説明

発電装置

【課題】 発電能力を向上させることができる発電装置を提供する。
【解決手段】ケーシング4内に配置された固体酸化物形燃料電池2及び燃焼触媒含有部材3と、ケーシング4内の燃料電池2に向けて燃料ガス及び酸化剤ガスの混合ガスを供給する混合ガス供給手段10と、を備え、燃料電池2は、電解質20と、電解質20の一方面に配置された燃料極21と、電解質20の他方面に配置された空気極22と、を備え、燃焼触媒含有部材3の少なくとも一部が燃料電池2よりも混合ガスのガス供給方向Pの上流側に位置している発電装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体酸化物形燃料電池を備える発電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、次世代型のクリーンエネルギーとして燃料電池が注目を集めている。その中でも、固体酸化物形燃料電池は、高い発電効率を示すことで注目されている。固体酸化物形燃料電池は、燃料ガスの供給の仕方で、2種類に分けることができる。すなわち、燃料ガス及び酸化剤ガスを燃料極及び空気極にそれぞれ個別に供給するタイプの二室型と、燃料ガスと酸化剤ガスとの混合ガスを両電極に供給するタイプの単室型とに分けることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4418013号
【特許文献2】特開2002−280017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の二室型タイプの燃料電池では、セパレーターにより燃料ガスと酸化剤ガスとを分離しているが、両極の仕切りが十分にシールされていないとガスのリークが発生し電圧低下に伴い性能が低下する。そのため、単電池セルとセパレーターとの間にガスシールを施すのが通例である。しかしながら、このガスシールは、種々の材質からなるセルの構成要素に圧力をかけることにより施されるため、セルがスタックの作製時や、使用時における振動又は熱サイクルなどにより破損が生じやすい課題があった。また、二室型タイプの燃料電池は、セパレーターやガスシール材等を必要とするため、装置が複雑となっていた。
【0005】
そこで、燃料ガスと酸化剤ガスを予め混合して供給する単室型タイプの燃料電池が開発されている。これは燃料ガスとして炭化水素系のガスを用い、燃料極側に設置した燃焼触媒で燃料の部分酸化反応(CH+1/2O→CO+2H)を生じさせ、発生する水素を発電反応(H+1/2O→HO)に利用するものである。しかしながら、混合ガスを両電極へ流すため、燃料利用率が低くまた発電性能も二室型と比較して低いという問題があった。また、部分酸化反応は大きな発熱を伴うため、上流と下流で混合ガス中の燃料濃度の差により、セルの面内に熱分布が生じ破損してしまう問題があった。さらに、燃料極では発電反応(H+1/2O→HO)で生成した水によって炭化水素系の燃料ガスの水蒸気改質反応(CH+HO→CO+3H)が同時に起こるため、発電中のセルの面内熱分布が不均一となり、セルの大型化を困難にしていた。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、セル内温度分布の均一化とともに発電能力を向上させることができる発電装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための発電装置であって、ケーシング内に配置された少なくとも1つの固体酸化物形燃料電池及び燃焼触媒含有部材と、前記ケーシング内の前記固体酸化物形燃料電池に向けて燃料ガス及び酸化剤ガスの混合ガスを供給する混合ガス供給手段と、を備え、前記固体酸化物形燃料電池は、電解質と、前記電解質の一方面に配置された燃料極と、前記電解質の他方面に配置された空気極と、を備え、前記燃焼触媒含有部材の少なくとも一部が前記固体酸化物形燃料電池よりも前記混合ガスのガス供給方向の上流側に位置している。
【0008】
このような構成によれば、燃料電池よりもガス供給方向の上流側に燃焼触媒含有部材が配置されているので、この燃焼触媒含有部材による燃料ガスの燃焼反応によって燃料電池の上流側で燃料ガスを燃焼させることができると共に、燃焼触媒含有部材による燃料ガスの部分酸化反応によって水素を発生させることもできる。このとき、燃焼反応および部分酸化反応は発熱反応なので燃料電池を加熱することができる。また、混合ガス中の酸化剤ガスが多く残ったまま燃料極に到達すると、燃料極上で部分酸化反応と水蒸気改質反応が同時に進行するため、燃料電池の熱バランス(燃料電池の平面内の均一な温度分布)を保つことができないが、本発明の構成によれば、酸化剤ガスを前方の燃焼触媒含有部材によって消費するので、燃料極で部分酸化反応(発熱反応)が進行せず、水蒸気改質反応(吸熱反応)が進行することになる。また、燃焼触媒含有部材の燃焼反応の熱により周囲から燃料電池を加熱することができるため、燃料極上での水蒸気改質反応を促進できる(水蒸気改質反応の吸熱反応分の熱量を供給できる)一方、燃焼触媒含有部材で生じる部分酸化反応による水素や一酸化炭素を燃料極に供給できるため、電池性能を向上させることができる。
【0009】
また、燃料極の酸素が欠乏する一方、電解質の他方面の空気極には酸素を確実に供給することができ、起電力を安定化することが可能となり発電性能を向上することができる。
【0010】
また、上記発電装置において、前記ガス供給手段は、前記混合ガスを加湿して前記ケーシング内に供給することが好ましい。
【0011】
また、前記燃焼触媒含有部材は、前記空気極よりも前記燃料極に近い位置に配置されていることが好ましい。
【0012】
また、上記発電装置は、前記ケーシング内において前記固体酸化物形燃料電池よりも前記ガス供給方向の上流側に配置された整流部材を更に備えることが好ましい。
【0013】
また、上記発電装置は、前記固体酸化物形燃料電池の前記空気極に向けて酸化剤ガスを供給する補助酸化剤ガス供給手段を更に備えることが好ましい。
【0014】
また、上記発電装置は、前記固体酸化物形燃料電池の前記燃料極に向けて水蒸気を供給する水蒸気供給手段を更に備えることが好ましい。
【0015】
また、上記発電装置は、前記ケーシングの内部を燃料極空間及び空気極空間に分割するセパレーターと、前記ケーシング内の前記固体酸化物形燃料電池に向けて酸化剤ガスを供給する補助酸化剤ガス供給手段と、を更に備え、前記固体酸化物形燃料電池は、前記燃料極が前記燃料極空間に位置し、前記空気極が前記空気極空間に位置するように配置されており、前記混合ガス供給手段は、前記燃料極空間に前記混合ガスを供給し、前記補助酸化剤ガス供給手段は、前記空気極空間に酸化剤ガスを供給することが好ましい。
【0016】
また、上記発電装置は、前記固体酸化物形燃料電池を複数備え、複数の前記固体酸化物形燃料電池は、積層されてスタックを構成していることが好ましい。
【0017】
また、前記ケーシングは、断熱性を有していることが好ましい。
【発明の効果】
【0018】
本発明の発電装置によれば、発電能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態に係る発電装置の概略構成図である。
【図2】他の実施形態に係る発電装置の概略構成図である。
【図3】更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。
【図4】更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。
【図5】更に他の実施形態に係る発電装置の概略構成図である。
【図6】更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。
【図7】更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。
【図8】更に他の実施形態に係る発電装置の要部の斜視図である。
【図9】更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。
【図10】更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る発電装置の概略構成図である。図1に示すように、この発電装置1は、内部空間を有するケーシング4と、ケーシング4内に配置された固体酸化物形燃料電池(以下、「燃料電池」という)2及び燃焼触媒含有部材3とを備えている。また、発電装置1は、ケーシング4内の燃料電池2に向けて燃料ガス、酸化剤ガス及び水蒸気の混合ガスを供給する混合ガス供給手段10を備えている。
【0021】
ケーシング4は、矩形状に形成されており、混合ガスをケーシング4内に供給するための混合ガス供給口41と、ケーシング4から混合ガスを排出するためのガス排出口42とを備えている。この混合ガス供給口41及びガス排出口42は、ケーシング4の左右の側面にそれぞれ形成されており、燃料電池2を介して互いに対向するように形成されている。また、混合ガス供給口41及びガス排出口42には、後述する混合ガスライン16及び排ガスライン19がそれぞれ接続されている。また、ケーシング4は、断熱性を有するように構成されている。例えば、ケーシング4の材質を断熱性の材質にすることや、ケーシング4の外面又は内面を図示しない断熱材で覆うことにより、ケーシング4に断熱性を持たせることができる。
【0022】
燃料電池2は、平板状の電解質20と、電解質20の一方面(上面)に配置された薄膜状の燃料極21と、電解質20の他方面(下面)に配置された薄膜状の空気極22とを備えている。電解質20は、緻密体であることが好ましい。また、燃料極21及び空気極22は、いずれも多孔質であり、ガス透過性を有している。また、燃料電池2は、その側面が混合ガス供給口41と対向し、電解質20、燃料極21及び空気極22の上下面がそれぞれ混合ガスのガス供給方向Pに沿って延びるように配置されている。また、燃料極21の一方面(上面)及び空気極22の他方面(下面)には、集電体23がそれぞれ配置されており、集電体23を介して燃料電池2から電気を取り出すことができる。この集電体23は、メッシュ状の金属から形成されており、ガス透過可能に構成されている。また、上下の集電体23、23は、それぞれケーシング4の上部内面及び下部内面に固定されており、これにより、燃料電池2がケーシング4に固定されている。なお、集電体23は、図示しない配線に接続されている。
【0023】
燃焼触媒含有部材3は、矩形状に形成され、燃料電池2と混合ガス供給口41との間に配置されており、混合ガスのガス供給方向Pにおいて燃料電池2よりも上流側に位置している。また、燃焼触媒含有部材3は、燃料極21の近傍において燃料電池2から離間した位置に配置されている。また、燃焼触媒含有部材3は、ケーシング4の上部内面に固定されており、空気極22よりも燃料極21に近い位置に配置されている。この燃焼触媒含有部材3は、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、又はニッケルなどの燃焼触媒を含有する構成であり、例えば、矩形状の多孔質の金属又はセラミックスに前記の燃焼触媒を担持することにより形成されている。また、白金等の燃焼触媒を矩形状に成形することにより燃焼触媒含有部材3を形成することもできる。また、燃焼触媒含有部材3の形状は特に限定されるものではない。このような燃焼触媒含有部材3により、燃料ガスの燃焼反応により熱を発生させることができる。また炭化水素を酸化して一酸化炭素及び水素を生成する部分酸化反応を促進することができる。
【0024】
混合ガス供給手段10は、燃料ガスを供給する燃料ガス供給装置11と、燃料ガスを案内する燃料ガスライン13と、酸化剤ガスを供給する酸化剤ガス供給装置12と、酸化剤ガスを案内する酸化剤ガスライン14とを備えている。また、混合ガス供給手段10は、燃料ガス及び酸化剤ガスを混合して混合ガスを生成する混合器15と、混合ガスを案内する混合ガスライン16と、混合ガスを加湿する加湿器17とを備えている。
【0025】
燃料ガスとしては、例えば、メタン、エタン、プロパン等の炭化水素を用いることができ、酸化剤ガスとしては、例えば、酸素を含む空気等を用いることができる。
【0026】
燃料ガス供給装置11としては、タンク内の燃料ガスをポンプにより加圧して燃料ガスライン13に送出する公知の構成を用いることができる。また、燃料ガスライン13は、一端が燃料ガス供給装置11に接続され、他端が混合器15に接続されており、燃料ガスを燃料ガス供給装置11から混合器15に送ることができる。
【0027】
酸化剤ガス供給装置12としては、大気中の酸化剤ガス(空気)をポンプにより圧縮して酸化剤ガスライン14に送出する公知の構成を用いることができる。また、酸化剤ガスライン14は、一端が酸化剤ガス供給装置12に接続され、他端が混合器15に接続されており、酸化剤ガスを酸化剤ガス供給装置12から混合器15に送ることができる。
【0028】
混合器15は、合流する燃料ガス及び酸化剤ガスを容器内で均一に混合して混合ガスを生成するように構成されている。また、混合ガスライン16は、一端が混合器15に接続され、他端がケーシング4の混合ガス供給口41に接続されており、混合ガスを混合器15からケーシング4に送ることができる。これにより、混合ガス供給口41を介して混合ガスをケーシング4内に導入することができる。
【0029】
加湿器17は、混合ガスライン16の途中に設置されており、混合ガスライン16を通過する混合ガスを加湿することにより、混合ガスに水蒸気を更に混合することができる。また、加湿器17の設置位置は特に限定されるものではなく、例えば混合器15より上流側において、燃料ガスライン13及び酸化剤ガスライン14のそれぞれに加湿器17を設置し、燃料ガス及び酸化剤ガスをそれぞれ加湿することもできる。また、燃料ガスライン13又は酸化剤ガスライン14の一方に加湿器17を設置し、燃料ガス又は酸化剤ガスの一方を加湿することもできる。また、この加湿器17としては、後述する排ガスライン19を通過する排ガスに含まれる水蒸気を除去して、その水蒸気を膜を介して混合ガスライン16を通過する混合ガスに付加する水蒸気交換型の構成を用いることもできる。また、混合ガスライン16に水蒸気を通過させるだけでも混合ガスを加湿することができる。
【0030】
排ガスライン19は、一端がケーシング4のガス排出口42に接続されており、ケーシング4内の混合ガスをガス排出口42から排ガスとして外部に排出することができる。
【0031】
次に、上記の燃料電池2の各材料について説明する。
【0032】
燃料極21の材料としては、固体酸化物形燃料電池の燃料極の材料として公知のものに、水蒸気改質触媒を含有していることが好ましい。このとき用いられる水蒸気改質触媒としては、ニッケル、銅、ルテニウム等を例示できる。また、燃料極の材料は、例えば、金属触媒と、酸化物イオン導電体からなるセラミックス粉末材料との混合物を用いることができる。このとき用いられる金属触媒としては、ニッケル、鉄、コバルトや、貴金属(白金、ルテニウム、パラジウム等)等の還元性雰囲気において安定で、水素酸化活性を有する材料を用いることができる。また、酸化物イオン導電体としては、蛍石型構造又はペロブスカイト型構造を有するものを好ましく用いることができる。蛍石型構造を有するものとしては、例えばサマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物などを挙げることができる。また、ペロブスカイト型構造を有するものとしてはストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物を挙げることができる。上述したセラミックス材料は、1種類を単独で、或いは2種類以上を混合して使用することができる。上記材料の中では、酸化物イオン導電体とニッケルとの混合物で、燃料極を形成することが好ましい。ニッケルの場合、燃料極の活性と水蒸気改質機能を有するため、単体で用いることができる。なお、酸化物イオン導電体からなるセラミックス材料とニッケルとの混合形態は、物理的な混合形態であってもよいし、ニッケルへの粉末修飾などの形態であってもよい。
【0033】
電解質20の材料としては、固体酸化物形燃料電池の電解質として公知のものを使用することができ、例えば、サマリウムやガドリニウム等をドープしたセリア系酸化物(GDC)、ストロンチウムやマグネシウムをドープしたランタン・ガレード系酸化物、スカンジウムやイットリウムを含むジルコニア系酸化物(YSZ)などの酸素イオン伝導性セラミックス材料を用いることができる。
【0034】
空気極22の材料としては、固体酸化物形燃料電池の空気極の材料として公知のものを使用することができ、例えば、ペロブスカイト型構造等を有するCo,Fe,Ni,Cr又はMn等からなる金属酸化物を用いることができる。具体的には(Sm,Sr)CoO,(La,Sr)MnO,(La,Sr)CoO,(La,Sr)(Fe,Co)O,(La,Sr)(Fe,Co,Ni)Oなどの酸化物が挙げられ、好ましくは、(La,Sr)(Fe,Co)Oである。上述した材料は、1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用することができる。
【0035】
続いて、上記のような発電装置1により発電をする方法について説明する。発電をするときはまず、混合ガス供給手段10によりケーシング4内の燃料電池2に向けて混合ガスを供給する。より詳細には、燃料ガス供給装置11から燃料ガスを供給すると共に、酸化剤ガス供給装置12から酸化剤ガスを供給する。本実施形態では、燃料ガスはメタン(CH)とし、酸化剤ガスは酸素(O)を含む空気とする。また、燃料ガスと酸化剤ガスとの比率は適宜変更可能である。
【0036】
各装置から供給された燃料ガス及び酸化剤ガスは、それぞれ燃料ガスライン13及び酸化剤ガスライン14を通過して混合器15に導入されて合流し、この混合器15により両ガスが混合されて混合ガスが生成される。また、生成された混合ガスは、混合ガスライン16を通過して、ケーシング4の混合ガス供給口41からケーシング4の内部空間に導入される。このとき、混合ガスは混合ガスライン16を通過する過程で加湿器17により加湿され、混合ガスに水蒸気が付加される。これにより、燃料ガス、酸化剤ガス及び水蒸気の混合ガスが生成される。そして、水蒸気が付加された混合ガスが混合ガス供給口41からケーシング4内に供給され、ガス供給方向Pに向かって流れてゆく。
【0037】
その後、ガス供給方向Pに導入された混合ガスは、上流側から下流側(図面左方から右方)に向かって流れてゆき、燃焼触媒含有部材3及び燃料電池2を通過してゆく。このとき混合ガスでは、燃焼触媒含有部材3を通過する過程で以下の化学反応式で示す燃焼反応及び部分酸化反応が進み、この燃焼反応及び部分酸化反応により、混合ガス中の燃料ガス(メタン)が燃焼すると共に、酸化剤ガス(酸素)が消費され、水(HO)及び水素(H)が生成される。これにより、燃焼触媒含有部材3付近の混合ガスでは、酸化剤ガス(酸素)が無くなると共に、水素の量が増加する。また、混合ガス中の燃料ガス(メタン)の一部は残存している。そして、この混合ガスが燃料極21に供給される。
燃焼反応:CH+2O→CO+2H
部分酸化反応:CH+1/2O→CO+2H
【0038】
また、部分酸化反応で生成された水素は、燃料極21に供給され、燃料極21を通過する過程で電池反応により酸素イオンと反応し、以下の化学反応式で示す燃料極反応により水(HO)が生成される。
燃料極反応:H+O2−→HO+2e
【0039】
また、混合ガスに含まれている燃料ガス(メタン)と水蒸気(HO)は燃料極21に供給され、燃料極21において以下の化学反応式で示す水蒸気改質反応が進み、この水蒸気改質反応により水素(H)が生成される。ここで生成された水素も上記の燃料極反応により酸素イオンと反応する。
水蒸気改質反応:CH+HO→CO+3H
【0040】
一方、空気極22に供給される混合ガスは、燃焼触媒含有部材3付近を通過しないので、酸化剤ガス(酸素)が消費されずに残存したままである。そして、残存している酸化剤ガス(酸素)が空気極22に供給され、空気極22を通過する過程で電池反応により電子と反応し、以下の化学反応式で示す空気極反応より酸素イオン(O2−)が生成される。
空気極反応:1/2O+2e→O2−
【0041】
また、反応後のガスは排ガスとして排ガスライン19から外部に排出される。
【0042】
以上のように、混合ガス供給手段10からケーシング4内に混合ガスを供給することにより、燃料極21で燃料極反応が進むと共に空気極22で空気極反応が進み、これによって燃料極21と空気極22との間で電解質20を介した酸素イオン伝導が起こり、発電が行われる。
【0043】
上記のような構成を備える発電装置1によれば、燃料電池2よりガス供給方向Pの上流側に燃焼触媒含有部材3が配置されているので、この燃焼触媒含有部材3により、燃料ガス(メタン)が燃焼すると共に酸化剤ガス(酸素)が消費されて水素が発生する。(燃焼反応及び部分酸化反応が進行する。)このとき、燃料ガス(メタン)が燃焼する燃焼反応及び部分酸化反応は発熱反応なので、この発熱反応により燃焼触媒含有部材3の近傍で熱が生じ、この熱により燃料電池2が加熱されることになるが、発熱が燃料電池2において直接生じていないので、加熱されても燃料電池2の熱バランスを保つことができる。また、燃焼反応及び部分酸化反応により燃料極21の近傍における酸化剤ガス(酸素)が消費されるので、燃料極21では酸素の欠乏により部分酸化反応が進行せず、水蒸気改質反応のみが燃料極21で進行することになる。ここで、水蒸気改質反応は吸熱反応であり、燃料極21ではこの吸熱反応のみが進行して発熱反応(部分酸化反応)が進行しないので、燃料極21の熱バランスを保つことができる。また、水蒸気改質反応は部分酸化反応に比べて、上記化学反応式から明らかな通り、燃料ガスの単位供給量あたりの水素の発生量が多いので、燃料極21における水素の量を多くすることができる。以上より、本発明によれば、燃料電池2の上流側の燃焼触媒含有部材3近傍での発熱により燃料電池2を加熱するので燃料電池2の熱バランスを保つことができ、更に、燃料電池2では発熱反応(部分酸化反応)を抑えて吸熱反応(水蒸気改質反応)のみが進行するので燃料電池2の熱バランスを保つことができる。また、燃料極21における水素量を多くすることにより電池反応を促進することができる。よって、燃料電池2の熱バランスを保ちつつ電池反応を促進するので発電能力を向上させることができる。また、燃料電池2の熱バランスを保つことにより、燃料電池2を大型にすることができる。また、燃料極21の酸素が欠乏する一方、電解質20の他方面の空気極22には酸素を確実に供給することができ、起電力を安定化することが可能となり発電性能を向上することができる。
【0044】
また、混合ガスに水蒸気を混合して燃料電池2に供給することにより、燃料極21における水蒸気改質反応を促進することができる。また、燃焼触媒含有部材3を空気極22から離して燃料極21の近傍に配置すると、燃料極21近傍の酸化剤ガス(酸素)をより消費して水素を生成できるので、発電能力がより向上する。また、従来では、混合ガスのガス供給方向Aに沿って燃料電池2の熱バランスが悪化することがあったが、本発明では、ガス供給方向Pに沿って燃料電池2の熱バランスを保つことができるので、燃料電池2(電解質20、燃料極21及び空気極22)がガス供給方向Pに沿って延びる構成である場合に特に効果的である。また、燃料電池2(電解質20、燃料極21及び空気極22)の上下面の面積が大きくなると、熱バランスが乱れ易くなるので、それを防ぐためにも本発明は特に有効である。また、ケーシング4が断熱性を有することにより、発電装置1に外部から熱を加えなくても熱自立させることができる。
【0045】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の具体的な態様は、上記実施形態に限定されるものではない。
【0046】
図2は本発明の他の実施形態に係る発電装置の概略構成図である。図2において、図1と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。上記図1に係る実施形態では、混合ガスライン16に加湿器17が設置されていたが、図2に示すように、この加湿器17を省略することもできる。これにより、混合ガスに水蒸気を付加せずに、燃料ガス及び酸化剤ガスの混合ガスをケーシング4内に供給する。この場合は、燃料極21における燃料極反応によって発生する水(HO)により、燃料極21で水蒸気改質反応が進行する。
【0047】
また、図3は更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。図3において、図1と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。図3に示すように、他の実施形態に係る発電装置1は、ケーシング4内の空気極22に向けて酸化剤ガスを供給するための補助酸化剤ガス供給装置30及び補助酸化剤ガスライン31を更に備えていてもよい。補助酸化剤ガス供給装置30としては、大気中の酸化剤ガス(空気)をポンプにより圧縮して補助酸化剤ガスライン31に送出する公知の構成を用いることができる。また、補助酸化剤ガスライン31は、一端が補助酸化剤ガス供給装置30に接続され、他端がケーシング4の内部空間に開口しており、酸化剤ガスを補助酸化剤ガス供給装置30からケーシング4に導入することができる。このような構成によれば、空気極22に更に酸化剤ガス(酸素)を供給できるので空気極反応を促進することができる。
【0048】
また、図4は更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。図4において、図1と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。図4に示すように、他の実施形態に係る発電装置1は、ケーシング4内の燃料極21に向けて水蒸気を供給するための水蒸気供給装置32及び水蒸気ライン33を更に備えていてもよい。水蒸気供給装置32としては、水を加熱して水蒸気を生成し、ポンプにより水蒸気ライン33に送出する公知の構成を用いることができる。また、水蒸気ライン33は、一端が水蒸気供給装置32に接続され、他端がケーシング4の内部空間に開口しており、水蒸気を水蒸気供給装置32からケーシング4に導入することができる。このような構成によれば、燃料極21に水蒸気を供給できるので、燃料極21における水蒸気改質反応を促進することができる。そして、水蒸気改質反応により水素の発生量を増加させて、燃料極反応を促進することができる。
【0049】
また、図5は更に他の実施形態に係る発電装置の概略構成図である。図5において、図1と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。図5に示すように、他の実施形態に係る発電装置1は、ケーシング4の内部に複数のセパレーター40、40を備えていてもよい。このセパレーター40は、平板状のセラミックスや金属から形成されており、図示しない支持部材によって支持され、ガス供給方向Pに沿って延びるように配置されている。これにより、セパレーター40はケーシング4の内部空間を上下に区切っており、上側の燃料極空間44と下側の空気極空間45とに分割している。また、複数のセパレーター40、40は、燃料電池2を囲むように配置されており、燃料電池2の燃料極21が燃料極空間44に位置し、空気極22が空気極空間45に位置するように構成されている。また、セパレーター40と燃料電池2との間は、隙間が形成されていてもよいし、シール材等により密閉されていてもよい。また、セパレーター40とケーシング4の側面との間も同様に、隙間が形成されていてもよいし、シール材等により密閉されていてもよい。また、ケーシング4の側面には、酸化剤ガスをケーシング4内に供給するための酸化剤ガス供給口43が形成されている。このケーシング4では、混合ガス供給口41が燃料極空間44に向けて開口しており、酸化剤ガス供給口43が空気極空間45に向けて開口している。
【0050】
また、この実施形態に係る発電装置1は、ケーシング4内の空気極22に向けて酸化剤ガスを供給するための補助酸化剤ガス供給装置50及び補助酸化剤ガスライン51を更に備えている。補助酸化剤ガス供給装置50としては、大気中の酸化剤ガス(空気)をポンプにより圧縮して補助酸化剤ガスライン51に送出する公知の構成を用いることができる。また、補助酸化剤ガスライン51は、一端が補助酸化剤ガス供給装置50に接続され、他端がケーシング4の酸化剤ガス供給口43に接続されており、酸化剤ガスを補助酸化剤ガス供給装置50からケーシング4に導入することができる。
【0051】
このような構成によれば、混合ガス供給手段10から混合ガス供給口41を介して燃料極空間44に混合ガスが供給される一方、補助酸化剤ガス供給装置50から酸化剤ガス供給口43を介して空気極空間45に酸化剤ガスが供給される。これにより、空気極22に確実に酸化剤ガス(酸素)を供給することができ、空気極反応を促進することができる。
【0052】
また、上記実施形態では、燃焼触媒含有部材3の全体が燃料電池2の上流側に配置されていたが、この構成に限定されるものではなく、燃焼触媒含有部材3の少なくとも一部が燃料電池2より上流側に配置されていればよい。例えば、図6に示すように、燃焼触媒含有部材3は燃料電池2の上方を覆うように集電体23に固定されており、一端部(左端部)が、ガス供給方向Pにおいて燃料電池2の上流側に位置している構成であってもよい。このような構成によっても、燃焼触媒含有部材3の少なくとも一部が燃料電池2より上流側に位置することにより、燃料電池2の上流側で混合ガスを部分酸化反応させることができる。また、燃焼触媒含有部材3の配置位置は特に限定されるものではなく、図7に示すように、燃焼触媒含有部材3が、燃料電池2より上流側において、燃料電池2の側面と対向する位置に配置されていてもよい。このような構成によっても、燃料電池2の上流側で部分酸化反応を促進させることができる。また、燃料電池2の向きは特に限定されるものではなく、例えば、燃料極21の表面がガス供給方向Pと直交するように配置されていてもよい。
【0053】
また、上記実施形態では、混合ガスを加熱していなかったが、混合ガス供給手段10によりケーシング4内に混合ガスを導入する前に図示しないヒーターにより混合ガスを加熱してもよい。また、補助酸化剤ガス供給装置30及び50は、酸化剤ガス供給装置12と同じ装置であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態では、1つの燃料電池2を用いていたが、燃料電池2の数は特に限定されるものでははく、燃料電池2を複数用いてもよい。この場合は、複数の燃料電池2を互いに積層することによりスタック構造にすることができる。また、複数の燃料電池2によりスタックを構成する場合は、各燃料電池2の積層方向や配置の向きに応じて、混合ガスの供給方向を適宜調整することができる。例えば、積層された燃料電池2が互いに異なる向きを向いている場合は、図8に矢印で示すように、スタック構造が収容されたケーシング4に対して異なる向きから混合ガスを供給してもよい。
【0055】
また、図9に示すように、排ガスライン19の下流に燃焼器55を設置し、この燃焼器55に排ガスを供給することもできる。これにより、発電装置1の排ガスを燃焼器55において利用することができる。
【0056】
また、図10は更に他の実施形態に係る発電装置の要部の断面図である。図10において、図1と同様の構成部分については、同一の符号を付してその説明を省略する。図10に示すように、燃焼触媒含有部材3が空気極22よりも燃料極21に近い位置に配置されている場合は、ガスの流れを整流するための整流部材5をケーシング4内に配置することが好ましい。この整流部材5は、例えば、金属又はセラミックスの多孔質体からなり、混合ガスのガス供給方向において燃料電池2よりも上流側に配置されている。また、この整流部材5は、燃焼触媒含有部材3の下方においてケーシング4の底部に固定され、燃料極21よりも空気極22に近い位置に配置されている。また、本実施形態では、整流部材5及び燃焼触媒含有部材3が一体的に形成されている。具体的には、整流部材5及び燃焼触媒含有部材3は一体の多孔質体からなり、この多孔質体の燃料極21に近い側(上部)に燃焼触媒が含有されており、空気極22に近い側(下部)には燃焼触媒が含有されていない。これにより、燃料極21近傍に位置する燃焼触媒含有部材3と、空気極22近傍に位置する整流部材5とを形成することができる。このような構成によれば、整流部材5の存在により、ケーシング4内のガスの流れを均一にすることができる。すなわち、整流部材5が配置されていないと、燃焼触媒含有部材3が配置された燃料極側と配置されていない空気極側とでガス流れのスピードに違いが生じ、混合ガスが不均一に流れることになるが、整流部材5を配置すると、燃焼触媒含有部材3が配置された燃料極側と整流部材5が配置された空気極側とでガスの流れを一様にすることができる。これにより、燃料電池2の燃料極21及び空気極22にガスを均一に供給することができる。なお、整流部材5の構成は特に限定されないが、ガスの流れに対する抵抗が燃焼触媒含有部材3とほぼ同一になる構成が好ましい。また、上記実施形態では、燃焼触媒含有部材3及び整流部材5を一体的に形成していたが、必ずしも一体である必要はなく、両者が離間していてもよい。このような構成によっても整流部材5によりガスの流れを整流できる。
【符号の説明】
【0057】
1 発電装置
2 固体酸化物形燃料電池
3 燃焼触媒含有部材
4 ケーシング
5 整流部材
10 混合ガス供給装置
11 燃料ガス供給装置
12 酸化剤ガス供給装置
13 燃料ガスライン
14 酸化剤ガスライン
15 混合器
16 混合ガスライン
17 加湿器
19 排ガスライン
20 電解質
21 燃料極
22 空気極
30 補助酸化剤ガス供給装置
32 水蒸気供給装置
40 セパレーター
41 混合ガス供給口
42 ガス排出口
44 燃料極空間
45 空気極空間
50 補助酸化剤ガス供給装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング内に配置された少なくとも1つの固体酸化物形燃料電池及び燃焼触媒含有部材と、
前記ケーシング内の前記固体酸化物形燃料電池に向けて燃料ガス及び酸化剤ガスの混合ガスを供給する混合ガス供給手段と、を備え、
前記固体酸化物形燃料電池は、電解質と、前記電解質の一方面に配置された燃料極と、前記電解質の他方面に配置された空気極と、を備え、
前記燃焼触媒含有部材の少なくとも一部が前記固体酸化物形燃料電池よりも前記混合ガスのガス供給方向の上流側に位置している発電装置。
【請求項2】
前記ガス供給手段は、前記混合ガスを加湿して前記ケーシング内に供給する請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記燃焼触媒含有部材は、前記空気極よりも前記燃料極に近い位置に配置されている請求項1又は2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記ケーシング内において前記固体酸化物形燃料電池よりも前記ガス供給方向の上流側に配置された整流部材を更に備える請求項3に記載の発電装置。
【請求項5】
前記固体酸化物形燃料電池の前記空気極に向けて酸化剤ガスを供給する補助酸化剤ガス供給手段を更に備える請求項1から4のいずれかに記載の発電装置。
【請求項6】
前記固体酸化物形燃料電池の前記燃料極に向けて水蒸気を供給する水蒸気供給手段を更に備える請求項1から5のいずれかに記載の発電装置。
【請求項7】
前記ケーシングの内部を燃料極空間及び空気極空間に分割するセパレーターと、
前記ケーシング内の前記固体酸化物形燃料電池に向けて酸化剤ガスを供給する補助酸化剤ガス供給手段と、を更に備え、
前記固体酸化物形燃料電池は、前記燃料極が前記燃料極空間に位置し、前記空気極が前記空気極空間に位置するように配置されており、
前記混合ガス供給手段は、前記燃料極空間に前記混合ガスを供給し、
前記補助酸化剤ガス供給手段は、前記空気極空間に酸化剤ガスを供給する請求項1から6のいずれかに記載の発電装置。
【請求項8】
前記固体酸化物形燃料電池を複数備え、
複数の前記固体酸化物形燃料電池は、積層されてスタックを構成している請求項1から7のいずれかに記載の発電装置。
【請求項9】
前記ケーシングは、断熱性を有している請求項1から8のいずれかに記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−93236(P2013−93236A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235154(P2011−235154)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】