説明

発熱体

【課題】内直径の狭い同軸ニードル内に折りたたんで収納でき、これを同軸内導体で押し出して、被加熱体内部に挿入でき、被加熱体内部が液体状か軟性媒質であれば元の形状に復帰する伸縮性を備え、交番磁界で高温度発熱が達成できる発熱体にする。
【解決手段】被加熱体の内部に留置し、電磁界照射によって発熱させる発熱体3において、高温度上昇性能と伸縮機能を持たせるために、伸縮性材料を芯材1として、この芯材1表面層に芯材と異なる導電率の材料を付与して、芯材1に細線を用いても高温度上昇が得られるよう導電率を最適化して共振回路を構成し、被加熱体を局所的に高温度加熱することとし、任意方向の電磁界による発熱を可能にした発熱体3。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は,被加熱体内に留置した発熱体を電磁波照によって発熱させる発熱体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電磁波加熱において、被加熱体内部や表面に発熱体を留置して高温度発熱を得る方法として、コイルとマイクロチップコンデンサを直列に接続し、コイル線材の抵抗を利用して、交番磁界による共振回路を構成し、微小な形状で発熱を可能とした発熱体はすでに公知である(特願2001−269532)。
【0003】
これに対して、本発明は、本来発熱体としては十分適さない導電率ではあるが、細線の芯材伸縮可能な性質を有する線材に、この線材の導電率と異なる導電率を持つ材料をその表面層に付加して、高温度発熱特性を最適化し、かつ伸縮自在な機能を有する発熱体の構成に関する。
【0004】
また、本来発熱を目的としない折りたたみ構造の長手形状の筒型留置物体を、この非軸方向の側面方向から磁界照射しても発熱出来、しかもその筒型物体全表面の温度上昇を均一化するために、該筒型物体の表面を熱伝導特性の良い樹脂等で被覆し、該筒型留置物体を折り畳んで被加熱体に留置し、該筒型留置物体の弾性によって、本来所有する形状に復帰した後、電磁波照射することによって、高温度かつ均一発熱特性を実現出来るように構成し、かつ微小温度計を組み込むことができることを特徴とする方法に関する。微小温度計としては、MMICで構成された公知のワイヤレス温度計(Y.Kotsuka,K.Orii,H.Kojima,K.Kamogawa,M.Tanaka:“New Wireless Thermometer for RF and Microwave Thermal Therapy Using an MMIC in an Si BJT VCO Type,”IEEE Trans.MTT,vol.47,no.12,pp.2630−2635,Dec.1999)
などが応用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、電磁波加熱において、被加熱体内部や表面に発熱体を留置して高温度発熱を得る方法として、コイルとマイクロチップコンデンサを直列に接続し、コイル線材の抵抗を利用して、共振回路を構成した発熱体が開示されている(特願2001−269532)。
【0006】
しかし、これは、コイル状であるから伸縮機能をある程度有しているものの、折りたたんで、2mm程度の内径の同軸ニードル管の中に挿入し、この先端がニードル状になっている該同軸ニードルを被加熱体の内部に刺入した後、被加熱体内部で折り畳んである発熱体を同軸管内導体で送り出して、本来の形状に復帰させて留置するという作業が困難であるという問題があった。すなわち、狭い内径の同軸ニードルに入れるには、細線で発熱体を構成必要があり、細線で構成すれば,電磁波加熱では十分発熱しないという問題があった。
また、被加熱体内部に発熱体を挿入した場合、基本的に筒状コイルから成る発熱体の向きによっては、磁界照射方向が、発熱体が最も効果的に発熱する方向、すなわち、筒状コイルの場合は軸方向と一致しないという問題が工業応用において存在する。このような場合、この軸方向以外の方向からから磁界を照射しても効率良く発熱体を発熱させる必要がある。
【0007】
また、医療応用の例として、医療に使用されるステントなどは、血管や体内体腔部位に挿入されるが、多くの場合これら血管や体腔部は体表面に平行に位置しており、これら体腔部にステントを挿入し、磁界を照射しても円筒状コイルでは軸方向に磁界を印加することが困難となり、効果的に発熱が得られないという問題があった。
【手段】
【0008】
上記問題を解決するために、請求項1,2は、伸縮性と高発熱を有する発熱体の発明である。すなわち、発熱効率が高い導電性材料である金や銀の細線を用いると線径を細くする必要から伸縮性が無くなり、また伸縮性を持たせるためにステンレス線を用いると発熱が十分得られないという問題が起こる。この相反する問題を解決するために、本発明は、芯材に伸縮性を有するステンレス線やチタンニッケル合金線材などで構成し、その表面に金や銀等で鍍金または塗布、巻きつけるなどの手段で付着させ外部照射電磁界に共振できるように、共振回路構成を最適化し、高発熱性と伸縮性の両機能を持つ発熱体を構成することを目的としたものである。
【0009】
なお、請求項1の電磁波加熱とは、一般に言われる誘電加熱、誘導加熱を意味している。被加熱体の内部に留置する発熱体とは、別の表現にある誘電、誘導加熱用のインプラントを含んでいる。また、筒型留置物体とは、必ずしも円筒型でなくてもよい。
【0010】
また、請求項3は、誘導加熱において、長手形状を有する筒型留置物体にコイルを巻いたとしても、コイル軸方向に磁界照射が出来ない場合、十分発熱が得られない。このため、まず使用周波数に対し、共振特性を有するコイルを基本的には平面状に構成し、これを円筒状に丸めて横方向磁界でも共振し発熱できる構成手段をとる。例えば、医療に使用されるステントなどは、血管や体内体腔部に挿入されるが、多くの場合、これら血管や体腔部は体表面に平行に位置しており、これら体腔部にステントを挿入し、磁界を照射しても従来の円筒状コイルでは軸方向、つまり頭部から足元方向に磁界を印加することが困難となる。このため横方向から磁界を印加する必要から、上記発熱体の構成形態が必要となる。なお、この筒型留置物体が、真横から磁界照射できないように留置された場合は、ハの字型変形コアを4個対極構造に配置して構成したアプリケータを用いて、各コアの照射磁界を制御することにより、ほぼ任意方向から発熱体の加熱が可能となる。
【0011】
この場合、ステントを例に取ると、本来発熱を目的にしておらず、使用金属は生体適合材料で限られたものであって、発熱特性が得られないという問題がある。また、工業利用においても横方向から磁界を印加する場合も今後要求される。請求項3は、こうした問題解決に対する発明であって、本来存在する伸縮性機能を有するすテントのような筒型留置物体に、導電性線材を芯線として、この芯材表面層に金などの高導電率の材料を使用して特殊なコイル構成し、これを筒型留置物体に編み込むように伸縮性機能を有する筒型留置物体に装荷して、電磁界照射によりコイルが共振する発熱体を構成している。この場合、伸縮性機能を有する筒型留置物体がステンレス線などのように導電性で構成されている場合は、コイル形成用導電性芯線をさらにシリコンやテフロン材などの絶縁材料でコーティングした線材を用いる手段をとっている。勿論、これらの絶縁材料をコーティングする手段を取らなくても、本発熱体は種々利用できる。また、コイル形成用導電性芯線は単に金線や銀等を直接シリコンやテフロン材などで絶縁したものを用いることも可能である。なお、この構成は、筒型物体表面の温度分布のむらを防止するため、筒型物体表面を熱伝導性の優れる樹脂などでコーティングし、この熱伝導を利用して均一温度を得るような構成が可能である。さらに、この樹脂内部にワイヤレス温度計を装荷して、リアルタイムの温度計測も可能としている。
【0012】
公知の方法(特願2001−269532)によれば、コイルを変形して共振構造の原理に基づく発熱体(インプラント)も開示されている。
本発明は、実際には、伸縮しているものが開くための反発力を有する必要があり、芯線材に弾力性のあるステンレス線を用い、絶縁性のコーティング材で強化し、かつ高温度発熱するように芯線の直径および導電率、コーティング材の選択の最適化手段を用いて始めて有効になる技術である。
また、請求項4は、発熱体の構成材の一部である芯材として、伸縮性を持たせるためステンレス材を用い、発熱を高めるために、その表面を金メッキしたり、金で覆ったりして導電率を最適化して構成した発熱体に関する。ステンレスに金メッキを施すことは、従来技術的に不可能であった。
請求項5は、請求項4の発熱体をまず同軸ニードルの内部に装荷して、これを押し出して被加熱体内部に挿入し、元の形状に復帰後に、電磁界照射して、被加熱体を加熱できるよう微小な内径を有する同軸ニードルに装荷できるよう、特殊形状の折りたたみ構造を考案して実現したことを特徴とする発熱体に関する。細線であっても伸縮性が確保出来、またこの細線をいかに高温度に発熱させるかという問題を解決するために、ステンレス線の導電率を最適化するためにステンレスに金メッキを施している。従来、ステンレス線に金メッキを施すことは不可能であったが、この問題を解決して本案を可能にしている。この場合、メッキをせず、その他の方法でステンレス線を金で覆う手段でも、インプラントの構成が可能である。また、この弾力性のある芯線を覆うものは金でなくてもよく、銀やプラチナなど他の金属も使用可能である。これら伸縮性と所定の導電性を確保する手段で、従来困難とされていた折り畳んである小さな留置物体を被加熱体内で開き、横方向磁界に対しても効率よく発熱できる発熱体を構成している。
以下本発明の発熱体の構成方法を図面に示す実施例に基づいて説明する。
【発明の実施例】
【0013】
以下本発明の実施例について記す。
【0014】
図1は、請求項1および4に関連する一実施例で、図1の図中に示すように金メッキを施したステンレス線(1)とマイクロチップコンデンサ(2)を用いて、伸縮可能な発熱体を構成し、内径1.8mmの狭い同軸ニードルに収納できるようにした例で、ジグザグに金メッキを施したステンレス線(1)を折り曲げて作成したものを、円筒状に丸めて、その両端を結合して王冠型発熱体(3)を構成している。図1に誘導加熱時間に対する温度上昇特性を示す。■印は、共振回路なしの場合の温度特性、●印は、共振回路を構成した場合の金メッキステンレス線上の温度特性である。60度以上の極めて高温度が得られている。
【0015】
図2は、請求項1〜3に関連する一実施例で発熱体の構成原理を示している。まず、請求項1記載の伸縮性材料を芯線材として、この芯線材表面層に高導電率の材料を使用して構成した導電性細線(4)を用いて平面状コイル(5)を構成し、磁界とカップリングして共振出来るようにマイクロチップコンデンサ(2)を付加した発熱体の一構成例である。これを図3に示すように、筒状に丸めて横方向磁界感応型発熱体(6)を構成している。この構成で、筒状発熱体の非軸方向からの電磁界照射によっても発熱可能となる。図4は、この場合の温度上昇特性である。導電性細線(4)の直径は、0.5mmである。図3において、■印は、共振回路なしの場合の温度特性、●印は、共振回路を構成した場合の伸縮性横方向磁界感応型発熱体の温度特性である。この伸縮性構造で、十分な温度上昇特性が得られている。
【0016】
図5に、請求項3に関する一実施例として、通常のステンレス線材から成るステント(7)に単位共振回路(8)を編みこんだ構成を示す。この単位共振回路(8)をステントに編みこんで構成した発熱体の一実施例を図6に示す。図6は、単位共振回路(8)を3回路装荷した場合の発熱特性である。■印は、共振回路を付加した場合のステント線材表面上の平均温度、●印は、共振回路表面上の平均上昇温度である。
【発明の効果】
【0017】
以上の実施例から明らかなように、本発明は伸縮機能を持たせた高温度発熱体に関するものであって、以下のような実用上の効果を有している。
折りたたみ構造の伸縮可能な発熱体を構成することによって、1.8mmという内直径の狭い同軸ニードル内に発熱体を押し込み、これを同軸内導体で押し出して、被加熱体内部に挿入し、被加熱体内部が液体状か軟性媒質であれば元の形状に復帰する伸縮性を備えており、交番磁界で高温度発熱が達成できる発熱体が構成できる。
【0018】
従来コイル軸方向からのみの磁界照射でしか発熱しなかった共振回路型発熱体を、本発明によって、横方向磁界感応型発熱体を構成する手段によって、横方向磁界によって、高温度上昇する筒状発熱体の実現を可能にした。
【0019】
また、通常のステンレス線材から成るステントに、共振回路を編みこむように付加した構成で、本来発熱しにくいステンレス製のステント芯線材表面上においても、30度以上の高温度上昇を示すステントを提供し、工学上、工業上、本案は実施して大きな効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】金メッキステンレス線からなる発熱体の温度上昇特性図
【0021】
【図2】横方向磁界感応型発熱体の正面図
【0022】
【図3】横方向磁界感応型発熱体を丸めた場合の図面
【0023】
【図4】温度上昇特性図
【0024】
【図5】ステントに組み込んだ単位共振回路図
【0025】
【図6】温度上昇特性図
【符号の説明】
【0026】
1―ステンレス線、2−マイクロチップコンデンサ、3−王冠型発熱体
4−導電性細線、5−平面状コイル、6−横方向磁界感応型発熱体
7−ステント、8−単位共振回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波加熱において、被加熱体の内部に留置し、電磁界照射によって発熱させる発熱体において、効果的に高温度上昇を可能にし、かつ伸縮機能を持たせるために、伸縮性材料を芯材として、この芯材表面層に異なる導電率の材料を用いて構成し、被加熱体を電磁界照射で局所的に高温度加熱出来るように最適化したことを特徴とする発熱体。
【請求項2】
前記発熱体において,電磁誘導加熱によって発熱させることを特徴とする請求項1記載の発熱体。
【請求項3】
前記発熱体に関し、必ずしも発熱を目的としない折りたたみ構造の長手形状の筒型留置物体を、この非軸方向の側面方向から磁界照射して発熱出来るようにするために、該筒型留置物体に特殊な形状の共振コイル機能を装荷し、かつその筒型物体全表面の温度上昇を均一化するために、該筒型物体の表面を熱伝導特性の良い樹脂等で被覆し、該筒型留置物体を折り畳んで被加熱体に挿入し、該筒型留置物体の弾性によって、本来所有する形状に復帰した後、電磁波照射することによって、高温度かつ均一発熱特性を有ることが出来、かつ微小温度計を組み込むことができる構成を特徴とする請求項1記載の被加熱体を局所的に高温度加熱できるように最適化したことを特徴とする発熱体。
【請求項4】
前記請求項1記載の発熱体の構成材の一部である芯材として、ステンレス線を用いて弾性を付与し、その表面を金で覆って構成し導電率を最適化して高温度に発熱させることを特徴とする請求項1記載の発熱体。
【請求項5】
前期請求項4記載の発熱体において、発熱体を一旦同軸ニードルの内部に装荷して、これを押し出して被加熱体内部に挿入し、元の形状に復帰後に、電磁界を照射して、被加熱体を加熱出来るよう折りたたみ可能な特殊構造を備え、微小な内径の同軸ニードルに装荷出来るように細線材を用いて構成したことを特徴とする請求項1記載の発熱体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−71076(P2011−71076A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−241847(P2009−241847)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(591000023)
【Fターム(参考)】