説明

白色光発光ダイオード

【課題】明るさを向上し、蛍光体同士の混色スペクトルと実際の太陽光のスペクトルとの間の相似程度を大幅に向上する。
【解決手段】複数種の紫外線によって励起できる蛍光体を利用し、それらの中の一部の蛍光体によって赤、緑、青などの三種類の白色光のスペクトルの基本構成を形成し、他の部分の蛍光体によって修飾用色光を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は白色光発光ダイオードに関し、特に複数種の蛍光特性の粉末を配合することによって製造される白色光発光ダイオードに関する。
【背景技術】
【0002】
白色光は複数の顔色の混合合成光であり、人間の目に白色光であると識別される光線には少なくとも2種類以上の波長の混合光線を含んでいる。例えば、人間の眼部が同時に赤、青、緑の光線に刺激される場合に、または同時に青と黄色の光線に刺激される場合にすべて白色光として感じられるので、そのような原理に基づいて白色光を発光するLED光源を製造できる。従来の白色光LEDの製造方法には五種類あり、第一種の方法はAlInGaPとGaPとGaNを材質とする3個のLEDを使用し、それぞれのLEDを通過する電流を制御することによって赤、緑、青の色の光線を発光させる。これらの3個の結晶顆粒子が同一のランプに配置されるため、レンジを介してそれらの発光する光線を混合して白色光を発光させることができる。第二種の方法はGaNとAlInGaPを材質とする2個のLEDを使用し、これらのLEDを通過する電流を制御することによって青と黄緑の色の光線を発光させることにより白色光を生成するものである。目前では、これらの二種類の方法は発光効率が20 lm/Wに達することができる。第三種の方法は1996年に日本の日亜化学会社(Nichia Chemical)が開発された、窒化インジウムガリウム青色光発光ダイオードに黄色光を発光するイットリウムアルミニウムガーネット型蛍光粉を合わせることによって白色光光源を製造する方法である。この方法の発光効率は目前の場合では(15 lm/W以上に達することできる)前記に種類の方法よりやや低いが、単に1セットのチップを要しないため、製造コストを大幅に低減でき、また、合わせて使用される蛍光粉の調製技術も既に完璧であるので、目前では既に商品が提出されている。第四種の白色光を生成できる方法は二本の住友電工(Sumitomo Electric Industries,Ltd)が1999年1月に開発された、ZnSe材料を使用する白色光LEDであり、その技術はまずZnSeシングルチップ基板にCdZnSe薄膜を形成し、通電後に薄膜が青色光を発光すると共に、一部の青色光が基板に照射して黄色光を発光し、最後にそれらの青色光と黄色光とを相互に相補させて白色光を発光するものである。この方法の場合でも1個のLED結晶顆粒子しか採用しないので、その操作電圧が単に2.7Vで、InGaNのLEDの3.5Vより低くなり、且つ蛍光物質をなくても白色光を取得できる。第五種の白色光を生成するための方法として現在では開発中の紫外線白色光LEDのことであり、つまり本発明の分野の方法であり、その原理は紫外線LEDによって三種類の蛍光粉を励起して蛍光を生じさせ、混色によって白色光を生成するものであり、その分野の従来の方法は下記の通りである。
【0003】
1.組成がY:Eu型の蛍光粉、例えば(Y1.9Eu0.1)Oを合成し、当該合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0004】
2.組成がSrAl:Eu型蛍光粉、例えば(Sr0.96Eu0.04)Alを合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0005】
3.組成がBaMgAl1017:Eu型蛍光粉、例えば(Ba0.9Eu0.1)MgAl1017を合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0006】
4.前記三種類の蛍光粉同士を所定の比例によって調製し、且つ波長が396nmの紫外線を励起源としてその発射スペクトルを検出し、図1に示すようである。その発射スペクトルのデータを1931年に国際照明委員会(Commission Internationale de 1’ Eclairage,CIE)の制定する色度座標図(Chromaticity diagram)のフォーミュラによって当該蛍光体の代表する色度座標に換算し、且つA点にて図3に標記する。
【0007】
前記の説明から分かるように、目前では紫外線発光ダイオードによって白色光LEDを製造する方法は主に紫外線によって赤、緑、青の三原色の蛍光体を励起し、且つ蛍光体を適当な比例に調製し、それからその色光を混色することによって白色光を取得するものである。
【0008】
しかしながら、このようなそれぞれの原色蛍光体のスペクトル構成を組み合わせることによって生成される白色光の場合では、個別の蛍光粉が所定のスペクトル構成を有することによる影響を受けるため、その組成される白色光のスペクトルの波長の分布と連続性が真実の太陽光に及ばないため、白色光に色彩が不均一になることや飽和度が低いことなどの欠点を有する。人間の眼部がこれらの現象を略すことができ、白色光しか見えないが、精密さが高い光学検出器の検出によって例えばビデオやカメラなどによって検出する場合、その演色性が実質では依然として低いと見なされ、即ち、物体の色彩を還元する場合に誤差を生じることがあるので、この種の方式によって生成される白色光光源が単に一般の照明用の用途にしか適さなくなってしまう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の主要な目的は新しい白色光発光ダイオードを提案することにあり、当該白色光発光ダイオードの製造方法の特徴は複数種の紫外線によって励起できる蛍光体を利用し、それらの中の一部の蛍光体によって赤、緑、青などの三種類の白色光のスペクトルの基本構成を形成し、他の部分の蛍光体によって修飾用色光を提供すると共に、その明るさを向上し、蛍光体同士の混色スペクトルと実際の太陽光のスペクトルとの間の相似程度を大幅に向上する。そのため、本発明は複数種の蛍光粉の補強及び修飾技術によって取得する白色光発光ダイオードに高度の明るさと高度の演色性を有させることができる優れた点を有する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の他の目的は変色発光可能な発光ダイオードを提供することにある。目前では、光色を変更できる発光ダイオードを取得するための方法として複数個の単色発光ダイオード同士を組み合わせると共に、電気回路によってその発光順番を制御し、またはそれぞれ異なる顔色の光線ろ過片または帽子カバーなどによって光色を変換している。しかしながら、このような方法の場合では、製造コストが高くて利便性を有さず、そのため、新しい実行可能な方法を開発する必要がある。例えば前記のような複数種の蛍光粉同士の補強及び修飾の技術を採用し、そのうちの全部または一部の粉末体に同時に蛍光または燐光の特性を有させ、紫外線による励起の停止後に、前記粉末体が時間の経過に従ってその光色を変更する効果を取得し、即ち、本発明の方法による場合、変色可能な発光ダイオードを製造できる。また、前記粉末対同士の組成比例を変更させることによって異なる変色順番を有する発光ダイオードを提供できる。
【発明の効果】
【0011】
従来技術と比べる場合、本発明の方法はかなり簡単で、コストが低く、産業上の利用価値に富む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら本発明の特徴と技術内容を詳細に説明するが、それらの説明は単に本発明の好適な実施の形態の一部に過ぎず、本発明の範囲を狭義的に定義するものではない。
【0013】
本発明は発光ダイオードに応用される、複数種の蛍光特性を有する粉末体を利用して白色光発光ダイオードを製造する方法およびその白色光発光ダイオードに係わる。当該方法は、紫外線を発光可能な発光ダイオードや電子ビームやプラズマなどを励起光源とし、三種類の蛍光粉同士を励起してそれぞれ波長が585nm−640nmの赤色光と500nm−570nmの緑色光と430nm−490nmの青色光を発光させる。同時に、これらの3つの波長の蛍光の特性、例えば発光強度や色彩飽和度などに鑑みて、他の一種以上の蛍光粉の蛍光特性によって補強や修飾を実行し、これらの4つ以上の波長を備える蛍光を混色してから白色光を生成するようになる。従来の単に赤、緑、青の三原色の蛍光体を使用する方法より、本発明の蛍光補強と修飾の技術によって得られる白色光には高明るさと高演色性を有する優れた点を有する。
【0014】
本発明の白色光発光ダイオードの所要する合成用及び調製用の蛍光粉の実施の形態の1つとして(本発明の方法の1つで、スペクトル構成を修飾後に得られる白色光のスペクトルを示す方法)下記のような方法を挙げられる。
【0015】
1.組成がY:Eu型の蛍光粉、例えば(Y1.9Eu0.1)Oを合成し、当該合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0016】
2.組成がSrAl:Eu型蛍光粉、例えば(Sr0.96Eu0.04)Alを合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0017】
3.組成がBaMgAl1017:Eu型蛍光粉、例えば(Ba0.9Eu0.1)MgAl1017を合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0018】
4.組成がYAl12:Ce,Gd型蛍光粉、例えば(Y2.3Ce0.05Gd0.65)Al12を合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0019】
5.前記四種類の蛍光粉同士を所定の比例によって調製し、且つ波長が396nmの紫外線を励起源としてその発射スペクトルを検出し、図2に示すようである。その発射スペクトルのデータをこの混合蛍光体を代表する色度座標に換算し、且つB点にて図3に標記する。
【0020】
また、本発明も一種の変色可能な発光ダイオードの製造方法に関し、燐光特性を有する発光体を前記複数種の蛍光体の中の一種または複数種とし、その光色が時間の経過に従ってそれぞれ異なる顔色の変化を呈させることができる。それらの発光体としてSrAl:Eu,MやCaAl:Eu,MやSrAl1425:Eu,MやYS:Eu,MやZnS:Cu,Mなどを採用でき、そのうち、Mとして遷移金属や希土類元素などを採用できる。
【0021】
燐光特性を有する粉末体によって製造される変色可能な発光ダイオードの製造実施例の1つに関し、その製造ステップは次の通りである。
【0022】
1.組成がY:Eu型の蛍光粉、例えば(Y1.9Eu0.1)Oを合成し、当該合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0023】
2.組成がSrAl:Eu,Dy型蛍光粉、例えば(Sr0.94Eu0.04Dy0.02)Alを合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0024】
3.組成がBaMgAl1017:Eu型蛍光粉、例えば(Ba0.9Eu0.1)MgAl1017を合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0025】
4.組成がYAl12:Ce,Gd型蛍光粉、例えば(Y2.3Ce0.05Gd0.65)Al12を合成取得し、その合成方法として固体反応法や化学合成法、例えばクエン酸塩ゲル法や共沈殿法やマイクロコロイド法などを採用できる。
【0026】
5.前記四種類の蛍光粉同士を所定の比例によって調製し、且つ波長が396nmの紫外線を励起源としてその発射スペクトルを検出する。また、前記紫外線励起光源を取り除き、所定の時間の間隔で複数回その発光スペクトルを検出し、これらの発射スペクトルのデータをそれぞれの時間点の色度座標に換算し、且つA点からますますB点へ移行し、且つそれらのことを図4に標記する。
【0027】
下の表に示すように、計算によって得られる従来の方法と本発明の実施の形態の白色光スペクトルを比較する場合、本発明の演色性と色彩温度が従来物よりずっと好ましくなることが分かる。
【0028】
【表1】

本発明の利点は、次の通りである。
【0029】
1.図3から分かるように、本発明の方法(実施の形態参照)と従来の方法とがすべて色度座標が標準白色光区域に位置する効果を取得でき、例えば従来の方法の(0.3130,0.3245)と実施の形態の(0.3120,0.3285)のようである。そのため、本発明の白色光ダイオードと従来の方法と同様に白色光発光ダイオードを提供できる。
【0030】
2.表に示すように、従来の方法の場合では、三種類の蛍光粉によって赤、緑、青の三原色より組成される白色光を取得し、その演色性が単に85であり、且つ色彩温度が6524K(絶対温度)である。本発明の実施の形態の場合ではYAl12:Ce,Gd型黄色蛍光粉によってスペクトル構成を修飾し、それで演色性を94に、色彩温度を6550Kになるように向上できる。その主要な原因はスペクトル構成修飾後の白色光スペクトルと真実の太陽光のスペクトルとの分布が近くなるためであり、それによって高演色性を取得し、そのため、本発明の白色光発光ダイオードの場合では演色性が従来の方法よりかなり優れている。
【0031】
3.本発明の白色光発光ダイオードの場合では、その発光スペクトルが修飾されると、例えば実施の形態におけるYAl12:Ce,Gd型蛍光粉の黄色光またはBaMgAl10O17:Eu,Mn型蛍光粉の青緑色光(蛍光粉においてEu/Mnの比例と発光する青色/緑色の波長の相対的強度と関係があり、そのため、それらも自身の色彩を修飾することと調整制御することの機能を有する)などがすべて緑色光の波長に近くなり、即ち、人間の眼部に対し敏感性を有する区域になり、それらは全体の白色光の強度の向上に作用を有し、そのため、本発明の白色光発光ダイオードの発光効率が従来の方法より優れている。
【0032】
4.本発明の白色光発光ダイオードの場合では、図4に示すように、混合蛍光粉体における(Sr0.94Eu0.04Dy0.02)Alが緑色の燐光特性を有するので、励起光源を取り除くと、粉末体の光色が白色よりだんだん緑色に変化すると共に、所定の時間を維持できる。同じように、二種類以上の燐光特性を有する粉末体を使用すれば、その生成する光色の変換が多彩多様になる。そのため、本発明の方法に従って所定の比例になるように複数種の粉末体を混合する場合、且つ所定の波長(この例では396nmである)の紫外線発光ダイオードを励起光源として合わせて使用する場合、且つ適当にパッケージングすると、所定の電流を流す場合、混合される粉末体同士が紫外線の照射を受けてから励起を停止すると、随時に光色を変換できる発光ダイオードを入手できる。
【0033】
本発明の前記に述べる実施の形態は単に本発明の具体的な実施例に過ぎず、本発明の要旨はそれらのみに狭義的に制限されず、いずれの同時に三種類の主波長が585nm−640nmである赤色光と500nm−570nmである緑色光と430nm−490nmである青色光などの三原色を発光できる蛍光体に他の一種以上の蛍光粉を合わせて白色光スペクトルの補強及び修飾する機能を発揮できる手段によって高明るさと高演色性を取得できる優れる白色光発光ダイオードを取得することを目的として実施される変化や修飾などがすべて本発明の特許主張範囲内に納入されるべきである。本発明も変色可能な発光ダイオードの製造方法に係わり、燐光特性を有する発光体を前記複数種の蛍光体のうちの1つまたはそれ以上の成分とすることによってその光色に時間の経過に従って異なる色彩の変化を生じさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のY:Eu,SrAl:Eu,BaMgAl1017:Euなどの三種類の蛍光粉同士によってそれぞれ赤、緑、青の色の蛍光を発光させる場合の白色光スペクトルを示す説明図である。
【図2】本発明のY:Eu,SrAl:Eu,BaMgAl1017:Euなどの三種類の蛍光粉同士によってそれぞれ赤、緑、青の色の蛍光を発光させると共に、YAl12:Ce,Gd蛍光体の発光する黄色蛍光を合わせることによって発光する白色光のスペクトルを示す説明図である。
【図3】図1と図2の発射するベクトルに基づいてそれぞれ計算し得た混合蛍光粉の色度座標AとBを示す説明図である。
【図4】本発明の同時にY:Eu,SrAl:Eu、Dy,BaMgAl1017:Eu、YAl12:Ce,Gd蛍光体を混合して発光される白色光を始発点とし、且つ紫外線励起光源を取り除く場合の光色が時間の経過に従って変化する状況を示す変化図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光により赤色蛍光体、緑色蛍光体及び青色蛍光体をそれぞれ励起することで発される赤色光、緑色光及び青色光を混合することによって提供される白色発光ダイオードあって、
少なくとも、燐光特性を有する他の蛍光体を含み、
前記他の蛍光体は、時間の経過に伴って異なる色の光を発する、
白色発光ダイオード。
【請求項2】
前記他の蛍光体は、紫外光または可視光によって励起される、
請求項1に記載の白色発光ダイオード。
【請求項3】
前記他の蛍光体は、SrAl:Eu,Mと、CaAl:Eu,Mと、SrAl1425:Eu,Mと、YS:Eu,Mと、ZnS:Cu,Mと、を含むグループから選択され、そのうち、Mは、遷移金属または希土類元素である、
請求項1に記載の白色発光ダイオード。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2008−311670(P2008−311670A)
【公開日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187420(P2008−187420)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【分割の表示】特願2002−168913(P2002−168913)の分割
【原出願日】平成14年6月10日(2002.6.10)
【出願人】(503419697)光寶科技股▲分▼有限公司 (42)
【Fターム(参考)】