説明

発電方法

【課題】液体燃料のクロスオーバーを防ぐことができる発電方法を提供する。
【解決手段】燃料を酸化する負極11と酸素を還元する正極とを電解質層を介して対向させる。負極11に隣接して、液体燃料を貯蔵する液体燃料貯蔵部を設け、その内部に、液体燃料を含浸して保持する液体燃料保持部を設ける。液体燃料保持部には、負極11に燃料を供給する供給部15aを、負極11と離間して設ける。液体燃料貯蔵部から液体燃料を供給部15aに供給し、供給部15aから蒸発した燃料蒸気を負極11に供給する。液体燃料を蒸気として負極11に供給することにより、液体燃料のクロスオーバーが防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解質層を介して対向する正極と負極とを有し、正極により酸素を還元し負極により燃料を酸化する発電デバイスに係り、特に、燃料に液体燃料を用いる発電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器の分野においては、技術の進歩により、携帯用小型AV(オーディオ・ビジュアル)機器、携帯電話あるいは携帯情報端末に代表される小型の携帯用電子機器が急速に発達しつつある。それに伴い、それらに使用するポータブル電源として、高エネルギー密度を有し小型で長時間の使用が可能な発電デバイスの開発が求められている。
【0003】
このような発電デバイスとしては現在のところ二次電池が主流であり、その研究開発が活発に行われている。最近では、ニッケル水素二次電池の急速な高性能化、またはリチウムイオン二次電池の実用化などが進んでおり、ポータブル電源としてある程度の性能が得られきている。しかし、用いられる携帯用電子機器の種類によっては、未だ十分な連続使用時間を保証する程度までには至っていないのが現実である。
【0004】
そこで、二次電池に代わる他の発電デバイスの開発も期待されている。例えば、高エネルギー密度を有する他の発電デバイスとしては、空気電池あるいは燃料電池などが挙げられる。このうち空気電池は、正極活物質として空気中の酸素を用い、酸素と負極を構成する金属とが電解質膜を介して反応することにより発電するものである。よって、空気電池は、正極活物質の充填スペースが不要であると共に、電池全体としてエネルギー密度が非常に高いという特徴を有している。しかし、その一方で、空気電池は、アルカリ性の電解質が空気中の二酸化炭素と反応して経時劣化を生じてしまうために自己放電率が大きいという問題がある。また、電池が消耗した場合に通常の二次電池のように充電ができないので、携帯用電子機器の電源には適していないという問題もある。
【0005】
また、燃料電池は、負極に供給された燃料が酸化されて電子とプロトンに分離し、そのプロトンが正極まで移動して正極に供給された酸素と反応することにより発電するものである。このような燃料電池は、物質の燃焼エネルギーを直接電気エネルギーに変換することから、一般の火力発電などに比べてエネルギー変換効率が非常に高く、発電の際に生成するものが水だけで低公害性であるという特徴を有している。また、空気電池と異なり、燃料および酸素の供給さえ行えば継続して使用することができるという特徴も有している。そのため、古くから燃料電池は大規模発電用として開発研究がなされてきている。
【0006】
更に、近年においては、高分子固体電解質層を用いた燃料電池が開発され、室温から90℃程度の比較的低温で動作が可能となってきている。それにより、燃料電池についても、大規模発電用のみでなく、自動車の駆動用電源への応用など、徐々に小型のシステムへの応用が考えられている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、従来の燃料電池では、酸素供給機構により強制的に流通させて正極に酸素を供給すると共に、燃料供給機構により強制的に流通させて負極に燃料を供給するようにしていたので、ポータブル電源として用いるには大きさが大き過ぎるという問題があった。そこで、小型化を図るための一手段として、酸素および燃料を強制的に流通させる酸素供給機構および燃料供給機構を除去するということが考えられる。これにより、燃料電池の出力密度は従来に比べて低下するものの、現在の携帯用電子機器の消費電力は小さくなってきていることを考慮すれば、十分に対応可能であると思われる。
【0008】
その際、正極に供給する酸素には外気を用いるとして、負極に供給する燃料およびその貯蔵方法には次のようなものが考えられる。例えば、燃料に水素を用い、小型の水素ガスタンクあるいは水素を吸蔵できる金属合金をパッケージ化したものにより水素を貯蔵する方法、または、燃料にメタノール水溶液などの液体燃料を用い、小型の液体燃料タンクにより液体燃料を貯蔵する方法がある。これらのうち、排出ガスの完全クリーン性または出力特性の面からは水素を用いる方が好ましく、その貯蔵方法としては取り扱いが比較的楽であり、水素ガスよりも高密度に貯蔵することができる水素吸蔵合金を用いる方が好ましい。しかし、燃料の再充填における手間の面からは液体燃料を用いることも有効である。更に、液体燃料には水溶液が用いられることが多いので、電解質層の水分管理および使用条件の面からは液体燃料の方が有利である。
【0009】
しかしながら、メタノールなどの液体燃料を用いると、液体燃料が電解質層を拡散(クロスオーバー)してしまい、かなりの量が正極側に到達して電池電圧が低下してしまうという問題がある。また、携帯用電子機器は必ずしも上下が定まった状態では使用されないので、液体燃料タンクに貯蔵した液体燃料が反応などにより減少し、液面が低下して負極に液体燃料が接触しなくなってしまう場合があり、安定して負極に燃料を供給することができないという問題もある。
【0010】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、液体燃料のクロスオーバーを防ぐことができると共に、負極に燃料を安定して供給することができる発電デバイスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による発電デバイスは、酸素を還元する正極と、燃料を酸化する負極と、この負極と正極との間に設けられた電解質層と、液体燃料を含浸して保持し負極に燃料を供給する液体燃料含浸部とを備えたものである。
【0012】
本発明による発電デバイスでは、液体燃料含浸部に液体燃料が含浸して保持されることにより、負極に燃料が供給される。負極では供給された燃料を酸化する。一方、正極では酸素を還元する。これにより発電する。
【発明の効果】
【0013】
以上説明したように請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の発電デバイスによれば、液体燃料を含浸して保持する液体燃料含浸部を備えるようにしたので、液体燃料を含浸して保持することにより適度の液体燃料を負極に供給することができると共に、負極への液体燃料の供給量を抑制し、液体燃料が負極に過剰に供給されて電解質層をクロスオーバーしてしまうことを防止することができる。よって、電池電圧の低下を改善することができるという効果を奏する。
【0014】
特に、請求項3記載の発電デバイスによれば、負極との対向面に凹部または孔を有するようにしたので、液体燃料含浸部を介して負極に液体燃料を直接供給することができると共に、発生した反応ガスを凹部または孔を介して容易に排出することができる。よって、高出力を得ることができるという効果を奏する。
【0015】
また、請求項4記載の発電デバイスによれば、負極と液体燃料含浸部とを離間して設けるようにしたので、液体燃料を蒸気として負極に供給することができる。よって、液体燃料のクロスオーバーをより有効に防止することができるという効果を奏する。
【0016】
更に、請求項5または請求項6に記載の発電デバイスによれば、液体燃料貯蔵部を備えるようにしたので、液体燃料を液体燃料貯蔵部に補充することにより、繰り返し使用することができる。また、液体燃料を用いているので、短時間で容易に燃料を補充することができ、高い利便性を有するという効果を奏する。
【0017】
加えて、請求項6記載の発電デバイスによれば、液体燃料含浸部は液体燃料を補給する延長部を有するようにしたので、液体燃料貯蔵部の液体燃料の量が少なくなり、発電デバイスの上下位置関係が変動しても、供給部に液体燃料を補給することができる。よって、安定した発電を得ることができる。また、自然拡散などにより液体燃料を負極に供給することができるので、負極に強制的に燃料を供給するための機構を排除することができる。よって、装置を小型化することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る発電デバイスの断面構造を表すものである。この発電デバイスは、例えば、負極11と正極12とが電解質層13を介して対向して設けられている。
【0020】
負極11は燃料を酸化して燃料から電子とプロトンとを取り出すものであり、例えば、電解質層13の側から順に触媒層11aとガス透過層11bとが積層された構造を有している。触媒層11aは、例えば、触媒を含む炭素粉末により構成されている。触媒には、例えば、白金(Pt)の微粒子、または鉄(Fe),ニッケル(Ni),コバルト(Co)あるいはルテニウム(Ru)などの遷移金属と白金との合金あるいは酸化物などの微粒子が用いられる。但し、触媒をルテニウムと白金との合金により構成するようにすれば、一酸化炭素(CO)の吸着による触媒の不活性化を防止することができるので好ましい。また、触媒層11aは、後述する電解質層13に用いられる樹脂の微粒子を含む場合もある。発生させたプロトンの移動を容易とするためである。ガス透過層11bは、例えば、多孔質の炭素材料よりなる薄膜、具体的にはカーボンペーパーなどにより構成されている。なお、負極11の端部には負極端子11cが配設されている。
【0021】
正極12は酸素を還元して発生させた電子と負極11において発生したプロトンとを反応させて水を生成するものであり、例えば、負極11と同様の構成を有している。すなわち、電解質層13の側から順に触媒を含む炭素粉末よりなる触媒層12aと多孔質の炭素材料よりなるガス透過層12bとが積層された構造を有している。触媒層12aに用いられる触媒は負極11と同様であり、触媒層12aが電解質層13に用いられる樹脂の微粒子を含む場合のあることも負極11と同様である。なお、正極12では、触媒層12aが例えば粉末状のポリテトラフルオロエチレンを含む場合や、またはガス透過層の触媒層と反対側に例えばポリテトラフルオロエチレンよりなる図示しない被覆層を含む場合もある。これは、正極12において発生する水の蒸発を促進させるためである。また、正極12の端部には負極11と同様に図示しない正極端子が配設されている。
【0022】
電解質層13は、負極11において発生したプロトンを正極12に輸送するためのものであり、電子伝導性を持たず、プロトンを輸送することが可能な材料により構成されている。例えば、ポリパーフルオロスルホン酸系の樹脂膜、具体的には、デュポン社製のナフィオン膜,旭硝子社製のフレミオン膜あるいは旭化成工業社製のアシプレックス膜などにより構成されている。なお、ポリパーフルオロスルホン酸系の樹脂膜以外にも、トリフルオロスチレン誘導体の共重合膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、あるいは芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸膜などにより電解質層13を構成するようにしてもよい。
【0023】
負極11の電解質層13と反対側には、例えば、内部に形成された収納空間14aに液体燃料Lを貯蔵する液体燃料貯蔵部14が負極11に隣接して設けられている。この液体燃料貯蔵部14には、例えば、液体燃料Lを収納空間14aに補充するための開口14bが設けられており、この開口14bには開口14bを閉鎖する蓋体14cが着脱可能に配設されている。液体燃料貯蔵部14および蓋体14cは、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリスチレン,ポリプロピレンあるいはポリカーボネートなどの硬質のプラスチックによりそれぞれ構成されている。また、ステンレス鋼やニッケル金属などの耐食性に優れた金属材料によりそれぞれ構成される場合もある。なお、金属材料により液体燃料貯蔵部14を構成する場合には、負極11と正極12とが短絡しないように液体燃料貯蔵部14を配設するか、または短絡を防止するための図示しない絶縁部材を挿入する必要がある。
【0024】
液体燃料貯蔵部14の内部(すなわち収納空間14aの一部)には、液体燃料Lを含浸して保持する液体燃料含浸部15が設けられている。この液体燃料含浸部15は、負極11に直接的に接触して対向して設けられ負極11に燃料を供給する供給部15aと、液体燃料貯蔵部14の内壁に沿って供給部15aから負極11の反対側まで延長された延長部15bとを有している。供給部15aは、液体燃料Lを含浸して保持することにより適度の液体燃料Lを負極11に供給すると共に、負極11への液体燃料Lの供給量を抑制し、液体燃料Lが負極11に過剰に供給されて電解質層13をクロスオーバーしてしまうことを防止するものである。また、延長部15bは、液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに収納された液体燃料Lの量が少なくなり、発電デバイスの上下位置関係が変動しても、毛管現象などにより供給部15aに対して液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに収納された液体燃料Lを補給するものである。
【0025】
液体燃料含浸部15は、液体燃料を含浸できる材料、例えば、電解質層13と同様の材料により構成されている。すなわち、ポリパーフルオロスルホン酸系の樹脂膜、トリフルオロスチレン誘導体の共重合膜、リン酸を含浸させたポリベンズイミダゾール膜、あるいは芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸膜などにより構成されている。また、これら以外にも、アクリル酸系の樹脂などの各種吸水性ポリマーにより構成してもよく、スポンジまたは繊維の集合体など液体の毛管現象を利用して液体を保持することができる材料により構成するようにしてもよい。
【0026】
なお、液体燃料Lとしては、例えば、メタノール水溶液,エタノール水溶液,プロパノール水溶液,ギ酸水溶液,ギ酸ナトリウム水溶液,酢酸水溶液,ホルムアルデヒド水溶液あるいはエチレングリコール水溶液などの水素を含む有機系の水溶液が用いられる。中でも、メタノール水溶液は、炭素数が1で反応の際に発生するのが炭酸ガスであると共に、産業廃棄物から比較的容易に製造することができるので好ましい。
【0027】
一方、正極12の電解質層13と反対側には、例えば、間隙を介して正極12に外気を自然拡散により供給する通気構造体16が設けられている。この通気構造体16は、例えば図2に拡大して示したように、外気が通過する開口17aを有する第1の保護部17と、この開口17aに対応して第1の保護部17と正極12との間に設けられると共に外気が通過する開口18aを有する第2の保護部18とを有している。
【0028】
このうち第1の保護部17は異物が正極12に接触することを一次的に防止するためのものであり、第2の保護部18は開口17aを介して第1の保護部17から正極12の側に侵入してきた異物が直線的に直接正極12に達することを防止するためのものである。すなわち、本実施の形態では、第1の保護部17と第2の保護部18とから保護部が構成されており、それにより異物が直線的に直接正極12に達することを防止しつつ、開口17a,18aを介して外気を正極12に供給するようになっている。
【0029】
なお、第1の保護部17は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン,ポリスチレン,ポリプロピレンあるいはポリカーボネートなどの絶縁材料により構成されている。外部の異物との電気的接触により電池性能が低下することを防止するためである。また、第1の保護部17は、正極12の電解質層13と反対側の表面全体を覆うように配設されており、周縁部において固定されている。開口17aは、例えば、一方向に帯状に延長された形状を有しており、平行に複数設けられている。
【0030】
また、第2の保護部18は、例えば、開口18aが開口17aの形成位置と重ならないように設けられた閉鎖部材18bと、この閉鎖部材を支持する支持部材18cとにより構成されている。閉鎖部材18bは、例えば、第1の保護部材17と同様の絶縁材料により構成されている。第1の保護部17と同様に、外部の異物との電気的接触により電池性能が低下することを防止するためである。支持部材18cは、例えば、開口17aに対応して設けられており、正極12に対して配設されている。これにより、図2に矢印で示したように、開口17aを介して侵入してきた異物が直線的に直接正極12に達することを有効に防止できるようになっている。
【0031】
また、この支持部材18cは、例えば、導電材料により構成されると共に、一端部が図示しない正極端子まで延長されており、集電体としての機能も兼ね備えるようになっている。支持部材18cを構成する導電材料としては、例えば、ステンレススティールあるいはニッケル金属などの比較的腐食しにくい金属を用いることが好ましい。正極12において水が発生するので腐食しやすいからである。
【0032】
このような構成を有する発電デバイスは次のように作用する。
【0033】
この発電デバイスでは、液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに収納された液体燃料Lが液体燃料含浸部15の延長部15bを介して負極11の近傍の供給部15aまで補給され、負極11に供給される。これにより、液体燃料Lの負極11への過剰な供給が抑制され、液体燃料Lのクロスオーバーが防止される。また、液体燃料Lの供給により、負極11では、燃料が酸化されて電子とプロトンとが取り出され、炭酸ガスなどの反応ガスが発生する。負極11において発生したプロトンは、電解質層13を介して正極12に移動する。反応ガスは液体燃料含浸部15を通過して液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに蓄積され、液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに液体燃料Lを補充する際に、開口14bから外部に取り出される。
【0034】
一方、正極12には通気構造体16の間隙を介して自然拡散により外気が供給される。正極12では、外気中に含まれる酸素が還元されて発生した電子が負極11から移動してきたプロトンと反応して水が生成する。これにより、負極11と正極12との間に電位差が生じ発電する。その際、正極12において発生した水は、自然蒸発により通気構造体16の間隙を介して外部に除去される。また、正極12において発生した電荷は集電体である支持部材18cにより集電される。
【0035】
このように本実施の形態に係る発電デバイスによれば、液体燃料Lを含浸して保持する液体燃料含浸部15を備えるようにしたので、液体燃料Lを含浸して保持することにより適度の液体燃料Lを負極11に供給することができると共に、負極11への液体燃料Lの供給量を抑制し、液体燃料Lが負極11に過剰に供給されて電解質層13をクロスオーバーしてしまうことを防止することができる。よって、電池電圧の低下を改善することができる。
【0036】
また、液体燃料貯蔵部14の内壁に沿って供給部15aから負極11の反対側まで延長された延長部15bを有しているので、液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに収納された液体燃料Lの量が少なくなり、発電デバイスの上下位置関係が変動しても、延長部15bを介して毛管現象などにより供給部15aに液体燃料Lを補給することができる。よって、液体燃料貯蔵部14における液体燃料Lの量および発電デバイスの用いられ方に関係なく、安定した発電を得ることができる。
【0037】
更に、液体燃料含浸部15を介して液体燃料貯蔵部14に貯蔵された液体燃料Lを負極11に供給するようにしたので、自然拡散などにより液体燃料Lを負極11に供給することができ、負極11に強制的に燃料を供給するための機構を排除することができる。よって、装置を小型化することができる。
【0038】
加えて、液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに開口14bを介して液体燃料Lを補充できるようにしたので、液体燃料Lを繰り返し補充することにより繰り返し使用することができると共に、液体燃料Lを用いているので、燃料の補充も容易に短時間で行うことができる。すなわち、高い利便性を有している。
【0039】
更にまた、液体燃料貯蔵部14,液体燃料含浸部15,負極11,電解質層13,正極12および通気構造体16が積層された単純な構成を有しているので、各構成要素を容易に分離することができ、液体燃料貯蔵部14または液体燃料含浸部15などを容易に再利用することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
図3は本発明の第2の実施の形態に係る発電デバイスの断面構造の一部を拡大して表すものである。この発電デバイスは、液体燃料含浸部25の供給部25aの構成が異なることを除き、第1の実施の形態に係る発電デバイスと同一の構成,作用および効果を有している。よって、ここでは、同一の構成要素には同一の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0041】
供給部25aは、負極11に直接的に接触する複数の凸部25cと、負極11との直接的な接触を回避する複数の凹部25dとが負極11との対向面にそれぞれ形成されたことを除き、第1の実施の形態の供給部15aと同一の構成を有している。これにより、この供給部25aは、各凸部25cにおいて液体燃料Lを負極11に直接供給すると共に、各凹部25dにおいて液体燃料Lから蒸発した蒸気を負極11に供給することにより燃料を供給するようになっている。
【0042】
このような構成を有する発電デバイスでは、液体燃料Lが液体燃料含浸部25の延長部15bを介して供給部25aに補給され、各凸部25cを介して負極11に直接供給されると共に、各凹部25dにおいて蒸発し蒸気となって負極11に供給される。すなわち、液体燃料Lの一部を蒸気として負極11に供給することにより、液体燃料Lのクロスオーバーがより防止される。また、反応により発生した反応ガスは、負極11と液体燃料含浸部25の各凹部25dとの間の各空間25eが抜け道となり、各空間25eを介して液体燃料含浸部25を通過し、液体燃料貯蔵部14の収納空間14aに蓄積される。すなわち、反応ガスの排出が容易となっている。
【0043】
このように本実施の形態に係る発電デバイスによれば、液体燃料含浸部25の負極11との対向面に複数の凸部25cと複数の凹部25dとを有するようにしたので、液体燃料Lの一部を各凹部25dにおいて蒸気とし負極11に供給することができる。よって、第1の実施の形態に比べて、液体燃料Lのクロスオーバーをより防止することができる。また、各凹部25dと負極11との間の各空間25eが反応ガスの抜け道となるので、反応ガスを容易に排出することができる。よって、第1の実施の形態に比べて高出力を得ることができる。
【0044】
(第3の実施の形態)
図4は本発明の第3の実施の形態に係る発電デバイスの断面構造の一部を拡大して表すものである。この発電デバイスは、負極11と液体燃料含浸部15との間にスペーサ39を備えたことを除き、第1の実施の形態に係る発電デバイスと同一の構成,作用および効果を有している。よって、ここでは、同一の構成要素には同一の符号を付し、ここではその詳細な説明を省略する。
【0045】
スペーサ39は、負極11と液体燃料含浸部15の供給部15aとが直接接触せず離間して配置されるようにするためのものであり、負極11と供給部15aとの間に複数個挿入されている。このスペーサ21は、絶縁性の樹脂または導電性の金属などどのような材料により構成されていてもよい。但し、液体燃料Lとの反応を防止するために、例えば、化学的に安定な材料であるフッ素系の樹脂により構成されることが好ましい。
【0046】
このような構成を有する発電デバイスでは、液体燃料Lが液体燃料含浸部15の延長部15bを介して供給部15aに補給され、蒸発して蒸気となり負極11に供給される。すなわち、液体燃料Lを蒸気として負極11に供給することにより、液体燃料Lのクロスオーバーがより防止される。
【0047】
このように本実施の形態に係る発電デバイスによれば、負極11と液体燃料含浸部15とが離間して設けられているので、液体燃料Lを蒸気として負極11に供給することができる。よって、第1および第2の実施の形態に比べて、液体燃料Lのクロスオーバーをより防止することができる。
【0048】
但し、本実施の形態に係る発電デバイスは、液体燃料Lを蒸発させ蒸気として負極11に供給するので、液体燃料Lを直接供給する場合に比べて燃料の供給量が少なくなってしまう。よって、この発電デバイスは低出力での使用に適している。
【0049】
(第4の実施の形態)
図5は本発明の第4の実施の形態に係る発電デバイスの断面構造を表すものである。この発電デバイスは、第1の実施の形態における液体燃料貯蔵部14に代えて液体燃料貯蔵部44を備え、かつ第1の実施の形態における液体燃料含浸部15に代えて液体燃料含浸部45を備えたことを除き、第1の実施の形態と同一の構成,作用および効果を有している。よって、ここでは、第1の実施の形態と同一の構成要素には同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
液体燃料貯蔵部44は、液体燃料含浸部45を内部に収納する外装部45fに隣接して配設されたことを除き、第1の実施の形態の液体燃料貯蔵部14と同一の構成を有している。すなわち、内部に液体燃料Lを貯蔵する収納空間44aを有すると共に、この収納空間44aに液体燃料を補充するための開口44bが設けられ、蓋体44cが着脱可能に配設されている。
【0051】
液体燃料含浸部45は、例えば、負極11の電解質層13と反対側に配設された外装部45fの内部に収納されている。この外装部45fは、第1の実施の形態に係る液体燃料貯蔵部14と同一の材料により構成されている。この液体燃料含浸部45は、例えば、負極11に直接的に接触して対向して設けられ負極11に燃料を供給する供給部45aを有している。この供給部45aは、例えば、図6にI−I線に沿った断面図の一部を示したように、負極11と対向する面に複数の孔45gが形成されている。この各孔45gは、発生した反応ガスを容易に排出するためのものである。
【0052】
液体燃料含浸部45は、また、外装部45fに設けられた開口45hおよび液体燃料貯蔵部44に設けられた開口44dを介して液体燃料貯蔵部44の収納空間44aに延長された延長部45bを有している。この延長部45bは、液体燃料貯蔵部44の内壁に沿って延長されており、収納空間44aに収納されている液体燃料Lを供給部45aに対して補給するものである。すなわち、外装部45fとは別個に液体燃料貯蔵部44を設け、延長部45bを介して供給部45aに液体燃料Lを補給することにより、液体燃料含浸部45の各孔45gから液体燃料Lが直接負極11に供給されることがないようになっている。なお、液体燃料含浸部45を構成する材料は、第1の実施の形態と同一である。
【0053】
このような構成を有する発電デバイスでは、液体燃料Lが液体燃料含浸部45の延長部45bを介して供給部45aに補給され、負極11に直接供給される。また、液体燃料Lの一部は各孔45gにおいて蒸発して蒸気となり負極11に供給される。反応により発生した反応ガスは、液体燃料含浸部45の各孔45gを介して排出される。すなわち、反応ガスの排出が容易となっている。
【0054】
このように本実施の形態に係る発電デバイスによれば、液体燃料含浸部45の負極11との対向面に複数の孔45gを有するようにしたので、液体燃料含浸部45を介して負極11に液体燃料Lを直接供給することができると共に、各孔45gを介して発生した反応ガスを容易に排出することができる。よって、第1の実施の形態に比べて高出力を得ることができる。
【0055】
また、外装部45fとは別個に液体燃料貯蔵部44を設け、延長部45bを介して供給部45aに液体燃料Lを補給するようにしたので、供給部45aの各孔45gから液体燃料Lが直接負極11に供給されることを防止でき、クロスオーバーを防止することができる。
【0056】
以上、各実施の形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、種々変形可能である。例えば、上記第1乃至第3の実施の形態では、液体燃料貯蔵部14の内部に液体燃料含浸部15,25を配設した場合について説明したが、第4の実施の形態のように、液体燃料含浸部の供給部を液体燃料貯蔵部とは別の外装部の内部に配設し、延長部を介して液体燃料貯蔵部に収納された液体燃料を供給部に補給するようにしてもよい。
【0057】
また、上記第3の実施の形態では、負極11および正極12の延長方向に液体燃料貯蔵部44を延長させて直列に配設した場合を具体的に図示したが、液体燃料貯蔵部はどのような形で配設されていてもよい。例えば、液体燃料貯蔵部を外装部45fに積層して配設するようにしてもよく、負極11および正極12の延長方向に対して垂直な方向に液体燃料貯蔵部を延長させて配設するようにしてもよい。なお、これは第3の実施の形態に限らず、第3の実施の形態のように液体燃料貯蔵部を構成する場合に該当する。
【0058】
更に、上記第3の実施の形態では、外装部45fと液体燃料貯蔵部44とを隣接させて配設するようにしたが、外装部45の開口45hと液体燃料貯蔵部44の開口44dとを適宜な接続管により接続し、外装部45と液体燃料貯蔵部44とを離間させて配置するようにしてもよい。なお、これは第3の実施の形態に限らず、第3の実施の形態のように液体燃料貯蔵部を構成する場合に該当する。
【0059】
加えて、上記各実施の形態では、液体燃料貯蔵部14,44に開口14b,44bを設けて蓋体14c,44cを配設し、液体燃料Lを補充する際には蓋体14c,44cを外して開口14b,44bから挿入するようにしたが、液体燃料貯蔵部を着脱可能とし、着脱部分に設けた開口を介して液体燃料の補充を行うようにしてもよい。
【0060】
更にまた、上記各実施の形態においては、電解質層13を介して対向された1組の負極11および正極12を備える場合について説明したが、本発明は、電解質層13を介して対向された2組以上の負極11および正極12を備える場合についても同様に適用される。その際、液体燃料貯蔵部14または外装部45fを互いに対向させて積層するようにしてもよい。また、例えば図7に示したように、2つの負極11の間で液体燃料貯蔵部14,44または外装部45fを共用するようにしてもよい。
【0061】
加えてまた、上記各実施の形態においては、発電デバイスの具体的な構成を例に挙げて説明したが、本発明は、電解質層13を介して負極11と正極12とが設けられており、液体燃料Lを含浸して保持する液体燃料含浸部15,45を備えていれば、他の構成を有するものであっても広く適用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る発電デバイスの構成を表す断面図である。
【図2】図1に示した発電デバイスの一部を拡大して表すものである。
【図3】本発明の第2の実施の形態に係る発電デバイスの構成の一部を表す断面図である。
【図4】本発明の第3の実施の形態に係る発電デバイスの構成の一部を表す断面図である。
【図5】本発明の第4の実施の形態に係る発電デバイスの構成を表す断面図である。
【図6】図5におけるI−I線に沿った矢視方向の断面図である。
【図7】本発明の変形例を表す断面図である。
【符号の説明】
【0063】
11…負極、12…正極、13…電解質層、14,44…液体燃料貯蔵部、14a,44a…収納空間、14b,44b,44d,45h…開口、14c,44c…蓋体、15,25,45…液体燃料含浸部、15a,45a…供給部、15b,45b…延長部、16…通気構造体、17…第1の保護部、17a,18a…開口、18…第2の保護部、18b…閉鎖部材、18c…支持部材、25c…凸部、25d…凹部、25e…空間、39…スペーサ、45f…外装部、45g…孔、L…液体燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素を還元する正極と、燃料を酸化する負極と、この負極と前記正極との間に設けられた電解質層と、液体燃料貯蔵部と、少なくとも一部が前記負極と離間して設けられ、前記負極に燃料を供給する供給部とを備えた発電デバイスにおいて、
前記液体燃料貯蔵部から液体燃料を前記供給部に供給する工程と、
前記供給部から蒸発した燃料蒸気を前記負極に供給する工程と
を含むことを特徴とする発電方法。
【請求項2】
前記液体燃料は、メタノール、エタノール、プロパノール、蟻酸、酢酸、ホルムアルデヒド、エチレングリコールおよびこれらの水溶液、またはこれらの混合物である
ことを特徴とする請求項1記載の発電方法。
【請求項3】
前記電解質層は樹脂膜である
ことを特徴とする請求項1または2記載の発電方法。
【請求項4】
前記電解質層は、ポリパーフルオロスルホン酸、トリフルオロスチレン誘導体、ポリベンズイミダゾールまたは芳香族ポリエーテルケトンスルホン酸を含む樹脂膜である
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の発電方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−117787(P2008−117787A)
【公開日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332025(P2007−332025)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願平11−69093の分割
【原出願日】平成11年3月15日(1999.3.15)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】