説明

発電機冷却システムを備えた風力タービン

【課題】水分、砂および他の異物のポッド内への侵入ならびに外部からでも聞こえるファン騒音を低減すると共に、より効率的な冷却を可能とする。
【解決手段】本発明は、パイロンと、このパイロンに回転可能に配設されてなると共に、ローター(10)およびステータ(20)を備えた発電機と、ローターとは別個に回転する少なくとも一つのファン(41,42,43)とを有するポッドを具備してなる風力発電設備に関するものである。発電機は、ステータ(20)とローター(10)との間の空隙によって接続された前部と後部とにポッド(30)を区画し、少なくとも一つのファン(41,42,43)は、ポッドの後部から空隙を経てポッドの前部へと空気を送るようになっており、かつ、発電機のローター(10)とステータ(20)との間の空隙のみが、吸い込まれた空気の排出流を許容するようシーリング手段がポッド内に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイロンと、パイロンに回転可能に配設されたポッドと、ポッド内に配置されてなると共にローターおよびステータを有する発電機と、ポッドの領域内の少なくとも一つのファンとを具備してなる風力発電設備に関する。
【背景技術】
【0002】
そうした風力発電設備は、従来技術においてかなり以前から知られている。一部油冷によって、一部空冷によって、あるいはまた水冷によって作動する構造形態が多数存在する。この点に関して、全ての状況は損失が発生するという問題を抱えており、この損失は熱の形態で生じ、放散させる必要がある。各コンポーネントは、観察する必要がある所定の熱応力限界を有しているので、それゆえ、過剰な熱を放散させ、過剰な温度上昇による損傷を回避可能とするために適当な冷却が必要である。
【0003】
本発明は、特に、空冷運転される風力発電設備に関する。そうした種類の冷却システムは、Enercon社製の風力発電設備(Type E-40、E-44、E-58あるいはE-66)から公知である。この例ではファンがポッド内に導入されるが、これは外部から冷却空気を引き込んで、それをポッド内部に送り込み、これによって冷却空気が発電機の開口部を通って流れるようにし、こうすることで、温度が上昇する個々のコンポーネントを冷却するようになっている。温度が上昇した空気は続いて一般に閉じた冷却回路に再び流れ込むか、あるいはスピナーとポッドの静止部分との間の空隙を経て外部に流出する。
【0004】
発電機の出力が増大するにつれて、全負荷運転状況でさえ、その温度を臨界的制限値以下で確実に維持できるようにするために、この発電機の冷却要求もまた増大する。
【0005】
従来技術による風力発電設備は、いわゆる風上ローターを備えている。つまり風力発電設備のポッドは、ローターブレードが風に面するポッドの側に位置するよう配置されている。ファンはポッド壁内で風から遠く離れた側(風下側)に配置されている。このファンは外部から空気を吸い込み、そしてそれをポッド内に運び込む。空気はポッド内のコンポーネントの周りを流動し、これによって熱の放散を、したがって冷却作用をもたらす。
【0006】
だが、ファンの稼動中に、やはり空気中に存在している塵、湿気および雨水もまた吸引され、ポッドの内部に運ばれることが分かるであろう。これによって望ましくないポッドの汚損が生じ、しかも、全ての付随するその不都合な現象に加えて、(塵および砂の研磨作用のために)コンポーネントの損耗速度が高まり、そしてポッド内の空気湿り度のレベルが高まるが、これは雨天時にはまさに好ましくないものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭58−65977号公報
【特許文献2】特開平7−170691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって本発明の目的は、水分、砂および他の異物のポッド内への侵入ならびに外部からでも聞こえるファン騒音を低減すると共に、より効率的な冷却を可能とすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書の冒頭部分において言及したタイプの風力発電設備では、上記目的はポッド内にファンを配置することによって達成され、この場合、ファンは、特にパイロンとポッドとの間の、下方に開口した空隙を経て外気を吸い込むことになる。
【0010】
この点に関して、本発明は、風力発電設備に沿った、そして特にポッド領域の空気流は、著しく際立った水平成分を有するが、垂直成分はよくても著しく小さなものであるという認識に基づくものである。すなわち、風および風と共に風によって運ばれる異物は風上側からポッドに沿って風下へと流れ、続いて風力発電設備を通過する。それゆえ、もし空気が下方に開口する空隙から吸引される場合、せいぜい極めて微細な粒子(さらに詳しく言うと、これは重力の作用に抗して空気流によって上方に運ばれ得る)が、なおも吸引されるに過ぎない。その結果、砂や塵のような比較的大きな粒子の吸引取り込み、そしてさらに周知のとおりかなり重い雨滴の吸引取り込みが、完全には阻止できなくても、著しく低減される。
【0011】
空隙全体にわたって分散状態で、可能な限り均一な外気の吸引取り込みを実現するために、そして一つまたは二つの位置での高い吸引作用を回避するために、本発明の好ましい展開では、複数のファンがポッド内で相互に離間した位置関係で配置される。
【0012】
特に好ましくは、ポッド内にはプラットホームが設けられ、このプラットホームの下方にはファンが配置されると共に、その上方には吸引した空気用の排気口が備わる。このようにして、プラットホームを空気流を案内するために使用することができる。同時に、この構造によって、プラットホームの下方に、吸引した空気をその中で落ち着かせることができる一種の安静スペースを設けることができる。この場合、塵あるいは砂の粒子のような混入異物は重力によって堆積させることができ、したがってポッド内のファンによって運ばれるその量は低減する。
【0013】
本発明の特に好ましい展開においては、プラットホームは、ポッドの残部がファンの吸引取り込み領域に関して密閉されるようポッドに対して横方向および下方向にシールされる。この構造によって、ファンは明らかに、吸引された空気をプラットホームの上の領域に輸送できるが、吸引空気はプラットホームの周りを流動することはできず、したがって短絡流となってファンに戻ることはできない。むしろ、ファンによって送り出された空気はポッドの残りの部分に留まり、そこでその冷却作用を発揮することができる。
【0014】
発電機の特に効果的な冷却を実現するために、本発明の好ましい実施形態は、発電機のローターとステータとの間の空隙にのみ、吸い込まれた空気の排出流が生じよう、発電機自体をシールすると共に発電機をポッドに対してシールすることによって特徴付けられる。それゆえ空気は空隙を通って流動することのみ可能で、これに付随して最高レベルの効率で発電機のローターおよびステータを冷却できる。
【0015】
さらに、ステータ巻き線の巻き線ヘッドに関する冷却作用を有利に行えるようにするために、本発明による風力発電設備は好ましくは空気案内プレートによって特徴付けられるが、当該プレートはローターの外周囲全体に設けられてなると共に、所定の間隔を置いてローターとステータとの間の空隙の上に広がり、かつ発電機のステータと実質的に平行に所定の距離だけ半径方向に延在している。
【0016】
特に好ましい展開は、パイロンと実質的に平行に所定の距離だけ延在すると共に下側縁部において終端をなしている、ポッドの下側部分を備えた風力発電設備に関する。可能な限り均一な、したがってまた付随する騒音が低レベルである、パイロンとポッドとの間の取り込み空気流を提供するために、ポッドは隆起形状の下側縁部を有する。この隆起形状は実質的に、鈍い縁部において生じるような、吸引される空気の乱れを阻止し、したがって(この乱れによって生じる)流路内の狭窄を防止するのを助け、したがって有効断面の望ましくない減少およびその結果として著しく過少な量の空気しかポッド内に流れ込まず、それに不可避的に起因して過度に軽微な冷却作用しか得られなくなることを防止するのを助ける。
【0017】
先の実施形態の好ましい展開において、本発明による風力発電設備は、所定の量だけ漏斗状に広がる下側縁部を伴って具現化される。隆起部が設けられていない場合でさえ、これは良好な結果をもたらす。なぜなら、空気流は、乱流および付随する騒音および流れ損失を伴わずに、広げられた縁部にくっ付いてポッド内にスムーズに流入できるからである。
【0018】
本発明はまた、パイロンと、このパイロンに回転可能に配設されてなると共に、ローターおよびステータを備えた発電機ならびに少なくとも一つのファンを有するポッドとを具備してなる風力発電設備に関し、この発電機は、ステータとローターとの間の空隙によって接続された前部と後部とにポッドを区画し、少なくとも一つのファンは、ポッドの後部から、空隙を経て、ポッドの前部内へと空気を送るようになっており、空隙を通過する空気流が実質的に抑えられるよう、シーリング手段がポッド内に設けられていることを特徴とする。
【0019】
この点に関して、本発明は、冷却空気がこれまでよりも一層効果的に、温度の上がった発電機またはその部品に対して供給されなければならないという認識に基づくものである。この目的のため、本発明によれば、可能ならば冷却空気の全てが、そうでない場合でも少なくとも明らかに冷却空気の大部分が、設備ローターと発電機との間の空隙を経て流動し、さもなければ、それによってファンあるいは他のファンシステムによって吸引された冷却空気が上記空隙を通る流路を強制的に流動するように、発電機のローターおよびステータの実質的に全ての他の開口部が閉塞される。
【0020】
この点に関して、本発明は、新規な風力発電設備の元来の装備にとってだけでなく、既存の風力発電設備に対する改良装備品にとっても好適である。
【0021】
この点に関して、本発明は、既存の風力発電設備の場合でさえ発電機の出力を増大させることができ、したがって設備の全般的な効率を改善することができる。この点に関して、本発明を実施するための処置は比較的軽微なものであり、しかも冷却の持続的改善を、したがってまた設備に作用する総体的な熱応力の低減をも可能にする。
【0022】
本発明のさらなる形態は従属請求項の対象事項である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】風力発電設備のポッドの側面図である。
【図2】図1に示すポッドの一部を拡大して示す概略図である。
【図3】ポッド内部のプラットホームの平面図である。
【図4】発電機を見ている状態でのポッドの内部の正面図である。
【図5】発電機の一部を拡大して示す細部概略図である。
【図6】さらなる実施形態による風力発電設備の一部側面図である。
【図7】さらなる実施形態による風力発電設備のポッドを通る概略断面図である。
【図8】本発明のさらなる実施形態による風力発電設備のポッドを通る概略断面図である。
【図9】本発明のさらなる実施形態によるポッドの一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して、実例として実施形態について詳しく説明する。
【0025】
図1には本発明による風力発電設備のポッドの側面図を示す。図1において、装置キャリア4がパイロンヘッド2の上に示されており、キャリア4に対してはステータキャリア6およびジャーナル8が配設される。ローターブレード16を固定状態で備えるハブ14および発電機のポール(磁極)ローター10は、ジャーナル18の周りに回転可能に配置される。
【0026】
発電機のステータ20はステータキャリア6によって支持され、その一方で、ポール(磁極)巻き線およびポール片(磁極片)12を備えたポールローター10(ローター)は発電機内でジャーナル8上のハブ14と共に回転する。パイロンヘッド2の上の構造体は、ポッドフェアリング30およびハブフェアリング32を具備してなるポッド30,32によって取り囲まれている。ハブフェアリング32はハブ14と共に回転するが、ポッドフェアリング30はポッドの静止部分を取り囲む。この点に関して、「静止」とは、風によって引き起こされかつローターブレード16によってハブ14および発電機に伝達される回転動作のみに関係することを理解されたい。この点に関して、まず、風向トラッキング(追尾)について今は考えない。
【0027】
ポッドフェアリング30によって流線形となるように形が整えられたポッドの後部には、その上を歩行できるポッドプラットホーム34が配置されている。ファン41がこのポッドプラットホーム34の下方に示されている。ファン41は、パイロンヘッド2とポッドフェアリング3の下方に開口する端部との間の空隙6を経て空気を吸い込む。ファン41の排出口がポッドプラットホーム34の上面に存在するので、上記ファンによって吸引された空気流LSはポッドプラットホーム34の上に噴き出し、続いてポッドフェアリング30によって発電機に向って向きが変えられる。この結果、発電機に向う、そして当然ながらさらに発電機の開口部を通る有向空気流LSが存在する。空気流LSは、この状況において熱を放散させ、したがって発電機を冷却する。
【0028】
ポッドフェアリング30が、それを通って空気がファン41によって吸い込まれる下方に開口する間隙36を備えた下部100を有するので、せいぜい比較的小さな浮遊粒子もまた空気と共に吸い込まれ、塵または砂粒のようなより重い粒子および雨滴またはひょう粒子は、まさに実質的にポッドの外部に留まる。
【0029】
ハブフェアリング32の領域であって発電機とハブ14との間には、空気案内プレート45が存在することがわかるが、これは発電機を通って流れる空気LSの向きを発電機の外周方向に転換し、これによってステータ20の巻き線の巻き線ヘッド(これはそこで空気流LSの中に置かれる)は、特にそして狙った通りに、流れ出る空気の流路の中に置かれ、したがって同様に、特にそして狙った通りに冷却することができる。この空気は続いてポッドフェアリング30とハブフェアリング32との間の空隙を経て噴出することができ、この結果、常時、新しい空気をファン41によって引き続き供給できる。
【0030】
図2には、図1に示す風力発電設備のポッドの一部を拡大して概略的に示す。図2においては、パイロンヘッド2の上に配置された装置キャリア4と、やはりそれに対して取り付けられたジャーナル8と、ステータキャリア6とを再び明瞭に認識することができる。ステータ巻き線および巻き線ヘッド22を備えた発電機のステータ20は、ステータキャリア6に対して配設されている。ポール巻き線およびポール片12を備えた発電機のポール(磁極)ホイール10は、ジャーナル8の周りに回転可能に支持されている。案内プレート45はポールホイール10の側方に配置されており、ポールホイール10はハブ(この図では示していない)に面している。空気案内プレート45はポールホイールの全周にわたって延在しており、かつそれがステータ20およびポールヘッド22を備えたステータ巻き線と実質的に平行に所定の距離だけ延在するよう、半径方向外側に湾曲している。再度、ポッドプラットホーム34の下方に配置されかつその空気排出口がポッドプラットホーム34の上方に存在するファン41を備えたプラットホーム34を、ポッドフェアリング30の領域において明瞭に認識することができる。ファン41は外気を空隙36を経て吸引する。空隙36はパイロンヘッド2とフェアリング30の下方に開口した下部40との間に配置されている。この点に関して、図2からは、ポッドフェアリングの下側縁部100が外側に所定の量だけ漏斗状に広がっていることが明瞭に認識できる。この構造によって、空気流を、ポッドフェアリング30のこの領域の内壁に対して、より良く作用させることができ、空気流は乱流を伴うことなくポッド内に流入できる。その結果、空隙36の全断面は、これもまた乱流によって減じられたりあるいは損なわれたりすることのない有効な吸引取り込み領域として利用できる。
【0031】
空隙36を経て吸引された空気は、それがファン41によってポッドプラットホーム34の上側120に送り込まれる前に、ポッドプラットホーム34の下方の空間110内で、その断面が大きなものであり、この結果として流速が低下するために、ある程度、落ち着かせることができる。ポッドプラットホーム34の上側120において噴き出す空気は、発電機6,10,12,20,22の方向に再びポッドフェアリング30によって送り込まれ、発電機を通って流れ、こうして熱を放散させることができ、したがって発電機を冷却できる。
【0032】
空気が発電機を通って流れた後、それがポッドフェアリング30とハブフェアリング32との間の空隙を通って噴き出す前に、空気はまた、空気案内プレート45によって、巻き線ヘッド22を横切って狙い通りに流動させられ、これによって熱を運び去る。
【0033】
図3はポッドの後部の平面図である。同図から、その上に発電機のステータキャリア6が配置される装置キャリア4を明瞭に認識できる。同図において、ポッドプラットホーム34は装置キャリア4を取り囲んでおり、このプラットホーム34の中に三つのファン41,42,43すなわち(これは実のところ平面図であるので)その空気排出口を見出すことができる。この図から、発電機を冷却するための必要空気流LSは、単一のファンによってだけでなく複数のファンによって生成できることが明らかであろう。
【0034】
本発明のさらなる態様は、ポッドフェアリング30に対するポッドプラットホームのシーリング(密閉)に関するものである。流れの短絡を防止するために、このシーリングの実施に関しては多大な注意を払うべきである。そうした流れの短絡は、ファン41,42,43によってポッドプラットホーム34の上のスペース内に運ばれる空気が、プラットホーム34とポッドフェアリング30との間の漏れに起因してポッドプラットホーム34の周りを流動することができ、したがってファン41,42,43の吸引取り込み領域内に再び流入できる場合に生じるであろう。さらに詳しく言うと、この結果、ポッドプラットホーム34の周りを流動する、かなりの量の空気は発電機の方向に流れなくなり、したがって冷却に利用できなくなる。
【0035】
空気流による発電機の冷却効果をさらに一層増大させるために、さらなる密閉手段が設けられる。この手段は図4から認識できる。同図は、図示していないポッドプラットホームの方向から見た発電機の正面図である。
【0036】
ジャーナル8を中央領域において明瞭に認識できる。発電機のポールホール10はジャーナル8の周りに回転可能に配置されている。ポールホイール10はステータ20内で回転し、一方、発電機空隙24がポールホイール10とステータ20との間に設けられている。
【0037】
可能な限り有効な冷却作用を生み出すために、空気は専ら発電機空隙24を経て流動するべきである。こうした理由から、ポールホイール10はそれを通って空気が流れないように、それ自体密閉される。さらに、ステータ20はまた、ポッドフェアリング30に関して密閉される。したがって空気流LSのために、発電機空隙24を通る経路のみが残される。最良の作用はこのようにして実現される。
【0038】
やはりポッドプラットホーム(図4には示していない)の(発電機に面する)側における流れの短絡を防止するために、カバープレート26が設けられる。カバープレート26はポッドプラットホーム(図示せず)の下方に直に隣接した関係で配置され、ポッドの残部に関して吸引取り込み領域をシールし、逆の場合も同じである。このようにして、空気はポッド内であってポッドプラットホーム34の上の発電機まで送り込まれ、そして図示の面から、そこに見出される発電機空隙24の一部を通ってカバープレート26の背後へと流動することができる。この目的のために、カバープレート26は発電機から所定の距離だけ離間され、これによって上記空気流が実現される。
【0039】
この構造によって、ファンよって送り込まれる全ての空気は、発電機空隙24を通って流れ、したがって最大量の熱を運び去る。
【0040】
図5には、さらに拡大して、発電機の領域およびこの領域内で空気LSがたどる流路を示す。同図の右側部分には、パイロン2およびこのパイロン2とポッドフェアリングの下方に開口した縁部(これは漏斗形状に広がる)との間に形成された空隙36を示すが、空隙36はまた、方位角間隙とも呼ばれている。空気の吸引取り込みおよびポッド内部への放出は、空気が発電機に向って案内される手法と共に、図1ないし図4に関する説明で言及されており、一方、図5からは、発電機空隙24を通過した空気流が、ポールホイール10に配置されたポール片12と、巻き線ヘッド22(これはステータキャリア6によって保持されたステータ20に対して取り付けられている)を備えたステータ巻き線との間を通って流動することが分かる。発電機空隙24を通過した後、空気流はポールホイール10に配置された空気案内プレート45に衝突し、そして、図の左側において巻き線ヘッド22の周りを重点的に狙ったように流動して、これによってやはりそこから熱を確実に奪い去るよう、このプレート45によって向きが変えられる。その後、空気流は、ハブフェアリング32とポッドフェアリング30との間の空隙を通って再び大気中に戻る。
【0041】
図6にはさらなる実施形態による風力発電設備の一部を示す。図1ないし図5に示す風力発電設備とは対照的に、この風力発電設備はポッド30の一端にファン38を有する。このファン38は、温度が上昇するポッドおよび他の部品を冷却するためにポッド内に空気流を発生させるよう機能する。先に説明したように、この例では、ファン38によって生じる空気流がローター10とステータ20との間の空隙のみを経て、ポッドの後部からその前部まで流動できるよう、したがって発電機の冷却に寄与できるように、発電機のローター10およびステータ20は密閉される。つまり、発電機の冷却は先に説明した実施形態と同様にしてなされるが、ポッド38の外側のファン38が新しい空気を供給するのに使用される。
【0042】
この発明によれば、ファンシステムはポッドプラットホームに組み付けられ、吸引された空気を上方に向って、(ローター側から見て)発電機の後部に直に隣接するポッド領域内に吹き込む。この場合、吸引される空気は、パイロン自体から、あるいは好ましくはパイロン間隙、すなわち、風に対して所望の角度で設備を位置決めするために方位角ベアリングがまた配置される、装置キャリアとパイロンとの間の間隙から取り込まれなければならない。
【0043】
この例では、吸引スペースは発電機方向に前方にも、たとえばプレートを用いて閉塞され、ポッドプラットホームと(ガラス繊維強化プラスチック製の)ポッドハウジングとの間の隙間もまた、たとえばプレートを用いて閉塞される。
【0044】
ポッドのスピナー側において、空気案内プレートは、ステータの巻き線ヘッドを経て空隙を通過する冷却空気を案内し、そしてこうして加熱された空気は、スピナーとポッドとの間の空隙を経て直に外部に放出できる。
【0045】
ローターの全ての開口部は、この例では、好ましくは完全に閉塞されるが、これは、簡素な孔に関してだけでなく、マンホール(すなわち付設された開口部)にも当てはまる。この結果、必要とあれば、サービスエンジニアは、スピナー内でメンテナンス作業を実施するために、ポッドの後部からスピナー内に入ることができる。マンホールはたとえばターポーリン(これは修理作業を行う際には容易に取り除くか開放状態とすることができる)によって閉塞できる。メンテナンス作業が終わった後、マンホールはターポーリンによって再び気密状態となるように閉塞できる。
【0046】
ポッドはたいていステータのステータリングを取り囲んでおり、しかも本発明によれば、さらに、ポッドとステータリングとの間の間隙は、シールによって気密状態となるよう閉塞される。
【0047】
本発明による帰結は、既存の発電機をより効率よく利用できるようになるということだけでなく、適当な冷却作用をかなり小さな電動ファン出力で十分に得られるようになることである。
【0048】
Enercon E-48型の風力発電設備において発電機空隙は概ね0.5mの横断面積を有し、そしてその他の点ではローターのそれ以外の孔が0.1mの横断面積を有することを考えると、これは既にファン効率を少なくとも20%だけ低下させている。
【0049】
パイロンとポッドの下部100との間の上記空隙の代わりに、ポッドの下部に開口部を設けることができる。そうした開口部はたとえば格子、スリットなどとすることができる。これに代えて、あるいはこれに加えて、それを経て流れる空気を後方で吸引するために、風下側を向くよう方向付けられたスクープ(取り込み口)あるいはポッド内で風下側を向くよう方向付けられた開口部を設けることができる。
【0050】
図7には、さらなる実施形態による風力発電設備のポッドを通る概略断面を示す。ポッド170は、発電機180と、圧力(与圧)スペース176と、壁すなわちプラットホーム177によって互いに隔離された吸引スペース175とを有する。壁177は好ましくは実質的に気密性を有するものであり、しかもポッドに対して入念に封止されている。仕切り177には二つのファン600,610が設けられ、この二つのファン600,610のうちの一方は水平に配置され、かつ第2のファン610は垂直に配置されている。好ましくは、垂直に向けられたファンは、吸引される空気が発電機180の空隙の領域内に送り込まれるよう配置されている。第2のファン610は、吸引スペース175から発電機空隙を経て空気流700の形態で発電機180の背後の領域へと空気を送り込む。ゆえに、空気はパイロン間隙を経てあるいはポッドの末端部において吸引スペース175内に吸い込まれ、そして空気は吸引スペース175からファン600,610によって圧力スペース176内に送り込まれる。ある程度の超過圧力が圧力スペース176内に存在するので、空気は発電機180の空隙を経て流出し、その際、発電機を付随的に冷却する。空気は、その後、ポッド170のフード空隙179から噴き出す。
【0051】
発電機空隙を通る空気流700は、まず、水平に配置されたファン600によって付勢される。第1の、そしてまた第2のファン600,610はいずれも、それぞれ一つ以上のファンによって具現化できる。
【0052】
ポッドの内部スペースおよびシーリング壁177の設計に関して、漏れポイントはファン効率を低下させ、したがって発電機冷却効果を低下させるので、これらの要素がポッドに対してシールされることが重要である。
【0053】
図8には、本発明のさらなる実施形態による風力発電設備のポッドの概略断面を示す。図8は特に漏れが生じ得る位置を示している。第1の漏れAは、たとえば、プラットホーム177とポッドのフード170との間で生じ得る。さらなる漏れBは、プラットホーム177とポッドの装置キャリアとの間で、特にプラットホーム177のケーブル孔によって生じ得る。さらなる漏れCは、吸引スペースと圧力スペースとの間の区画手段の前面壁と、ポッド170のフードとの間で生じ得る。さらなる漏れDは、風力発電設備の発電機のローターの孔によって生じ得る。さらなる漏れEはフードハッチによって生じ得る。最後に、さらなる漏れが装置キャリアのケーブル孔によって生じ得る。
【0054】
発電機にとって可能な限り最良の冷却効果を得るために、上記の生じ得る漏れの全ては、適当な手段によって封止(シール)される必要がある。
【0055】
前部壁および任意選択でポッドの尾部と平行に配置されたさらなる壁を備えたプラットホームを設けたことによって、ポッドの内部を、圧力スペースと吸引スペースとに区画することができる。
【0056】
図9は、本発明のさらなる実施形態によるポッドの一部断面斜視図である。ポッドプレートGおよびポッドターポーリンHが、ポッドのプラットホームの下方に設けられている。この例では、プレートの縁部およびシーリングプレートIを有するターポーリンは、ポッドの外壁に対してシールされている。ポッドの尾部において、プラットホームターポーリンJは吸引スペースを圧力スペースから分離させている。図9には五つのファンFが示されており、これらはパイロン隙間および/または尾部孔を経て空気を吸い込み、それを上方および前方に噴き出す。ファンおよびポッドに関するそうした構造様式は、外部に達する騒音が低減され、しかも設備内への雨や塵の吸引または吹き込みが低減されるので、有利である。さらに、より強力なファンを設置することが可能であり、しかもファンはその後に交換できる。
【0057】
本発明のさらなる実施形態によれば、発電機の空隙を経て空気を吹き込むために、発電機の周囲に配分された状態で複数のファンを設けることができる。ファンの数は余りがでるように設定でき、これによって、たとえファンの一つが故障しても、他のファンが、冷却作用を維持するために発電機の空隙を経て適量の空気を吹き込めるようになる。これに代えて、あるいはこれに加えて、ファンの出力は、このファンが少なくとも一時的に、故障したファンに取って代わることができるよう余剰設定できる。この点に関して、ファンは好ましくは、空隙の近傍において発電機の周囲に配分された状態で配置される。
【0058】
この例では、圧力スペースは、ファンの一つが故障してもよく、それにもかかわらず空気が圧力スペースと発電機の前方の領域との間の圧力差によって発電機の空隙を通って流動できるよう、超過圧力が存在するような構造のものである。先に既に説明したように、圧力スペースを適切にシールすることが必要である。
【0059】
さらなる実施形態によれば、空気格子を特に水平に配置されたファンの上に配置することができ、これによって物体がファンに落下するのが阻止される。これに代えて、あるいはこれに加えて、空気格子の上に、物体がファンに落下するのを阻止するマットを設けることができる。この場合、マットは好ましくはその端部の一方において固定されるだけであり、これによって、ファン作動時には、マットはファンによって生じる空気流によって上方に動かされ、そしてファンが停止するや否や、空気格子の上に再び落下する。したがって、これによって確実に、ファンは小さな物体から保護されるようになり、その一方でファンの作用がひどく妨害されることはない。
【0060】
空気流は、図7に示す垂直に配置されたファン700によって短絡させて、発電機の空隙に直接あるいはその近傍へと誘導することができる。それゆえ、これによって空気が上方および前方の両方に流動することが可能となる。この目的のために必要な空気は、パイロン間隙および尾部の孔から取り込んで利用される。
【0061】
通常、発電機空隙は、横断面積が0.5mのものである。だが、もし、たとえば、一つのケーブル通路がプラットホームに開放されたまま残っていると(0.1m)、冷却効率は約20%だけ低下する。
【符号の説明】
【0062】
2 パイロンヘッド
4 装置キャリア
6 ステータキャリア
8 ジャーナル
10 ポールローター
12 ポール片
14 ハブ
16 ローターブレード
18 ジャーナル
20 ステータ
22 巻き線ヘッド
26 カバープレート
30 ポッドフェアリング
32 ハブフェアリング
34 ポッドプラットホーム
36 間隙
38,41,42,43 ファン
45 案内プレート
100 下側縁部
110 空間
170 ポッド
175 吸引スペース
176 圧力スペース
177 壁
180 発電機
600,610,700 ファン
F ファン
G ポッドプレート
H ポッドターポーリン
I シーリングプレート
J プラットホームターポーリン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイロンと、
前記パイロンに回転可能に配設されてなると共に、ローター(10)およびステータ(20)を備えた発電機と、前記ローターとは別個に回転する少なくとも一つのファン(41,42,43)と、を有するポッドを具備してなる風力発電設備であって、
前記発電機は、前記ステータ(20)と前記ローター(10)との間の空隙によって接続された前部と後部とに前記ポッド(30)を区画し、前記少なくとも一つのファン(41,42,43)は、前記ポッドの前記後部から前記空隙を経て前記ポッドの前記前部へと空気を送るようになっており、かつ、
前記発電機の前記ローター(10)と前記ステータ(20)との間の前記空隙のみが、吸い込まれた空気の排出流を許容するよう、シーリング手段が前記ポッド内に設けられていることを特徴とする風力発電設備。
【請求項2】
前記ポッドの前記後部から前記前部へと前記少なくとも一つのファン(41,42,43)によって送り込まれる空気の20%未満が、前記ステータ(20)と前記ローター(10)との間の空隙を通る流路を進まないようになっていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項3】
前記ポッドの前記後部から前記前部へと前記少なくとも一つのファン(41,42,43)によって送り込まれる空気の5%未満が、前記ステータ(20)と前記ローター(10)との間の空隙を通る流路を進まないようになっていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項4】
その後部において、前記ポッド(30)は、前記ポッドの前記後部を、第1の部分および第2の部分に区画する仕切り(177)を有することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項5】
前記ポッド(30)の前記後部の前記第2の部分には少なくとも一つのファンが設けられており、このファンは、前記仕切り(177)を経て引き込まれる空気を、前記ポッド(30)の前記後部の前記第1の部分内へと送り込むようになっていることを特徴とする請求項4に記載の風力発電設備。
【請求項6】
前記仕切り(34)は、その一部の上を歩行可能な水平部分、および垂直部分を有するプレートを具備してなることを特徴とする請求項4または請求項5に記載の風力発電設備。
【請求項7】
前記ポッドの前記第1の部分には空気流案内要素(45)が設けられており、この案内要素(45)は、前記ステータ(20)の巻き線まはた巻き線ヘッドを経て前記空隙を通過する空気流を案内するようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項8】
前記発電機の前記ローター(10)はマンホールのような通路を有し、この通路は、それを通って空気がほとんどあるいは全く流れないよう閉塞されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項9】
前記発電機の前記ステータ(20)はステータリングを有し、かつシーリング手段が前記ステータリングと、前記リングを取り囲む前記ポッドとの間に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項10】
前記少なくとも一つのファン(41,42,43)は、外部から、前記パイロン(2)と前記ポッド(30)との間の空隙を経て、前記ポッド(30)内に流れる空気を引き込むようになっていることを特徴とする請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項11】
前記発電機と平行に延在するよう前記仕切り(177)に隣接する第2の垂直仕切りが設けられており、さらなるファンが、当該ファンによって吸い込まれた空気が前記発電機の前記空隙の近傍にあるいは近傍内に案内されるよう、前記第2の垂直仕切りに配設されていることを特徴とする請求項1ないし請求項10のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項12】
前記少なくとも一つのファン(41,42,43)は、前記ポッド(30)内に配置されてなると共に、前記ローターとは別個に回転し、かつ、
前記ファン(41,42,43)は、前記パイロン(2)と前記ポッド(30)との間に配置された、下方に向って開口した第1の空隙(36)を経て外気を吸い込むようになっていることを特徴とする請求項1に記載の風力発電設備。
【請求項13】
複数のファン(41,42,43)は前記ポッド内で相互に離間した位置関係で配置されていることを特徴とする請求項12に記載の風力発電設備。
【請求項14】
前記ポッド(30)内にはプラットホーム(34)が水平に配置されてなると共に、前記プラットホーム(34)の下方には前記少なくとも一つのファン(41,42,43)が配置されており、吸い込まれた空気用の空気排出口が前記プラットホーム(34)の上に配置されていることを特徴とする請求項12または請求項13に記載の風力発電設備。
【請求項15】
プラットホーム(34)は、前記ポッド(30)が前記少なくとも一つのファン(41,42,43)の領域に関して密閉されるよう、前記ポッド(30)に対して横方向および下方向にシールされていることを特徴とする請求項14に記載の風力発電設備。
【請求項16】
前記ローター(10)自身および前記ステータ(20)は、実質的にただ一つの第2の空隙(24)が前記発電機の前記ローター(10)と前記ステータ(20)との間に開口したままとなり、かつ、吸い込まれる空気の排出流が生じるよう、前記ポッド(30)に対してシールされていることを特徴とする請求項12ないし請求項15のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項17】
空気案内プレート(45)を具備してなり、前記プレート(45)は、前記ローター(10)の外周囲全体に設けられてなると共に、所定の間隔を置いて前記ローター(10)と前記ステータ(20)との間の前記第2の空隙(24)の上に広がり、かつ前記発電機の前記ステータ(20)と平行に所定の距離だけ半径方向に延在していることを特徴とする請求項16に記載の風力発電設備。
【請求項18】
前記ポッドは下部(100)を具備してなり、前記下部(100)は、前記パイロンと実質的に平行な関係で所定の距離だけ延在すると共に、隆起形状の下側縁部によって特徴付けられる下方に向って開口した縁部において終端をなしていることを特徴とする請求項12ないし請求項17のいずれか1項に記載の風力発電設備。
【請求項19】
前記ポッド(30)の下部(100)を具備してなり、この下部(100)は、所定量だけ漏斗形状に広がっていることを特徴とする請求項18に記載の風力発電設備。
【請求項20】
各ファンの上には空気格子が配設されており、前記空気格子上には、マットが、このマットの端部の一方においてのみ固定されていることを特徴とする請求項1ないし請求項19のいずれか1項に記載の風力発電設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−116925(P2010−116925A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45179(P2010−45179)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【分割の表示】特願2007−531721(P2007−531721)の分割
【原出願日】平成17年9月23日(2005.9.23)
【出願人】(500017944)アロイス・ヴォベン (107)
【Fターム(参考)】