説明

白木木材の触感を有する表面加飾用フィルム

【課題】触感の観点からフィルムを特化し、吸放湿性とキメの細かさを付与することにより、白木木材の触感を有する表面加飾用フィルムを提供すること。
【解決手段】基材フィルム1面上にコーティングよる表面加飾層2を設けた表面加飾用フィルムであって、表面加飾層2のコート量(固形分)が10g/m以上18g/m以下、表面加飾層のかさ密度が0.40g/cm以上であり、表面加飾層を構成する水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)及び粒子(D)の組成割合(重量比)が、特定の範囲である表面加飾用フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面加飾用フィルムに関する。更に詳しくは、触感の観点からフィルムを特化したものであって、白木木材の触感を有しており、その白木木材の触感により、人が触った時に好ましいと感じる好触感な表面加飾用フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年印刷技術の向上により、見ただけでは本物の木、天然の木と区別が付かないほど美しく木目や木肌柄が印刷された表面加飾用フィルムが見受けられる。それらはフィルムで構成されているため、木材の欠点である、変形する、均一物が得られない、などの欠点を補い、変形が少なく、均一な表面が多量に得られることになり、我々の生活を豊かなものにしてくれている。
【0003】
一方、外観では本物の木に極めて近い表面加飾用フィルムが得られるようになったものの、そのような表面加飾用フィルムを人が手で触ると瞬時に木ではないとわかり、裏切られた気持ちになる。これは、触った時に感じられる触感が、木の外観から想像される本物の木の触感とかけ離れていることから、触感の違いに感覚のズレを感じて起こると考えられる。
【0004】
この傾向は、表面に塗装を施していない無垢の木、いわゆる白木木材において特に顕著である。なぜなら木材は最終的な仕上げ時にその表面に塗料やニスなどを塗装する場合も多く、塗料やニスによって木材表面が覆われてしまうと、後述するように、表面からの吸放湿性が阻害され、キメの細かさがつぶされてしまうために、その表面には白木木材の触感がなくなってしまうからである。よって、上述した外観から想像される触感と、実際に触った時に感じられる触感との感覚のズレが非常に大きく問題となるのは、表面に塗装を施していない無垢の木、いわゆる白木木材においてである。
【0005】
しかし、従来一般的な表面加飾用フィルムは、外観のみ木に近似させることにこだわられており、その触感において、塗装を施していない無垢の木、いわゆる白木木材の触感を付与することはなされていない。すなわち、フィルムに吸放湿性やキメの細かさを付与し、白木木材の触感を物理的に構成するという技術は世の中に確立されていないことを示している。すなわち、表面加飾用フィルムでは、触感の観点からフィルムを特化し、白木木材の触感を有する表面加飾用フィルムというものは、これまでに提案されていなかった。
【0006】
なお、本発明の表面加飾用フィルムと同様の構成を有する記録用媒体が知られている(特許文献1参照)。前記記録用媒体は、多量の液体のインクの吸収性、即ち吸水性に優れている属性を発見し、記録用媒体の用途に使用されることが開示されているものである。一方、本発明は、手から発生する不感蒸泄水分を吸湿するなど、気体の水蒸気の吸放湿性及び特定の表面凹凸特性に基づいて白木木材のような触感が得られるという新たな属性を発見し、新たな表面加飾用のフィルムの用途を発明したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−109473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術の問題点を背景になされたものである。すなわち、本発明の目的は、触感の観点からフィルムを特化し、吸放湿性とキメの細かさを付与することにより、白木木材の触感を有する表面加飾用フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者はまず、表面に塗装を施していない無垢の木、いわゆる白木木材とフィルムの触感の違いと、触感の違いがどのような物理特性によるものかについて鋭意検討した。その結果、白木木材の触感は、べたつかず、適度なキメ細かさを感じ、手に貼り付くことがない触感であるのに対し、フィルムの触感は、べたつき感を感じ、キメが感じられず、手に貼り付く触感であるという触感の違いを見出した。また、白木木材とフィルムの物理物性の違いは、白木木材は、空気中の水分を吸ったり放したりの吸放湿性能があり、表面にキメを形作る凹凸があるのに対し、フィルムは白木木材より吸放湿性能が劣り、表面はエンボス加工など機械的に凹凸付与加工を施さない限り極めて平坦でキメを感じる凹凸がないことによるものであることを見出した。
【0010】
すなわち、人がフィルム表面に触った時に、手から発生する不感蒸泄水分を吸湿し、また手を離した後は水分を放湿できればべたつく触感はなくなり、表面凹凸感すなわち表面粗さが一定範囲にあれば白木木材のキメと感じられる触感が得られ、静摩擦係数が一定以下であれば手に貼り付く触感がなくなることを見出したのである。
【0011】
よって、吸放湿性能に優れ、適度な表面粗さを持ち、静摩擦係数が低いフィルムを構成すれば、白木木材の触感を有する表面加飾用フィルムを提供できると考えるに至った。そして以下に示す手段により、上記要件を満たす表面加飾用フィルムが得られることを見出し、本発明に到達した。すなわち、本発明は、以下の構成からなる。
【0012】
1. 基材フィルム面上にコーティングよる表面加飾層を設けた表面加飾用フィルムであって、表面加飾層のコート量(固形分)が10g/m以上18g/m以下、表面加飾層のかさ密度が0.40g/cm以上であり、表面加飾層を構成する水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)及び粒子(D)の組成割合(重量比)が、以下の範囲であることを特徴とする表面加飾用フィルム。
A/B=95/5〜55/45 (1)
(A+B)/C=97/3〜60/40 (2)
(A+B+C)/D=1/1〜1/2.5 (3)
2. 33℃40%RH環境にて24hr調湿後、33℃80%RH環境に移動静置し30分後における、表面加飾層面のみからによる吸湿機能としての重量増加量が、0.010g/100cm・30分以上となる吸湿性能を有することを特徴とする上記第1に記載の表面加飾用フィルム。
3. 33℃80%RH環境にて24hr調湿後、33℃40%RH環境に移動静置し30分後における、表面加飾層面のみからによる放湿機能としての重量減少量が、0.0055g/100cm・30分以上となる放湿性能を有することを特徴とする上記第1又は第2に記載の表面加飾用フィルム。
4. KES表面試験機で測定される表面加飾層の表面粗さSMDが、0.3〜2.0μmであることを特徴とする上記第1〜第3のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
5. KES表面試験機で測定される表面加飾層の静摩擦係数が、2.5以下であることを特徴とする上記第1〜第4のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
6. 表面加飾用フィルムの表面加飾層とは反対側のフィルム面上に粘着層が設けられてなることを特徴とする上記第1〜第5のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
7. 粘着層面上に離型層が設けられてなることを特徴とする上記第6に記載の表面加飾用フィルム。
8. 基材フィルムが、少なくとも1軸に配向したプラスティックフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
9. 基材フィルムの見かけ比重が、0.50以上1.30以下であることを特徴とする上記第1〜第8のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
10. 基材フィルムが、内部に微細な空洞を含有するポリエステルフィルムを含んでなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
11. 水溶性樹脂(A)が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドンであることを特徴とする上記第1〜第10のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
12. 硬化剤(B)が、水溶性メラミン樹脂及び/又はメチロール基含有尿素樹脂であることを特徴とする上記第1〜第11のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【0013】
上記第1に、「表面加飾層を設けた表面加飾用フィルム」と記載しているが、「表面加飾層が存在することによって、フィルムで他の建材、車両や家具などの内装、その他物品などの表面を覆って加飾することができる層」という意味であって、「フィルムの表面を加飾した層」という意味ではない。
【発明の効果】
【0014】
本発明の表面加飾用フィルムは、触感の観点からフィルムを特化したものであり、 吸湿性、放湿性、キメを感じるような表面粗さ、及び低い静摩擦係数をフィルム表面の加飾層に付与しているため、べたつき感がなく、細かなキメを感じ、手に貼り付くことがなくなり、白木木材の触感を有している。
【0015】
よって、外観の観点では木目調、木質調を呈した従来表面加飾用フィルムで感じられる、人が触った瞬間に木ではないとわかり、裏切られた気持ちになることがなく、木の外観から想像される触感と、触った時に感じられる触感との感覚のズレがなくなり、人が触った時に好ましいと感じる好触感な表面加飾を行うことができる表面加飾用フィルムを得ることができる。
【0016】
このような表面加飾用フィルムは、触感が重視される建材用途、車両や家具などの内装用途、またフィルムを使用して表面加飾を行う各種の成形加工用途などに有用であり、特に、頻繁に手で触れる物品の表面加飾用フィルムとして好適である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の表面加飾用フィルムの断面模式図の一例を示す。
【図2】本発明の表面加飾用フィルムの断面模式図の他の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の表面加飾用フィルムの実施の形態を説明する。
【0019】
本発明において、基材フィルムは特に限定されるものではないが、好ましくは、プラスティックフィルムであり、基材フィルムを形成する樹脂としては特に限定されるものではなく例えばポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリスチレン、ポリアクリル系樹脂、ポリビニル系樹脂等があげられるが、特に好ましいのは以下に述べるポリエステルである。
【0020】
本発明において好ましく用いられるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールのごときグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる方法のほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後重縮合させるか、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させる等の方法によって製造することができる。かかるポリエステルの代表例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2,6−ナフタレート等が挙げられる。このポリエステルはホモポリマーであってもよく、第三成分を共重合したものであっても良い。いずれにしても本発明においては、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位あるいはエチレン−2,6−ナフタレート単位が70モル%以上、好ましくは80モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であるポリエステルを用いるのが好ましい。
【0021】
本発明において好ましく用いられる基材フィルムは、好ましくは以下に述べる微細空洞含有プラスティックフィルム、より好ましくは内部に微細な空洞を含有するポリエステルフィルム、即ち、微細空洞含有ポリエステル系フィルムである。
【0022】
本発明の微細空洞含有プラスティックフィルムは、単層フィルムであっても、2層以上の複合フィルムであってもかまわない。
【0023】
本発明において用いる空洞含有プラスティックフィルムは、熱可塑性樹脂、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリアミド等の1種又は2種以上を主成分とする微細空洞含有プラスティックフィルムであって、好ましくは、ポリエチレンテレフタレートを主成分とする微細空洞含有ポリエステルフィルムである。
【0024】
本発明において用いるのが好ましい微細空洞含有プラスティックフィルムは、その厚みが通常1〜1000μ程度、好ましくは10〜250μ程度である。また、実質的に微細空洞を含有しないプラスティックフィルムが微細空洞含有プラスティックフィルムの一方の面又は両方の面に積層されている場合の厚みはそれぞれ1〜100μ、好ましくは1〜50μ程度であり、その厚み比は、実質的に微細空洞を含有しないプラスティックフィルム/微細空洞含有プラスティックフィルム=1/1〜1/100、好ましくは1/2〜1/50程度である。本発明において用いる微細空洞含有プラスティックフィルムは、微細空洞含有率は20体積%以上、特に20〜80体積%、さらに20〜50体積%であるのが好ましい。
【0025】
本発明で用いるのに好ましい微細空洞含有プラスティックフィルムは、見かけ比重が0.50〜1.30、好ましくは0.90〜1.30、より好ましくは1.05〜1.27である。見かけ比重が0.50未満では空洞含有率が大きすぎ、フィルムの強度が不足したり、フィルム表面のワレやシワが生じやすくなることがありあまり好ましくない。逆に、見かけ比重が1.30を超えると、微細空洞含有率が小さくなりすぎ、クッション性や柔軟性等、微細空洞を含有することによって生じる特性が損なわれる。この比重を下げる方法は、特に限定されるものではないが、好ましくはポリエステル中に該ポリエステルに非相溶の樹脂及び/又は不活性粒子を含有し、少なくとも1軸に配向することにより内部に微細な空洞を含有することポリエステルフィルムを得ることができる。もちろん2軸延伸ポリエステルフィルムも好ましく使用できる。
【0026】
以下においては、本発明において用いるのに典型的な微細空洞含有ポリエステルフィルムの場合について、さらに具体的な特性とその製造法を記すが、本発明で用いる微細空洞含有プラスティックフィルムはかかるポリエステルフィルムに限定されないことはもちろんである。
【0027】
本発明において好ましく用いられる微細空洞含有ポリエステルフィルムの製造には通常ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を併用するが、具体的なポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂は、ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリアクリル系樹脂等である。
【0028】
本発明においては、ポリエステルと該ポリエステルに非相溶性の熱可塑性樹脂を混合し、必要に応じて二酸化チタン、二酸化珪素、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の無機粒子を含有させることができる。さらに、重合体混合物には着色剤、耐光剤、帯電防止剤等を添加することも可能である。こうして得た重合体混合物は、ロール延伸、テンター延伸、あるいはインフレーション延伸法等によって公知の条件により少なくとも1軸、好ましくは2軸に延伸・配向し、しかる後熱処理する。このとき、ポリエステルとポリエステルに分散した非相溶性の熱可塑性樹脂との界面で剥離が起こり重合体混合物に空洞が多数発生する。ポリエステルに混合する、ポリエステルに非相溶牲の熱可塑性樹脂の量は、目的とする微細空洞の量によって異なってくるが、ポリエステル100重量部に対して3〜50重量部が好ましく、特に10〜40重量部が好ましい。また、微細空洞含有プラスティックフィルムの少なくとも一方の面に、単層又は複数層の熱可塑性樹脂からなる実質的に微細空洞を含有しないプラスティックフィルムが積層されていてもよい。2以上の層を積層する方法は本発明においては、特に限定されるものではない。しかし生産性を考慮すると、表層と中心層の原料は別々の押出機から押出し、1つのダイスに導き未延伸シートを得た後、少なくとも1軸に配向させる、いわゆる共押出法による積層がもっとも好ましい。実質的に微細空洞を含有しないプラスティックフィルムは、前記の微細空洞含有プラスティックフィルムと同様、任意の熱可塑性樹脂によってよいが、特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等の1種又は2種以上を主成分とすることが好ましい。プラスティックフィルムの表面をコロナ処理などで濡れ性を高めることや、粗面化させて接着性を高めることも好ましい。また、コーティングなどの方法で易接着層を設けておくこともできる。
【0029】
本発明の表面加飾用フィルムは、前記のフィルム上に表面加飾層が形成されている。好ましい表面加飾層としては、水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)及び粒子(D)からなる層である。かかる表面加飾層を形成するコート剤のフィルムへの塗布量(固形分)は、限定するものではないが、好ましくは10〜18g/m、特に好ましくは10〜17g/mである。塗布量が10g/m未満では、吸放湿性能が充分に付与できず、よってべたつく触感となりあまり好ましくない。また18g/mを越えると、バランス的にコート量が多過ぎるようになるので、表面加飾を行う際の貼り付けや成形加工が行いにくくなり、取り扱い性の観点からあまり好ましくない。
【0030】
本発明の表面加飾用フィルムは、表面加飾層のかさ密度が0.40g/cm以上であることが好ましい。かさ密度が0.40g/cm未満では、充分な吸放湿性能が付与できないため、べたつき感のある触感となるのであまり好ましくない。また、表面加飾層のかさ密度は0.60g/cm以下であることが好ましく、表面加飾層のかさ密度が0.60g/cmを超えると、バランス的にコート量が多過ぎるようになるので、表面加飾を行う際の貼り付けや成形加工が行いにくくなり、取り扱い性において好ましくない。
【0031】
本発明の表面加飾用フィルムに設けた表面加飾層は、特に限定されないが、水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)及び粒子(D)からなることが好ましい。本発明の表面加飾層を形成するのに好ましい水溶性樹脂(A)は公知のものを使用でき、例えばポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル系樹脂、ポリビニルアルコール、アクリル樹脂、デンプン、ポリビニルブチラール、ゼラチン、カゼイン、アイオノマー、アラビアゴム、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、スチレン−ブタジエンゴム等の樹脂のうち、1種又は2種以上が所望により使用できる。インクジェット表面加飾用フィルムとして用いる場合には、好ましくはポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドンである。
【0032】
本発明の表面加飾層を形成するのに好ましい硬化剤(B)は、水溶性樹脂(A)を硬化させるものであるならば公知のものを使用でき、例えばメラミン樹脂、エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート基含有樹脂、グリオキザール、イソバン、ほう砂等であるが、好ましくは水溶性メラミン又はメチロール基含有尿素樹脂である。
【0033】
本発明の表面加飾層を形成するのに好ましいカチオン性物質(C)は公知のものが使用でき、例えばカチオン変性したポリビニルアルコール、カチオン変性ポリエステル、カチオン変性ポリアミド、ジアリルアミン重合体、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、カチオン変性界面活性剤等、カチオン変性したものならば限定せずに使用できる。
【0034】
本発明の表面加飾層を形成するのに好ましい粒子(D)は有機、無機のものいずれも使用でき、例えば二酸化チタン、炭酸カルシウム、二酸化珪素、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、ゼオライト、酸化亜鉛、ベンゾグアナミン粒子、架橋アクリル粒子、架橋スチレン粒子など特に限定されるものではない。また、これらは1種類でも、2種類以上併用しても構わない。使用する粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、好ましくはコールカウンター法で測定した場合に0.2〜20μm、より好ましくは2〜15μmである。
【0035】
本発明においては、表面加飾層を形成するため、水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)及び粒子(D)の配合量の割合(重量比)が以下のようになることが好ましい。まず、水溶性樹脂(A)と硬化剤(B)の割合は、A/B=95/5〜55/45であることが好ましく、より好ましくは=95/5〜60/40、更に好ましくは=95/5〜70/30である。(A)が55未満/(B)が45を超える組成では、吸放湿性能が充分に付与できず、よってべたつく触感になりやすくあまり好ましくない。(A)が95を超え/(B)が5未満の組成では、水溶性樹脂が硬化しにくくなり、安定した塗布が行われづらくなり、また塗布ムラが発生して仕上がりが不良になる場合があるのであまり好ましくない。
【0036】
水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)及びカチオン性物質(C)の割合は(A+B)/C=97/3〜60/40であることが好ましく、より好ましくは=95/5〜60/40、更に好ましくは88/12〜78/22である。(A+B)が60を超え/(C)が40未満の組成では、充分な吸放湿性能が付与できず、よってべたつく触感となりやすくあまり好ましくない。(A+B)が97を超え/(C)が3未満の組成では、水溶性樹脂と硬化剤の定着が困難となり、安定した塗布が行われづらく、また塗布ムラが発生して仕上がりが不良になる場合があるのであまり好ましくない。
【0037】
水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)及び粒子(D)の割合は(A+B+C)/D=1/1〜1/2.5であることが好ましく、より好ましくは1/1.2〜1/2である。(A+B+C)が1を超え/Dが1未満の組成では、充分な吸放湿性能が付与できず、よってべたつく触感となりやすいのであまり好ましくない。(A+B+C)が1未満であり/Dが2.5を超える組成では、粒子が多過ぎるために、ざらついた触感となり、キメの細かい触感が得づらくなるのであまり好ましくない。
【0038】
表面加飾層は、一層からなるものでも、また2層以上の構成をとっても構わない。表面加飾層を設ける方法は特に限定されるものではないが、グラビアコート方式、キスコート方式、ディップ方式、スプレイコート方式、カーテンコート方式、エアナイフコート方式、ブレードコート方式、リバースロールコート方式、バーコート方式などであり、通常用いられている方法が適用できる。
【0039】
本発明においては、上記の原料により好ましくは、以下のような乾燥条件を用いて、コートした層を乾燥することにより前記したような特性の表面加飾用フィルムが得ることができる。即ち、乾燥の開始直後は100〜120℃とし、その後10〜20℃ずつあげて最高140〜160℃で乾燥することが好ましい。この条件を満たすことによりかさ密度が最適化され、吸放湿性能と取り扱い性とがバランスしやすい。また乾燥温度の代わりに、熱風の風速を最初低くし徐々に高くしていくといった方法も同様に使用できる。
【0040】
本発明の表面加飾用フィルムは、33℃40%RH環境にて24hr調湿後、33℃80%RH環境に移動静置し30分後における、表面加飾層面のみからによる吸湿機能としての重量増加量が、0.010g/100cm・30分以上となる吸湿性能を有することが好ましく、更に0.030/100cm以上有することが好ましく、更に0.050/100cm以上有することが非常に好ましい。吸湿性能が0.010g/100cm・30分未満の場合は、人がフィルム表面に触った時に、手から発生する不感蒸泄水分の吸湿が悪く、べたつく触感となり、白木木材の触感特徴を得にくくなるのであまり好ましくない。なお、吸湿機能としての重量増加量が、1.00g/100cm・30分を超える場合は、人がフィルム表面に触った時、必要以上に急激に手の水分が奪い去られる状態となり、結果的として白木木材の触感特徴を感じにくくなるのであまり好ましくない
【0041】
本発明の表面加飾用フィルムは、33℃80%RH環境にて24hr調湿後、33℃40%RH環境に移動静置し30分後における、表面加飾層面のみからによる放湿機能としての重量減少量が、0.0055g/100cm・30分以上となる放湿性能を有することが好ましく、更に0.010g/100cm以上有することが好ましく、更に0.030/100cm以上有することが非常に好ましい。吸湿性能が0.0055g/100cm・30分未満の場合は、人がフィルム表面に触った時に、手から発生する不感蒸泄水分を吸湿した後の放湿が悪く、べたつく触感となり、白木木材の触感特徴を得にくくなるのであまり好ましくない。なお、放湿機能としての重量減少量が、0.55g/100cm・30分を超えると、放湿機能が高過ぎるため、フィルム表面に存在していた水分が、急激に失われていくことになり、フィルム表面の乾燥が激しくなるので、かさかさ、がさがさといった乾いた触感が強く感じられるようになり、白木木材の触感特徴を感じにくくなるのであまり好ましくない。
【0042】
上記のような性能を有する本発明の表面加飾用フィルムは、吸放湿性に優れるため、人がフィルム表面に触った時に、手から発生する不感蒸泄水分を吸湿し、また手を離した後は水分を放湿するので、べたつく触感がなくなり、白木木材の触感の特徴を現すことができる。
【0043】
本発明の表面加飾用フィルムは、KES表面試験機で測定される表面粗さSMDが0.3〜2.0μmであることが好ましく、更に0.4〜1.5μmであることが好ましく、0.5〜1.3μmであることが非常に好ましい。上記のような表面粗さSMDの範囲を満足する表面加飾用フィルムは、表面粗さが一定範囲にあるため、人がフィルム表面に触った時に感じる表面凹凸感であるキメを感じることになり、白木木材の触感を付与することが容易になる。SMDが0.3μm未満の場合は、人がフィルム表面に触った時にキメを感じにくくなり、白木木材の触感特徴を得にくくなるのであまり好ましくない。また2.0μmより大きい場合は、表面の粗さが大きくなり過ぎて不快なざらつき感を感じ、白木木材の触感特徴を得にくくなるのであまり好ましくない。
【0044】
本発明の表面加飾用フィルムは、KES表面試験機で測定される静摩擦係数が2.5以下であることが好ましく、更に2.0以下であることが好ましく、1.4以下であることが非常に好ましい。前記のような静摩擦係数の範囲を満足する表面加飾用フィルムは、人がフィルム表面に触った時に、手に貼り付く触感がなくなり、白木木材の触感の特徴を現すことが容易になる。静摩擦係数が2.5より大きい場合は、人がフィルム表面に触った時に、手に貼り付く触感が生じ、白木木材の触感の特徴を得にくくなるのであまり好ましくない。一方、静摩擦係数が0.2より小さい場合は、つるつる、するするといった滑り過ぎる触感となるため、白木木材の触感特徴とはやや異なった感じになり、あまり好ましくない。
【0045】
上記の構成からなる本発明の表面加飾用フィルムは、吸放湿性能に優れ、べたつく触感がなくなり、適度な表面粗さを持ち、木材のキメを感じ、静摩擦係数が低く、人がフィルム表面に触った時に、手に貼り付く触感がなくなり、好ましく白木木材の触感を有する表面加飾用フィルムが得られるものである。
【0046】
こうして得られた本発明の表面加飾用フィルムは、インクの吸収性にも優れているので、表面加飾層に例えば木目模様の印刷を施して外観を白木様にすることも好ましい。印刷方法としては、感熱転写、熱転写、昇華転写、凹版印刷、孔版印刷、凸版印刷、平版印刷、磁気、静電、及びインクジェット法などが応用可能である。前記の中でも特に、顔料インクを用いたインクジェット法が好ましく採用できる。顔料インクを用いたインクジェット法によって得られた木目模様などの画像は、画像形成時のインク吸収が速く、画像の耐水性に優れ、にじみがなく、特に鮮明な外観が得られる。
【0047】
本発明においては、好ましくは、表面加飾フィルムの表面加飾層の反対面に粘着層を設けることである。粘着層を形成するのに用いる粘着剤は特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム、合成ゴム、クロロプレンゴム、NBR、ブチルゴム、ウレタンゴム、酢酸ビニル及びその共重合体、アクリル酸及びその共重合体等の溶剤型接着剤、天然ゴムラテックス、クロロプレンラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル及びその共重合体、アクリル酸及びその共重合体等のエマルジョン型接着剤、ポリビニルアルコール、でんぷん、ニカワ等の水溶性接着剤、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、尿素及びメラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、アスファルト、樹脂ワックス混合剤等の熱溶融型接着剤、ポリエチレン、不飽和ポリエステルなど特に限定されるものではない。またこれらは単独で用いても、複数で用いることもできる。さらに硬化剤、充填剤等の第三成分を含むこともできる。またこれらは、アンカーコート層を設けた上に設けてもよいものである。
【0048】
本発明においては、好ましくは、前記粘着層上に離型層を設けることである。離型層は特に限定されるものではなく、公知のものを使用できる。
【0049】
本発明の典型的な表面加飾用フィルムの断面図の一例を図1に、印刷され、粘着層、離型層を設けた表面加飾用フィルムの断面図の他の一例を図2に示す。
【実施例】
【0050】
次に以下に実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、各実施例及び比較例で得られたフィルムに用いた測定・評価方法を以下に示す。
【0051】
(かさ密度)
試料フィルム10.00cm×10.00cmの正方形に正確に切り出し、表面加飾層を設けた状態で厚み(ダイヤルゲージ ピーコック社製)を10点測定し、その平均値をT1(cm)を算出し、重量W1(g)を測定する。その後、表面加飾層を剥ぎ取り同様にフィルムの厚み10点を測定し平均値T2(cm)を求め、重量W2(g)を測定する。厚み差(T)、重量差(W)を算出し、表面加飾層のかさ密度(g/cm)を求めた。剥ぎ取り前後の厚みをT1,T2、剥ぎ取り前後の重さをW1,W2とし、T(cm)=T1−T2、W(g)=W1−W2、かさ密度ρ(g/cm)=W/0.01Tで計算した。
【0052】
(吸湿性能)
フィルムを15.4cm×6.5cmに正確に切り出し、その裏面に裏面からの吸湿を遮断させるためアルミ蒸着フィルム(株式会社生産日本社製 ラミジップ AL−24)を切り出したものを貼り、33℃40%RH環境にて24時間調湿後、その重さを測定する。次に33℃80%RH環境に移動させ、30分後の重さを測定し、フィルムの増加重量を算出する。実験は3回行い、その平均値を採用し、吸湿性能の特性メジャー(単位:g/100cm・30分)とした。
【0053】
(放湿性能)
(1)と同様にフィルムを準備し、33℃80%RH環境にて24時間調湿後、その重さを測定する。次に33℃40%RH環境に移動させ、30分後の重さを測定し、フィルムの減少重量を算出する。実験は3回行い、その平均値を採用し、放湿性能の特性メジャー(単位:g/100cm・30分)とした。
【0054】
(表面粗さ)
カトーテック株式会社製KES−FB4AUTO表面特性試験機を使用し、表面粗さSMD(μm)を標準条件にて測定した。測定は23℃50%RH環境下で行い、5回測定の平均値を採用した。
【0055】
(静摩擦係数)
カトーテック株式会社製KES−SE表面特性試験機を使用し、得られる摩擦係数のチャートから、最初のピーク電圧値を読み取り、摩擦係数=摩擦力/摩擦時荷重の式を適用して静摩擦係数を算出した。測定条件は、標準摩擦子のバーを使用し、摩擦子部分はシリコーンゴム(アラム(株)製、25×10×3mm、A硬度60)として、総荷重19gf、測定感度Hで測定した。測定は23℃50%RH環境下で行い、5回測定の平均値を採用した。
【0056】
(見かけ比重)
フィルムを5.00cm×5.00cmの正方形に正確に切り出し、その厚みを50点測定し平均厚みをtμmとし、その重さを0.1mgまで測定してwgとし、下式によって計算する。
見かけ比重(−)=(w×10000)/(5×5×t)
【0057】
(触感の官能評価)
被験者として20〜50歳台までの健康な女子5名男子5名、計10名を集めた。被験者は1名ずつ、26℃60%RHに調湿した恒温恒湿室に入室させ、約30分間の安静にした後、官能評価を開始した。A4版サイズの実施例または比較例のフィルムを厚紙上(商品名:エコボール紙EBA4100。キングコーポレーション製。白色面を使用)に静置したものを呈示し、その表面のみを指先または掌により自由に触らせて、表面を触った時に感じられる感覚について質問調査した。
【0058】
質問項目は、「べたつき感のなさ」、「キメの細かさ」、フィルム表面に手を置いた後手を放した時に感じられる「手への貼り付き感のなさ」、および「白木木材の触感が感じられるか」の4項目である。なお判定は◎○×の3段階とし、それぞれの判定基準は各質問項目毎に以下のようにした。また被験者10名のうちもっとも回答人数の多かった判定結果を各試料の結果とみなした。
「べたつき感のなさ」・・◎:「べたつき感が全く感じられない」、○:「べたつき感が感じられない」、×:「べたつき感が感じられる」
「キメの細かさ」・・◎:「キメが充分感じられる」、○:「キメが感じられる」、×:「キメが感じられない」
「手への貼り付き感のなさ」・・◎:「手への貼り付き感が全く感じられない」、○:「手への貼り付き感が感じられない」、×:「手への貼り付き感が感じられる」
「白木木材の触感と感じられるか」・・◎:「白木木材の触感が非常に感じられる」、○:「白木木材の触感が感じられる」、×「白木木材の触感が感じられない」
【0059】
(実施例1)
内部に微細な空洞を含有するポリエステルフィルム(東洋紡績社製 クリスパーG1211厚さ50μm、1200mm幅、4000m)のコロナ放電処理面側に、メラミン樹脂(住友化学工業社製 スミテックス M−3)10重量%及び触媒(住友化学工業社製スミテックスACX)1重量%を水89重量%に混合し、0.1g/m(乾燥時)になるように塗布した。この塗布面の上にポリビニルアルコール(日本合成化学社製、GH−20)、メラミン樹脂(住友化学工業社製 スミテックスM−3)、カチオン性ポリアミド樹脂(住友化学工業社製 SR1005)、平均粒子径5μm及び12μmのシリカ粒子をそれぞれ最終固形分で10/1/2//10/10(重量比)となるように、10%水溶液に調整し、ワイヤーバーでコートし、140℃で4分間ギアオーブンで乾燥熱処理した。塗布量は12g/mとなるようにし、表面加飾用フィルムを得た。
【0060】
(実施例2)
ポリエステルフィルム(東洋紡績社製 クリスパーG1211 厚さ50μm、1200mm幅、4000m)のコロナ放電処理面側に、メラミン樹脂(住友化学工業社製 スミテックスM−3)10重量%及び触媒(住友化学工業社製スミテックス ACX)1重量%を水89重量%に混合し、0.1g/m(乾燥時)になるように塗布した。この塗布面の上にポリビニルアルコール(クラレ社製、RS117)、ジメチロールヒドロキシエチレン尿素樹脂(住友化学工業社製 SR5004)、カチオン性樹脂(日本化薬社製 カヤフィクスUR)、平均粒子径5μm及び12μmのシリカ粒子をそれぞれ最終固形分で10/3/1//10/10(重量比)となるように、10%水溶液に調整し、ワイヤーバーでコートし、100/120/140/120℃の順に、熱風速度15m/分で合計2分間乾燥熱処理した。塗布量は14g/mとなるようにし、表面加飾用フィルムを得た。
【0061】
(実施例3)
実施例2において、ポリエステルフィルムの厚さを100μmとした以外は、全く同様の方法において、表面加飾用フィルムを得た。
【0062】
(実施例4)
実施例2において、内部に微細な空洞を含有するポリエステルフィルムの代わりに内部に微細な空洞を含有するポリプロピレンフィルム(東洋紡績社製 パールフィルムP6255 厚み120μm)を使用し、かつ乾燥温度を80/100/120/100℃とした以外は全く同様の方法において表面加飾用フィルムを得た。
【0063】
(比較例1〜5)
実施例2において、表面加飾層の組成比を表1の比較例1〜5のようにした以外は全く同様の方法において、表面加飾用フィルムを得た。それを比較例1、2、3、4、5とした。
【0064】
実施例1〜4及び比較例1〜5の表面加飾層成分の配合割合(重量割合)を表1に、式(1)〜(3)の値を表2に示した。また、それぞれ得られたフィルムの特性を表3、表4に示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
表4の結果より、本発明の範囲を満足する実施例1〜4に記載のフィルムでは、10人の被験者により実施した触感の官能評価において、「白木木材の触感が非常に感じられる」と評価された。一方、比較例1〜5に記載のフィルムでは、「白木木材の触感は感じられない」と評価された。
【0070】
このように、官能評価と物理特性との対応関係を把握し、白木木材の触感の有無と対応のとれる物理特性値において、好ましい値の範囲を見出した上で、本願発明に至ったものである。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の表面加飾用フィルムは、触感の観点からフィルムを特化したものであって、以下の利点があり、産業上非常に有用なものである。すなわち、白木木材の触感を有しており、その白木木材の触感により、人が触った時に好ましいと感じるため、触感が重視される建材用途、車両や家具などの内装用途、またフィルムを使用して表面加飾を行う各種の成形用途などに有用である。
【0072】
特に、外観の観点からのみ木目調、木質調を呈した従来表面加飾用フィルムで感じられる、木の外観から想像される触感と、触った時に感じられる触感との感覚のズレがなくなり、人が触った時に好ましいと感じる好触感な表面加飾を行うことができるので、頻繁に手で触る物品の表面加飾用フィルムとして好適である。
【符号の説明】
【0073】
1 基材フィルム
2 表面加飾層
3 印刷された表面加飾層
4 粘着層
5 離型層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルム面上にコーティングよる表面加飾層を設けた表面加飾用フィルムであって、表面加飾層のコート量(固形分)が10g/m以上18g/m以下、表面加飾層のかさ密度が0.40g/cm以上であり、表面加飾層を構成する水溶性樹脂(A)、硬化剤(B)、カチオン性物質(C)及び粒子(D)の組成割合(重量比)が、以下の範囲であることを特徴とする表面加飾用フィルム。
A/B=95/5〜55/45 (1)
(A+B)/C=97/3〜60/40 (2)
(A+B+C)/D=1/1〜1/2.5 (3)
【請求項2】
33℃40%RH環境にて24hr調湿後、33℃80%RH環境に移動静置し30分後における、表面加飾層面のみからによる吸湿機能としての重量増加量が、0.010g/100cm・30分以上となる吸湿性能を有することを特徴とする請求項1に記載の表面加飾用フィルム。
【請求項3】
33℃80%RH環境にて24hr調湿後、33℃40%RH環境に移動静置し30分後における、表面加飾層面のみからによる放湿機能としての重量減少量が、0.0055g/100cm・30分以上となる放湿性能を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の表面加飾用フィルム。
【請求項4】
KES表面試験機で測定される表面加飾層の表面粗さSMDが、0.3〜2.0μmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【請求項5】
KES表面試験機で測定される表面加飾層の静摩擦係数が、2.5以下であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【請求項6】
表面加飾用フィルムの表面加飾層とは反対側のフィルム面上に粘着層が設けられてなることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【請求項7】
粘着層面上に離型層が設けられてなることを特徴とする請求項6に記載の表面加飾用フィルム。
【請求項8】
基材フィルムが、少なくとも1軸に配向したプラスティックフィルムであることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【請求項9】
基材フィルムの見かけ比重が、0.50以上1.30以下であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【請求項10】
基材フィルムが、内部に微細な空洞を含有するポリエステルフィルムを含んでなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【請求項11】
水溶性樹脂(A)が、ポリビニルアルコール及び/又はポリビニルピロリドンであることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。
【請求項12】
硬化剤(B)が、水溶性メラミン樹脂及び/又はメチロール基含有尿素樹脂であることを特徴とする請求項1〜11のいずれかに記載の表面加飾用フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−218284(P2012−218284A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−85930(P2011−85930)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】