説明

白色有機発光素子及びその製造方法

【課題】白色発光層の構造を共振構造に適するように変更して色純度及び白色の発光効率を改善することが可能な白色有機発光素子及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】基板上部に第1電極と,前記第1電極上で形成された正孔輸送部と,前記正孔輸送部上で形成された青色発光層と,前記青色発光層上で形成された黄色発光層と,前記黄色発光層上で形成された第2電極と,を含み,前記第1電極及び第2電極の間に介在されたそれぞれの発光層から発散された光がXが0.27〜0.39,Yが0.27〜0.39の色座標の色座標を有する白色光になるように正孔輸送部および青色発光層が所定の厚さを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,白色有機発光素子及びその製造方法に関し,より詳細には,白色発光層の構造を共振構造に適するように変更して色純度及び白色の発光効率を改善させた白色有機発光素子及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子OLEDは,一般的に基板,アノード,発光層を含む有機層,及びカソードを含む。前記OLED素子は,発光層で電子と正孔が結合しながら光が発生する現象を利用した自発光型ディスプレイ装置であり,低い駆動電圧,高画質,早い応答速度及び広視野角の特性を有する軽量薄型の情報表示装置を実現することが可能という長所を有する。このような有機発光素子は携帯電話のみならず,その他の高品位の情報表示装置に至るまで応用領域が拡張されている。
【0003】
効果的に白色光を生成するOLED素子は,LCDディスプレイのバックライト,自動車内燈,及び事務室などの照明燈として広く使用することができ,赤色,青色,緑色の三原色カラーフィルターを組み合わせて製造するようになれば,カラー平板ディスプレイとして使用することもできる。
【0004】
白色有機発光素子は,多様な方法によって得ることができるが,大きく二つに分けることができる。すなわち,一番目の方法では,発光層の構造を黄色及び青色または赤色,緑色及び青色を放出する物質で構成された多層にすることである。二番目の方法では,発光ホスト物質に有機発光色素をドーピングしたり混合したりすることである。
【0005】
一方,前記従来の白色有機発光素子及びその製造方法に関する技術を記載した文献としては,下記特許文献1等がある。
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,720,092号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし,従来の白色有機発光素子及びその製造方法によれば,発光層の構造を多層にする場合,既存の前面発光素子の構造では,二つの電極の間の共振効果によって白色を得ることができず,厚さの条件によって白色から脱する色特性を得るようになるというという問題がある。
【0008】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的は,色純度が優秀で,かつ白色の発光効率が向上することが可能な,新規かつ改良された白色有機発光素子及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明のある観点によれば,基板上部に形成された第1電極と;前記第1電極上に形成された正孔輸送部と;前記正孔輸送部上に形成された青色発光層と;前記青色発光層上に形成された黄色発光層と;前記黄色発光層上に形成された第2電極と;を備え,前記第1電極及び前記第2電極の間に介在されたそれぞれの発光層から発散された光が共振効果によって白色を表現してXが0.27〜0.39,Yが0.27〜0.39の色座標を有するように前記正孔輸送部および前記青色発光層が所定の厚さを有することを特徴とする白色有機発光素子が提供される。
【0010】
また,前記正孔輸送部の厚さである前記第1電極の上端部から前記青色発光層の下部面間の距離は,15〜40nmであり,前記正孔輸送部と前記青色発光層の総厚さである前記第1電極の上端部から前記黄色発光層の下部面間の距離は,30〜60nmであってもよい。
【0011】
また,前記正孔輸送部の厚さである前記第1電極の上端部から前記青色発光層の下部面間の距離は,120〜160nmであり,前記正孔輸送部と前記青色発光層の総厚さである前記第1電極の上端部から前記黄色発光層の下部面間の距離は,160〜220nmであってもよい。
【0012】
また,前記第1電極は,アノードであり,上記第2電極はカソードであってもよい。
【0013】
また,前記アノードは,反射電極であってもよい。
【0014】
また,前記正孔輸送部は,正孔注入層,正孔輸送層のいずれか一方または双方であってもよい。
【0015】
また,前記黄色発光層と前記第2電極の間には,正孔抑制層,電子注入層及び電子輸送層からなる群より選択される1種以上の層がさらに含まれてもよい。
【0016】
また,前記黄色発光層の厚さは,15〜40nmであってもよい。
【0017】
また,前記黄色発光層の厚さは,20〜50nmであってもよい。
【0018】
上記課題を解決するために,本発明の別の観点によれば,基板上部に第1電極を形成する段階と;前記第1電極上部に正孔輸送部を形成する段階と;前記正孔輸送部上部に青色発光層を形成する段階と;前記青色発光層上部に黄色発光層を形成する段階と;前記黄色発光層上部に第2電極を形成する段階と;を含み,前記第1電極及び前記第2電極の間に介在されたそれぞれの発光層から発散された光が共振効果によって白色を表現してXが0.27〜0.39,Yが0.27〜0.39の色座標を有するように前記正孔輸送部,前記青色発光層が所定の厚さで形成されることを特徴とする白色有機発光素子の製造方法が提供される。
【0019】
また,前記正孔輸送部の厚さは,15〜40nmで形成され,前記正孔輸送部及び前記青色発光層の総厚さは,30〜60nmで形成されてもよい。
【0020】
また,前記正孔輸送部の厚さは,120〜160nmで形成され,前記正孔輸送部及び前記青色発光層の総厚さは,160〜220nmで形成されてもよい。
【0021】
また,前記第1電極上部に反射膜を形成する段階をさらに含んでもよい。
【0022】
また,前記正孔輸送部は,正孔注入層,正孔輸送層のいずれか一方または双方であってもよい。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように,本発明によれば,白色を表現する青色及び黄色発光層の光学距離をすべて共振構造に適するように調節することにより,色純度を優秀にし,白色の発光効率を改善させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に,添付した図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する発明特定事項については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0025】
本発明による白色有機発光素子は,第1電極と第2電極の間に正孔輸送部と発光層を順次含み,ここで発光層は,白色を表現するように青色発光層と黄色発光層で構成されている。
【0026】
前記青色発光層と黄色発光層が発散する光が共振効果によって純度の優秀な白色を表現するように光学距離,すなわち,第1電極の上端部から青色発光層の下部面間の距離(正孔輸送部の厚さ)および第1電極の上端部から黄色発光層の下部面間の距離(正孔輸送部及び青色発光層の総厚さ)を共振構造に適するように調節することで純度の優秀な白色を表現する。
【0027】
具体的には,第1電極の上端部から青色発光層の下部面間の距離は,15〜40nmで,第1電極の上端部から黄色発光層の下部面間の距離は,30〜60nmであることが好ましい。
【0028】
または,第1電極の上端部から青色発光層の下部面間の距離は,120〜160nmで,第1電極の上端部から黄色発光層の下部面間の距離は,160〜220nmであることが好ましい。
【0029】
本実施形態による白色有機発光素子において,前記第1電極はアノードで,第2電極はカソードであり,前面発光の場合,前記アノードは反射電極である。
【0030】
本実施形態による白色有機発光素子において,前記正孔輸送部は,正孔注入層または正孔輸送層をそれぞれ単独で構成することができ,また,正孔注入層と正孔輸送層を順に積層することができる。このような正孔輸送部には,層間界面特性を改善させるための中問層がさらに挿入されうる。
【0031】
本実施形態による白色有機発光素子において,正孔輸送部の厚さは,結局第1電極の上端部から青色発光層下部面間の距離(青色発光層の光学距離)と一致し,したがって,前記正孔輸送部の厚さは,15〜40nmまたは120〜160nmであることが好ましい。
【0032】
本実施形態による白色有機発光素子において,正孔輸送部と青色発光層の総厚さは,第1電極の上端部から黄色発光層下部面間の距離(黄色発光層の光学距離)と一致する。
【0033】
したがって,正孔輸送部の厚さが15〜40nmの場合,正孔輸送部と青色発光層の総厚さは30〜60nmであることが好ましく,正孔輸送部の厚さが120〜160nmの場合,正孔輸送部と青色発光層の総厚さは160〜220nmであることが好ましい。
【0034】
前記正孔輸送部,青色発光層の厚さは,白色特性を得ることができる共振構造に適するように設定されて色純度の優秀な白色,すなわち,Xの範囲が0.27〜0.39で,Yの範囲が0.27〜0.39である色座標を得ることができる。
【0035】
一方,黄色発光層の厚さは,正孔輸送部と青色発光層の総厚さによって変更することができ,好ましくは,総厚さが30〜60nmである場合,黄色発光層の厚さは,15〜40nmであり,総厚さが160〜220nmである場合,黄色発光層の厚さは,20〜50nmであることが好ましい。
【0036】
前記範囲を脱する場合,共振効果による光学特性が範囲から脱するようになって,白色の色座標の範囲から外れるという問題がある。
【0037】
また,本発明による白色有機発光素子において,発光層と第2電極の間には,正孔抑制層,電子輸送層及び/または電子注入層が順次積層されている構造であることも可能である。それ以外にも層間界面特性を改善させるために中問層をさらに挿入することができる。
【0038】
図1〜図4は,本発明の第1〜第4実施形態にかかる白色有機発光素子の積層構造を概略的にあらわした図面である。
【0039】
図1は,本発明の第1の実施形態にかかる白色有機発光素子の積層構造を概略的にあらわした断面図である。図1を参照すれば,基板10上部に第1電極20が積層され,前記第1電極20上部に正孔注入層30a,青色発光層40a,黄色発光層40b,及び第2電極70が順次積層されている白色有機発光素子である。
【0040】
図2は,本発明の第2の実施形態にかかる白色有機発光素子の積層構造を概略的にあらわした断面図である。図2を参照すれば,基板10上部に第1電極20が積層され,前記第1電極20上部に正孔輸送層30b,青色発光層40a,黄色発光層40b,及び第2電極70が順次積層されている白色有機発光素子である。
【0041】
図3は,本発明の第3の実施形態にかかる白色有機発光素子の積層構造を概略的にあらわした断面図である。図3を参照すれば,基板10上部に第1電極20が積層され,前記第1電極20上部に正孔注入層30a,正孔輸送層30b,青色発光層40a,黄色発光層40b,及び第2電極70が順次積層されている白色有機発光素子である。
【0042】
図4を参照すれば,基板10上部に第1電極20が積層され,前記第1電極20上部に正孔注入層30a,正孔輸送層30b,青色発光層40a,黄色発光層40b,電子輸送層50,電子注入層60,及び第2電極70が順次積層されている白色有機発光素子である。
【0043】
これ以外にも図面には図示されていないが,正孔抑制層がさらに含まれることが可能であり,また,電子輸送層または電子注入層は選択的に省略可能であり,その外にも層間の界面特性を改善するための中問層をさらに形成することも可能である。
【0044】
以下,本発明による白色有機発光素子の製造方法を,便宜上図4における積層構造を有する白色有機発光素子を参照して説明する。
【0045】
まず,基板10上部にパターニングされた第1電極20を形成する。ここで,前記基板10は,有機発光素子に通常使われる基板を使うが,透明性,表面平滑性,取り扱いの容易性及び防水性の優秀な硝子基板または透明プラスチック基板が好ましい。そして,前記基板の厚さは,0.3〜1.1mmであることが好ましい。
【0046】
前記第1電極20の形成材料では,正孔注入の容易な伝導性金属またはその酸化物からなり,具体的な例として,ITO(Iindium Tin Oxide),IZO(Iindium Zinc Oxide),ニッケル,白金,金,イリジウムなどを使う。
【0047】
前面発光のために,前記第1電極20を反射電極として使う場合,第1電極上部にAgまたはAlを利用して反射膜を形成する方法を利用することができ,また,前記反射膜は必要に応じてパターニングすることができる。
【0048】
前記第1電極20が形成された基板を洗浄した後,UV/オゾン処理を実施する。この時,洗浄方法としては,イソプロパノール(IPA),アセトンなどの有機溶媒を利用する。また,洗浄されたITO基板を真空下でプラズマ処理することが好ましい。
【0049】
洗浄された基板10の第1電極20上部に正孔注入物質を真空熱蒸着,またはスピンコーティングして正孔注入層30aを形成することができる。このように,正孔注入層30を形成すれば,第1電極20と発光層40の接触抵抗を減少させると同時に,発光層40に対する第1電極20の正孔輸送能力が向上して素子の駆動電圧と寿命特性が全般的に改善されるような効果を得ることができる。
【0050】
前記正孔注入物質としては,特別に制限されないが,下記式に示すように銅フタロシアニン(CuPc)またはスターバースト(Starburst)型アミン類である(TCTA,m−MTDATA,IDE406(出光社材料)などを使用することができる。
【0051】
【化1】

【0052】
次に,前記正孔注入層30a上部に,また,正孔輸送物質を真空熱蒸着,またはスピンコーティングして正孔輸送層30bを形成することができる。前記正孔輸送物質は,特別に制限されず,下記式に示すようにN,N−ビス(3−メチルフェニル−N,N−ジフェニル−[1,1−ビフェニル]−4,4−ジアミン(TPD),N,N−ジ(ナフタレン−1−イル)−N,N−ジフェニルベンジジン(α−NPD),IDE320(出光社材料)などが使われる。
【0053】
【化2】

【0054】
前記正孔注入層30a及び正孔輸送層30bは,それぞれ単独で使われた場合,15〜40nmまたは120〜160nmの厚さを有することが好ましく,正孔注入層30a及び正孔輸送層30bをすべて使用した場合,これらを合わせた厚さも15〜40nm,または120〜160nmの厚さを有することが好ましい。
【0055】
このような厚さが結局,青色発光層の光学距離,すなわち,第1電極の上端部から青色発光層40a下部面までの距離d1を意味する。
【0056】
次に,前記正孔輸送層30b上部に真空熱蒸着またはスピンコーティングのような方法によって発光層40を形成する。
【0057】
前記発光層40は,白色が表現されうるように青色発光層40a,黄色発光層40bが順に形成されうる。この場合,青色発光層40aを構成する材料は,この分野において一般的なものを使うことができ,例えば,DPVBi,スピロ−DPVBi,スピロ−6P,ジスチルベンゼン(DSB),ジスチリルアリレン(DSA)などの低分子物質と,PFO係高分子,PPV係高分子などを使うことができる。
【0058】
また,黄色発光層40bを構成する材料は,この分野において一般的なものを使うことができ,例えば,ルブレン(Rubrene),ビス−(2−フェニルキノリン)イリジウムアセチルアセトネート,PFO係高分子,PPV係高分子などを使うことができる。
【0059】
一方,黄色発光層の光学距離は,前記正孔輸送部30及び青色発光層40aの総厚さ,すなわち,第1電極の上端部から黄色発光層40bの下部面までの距離d2である。よって,青色発光層40aの厚さは,第1電極の上端部から黄色発光層40bの下部面までの距離d2から第1電極の上端部から青色発光層40aの下部面までの距離d1を差し引いた値と一致する。
【0060】
したがって,正孔輸送部の厚さd1が15〜40nmで,正孔輸送部と青色発光層の総厚さd2が30〜60nmである場合,または,正孔輸送部の厚さd1が120〜160nmで,正孔輸送部と青色発光層の総厚さd2が120〜160nmで,正孔輸送部と青色発光層の総厚さd2が160〜220nmである場合に色純度の優秀な白色を得ることができる。
【0061】
また,青色発光層40aの上部に形成される黄色発光層40bの厚さは,総厚さd2によって変わることがあり,好ましくは,総厚さd2が30〜60nmである場合,15〜40nmが好ましく,また,総厚さd2が160〜220nmである場合,20〜50nmが好ましい。
【0062】
また,図面に図示されなかったが,前記発光層40上に正孔抑制物質を真空蒸着,またはスピンコーティングして正孔抑制層を選択的で形成することができる。この時,使う正孔抑制物質は特別に制限されないが,電子輸送能力を持ちながら発光化合物より高いイオン化ポテンシャルを持たなければならない。代表的には,下記式に示すようにBalq,BCP,TPBIなどが使われる。
【0063】
正孔抑制層の厚さは,3〜7nmであることが好ましい。もし,正孔抑制層の厚さが3nm未満の場合には,良好な正孔抑制特性が得られず,7nmを超過する場合には駆動電圧上昇のため,好ましくない。
【0064】
【化3】

【0065】
【化4】

【0066】
前記発光層40または正孔抑制層上に電子輸送物質を真空蒸着,またはスピンコーティングして電子輸送層50を形成する。電子輸送物質としては特別に制限されず,Alq3を利用することができる。
【0067】
前記電子輸送層50の場合厚さは,15〜60nmであることが好ましい。もし,電子輸送層50の厚さが15nm未満の場合には,電子輸送能力が低下され,60nmを超過する場合には駆動電圧上昇のため,好ましくない。
【0068】
また前記電子輸送層50上に電子注入層60を積層することができる。電子注入層60の形成材料としては,LiF,NaCl,CsF,Li2O,BaO,Liqなどの物質を利用することができる。前記電子注入層60の厚さは,0.5〜2nmであることが好ましい。もし,電子注入層60の厚さが0.5nm未満の場合には,効果的な電子注入層としての役割ができず,2nmを超過する場合には,駆動電圧が高くて好ましくない。
【0069】
【化5】

【0070】
次に,前記電子注入層60上部に第2電極70であるカソード用金属を真空熱蒸着して第2電極70であるカソードを形成することで白色有機発光素子が完成される。
【0071】
前記カソード金属ではリチウムLi,マグネシウムMg,アルミニウムAl,アルミニウム−リチウムAl−Li,カルシウムCa,マグネシウム−インジウムMg−In,マグネシウム−銀Mg−Agなどが利用される。
【0072】
以下,本発明を下記実施例で説明するが,本発明は実施例に限定されない。
【0073】
(実施例1)
用意したガラス基板上にITOを電気蒸着してアノードを10nmで形成した後,さらにAgを利用して反射膜を100nmの厚さで形成した。
【0074】
前記アノード上部にNPDを10−6torrの真空下で蒸着して15nmの厚さで正孔輸送層を形成した。
【0075】
前記正孔輸送層上部にDPVBIを利用して青色発光層を15nmの厚さで形成し、ルブレンを利用して黄色発光層を30nmの厚さで形成した。
【0076】
次に,前記黄色発光層上部に電子輸送物質であるAlq3を10−6torrの真空下で蒸着して30nm厚さの電子輸送層を形成し,前記電子輸送層上部にLiF0.5nm(電子注入層)とMg:Ag20nm(カソード)を順次真空熱蒸着してLiF/Mg:Ag電極を形成して有機発光素子を製造した。
【0077】
(実施例2)
正孔輸送層の厚さを20nmで形成し,青色発光層の厚さ,黄色発光層の厚さをそれぞれ20nm,30nmで形成したことを除いて実施例1と同様に有機発光素子を製造した。
【0078】
(実施例3)
用意したガラス基板上にITOを電気蒸着して第1電極層10nmで形成した後,さらにAgを利用して反射膜を100nmの厚さで形成した。
【0079】
前記第1電極層上部にIDE406(出光社)を10−6torrの真空下で蒸着して正孔注入層を100nmの厚さで形成した。
【0080】
次に,前記正孔注入層上部にNPDを10−6torrの真空下で蒸着して20nmの厚さで正孔輸送層を形成した。
【0081】
前記正孔輸送層上部にDPVBIを利用して青色発光層を40nmの厚さで形成し,ルブレンを利用して黄色発光層を40nmの厚さで形成した。
【0082】
次に,前記黄色発光層上部に電子輸送物質であるAlq3を10−6torrの真空下で蒸着して30nm厚さの電子輸送層を形成し,前記電子輸送層上部にLiF0.5nm(電子注入層)とMg:Ag20nm(カソード)を順次真空蒸着してLiF/Mg:Ag電極を形成して有機発光素子を製造した。
【0083】
(実施例4)
正孔注入層の厚さ及び正孔輸送層の厚さをそれぞれ140nm及び20nmで形成し,青色発光層の厚さ,及び黄色発光層の厚さをそれぞれ40nm及び40nmで形成したことを除いて実施例3と同様に有機発光素子を製造した。
【0084】
(比較例1)
正孔輸送層の厚さを10nmで形成し,青色発光層の厚さ,及び黄色発光層の厚さをそれぞれ15nmおよび30nmで形成したことを除いて実施例1と同様に有機発光素子を製造した。
【0085】
(比較例2)
正孔輸送層の厚さを50nmで形成し,青色発光層の厚さ及び黄色発光層の厚さをそれぞれ20nm及び40nmで形成したことを除いて実施例1と同様に有機発光素子を製造した。
【0086】
(比較例3)
正孔注入層の厚さ及び正孔輸送層の厚さをそれぞれ80nm及び20nmで形成し,青色発光層の厚さ,黄色発光層の厚さをそれぞれ20nm,及び40nmで形成したことを除いて実施例3と同様に有機発光素子を製造した。
【0087】
(比較例4)
正孔注入層の厚さ及び正孔輸送層の厚さをそれぞれ180nm及び20nmで形成し,青色発光層の厚さ,黄色発光層の厚さをそれぞれ30nm,及び40nmで形成したことを除いて実施例3と同様に有機発光素子を製造した。
【0088】
(試験例1)
前記実施例1〜6及び比較例1〜4によって製造された白色有機発光素子の駆動電圧,効率(電流密度)及び色座標を下記の方法によって調査し,その結果を下記表1にあらわした。
輝度 : BM5A(Topcon社)で測定する。
駆動電圧 : Keithleyの238HIGH CURRENT SOURCE MEASURE UNITで測定する。
電流密度: 直流(DC)10〜100mA/cm2まで10mA/cm2ずつ向上させながら進行し,同じ素子構造から9個以上のポイントで評価した。
色座標 : PR650スペトロメータで色座標を確認した。
【0089】
【表1】

【0090】
表1から分かるように,実施例1〜4の発光素子の色座標は白色の色座標と同じ色座標を有する反面,比較例1〜4の発光素子の色座標は,白色の色座標とは違う色座標を有することが確認された。
【0091】
よって,多層構造の発光層を有する白色有機発光素子において,発光層を構成する各層の光学距離をすべて共振構造に適するように調節する場合,色純度が優秀で,かつ白色の発光効率が向上された白色有機発光素子が得られるということがわかった。
【0092】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は,白色有機発光素子及びその製造方法に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の第1の実施形態にかかる白色有機発光素子の構造を概略的にあらわした断面図である。
【図2】本発明の第2の実施形態にかかる白色有機発光素子の構造を概略的にあらわした断面図である。
【図3】本発明の第3の実施形態にかかる白色有機発光素子の構造を概略的にあらわした断面図である。
【図4】本発明の第4の実施形態にかかる白色有機発光素子の構造を概略的にあらわした断面図である。
【符号の説明】
【0095】
100 装置
102 部品
10 基板
20 第1電極
30a 正孔注入層
30b 正孔輸送層
40a 青色発光層
40b 黄色発光層
50 電子輸送層
60 電子注入層
70 第2電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上部に形成された第1電極と;
前記第1電極上に形成された正孔輸送部と;
前記正孔輸送部上に形成された青色発光層と;
前記青色発光層上に形成された黄色発光層と;
前記黄色発光層上に形成された第2電極と;
を備え,
前記第1電極と前記第2電極との間に介在されたそれぞれの発光層から発散された光が,Xが0.27〜0.39,Yが0.27〜0.39の色座標を有する白色光になるように,前記正孔輸送部および前記青色発光層が所定の厚さを有することを特徴とする白色有機発光素子。
【請求項2】
前記正孔輸送部の厚さは,15〜40nmであり,
前記正孔輸送部と前記青色発光層の総厚さは,30〜60nmであることを特徴とする,請求項1に記載の白色有機発光素子。
【請求項3】
前記正孔輸送部の厚さは,120〜160nmであり,
前記正孔輸送部と前記青色発光層の総厚さは,160〜220nmであることを特徴とする,請求項1に記載の白色有機発光素子。
【請求項4】
前記第1電極は,アノードであり,前記第2電極はカソードであることを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の白色有機発光素子。
【請求項5】
前記アノードは,反射電極であることを特徴とする,請求項4に記載の白色有機発光素子。
【請求項6】
前記正孔輸送部は,正孔注入層,正孔輸送層のいずれか一方または双方であることを特徴とする,請求項1〜5のいずれかに記載の白色有機発光素子。
【請求項7】
前記黄色発光層と前記第2電極の間には,正孔抑制層,電子注入層及び電子輸送層からなる群から選択される1種以上の層がさらに含まれることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項8】
前記黄色発光層の厚さは,15〜40nmであることを特徴とする,請求項2に記載の白色有機発光素子。
【請求項9】
前記黄色発光層の厚さは,20〜50nmであることを特徴とする,請求項3に記載の白色有機発光素子。
【請求項10】
基板上部に第1電極を形成する段階と;
前記第1電極上に正孔輸送部を形成する段階と;
前記正孔輸送部上に青色発光層を形成する段階と;
前記青色発光層上に黄色発光層を形成する段階と;
前記黄色発光層上に第2電極を形成する段階と;
を含み,
前記第1電極及び前記第2電極の間に介在されたそれぞれの発光層から発散された光が,Xが0.27〜0.39,Yが0.27〜0.39の色座標を有する白色光になるように前記正孔輸送部,前記青色発光層が所定の厚さで形成されることを特徴とする白色有機発光素子の製造方法。
【請求項11】
前記正孔輸送部の厚さは,15〜40nmで形成され,
前記正孔輸送部及び前記青色発光層の総厚さは,30〜60nmで形成されることを特徴とする,請求項10に記載の白色有機発光素子の製造方法。
【請求項12】
前記正孔輸送部の厚さは,120〜160nmで形成され,
前記正孔輸送部及び前記青色発光層の総厚さは,160〜220nmで形成されることを特徴とする,請求項10に記載の白色有機発光素子の製造方法。
【請求項13】
前記第1電極上部に反射膜を形成する段階をさらに含むことを特徴とする,請求項10〜12のいずれかに記載の白色有機発光素子の製造方法。
【請求項14】
前記正孔輸送部は,正孔注入層,正孔輸送層のいずれか一方または双方であることを特徴とする,請求項10〜13のいずれかに記載の白色有機発光素子の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−53091(P2007−53091A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220480(P2006−220480)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】