説明

発電型ホイール

【課題】タイヤを保持するホイール内部に発電機能を備え、自動車の走行中に発電させた電気をもって走行エネルギーとしての利用や電力供給が可能な発電型ホイールを提供する。
【解決手段】車軸1が回転するとホイール33、保護カバー9及び樹脂モールド部13が回転する。従って、永久磁石11も回転する。この永久磁石11には径方向に磁束が発生している。この永久磁石11と対峙する外側交差導体17の脚部17b及び内側交差導体31の脚部31bは静止しているので、回転する磁束が外側交差導体17の脚部17b及び内側交差導体31の脚部31bの各導体を横切ることになる。この外側交差導体17の脚部17bと内側交差導体31の脚部31bとで生じた誘導電圧を基に電力をリード線29a、29bから得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は発電型ホイールに係わり、特にタイヤを保持するホイール内部に発電機能を備え、自動車の走行中に発電させた電気をもって走行エネルギーとしての利用や電力供給が可能な発電型ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車はエンジン若しくは電動機等の駆動源によりシャフトが回転駆動されることで走行する。エンジンにはガソリンや水素等の燃料が必要であるし、電動機には駆動のための電気が必要である(特許文献1参照)。
ガソリン等の燃料や電気は一定距離走行することで消費される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−123862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の自動車では、ガソリン等の燃料や電気は消費される一方なので、補給のための間隔は短い。そして、走行を維持するには再び外部より燃料や電気の補給をするしかなかった。
【0005】
また、災害時等で電気の供給が途絶えた場合には、従来は自家発電設備が必要であったり、発電機を荷台に搭載した専用の車両を手配し、発電機からの給電が必要であった。しかしながら、これらの発電設備や車両は高価であるし一般的に普及しているものではなく、災害時等を考慮しての設備導入は十分とは言えない。
【0006】
本発明はこのような従来の課題に鑑みてなされたもので、タイヤを保持するホイール内部に発電機能を備え、自動車の走行中に発電させた電気をもって走行エネルギーとしての利用や電力供給が可能な発電型ホイールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため本発明(請求項1)は、車軸の回転駆動に伴い回転されるホイールと、該ホイールにより保持されたタイヤと、前記ホイール内部で磁束を発生させる磁束発生手段と、該磁束発生手段で発生された磁束に対して交差されるコイルを有する電気ユニットと、該電気ユニットのコイルに生じた誘導電圧を抽出する抽出手段とを備えて構成した。
【0008】
磁束発生手段で発生された磁束に対して、コイルを車軸の回転駆動に伴い生ずる任意の速度で交差させることで、誘導起電力を得ることができる。出力された電力はバッテリーに蓄積したり、車軸を駆動するモータの動力として利用可能である。車軸の回転により発電された電力を帰還させつつ走行できることになるので従来よりも大幅に走行距離を延ばすことができる。誘起される起電力の大きさも大きいので高出力を得ることができる。
また、ジャッキ等でタイヤを浮かせた状態で車軸を回転駆動させれば、非常電源として車両外に供給できる。家庭での発電装置として利用できる他、自動車を移動させれば、どこの場所でも非常時の発電装置として利用することができる。
【0009】
また、本発明(請求項2)は、前記磁束発生手段が、周状に隣接する磁極が互いに異なる極性となるように配置された複数の永久磁石を有し、該永久磁石により前記車軸の径方向に対し磁束が発生され、前記電気ユニットが、該磁束に対して交差される複数の導体と、該導体に生じた起電力により電流が流されるコイルとを有することを特徴とする。
【0010】
周状に複数の永久磁石を配設し、車軸の径方向に対し磁束が発生するように構成し、その磁束を導体が交差するようにしたので、大きな出力を得ることができる。
【0011】
更に、本発明(請求項3)は、前記コイルが、前記車軸回りに捲回されたことを特徴とする。
【0012】
車軸回りにコイルを捲回することで捲回の直径も大きく、巻き数も多く取れるため出力が大きくできる。
【0013】
更に、本発明(請求項4)は、前記コイルが整流子と接続され、該整流子より電気を抽出するブラシを備えて構成した。
【0014】
整流子とブラシとの構成如何で低電圧で大電流や高電圧で小電流等の出力を容易に得ることができる。
【0015】
更に、本発明(請求項5)は、前記コイルと前記磁束とが互いに逆向きに回転されることを特徴とする。
【0016】
コイルと磁束のいずれか一方を静止させたときに比べ、コイルと磁束間の相対速度が大きく取れるので一層大きな出力を得ることができる。
【0017】
更に、本発明(請求項6)は、前記抽出手段で抽出した電力を前記車軸を回転駆動させるモータの駆動電源として、又は、車外への供給電力として利用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明(請求項1)によれば、ホイール内部で磁束を発生させる磁束発生手段と、磁束発生手段で発生された磁束に対して交差されるコイルを有する電気ユニットとを備えて構成したので、磁束発生手段で発生された磁束に対してコイルを車軸の回転駆動に伴い生ずる任意の速度で交差させ誘導起電力を得ることができる。出力された電力はバッテリーに蓄積されたり、車軸を駆動するモータの動力として利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態である発電型ホイールの縦断面図
【図2】保護カバー部分の縦断面図
【図3】図2中のA方向矢視図
【図4】電気ユニットの側面図
【図5】図4中のB方向矢視図
【図6】本発明の第2実施形態である発電型ホイールの縦断面図
【図7】保護カバー及び電気ユニット部分の正面図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の第1実施形態である発電型ホイールの縦断面図を図1に示す。図1において、自動車の車軸1の周囲にはブレーキキャリバー3を保持するブレーキキャリバー保持部5が図示しない車体に対して固定されている。ブレーキキャリバー3は車軸1に固定されたディスクブレーキ7の回転を停止させるようになっている。
【0021】
車軸1には有底円筒状の保護カバー9が固着されている。図2にはこの保護カバー9部分の縦断面図を示し、図3には、図2中のA方向矢視図を示す。図1〜図3において、保護カバー9の車軸1回りには底面9aより内筒部9bが突設され、外周には円筒状胴部9cが形成されている。この内筒部9bは車軸1に対して固着されるようになっている。
【0022】
内筒部9bの周囲には周状に8個の永久磁石11が均等間隔で配設されている。そして、この永久磁石11は樹脂モールド部13内に埋設されている。互いに180度隔てた位置に配置された永久磁石11同士は同極にて構成されている。永久磁石11は隣接する磁極同士が異なる極性であり、径方向に向けて磁束が生じるようになっている。
【0023】
円筒状胴部9cと樹脂モールド部13の間には空洞14が形成されている。 ブレーキキャリバー保持部5からは断面コの字状の電気ユニット保持部材15が延長されている。そして、この電気ユニット保持部材15の先端には電気ユニット10の外側交差導体17が固着されている。
【0024】
電気ユニット10の側面図を図4に、図4中のB方向矢視図を図5に示す。外側交差導体17は、径方向には頭部17aの中央部においてクロスされ、周縁部にて直角に折れ曲げられ軸方向に所定長延びる脚部17bを有するように構成されている。外側交差導体17の脚部17bは、4本で、周状に沿って多少湾曲されてはいるが、側方から見たときに長方形にて形成されている。
【0025】
外側交差導体17の中心部には貫通穴19が形成されている。そして、この貫通穴19には内筒21が配設されている。この内筒21の内側には車軸1が貫通されるようになっている。
外側交差導体17の内部にはコイルユニット20が配設されている。
【0026】
また、コイルユニット20の右側側部には内側交差導体31が配設されている。この内側交差導体31の直径は図5に示すように外側交差導体17の直径と同一である。内側交差導体31は、径方向には頭部31aの中央部においてクロスされ、周縁部にて直角に折れ曲げられ軸方向に所定長延びる脚部31bを有するように構成されている。
【0027】
内側交差導体31の脚部31bは、4本で、周状に沿って多少湾曲されてはいるが、側方から見たときに長方形にて形成されている。外側交差導体17の脚部17bと内側交差導体31の脚部31bとは回転方向に45度隔てて配設されている。
【0028】
コイルユニット20は、絶縁材からなる円板23と円板25との間にコイル27が捲回された状態で固定されている。コイル27は内筒21回りに同方向に連続して捲回されている。そして、電気ユニット10からはリード線29a、29bが外部に出されている。
【0029】
保護カバー9の空洞14には電気ユニット10の外側交差導体17の脚部17b及び内側交差導体31の脚部31bが挿入されている。そして、電気ユニット10が静止している一方で、保護カバー9及び樹脂モールド部13側が車軸1の回転と共に回転するようになっている。
保護カバー9の底面9aにはホイール33が複数本のボルト35により止められている。
【0030】
次に、本発明の第1実施形態の動作を説明する。
車軸1が回転するとホイール33、保護カバー9及び樹脂モールド部13が回転する。従って、永久磁石11も回転する。この永久磁石11には径方向に磁束が発生している。磁束は回転方向に45度隔てる毎に極性方向が異なる。
【0031】
一方、この永久磁石11と対峙する外側交差導体17の脚部17b及び内側交差導体31の脚部31bは静止しているので、回転する磁束が外側交差導体17の脚部17b及び内側交差導体31の脚部31bの各導体を横切ることになる。
【0032】
外側交差導体17の脚部17bは180度ずつ隔てられているので、同方向の誘導起電力を生ずる。一方、外側交差導体17の脚部17bと内側交差導体31の脚部31bとは45度ずつ隔てられているので、内側交差導体31の脚部31bで生ずる誘導起電力は外側交差導体17の脚部17bで生じた誘導起電力とは異方向となる。
【0033】
この外側交差導体17の脚部17bと内側交差導体31の脚部31bとで生じた起電力はコイル27でエネルギーとして蓄積された形でリード線29a、29bから出力される。
【0034】
ここで出力された電力は図示しないバッテリーに蓄積されたり、車軸1を駆動するモータの動力として利用可能である。例えば、エンジン駆動の補助駆動電源として利用可能である。このため、車軸1の回転により発電された電力を帰還させつつ走行できることになるので従来よりも大幅に走行距離を延ばすことができる。誘起される起電力の大きさも大きいので高出力を得ることができる。
【0035】
また、ジャッキ等でタイヤを浮かせた状態で車軸1を回転駆動させれば、非常電源として外部に供給できる。家庭での発電装置として利用できる他、自動車を移動させれば、どこの場所でも非常時の発電装置として利用することができる。
【0036】
なお、本実施形態では永久磁石11側を回転させるとして説明したが、コイル27側を回転させるようにしてもよい。
【0037】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の第2実施形態である発電型ホイールの縦断面図を図6に示す。なお、図1と同一要素のものについては同一符号を付して説明は省略する。
【0038】
図6において、車軸1には有底円筒状の保護カバー41が固着されている。保護カバー41の車軸1回りには底面41aより歯車部41bが突設され、外周には円筒状胴部41cが形成されている。この歯車部41bの内側は車軸1に対して固着されるようになっている。
【0039】
歯車部41bの外周には歯41dが刻設されている。この円筒状胴部41cには周状に8個の永久磁石51が均等間隔で埋設されている。互いに180度隔てた位置に配置された永久磁石51同士は同極にて構成されている。永久磁石51は隣接する磁極同士が異なる極性であり、径方向に向けて磁束が生じるようになっている。
【0040】
この保護カバー41の径方向内側には電気ユニット50が配設されている。保護カバー41及び電気ユニット50部分の正面図を図7に示す。電気ユニット50は積層鉄心で形成され、内周には歯50aが刻設されている。一方、電気ユニット50の外周には複数のスロット50bが刻設され、このスロット50bの内部にはコイル53が埋設されている。
【0041】
歯41dと歯50aの間には周状に複数の小歯車55が配設されている。小歯車55の歯と歯41d、小歯車55の歯と歯50aとは互いに噛合されている。
コイル53の端部は車軸1回りに周状に配設された整流子片57に接続されている。
【0042】
電気ユニット保持部材65の先端には複数個のブラシ61が周状に取り付けられ、このブラシ61は整流子片57に対して接触するようになっている。電気ユニット保持部材65の先端からはまた支軸63が車軸1の軸方向に向けて突設されており、この支軸63は小歯車55を軸支するようになっている。
【0043】
次に、本発明の第2実施形態の動作を説明する。
車軸1が回転すると保護カバー41の歯車部41b及び円筒状胴部41cが同方向に回転する。歯車部41bの回転は小歯車55に伝えられ、この小歯車55を介して更に電気ユニット50に伝えられる。
【0044】
このとき、電気ユニット50の回転方向は歯車部41bの回転方向とは逆になる。このため、円筒状胴部41cの回転方向とも逆になり電気ユニット50が静止しているときに比べて相対速度は格段に大きくなる。
【0045】
コイル53は永久磁石51の磁束と高速で交差する。このときに生じた誘導起電力は整流子片57及びブラシ61を介して外部に出力される。ここで出力された電力は第1実施形態と同様の効果を有する。誘起される起電力の大きさも高速度の分一層大きいので更なる高出力を得ることができる。
【0046】
なお、各実施形態では永久磁石を使用するとして説明したが、分巻発電機、直巻発電機、複巻発電機としてコイルで構成されてもよい。また、永久磁石はコイルの外側に配設されてもよいし、コイルの内側に配設されてもよい。磁極の数も8個に限定するものではなく、出力電力に応じて変更可能である。
【符号の説明】
【0047】
1 車軸
3 ブレーキキャリバー
5 ブレーキキャリバー保持部
7 ディスクブレーキ
9、41 保護カバー
10、50 電気ユニット
11、51 永久磁石
13 樹脂モールド部
14 空洞
15、65 電気ユニット保持部材
17 外側交差導体
19 貫通穴
20 コイルユニット
21 内筒
23、25 円板
27、53 コイル
31 内側交差導体
33 ホイール
55 小歯車
57 整流子片
61 ブラシ
63 支軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車軸の回転駆動に伴い回転されるホイールと、
該ホイールにより保持されたタイヤと、
前記ホイール内部で磁束を発生させる磁束発生手段と、
該磁束発生手段で発生された磁束に対して交差されるコイルを有する電気ユニットと、
該電気ユニットのコイルに生じた誘導電圧を抽出する抽出手段とを備えたことを特徴とする発電型ホイール。
【請求項2】
前記磁束発生手段が、
周状に隣接する磁極が互いに異なる極性となるように配置された複数の永久磁石を有し、
該永久磁石により前記車軸の径方向に対し磁束が発生され、
前記電気ユニットが、
該磁束に対して交差される複数の導体と、
該導体に生じた起電力により電流が流されるコイルとを有することを特徴とする請求項1記載の発電型ホイール。
【請求項3】
前記コイルが、前記車軸回りに捲回されたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の発電型ホイール。
【請求項4】
前記コイルが整流子と接続され、
該整流子より電気を抽出するブラシを備えたことを特徴とする請求項1、2又は3記載の発電型ホイール。
【請求項5】
前記コイルと前記磁束とが互いに逆向きに回転されることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の発電型ホイール。
【請求項6】
前記抽出手段で抽出した電力を前記車軸を回転駆動させるモータの駆動電源として、又は、車外への供給電力として利用することを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の発電型ホイール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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