させて
計量凹部76(計量溝77、77a…)の構成を変化させる。
例えば、図7に示す版体18および図15に示す第2素材供給装置33を使用する場合は、
発熱組成物5が分割積層形態で、保水剤6が面状積層形態で、隣接する発熱組成物5の間
にも保水剤6が積層され、発熱組成物5の外側一部に保水剤6が非積層状態となる。
又、発熱組成物5が分割積層形態で、保水剤6を発熱組成物5の上面だけに積層する形
態関係の時には、図17に示す様に、円周方向で隣接する計量溝77、77a…が間隔を有す
ると共に、軸線方向で長さを短縮した複数の計量溝77、77a…と成し、円周方向および軸
線方向の隣接する計量溝77、77a…の間隔を隔壁78、78a…と夫々成している。
又、図示していないが、発熱組成物5が分割積層形態で、保水剤6を発熱組成物5の上
面および発熱組成物5の外側周囲部にも積層する形態関係の時には、図6に示す版体18に
おいて、発熱領域4に設けた積層開口23、23a…を、外周側を非積層区域と成すと共に、
図15に示す第2素材供給装置33において、計量溝77、77a…の外縁を発熱領域4に沿っ
た構成とする。
【0052】
かかる構成により、ホッパー35内の保水剤6は上方の供給口72から降下通路73内に落下
して充満し、計量ロール75の回転に応じて適宜配置された計量溝77、77a…に順次落下し
、計量空間74を形成した供給基体71の側壁で摺り切りされて所定量の保水剤6が計量溝77
、77a…に充填され、計量ロール75が回転して下方の落下口37に到達した計量溝77、77a
…の保水剤6は、落下口37から発熱組成物5上や基材シート17上に落下し、これらの上面
に積層される。
複数の計量溝77、77a…は隔壁78、78a…で区画されていることにより、保水剤6は偏
らず、円周方向の計量溝77、77a…の設定位置に応じて、所定量の保水剤6が計量ロール
75の回転に応じて順次落下し、隔壁78、78a…は幅狭で計量溝77、77a…は近接している
ことにより、落下口37を介して落下する保水剤6は概ね連続的に平均的(略一定厚さ)に
発熱組成物5上などへ略面状に積層する。
尚、図17に示す場合は、隔壁78、78a…が大きいことにより、個々の計量溝77、77a
…からは平均的に落下すると共に、計量溝77、77a…の位置に応じて断続的に落下し、全
体的には分割積層された発熱組成物5上だけに積層される。
【0053】
尚、発熱組成物5と保水剤6の積層形態において、両者は特定の位置関係を有し、かつ
、保水剤6は落下口37から発熱組成物5上などに落下する時間を考慮して、発熱組成物5
の積層位置に関係する版体18の搬送移動と保水剤6の積層位置に関係する計量ロール75の
回転移動は同期させている。
【0054】
最後に、発熱作用について説明する。
製造工程における発熱組成物5は粘体状で保水剤が必要量以下であるため、遊離水がバ
リヤー層となって製造工程や包装時の発熱反応が抑制されている。
外装材への包装後には、空気流通が無いために発熱反応が発生せず、製品の発熱機能は
保持される一方、発熱組成物5の遊離水などは保水剤6に吸水されて移動し、発熱組成物
5はバリヤー層が消失し、空気流通下で発熱可能状態となっている。
気密性の外装材から発熱体1を取り出した使用時には、通気性を有する包材(基材2ま
たは被覆材7)を通過して空気が発熱組成物5に接触することにより、発熱反応が開始、
継続される。
発熱反応の継続により、円滑な発熱反応に必要とする水分が発熱組成物5内で減少した
時には、保水剤6から発熱組成物5に水分が移動(夫々の内部移動を含む)し、円滑な発
熱反応が継続する。
【0055】
尚、粘体状の発熱組成物5を膜状に積層することにより、発熱組成物5の片寄りがなく
、均一な厚みで積層されているため、温度分布も均一化されることにより、使用中の不快
感や、高温個所の発生による火傷などの不具合が防止でき、安全性が高められ、また発熱
組成物5の厚みを薄くすることができるため、発熱組成物5は薄型で、柔軟性が高く、身
体の肩、足裏、目元等の湾曲部や屈曲部へのフイット性が良好となって使用感が優れる効
果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る発熱体の製造装置で製造される発熱体の一例(足裏用のもの)を示す平面図である。
【図2】発熱体の要部拡大断面図であり、(a)および(b)は小面積に分割された発熱組成物に保水剤を積層したものの断面図、(c)は広面積に面状積層の発熱組成物に保水剤を積層したものの断面図である。
【図3】図2(a)の発熱体から被覆材を除外した状態で、基材への発熱組成物および保水剤の積層状態を示す部分拡大平面図および断面図である。
【図4】図2(b)の発熱体の積層途中において、基材シートへの発熱組成物および保水剤の積層状態を示す部分拡大平面図および断面図である。
【図5】小面積に分割された発熱組成物上だけに保水剤を積層したものの断面図である。
【図6】製造装置の模式図である。
【図7】版体の部分平面図である。
【図8】版体の積層開口へ供給ノズルから発熱組成物を緊密充填した状態を示す断面図である。
【図9】次の積層開口へ充填開始する状態を示す断面図である。
【図10】初期の充填完了状態を示す断面図である。
【図11】広面積の積層開口への充填状態を示す断面図である。
【図12】バックアップロールまたは支持ロールの平面図および側面図である。
【図13】磁石を示す図である。
【図14】磁石の他の実施形態を示す図である。
【図15】第2素材供給装置の搬送方向の断面図である。
【図16】図15の直交方向の断面図である。
【図17】第2素材供給装置の他の実施形態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0057】
5 発熱組成物
6 保水剤
8、8a… 非積層領域
11a 支持ロール
12 エンドレスベルト
13 傾斜搬送路
14 水平搬送路
15 搬送コンベヤー
17 基材シート
18 版体
21 傾斜搬送路
22、22a… 非開口部
23、23a… 積層開口
23a、23b… 分割積層開口
24 第1積層位置
25 第2積層位置
26 第1素材供給装置
28 供給ノズル
32 吐出口
33 第2素材供給装置
36 計量供給部
37 落下口
39 被覆材シート
41 シール手段
42 裁断手段
44 ノズル通路
45 上流溜まり
48 後方壁体
50 傾斜壁
51 摺切部
52 吐出溜まり
53 主吐出路
63 中空円筒体
64 磁石
69、69a… 磁極
70、70a… 非磁極域
71 供給基体
74 計量空間
75 計量ロール
76 計量凹部
77、77a… 計量溝
78、78a… 隔壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送装置と積層開口を設けたベルト状の版体で基材シートを挟着保持して移動し、積層
開口に供給された粘体状の発熱組成物を基材シート上に積層し、ベルト状の版体を基材シ
ートから離脱させ、搬送装置で移動される基材シート上に積層された粘体状の発熱組成物
上に粉体状の保水剤を積層し、さらに被覆材シートを積層し、発熱組成物および保水剤の
外側周辺部をシールすると共に、所定形状に打ち抜く様にしたことを特徴とする発熱体の
製造方法。
【請求項2】
搬送装置は上流部の傾斜搬送路と下流部の水平搬送路と成すと共に、ベルト状の版体を
傾斜搬送路と成し、搬送装置の傾斜搬送路とベルト状の版体で基材シートを傾斜状に挟着
保持して移動し、搬送装置が傾斜搬送路から水平搬送路に変化してベルト状の版体が基材
シートから離脱し、搬送装置の水平搬送路で発熱組成物が積層された基材シートを移動す
る様にしたことを特徴とする請求項1記載の発熱体の製造方法。
【請求項3】
基材シート上に積層された発熱組成物に非接触で近接位置から保水剤を落下させて積層
する様にしたことを特徴とする請求項1又は2記載の発熱体の製造方法。
【請求項4】
保水剤供給装置に設けた計量供給部で保水剤を計量すると共に落下時期を設定して、発
熱組成物と保水剤の積層形態関係に対応すると共に、発熱組成物と基材シートの保水剤積
層領域に略一定厚さの保水剤を落下させる様にしたことを特徴とする請求項3記載の発熱
体の製造方法。
【請求項5】
発熱組成物の積層形態は、隣接し、独立し、且つ、相互間に非積層領域を設けた分割積
層形態と成し、分割積層された発熱組成物上および発熱組成物間の非積層領域の基材シー
ト上に保水剤を積層する様にしたことを特徴とする請求項4記載の発熱体の製造方法。
【請求項6】
分割積層された発熱組成物の外側周囲部の基材シート上に保水剤を積層する様にしたこ
とを特徴とする請求項5記載の発熱体の製造方法。
【請求項7】
発熱組成物の積層形態は、隣接し、独立し、且つ、相互間に非積層領域を設けた分割積
層形態と成し、保水剤供給装置に設けた計量供給部で保水剤を計量すると共に落下時期を
設定して、発熱組成物に略一定厚さの保水剤を落下させ、分割積層された発熱組成物より
保水剤を小面積で積層する様にしたことを特徴とする請求項3記載の発熱体の製造方法。
【請求項8】
搬送装置の上流部に基材シートを挟着保持して第1積層位置を設定した搬送路で移動す
るベルト状の版体を設け、該ベルト状の版体に積層開口を設けると共に、第1積層位置で
版体の積層開口に粘体状の発熱組成物を供給する第1素材供給装置を設け、
基材シートを支持移動する搬送装置の下流部の搬送路に第2積層位置を設定し、該第2
積層位置で基材シート上に積層された粘体状の発熱組成物上に粉体状の保水剤を供給する
第2素材供給装置を設け、
第2積層位置の下流に、基材シートおよび該基材シートに積層された発熱組成物および
保水剤に被覆材シートを積層し、発熱組成物および保水剤の外側周囲部をシールすると共
に、所定形状に打ち抜く各手段を設けた
ことを特徴とする発熱体の製造装置。
【請求項9】
搬送装置は上流部の傾斜搬送路と下流部の水平搬送路と成すと共に、ベルト状の版体を
傾斜搬送路と成したことを特徴とする請求項8記載の発熱体の製造装置。
【請求項10】
搬送装置のベルトを上下流中間部で回転自在な支持ロールで支持してベルトを屈曲し、
上流部を傾斜搬送路と成すと共に、下流部を水平搬送路と成したことを特徴とする請求項
9記載の発熱体の製造装置。
【請求項11】
支持ロールに磁力吸引手段を設けたことを特徴とする請求項10記載の発熱体の製造装
置。
【請求項12】
支持ロールは回転自在な中空円筒体の内部に磁石を設けたことを特徴とする請求項11
記載の発熱体の製造装置。
【請求項13】
磁力吸引手段の磁石は上面に矩形状の磁極を複数配列した多極性磁石と成し、矩形状の
磁極の長手方向を搬送方向と成すと共に、N極とS極を搬送方向の直交方向で交互に配列
したことを特徴とする請求項11又は12記載の発熱体の製造装置。
【請求項14】
磁極の間に矩形状の非磁極域を設けたことを特徴とする請求項13記載の発熱体の製造
装置。
【請求項15】
第1素材供給装置は、供給ノズルの上下流方向に設けたノズル通路に吐出口を設けると
共に、積層開口を有し基材シートと共に連続搬送される版体に吐出口を摺接させ、供給ノ
ズルの後方壁体をノズル通路側が高い傾斜壁と成し、該傾斜壁の下流端を版体に摺接する
摺切部と成すと共に、傾斜壁を押圧壁と成し、傾斜壁の下部を吐出溜まりと成すと共に、
該吐出溜まりをノズル通路直下の主吐出路と連通させて吐出口を形成したことを特徴とす
る請求項8、9、10、11、12、13又は14記載の発熱体の製造装置。
【請求項16】
ノズル通路の中途部に大容積の上流溜まりを介在設置したことを特徴とする請求項15
記載の発熱体の製造装置。
【請求項17】
第2素材供給装置は、供給基体に設けた円筒状の計量空間に供給口および落下口を連通
すると共に、計量空間に計量ロールを回転自在に設け、該計量ロールの周面に計量凹部を
設けたことを特徴とする請求項8、9、10、11、12、13、14、15又は16記
載の発熱体の製造装置。
【請求項18】
計量凹部は隔壁で離隔した複数の計量溝で構成したことを特徴とする請求項17記載の
発熱体の製造装置。
【請求項19】
分割積層された発熱組成物上だけに保水剤を積層する、または、分割積層された発熱組
成物上および該発熱組成物の選択周囲部の基材シート上に保水剤を積層する、発熱組成物
と保水剤の積層形態関係に対応させて、複数の計量溝を設定したことを特徴とする請求項
18記載の発熱体の製造装置。
【請求項20】
版体に設けた積層開口は、隣接し、独立し、且つ、相互間に非開口部を有する様に、多
数の分割積層開口から夫々形成したことを特徴とする請求項8、9、10、11、12、
13、14、15、16、17、18又は19記載の発熱体の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−44100(P2007−44100A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−228988(P2005−228988)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(395023565)株式会社元知研究所 (5)
【Fターム(参考)】