発熱機および風力熱発電システム
【課題】軽量化に有利な発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムを提供する。
【解決手段】発熱機30は、積層された強磁性体板からなり、軸34方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、当該軸34周りに回転可能な回転子31と、回転子31の外周側に配置され、強磁性体からなるヨーク32と、回転子31とヨーク32との間において軸34方向に沿って延在する電流路33U,33Dとを備えている。
【解決手段】発熱機30は、積層された強磁性体板からなり、軸34方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、当該軸34周りに回転可能な回転子31と、回転子31の外周側に配置され、強磁性体からなるヨーク32と、回転子31とヨーク32との間において軸34方向に沿って延在する電流路33U,33Dとを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発熱機および風力熱発電システムに関し、より特定的には、渦電流による発熱を利用した発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転エネルギーを熱エネルギーに変換する装置として、渦電流による発熱を利用した発熱装置が知られている。具体的には、たとえば外周に永久磁石を配置したロータを回転させることによって磁界を変化させ、得られた渦電流により熱を発生させる永久磁石式渦電流加熱装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−174801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、永久磁石により磁場を形成する上記発熱機は、質量が大きくなるという問題がある。また、発熱機の大型化が必要な場合、これに合わせた大型の永久磁石が必要となるが、永久磁石の大型化には限界がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に対応するためになされたものであって、その目的は、軽量化に有利な発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った発熱機は、積層された強磁性体板からなり、軸方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、当該軸周りに回転可能な回転子と、回転子の外周側に配置され、強磁性体からなるヨークと、回転子とヨークとの間において上記軸方向に沿って延在する電流路とを備えている。
【0007】
本発明の発熱機においては、電流路に電流が流されつつ回転子が回転する。これにより、回転子およびヨークを通る磁路が形成される。また、各場所における磁場は、回転子の回転に伴って変化する。このとき、回転子は積層板からなるため、回転子においては磁場の変化に起因する渦電流はほとんど発生しない。一方、(バルク状の)強磁性体からなるヨークにおいては、上記磁場の変化に起因して渦電流が発生し、発熱する。このように、本発明の発熱機は機能する。上記本発明の発熱機においては、その構造を単純化することが容易である。そのため、本発明の発熱機においては、軽量化に有利な発熱機を提供することができる。
【0008】
上記発熱機においては、ヨークは筒状の形状を有していてもよい。この場合、上記発熱機は少なくとも1対の電流路を備え、当該1対の電流路には互いに逆向きの電流が流れる。このようにすることにより、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となる。
【0009】
上記発熱機においては、2対以上の電流路を備え、ヨークの周方向において互いに隣り合う電流路には互いに逆向きの電流が流れるようにしてもよい。このようにすることにより、ヨークおよび回転子を薄肉化することが可能となり、発熱機の軽量化が一層容易となる。
【0010】
上記発熱機においては、ヨークは、回転子の周方向に沿って複数配置されていてもよい。このようにすることにより、ヨークの形状として筒状の形状を採用した場合と同様に、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となる。
【0011】
上記発熱機においては、上記ヨークにおいて回転子に対向する側の面には凹部が形成されており、当該凹部内を通るように電流路が配置されていてもよい。このような構造を採用することにより、発熱機における電流路の配置が容易となる。
【0012】
上記発熱機においては、複数の回転子を備え、当該複数の回転子は円環状の単一の軌道上を回転可能となっていてもよい。このようにすることにより、発熱機において効率よく発熱を実現することができる。
【0013】
上記発熱機においては、回転子の外周面とヨークの内周面との距離は、回転子の周方向において異なっていてもよい。上記距離を適切に設定することにより、回転子の回転に伴ってヨークの各部位における磁場が変化し続ける状態を実現することが可能となり、材料(ヨーク)の利用効率が向上する。
【0014】
本発明に従った風力熱発電システムは、風車と、風車に接続され、風車の回転により発熱する発熱機と、発熱機に接続され、発熱機において発生した熱を蓄える蓄熱部と、蓄熱部に接続され、蓄熱部において蓄えられた熱を電気に変換する発電部とを備えている。そして、発熱機は上記本発明の発熱機であり、回転子は、上記風車の回転により回転する。
【0015】
本発明の風力熱発電システムにおいては、発熱機として軽量化に有利な構造を有する上記本発明の発熱機が採用される。そのため、たとえば発熱機を風車後方の機械室(ナセル)に収納し、風車およびナセルをタワーにより支持する構造を採用した場合でも、タワーにより支持すべき質量を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明の発熱機および風力熱発電システムによれば、軽量化に有利な発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】風力熱発電システムの構造を示す概略図である。
【図2】実施の形態1における発熱機の部品を示す概略図である。
【図3】実施の形態1における発熱機の構造を示す概略図である。
【図4】実施の形態1における発熱機の構造を示す概略断面図である。
【図5】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図6】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図7】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図8】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図9】図6のP1における磁場の変化を示す図である。
【図10】図6のP2における磁場の変化を示す図である。
【図11】実施の形態2における発熱機の構造を示す概略断面図である。
【図12】実施の形態3における発熱機の構造を示す概略図である。
【図13】実施の形態4における発熱機の構造を示す概略図である。
【図14】実施の形態5における発熱機の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
まず、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1を参照して、本実施の形態における風力熱発電システム1は、風車10と、風車10に接続され、風車10の回転により発熱する発熱機30と、発熱機30に接続され、発熱機30において発生した熱を蓄える蓄熱部40と、蓄熱部40に接続され、蓄熱部40において蓄えられた熱を電気に変換する発電部50とを備えている。風車10は、主軸11と、主軸11から径方向に突出し、風を受けることにより主軸11を周方向に回転させるブレード12とを含んでいる。発熱機30は、風車10の主軸11に接続され、主軸11の回転により発熱する。また、発熱機30は、風車10の後方に隣接して配置されたナセル20の中に収納されている。そして、風車10およびナセル20は、回転支持部21を介してタワー81上に配置されている。
【0020】
蓄熱部40は、配管91,96,97を介して発熱機30と接続されており、発熱機30において加熱された熱媒体としての流体を保持する。熱媒体としての流体としては、種々の流体を採用可能であるが、本実施の形態としてはその一例として水を採用する。発電部50は、蒸気タービン51と、蒸気タービン51の回転により発電する発電機52とを含んでいる。蒸気タービン51は、配管92により蓄熱部40に接続され、配管92を介して供給される水蒸気により回転する。当該回転は発電機52に伝達され、発電に利用される。
【0021】
風力熱発電システム1は、さらに復水器60とポンプ71,72とを備えている。復水器60は、配管93により蒸気タービン51に接続されている。復水器60には、蒸気タービン51を通過した水蒸気が配管93を介して供給され、当該水蒸気は復水器60の中で液体の水に戻される。復水器60には、配管61および配管62が接続されている。そして、復水器60には上記水蒸気を冷却して水に戻すための冷却水が配管61を通して供給され、配管62を通して排出される。ポンプ71は、配管94により復水器60に接続されるとともに、配管95により蓄熱部40に接続されている。また、ポンプ72は配管96により蓄熱部40に接続されるとともに、配管97によりタワー81上のナセル20に収納された発熱機30に接続されている。蓄熱部40、発電部50および復水器60は、発電室82内に配置されている。
【0022】
次に、風力熱発電システム1の動作について説明する。図1を参照して、ブレード12が風を受けると主軸11が軸周りに回転する。この主軸11の回転は、ナセル20内の発熱機30において熱に変換される。発熱機30において発生した熱は、熱媒体である水の加熱に用いられる。そして、加熱された水は水蒸気となり、配管91を通って蓄熱部40に到達する。そして、当該水蒸気は、高温、高圧の状態で蓄熱部40に蓄えられる。
【0023】
蓄熱部40に蓄えられた水蒸気は、配管92を介して蒸気タービン51に供給され蒸気タービン51が回転する。そして、蒸気タービン51の回転が発電機52において電気に変換され、発電が達成される。
【0024】
蒸気タービン51の回転に用いられた水蒸気は配管93を通って復水器60に到達する。復水器60では、当該水蒸気が冷却されて液体の水に戻される。この水は配管94を通ってポンプ71に送られる。そして、ポンプ71は配管95を通して水を蓄熱部40に戻す。一方、蓄熱部40内の水は、配管96を通してポンプ72に送られる。そして、ポンプ72は配管97を通して水を発熱機30に供給する。つまり、発熱機30から蓄熱部40に入り、蓄熱部40から発熱機30に戻る水の循環と、蓄熱部40から蒸気タービン51、復水器60を通って蓄熱部40に戻る水の循環とが形成される。このようにして、熱媒体である水は風力熱発電システム1内を循環する。
【0025】
上記風力熱発電システム1においては、風車10の回転エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積し、必要に応じて熱エネルギーを用いて発電することができる。そのため、風車10の回転エネルギーを電気エネルギーに直接変換する風力発電システムにおいて必要な、コストの高い蓄電装置を省略することが可能となる。また、本実施の形態における風力熱発電システム1においては、後述する本実施の形態における発熱機を含む軽量化の容易な本発明の発熱機が採用される。そのため、タワー(図示しない)により支持すべき質量(風車10、および発熱機30を含むナセル20の質量)を抑制することができる。
【0026】
次に、ナセル20内に収納される本実施の形態における発熱機30について、図2〜図4を参照して説明する。本実施の形態における発熱機30は、積層された強磁性体板からなり、軸34方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、軸34周りに回転可能な回転子31と、回転子31の外周側に配置され、強磁性体からなるヨーク32と、回転子31とヨーク32との間において軸34方向に沿って延在する電流路33U,33Dとを備えている。また、ヨーク32の外周面に接触するように、配管36が配置されている(図3参照)。配管36の入口36Aは図1の配管97に接続され、出口36Bは図1の配管91に接続されている。その結果、図3の矢印の向きに沿って熱媒体としての水が移動する。
【0027】
ここで、発熱機30の動作を説明する。静止状態である図5に示す状態から、図6〜図8にように回転子31が軸34周りに回転し、かつ図2の矢印αの向きに(図5〜図8の電流路33Uにおいては紙面手前から奥側に向かって)電流が流されると、磁路が形成され、図6〜図8に示す矢印のように変化する磁場が発生する。ここで、図6〜図8における中抜きの矢印の向きは磁場の向き、矢印の太さは磁場の大きさを示している。このとき、図6の場所P1およびP2における磁場は、それぞれ図9および図10のように変化する。図9において磁場の強度が一定となる領域が形成されるのは、磁場が飽和するためである。もちろん、磁場が飽和しない程度の電流が電流路33Uおよび電流路33Dに流された場合、当該領域にピークが形成される。一方、場所P2における磁場強度の最大値が場所P1における磁場強度の最大値よりも小さいのは、場所P2を通る磁路の長さが場所P1を通る磁路の長さに比べて大きいためである。
【0028】
このとき、回転子31は積層板からなっている。そのため、回転子31においては磁場の変化に起因する渦電流はほとんど発生しない。一方、バルク状の強磁性体からなるヨーク32においては、上記磁場の変化に起因して渦電流が発生し、発熱する。そして、ヨーク32において発生した熱により、配管36(図3参照)内の水が加熱され、配管91を介して蓄熱部40に蓄積される(図1参照)。
【0029】
ここで、本実施の形態における発熱機30によれば、上述のような単純な構造を採用することができる。そのため、本実施の形態における発熱機30は、軽量化に有利な発熱機となっている。
【0030】
また、本実施の形態における発熱機30では、ヨーク32は筒状の形状を有している。また、軸34に垂直な断面におけるヨーク32の内周面は円形形状を有している。そして、発熱機30は1対の電流路(電流路33Uおよび電流路33D)を備え、図2〜図4を参照して、当該1対の電流路33U,33Dには互いに逆向きの電流が流れる。より具体的には、1対の電流路33U,33Dは軸34を挟んで互いに対向するように配置され、両端においてヨーク32の径方向に接続されている。その結果、1対の電流路33U,33Dはヨーク32の内周側に配置されたコイルを構成している。このようにすることにより、本実施の形態における発熱機30は、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となっている。
【0031】
さらに、本発明においては必須の構造ではないが、本実施の形態の発熱機30においては、図4を参照して、ヨーク32において回転子31に対向する側の面には凹部32Aが形成されている。そして、凹部32A内を通るように(凹部32Aに沿って)電流路33Uおよび電流路33Dが配置されている。このような構造を採用することにより、発熱機30における電流路33Uおよび電流路33Dの配置が容易となっている。
【0032】
また、本発明の発熱機において回転子は1つであってもよいが、本実施の形態の発熱機30は複数(具体的にはたとえば図2〜図4に示すように2つ)の回転子31を備えている。そして、複数の回転子31は円環状の単一の軌道上を回転可能となっている。このようにすることにより、発熱機において効率よく発熱を実現することができる。
【0033】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。実施の形態2における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作するとともに、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における発熱機30は、回転子、ヨークおよび電流路の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0034】
すなわち、図11を参照して、実施の形態2の発熱機30は、2対以上(本実施例では2対)の電流路(電流路33Uおよび電流路33Lの対、および電流路33Dおよび電流路33Rの対)を備え、ヨーク32の周方向において互いに隣り合う電流路には互いに逆向きの電流が流れる。より具体的には、たとえば電流路33Uおよび電流路Dにおいては紙面手前から奥向きに、電流路33Lおよび電流路33Rにおいては紙面奥から手前向きに電流が流れる。ヨーク32には、各電流路33U,33L,33D,33Rに対応する凹部32Aが形成される。また、発熱機30は、周方向に等間隔に配置された4つの回転子31を備えている。このような構造を採用することにより、本実施の形態における発熱機30では、ヨーク32および回転子31を薄肉化することが可能となり、発熱機30の軽量化が一層容易となっている。
【0035】
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。実施の形態3における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作するとともに、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態3における発熱機30は、ヨーク32の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0036】
すなわち、図12を参照して、本実施の形態の発熱機30においては、回転子31の外周面とヨーク32の内周面との距離が、回転子31の周方向において異なっている。より具体的には、回転子31の外周面とヨーク32の内周面との距離は、電流路33Uが配置される位置において最も大きく、電流路33Uから離れるに従ってその距離がg1、g2と小さくなっている。このようにすることにより、本実施の形態においては、磁路βと磁路γとの磁気抵抗の差が小さく、好ましくは磁路βと磁路γとの磁気抵抗が同じになる。その結果、回転子31の回転に伴ってヨーク32の各部位における磁場が変化し続ける状態を実現することが可能となり、材料(ヨーク32)の利用効率が向上している。なお。上記回転子31の外周面とヨーク32の内周面との距離の調整は、たとえば軸34に垂直な断面における回転子31の外周面の形状を円弧状とする一方、ヨーク32の内周面の形状を電流路33Uの近傍において楕円弧状とすることにより達成することができる。
【0037】
(実施の形態4)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態4について説明する。実施の形態4における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作する。しかし、実施の形態4における発熱機30は、電流路の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0038】
すなわち、図13を参照して、電流路33Uおよび電流路33Dのそれぞれは、ヨーク32の側壁を挟んで内周面側および外周面側のそれぞれにおいて延在する延在部と、当該延在部の端部同士を接続する接続部とを備えた別々のコイルを構成している。そして、電流路33Uおよび電流路33Dは、いずれも上記内周面側において延在する延在部を構成している。すなわち、電流路33Uおよび電流路33Dは、それぞれ異なるコイルの一部となっている。このような構造を採用することにより、実施の形態1における発熱機30と同様に、本実施の形態における発熱機30は、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となっている。
【0039】
(実施の形態5)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態5について説明する。実施の形態5における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作する。しかし、実施の形態5における発熱機30は、ヨーク32の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0040】
すなわち、図14を参照して、本実施の形態における発熱機30においては、ヨーク32は、回転子31の周方向に沿って複数(ここでは2つ)配置されている。このような構造を採用することにより、本実施の形態における発熱機30は、ヨーク32の形状として筒状の形状を採用した実施の形態1の場合と同様に、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となっている。さらに、上述のようにヨーク32が分割された構造を採用することにより、回転子31の軌道を全周にわたってヨーク32が覆わない構造が得られる。即ち、発熱部分が円筒ではなく、回転子31の軌道の一部にだけ面するように配置することで、発熱機30全体の大きさを小さくすることが可能となる。これにより、たとえば発熱機30の輸送(道路輸送など)が容易となる。図14は、発熱部となるべきヨーク32が軸34を挟んで対向するように2つ配置される場合を示しているが、たとえばこれらのうち一方のヨーク32が省略される構造が採用されてもよい。
【0041】
なお、上記実施の形態においては、ヨーク32の形状として、軸34に垂直な断面において円弧状の内周面を有する場合について図示したが、本発明の発熱機を構成するヨークはこれに限られず、たとえば平板状の形状を有していてもよい。また、電流路33U,33D,33L,33Rの素材としては銅などの一般的な導体材料が採用されてもよいが、超電導材料を採用してもよい。これにより、発熱の効率を一層向上させることができる。また、上記強磁性体としては、たとえば鉄のほか、コバルト、ニッケルなどを採用してもよい。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の発熱機および風力熱発電システムは、渦電流による発熱を利用した発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムに、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0044】
1 風力熱発電システム、10 風車、11 主軸、12 ブレード、20 ナセル、30 発熱機、31 回転子、32 ヨーク、32A 凹部、33U,33D,33L,33R 電流路、34 軸、36 配管、36A 入口、36B 出口、40 蓄熱部、50 発電部、51 蒸気タービン、52 発電機、60 復水器、71,72 ポンプ、81 タワー、82 発電室、91〜97 配管。
【技術分野】
【0001】
本発明は発熱機および風力熱発電システムに関し、より特定的には、渦電流による発熱を利用した発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
回転エネルギーを熱エネルギーに変換する装置として、渦電流による発熱を利用した発熱装置が知られている。具体的には、たとえば外周に永久磁石を配置したロータを回転させることによって磁界を変化させ、得られた渦電流により熱を発生させる永久磁石式渦電流加熱装置が提案されている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−174801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、永久磁石により磁場を形成する上記発熱機は、質量が大きくなるという問題がある。また、発熱機の大型化が必要な場合、これに合わせた大型の永久磁石が必要となるが、永久磁石の大型化には限界がある。
【0005】
本発明はこのような問題点に対応するためになされたものであって、その目的は、軽量化に有利な発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に従った発熱機は、積層された強磁性体板からなり、軸方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、当該軸周りに回転可能な回転子と、回転子の外周側に配置され、強磁性体からなるヨークと、回転子とヨークとの間において上記軸方向に沿って延在する電流路とを備えている。
【0007】
本発明の発熱機においては、電流路に電流が流されつつ回転子が回転する。これにより、回転子およびヨークを通る磁路が形成される。また、各場所における磁場は、回転子の回転に伴って変化する。このとき、回転子は積層板からなるため、回転子においては磁場の変化に起因する渦電流はほとんど発生しない。一方、(バルク状の)強磁性体からなるヨークにおいては、上記磁場の変化に起因して渦電流が発生し、発熱する。このように、本発明の発熱機は機能する。上記本発明の発熱機においては、その構造を単純化することが容易である。そのため、本発明の発熱機においては、軽量化に有利な発熱機を提供することができる。
【0008】
上記発熱機においては、ヨークは筒状の形状を有していてもよい。この場合、上記発熱機は少なくとも1対の電流路を備え、当該1対の電流路には互いに逆向きの電流が流れる。このようにすることにより、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となる。
【0009】
上記発熱機においては、2対以上の電流路を備え、ヨークの周方向において互いに隣り合う電流路には互いに逆向きの電流が流れるようにしてもよい。このようにすることにより、ヨークおよび回転子を薄肉化することが可能となり、発熱機の軽量化が一層容易となる。
【0010】
上記発熱機においては、ヨークは、回転子の周方向に沿って複数配置されていてもよい。このようにすることにより、ヨークの形状として筒状の形状を採用した場合と同様に、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となる。
【0011】
上記発熱機においては、上記ヨークにおいて回転子に対向する側の面には凹部が形成されており、当該凹部内を通るように電流路が配置されていてもよい。このような構造を採用することにより、発熱機における電流路の配置が容易となる。
【0012】
上記発熱機においては、複数の回転子を備え、当該複数の回転子は円環状の単一の軌道上を回転可能となっていてもよい。このようにすることにより、発熱機において効率よく発熱を実現することができる。
【0013】
上記発熱機においては、回転子の外周面とヨークの内周面との距離は、回転子の周方向において異なっていてもよい。上記距離を適切に設定することにより、回転子の回転に伴ってヨークの各部位における磁場が変化し続ける状態を実現することが可能となり、材料(ヨーク)の利用効率が向上する。
【0014】
本発明に従った風力熱発電システムは、風車と、風車に接続され、風車の回転により発熱する発熱機と、発熱機に接続され、発熱機において発生した熱を蓄える蓄熱部と、蓄熱部に接続され、蓄熱部において蓄えられた熱を電気に変換する発電部とを備えている。そして、発熱機は上記本発明の発熱機であり、回転子は、上記風車の回転により回転する。
【0015】
本発明の風力熱発電システムにおいては、発熱機として軽量化に有利な構造を有する上記本発明の発熱機が採用される。そのため、たとえば発熱機を風車後方の機械室(ナセル)に収納し、風車およびナセルをタワーにより支持する構造を採用した場合でも、タワーにより支持すべき質量を抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明の発熱機および風力熱発電システムによれば、軽量化に有利な発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】風力熱発電システムの構造を示す概略図である。
【図2】実施の形態1における発熱機の部品を示す概略図である。
【図3】実施の形態1における発熱機の構造を示す概略図である。
【図4】実施の形態1における発熱機の構造を示す概略断面図である。
【図5】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図6】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図7】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図8】発熱機の動作を説明するための概略図である。
【図9】図6のP1における磁場の変化を示す図である。
【図10】図6のP2における磁場の変化を示す図である。
【図11】実施の形態2における発熱機の構造を示す概略断面図である。
【図12】実施の形態3における発熱機の構造を示す概略図である。
【図13】実施の形態4における発熱機の構造を示す概略図である。
【図14】実施の形態5における発熱機の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
【0019】
(実施の形態1)
まず、本発明の一実施の形態である実施の形態1について説明する。図1を参照して、本実施の形態における風力熱発電システム1は、風車10と、風車10に接続され、風車10の回転により発熱する発熱機30と、発熱機30に接続され、発熱機30において発生した熱を蓄える蓄熱部40と、蓄熱部40に接続され、蓄熱部40において蓄えられた熱を電気に変換する発電部50とを備えている。風車10は、主軸11と、主軸11から径方向に突出し、風を受けることにより主軸11を周方向に回転させるブレード12とを含んでいる。発熱機30は、風車10の主軸11に接続され、主軸11の回転により発熱する。また、発熱機30は、風車10の後方に隣接して配置されたナセル20の中に収納されている。そして、風車10およびナセル20は、回転支持部21を介してタワー81上に配置されている。
【0020】
蓄熱部40は、配管91,96,97を介して発熱機30と接続されており、発熱機30において加熱された熱媒体としての流体を保持する。熱媒体としての流体としては、種々の流体を採用可能であるが、本実施の形態としてはその一例として水を採用する。発電部50は、蒸気タービン51と、蒸気タービン51の回転により発電する発電機52とを含んでいる。蒸気タービン51は、配管92により蓄熱部40に接続され、配管92を介して供給される水蒸気により回転する。当該回転は発電機52に伝達され、発電に利用される。
【0021】
風力熱発電システム1は、さらに復水器60とポンプ71,72とを備えている。復水器60は、配管93により蒸気タービン51に接続されている。復水器60には、蒸気タービン51を通過した水蒸気が配管93を介して供給され、当該水蒸気は復水器60の中で液体の水に戻される。復水器60には、配管61および配管62が接続されている。そして、復水器60には上記水蒸気を冷却して水に戻すための冷却水が配管61を通して供給され、配管62を通して排出される。ポンプ71は、配管94により復水器60に接続されるとともに、配管95により蓄熱部40に接続されている。また、ポンプ72は配管96により蓄熱部40に接続されるとともに、配管97によりタワー81上のナセル20に収納された発熱機30に接続されている。蓄熱部40、発電部50および復水器60は、発電室82内に配置されている。
【0022】
次に、風力熱発電システム1の動作について説明する。図1を参照して、ブレード12が風を受けると主軸11が軸周りに回転する。この主軸11の回転は、ナセル20内の発熱機30において熱に変換される。発熱機30において発生した熱は、熱媒体である水の加熱に用いられる。そして、加熱された水は水蒸気となり、配管91を通って蓄熱部40に到達する。そして、当該水蒸気は、高温、高圧の状態で蓄熱部40に蓄えられる。
【0023】
蓄熱部40に蓄えられた水蒸気は、配管92を介して蒸気タービン51に供給され蒸気タービン51が回転する。そして、蒸気タービン51の回転が発電機52において電気に変換され、発電が達成される。
【0024】
蒸気タービン51の回転に用いられた水蒸気は配管93を通って復水器60に到達する。復水器60では、当該水蒸気が冷却されて液体の水に戻される。この水は配管94を通ってポンプ71に送られる。そして、ポンプ71は配管95を通して水を蓄熱部40に戻す。一方、蓄熱部40内の水は、配管96を通してポンプ72に送られる。そして、ポンプ72は配管97を通して水を発熱機30に供給する。つまり、発熱機30から蓄熱部40に入り、蓄熱部40から発熱機30に戻る水の循環と、蓄熱部40から蒸気タービン51、復水器60を通って蓄熱部40に戻る水の循環とが形成される。このようにして、熱媒体である水は風力熱発電システム1内を循環する。
【0025】
上記風力熱発電システム1においては、風車10の回転エネルギーを熱エネルギーに変換して蓄積し、必要に応じて熱エネルギーを用いて発電することができる。そのため、風車10の回転エネルギーを電気エネルギーに直接変換する風力発電システムにおいて必要な、コストの高い蓄電装置を省略することが可能となる。また、本実施の形態における風力熱発電システム1においては、後述する本実施の形態における発熱機を含む軽量化の容易な本発明の発熱機が採用される。そのため、タワー(図示しない)により支持すべき質量(風車10、および発熱機30を含むナセル20の質量)を抑制することができる。
【0026】
次に、ナセル20内に収納される本実施の形態における発熱機30について、図2〜図4を参照して説明する。本実施の形態における発熱機30は、積層された強磁性体板からなり、軸34方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、軸34周りに回転可能な回転子31と、回転子31の外周側に配置され、強磁性体からなるヨーク32と、回転子31とヨーク32との間において軸34方向に沿って延在する電流路33U,33Dとを備えている。また、ヨーク32の外周面に接触するように、配管36が配置されている(図3参照)。配管36の入口36Aは図1の配管97に接続され、出口36Bは図1の配管91に接続されている。その結果、図3の矢印の向きに沿って熱媒体としての水が移動する。
【0027】
ここで、発熱機30の動作を説明する。静止状態である図5に示す状態から、図6〜図8にように回転子31が軸34周りに回転し、かつ図2の矢印αの向きに(図5〜図8の電流路33Uにおいては紙面手前から奥側に向かって)電流が流されると、磁路が形成され、図6〜図8に示す矢印のように変化する磁場が発生する。ここで、図6〜図8における中抜きの矢印の向きは磁場の向き、矢印の太さは磁場の大きさを示している。このとき、図6の場所P1およびP2における磁場は、それぞれ図9および図10のように変化する。図9において磁場の強度が一定となる領域が形成されるのは、磁場が飽和するためである。もちろん、磁場が飽和しない程度の電流が電流路33Uおよび電流路33Dに流された場合、当該領域にピークが形成される。一方、場所P2における磁場強度の最大値が場所P1における磁場強度の最大値よりも小さいのは、場所P2を通る磁路の長さが場所P1を通る磁路の長さに比べて大きいためである。
【0028】
このとき、回転子31は積層板からなっている。そのため、回転子31においては磁場の変化に起因する渦電流はほとんど発生しない。一方、バルク状の強磁性体からなるヨーク32においては、上記磁場の変化に起因して渦電流が発生し、発熱する。そして、ヨーク32において発生した熱により、配管36(図3参照)内の水が加熱され、配管91を介して蓄熱部40に蓄積される(図1参照)。
【0029】
ここで、本実施の形態における発熱機30によれば、上述のような単純な構造を採用することができる。そのため、本実施の形態における発熱機30は、軽量化に有利な発熱機となっている。
【0030】
また、本実施の形態における発熱機30では、ヨーク32は筒状の形状を有している。また、軸34に垂直な断面におけるヨーク32の内周面は円形形状を有している。そして、発熱機30は1対の電流路(電流路33Uおよび電流路33D)を備え、図2〜図4を参照して、当該1対の電流路33U,33Dには互いに逆向きの電流が流れる。より具体的には、1対の電流路33U,33Dは軸34を挟んで互いに対向するように配置され、両端においてヨーク32の径方向に接続されている。その結果、1対の電流路33U,33Dはヨーク32の内周側に配置されたコイルを構成している。このようにすることにより、本実施の形態における発熱機30は、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となっている。
【0031】
さらに、本発明においては必須の構造ではないが、本実施の形態の発熱機30においては、図4を参照して、ヨーク32において回転子31に対向する側の面には凹部32Aが形成されている。そして、凹部32A内を通るように(凹部32Aに沿って)電流路33Uおよび電流路33Dが配置されている。このような構造を採用することにより、発熱機30における電流路33Uおよび電流路33Dの配置が容易となっている。
【0032】
また、本発明の発熱機において回転子は1つであってもよいが、本実施の形態の発熱機30は複数(具体的にはたとえば図2〜図4に示すように2つ)の回転子31を備えている。そして、複数の回転子31は円環状の単一の軌道上を回転可能となっている。このようにすることにより、発熱機において効率よく発熱を実現することができる。
【0033】
(実施の形態2)
次に、本発明の他の実施の形態である実施の形態2について説明する。実施の形態2における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作するとともに、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2における発熱機30は、回転子、ヨークおよび電流路の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0034】
すなわち、図11を参照して、実施の形態2の発熱機30は、2対以上(本実施例では2対)の電流路(電流路33Uおよび電流路33Lの対、および電流路33Dおよび電流路33Rの対)を備え、ヨーク32の周方向において互いに隣り合う電流路には互いに逆向きの電流が流れる。より具体的には、たとえば電流路33Uおよび電流路Dにおいては紙面手前から奥向きに、電流路33Lおよび電流路33Rにおいては紙面奥から手前向きに電流が流れる。ヨーク32には、各電流路33U,33L,33D,33Rに対応する凹部32Aが形成される。また、発熱機30は、周方向に等間隔に配置された4つの回転子31を備えている。このような構造を採用することにより、本実施の形態における発熱機30では、ヨーク32および回転子31を薄肉化することが可能となり、発熱機30の軽量化が一層容易となっている。
【0035】
(実施の形態3)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態3について説明する。実施の形態3における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作するとともに、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態3における発熱機30は、ヨーク32の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0036】
すなわち、図12を参照して、本実施の形態の発熱機30においては、回転子31の外周面とヨーク32の内周面との距離が、回転子31の周方向において異なっている。より具体的には、回転子31の外周面とヨーク32の内周面との距離は、電流路33Uが配置される位置において最も大きく、電流路33Uから離れるに従ってその距離がg1、g2と小さくなっている。このようにすることにより、本実施の形態においては、磁路βと磁路γとの磁気抵抗の差が小さく、好ましくは磁路βと磁路γとの磁気抵抗が同じになる。その結果、回転子31の回転に伴ってヨーク32の各部位における磁場が変化し続ける状態を実現することが可能となり、材料(ヨーク32)の利用効率が向上している。なお。上記回転子31の外周面とヨーク32の内周面との距離の調整は、たとえば軸34に垂直な断面における回転子31の外周面の形状を円弧状とする一方、ヨーク32の内周面の形状を電流路33Uの近傍において楕円弧状とすることにより達成することができる。
【0037】
(実施の形態4)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態4について説明する。実施の形態4における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作する。しかし、実施の形態4における発熱機30は、電流路の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0038】
すなわち、図13を参照して、電流路33Uおよび電流路33Dのそれぞれは、ヨーク32の側壁を挟んで内周面側および外周面側のそれぞれにおいて延在する延在部と、当該延在部の端部同士を接続する接続部とを備えた別々のコイルを構成している。そして、電流路33Uおよび電流路33Dは、いずれも上記内周面側において延在する延在部を構成している。すなわち、電流路33Uおよび電流路33Dは、それぞれ異なるコイルの一部となっている。このような構造を採用することにより、実施の形態1における発熱機30と同様に、本実施の形態における発熱機30は、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となっている。
【0039】
(実施の形態5)
次に、本発明のさらに他の実施の形態である実施の形態5について説明する。実施の形態5における発熱機30および風力熱発電システム1は、基本的には実施の形態1の場合と同様の構造を有し、同様に動作する。しかし、実施の形態5における発熱機30は、ヨーク32の構成において、実施の形態1の場合とは異なっている。
【0040】
すなわち、図14を参照して、本実施の形態における発熱機30においては、ヨーク32は、回転子31の周方向に沿って複数(ここでは2つ)配置されている。このような構造を採用することにより、本実施の形態における発熱機30は、ヨーク32の形状として筒状の形状を採用した実施の形態1の場合と同様に、単純な構造を維持しつつ十分な発熱を得ることが容易となっている。さらに、上述のようにヨーク32が分割された構造を採用することにより、回転子31の軌道を全周にわたってヨーク32が覆わない構造が得られる。即ち、発熱部分が円筒ではなく、回転子31の軌道の一部にだけ面するように配置することで、発熱機30全体の大きさを小さくすることが可能となる。これにより、たとえば発熱機30の輸送(道路輸送など)が容易となる。図14は、発熱部となるべきヨーク32が軸34を挟んで対向するように2つ配置される場合を示しているが、たとえばこれらのうち一方のヨーク32が省略される構造が採用されてもよい。
【0041】
なお、上記実施の形態においては、ヨーク32の形状として、軸34に垂直な断面において円弧状の内周面を有する場合について図示したが、本発明の発熱機を構成するヨークはこれに限られず、たとえば平板状の形状を有していてもよい。また、電流路33U,33D,33L,33Rの素材としては銅などの一般的な導体材料が採用されてもよいが、超電導材料を採用してもよい。これにより、発熱の効率を一層向上させることができる。また、上記強磁性体としては、たとえば鉄のほか、コバルト、ニッケルなどを採用してもよい。
【0042】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の発熱機および風力熱発電システムは、渦電流による発熱を利用した発熱機および当該発熱機を構成要素として含む風力熱発電システムに、特に有利に適用され得る。
【符号の説明】
【0044】
1 風力熱発電システム、10 風車、11 主軸、12 ブレード、20 ナセル、30 発熱機、31 回転子、32 ヨーク、32A 凹部、33U,33D,33L,33R 電流路、34 軸、36 配管、36A 入口、36B 出口、40 蓄熱部、50 発電部、51 蒸気タービン、52 発電機、60 復水器、71,72 ポンプ、81 タワー、82 発電室、91〜97 配管。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層された強磁性体板からなり、軸方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、前記軸周りに回転可能な回転子と、
前記回転子の外周側に配置され、強磁性体からなるヨークと、
前記回転子と前記ヨークとの間において前記軸方向に沿って延在する電流路とを備えた、発熱機。
【請求項2】
前記ヨークは筒状の形状を有し、
少なくとも1対の前記電流路を備え、
前記1対の前記電流路には互いに逆向きの電流が流れる、請求項1に記載の発熱機。
【請求項3】
2対以上の前記電流路を備え、
前記ヨークの周方向において互いに隣り合う前記電流路には互いに逆向きの電流が流れる、請求項2に記載の発熱機。
【請求項4】
前記ヨークは、前記回転子の周方向に沿って複数配置されている、請求項1に記載の発熱機。
【請求項5】
前記ヨークにおいて前記回転子に対向する側の面には凹部が形成されており、
前記凹部内を通るように前記電流路が配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発熱機。
【請求項6】
複数の前記回転子を備え、
前記複数の回転子は円環状の単一の軌道上を回転可能となっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発熱機。
【請求項7】
前記回転子の外周面と前記ヨークとの距離は、前記回転子の周方向において異なっている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発熱機。
【請求項8】
風車と、
前記風車に接続され、前記風車の回転により発熱する発熱機と、
前記発熱機に接続され、前記発熱機において発生した熱を蓄える蓄熱部と、
前記蓄熱部に接続され、前記蓄熱部において蓄えられた熱を電気に変換する発電部とを備え、
前記発熱機は請求項1〜7のいずれか1項に記載の発熱機であり、
前記回転子は、前記風車の回転により回転する、風力熱発電システム。
【請求項1】
積層された強磁性体板からなり、軸方向に垂直な断面において円弧状の形状を有し、前記軸周りに回転可能な回転子と、
前記回転子の外周側に配置され、強磁性体からなるヨークと、
前記回転子と前記ヨークとの間において前記軸方向に沿って延在する電流路とを備えた、発熱機。
【請求項2】
前記ヨークは筒状の形状を有し、
少なくとも1対の前記電流路を備え、
前記1対の前記電流路には互いに逆向きの電流が流れる、請求項1に記載の発熱機。
【請求項3】
2対以上の前記電流路を備え、
前記ヨークの周方向において互いに隣り合う前記電流路には互いに逆向きの電流が流れる、請求項2に記載の発熱機。
【請求項4】
前記ヨークは、前記回転子の周方向に沿って複数配置されている、請求項1に記載の発熱機。
【請求項5】
前記ヨークにおいて前記回転子に対向する側の面には凹部が形成されており、
前記凹部内を通るように前記電流路が配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の発熱機。
【請求項6】
複数の前記回転子を備え、
前記複数の回転子は円環状の単一の軌道上を回転可能となっている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の発熱機。
【請求項7】
前記回転子の外周面と前記ヨークとの距離は、前記回転子の周方向において異なっている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の発熱機。
【請求項8】
風車と、
前記風車に接続され、前記風車の回転により発熱する発熱機と、
前記発熱機に接続され、前記発熱機において発生した熱を蓄える蓄熱部と、
前記蓄熱部に接続され、前記蓄熱部において蓄えられた熱を電気に変換する発電部とを備え、
前記発熱機は請求項1〜7のいずれか1項に記載の発熱機であり、
前記回転子は、前記風車の回転により回転する、風力熱発電システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2012−43728(P2012−43728A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186094(P2010−186094)
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月23日(2010.8.23)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】
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