説明

発電機用の静的励磁システム及びこのような励磁システムを運転する方法

母線(19)を介して配電網に接続されている発電機(16)の励磁巻線(17)用の静的励磁システム(20)が、直流電圧を生成する第1手段(12,18,21)及び電気エネルギーを出力する第2手段(23)を有し、この第1手段(12,18,21)の入力側が、発電機(16)の母線(19)に接続されていて、この第1手段(12,18,21)の出力部が、励磁巻線(17)に接続されていて、励磁巻線(17)と共に励磁回路を構成し、この第2手段(23)は、必要に応じて追加エネルギーを励磁回路内に供給する。
このような励磁システムの場合、順方向に接続されたダイオード(22)が、励磁回路内に挿入されること、及び、励磁回路内にエネルギーを供給する第2手段(23)が、逆方向にダイオード(22)に対して接続可能であることによって、励磁を短期間に上昇させることが、簡単にかつ機能的に確実にかつスペースを節約して可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発電機技術の分野に関する。本発明は、請求項1の上位概念に記載の静的励磁システム及びこのような励磁システムを運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発電機の励磁巻線に給電する静的励磁システムは、広範囲で使用される。これらの静的励磁システムは、その丈夫さ及び短い応答時間の点で優れている。この公知の種類の静的励磁システムは、図1中に示されている。図1のこの静的励磁システム10は、発電機16に割り当てられている。この発電機16は、(三相)母線19及び発電機の変圧器11を介して(図1中に示さなかった)配電網に接続されている。静的励磁システム10が、発電機16の励磁巻線17に給電するために使用される。この静的励磁システム10は、母線19に接続されている励磁変圧器12を有する。この励磁変圧器12の出力交流電圧が、サイリスタ21を備えたサイリスタブリッジ18によって直流電圧に変換される。サイリスタブリッジ18のサイリスタ21の制御及び直流電圧の高さの制御が、母線19に印加され、電圧変換器13によって降圧される発電機の電圧及び励磁装置10内で流れ、電流変換器15によって測定される電流に応じて自動電圧制御器(Automatic voltage regulator AVR)14によって実施される。サイリスタブリッジ18によって生成された直流電圧は、励磁電流If を励磁巻線17に通電させる。
【0003】
励磁システム10の応答が、励磁変圧器12の出力電圧を大きくすることによって強化される。その結果、サイリスタブリッジ18を全波制御に一時的に移行させることによって、必要な電流勾配dlf /dt(応答時間;英語では"response time" )及び必要な最大値Ifmax(短期間の無効電力の上昇)が保証され得る。対応するシーリングファクター(英語では"ceiling factor")、すなわち定格励磁電圧に対する最大励磁電圧の比が、1.5 〜2.0 の範囲内にある。このような限界値は、配電網の通常の障害に対処するために一般に使用される。
【0004】
この余裕設計にもかかわらず、これらの従来の静的励磁システムの場合、問題が以下の理由から発生する:配電網の障害が、伝送線中の短絡によって頻繁に引き起こされる。このような短絡は、配電網により近い周囲及び近くに位置するパワーステーション内の電圧を下げる。励磁変圧器が、発電機の母線から給電されるので、同様に電圧が降下する。短絡の再投入が、プリセットされている時間窓内で問題なく実施される場合、配電網への再接続が自動的に実施される。発電機−配電網システムの安定性を維持するためは、短期間の無効電力の衝撃を再起する配電網内に供給することが望ましい。このことは、発電機が過励磁された状態にあることを必要とする。しかしながら、短絡の間及びこの短絡の間の直後に残留する電圧が、短期間の励磁電流サージの生成を不可能にするので、このことは、一部しか実現できない。設定されたシーリングファクターでさえも、この期間内に全ての場合で十分な励磁に対して配慮できない。
【0005】
米国特許第 3,818,317号明細書中には、コンデンサ電圧が、励磁システムのアナログ信号ループ内に直列給電されることが記されている。この給電は、発電機の電圧をサンプリングする低電圧リレーによって起動される。こうして変化した信号が、自動電圧制御器(AVR)の入力部に入力される。追加のエネルギー源からの給電による励磁回路内の電力の短期間の上昇は説明しない。
【0006】
米国特許第 6,339,316号明細書は、一方では励磁供給部の(図1〜4)の交流電圧側のコンデンサ保護された遮断されない電流供給部、及び他方では直流で充電されるコンデンサを記す。このコンデンサは、励磁巻線用の供給線に対して並列に接続される(図5〜8)。これらの配置の説明した要素のうちの一方の要素が故障した時に、全ての励磁が励磁が消失するので、両配置では、発電機の可用性が激しく損なわれる。励磁巻線に接続されているコンデンサが、半導体スイッチによってサイリスタ10からの電流を整流し、このサイリスタ10に再び戻す。このことは、電圧スパイク及びサイリスタ若しくは発電機の励磁巻線の故障又は破損を招きうる。
【特許文献1】米国特許出願公開第 3,818,317号明細書
【特許文献2】米国特許第 6,339,316号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、励磁の短期間の上昇("excitation boosting" )を可能にする静的励磁システムを提供することにある。この静的励磁システムは、公知の励磁システムの欠点を排除し、高い機能信頼性及び簡単でスペースを節約する構造を特徴とし、この静的励磁システムの運転に対する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1及び14〜19に記載の特徴を有する静的励磁システム及び方法によって解決される。本発明の要点は、電気エネルギーを出力する第2手段が静的エネルギーシステム内に設けられていて、これらの第2手段は、必要に応じて追加のエネルギーを励磁回路内に短期間に給電し、順方向に接続されたダイオードが、励磁回路内に挿入されていて、エネルギーを励磁回路内に給電するため、これらの第2手段は、ダイオードの逆方向に接続可能である点にある。
【0009】
本発明のシステムの構成は、第1手段が、発電機の母線に接続されている励磁変圧器及びこの励磁変圧器の出力部に接続されている整流回路を有すること、この整流回路は、制御可能な整流回路、特にサイリスタブリッジとして構成されていること、自動電圧制御器が、整流回路つまりサイリスタブリッジを制御するために設けられていること、この自動電圧制御器の入力側が、電圧変換器を介して発電機の母線に接続されていること、第2手段が、制御可能なスイッチによってダイオードに接続可能であること、このスイッチは、半導体スイッチとして、特にサイリスタ(Th)として又はスイッチオフ可能な半導体スイッチとして、特にGTO又はIGBTとして構成されていること、及び、このスイッチは、発電機の電圧及び/又は自動電圧制御器の目標値に応じて制御可能であることを特徴とする。
【0010】
この励磁システムは、必ずしも発電機の母線に接続されている必要はない。この励磁システムは、例えばパワーステーションに固有の配電網に接続されてもよい。このパワーステーションに固有の配電網は、最終的に配電網に接続されているので、同じことが成立する。
【0011】
本発明の別の構成は、第2手段が、充電可能な静電容量として構成されていること、この場合、特に静電容量は、直列及び/又は並列に接続されている1つのコンデンサ又は多数のコンデンサを有することを特徴とする。静電容量が、多数のコンデンサを有し、これらのコンデンサは、対応するスイッチによって互いに別々にダイオードに接続可能である場合、励磁回路内へのコンデンサエネルギーの供給は特に柔軟に実施することができる。
【0012】
コンデンサが、1〜10Wh/kg の一定のエネルギー密度を有するウルトラコンデンサ又はスーパーコンデンサとも呼ばれる電気化学的な二層コンデンサとして構成されている場合、所要面積,エネルギー密度,信頼性及び設備コストに関して好ましい。
【0013】
例えば充電装置が、静電容量つまりコンデンサに充電するために設けられている。
【0014】
励磁の短期間の強化が中央ステーションによって制御されなければならない場合、第2手段に接続するためのスイッチが、有線信号又は無線信号を用いて受信機を通じて操作可能であることが利点である。
【0015】
以下に、本発明を図面に関連する実施の形態に基づいて詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
図2中には、本発明の第1の実施の形態による静的励磁システムの簡単な回路図が示されている。出発点は、同様に励磁巻線17を有する発電機16である。この発電機16は、母線19及び発電機の変圧器11を介して配電網に接続されている。励磁電流If が、静的励磁システム20によって励磁巻線に供給される。この静的励磁システム20は、主に励磁変圧器12及び後続するサイリスタ21を備えたサイリスタブリッジ18から構成される。サイリスタブリッジ18は、自動電圧制御器(AVR)14によって制御される。この自動電圧制御器14は、入力値として一方では電圧変換器13を通じて母線19に印加されている発電機の電圧を受け取り、他方では電流変換器15を通じて励磁システム内で流れる電流を受け取る。サイリスタブリッジ18は、その出力側で励磁巻線17に接続されていて、この励磁巻線17と共に励磁回路を構成する。
【0017】
励磁回路内では、ダイオード22が、順方向に接続されて取り付けられている。充電可能な静電容量23が、スイッチ24によってダイオード22に対して並列に接続可能である。この場合、静電容量23は、ダイオード22の逆方向に接続される。静電容量23は、接続されている充電装置25によって充電され得る。スイッチ24は、いろいろな方法で制御され得る。このことは、図2中に異なる破線によって示されている。
【0018】
ダイオード22は、通常運転の間は直流として流れる励磁電流If を通電し、励磁回路の機能に全く影響しない。例えばいわゆるウルトラコンデンサ又はスーパーコンデンサから構成された静電容量23が、充電装置25によって所定のコンデンサ電圧UC0に保持される。コンデンサの充電の極性は、ダイオード22の逆方向に対応する。スイッチ24が接続される場合、コンデンサ電圧UC が、サイリスタブリッジ18によって印加される電圧に加算されるように直列に接続される。その結果、全体で明らかにより高い励磁電圧Uf が、励磁巻線17に対して印加される(図3中のtON)。同時に、ダイオード22が遮断し、ダイオード電流ID (図3中の一点鎖線)が、零に戻る。以下で、簡略化の理由から、サイリスタブリッジ18に対する制御角度は一定(不変)であると仮定する。励磁電流If が、上昇した励磁電圧Uf に起因して−励磁巻線17のインダクタンスによって−遅延して上昇し始める。電圧変換器13の電圧が、プリセットされている限界値の下に降下することによって(図2中の破線の接続(a))、スイッチ24のオンが起動され得る。このことは、配電網の電圧の降下時に静電容量23中に蓄えられたエネルギーによって励磁供給の上昇を可能にする。エネルギーが、励磁回路内に供給される間に、コンデンサ電圧UC が、零になるまで(図3中の零点)、静電容量23が、連続して放電される(図3中の降下するコンデンサ電圧UC )。次いで、ダイオード22が再び導通し始めて、通常の励磁供給が存続する。
【0019】
AVRの機能は、不変に持続できる。この追加のコンデンサ給電は、常に存在する励磁電流検出によってAVR内で処理される。
【0020】
希望する電圧上昇は、コンデンサを充電することによって調節される。この充電電圧は、励磁電圧の定格値の数倍、特に3倍までに達し得る。この支援の希望する期間は、コンデンサ値によって調節される。設定される支援時間(t′−tON)は、1〜20秒の範囲内で移動する。
【0021】
例えばマクスウェル・テクノロジーズ社の商標BOOSTCAPTMの下で型式 BCA0010又はPC2500で提供されるような、既に上述したように、例えばウルトラコンデンサ又はスーパーコンデンサが、コンデンサ23を構成するために使用される。例えば2.5 Vの定格電圧で2600又は2700Fの静電容量を有するこのようなウルトラコンデンサには、いろいろな利点がある:これらのウルトラコンデンサは、100 %整備不要である。これらのウルトラコンデンサは、(電解コンデンサより10倍良好な)十分な出力容量及びエネルギー容量を有する。コンデンサが故障しても−このことは非常に稀である−、その悪い結果が、個々のコンデンサ29の並列・直列回路(図5参照)を用いたモジュール構造によって非常に僅かに抑えられ得る。コンデンサの大きさ及び数は、電圧上昇及び支援時間の要求から決まる。
【0022】
ダイオード22は、例えばディスクリートタイプのダイオードとして取り付けられる。故障が、このダイオードの内部短絡を引き起こす。このことは、励磁システムの機能に影響しない。故障したダイオードへの接続から保護するため、スイッチ24が、直列接続されたヒューズを有し得る。
【0023】
最近発生した配電網の機能麻痺(「停電」)は、最大に過負荷にされた配電網に短期間に上昇した無効電力を給電することができなかったためということが分かった。発電機の母線に基づく自動電圧制御器AVRによる広く普及し、配電網の電圧降下に不自然に追従する静的励磁は、このような危険な状況で短期間の上昇を提供できない。しかしながら本発明の静的エネルギーシステムによれば、このことは、簡単な方法で蓄えられたエネルギーを短期間に給電することによって容易に可能である。この説明した時間内に、配電網の負荷を軽減する手段を取る必要が当然にある。このような手段は、例えばロードシェディング(Verbraucherwegschaltungen) ,配電網の遮断,予備発電機の接続である。
【0024】
本発明の静的励磁システムの静電容量による追加の給電には、以下の特性及び利点がある:
−この追加の給電は、励磁の良好な効率を損なわない。
−ダイオード22及び追加の給電が、不完全に作動する時でも、この追加の給電は、励磁の良好な信頼性に影響しない。
−この追加の給電は、サイリスタブリッジ内の電圧負荷に影響しない。
−この追加の給電は、自動電圧制御器の動作に影響しない。接続が、独自に起動される。−最大ブースト電流(英語では"boost current" )及び時定数を確定するため、この追加の給電は、標準部品からモジュール式に構成され得る。
−追加電圧が、ノイズスパイクなしの正確に降下する直流電圧である;それ故に、接続フェーズの間の励磁巻線にかかる追加の電圧負荷は僅かだけである。
−構造が、簡単でありかつ僅かなスペースしか必要としない。
−例えば使用されるウルトラコンデンサは、自動車産業のその意味を考慮すると常により信頼性がありかつより安価になる。
−装置が、接地コンデンサによって絶縁されている場合、リプル電圧の影響を受けない。−簡単でかつ丈夫な旧型装置を改装するキットが、既存の設備に対して提供される。
【0025】
既に上述したように、静電容量23をダイオード22に接続するスイッチ24が、発電機の出力側の不足電圧設定値によって起動され得る(図2中の破線の接続)。しかし、スイッチを不足電圧設定値信号と自動電圧制御器14の目標値とから組み合わせることによって起動させることも考えられる(図2中の破線の接続(a)及び(b))。さらに、通常運転中の励磁速度を静電容量23の接続によって上げることが考えられる。このとき、この起動は、自動電圧制御器14の目標値によって実施される(図2中の破線の接続(b))。最後に、静電容量23を信号によって接続することが可能である。この信号は、不足電圧又は無効電力の追加の要求の場合に配電網監視センターによって送信され、例えば機能信号としてアンテナ27を通じて受信機26によって受信される(図2)。
【0026】
静電容量23は、−図5中に示されているように−例えばウルトラコンデンサの形態の個々のコンデンサ29の直列回路及び/又は並列回路によって構成され得る。この場合、コンデンサ29の直列回路が、受動平衡手段(図5中の抵抗30)によって又は能動平衡手段によって追加され得る。さらに、発電機が運転中でない時又は静電容量23が収容されているキャビネットの扉が開かれる時に、コンデンサを安全に放電させてもよい。最後に、使用者の希望に応じて10秒より長い放電期間を実現するため、モジュール式コンデンサバンクが一緒に接続されてもよい。さらにこのことは、励磁変圧器12の電圧が低下し、通常のシーリング運転("ceiling" )が静電容量23の接続によって実施される場合に起こりうる。
【0027】
−図5中に示されたように−抵抗28が、ダイオード22に対して並列に接続される場合、一方では負の励磁電流If が通電され得る。このことは、僅かな負の励磁電流を生成する逆並列ブリッジを有する励磁システムでの使用を可能にする。他方では、放電の時定数が、静電容量23の接続時に並列にある抵抗28によって影響を受けて調節され得る。この抵抗は、励磁巻線17の抵抗値の範囲内で動揺する。サイリスタ(Th),GTO(ゲートターンオフサイリスタ)又はIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)が、スイッチ24として考えられる(図5)。サイリスタを消弧する電流が、零を通過するので、静電容量の完全な放電だけが、既存のサイリスタ(Th)によって可能である。励磁回路内へ蓄積されるエネルギーの供給が、(スイッチオフ可能な)GTO又はIGBTによって任意の時間に遮断され得る(図4中のtOFF )。
【0028】
図6によれば、静電容量23の内部では、異なる静電容量及び充電電圧を有する多数のコンデンサC1,...,C3が、割り当てられたスイッチ(IGBTT1,...,T3)によって個々に接続可能に配置され得る。励磁電流の所定の変化を生成するため、これらのコンデンサC1,...,C3は、例えば連続して及び/又は時間的に重なって接続され得る。ダイオードD1,...,D3は、IGBTT1,...,T3を逆電圧から保護する。
【0029】
例えば:コンデンサC1は、小さい静電容量及び大きい充電電圧を有し、コンデンサC2及びC3は、より大きい静電容量及びより小さい充電電圧を有する。励磁電流の急勾配の上昇が、この組み合わせによって持続する支援につながる。コンデンサC1は、例えばフィルムコンデンサ又は電解コンデンサから構成され得る。コンデンサC2及びコンデンサC3は、スーパーコンデンサから構成され得る。説明した例では、全てのIGBTが同時にスイッチオンされてもよい:このとき、電流が、自動的に減少する。この場合、図7中に示されたようなスイッチの形態は簡略化されている。コンデンサC1は、高い充電電圧及び小さい静電容量を有する。コンデンサC2は、小さい充電電圧及びより大きい静電容量を有する。両コンデンサは、直列に配置されたダイオードD1及びD2を介してここではIGBTによって示した1つの共通のスイッチに接続されている。
【0030】
ダイオード22,静電容量23及び充電装置25から構成されている絶縁は、励磁回路の絶縁と同じレベルにある。接地に対する僅かな静電容量が発生するように、この絶縁が好ましく実施される。
【0031】
2極の機械式直流スイッチが、静電容量23のコンデンサ29をダイオード22及び励磁回路から分離できる。これによって、発電機の通常運転の間に、保守動作が、追加回路で実施され得る。このようなスイッチも、半導体スイッチ(Th,GTO,IGBT)に交換できる。
【0032】
充電装置25は、パワーステーションの直流補助配電網若しくは交流補助配電網から給電され得るか又は発電機16の励磁変圧器12から給電され得る。以下の設計例にしたがう300 MVAの発電機に対しては、充電出力が、ほぼ1.5 kWhに達する。扱いにくい配電網(繰り返される故障)に対しては、静電容量23を迅速に放電できるようにするため、大電流の充電装置が設けられてもよい。
【0033】
300 MVAの定格電力を有する発電機に対しては、本発明の励磁システムが、以下のように設計された。この場合、2600Fの静電容量,2.5 Vの定格電圧及び1 mΩの内部抵抗を有するBOOSTCAPTMのウルトラコンデンサが、個々のコンデンサとして使用された(制御角度は一定とみなす):
【0034】
【表1】

例えばABB社の型式5SDD 60Q2800のダイオードが、ダイオード22として使用され得る。ABB社の型式5STP 45Q2800のサイリスタ又は三菱電機社の型式FG600AU120D のGTO又はeupec 社の型式FZ3600R17KE3のIGBTが、スイッチ24として図5にしたがって使用され得る。この場合、この決められた大規模な仕様によってさえも、1つの構成要素だけで済む。
【0035】
図7は、図6中に示された回路を変更した実施の形態を示す。この回路の場合、2つの異なるコンデンサ(C1,C2)が、1つの共通のスイッチつまりIGBT(T)によって接続される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来の技術の静的励磁システムの簡略化された回路図である。
【図2】エネルギー源としての静電容量を有する本発明の第1の実施の形態による静的エネルギーシステムの簡略化された回路図である。この静電容量は、スイッチを介して励磁回路内のダイオードに逆方向に接続可能である。
【図3】静電容量(tON)の接続後でこの静電容量の完全な放電(t′)までの励磁電圧(Uf ),励磁電流(If ),コンデンサ電圧(UC ),コンデンサ電流(IC )及びダイオード電流(ID )の例示的な経時変化を示す。
【図4】静電容量(tON)の接続後でこの静電容量の予定より早い遮断(tOFF )までの励磁電圧(Uf ),励磁電流(If ),コンデンサ電圧(UC ),コンデンサ電流(IC )及びダイオード電流(ID )の例示的な経時変化を図3と比較可能に示す。
【図5】本発明の別の実施の形態を示す。この実施の形態の場合、負の励磁電流及び/又は静電容量の変更した放電時間が可能になる。この静電容量は、個々のコンデンサの並列回路及び/又は直列回路から構成される。異なる半導体スイッチ(サイリスタ,GTO,IGBT)が、スイッチとして使用される。
【図6】連続した放電曲線を生成するための別々にスイッチオン可能なコンデンサの並列回路を示す。
【図7】図6中に示された回路に対する変更した実施の形態を示す。
【符号の説明】
【0037】
10,20 静的励磁システム
11 発電機の変圧器
12 励磁変圧器
13 電圧変換器
14 自動電圧制御器(AVR)
15 電流変換器
16 発電機
17 励磁巻線
18 サイリスタブリッジ
19 母線(発電機)
21 サイリスタ
22 ダイオード
23 静電容量
24 スイッチ
25 充電装置
26 受信機
27 アンテナ
28,30 抵抗
29 コンデンサ
C1,C2,C3 コンデンサ
D1,D2,D3 ダイオード
f 励磁電流
C コンデンサ電流
D ダイオード電流
f 磁場電圧
C コンデンサ電圧
T,T1,T2,T3 IGBT
Th サイリスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母線(19)を介して配電網に接続されている発電機(16)の励磁巻線(17)用の静的励磁システム(20)にあって、この静的励磁システム(20)は、励磁巻線(17)に接続されていて、この励磁巻線(17)と共に励磁回路を構成し、直流電圧を生成する第1手段(12,18,21)及び電気エネルギーを出力する第2手段(23;29,C1,...,C3)を有し、この第2手段(23;29,C1,...,C3)は、必要に応じて追加のエネルギーを励磁回路内に短期間に給電する励磁システムにおいて、順方向に接続されたダイオード(22)が、励磁回路内に挿入されていること、及び、エネルギーを励磁回路内に給電するため、これらの第2手段(23;29,C1,...,C3)は、ダイオード(22)の逆方向に接続可能であることを特徴とする励磁システム。
【請求項2】
第1手段(12,18,21)は、発電機(16)の母線(19)に接続されている励磁変圧器(12)及びこの励磁変圧器(12)の出力部に接続されている整流回路(18,21)を有することを特徴とする請求項1に記載の励磁システム。
【請求項3】
整流回路は、制御可能な整流回路、特にサイリスタブリッジ(18)として構成されていること、自動電圧制御器(14)が、整流回路つまりサイリスタブリッジ(18)を制御するために設けられていること、及び、この自動電圧制御器(14)の入力側が、電圧変換器(13)を介して発電機(16)の母線(19)に接続されていることを特徴とする請求項2に記載の励磁システム。
【請求項4】
第2手段(23;29,C1,...,C3)は、スイッチ(24)によってダイオード(22)に接続可能であることを特徴とする請求項3に記載の励磁システム。
【請求項5】
このスイッチ(24)は、半導体スイッチとして、特にサイリスタ(Th)として又はスイッチオフ可能な半導体スイッチとして、特にGTO又はIGBTとして構成されていることを特徴とする請求項4に記載の励磁システム。
【請求項6】
スイッチ(24)は、発電機の電圧及び/又は自動電圧制御器(14)の目標値に応じて制御可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載の励磁システム。
【請求項7】
第2手段は、充電可能な静電容量(23)として構成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の励磁システム。
【請求項8】
静電容量(23)は、直列及び/又は並列に接続されている1つのコンデンサ又は多数のコンデンサ(29,C1,...,C3)を有することを特徴とする請求項7に記載の励磁システム。
【請求項9】
静電容量(23)は、多数のコンデンサ(C1,...,C3)を有し、これらのコンデンサは、対応するスイッチ(24;T1,...,T3)によって互いに別々にダイオード(22)に接続可能であることを特徴とする請求項7に記載の励磁システム。
【請求項10】
コンデンサ(29;C1,...,C3)は、1〜10Wh/kg の一定のエネルギー密度を有するウルトラコンデンサ又はスーパーコンデンサとして構成されていることを特徴とする請求項8又は9に記載の励磁システム。
【請求項11】
充電装置(25)が、静電容量(23)つまりコンデンサ(29;C1,...,C3)を充電するために設けられていることを特徴とする請求項7〜10のいずれか1項に記載の励磁システム。
【請求項12】
スイッチ(24)は、有線信号又は無線信号を用いて受信機(26)を通じて操作可能であることを特徴とする請求項4又は5に記載の励磁システム。
【請求項13】
1つの抵抗が、ダイオード(22)に対して並列に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の励磁システム。
【請求項14】
励磁変圧器(12)の電圧が、プリセットされている値を下回る時に、第2手段(23;29,C1,...,C3)が、ダイオード(22)に接続されることを特徴とする請求項1に記載の励磁システムを作動させる方法。
【請求項15】
第2手段(23;29,C1,...,C3)は、発電機(16)の不足電圧設定値及び自動電圧制御器(14)の目標値に応じてダイオード(22)に接続されることを特徴とする請求項3に記載の励磁システムを作動させる方法。
【請求項16】
第2手段(23;29,C1,...,C3)は、通常運転では励磁速度を上げるために使用され、自動電圧制御器(14)の目標値に応じてダイオード(22)に接続されることを特徴とする請求項3に記載の励磁システムを作動させる方法。
【請求項17】
発電機(16)に接続されている配電網が、センターによって監視されること、及び、配電網内の不足電圧又は無効電力の要求時に、スイッチ(24)が、有線信号又は無線信号によってセンターから操作されることを特徴とする請求項12に記載の励磁システムを作動させる方法。
【請求項18】
静電容量(23)が放電されるまで、この静電容量(23)は、ダイオード(22)への接続後に接続され続けることを特徴とする請求項7に記載の励磁システムを作動させる方法。
【請求項19】
静電容量(23)は、ダイオード(22)への接続後にプリセットされている期間接続され続け、次いでダイオード(22)へのこの接続が再び遮断されることを特徴とする請求項7に記載の励磁システムを作動させる方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−518576(P2008−518576A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−538380(P2007−538380)
【出願日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/055231
【国際公開番号】WO2006/045703
【国際公開日】平成18年5月4日(2006.5.4)
【出願人】(503416353)アルストム テクノロジー リミテッド (394)
【氏名又は名称原語表記】ALSTOM Technology Ltd
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 7, CH−5401 Baden, Switzerland
【Fターム(参考)】