説明

発電装置

【課題】風力を利用して発電するために、風車を容易に設置することのできる構造を提供すること。
【解決手段】谷間に渡したワイヤー5に、風車1と発電機を吊り下げて構成した発電装置において、前記風車1の軸に設けられた筒状部材3の挿通孔31の両側の開口部32には、前記ワイヤー5の撓み変形に合わせた溝状の上方切欠き部34が形成されている。また、ローラーベアリング38を配設して、位置決めのための移動を容易にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は風力もしくは水力を利用した発電装置の設置構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年は、再生可能なエネルギーとして、自然界のエネルギーを利用して発電する技術が注目されている。自然エネルギーを利用した発電の一つに風力発電がある。従来の風力発電装置は、タワー等に設けた風車を風によって回転させて発電するように構成されていた。そのような風車による発電装置では、ある程度の地上高があるほうが風力が十分であるので、タワーの高さを安全に高くすることが必要である。
【0003】
しかし、高いタワーを建設することは、多額の建設費用が必要であるという問題があり、山間部の施設等のために設置して利用することは適していなかった。特に、山間部等においては、送電線を敷設することが不適当な場所等にある施設等に電力を供給するために、風力発電が利用できやすい条件にあるが、そのような場所に高いタワーを建設することは困難であるので、不便をきたしていたのである。
【0004】
そこで、山間部の自然地形である山と山の間の谷間に風車を配置して谷間を吹く風を有効利用することを目的として、発明者は既に特許文献1(実願平4−9620号:実開平6−73378号)および、特許文献2(特開平8−270539)において風力発電装置に関する技術を提案した。
それは、山又は構造物等の固定部の間に設けた索条にて、風車を空間において回転自在に保持するとともに、回転させることによって発電する発電装置を前記固定部に設置し、前記風車の回転を前記発電装置に伝達する伝達装置を設けたものである。また、風車を索条の所望の位置に位置決めできるように改良したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実願平4−9620(実開平6−73378)
【特許文献2】特開平8−270539
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これによって、山間部等の不便な地域においても、低い費用で無公害エネルギーである風力発電が効果的に利用できるようになった。
しかし、実際の山間部の谷間等に設けた索条は、直線状ではなく弛みが生じているため、索条と風車の軸との接触部分においては摩擦や磨耗の問題があり、長期間の安定的な使用が困難であるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明においては、前述した発電装置をさらに効果的に且つ長期間継続して使用できるようにすることを目的としているものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明では、
山又は構造物等の固定部の間に索条を設け、該索条が挿通された挿通孔を備えた筒状部材に、風車を回転自在に設けてなる発電装置において、
回転させることによって発電する発電装置を前記索条に吊り下げて設けるとともに、
前記風車の回転を前記発電装置に伝達する伝達装置と、前記風車と発電装置の位置を索条の所望の位置に位置決めする位置決め用ワイヤーとを備え、
さらに、
前記筒状部材の前記挿通孔の両側の開口部には、前記索条の撓み変形に合わせて上方切欠き部を形成した。
請求項2では、
前記上方切欠き部の内面には摩擦抵抗を低減するための滑り手段を配設した。
請求項3では、
前記滑り手段は、ローラーベアリングを用いた。
請求項4では、
前記索条の少なくとも何れか一方の端部の固定部には、前記索条の張りを調節する調節手段を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の発電装置によれば、
山又は構造物等の固定部の間に索条を設け、該索条が挿通された挿通孔を備えた筒状部材に、風車を回転自在に設けてなる発電装置において、
回転させることによって発電する発電装置を前記索条に吊り下げて設けるとともに、
前記風車の回転を前記発電装置に伝達する伝達装置と、前記風車と発電装置の位置を索条の所望の位置に位置決めする位置決め用ワイヤーとを備え、
さらに、
前記筒状部材の挿通孔の両側の開口部には、
前記索条の撓み変形に合わせて上方切欠き部を形成したので、
高所に保持された風車が風によって回転すると、伝達装置を介して発電装置が回転するので、電力が発生される。
本発明の発電装置によれば、少ない費用で風力発電が利用できるとともに、索条上において、風速等の条件の適した所望の位置に風車と発電装置とを位置決めできるので、優れた発電効果が得られる。特に、従来は施工も困難であった山間部等において、風車を索条に沿って所望の移動できるので、施工が容易になるという効果も得られる。
【0010】
また、位置決め用ワイヤーを引っ張ることによって風車を所望の位置に移動させることができる。そして、所望位置に移動させた後に、位置決め用ワイヤーを固定することによって位置決めして、その位置にて回転するように設定する。
このようにして、張られた索条上に位置において、充分な風量・風速の得られる位置に風車を設置することができるのである。
さらに、
前記筒状部材の挿通孔の両側の開口部には、撓みによる変形に合わせた上方切欠き部を形成したので、前記索条が撓んでいる場合に、索条が開口部の角でストレスを受けにくくなっている。
また、前記上方切欠き部の内面には摩擦抵抗を低減するための滑り手段を配設したので、位置決め用ワイヤーを引っ張って移動させる場合に、索条と挿通孔の両端の間の摩擦抵抗が低減し、軽い力で移動させることができる。
前記滑り手段は、ローラーベアリングを用いることにより、摩擦抵抗が低減されることに加えて、優れた耐久性も得ることができる。
また、前記索条の少なくとも何れか一方の端部の固定部が、前記索条の張りを調節する調節手段を備えているので、索条を張ってからの経過によって索条が延びて撓み量が増えた場合にも、最適な張りに調節することができる。

【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る発電装置の全体概略図である。
【図2】前記発電装置の要部の拡大断面図である。
【図3】図2の要部の正面断面図である。
【図4】図2の要部の端面図である。
【図5】前記発電装置の調節手段の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の発電装置を実施するための形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1は、風車を、谷間を挟んで向かい合った山の斜面の間に張った索条に設置した状態の要部を示す図である。
【0013】
図1において、
1は風車であり、この風車1のシャフト2は、内側の筒状部材3と、外側の外管4の二重構造になっており、筒状部材3には挿通孔31が形成されており、この挿通孔31にはワイヤー5が挿通されている。この筒状部材3と外管4との間にはローラーベアリング41が配されて、少ない抵抗で回転するように構成されている。前記ローラーベアリング41の軸は、前記ワイヤー5と平行な向きになっている。
外管4にはフランジを介して、複数枚の羽根6が固定されている。
【0014】
7は、回転させることによって発電する発電機であり、筒状部材3の延長部に、増速機と共に吊り下げられている。そして、風車1の回転に伴って回転する外管4の回転を、発電機7に伝達するためのギアやベルトを用いた伝達装置を備えている。この伝達装置は、減速装置や増速装置等の速度調節装置を内蔵してもよい。
【0015】
8は、風車1と発電機7の位置をワイヤー5の所望の位置に位置決めするための位置決め用ワイヤーであり、一端が筒状部材3に設けられた固定部に固定されている。位置決め後には、位置決め用ワイヤー8の一端は前記斜面(図示省略)にアンカーで固定され、他端は山の斜面(図示省略)にアンカーで固定されている。なお、位置決め用ワイヤー8に加えて横揺れや上下方向の揺れを少なくするための位置保持ワイヤーを設けてもよい。
風車1、シャフト2、筒状部材3、外管4、ワイヤー5、羽根6、発電機7、及び位置決め用ワイヤー8によって、本発明の発電装置10は構成されている。
【0016】
次に、筒状部材3の詳細構造を示した図2、3、4を参照して説明する。
図2において、
挿通孔31の両側の開口部32には、上方切欠き部34が形成されている。
この上方切欠き部34は、前記ワイヤー5の撓み変形に合わせて挿通孔31の開口部32の近傍を上側に削って切り欠いて溝状部36を形成したものである。この溝状部36の幅は、ワイヤー5の断面より若干大きく形成されており、ワイヤー5と溝状部36とが擦り会って接する部分には、移動がスムーズになるように、潤滑剤やローラーベアリング38が配設されている。前記ローラーベアリング38の軸は、前記ワイヤー5と直交する向きになっている。
【0017】
なお、風車1の回転方向が一定になるように、各羽根6の断面形状を「く」の字型や、他の効果的な形状に形成しておくとよい。
発電機7を位置決め用ワイヤー8で地上に対して移動を規制することによって、発電機7が風車の回転トルクで索条の回りに回転することを防止した。
【0018】
本発明に係る発電装置10は、以上のように構成したので、谷間を通る風によって風車1が回転すると、発電機7において電力を得ることができるのである。得られた電力はケーブルによって地上に導き利用するのである。
この発電装置10によれば、自然の風を利用して無公害の発電をすることができるとともに、ワイヤー5によって風車1を空中に保持するので、建設費用も嵩むことがなく経済的な効果も得られる。また、位置決め用ワイヤー8によって、索条の所望の位置に風車を移動させて位置を設定することができ、風速等の条件の最適な位置に設置できるのである。
【0019】
ワイヤー5の両端は、コンクリート製のアンカー等にそれぞれ固定しておく。なお、図5に示したように、前記ワイヤー5の少なくとも何れか一端に、ワイヤー5の張りを調節する調節手段9を備えると、設置時やワイヤー8が伸びた場合などにおいて、張り具合の調節が容易にできる。調節手段9は、例えば、図示したようにボルト・ナット等によって長さを調節可能に構成されている。
【0020】
なお、伝達装置としては、ベルトに限定されるものではなく、チエーン等を用いることも可能である。
更に、谷間に限らず、ビルの間に設置することも可能である。また、平地に簡単なポールを設置し、これらの間に敷設したワイヤーに風車を設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明は、風力を利用した発電に限らず、河川の流れや潮流を利用した発電にも広く応用することができる。
【符号の説明】
【0022】
1 風車
2 シャフト
3 筒状部材
31 挿通孔
32 開口部
34 上方切欠き部
36 溝状部
38 ローラーベアリング、滑り手段
4 外管
5 ワイヤー、索条
6 羽根
7 発電機
8 位置決め用ワイヤー
9 調節手段
10 発電装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
山又は構造物等の固定部の間に索条を設け、該索条が挿通された挿通孔を備えた筒状部材に、風車を回転自在に設けてなる発電装置において、
回転させることによって発電する発電装置を前記索条に吊り下げて設けるとともに、
前記風車の回転を前記発電装置に伝達する伝達装置と、前記風車と発電装置の位置を索条の所望の位置に位置決めする位置決め用ワイヤーとを備え、
さらに、
前記筒状部材の前記挿通孔の両側の開口部には、
前記索条の撓み変形に合わせて上方に切り欠いた上方切欠き部を形成したことを特徴とする発電装置。
【請求項2】
前記上方切欠き部の内面において前記索条と擦り会う部分には摩擦抵抗を低減するための滑り手段を配設したことを特徴とする請求項1に記載の発電装置。
【請求項3】
前記滑り手段は、ローラーベアリングを用いたことを特徴とする請求項2に記載の発電装置。
【請求項4】
前記索条の少なくとも何れか一方の端部の固定部には、
前記索条の張りを調節する調節手段を備えていることを特徴とする請求項1、2、3の何れか1項に記載の発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−96240(P2013−96240A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237004(P2011−237004)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(592041926)
【Fターム(参考)】