発熱点検出方法及び発熱点検出装置
【課題】集積回路における発熱点の深さをその位置に依存することなく精度よく安定して検出する。
【解決手段】発熱点検出方法は、集積回路Sの表面の平均温度を安定化するステップS01と、集積回路Sに低周波数のバイアス電圧を印加し、それに応じて集積回路Sから検出される発熱検出信号を取得するステップS02,S03と、集積回路Sに高周波数のバイアス電圧を供給し、それに応じて集積回路Sから検出される発熱検出信号を取得するステップS04,S05と、低周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差、及び高周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差を検出するステップS06〜S08と、それらの位相差に基づいて、バイアス電圧の周波数の平方根に対する位相差の変化率を算出し、変化率から発熱点の深さ情報を得るステップS09とを備える。
【解決手段】発熱点検出方法は、集積回路Sの表面の平均温度を安定化するステップS01と、集積回路Sに低周波数のバイアス電圧を印加し、それに応じて集積回路Sから検出される発熱検出信号を取得するステップS02,S03と、集積回路Sに高周波数のバイアス電圧を供給し、それに応じて集積回路Sから検出される発熱検出信号を取得するステップS04,S05と、低周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差、及び高周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差を検出するステップS06〜S08と、それらの位相差に基づいて、バイアス電圧の周波数の平方根に対する位相差の変化率を算出し、変化率から発熱点の深さ情報を得るステップS09とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路の発熱点の深さを検出するための発熱点検出方法及び発熱点検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、LSIパッケージ等の集積回路の不良解析方法として、集積回路に周期的なパルス電圧を印加して熱的な応答を検出する方法が知られている。例えば、下記非特許文献1には、電気的励起と局所的な熱応答との間の位相差ΔΦを検出して、その位相差ΔΦから欠陥の深さを決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】C. Schmidt et al., “Lock-in-Thermography for 3- dimensional localizationof electrical defects inside complex packaged devices”, ISTFA2008: Proceedingsfrom the 34th International Symposium for Testing and Failure Analysys, 米国、2008年11月、p.102−107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の解析方法では、励起信号の大きさや欠陥点の状態によって発熱量が異なったり、欠陥点の位置によって欠陥点と集積回路の表面の間の熱容量が異なるため、位相差ΔΦが、欠陥点の深さ以外に、発熱量、集積回路の構造や欠陥点の位置に依存する。この位相差のオフセット分の位置依存性は、サンプルとしての集積回路の表面から空気への熱伝達率が表面の温度や表面での対流の状態によって決定されることにより発生する。
【0005】
また、位相差のオフセット分の誤差の要因としてサンプルの温度上昇がある。すなわち、熱的な応答を取得する際にサンプルの温度が継続して上昇し、温度上昇に伴う傾斜も別の波として検出される結果、正確な位相差が検出できない傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、集積回路における発熱点の深さをその位置に依存することなく精度よく安定して検出できる発熱点検出方法及び発熱点検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の発熱点検出方法は、集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出方法であって、集積回路の表面の平均温度を安定化する第1ステップと、集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得する第2ステップと、集積回路に第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する第3ステップと、第1及び第2の検出信号に基づいて、発熱点の深さ情報を得る第4ステップと、を備える。
【0008】
或いは、本発明の発熱点検出装置は、集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出装置であって、集積回路に電気信号を供給する電気信号供給部と、集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号、及び第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給するように電気信号供給部を制御する制御部と、第1の周波数の周期的電気信号の供給に応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得するとともに、第2の周波数の周期的電気信号の供給に応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する検出部と、第1及び第2の検出信号に基づいて発熱点の深さ情報を得る演算部と、集積回路の表面の平均温度を安定化する温度安定化部と、を備える。
【0009】
このような発熱点検出方法、或いは発熱点検出装置によれば、集積回路の表面の平均温度が安定化された状態で、集積回路から、第1の周波数の周期的電気信号の供給に応じた発熱量の変化を示す第1の検出信号が検出され、第2の周波数の周期的電気信号の供給に応じた発熱量の変化を示す第2の検出信号が検出される。そして、第1及び第2の検出信号に基づいて、発熱点の深さ情報が得られる。これにより、集積回路の表面の平均温度が一定(略一定)に安定化された上で検出された2つの周波数の電気信号に対する熱的応答を基に深さ情報が計算されるので、発熱点の位置に依存せずに高精度の深さ情報が安定して得られる。
【0010】
上記の発熱点検出方法では、第1の周波数の周期的電気信号と第1の検出信号との間の第1の位相差、及び第2の周波数の周期的電気信号と第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する第5ステップを更に備え、第4ステップでは、第1及び第2の位相差に基づいて、発熱点の深さ情報を得ることが好適である。また、上記の発熱点検出装置では、第1の周波数の周期的電気信号と第1の検出信号との間の第1の位相差、及び第2の周波数の周期的電気信号と第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する位相差検出部を更に備え、演算部は、第1及び第2の位相差に基づいて、発熱点の深さ情報を得る、ことが好適である。こうすれば、発熱点の位置によって変化する発熱量の時間変化のオフセット分が相殺されて深さ情報が計算されるので、発熱点の位置に依存せずにさらに高精度の深さ情報が得られる。
【0011】
さらに、上記の発熱点検出方法では、第4ステップでは、第1及び第2の位相差に基づいて、周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する周期的電気信号と検出信号との間の位相差の変化率を算出し、変化率から発熱点の深さ情報を得ることも好適である。さらに、上記の発熱点検出装置では、演算部は、第1及び第2の位相差に基づいて、周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する周期的電気信号と検出信号との間の位相差の変化率を算出し、変化率から発熱点の深さ情報を得る、ことも好適である。この場合、周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する位相差の変化率を得ることで、発熱点の発熱量、集積回路の内部構造、及び周期的電気信号の周波数に依存しない深さ情報も得ることができる。
【0012】
またさらに、温度安定化部は、前記集積回路の表面の平均温度が一定になるように媒体を供給する媒体供給部を有する、ことも好適である。かかる温度安定化部を備えれば、集積回路の表面の平均温度を簡易な構成部で効率的に安定化させることができる。
【0013】
さらにまた、温度安定化部は、赤外領域に対して透過性を有し、集積回路に近接させて配置された基板と、基板に近接させて配置された温度調整部材とを有する、ことも好適である。かかる構成を備えれば、集積回路の全体の表面の平均温度をより一層安定化させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集積回路における発熱点の深さをその位置に依存することなく精度よく安定して検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る集積回路故障解析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【図3】図2の温度安定化部による集積回路に対する気体の放出状態を示す平面図である。
【図4】図1の集積回路故障解析装置1による集積回路Sに関する故障解析動作の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の電圧印加部14によって印加されるバイアス電圧の時間変化を示す図である。
【図6】(a)は、バイアス電圧の時間変化、(b)は、低熱容量/低熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)は、高熱容量/高熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図7】集積回路Sの表面で温度上昇が生じている場合に検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図8】集積回路Sを対象に検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図9】(a)は、低周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(b)は、集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)は、高周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(d)は、集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図10】図1の集積回路故障解析装置において集積回路Sに印加されるバイアス電圧の角周波数の平方根と、観測される位相遅延bxとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の変形例の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【図12】図11の温度安定化部による集積回路に対する気体の放出状態を示す平面図である。
【図13】本発明の別の変形例の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【図14】本発明の別の変形例の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る発熱点検出装置である集積回路故障解析装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示す集積回路故障解析装置1は、LSIやIC等の集積回路Sの発熱点の位置を検出して故障解析を行う故障解析装置である。この集積回路故障解析装置1は、試料ステージ10と、試料ステージ10を駆動するステージ駆動部12と、電圧印加部(電気信号供給部)14と、撮像装置18と、制御部20と、画像処理部30と、温度安定化部40とを備えて構成されている。
【0017】
解析対象となる集積回路Sは、X軸方向、Y軸方向(水平方向)、及びZ軸方向(垂直方向)にそれぞれ駆動可能なXYZステージを用いた試料ステージ10上に載置されている。この試料ステージ10は、ステージ駆動部12によってX、Y、Z方向に駆動可能に構成されており、これにより、集積回路Sに対する撮像の焦点合わせ、撮像位置の位置合わせ等が行われる。試料ステージ10の上方には、集積回路Sの2次元の画像を取得する撮像手段である撮像装置18が設置されている。撮像装置18としては、集積回路Sの表面の発熱像による画像を取得するため、所定の波長領域に感度を有する撮像装置、例えば赤外光の波長領域に感度を有する赤外撮像装置が好適に用いられる。なお、集積回路Sの表面とは、撮像装置18によって画像が取得される観察面を指す。
【0018】
試料ステージ10と撮像装置18との間の光軸上には、集積回路Sの表面の像を撮像装置18へと導く対物レンズなどの導光光学系16が設けられている。なお、導光光学系16にXYZステージなどの駆動機構を設けて、この駆動機構によって集積回路Sに対する撮像の焦点合わせ、撮像位置の位置合わせ等が可能とされていてもよい。
【0019】
また、試料ステージ10上の集積回路Sに対して電圧信号を供給する電圧印加部14が設けられている。電圧印加部14は、発熱点検出による故障解析を行う際に、集積回路S内の電子回路に対して必要なバイアス電圧を印加する電圧印加手段であり、電圧印加用の電源を含んで構成されている。詳細には、電圧印加部14は、バイアス電圧として、周期的に増減する矩形波である電圧信号(周期的電気信号)を印加する。また、電圧印加部14は、印加するバイアス電圧の周波数を制御部20の制御によって変更可能に構成されている。
【0020】
撮像装置18は、電圧印加部14によって集積回路Sにバイアス電圧が印加された状態での解析画像を時系列に複数取得する。このようにして取得される解析画像は、集積回路Sの表面の発熱像を含む画像である。
【0021】
さらに、集積回路故障解析装置1には、これらの試料ステージ10、ステージ駆動部12、電圧印加部14、導光光学系16、及び撮像装置18に対して、それらの動作を制御する制御部20が設けられている。この制御部20は、撮像制御部21と、ステージ制御部22と、同期制御部23とを有して構成されている。
【0022】
撮像制御部21は、電圧印加部14によるバイアス電圧の印加動作、及び撮像装置18による画像取得動作を制御することにより、集積回路Sの解析画像の取得を制御する。また、ステージ制御部22は、試料ステージ10及びステージ駆動部12の動作(試料ステージ10上の集積回路Sの移動動作)を制御する。また、同期制御部23は、撮像制御部21及びステージ制御部22と、撮像装置18に対して設けられた画像処理部30との間で必要な同期をとるための制御を行う。すなわち、同期制御部23は、ステージ制御部22に対して集積回路Sの故障解析を行うための所定位置に移動させるように制御した後に、バイアス電圧の周波数を所定間隔で順番に変更するように撮像制御部21を制御する。また、同期制御部23は、バイアス電圧の周波数の変更タイミングにあわせて集積回路Sの解析画像を区分けして取得するように撮像制御部21を制御する。
【0023】
画像処理部30は、撮像装置18によって取得された画像に対して、集積回路Sの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段である。本実施形態における画像処理部30は、画像記憶部31と、発熱位相取得部(検出部)32と、電圧位相取得部33と、位相遅延取得部(位相差検出部)34と、深さ情報演算部35とを有して構成されている。撮像装置18で取得された集積回路Sの画像は、画像処理部30に入力され、必要に応じて画像記憶部31に記憶、蓄積される。
【0024】
発熱位相取得部32は、時系列で複数得られた解析画像を基に、集積回路Sの表面の複数点において検出される発熱量の時間変化を示す発熱検出信号を取得し、電圧印加部14によって印加されるバイアス電圧の位相の情報を基準とした発熱検出信号の位相の情報を取得する。
【0025】
電圧位相取得部33は、電圧印加部14によって印加されるバイアス電圧の波形を同期制御部23から受け取り、バイアス電圧の位相の情報を取得する。なお、バイアス電圧の位相の情報は、電圧印加部14もしくは制御部20によって取得され、電圧位相取得部33に供給されてもよい。
【0026】
位相遅延取得部34は、発熱位相取得部32によって取得された位相情報、及び、電圧位相取得部33によって取得された位相情報を基に、バイアス電圧とそのバイアス電圧の印加時に検出された発熱検出信号との位相差を検出する。具体的には、位相遅延取得部34は、発熱位相取得部32及び電圧位相取得部33によって取得された位相情報の差を計算する。ここで、位相遅延取得部34は、複数の周波数に変更されたバイアス電圧のそれぞれに対応した発熱検出信号との位相差を検出する。なお、位相遅延取得部34は、発熱検出信号の波形とバイアス電圧の波形とを対象に、ロックイン処理により位相差を直接得てもよい。
【0027】
深さ情報演算部35は、位相遅延取得部34によって検出された複数の周波数のバイアス電圧に対応した位相差を基にして、集積回路Sにおける発熱点の深さ情報を演算する。すなわち、深さ情報演算部35は、バイアス電圧の周波数から算出される変数である周波数の平方根に対する位相差の変化率を算出し、その変化率或いは変化率に所定定数を乗じた値を深さ情報として算出する。この所定定数は集積回路Sの材料の物性に依存した熱伝達に関する係数として予め設定される。このようにして算出された深さ情報は、集積回路Sの複数点にわたって検出される発熱点の深さを示し、集積回路Sの故障解析に用いられる。
【0028】
このような画像処理部30は、例えばコンピュータを用いて構成される。また、この画像処理部30に対しては、入力装置36及び表示装置37が接続されている。入力装置36は、例えばキーボードやマウス等から構成され、集積回路故障解析装置1における画像取得動作、故障解析動作の実行に必要な情報や動作指示の入力等に用いられる。また、表示装置37は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等から構成され、集積回路故障解析装置1における画像及び故障解析に関する深さ情報等の各種情報の表示等に用いられる。
【0029】
温度安定化部40は、集積回路Sの表面の平均温度を安定化する機能を有する。図2は、温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。同図に示すように、媒体供給部としての温度安定化部40は、空気等の気体(媒体)を収容するエアタンク41と、エアタンク41から放出される気体の圧力を調整するレギュレータ(圧力調整弁)42と、エアタンク41からレギュレータ42を経由して放出された気体Gを集積回路Sの表面に沿って流れるように導くエアホース43と、集積回路Sの表面の温度を検出して、その温度が一定になるようにレギュレータ42を制御する温度制御部44とを含んで構成されている。このエアホース43は、その放出口が集積回路Sの表面の端部に配置されてその表面に沿って中央部を向くように配置され、試料ステージ10上の集積回路Sに対する相対的な位置が変わらないように、試料ステージ10に対して固定されている。また、温度制御部44は、集積回路Sの近傍に配置されたサーミスタ等の温度検出素子(図示せず)を含んでおり、温度検出素子によって検出された温度値が一定になるようにレギュレータ42を制御することにより、エアホース43から供給されるガスGの圧力を増減させる。
【0030】
図3は、温度安定化部40の集積回路Sに対する気体の放出状態を示す平面図である。同図に示すように、温度安定化部40のエアホース43は、集積回路Sの表面上の一端部S1の幅よりも広い範囲で他端部S2に向けて気体Gを放出可能な大きさ及び形状を有している。これによって、温度安定化部40は、集積回路Sの故障箇所Fをカバーする表面全体において気体Gの一方向に沿った流れを安定した圧力で発生させることができる。その結果、温度安定化部40は、集積回路Sの表面全体の温度を所望の温度で安定化させることができる。
【0031】
なお、この画像処理部30については、制御部20とともに単一の制御装置(例えば、単一のコンピュータ)によって実現される構成としてもよい。また、画像処理部30に接続される入力装置36及び表示装置37についても、同様に、画像処理部30のみでなく制御部20に接続される入力装置及び表示装置として機能してもよい。
【0032】
次に、集積回路故障解析装置1による集積回路Sに関する故障解析動作の手順を説明するとともに、本実施形態にかかる発熱点検出方法について詳述する。図4は、集積回路故障解析装置1による集積回路Sに関する故障解析動作の手順を示すフローチャートであり、図5〜図9は、集積回路故障解析装置1によって故障解析動作時に処理される信号波形の時間変化を示す図である。
【0033】
まず、温度安定化部40を動作させることによって、試料ステージ10上に載置された集積回路Sの表面の平均温度を安定化させる(ステップS01)。この温度安定化処理によって集積回路Sの表面の平均温度が安定化したことが、温度安定化部40によって検出された後に、同期制御部23によって電圧印加部14から集積回路Sに対して低周波数(例えば、1Hz)で増減するバイアス電圧が印加するように制御される(ステップS02)。これに対して、撮像制御部21によって低周波数のバイアス電圧の印加タイミングに応じた画像を区分けして取得するように撮像装置18が制御される。このようにして取得された集積回路Sの画像は、画像記憶部31にいったん記憶された後、発熱位相取得部32によって処理されることにより、複数点における発熱量の時間変化を示す発熱検出信号が取得される(ステップS03)。
【0034】
次に、同期制御部23によって電圧印加部14から集積回路Sに対して高周波数(例えば、2Hz)で増減するバイアス電圧が印加するように制御される(ステップS04)。これに対して、撮像制御部21によって高周波数のバイアス電圧の印加タイミングに応じた画像を区分けして取得するように撮像装置18が制御される。このようにして取得された集積回路Sの画像は、画像記憶部31にいったん記憶された後、発熱位相取得部32によって処理されることにより、複数点における発熱検出信号が取得される(ステップS05)。なお、ステップS02,S04で印加されるバイアス電圧の周波数は適宜変更されてもよいが、あまり高周波数になると熱伝達性や発熱量の場所依存性が出てきてしまうため10Hz以下に設定することが好適である。また、変更するバイアス電圧の周波数は2種類には限定されず、3種類以上に変更してそれに応じて発熱検出信号が取得されてもよい。
【0035】
図5には、ステップS02,S04で印加されるバイアス電圧の時間変化を示している。同図に示すように、低周波数の期間P1に連続して高周波数の期間P2が続くように同期制御部23によって制御され、この期間P1と期間P2とのそれぞれにおいて発熱検出信号を取得する期間は、それらの期間との間で集積回路Sにおける温度が一定になり発熱量が変わらないようにするため、それぞれの期間P1,P2におけるバイアス電圧の印加開始からある程度の時間が経過するように設定される。なお、期間P1と期間P2の間に電圧を印加しない期間を設けてもよい。また、矩形波であるバイアス電圧の最大電圧V1及び最小電圧V2は、集積回路Sにおける発熱時の条件が同等になるように複数周波数間で同一値に設定され、バイアス電圧のデューティ比も、集積回路Sでの発熱量が同等になるように複数周波数間で同一値(例えば、50%、75%、…)に設定される。これは、集積回路Sでの発熱量を一定にしてサンプルの平均温度を一定にするためである。この場合、この期間P1と期間P2とのそれぞれにおいて発熱検出信号を取得する期間を連続させることも可能である。
【0036】
図4に戻って、その後、ステップS02,04で集積回路Sに印加された低周波及び高周波のバイアス電圧の波形を対象にして、電圧位相取得部33によって、それらの位相情報が取得される(ステップS06)。それと同時に、ステップS03,S05で取得された低周波及び高周波のバイアス電圧の印加に対応する発熱検出信号を処理対象にして、発熱位相取得部32によって、ステップS06で取得されたバイアス電圧の位相の情報を基準としたそれらの位相情報が取得される(ステップS07)。
【0037】
さらに、位相遅延取得部34によって、ステップS06,07で取得された位相情報の差を計算することによって、低周波数及び高周波数のバイアス電圧のそれぞれに関して発熱検出信号との位相差が検出される(ステップS08)。次に、深さ情報演算部35により、2つの周波数に対応した位相差を基に、周波数の平方根に対する位相差の変化率が算出され、その変化率に所定定数を乗じることで深さ情報が算出される(ステップS09)。なお、この深さ情報は、集積回路Sの表面の複数点にわたって算出される。最後に、算出された深さ情報は、故障解析情報として処理されて表示装置37に表示される(ステップS10)。
【0038】
ここで、集積回路故障解析装置1による発熱点の深さ情報の検出のメカニズムについて説明する。
【0039】
図6において、(a)には、ある周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(b)には、それに応じて低熱容量/低熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)には、それに応じて高熱容量/高熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示している。集積回路故障解析装置1の位相遅延取得部34によって算出される位相差はD1であり、この位相差D1には、集積回路S内の発熱点の深さによって決まる位相のシフト分D2と、発熱の遅延と熱容量、熱伝達速度の違いによる位相のシフト分D3とが含まれている。位相差D1のうちシフト分D3は集積回路Sの熱伝達経路の材料によって大きく左右される。また、集積回路Sの空気への熱伝達率が表面の温度やそれに基づく対流によって決まることから、シフト分D3は集積回路Sの表面温度によっても大きく左右される。
【0040】
この位相差D1の材料による違いは、次のように説明できる。集積回路S内部から一次元に伝わる熱量Qは、下記式(1);
【数1】
によって表される。ここで、xは発熱源から観測点(表面)までの距離(=発熱点の深さ)、Qは観測点を通過していく熱量、wは角周波数(1/2πHz)、bは単位長さあたりの位相遅れ、aは単位長さあたりの減衰率を示す。この熱量Qに対する温度Tは、比熱をq、密度をρとすると、変化量として、下記式(2);
【数2】
によって表される。
【0041】
さらに、熱の拡散の方程式から、熱伝達係数をκとおくと、下記式(3);
【数3】
が導かれる。ここで、式(1)よりxの2回微分の式として、下記式(4);
【数4】
が導かれ、式(2)、(3)より、下記式(5);
【数5】
がさらに導かれる。
式(4)、(5)より、下記式(6);
【数6】
のように表される。虚数iの平方根を計算して、下記式(7);
【数7】
と表される。上記式(7)より、虚数と実数は独立していることからaおよびbは下記式(8)と表される。
【数8】
位相遅延bは下記式(9)として計算される。
【数9】
式(8)、(9)においてa,bは虚数成分を持たないが、実際の観測において、位相遅れbには、本来観察されないはずのオフセットが発生している。これは現実の計測には定数aの虚数成分に相当する誤差が含まれることがあり、位相遅延量にはiaによって表されるオフセットが発生していると判断される。
【0042】
従来では、観測点(表面)で観測される発熱の位相遅延bxが深さに比例すると考えて単純にこれを基に発熱源の深さを計算していた。しかしながら、上記計算結果から比例定数bの中には減衰率aが含まれることが明らかになった。この減衰率aは集積回路Sの内部の熱容量、発熱量、形状、印加バイアスの周波数等々に依存する。このため、従来手法では、集積回路Sのどの位置で観測したかにより定数aが変化してしまい、常に正確な発熱源の深さを計算することは困難である。これに対し、本実施形態にかかる発熱点検出方法では、集積回路Sのパッケージ内部からの発熱検出信号について、減衰率aの値が数Hz以下の低い印加バイアスの周波数において、周波数の平方根に対してほぼ変化がないことを利用する。このとき適用可能な周波数は、集積回路Sに依存して上限値が変化するが、4Hz以下程度であることが好ましい。
【0043】
すなわち、本実施形態にかかる発熱点検出方法で検出される深さ情報は、位相遅延bxの周波数の平方根に対する傾きであり、下記式(10);
【数10】
で示される値である。この値は、物性により決まる定数ρ、q、κにのみ依存し、減衰率aの影響が除去できる。
【0044】
ここで、減衰率aには、集積回路S表面での熱伝達率の変化に伴う変化も生じる。そして、集積回路Sから空気への熱伝達率は、表面の温度やこれに基づく対流によって変化する。そこで、上記式(10)で計算される深さ情報の精度を高めるために、集積回路S表面での温度が安定化するように温度安定化部40が備えられる。
【0045】
また、深さ情報に誤差を生じさせる要因として、集積回路Sの温度の時間的な変化も挙げられる。画像処理部30でのデータ取得の際に集積回路Sの温度が継続して上昇した場合、位相を計測する際に本来の位相の検出とは別に、温度上昇に伴う波形の傾斜も別の波として検出される。この様子を図7に示す。同図に示すように、表面で温度上昇が生じている場合の集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化(図7(a))は、表面温度が安定状態にある場合の集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化(図7(b))に、温度上昇に対応した傾斜をもつ発熱検出信号の時間変化(図7(c))を加えたものとなる。このような温度上昇の発生時の発熱検出信号を対象に、位相情報を取得する場合には、複数の波が合波された別の波の位相を計算してしまうため、深さ情報に誤差が生じる。そこで、集積回路Sの表面温度を安定化させて表面温度の時間的な変化が少ない状態で発熱検出信号を取得可能にするためにも、温度安定化部40が備えられる。
【0046】
図8(a)には、温度安定化部40による温度安定化処理を行わない場合に集積回路故障解析装置1によって取得される発熱検出信号の時間変化を示しており、図8(b)には、温度安定化部40による温度安定化処理を行った場合に集積回路故障解析装置1によって取得される発熱検出信号の時間変化を示している。このように、温度安定化処理を行えば、ある程度の時間経過後に温度変化による傾斜を含まない発熱検出信号を検出開始することによって、取得される位相差の変動が低減されて精度の高い安定した深さ情報の算出が可能になる。
【0047】
図9において、(a)には、1Hzの低周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(b)には、それに応じて集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)には、2Hzの高周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(d)は、それに応じて集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示している。集積回路故障解析装置1においては、位相遅延bxに対応する遅延は、それぞれの周波数において遅延量D1として観測される。この遅延量D1には、発熱点の深さによって決まる位相のシフト分D2と、減衰率aによって決まる位相のシフト分D3が含まれている。
【0048】
図10には、集積回路故障解析装置1において、集積回路Sに印加されるバイアス電圧の角周波数wの平方根と、観測される位相遅延bxとの関係を示している。同図に示すように、低角周波数w1及び高角周波数w2で観測される位相遅延D1には、それぞれ、シフト分D2とシフト分D3とが含まれている。そこで、角周波数wの平方根に対する位相遅延bxの傾きを計算することにより、減衰率aによって決まるシフト分D3を除去して、発熱点の深さによって決まるシフト分D2によって決まる、集積回路S内部の熱容量、発熱量、位置に依存しない深さ情報を見積もることができる。
【0049】
以上説明した集積回路故障解析装置1及びそれを用いた発熱点検出方法によれば、集積回路Sから、低周波数のバイアス電圧の印加に応じた発熱検出信号が検出され、高周波数のバイアス電圧の印加に応じた発熱検出信号が検出される。そして、低周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差、及び高周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差が検出され、周波数の平方根に対する位相差の変化率から、発熱点の深さ情報が得られる。これにより、発熱点の位置によって変化する発熱量の時間変化のオフセット分が相殺されて深さ情報が計算されるので、発熱点の位置に依存せずに高精度の深さ情報が得られる。また、バイアス電圧の周波数から算出される変数に対する位相差の変化率を得ることで、発熱点の発熱量、集積回路の内部構造、及びバイアス電圧の周波数に依存しない深さ情報も得ることができる。
【0050】
すなわち、バイアス電圧と発熱検出信号との間の位相遅延bxには、発熱源からの熱量、集積回路S内における発熱点の位置、集積回路の内部構造や熱容量等に依存する発熱検出波形の変形が生じるため、それに伴う変動が含まれる。したがって、位相遅延bxを直接評価したのでは正確な発熱点の深さを計算することができない。例えば、集積回路Sの中央であれば正確な深さを計算できるパラメータであっても、それをそのままサンプルエッジに使用すると大きな誤差を生じさせる。このような誤差は、熱の伝わる速度の違いと、熱の伝わる範囲の熱容量の合計値の違いと、そして、集積回路Sの表面での熱伝達率の非線形性によって発生する。具体的には、熱容量が大きく、熱の伝わる速度が早くなるに従って、図6に示すように変化する。位相遅延bxには、発熱源からの位相遅れに対応するシフト分D2とは別に、応答波形の変形に伴うシフト分D3が最小で0度から最大で90度まで発生する。これが余計なオフセットとなり、正確な深さの計算を困難にしていた。本実施形態によれば、このような余分なオフセットを除去して正確な深さ情報を得ることができる。
【0051】
また、集積回路Sに印加される複数の周波数のバイアス電圧の振幅及びデューティ比は、互いに等しく設定されるので、発熱点での発熱量をより均一にすることができ、深さ情報のバイアス電圧の周波数に対する依存性をより低減することができる。その結果、さらに正確な深さ情報を取得することができる。
【0052】
さらに、集積回路Sの全体の表面の平均温度が一定温度で安定化された上で検出された複数の周波数の電気信号に対する熱的応答を基に深さ情報が計算される。これにより、熱伝達率の変化に伴うオフセットの変動、及び集積回路Sの温度の時間的な変化に伴う位相差の誤差を低減することができるので、発熱点の位置に依存せずに高精度の深さ情報が安定して得られる。特に、赤外線の輻射強度は集積回路Sが高温であるほど大きくなるため、撮像装置18が飽和しない範囲で集積回路Sの表面の平均温度をより高温で安定化させることにより、集積回路Sの温度振幅が一定であっても検出信号の振幅を大きくしS/Nを向上させることができる。
【0053】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、集積回路Sに印加されるバイアス電圧の波形は、矩形波には限定されず、正弦波や三角波のように電圧が周期的に増減する他の波形に変更してもよい。
【0054】
また、バイアス電圧の最大値V1及び最小値V2も集積回路Sに種類に応じて適宜変更されてもよい。ただし、1つの集積回路Sに対して複数の周波数に変更する際の最大値V1及び最小値V2は一定に設定することが望ましい。
【0055】
また、バイアス電圧の周波数を増減させると発熱検出信号の振幅が変化するため、計測する最低周波数における振幅が計測可能範囲を超えないようにする必要がある。そこで、発熱検出信号の振幅が計測可能範囲を超えた場合に自動的に検出してエラー出力する機能を集積回路故障解析装置1に設けてもよい。
【0056】
また、集積回路Sの表面の平均温度を安定化する温度安定化部40は、以下のような構成であってもよい。
【0057】
例えば、図11及び図12に示すように、気体を放出するエアホース43に加えて、エアホース43の放出口に対向する吸入口を有し、気体を吸入するエアホース45を追加して、気体を集積回路Sの表面に沿って気体を循環可能な構成を採用してもよい。この場合、エアホース43とエアホース45とは、故障箇所Fを確実にカバーする表面上の領域A1を挟んで対抗するように配置される(図12)。このような構成の温度安定化部40によれば、集積回路Sの表面上の領域A1における気流を一定にして、集積回路Sの表面全体の温度を均一にすることができ、安定した深さ情報の検出が実現される。また、温度安定化部40からは必ずしも冷却された媒体(冷却用熱媒体)を供給する場合には限定されず、集積回路Sの表面温度を安定化することが可能であれば、加熱された媒体(加熱用熱媒体)を供給してもよい。
【0058】
また、図13に示す本発明の変形例にかかる温度安定化部40Aのように、集積回路Sの表面上に、平板状の高熱伝導板(基板)46を、オイル等の高熱伝導率の塗布剤47を介して接合し、その高熱伝導板46の表面上の両端部に2つの冷却素子(温度調整部材)48,49を搭載したような構成であってもよい。このように集積回路Sに近接配置された高熱伝導板46は、集積回路Sの表面全体を覆うような大きさ及び形状を有し、ダイヤモンド、Si、SiC等の高い熱伝導率を有し、かつ、赤外領域に対して透過性を有する材料によって構成される。2つの冷却素子48,49は、ペルチェ素子等の冷却素子であり、集積回路Sの表面近傍に配置されたサーミスタ等の温度検出素子(図示せず)を含んでおり、温度検出素子によって検出された温度値が一定になるように温度を調整する。この冷却素子48,49は、ヒータ素子等の加熱素子に置換されてもよいし、熱媒体を集積回路Sの表面に沿って循環させるような管路に置換されてもよい。このような冷却素子48,49が高熱伝導板46に近接して配置された温度安定化部40Aによれば、集積回路Sの表面全体の温度をより一層安定化させることができる。
【0059】
また、図14に示す本発明の変形例にかかる温度安定化部40Bのように、集積回路Sの表面上に所定の空隙を空けて平板状の高熱伝導板46を配置し、試料ステージ10と高熱伝導板46との間の両端部に、集積回路Sの表面上の空隙に一方向に向けてオイル等の熱媒体を供給する一対の媒体放出部50及び媒体吸入部51を設けたような構成であってもよい。このような媒体放出部50及び媒体吸入部51が高熱伝導板46に近接して配置された温度安定化部40Bによっても、集積回路Sの表面全体の温度をより一層安定化させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…集積回路故障解析装置、14…電圧印加部(電気信号供給部)、18…撮像装置、20…制御部、21…撮像制御部、22…ステージ制御部、23…同期制御部、30…画像処理部、31…画像記憶部、32…発熱位相取得部(検出部)、33…電圧位相取得部、34…位相遅延取得部(位相差検出部)、35…深さ情報演算部、40,40A,40B…温度安定化部、41…エアタンク、42…レギュレータ(媒体供給部)、43…エアホース(媒体供給部)、44…温度制御部(媒体供給部)、46…高熱伝導板(基板)、48,49…冷却素子(温度調整部材)、50…媒体放出部(媒体供給部、温度調整部材)、51…媒体吸入部(温度調整部材)、S…集積回路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、集積回路の発熱点の深さを検出するための発熱点検出方法及び発熱点検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、LSIパッケージ等の集積回路の不良解析方法として、集積回路に周期的なパルス電圧を印加して熱的な応答を検出する方法が知られている。例えば、下記非特許文献1には、電気的励起と局所的な熱応答との間の位相差ΔΦを検出して、その位相差ΔΦから欠陥の深さを決定することが記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】C. Schmidt et al., “Lock-in-Thermography for 3- dimensional localizationof electrical defects inside complex packaged devices”, ISTFA2008: Proceedingsfrom the 34th International Symposium for Testing and Failure Analysys, 米国、2008年11月、p.102−107
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の解析方法では、励起信号の大きさや欠陥点の状態によって発熱量が異なったり、欠陥点の位置によって欠陥点と集積回路の表面の間の熱容量が異なるため、位相差ΔΦが、欠陥点の深さ以外に、発熱量、集積回路の構造や欠陥点の位置に依存する。この位相差のオフセット分の位置依存性は、サンプルとしての集積回路の表面から空気への熱伝達率が表面の温度や表面での対流の状態によって決定されることにより発生する。
【0005】
また、位相差のオフセット分の誤差の要因としてサンプルの温度上昇がある。すなわち、熱的な応答を取得する際にサンプルの温度が継続して上昇し、温度上昇に伴う傾斜も別の波として検出される結果、正確な位相差が検出できない傾向にあった。
【0006】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みて為されたものであり、集積回路における発熱点の深さをその位置に依存することなく精度よく安定して検出できる発熱点検出方法及び発熱点検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の発熱点検出方法は、集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出方法であって、集積回路の表面の平均温度を安定化する第1ステップと、集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得する第2ステップと、集積回路に第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する第3ステップと、第1及び第2の検出信号に基づいて、発熱点の深さ情報を得る第4ステップと、を備える。
【0008】
或いは、本発明の発熱点検出装置は、集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出装置であって、集積回路に電気信号を供給する電気信号供給部と、集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号、及び第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給するように電気信号供給部を制御する制御部と、第1の周波数の周期的電気信号の供給に応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得するとともに、第2の周波数の周期的電気信号の供給に応じて集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する検出部と、第1及び第2の検出信号に基づいて発熱点の深さ情報を得る演算部と、集積回路の表面の平均温度を安定化する温度安定化部と、を備える。
【0009】
このような発熱点検出方法、或いは発熱点検出装置によれば、集積回路の表面の平均温度が安定化された状態で、集積回路から、第1の周波数の周期的電気信号の供給に応じた発熱量の変化を示す第1の検出信号が検出され、第2の周波数の周期的電気信号の供給に応じた発熱量の変化を示す第2の検出信号が検出される。そして、第1及び第2の検出信号に基づいて、発熱点の深さ情報が得られる。これにより、集積回路の表面の平均温度が一定(略一定)に安定化された上で検出された2つの周波数の電気信号に対する熱的応答を基に深さ情報が計算されるので、発熱点の位置に依存せずに高精度の深さ情報が安定して得られる。
【0010】
上記の発熱点検出方法では、第1の周波数の周期的電気信号と第1の検出信号との間の第1の位相差、及び第2の周波数の周期的電気信号と第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する第5ステップを更に備え、第4ステップでは、第1及び第2の位相差に基づいて、発熱点の深さ情報を得ることが好適である。また、上記の発熱点検出装置では、第1の周波数の周期的電気信号と第1の検出信号との間の第1の位相差、及び第2の周波数の周期的電気信号と第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する位相差検出部を更に備え、演算部は、第1及び第2の位相差に基づいて、発熱点の深さ情報を得る、ことが好適である。こうすれば、発熱点の位置によって変化する発熱量の時間変化のオフセット分が相殺されて深さ情報が計算されるので、発熱点の位置に依存せずにさらに高精度の深さ情報が得られる。
【0011】
さらに、上記の発熱点検出方法では、第4ステップでは、第1及び第2の位相差に基づいて、周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する周期的電気信号と検出信号との間の位相差の変化率を算出し、変化率から発熱点の深さ情報を得ることも好適である。さらに、上記の発熱点検出装置では、演算部は、第1及び第2の位相差に基づいて、周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する周期的電気信号と検出信号との間の位相差の変化率を算出し、変化率から発熱点の深さ情報を得る、ことも好適である。この場合、周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する位相差の変化率を得ることで、発熱点の発熱量、集積回路の内部構造、及び周期的電気信号の周波数に依存しない深さ情報も得ることができる。
【0012】
またさらに、温度安定化部は、前記集積回路の表面の平均温度が一定になるように媒体を供給する媒体供給部を有する、ことも好適である。かかる温度安定化部を備えれば、集積回路の表面の平均温度を簡易な構成部で効率的に安定化させることができる。
【0013】
さらにまた、温度安定化部は、赤外領域に対して透過性を有し、集積回路に近接させて配置された基板と、基板に近接させて配置された温度調整部材とを有する、ことも好適である。かかる構成を備えれば、集積回路の全体の表面の平均温度をより一層安定化させることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、集積回路における発熱点の深さをその位置に依存することなく精度よく安定して検出できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の好適な一実施形態に係る集積回路故障解析装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】図1の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【図3】図2の温度安定化部による集積回路に対する気体の放出状態を示す平面図である。
【図4】図1の集積回路故障解析装置1による集積回路Sに関する故障解析動作の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の電圧印加部14によって印加されるバイアス電圧の時間変化を示す図である。
【図6】(a)は、バイアス電圧の時間変化、(b)は、低熱容量/低熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)は、高熱容量/高熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図7】集積回路Sの表面で温度上昇が生じている場合に検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図8】集積回路Sを対象に検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図9】(a)は、低周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(b)は、集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)は、高周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(d)は、集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示す図である。
【図10】図1の集積回路故障解析装置において集積回路Sに印加されるバイアス電圧の角周波数の平方根と、観測される位相遅延bxとの関係を示すグラフである。
【図11】本発明の変形例の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【図12】図11の温度安定化部による集積回路に対する気体の放出状態を示す平面図である。
【図13】本発明の別の変形例の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【図14】本発明の別の変形例の温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の好適な一実施形態に係る発熱点検出装置である集積回路故障解析装置の概略構成を示すブロック図である。同図に示す集積回路故障解析装置1は、LSIやIC等の集積回路Sの発熱点の位置を検出して故障解析を行う故障解析装置である。この集積回路故障解析装置1は、試料ステージ10と、試料ステージ10を駆動するステージ駆動部12と、電圧印加部(電気信号供給部)14と、撮像装置18と、制御部20と、画像処理部30と、温度安定化部40とを備えて構成されている。
【0017】
解析対象となる集積回路Sは、X軸方向、Y軸方向(水平方向)、及びZ軸方向(垂直方向)にそれぞれ駆動可能なXYZステージを用いた試料ステージ10上に載置されている。この試料ステージ10は、ステージ駆動部12によってX、Y、Z方向に駆動可能に構成されており、これにより、集積回路Sに対する撮像の焦点合わせ、撮像位置の位置合わせ等が行われる。試料ステージ10の上方には、集積回路Sの2次元の画像を取得する撮像手段である撮像装置18が設置されている。撮像装置18としては、集積回路Sの表面の発熱像による画像を取得するため、所定の波長領域に感度を有する撮像装置、例えば赤外光の波長領域に感度を有する赤外撮像装置が好適に用いられる。なお、集積回路Sの表面とは、撮像装置18によって画像が取得される観察面を指す。
【0018】
試料ステージ10と撮像装置18との間の光軸上には、集積回路Sの表面の像を撮像装置18へと導く対物レンズなどの導光光学系16が設けられている。なお、導光光学系16にXYZステージなどの駆動機構を設けて、この駆動機構によって集積回路Sに対する撮像の焦点合わせ、撮像位置の位置合わせ等が可能とされていてもよい。
【0019】
また、試料ステージ10上の集積回路Sに対して電圧信号を供給する電圧印加部14が設けられている。電圧印加部14は、発熱点検出による故障解析を行う際に、集積回路S内の電子回路に対して必要なバイアス電圧を印加する電圧印加手段であり、電圧印加用の電源を含んで構成されている。詳細には、電圧印加部14は、バイアス電圧として、周期的に増減する矩形波である電圧信号(周期的電気信号)を印加する。また、電圧印加部14は、印加するバイアス電圧の周波数を制御部20の制御によって変更可能に構成されている。
【0020】
撮像装置18は、電圧印加部14によって集積回路Sにバイアス電圧が印加された状態での解析画像を時系列に複数取得する。このようにして取得される解析画像は、集積回路Sの表面の発熱像を含む画像である。
【0021】
さらに、集積回路故障解析装置1には、これらの試料ステージ10、ステージ駆動部12、電圧印加部14、導光光学系16、及び撮像装置18に対して、それらの動作を制御する制御部20が設けられている。この制御部20は、撮像制御部21と、ステージ制御部22と、同期制御部23とを有して構成されている。
【0022】
撮像制御部21は、電圧印加部14によるバイアス電圧の印加動作、及び撮像装置18による画像取得動作を制御することにより、集積回路Sの解析画像の取得を制御する。また、ステージ制御部22は、試料ステージ10及びステージ駆動部12の動作(試料ステージ10上の集積回路Sの移動動作)を制御する。また、同期制御部23は、撮像制御部21及びステージ制御部22と、撮像装置18に対して設けられた画像処理部30との間で必要な同期をとるための制御を行う。すなわち、同期制御部23は、ステージ制御部22に対して集積回路Sの故障解析を行うための所定位置に移動させるように制御した後に、バイアス電圧の周波数を所定間隔で順番に変更するように撮像制御部21を制御する。また、同期制御部23は、バイアス電圧の周波数の変更タイミングにあわせて集積回路Sの解析画像を区分けして取得するように撮像制御部21を制御する。
【0023】
画像処理部30は、撮像装置18によって取得された画像に対して、集積回路Sの故障解析に必要な画像処理を行う画像処理手段である。本実施形態における画像処理部30は、画像記憶部31と、発熱位相取得部(検出部)32と、電圧位相取得部33と、位相遅延取得部(位相差検出部)34と、深さ情報演算部35とを有して構成されている。撮像装置18で取得された集積回路Sの画像は、画像処理部30に入力され、必要に応じて画像記憶部31に記憶、蓄積される。
【0024】
発熱位相取得部32は、時系列で複数得られた解析画像を基に、集積回路Sの表面の複数点において検出される発熱量の時間変化を示す発熱検出信号を取得し、電圧印加部14によって印加されるバイアス電圧の位相の情報を基準とした発熱検出信号の位相の情報を取得する。
【0025】
電圧位相取得部33は、電圧印加部14によって印加されるバイアス電圧の波形を同期制御部23から受け取り、バイアス電圧の位相の情報を取得する。なお、バイアス電圧の位相の情報は、電圧印加部14もしくは制御部20によって取得され、電圧位相取得部33に供給されてもよい。
【0026】
位相遅延取得部34は、発熱位相取得部32によって取得された位相情報、及び、電圧位相取得部33によって取得された位相情報を基に、バイアス電圧とそのバイアス電圧の印加時に検出された発熱検出信号との位相差を検出する。具体的には、位相遅延取得部34は、発熱位相取得部32及び電圧位相取得部33によって取得された位相情報の差を計算する。ここで、位相遅延取得部34は、複数の周波数に変更されたバイアス電圧のそれぞれに対応した発熱検出信号との位相差を検出する。なお、位相遅延取得部34は、発熱検出信号の波形とバイアス電圧の波形とを対象に、ロックイン処理により位相差を直接得てもよい。
【0027】
深さ情報演算部35は、位相遅延取得部34によって検出された複数の周波数のバイアス電圧に対応した位相差を基にして、集積回路Sにおける発熱点の深さ情報を演算する。すなわち、深さ情報演算部35は、バイアス電圧の周波数から算出される変数である周波数の平方根に対する位相差の変化率を算出し、その変化率或いは変化率に所定定数を乗じた値を深さ情報として算出する。この所定定数は集積回路Sの材料の物性に依存した熱伝達に関する係数として予め設定される。このようにして算出された深さ情報は、集積回路Sの複数点にわたって検出される発熱点の深さを示し、集積回路Sの故障解析に用いられる。
【0028】
このような画像処理部30は、例えばコンピュータを用いて構成される。また、この画像処理部30に対しては、入力装置36及び表示装置37が接続されている。入力装置36は、例えばキーボードやマウス等から構成され、集積回路故障解析装置1における画像取得動作、故障解析動作の実行に必要な情報や動作指示の入力等に用いられる。また、表示装置37は、例えばCRTディスプレイや液晶ディスプレイ等から構成され、集積回路故障解析装置1における画像及び故障解析に関する深さ情報等の各種情報の表示等に用いられる。
【0029】
温度安定化部40は、集積回路Sの表面の平均温度を安定化する機能を有する。図2は、温度安定化部の構成の一例を示す側面図である。同図に示すように、媒体供給部としての温度安定化部40は、空気等の気体(媒体)を収容するエアタンク41と、エアタンク41から放出される気体の圧力を調整するレギュレータ(圧力調整弁)42と、エアタンク41からレギュレータ42を経由して放出された気体Gを集積回路Sの表面に沿って流れるように導くエアホース43と、集積回路Sの表面の温度を検出して、その温度が一定になるようにレギュレータ42を制御する温度制御部44とを含んで構成されている。このエアホース43は、その放出口が集積回路Sの表面の端部に配置されてその表面に沿って中央部を向くように配置され、試料ステージ10上の集積回路Sに対する相対的な位置が変わらないように、試料ステージ10に対して固定されている。また、温度制御部44は、集積回路Sの近傍に配置されたサーミスタ等の温度検出素子(図示せず)を含んでおり、温度検出素子によって検出された温度値が一定になるようにレギュレータ42を制御することにより、エアホース43から供給されるガスGの圧力を増減させる。
【0030】
図3は、温度安定化部40の集積回路Sに対する気体の放出状態を示す平面図である。同図に示すように、温度安定化部40のエアホース43は、集積回路Sの表面上の一端部S1の幅よりも広い範囲で他端部S2に向けて気体Gを放出可能な大きさ及び形状を有している。これによって、温度安定化部40は、集積回路Sの故障箇所Fをカバーする表面全体において気体Gの一方向に沿った流れを安定した圧力で発生させることができる。その結果、温度安定化部40は、集積回路Sの表面全体の温度を所望の温度で安定化させることができる。
【0031】
なお、この画像処理部30については、制御部20とともに単一の制御装置(例えば、単一のコンピュータ)によって実現される構成としてもよい。また、画像処理部30に接続される入力装置36及び表示装置37についても、同様に、画像処理部30のみでなく制御部20に接続される入力装置及び表示装置として機能してもよい。
【0032】
次に、集積回路故障解析装置1による集積回路Sに関する故障解析動作の手順を説明するとともに、本実施形態にかかる発熱点検出方法について詳述する。図4は、集積回路故障解析装置1による集積回路Sに関する故障解析動作の手順を示すフローチャートであり、図5〜図9は、集積回路故障解析装置1によって故障解析動作時に処理される信号波形の時間変化を示す図である。
【0033】
まず、温度安定化部40を動作させることによって、試料ステージ10上に載置された集積回路Sの表面の平均温度を安定化させる(ステップS01)。この温度安定化処理によって集積回路Sの表面の平均温度が安定化したことが、温度安定化部40によって検出された後に、同期制御部23によって電圧印加部14から集積回路Sに対して低周波数(例えば、1Hz)で増減するバイアス電圧が印加するように制御される(ステップS02)。これに対して、撮像制御部21によって低周波数のバイアス電圧の印加タイミングに応じた画像を区分けして取得するように撮像装置18が制御される。このようにして取得された集積回路Sの画像は、画像記憶部31にいったん記憶された後、発熱位相取得部32によって処理されることにより、複数点における発熱量の時間変化を示す発熱検出信号が取得される(ステップS03)。
【0034】
次に、同期制御部23によって電圧印加部14から集積回路Sに対して高周波数(例えば、2Hz)で増減するバイアス電圧が印加するように制御される(ステップS04)。これに対して、撮像制御部21によって高周波数のバイアス電圧の印加タイミングに応じた画像を区分けして取得するように撮像装置18が制御される。このようにして取得された集積回路Sの画像は、画像記憶部31にいったん記憶された後、発熱位相取得部32によって処理されることにより、複数点における発熱検出信号が取得される(ステップS05)。なお、ステップS02,S04で印加されるバイアス電圧の周波数は適宜変更されてもよいが、あまり高周波数になると熱伝達性や発熱量の場所依存性が出てきてしまうため10Hz以下に設定することが好適である。また、変更するバイアス電圧の周波数は2種類には限定されず、3種類以上に変更してそれに応じて発熱検出信号が取得されてもよい。
【0035】
図5には、ステップS02,S04で印加されるバイアス電圧の時間変化を示している。同図に示すように、低周波数の期間P1に連続して高周波数の期間P2が続くように同期制御部23によって制御され、この期間P1と期間P2とのそれぞれにおいて発熱検出信号を取得する期間は、それらの期間との間で集積回路Sにおける温度が一定になり発熱量が変わらないようにするため、それぞれの期間P1,P2におけるバイアス電圧の印加開始からある程度の時間が経過するように設定される。なお、期間P1と期間P2の間に電圧を印加しない期間を設けてもよい。また、矩形波であるバイアス電圧の最大電圧V1及び最小電圧V2は、集積回路Sにおける発熱時の条件が同等になるように複数周波数間で同一値に設定され、バイアス電圧のデューティ比も、集積回路Sでの発熱量が同等になるように複数周波数間で同一値(例えば、50%、75%、…)に設定される。これは、集積回路Sでの発熱量を一定にしてサンプルの平均温度を一定にするためである。この場合、この期間P1と期間P2とのそれぞれにおいて発熱検出信号を取得する期間を連続させることも可能である。
【0036】
図4に戻って、その後、ステップS02,04で集積回路Sに印加された低周波及び高周波のバイアス電圧の波形を対象にして、電圧位相取得部33によって、それらの位相情報が取得される(ステップS06)。それと同時に、ステップS03,S05で取得された低周波及び高周波のバイアス電圧の印加に対応する発熱検出信号を処理対象にして、発熱位相取得部32によって、ステップS06で取得されたバイアス電圧の位相の情報を基準としたそれらの位相情報が取得される(ステップS07)。
【0037】
さらに、位相遅延取得部34によって、ステップS06,07で取得された位相情報の差を計算することによって、低周波数及び高周波数のバイアス電圧のそれぞれに関して発熱検出信号との位相差が検出される(ステップS08)。次に、深さ情報演算部35により、2つの周波数に対応した位相差を基に、周波数の平方根に対する位相差の変化率が算出され、その変化率に所定定数を乗じることで深さ情報が算出される(ステップS09)。なお、この深さ情報は、集積回路Sの表面の複数点にわたって算出される。最後に、算出された深さ情報は、故障解析情報として処理されて表示装置37に表示される(ステップS10)。
【0038】
ここで、集積回路故障解析装置1による発熱点の深さ情報の検出のメカニズムについて説明する。
【0039】
図6において、(a)には、ある周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(b)には、それに応じて低熱容量/低熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)には、それに応じて高熱容量/高熱伝達率の材料から成る集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示している。集積回路故障解析装置1の位相遅延取得部34によって算出される位相差はD1であり、この位相差D1には、集積回路S内の発熱点の深さによって決まる位相のシフト分D2と、発熱の遅延と熱容量、熱伝達速度の違いによる位相のシフト分D3とが含まれている。位相差D1のうちシフト分D3は集積回路Sの熱伝達経路の材料によって大きく左右される。また、集積回路Sの空気への熱伝達率が表面の温度やそれに基づく対流によって決まることから、シフト分D3は集積回路Sの表面温度によっても大きく左右される。
【0040】
この位相差D1の材料による違いは、次のように説明できる。集積回路S内部から一次元に伝わる熱量Qは、下記式(1);
【数1】
によって表される。ここで、xは発熱源から観測点(表面)までの距離(=発熱点の深さ)、Qは観測点を通過していく熱量、wは角周波数(1/2πHz)、bは単位長さあたりの位相遅れ、aは単位長さあたりの減衰率を示す。この熱量Qに対する温度Tは、比熱をq、密度をρとすると、変化量として、下記式(2);
【数2】
によって表される。
【0041】
さらに、熱の拡散の方程式から、熱伝達係数をκとおくと、下記式(3);
【数3】
が導かれる。ここで、式(1)よりxの2回微分の式として、下記式(4);
【数4】
が導かれ、式(2)、(3)より、下記式(5);
【数5】
がさらに導かれる。
式(4)、(5)より、下記式(6);
【数6】
のように表される。虚数iの平方根を計算して、下記式(7);
【数7】
と表される。上記式(7)より、虚数と実数は独立していることからaおよびbは下記式(8)と表される。
【数8】
位相遅延bは下記式(9)として計算される。
【数9】
式(8)、(9)においてa,bは虚数成分を持たないが、実際の観測において、位相遅れbには、本来観察されないはずのオフセットが発生している。これは現実の計測には定数aの虚数成分に相当する誤差が含まれることがあり、位相遅延量にはiaによって表されるオフセットが発生していると判断される。
【0042】
従来では、観測点(表面)で観測される発熱の位相遅延bxが深さに比例すると考えて単純にこれを基に発熱源の深さを計算していた。しかしながら、上記計算結果から比例定数bの中には減衰率aが含まれることが明らかになった。この減衰率aは集積回路Sの内部の熱容量、発熱量、形状、印加バイアスの周波数等々に依存する。このため、従来手法では、集積回路Sのどの位置で観測したかにより定数aが変化してしまい、常に正確な発熱源の深さを計算することは困難である。これに対し、本実施形態にかかる発熱点検出方法では、集積回路Sのパッケージ内部からの発熱検出信号について、減衰率aの値が数Hz以下の低い印加バイアスの周波数において、周波数の平方根に対してほぼ変化がないことを利用する。このとき適用可能な周波数は、集積回路Sに依存して上限値が変化するが、4Hz以下程度であることが好ましい。
【0043】
すなわち、本実施形態にかかる発熱点検出方法で検出される深さ情報は、位相遅延bxの周波数の平方根に対する傾きであり、下記式(10);
【数10】
で示される値である。この値は、物性により決まる定数ρ、q、κにのみ依存し、減衰率aの影響が除去できる。
【0044】
ここで、減衰率aには、集積回路S表面での熱伝達率の変化に伴う変化も生じる。そして、集積回路Sから空気への熱伝達率は、表面の温度やこれに基づく対流によって変化する。そこで、上記式(10)で計算される深さ情報の精度を高めるために、集積回路S表面での温度が安定化するように温度安定化部40が備えられる。
【0045】
また、深さ情報に誤差を生じさせる要因として、集積回路Sの温度の時間的な変化も挙げられる。画像処理部30でのデータ取得の際に集積回路Sの温度が継続して上昇した場合、位相を計測する際に本来の位相の検出とは別に、温度上昇に伴う波形の傾斜も別の波として検出される。この様子を図7に示す。同図に示すように、表面で温度上昇が生じている場合の集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化(図7(a))は、表面温度が安定状態にある場合の集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化(図7(b))に、温度上昇に対応した傾斜をもつ発熱検出信号の時間変化(図7(c))を加えたものとなる。このような温度上昇の発生時の発熱検出信号を対象に、位相情報を取得する場合には、複数の波が合波された別の波の位相を計算してしまうため、深さ情報に誤差が生じる。そこで、集積回路Sの表面温度を安定化させて表面温度の時間的な変化が少ない状態で発熱検出信号を取得可能にするためにも、温度安定化部40が備えられる。
【0046】
図8(a)には、温度安定化部40による温度安定化処理を行わない場合に集積回路故障解析装置1によって取得される発熱検出信号の時間変化を示しており、図8(b)には、温度安定化部40による温度安定化処理を行った場合に集積回路故障解析装置1によって取得される発熱検出信号の時間変化を示している。このように、温度安定化処理を行えば、ある程度の時間経過後に温度変化による傾斜を含まない発熱検出信号を検出開始することによって、取得される位相差の変動が低減されて精度の高い安定した深さ情報の算出が可能になる。
【0047】
図9において、(a)には、1Hzの低周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(b)には、それに応じて集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化、(c)には、2Hzの高周波数で印加されるバイアス電圧の時間変化、(d)は、それに応じて集積回路Sにおいて検出される発熱検出信号の時間変化を示している。集積回路故障解析装置1においては、位相遅延bxに対応する遅延は、それぞれの周波数において遅延量D1として観測される。この遅延量D1には、発熱点の深さによって決まる位相のシフト分D2と、減衰率aによって決まる位相のシフト分D3が含まれている。
【0048】
図10には、集積回路故障解析装置1において、集積回路Sに印加されるバイアス電圧の角周波数wの平方根と、観測される位相遅延bxとの関係を示している。同図に示すように、低角周波数w1及び高角周波数w2で観測される位相遅延D1には、それぞれ、シフト分D2とシフト分D3とが含まれている。そこで、角周波数wの平方根に対する位相遅延bxの傾きを計算することにより、減衰率aによって決まるシフト分D3を除去して、発熱点の深さによって決まるシフト分D2によって決まる、集積回路S内部の熱容量、発熱量、位置に依存しない深さ情報を見積もることができる。
【0049】
以上説明した集積回路故障解析装置1及びそれを用いた発熱点検出方法によれば、集積回路Sから、低周波数のバイアス電圧の印加に応じた発熱検出信号が検出され、高周波数のバイアス電圧の印加に応じた発熱検出信号が検出される。そして、低周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差、及び高周波数のバイアス電圧と発熱検出信号との間の位相差が検出され、周波数の平方根に対する位相差の変化率から、発熱点の深さ情報が得られる。これにより、発熱点の位置によって変化する発熱量の時間変化のオフセット分が相殺されて深さ情報が計算されるので、発熱点の位置に依存せずに高精度の深さ情報が得られる。また、バイアス電圧の周波数から算出される変数に対する位相差の変化率を得ることで、発熱点の発熱量、集積回路の内部構造、及びバイアス電圧の周波数に依存しない深さ情報も得ることができる。
【0050】
すなわち、バイアス電圧と発熱検出信号との間の位相遅延bxには、発熱源からの熱量、集積回路S内における発熱点の位置、集積回路の内部構造や熱容量等に依存する発熱検出波形の変形が生じるため、それに伴う変動が含まれる。したがって、位相遅延bxを直接評価したのでは正確な発熱点の深さを計算することができない。例えば、集積回路Sの中央であれば正確な深さを計算できるパラメータであっても、それをそのままサンプルエッジに使用すると大きな誤差を生じさせる。このような誤差は、熱の伝わる速度の違いと、熱の伝わる範囲の熱容量の合計値の違いと、そして、集積回路Sの表面での熱伝達率の非線形性によって発生する。具体的には、熱容量が大きく、熱の伝わる速度が早くなるに従って、図6に示すように変化する。位相遅延bxには、発熱源からの位相遅れに対応するシフト分D2とは別に、応答波形の変形に伴うシフト分D3が最小で0度から最大で90度まで発生する。これが余計なオフセットとなり、正確な深さの計算を困難にしていた。本実施形態によれば、このような余分なオフセットを除去して正確な深さ情報を得ることができる。
【0051】
また、集積回路Sに印加される複数の周波数のバイアス電圧の振幅及びデューティ比は、互いに等しく設定されるので、発熱点での発熱量をより均一にすることができ、深さ情報のバイアス電圧の周波数に対する依存性をより低減することができる。その結果、さらに正確な深さ情報を取得することができる。
【0052】
さらに、集積回路Sの全体の表面の平均温度が一定温度で安定化された上で検出された複数の周波数の電気信号に対する熱的応答を基に深さ情報が計算される。これにより、熱伝達率の変化に伴うオフセットの変動、及び集積回路Sの温度の時間的な変化に伴う位相差の誤差を低減することができるので、発熱点の位置に依存せずに高精度の深さ情報が安定して得られる。特に、赤外線の輻射強度は集積回路Sが高温であるほど大きくなるため、撮像装置18が飽和しない範囲で集積回路Sの表面の平均温度をより高温で安定化させることにより、集積回路Sの温度振幅が一定であっても検出信号の振幅を大きくしS/Nを向上させることができる。
【0053】
なお、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではない。例えば、集積回路Sに印加されるバイアス電圧の波形は、矩形波には限定されず、正弦波や三角波のように電圧が周期的に増減する他の波形に変更してもよい。
【0054】
また、バイアス電圧の最大値V1及び最小値V2も集積回路Sに種類に応じて適宜変更されてもよい。ただし、1つの集積回路Sに対して複数の周波数に変更する際の最大値V1及び最小値V2は一定に設定することが望ましい。
【0055】
また、バイアス電圧の周波数を増減させると発熱検出信号の振幅が変化するため、計測する最低周波数における振幅が計測可能範囲を超えないようにする必要がある。そこで、発熱検出信号の振幅が計測可能範囲を超えた場合に自動的に検出してエラー出力する機能を集積回路故障解析装置1に設けてもよい。
【0056】
また、集積回路Sの表面の平均温度を安定化する温度安定化部40は、以下のような構成であってもよい。
【0057】
例えば、図11及び図12に示すように、気体を放出するエアホース43に加えて、エアホース43の放出口に対向する吸入口を有し、気体を吸入するエアホース45を追加して、気体を集積回路Sの表面に沿って気体を循環可能な構成を採用してもよい。この場合、エアホース43とエアホース45とは、故障箇所Fを確実にカバーする表面上の領域A1を挟んで対抗するように配置される(図12)。このような構成の温度安定化部40によれば、集積回路Sの表面上の領域A1における気流を一定にして、集積回路Sの表面全体の温度を均一にすることができ、安定した深さ情報の検出が実現される。また、温度安定化部40からは必ずしも冷却された媒体(冷却用熱媒体)を供給する場合には限定されず、集積回路Sの表面温度を安定化することが可能であれば、加熱された媒体(加熱用熱媒体)を供給してもよい。
【0058】
また、図13に示す本発明の変形例にかかる温度安定化部40Aのように、集積回路Sの表面上に、平板状の高熱伝導板(基板)46を、オイル等の高熱伝導率の塗布剤47を介して接合し、その高熱伝導板46の表面上の両端部に2つの冷却素子(温度調整部材)48,49を搭載したような構成であってもよい。このように集積回路Sに近接配置された高熱伝導板46は、集積回路Sの表面全体を覆うような大きさ及び形状を有し、ダイヤモンド、Si、SiC等の高い熱伝導率を有し、かつ、赤外領域に対して透過性を有する材料によって構成される。2つの冷却素子48,49は、ペルチェ素子等の冷却素子であり、集積回路Sの表面近傍に配置されたサーミスタ等の温度検出素子(図示せず)を含んでおり、温度検出素子によって検出された温度値が一定になるように温度を調整する。この冷却素子48,49は、ヒータ素子等の加熱素子に置換されてもよいし、熱媒体を集積回路Sの表面に沿って循環させるような管路に置換されてもよい。このような冷却素子48,49が高熱伝導板46に近接して配置された温度安定化部40Aによれば、集積回路Sの表面全体の温度をより一層安定化させることができる。
【0059】
また、図14に示す本発明の変形例にかかる温度安定化部40Bのように、集積回路Sの表面上に所定の空隙を空けて平板状の高熱伝導板46を配置し、試料ステージ10と高熱伝導板46との間の両端部に、集積回路Sの表面上の空隙に一方向に向けてオイル等の熱媒体を供給する一対の媒体放出部50及び媒体吸入部51を設けたような構成であってもよい。このような媒体放出部50及び媒体吸入部51が高熱伝導板46に近接して配置された温度安定化部40Bによっても、集積回路Sの表面全体の温度をより一層安定化させることができる。
【符号の説明】
【0060】
1…集積回路故障解析装置、14…電圧印加部(電気信号供給部)、18…撮像装置、20…制御部、21…撮像制御部、22…ステージ制御部、23…同期制御部、30…画像処理部、31…画像記憶部、32…発熱位相取得部(検出部)、33…電圧位相取得部、34…位相遅延取得部(位相差検出部)、35…深さ情報演算部、40,40A,40B…温度安定化部、41…エアタンク、42…レギュレータ(媒体供給部)、43…エアホース(媒体供給部)、44…温度制御部(媒体供給部)、46…高熱伝導板(基板)、48,49…冷却素子(温度調整部材)、50…媒体放出部(媒体供給部、温度調整部材)、51…媒体吸入部(温度調整部材)、S…集積回路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出方法であって、
前記集積回路の表面の平均温度を安定化する第1ステップと、
前記集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得する第2ステップと、
前記集積回路に前記第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する第3ステップと、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて、前記発熱点の深さ情報を得る第4ステップと、
を備えることを特徴とする発熱点検出方法。
【請求項2】
前記第1の周波数の周期的電気信号と前記第1の検出信号との間の第1の位相差、及び前記第2の周波数の周期的電気信号と前記第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する第5ステップを更に備え、
前記第4ステップでは、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記発熱点の深さ情報を得る
ことを特徴とする請求項1記載の発熱点検出方法。
【請求項3】
前記第4ステップでは、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する前記周期的電気信号と前記検出信号との間の位相差の変化率を算出し、前記変化率から前記発熱点の深さ情報を得る
ことを特徴とする請求項2記載の発熱点検出方法。
【請求項4】
集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出装置であって、
前記集積回路に電気信号を供給する電気信号供給部と、
前記集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号、及び前記第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給するように前記電気信号供給部を制御する制御部と、
前記第1の周波数の周期的電気信号の供給に応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得するとともに、前記第2の周波数の周期的電気信号の供給に応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記発熱点の深さ情報を得る演算部と、
前記集積回路の表面の平均温度を安定化する温度安定化部と、
を備えることを特徴とする発熱点検出装置。
【請求項5】
前記第1の周波数の周期的電気信号と前記第1の検出信号との間の第1の位相差、及び前記第2の周波数の周期的電気信号と前記第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する位相差検出部を更に備え、
前記演算部は、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記発熱点の深さ情報を得る、
ことを特徴とする請求項4記載の発熱点検出装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する前記周期的電気信号と前記検出信号との間の位相差の変化率を算出し、前記変化率から前記発熱点の深さ情報を得る、
ことを特徴とする請求項5記載の発熱点検出装置。
【請求項7】
前記温度安定化部は、前記集積回路の表面の平均温度が一定になるように媒体を供給する媒体供給部を有する、
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の発熱点検出装置。
【請求項8】
前記温度安定化部は、赤外領域に対して透過性を有し、前記集積回路に近接させて配置された基板と、
前記基板に近接させて配置された温度調整部材とを有する、
ことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の発熱点検出装置。
【請求項1】
集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出方法であって、
前記集積回路の表面の平均温度を安定化する第1ステップと、
前記集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得する第2ステップと、
前記集積回路に前記第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給し、それに応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する第3ステップと、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて、前記発熱点の深さ情報を得る第4ステップと、
を備えることを特徴とする発熱点検出方法。
【請求項2】
前記第1の周波数の周期的電気信号と前記第1の検出信号との間の第1の位相差、及び前記第2の周波数の周期的電気信号と前記第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する第5ステップを更に備え、
前記第4ステップでは、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記発熱点の深さ情報を得る
ことを特徴とする請求項1記載の発熱点検出方法。
【請求項3】
前記第4ステップでは、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する前記周期的電気信号と前記検出信号との間の位相差の変化率を算出し、前記変化率から前記発熱点の深さ情報を得る
ことを特徴とする請求項2記載の発熱点検出方法。
【請求項4】
集積回路の発熱点の深さを検出する発熱点検出装置であって、
前記集積回路に電気信号を供給する電気信号供給部と、
前記集積回路に第1の周波数で増減する周期的電気信号、及び前記第1の周波数と異なる第2の周波数で増減する周期的電気信号を供給するように前記電気信号供給部を制御する制御部と、
前記第1の周波数の周期的電気信号の供給に応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第1の検出信号を取得するとともに、前記第2の周波数の周期的電気信号の供給に応じて前記集積回路から検出される発熱量の変化を示す第2の検出信号を取得する検出部と、
前記第1及び第2の検出信号に基づいて前記発熱点の深さ情報を得る演算部と、
前記集積回路の表面の平均温度を安定化する温度安定化部と、
を備えることを特徴とする発熱点検出装置。
【請求項5】
前記第1の周波数の周期的電気信号と前記第1の検出信号との間の第1の位相差、及び前記第2の周波数の周期的電気信号と前記第2の検出信号との間の第2の位相差を検出する位相差検出部を更に備え、
前記演算部は、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記発熱点の深さ情報を得る、
ことを特徴とする請求項4記載の発熱点検出装置。
【請求項6】
前記演算部は、前記第1及び第2の位相差に基づいて、前記周期的電気信号の周波数から算出される変数に対する前記周期的電気信号と前記検出信号との間の位相差の変化率を算出し、前記変化率から前記発熱点の深さ情報を得る、
ことを特徴とする請求項5記載の発熱点検出装置。
【請求項7】
前記温度安定化部は、前記集積回路の表面の平均温度が一定になるように媒体を供給する媒体供給部を有する、
ことを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項に記載の発熱点検出装置。
【請求項8】
前記温度安定化部は、赤外領域に対して透過性を有し、前記集積回路に近接させて配置された基板と、
前記基板に近接させて配置された温度調整部材とを有する、
ことを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載の発熱点検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−101005(P2013−101005A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−243891(P2011−243891)
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月7日(2011.11.7)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]