説明

白色積層ポリエステルシート

【課題】
本発明は、主に反射シートに用いられる白色ポリエステルシートの従来技術の問題点に鑑み、輝度、隠蔽性に優れるだけでなく、耐黄変性、形状安定性、製膜安定性に優れたポリエステルシートを低コストで提供することを目的とするものである。
【解決手段】
A層、B層、C層と順に積層してなる白色積層ポリエステルシートであって、A層が見かけ上の粒子数が16個以上/10μm2で、かつ見かけ上のポリエステル樹脂分率が93%以下である厚み2〜9μmの層(A層)、B層がポリエステル樹脂分率が50%以下で、かつ厚さ方向10μm当たりの平均層数が7層以上のボイド層を有する層(B層)と、C層が無機粒子を5〜22重量%含有する、A層の厚みと同等もしくはA層の厚みの4倍を超えない範囲の厚みを有する層(C層)であることにより達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白色積層ポリエステルシートに関する。好ましく、画像表示用のバックライト装置およびランプリフレクターの反射シート、照明用器具の反射シート、照明看板用反射シート、太陽電池用背面反射シート等に好適に使用することができる白色積層ポリエステルシートに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等に用いられる平面型画像表示方式における、面光源装置の反射板および反射シート、照明看板の背面反射シート、太陽電池の背面反射シートなどの用途に、白色ポリエステルフィルムが、均一で高い輝度、寸法安定性、安価である等の特性から広く用いられている。高い輝度を発現する方法として、ポリエステルフィルム中に例えば硫酸バリウムなどの無機粒子を多数含有し、ポリエステル樹脂と粒子との界面および粒子を核として生成する微細な空洞とポリエステル樹脂との空洞界面での光反射を利用する方法(特許文献1参照)、ポリエステルと非相溶な樹脂を混合することにより、非相溶な樹脂を核として生成する微細な空洞とポリエステル樹脂との界面での光反射を利用する方法(特許文献2参照)、などが知られており、さらに、冷陰極管から放射される紫外線による耐黄変性を発現する方法としては紫外線吸収剤を含有する塗布層を積層する方法(特許文献3参照)が広く用いられている。
【0003】
近年、特に、液晶ディスプレイ用途を中心に反射シートの需要が拡大している中、高輝度化はもとより、耐黄変性、形状安定性が求められ、かつ低価格で迅速に供給されることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−330727号公報
【特許文献2】特開平04−239540号公報
【特許文献3】特開2002−90515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑み、輝度、隠蔽性に優れ、耐黄変性、寸法安定性、製膜安定性を兼ね備えた白色ポリエステルシートを低コストで実現・提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、かかる課題を解決するために、次のような手段を用いるものである。すなわち、本発明の白色積層ポリエステルシートは、見かけ上の粒子数が16個以上/10μm2で、かつ、見かけ上のポリエステル樹脂分率が93%以下である厚み2〜9μmの層(A層)と、ポリエステル樹脂分率が50%以下で、かつ厚さ方向10μm当たりの平均層数が7層以上のボイド層を有する層(B層)と、B層に対しA層とは反対側に位置し無機粒子を5〜22重量%含有する、A層の厚みと同等もしくはA層の厚みの4倍を超えない範囲の厚みを有する層(C層)を有した白色積層シートである。
また、本発明の空洞含有積層白色ポリエステフィルムは、以下の(a)〜(h)の好ましい様態を有するものである。
(a)100℃−10分の熱処理後における幅方向およびその直角方向のカール値が5mm以下であること。
(b)100℃−30分熱処理時における45°刻みで測定した収縮率が0.6%以下でありかつ、面内の熱収縮率の差が0.3%以下であること。
(c)A、B、C各層にルチル型二酸化チタンを含有すること。
(d)どちらか一方の表面の3次元十点平均表面粗さSRzが1.5μm以上であること。
(e)A層側を反射面として用いること。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、輝度、隠蔽性に優れ、耐黄変性、寸法安定性、製膜安定性を兼ね備えた白色ポリエステルシートを低コストで得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルシートが、かかる課題を一挙に解決することができることを見出したものである。
【0009】
本発明の白色積層ポリエステルシートに用いるポリエステル樹脂とは、従来公知のものが使用でき、例えば、ジカルボン酸とジオールあるいはそれらのエステル形成性誘導体とを重合して得られる樹脂である。ジカルボン酸若しくはそのエステル形成性誘導体としては、例えば、芳香族ジカルボン酸では、テレフタル酸、イソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸、ジフェン酸およびそのエステル誘導体が挙げられ、また脂肪族ジカルボン酸では、アジピン酸、セバシン酸、ドデカジオン酸、エイコ酸、ダイマー酸およびそのエステル誘導体が、脂環族ジカルボン酸では、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸及びそのエステル誘導体が挙げられ、また多官能酸では、トリメリット酸、ピロメリット酸およびそのエステル誘導体が挙げられる。また、ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、テトラメチレングリコールやポリエチレングリコール、およびポリテトラメチレングリコールのようなポリエーテルなどが挙げられる。製造されるポリエステルシートの機械強度、耐熱性、製造コストなどを加味すると、本発明において用いるポリエステル樹脂としてはポリエチレンテレフタレートを基本構成とすることが好ましい。この場合の基本構成とは、含有されるポリエステル樹脂に対して50重量%以上がポリエチレンテレフタレートであるという意味である。
【0010】
また、本発明において、ポリエチレンテレフタレート共重合体を用いても良く、かかる共重合成分としては、ジカルボン酸としては、例えば、ジフェニルジカルボン酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、シュウ酸、コハク酸、エイコ酸、アジピン酸、セバシン酸、ダイマ−酸、ドデカンジオン酸、マレイン酸、フマル酸等の脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキシンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸、p−オキシ安息香酸等のオキシカルボン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の多官能酸等を使用することができる。一方、グリコ−ルとしては、例えば、プロパンジオ−ル、ブタンジオ−ル、ペンタンジオ−ル、ヘキサンジオ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、トリエチレングリコール等の脂肪族グリコ−ル、シクロヘキサンジメタノ−ル等の脂環族グリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールS等の芳香族グリコール、ジエチレングリコール、ポリアルキレングリコール等を使用することができる。後述するA層やC層に含まれる好ましい樹脂としては、ジカルボン酸成分としてイソフタル酸が共重合されたものであることが、製膜性を向上させるため好ましく、その共重合量としては2〜7mol%が好ましい。
【0011】
上記ポリエステル樹脂の重縮合反応に使用される触媒としては、例えば、アンチモン化合物、チタン化合物、ゲルマニウム化合物およびマンガン化合物などが好ましく挙げられる。これら触媒は単独で、あるいは組み合わせで用いることができる。これらの触媒のうち、光を吸収する金属触媒凝集物を生成しにくいという点で、チタン化合物やゲルマニウム化合物が好ましく、コストの観点からはチタン化合物が好ましい。チタン化合物としては、具体的には、チタンテトラブトキシドやチタンテトライソプロポキシド等のチタンアルコキシド、二酸化チタン、二酸化ケイ素複合酸化物等の主たる金属元素がチタンおよびケイ素からなる複合酸化物やチタン錯体等を使用することかできる。また、アコーディス社製のチタン・ケイ素複合酸化物(商品名:C−94)等の超微粒子酸化チタンを使用することもできる。アンチモン含有量としては50ppmであることが好ましい。
【0012】
これらのポリエステル樹脂中には、本発明の効果を阻害しない範囲内で各種添加物、たとえば蛍光増白剤、架橋剤、耐熱安定剤、耐酸化安定剤、紫外線吸収剤、有機の滑剤、無機の微粒子、充填剤、耐光剤、帯電防止剤、核剤、染料、分散剤、カップリンブ剤などが含まれていてもよい。
【0013】
酸化防止剤としては、分散性の点から、特にヒンダードフェノール系やヒンダードアミン系の酸化防止剤が好ましく、ポリエステル樹脂中に酸化防止剤を好ましくは0.05〜1.0重量%、より好ましくは0.1〜0.5重量%含有せしめることにより、一層安定したポリマー押出と製膜を行うことが可能となる。
【0014】
帯電防止剤としては、帯電防止機能を有する低分子物質や高分子物質等が用いられる。例えば、分子内にスルホン酸金属塩を有するビニル共重合体、アルキルスルホン酸金属塩、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、ベタイン、第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系ポリマー、イオネンポリマー、リン酸塩、リン酸エステル等のイオン伝導性のもの、酸化スズ−酸化アンチモン等の金属酸化物、アルコキシシラン、アルコキシチタン、アルコキシジルコニウム等の金属アルコキシド及びその誘導体、コーテッドカーボン、コーテッドシリカ等より選ばれる一つ、もしくは複数を組み合わせて用いることができる。特に、アルキルベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩は、これ自体ではフィルムの表面突起を形成しないので帯電防止剤として好ましい。なお、本発明の目的を阻害しない範囲内で、二種以上の帯電防止剤を含有しても良い。
【0015】
また、本発明のポリエステル樹脂中に耐光剤を含有することもできる。耐光剤を含有することで、フィルムの紫外線による色調変化をさらに抑制できる。好ましく使用される耐光剤としては、他の特性が損なわれない範囲であれば特に限定されないが、耐熱性に優れ、ポリエステル樹脂との相性が良く均一分散できると共に、着色が少なく樹脂およびフィルムの反射特性に悪影響を及ぼさない耐光剤を選択することが望ましい。このような耐光剤としては、例えば、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、トリアジン系等の紫外線吸収剤およびヒンダードアミン系等の紫外線安定剤などが挙げられる。具体的には、例えば、サリチル酸系のp−t−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレート、ベンゾフェノン系の2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、ベンゾトリアゾール系の2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、シアノアクリレート系のエチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート)、トリアジン系として、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールなどが挙げられる。
【0016】
また、紫外線安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系のビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、コハク酸ジメチル・1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物、その他として、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、および2,4−ジ・t−ブチルフェニル−3’,5’−ジ・t−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエートなどが挙げられる。これら耐光剤の中でも、ポリエステルとの相溶性に優れる、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシ−ベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニル)メタン、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2Hベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、および2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノールの適用が好ましい。上記耐光剤は、単独でも2種類以上を併用してもよい。耐光剤の含有量としては、耐光剤を含有する層に対して0.05〜5重量%であることが好ましい。耐光剤の含有量が5重量%を超える場合には、耐光剤による着色により、シートの色目が変わるとともに、耐光剤自身が光を吸収することにより反射率が低下することがある。
【0017】
本発明の白色積層ポリエステルシートは少なくとも3層の構成を有し、B層の一方の面側に存し、好ましくB層に隣接し、また、好ましく本発明の白色積層ポリエステルシートの最外層の一面を構成する層であるA層、B層に対してその反対側に存し、好ましくB層に隣接し、また、好ましく本発明の白色積層ポリエステルシートの一面を構成する層であるC層、また、A層とC層との間に存在し、後述するボイド層を含有する層をB層としてそれぞれ称する。本発明の白色積層ポリエステルシートを反射板として用いるときには好ましくA層側を光源側に向けて用いる。また、本発明の目的を阻害しない範囲において、A層とB層、B層とC層の間などにこれらの層とは異なる層を設けることは差し支えないが、これら機能層のみからなるA層/B層/C層の三層構成が望ましい態様である。
【0018】
本発明のシートのA層は、見かけ上の粒子数が16個以上/10μm2で、かつ、見かけ上のポリエステル樹脂分率が93%以下、厚みが2〜9μmであることが必要であり、好ましくは、見かけ上の粒子数が18個以上/10μm2、見かけ上のポリエステル樹脂分率が80〜91%、厚みが3〜6μmである。ここでいう見かけ上の粒子数とは、フィルムの断面を切り出し、A層の部分について、SEM−XMAを用いてその断面を5視野観測したときの、10μm2当たりに存在する粒子の数の平均値であり、見かけ上のポリエステル樹脂分率とは、該5視野において各視野全体に対するポリエステル樹脂の面積割合を平均した値のことである。なお、A層の境界はA層に隣接する層との間で高分子構造や樹脂含有比率、気泡含有量、粒子含有量などの組成が異なることに基づいて、フィルム断面を電子顕微鏡などの分析手段で観測したときには厚み方向におけるこれら物理量の不連続的な変化として確認することができる。後述のC層の境界についても同様である。
【0019】
見かけ上の粒子数が16個/10μm2未満であると、粒子の表面積が少なくなり優れた隠蔽性及び耐光性を実現することが難しい。また、見かけ上のポリエステル樹脂分率が93%を越えるとポリエステル樹脂の紫外線による着色度合いが高くなり好ましくない。かかる見かけ上の粒子数およびポリエステル樹脂分率を実現する方法としては、分散性がよく細かい粒子を適量混入するのがよく、数平均粒径で0.05〜0.5μmのものを用いるのが好ましく、粒子の含有量としてはA層中の構成成分の総量に対して10〜25重量%、さらに好ましくは15〜22重量%である。A層の厚みについては、厚みが2μm未満であると紫外線によるポリエステル分解の影響が大きく、耐光性が劣るとともに高い輝度を得ることができない。一方、9μmを越える場合には、製膜性が悪化するとともに、粒子およびその表面処理剤による可視光の吸収ロスの影響が生じるため、好ましくない。
【0020】
A層に用いる粒子としては、有機もしくは無機の粒子を用いることができ、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、二酸化珪素、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、アルミナ、タルク、フッ化カルシウムなどからなる群から選ばれる粒子を用いることができるが、可視光域において吸収の少なく、かつ紫外線吸収能を有するものが好ましい。これらの中では、二酸化チタンが反射特性や隠蔽性、紫外線吸収能、製造コスト等の観点で好ましい。二酸化チタンを用いる場合、アナターゼ型と比較してルチル型の方が紫外線吸収能が高いので好ましい。また、該二酸化チタン粒子は表面をシリカ、アルミナ、及びジルコニアの中から選ばれた少なくとも一種の無機酸化物で被覆処理されているとフィルムの耐光性が向上するので好ましい。
【0021】
なお、A層と後述するC層との関係においては、厚みが薄い方でかつ見かけ上の粒子数が上記範囲を充足する層がA層、もう一方の層をC層であるとする。また、厚みが同じである場合は見かけ上の粒子数が上記範囲を充足し、かつ、多い方の層がA層であるとする。
【0022】
本発明においては、好ましくA層に隣接して、ポリエステル樹脂分率(算出法はA層の説明において説明したとおりである)が50%以下で、かつ厚さ方向10μmあたりの平均層数が7層以上のボイド層を有する層(B層)を有することが必要であり、好ましくはポリエステル樹脂分率が30〜50%、厚さ方向10μmあたりのボイド層の平均層数が9層以上である。ここでいうボイド(以下、空洞と記載することがある)には、一般的に空気が存在するが、真空であってもその他の気体成分が充満していてもよく、例えば気体成分としては、酸素、窒素、水素、塩素、一酸化炭素、二酸化炭素、水蒸気、アンモニア、一酸化窒素、硫化水素、亜硫酸、メタン、エチレン、ベンゼン、メチルアルコール、エチルアルコール、メチルエーテル、エチルエーテルなどが挙げられる。これらの気体成分は1種類または2種類以上混合されていてもよい。また、ボイド層の数とは厚み方向に延びる任意の直線上に存在しているボイドの数をいい、その平均層数とはフィルム断面の任意の5箇所においてボイド層の数を求め、その算術平均を意味する。さらにボイド中の圧力は大気圧以下でも以上でもよい。
【0023】
B層のポリエステル樹脂分率が50%を越え、または、厚さ方向10μmあたりのボイド層の平均層数が7層未満であると界面数が少なくなり、高反射率、高隠蔽性、高輝度が得られないだけでなく、A層で吸収しきれなかった紫外線によるB層中のポリエステルの変色度合いが大きくなり、好ましくない。
【0024】
本発明の白色積層ポリエステルシートのB層において、かかるポリエステル樹脂分率および厚さ方向あたりの層数を好ましい範囲にする方法としては、B層中のポリエステルに(1)該ポリエステルと非相溶の熱可塑性樹脂(非相溶樹脂)を添加し、それを一軸または二軸延伸することにより微細な気泡を発生させる方法、(2)前記の非相溶樹脂の代わりに気泡形成性の無機微粒子を添加する方法等が好ましく用いられる。いずれの方法を用いてもよいが、製膜性、内部に含有せしめる気泡の量の調整し易さ、より微細で均一な大きさの気泡の形成し易さ、さらに軽量性などの総合的な点から、上記(1)の非相溶樹脂の使用が特に好ましく用いられる。ここで言う非相溶樹脂とは、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂であって、かつ該ポリエステルに対して非相溶性を示す熱可塑性樹脂であり、ポリエステル中では粒子状に分散し、延伸によりフィルム中に気泡を形成せしめる効果が大きい樹脂が好ましい。より具体的に述べれば、非相溶樹脂とは、ポリエステルと上記非相溶樹脂とを溶融後冷却した樹脂組成物を、示差走査熱量計(DSC)、動的粘弾性測定等で測定した場合に、ポリエステルに相当するガラス転移温度(以降、Tgと省略する)以外に該非相溶樹脂が本来有するTgが観察される樹脂である。非相溶樹脂の中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンのようなポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、フッ素樹脂などが好ましく用いられる。これらの中でも、臨界表面張力の小さなポリオレフィン樹脂が好ましく、ポリエステルに非相溶なポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテンなどの結晶性ポリオレフィン樹脂、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、5,6−ジメチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、1−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−エチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−n−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、6−i−ブチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、7−メチルビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、トリシクロ〔4,3,0,12.5〕−3−デセン、2−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5〕−3−デセン、5−メチル−トリシクロ〔4,3,0,12.5〕−3−デセン、トリシクロ〔4,4,0,12.5〕−3−デセン、10−メチル−トリシクロ〔4,4,0,12.5〕−3−デセン等の非晶性環状オレフィン樹脂、およびエチレンと上記で例示した環状オレフィンが共重合された樹脂、などが好適に用いられる。これらは単独重合体であっても共重合体であってもよく、2種以上の樹脂を併用してもよい。特にポリエステルとの臨界表面張力差が大きく、延伸後の熱処理によって変形しにくい樹脂が好ましく、中でもポリメチルペンテン、エチレンと上記で例示した非晶性環状オレフィンが共重合されたものが特に好ましい。環状オレフィン共重合樹脂のガラス転移温度は120℃以上230℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは160℃以上220℃以下である。環状オレフィン共重合樹脂のガラス転移温度が120℃未満の場合、フィルムを延伸する際に環状オレフィン共重合樹脂が塑性変形し空洞の生成が阻害されるので好ましくない。環状オレフィン共重合樹脂のガラス転移温度が230℃を超える場合はポリエステル樹脂と環状オレフィン共重合樹脂とを押出機等を用いて溶融混練しシート状に吐出する際の環状オレフィン共重合樹脂の分散が不十分となる。また環状オレフィン共重合樹脂のガラス転移温度がテンターでの熱固定温度よりも低いと塑性変形によるボイド潰れが生じる。なお、環状オレフィン共重合樹脂のガラス転移温度は共重合比率を変更することで調整が可能である。本発明のシートを得るためには、ポリエステルに非相溶なポリオレフィン系樹脂をポリエステル樹脂からなるマトリックス中に粒子状に微分散、かつ多数含有しているのが好ましく、数平均粒径として0.4〜3.0μmで分散していることが好ましく、より好ましくは0.5〜1.5μmの範囲である。また、該ポリオレフィン系樹脂の含有量としては、ボイド層を有する層(B層)中の構成成分の総量に対して10〜25重量%が好ましく、さらに好ましくは15重量%以上23重量%以下である。
【0025】
本発明の積層ポリエステルシートのB層にポリエステルに非相溶なポリオレフィン樹脂を用いる場合において、該ポリオレフィン樹脂がより小さく分散するようにするために、ポリアルキレングリコールと炭素数が2〜6の脂肪族ジオール成分とテレフタル酸からなるポリエステル樹脂とのブロック共重合体樹脂を添加するのは好ましい態様である。中でも、ポリアルキレングリコールとポリブチレンテレフタレートのブロック共重合体が特に好ましい。その含有量はB層の構成成分の総量に対して、2〜10重量%が好ましく、より好ましくは3〜9重量%である。2重量%以上とすることにより容易に上記好ましい粒径とすることができる。一方、分散性の観点では10重量%より多くても構わないが、生産安定性の低下の懸念があり、また、含有量に見合う効果とはなりにくい。さらにポリエステルに非相溶なポリオレフィン系樹脂の分散状態を安定させるためにポリエチレンテレフタレートに脂環族グリコールを共重合したポリエステル樹脂をB層の構成成分の総量に対して1〜10重量%、好ましくは1〜6重量%含有することも望ましい態様である。脂肪族環を有したグリコールの共重合量は、特に限定されないが、各特性面より、ジオール成分に対して好ましくは1〜50モル%である。
【0026】
また、B層には無機粒子を含有していることが好ましく、ルチル型二酸化チタンをB層の総重量に対して0.1〜5重量%含有することが耐光性の点からさらに好ましい。
【0027】
本発明のフィルムは、A層とは反対側の面を構成する層に、無機粒子を5〜22重量%含有し、A層の厚みと同等もしくはA層の厚みの4倍を超えない範囲の厚みを有する層(C層)を積層する必要がある。係るC層を積層することにより高輝度・高隠蔽性、優れた表面特性、製膜安定性、取り扱い性、形状安定性が向上し、強度が増し安定した製膜性を得るとともに、B層のボイド核剤の脱落による工程汚れを防ぐことができる。また、C層中の無機粒子の含有量は5〜22重量%であることが隠蔽性、高輝度の点で好ましく、より好ましくは10〜20重量%、さらには15〜20重量%が特に好ましい。無機粒子の含有量が5重量%よりも少ないとC層を透過して表面から漏れ出る光が多くなり、輝度が低下する。さらに粒子含有量が少なすぎるとシートのすべり性が悪くなり、逆に22重量%を越える場合には製膜時にフィルム破れが発生することがある。
【0028】
C層に用いられる無機粒子としては、例えば炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、硫化亜鉛、二酸化珪素、塩基性炭酸鉛(鉛白)、硫酸バリウム、リン酸カルシウム、アルミナ、タルク、フッ化カルシウムなどからなる群から選ばれる粒子を用いることができるが、これらの中では、二酸化チタンが反射特性や隠蔽性、紫外線吸収能、製造コスト等の観点で好ましく、特にルチル型の二酸化チタンであることが好ましい。また、A層と同種の無機粒子を含有することが、コスト、生産性、リサイクル性の点から好ましい。
【0029】
また、C層の厚みがA層の4倍以上であると、製膜工程においてシート端部のカールがきつくなり、安定した延伸をおこなうことが難しくなる。
【0030】
本発明の白色積層ポリエステルシートは、100℃、10分の加熱処理後における幅方向およびその直角方向のカール値が5mm以下であることが好ましく、100℃、30分熱処理時における45°刻みで測定した収縮率が0.6%以下、面内の熱収縮率の差が0.3%以下であることが好ましい。より好ましくは、カール値が3mm以下、45°刻みで測定した収縮率が0.3%以下、面内の熱収縮率の差が0.2%以下である。
【0031】
カール値が5mmを越える場合、シートの打ち抜き工程で不具合を起こす可能性が高くなるとともに、光の反射ムラが大きくなり好ましくない。同様に、加熱収縮率が0.6%を越える場合および面内の熱収縮率の差が0.3%を越える場合も、シートの寸法変化、歪みが大きくなり、シートの平面性が悪化するため反射ムラを生じるため、好ましくない。
【0032】
一般的に厚みが厚い二軸延伸フィルムの製造においては、溶融押し出しされたシートの冷却ロールによる冷却効率が冷却面とその反対面で異なるなど、結晶化度などの構造がフィルムの裏表で異なるものになってしまうが、特に内部にボイドを含有するボイド含有ポリエステル系フィルムは、ボイドや樹脂に分布をもつため、表裏の物性や構造を同一とするようなシートの製造が難しい。さらにシートの表裏構成が非対称の場合にはさらにカールを生じやすく、打ち抜き工程で問題となることが多い。カール値を好適な値とする方法としては、ボイドを小さくすることで内部歪を抑制する方法、シート厚み方向のボイド層に分布を持たせる方法などがあるが、延伸時にラディエイションヒーターにて加熱処理をおこなう方法が好ましい。本願のような反射性シートの場合、ラディエイションヒーターによる片面への限定的な加熱処理による表層の配向制御が可能であり、カールの制御が容易かつ確実におこなえる。
【0033】
また、加熱収縮率を0.6%未満とする方法も特には限定されないが、通常、2軸延伸フィルム製造時の延伸倍率を下げる、熱処理温度を上げる、熱処理時および/または熱処理後に幅方向および/または長手方向に緩和処理を施すなどの手法が挙げられる。45°刻み方向全てにおいて所定の加熱収縮率を得るためには、長手方向にも緩和処理をすることが好ましい。この緩和処理については、ポリエステルシートの製造中に行う方法(インライン処理)が、製造コストの観点で好ましいが、一度製膜したフィルムを再びオーブン中に通し、緩和処理を行う方法(オフライン処理)を行っても良い。
【0034】
本発明の白色積層ポリエステルシートの一方の表面の3次元十点平均表面粗さSRzは1.5μm以上であることが、顧客での加工適性、ユニットに組み込まれて熱がかかった際の他部材とのすべり、および工程での帯電しにくさ等において好ましい。SRzが1.5μm未満であると、顧客加工工程での歩留まりが落ちたり、ユニットに組み込まれ熱がかかった際にシートが収縮して他部材に引っかかりきしみ音を生じたりする。
【0035】
本発明の白色積層ポリエステルシートの厚みは100〜500μmが好ましく、150〜300μmがより好ましい。厚みが100μm未満であると、反射シートとして用いた場合、十分な輝度・隠蔽性を得ることが困難となる。一方、500μmより厚い場合、光反射フィルムとして液晶ディスプレイなどに用いた場合、本来の輝度性能以上の余剰分の厚みとしてコストアップにつながる。
【0036】
次に、本発明の白色積層ポリエステルシートの製造方法について、その一例を説明するが、本発明は、かかる例のみに限定されるものではない。
【0037】
押出機(M)と押出機(S)を有する複合製膜装置において、まず、ポリエステル層(A層)および(C層)を形成するため、融点230〜280℃のポリエステルペレットおよび無機粒子のマスターペレットを混合し十分に真空乾燥する。なお、この乾燥原料には、必要に応じて共重合ポリエステル樹脂を1〜10重量%添加してもよく、紫外線吸収剤、帯電防止剤などの添加剤を加えてもよい。次に、この乾燥原料を、240〜300℃の温度に加熱された押出機(S)に供給し、溶融押出後10〜50μmカットのフィルターにて濾過した後に、Tダイ複合口金内に導入する。一方、ポリエステル層(B層)を形成するため、真空乾燥したポリエステルペレットと、必要に応じて真空乾燥したポリエステルに非相溶なポリオレフィン系樹脂、及びポリアルキレングリコールと炭素数が2〜6の脂肪族ジオール成分とテレフタル酸からなるポリエステル樹脂とのブロック共重合体樹脂のマスターペレットを混合する。また、ポリエステル樹脂とポリオレフィン系樹脂、ポリアルキレングリコールと炭素数が2〜6の脂肪族ジオール成分とテレフタル酸からなるポリエステル樹脂とのブロック共重合体樹脂とを押出機等を用いて予め高濃度に溶融混練しておき、フィルムとするために押し出し機に供給する際にポリエステル樹脂で希釈する手法が好ましく用いられる。混合された樹脂を260〜300℃の温度に加熱された押出機(M)に供給し、ポリエステル層(A層)の場合と同様に溶融し、20〜40μmカットの焼結フィルターにて濾過してTダイ複合口金内に導入する。なお、必要に応じて共重合ポリエステル樹脂を1〜10重量%添加してもよく、さらに、一度本発明の白色フィルムを生産する際に生じたロス分を回収原料としてリサイクルして使用してもよい。Tダイ複合口金内では押出機(M)のポリマーが中央部に、押出機(S)のポリマーが両表面側になるようにし、さらに複合管内で表裏層の圧力差をつけることにより、表裏表層厚みの異なるA/B/Cからなる積層シートを共押出成形し溶融積層シートを得る。(A層)と(C層)の組成を異なるものとする場合には、さらにもう一台押出機(S2)を準備し、(A層)と同様にして乾燥、溶融押出しをおこない、3種原料複合管を用いてA/B/Cからなる積層シートを作製する。このように本発明の白色フィルムとするために用意した原料を事前に真空乾燥した後、240〜300℃の温度に加熱された押出機に供給、濾過した後に、Tダイ口金内に導入し押出成形により溶融積層シートを得る。
【0038】
この溶融積層シートを表面温度10〜60℃に冷却されたドラム上で静電気により密着冷却固化し、未延伸積層フィルムを作製する。該未延伸積層フィルムを70〜120℃の温度に加熱されたロール群に導き、長手方向(縦方向、すなわちフィルムの進行方向)に3〜4倍延伸し、20〜50℃の温度のロール群で冷却する。なお、延伸の際にラディエイションヒーターにより選択的に片面に熱を加えることにより熱カールを調整することができる。
【0039】
続いて、フィルムの両端をクリップで把持しながらテンターに導き、90〜150℃の温度に加熱された雰囲気中で、長手方向に直角な方向(幅方向)に3〜4倍に延伸する。延伸倍率は、長手方向と幅方向それぞれ3〜5倍とするが、その面積倍率(縦延伸倍率×横延伸倍率)は9〜15倍であることが好ましい。面積倍率が9倍未満であると、得られる2軸配向積層フィルムの反射率や隠蔽性、フィルム強度が不十分となり、逆に面積倍率が15倍を超えると延伸時に破れを生じ易くなる傾向がある。
【0040】
得られた2軸配向積層フィルムの結晶配向を完了させて、平面性と寸法安定性を付与するために、引き続きテンター内にて150〜240℃の温度で1〜30秒間の熱処理を行ない、均一に徐冷後、室温まで冷却し、その後必要に応じて、他素材との密着性をさらに高めるためにコロナ放電処理などを行い、巻き取ることにより、本発明の白色ポリエステルシートを得ることができる。上記熱処理工程中では、幅方向および長手方向に3〜12%の弛緩処理を施すのが好ましい。
【0041】
また、2軸延伸は逐次延伸あるいは同時2軸延伸のいずれでもよいが、同時2軸延伸法を用いた場合は、製造工程のフィルム破れを防止できたり、加熱ロールに粘着することによって生ずる転写欠点が発生しにくい。また2軸延伸後に長手方向、幅方向いずれかの方向に再延伸してもよい。
【0042】
本発明の白色積層ポリエステルシートの一面若しくは両面には、本発明の目的を阻害しない限りにおいて、必要により公知の紫外線吸収剤などの耐光剤やシリコーン系硬化樹脂などの表面硬度調整剤や有機若しくは無機粒子などの粗さ調整剤などを含有したコーティング層を設けても差し支えない。
【0043】
また、本発明の白色積層ポリエステルシートは必要に応じて接着材を用い他のフィルムと貼り合わせて使用することもできる。
【0044】
[特性の測定方法および評価方法]
本発明の特性値は、次の評価方法と評価基準により求めた。
【0045】
(1)シート厚み
シート5枚を重ねて三豊製作所(株)製ダイヤルゲージNo.2109−10に標準測定子900030を用い、更にダイヤルゲージスタンドNo.7001DGS−Mを用いて、ダイヤルゲージ押さえ部分に50gの荷重をかけたときの厚みd(μm)を測定し次式によりシート厚みを求めた。
【0046】
シート厚み(μm)=d/5。
【0047】
(2)層厚み
シートを凍結処理した後、長手方向に沿って断面を切り出し、その表層付近の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)S−2100A形((株)日立製作所製)を用いて4000倍に拡大して観察し、写真からA層およびC層の層厚みを5点測定し、その平均値を各層の層厚みとした。
【0048】
(3)粒子数、ポリエステル樹脂分率
シートを凍結処理した後、長手方向および幅方向に沿って断面を切り出し、その断面をSEMを用いて10000倍に拡大して、断面写真を撮影した。なお、写真にはスケールが映し込まれている。撮影した断面写真をA4サイズに拡大コピーし粒子の個数を数えた。なお、これを5視野についておこない、シート10μm2あたりの平均粒子数を求めた。また、拡大した画像に既製のA4サイズのOHPフィルムを画像からはみ出ないように貼り、油性マジックでOHPフィルム上から粒子およびボイドの部分を塗りつぶした。次いでそのOHPフィルムを断面画像から剥がし、無地の白地の紙を背面に介して再度等倍でコピーをとり、コピーの際のバグ(黒点)を修正液で消し、画像処理にて2値化処理を経て、粒子およびボイド分の面積を求め、下記式よりポリエステル樹脂分率を求めた。なお、これを5視野についておこない、その平均値をポリエステル樹脂分率とした。
【0049】
ポリエステル樹脂分率(%)
=(画像中の被測定層の面積−当該層の粒子およびボイド部分の面積)/画像中の被測定層の面積×100
(4)ボイド層の平均層数
シートを凍結処理した後、長手方向および幅方向に沿って断面を切り出し、その断面をSEMを用いて4000倍に拡大し、断面写真を撮影した。なお、写真にはスケールが映し込まれている。撮影した断面写真をA4サイズに拡大コピーし厚さ方向10μmあたりのボイド層の層数を数えた。なお、これを5点についておこない、平均値をボイド層の平均層数とした。
【0050】
(5)十点平均表面粗さ
JIS−B−0601に準じて測定を実施し測定器は、小坂研究所製、表面粗さ計(型番:SE3500)を用いて測定した。条件は下記の通り。
・送り速度:0.1mm/s
・Xピッチ:1.00μm
・Yピッチ:5.0μm
・Z測定倍率:20000
・低域カット:0.25mm。
【0051】
(6)カール値
シートをサンプルA:長手方向100mm×幅方向120mm、サンプルB:長手方向120mm×幅方向100mm、の大きさにカットしたものを、100℃に予熱されたオーブンに入れ10分間加熱処理をおこなった。加熱処理後のサンプルAを平面台に置き、平面台とサンプル四隅との間隔を測定し、その平均値を求めた。サンプルBについても同様の測定をおこない、サンプルAとサンプルBの平均値をカール値とした。
【0052】
(7)熱収縮率
シートを長手方向、および、長手方向からそれぞれ45°、90°、135°傾いた方向に試料を切り出し、ASTM D1204(1984年)に準じ、100℃30分間熱処理して熱収縮率を測定した。面内の収縮率差はそれらの収縮率の最大値から最小値を引いたものとした。
【0053】
(8)相対輝度(直下型方式輝度)
NEC(株)製のバックライト181BLM07を用い、その反射フィルムを評価する試料に置き換えて、ライトを点灯させた。なお、A層が光源側にくるように試料を配置した。その状態で1時間待機して光源を安定化させた後、液晶画面部をCCDカメラ(SONY製DXC−390)にて撮影し、アイシステム製画像解析装置“アイスケール”で画像を取り込んだ。その後、撮影した画像の輝度レベルを3万ステップに制御し自動検出させ、輝度に変換した。
輝度評価は、東レ株式会社製‘ルミラー’#250E6SLを基準(100%)とし、下記のとおりで評価した。◎と○が合格レベルである(但し、◎は○に勝る)。
◎:かなり良好 (相対輝度が101.5%を超える)
○:良好 (相対輝度が100〜101.5%)
×:劣る (相対輝度が100%未満)
(9)隠蔽性
試料をヘイズメーター(スガ試験器(株)社製HZ−2)を用い、JIS K7105(1981年)に従い全光線透過率を測定し、以下の基準にて判定を行った。なお、A層が光源側にくるように試料を配置した。◎と○が合格レベルである(但し、◎は○に勝る)。
◎:かなり良好 (全光線透過率が2.0%未満)
○:良好 (全光線透過率が2.0〜3.5%)
×:劣る (全光線透過率が3.5%を超える)
(10)耐光性(黄色み変化:Δb値)
紫外線劣化促進試験機アイスーパーUVテスターSUV−W131(岩崎電気(株)製)を用い、下記条件で強制紫外線照射試験を行った後、b値を求めた。3サンプルについて紫外線照射試験を実施しそれぞれ試験前後のb値を測定した。なお、A層が光源側にくるように配置した。紫外線照射試験前後のb値の差を平均し、Δb値とした。
【0054】
「紫外線照射条件」
照度:100mW/cm2、温度:60℃、相対湿度:50%RH、照射時間:48時間
耐光性評価を黄色みの変化量Δbを指標とし下記により判定をおこなった。◎と○が合格レベルである(但し、◎は○に勝る)。
◎:かなり良好 (Δb値が3未満)
○:良好 (Δb値が3〜5)
×:劣る (Δb値が5を超える)
(11)製膜安定性
製膜時の安定性を下記基準により評価した。◎と○が合格レベルである(但し、◎は○に勝る)。
○:12時間超安定に製膜をおこなうことができた。
△:12時間以内に破断が生じた。
×:安定な製膜ができない。
【0055】
(12)反射むら
長手方向を長軸としてA4サイズにカットしたシートを、内部が100℃に加熱されたオーブンに入れ10分間加熱処理をおこなった。蛍光灯下30cmの位置にある台座上に加熱処理後のシートを置き、台座ごと蛍光灯に対し左右へシート幅分平行移動させた。この時、台座面に対し30°の角度から、蛍光灯の反射光を観測した。同様の測定をシートを90°回転させて行った。なお、A層が光源側にくるように試料を配置した。◎と○が合格レベルである(但し、◎は○に勝る)。90°回転前後の測定で結果が異なる場合、シートは悪い方の結果で評価される。
◎:かなり良好 (シートに映った蛍光灯の像がほどんどぶれない)
○:良好 (シートに映った蛍光灯の像のぶれが少ない。元の像の幅の2倍未満)
×:劣る (シートに映った蛍光灯の像のぶれが大きい。元の像の幅の2倍以上)
【実施例】
【0056】
本発明を以下の実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
(実施例1)
押出機(M)と押出機(S)とTダイ複合口金を有する複合製膜装置を用いて、下記のA層、B層、C層からなる三層積層ポリエステルシートとした。その積層構成はA/B/Cである。B層についてはポリエチレンテレフタレート(以下、PET)22重量部、イソフタル酸を全ジカルボン酸の10mol%,分子量1000のポリエチレングリコールを全ジオールの5mol%共重合されたポリエチレンテレフタレート共重合体(PET/I/PEG。以下、ポリエステル2)を10重量部、ポリメチルペンテン(PMP)マスターチップ(ポリエチレンテレフタレート63重量%、三井化学株式会社製ポリメチルペンテン「TPX DX820」30重量%、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、東レデュポン社製「ハイトレル」)7重量%からなる。以下、PMPマスタ1)を60重量部、数平均粒径0.2μmのルチル型二酸化チタン粒子マスターチップ(ポリエチレンテレフタレート50重量%、ルチル型二酸化チタン50重量%からなる。以下、二酸化チタンマスタ1)を8重量部とを混合し160℃で5時間真空乾燥、混合させた後、270〜300℃に加熱された押出機(M)に供給し、A層およびC層については共にジカルボン酸としてテレフタル酸93モル%とイソフタル酸7モル%、ジオールとしてエチレングリコールを用いて得られるポリエステル樹脂(PET/I。以下、ポリエステル1)54重量部、二酸化チタンマスタ1を34重量部、数平均粒径3.2μmの二酸化珪素粒子マスターチップ(ポリエチレンテレフタレート95重量%、二酸化珪素5重量%からなる。以下、シリカマスタ1)12重量部を160℃で5時間真空乾燥、混合した後、280℃に加熱された押出機(S)に供給し、これらのポリマーを層厚み比でA層/B層/C層=6/203/16となるようにTダイ複合口金を通して溶融積層シートとし、該溶融積層シートを表面温度18℃に保たれたドラム上に静電荷法で密着冷却固化させて未延伸積層フィルムを得た。続いて、該未延伸積層フィルムを85〜90℃の温度に加熱したロール群およびC層面側からラディエイションヒーター(出力6kW)で予熱した後、表面温度が90℃の加熱ロールを用いて長手方向(縦方向)に3.3倍延伸を行い、25℃の温度のロール群で冷却して一軸延伸フィルムを得た。
【0058】
得られた一軸延伸フィルムの両端をクリップで把持しながらテンター内の90〜100℃の温度の予熱ゾーンに導き、引き続き連続的に100℃の温度の加熱ゾーンで長手方向に直角な方向(幅方向)に3.3倍に延伸した。さらに引き続いて、テンター内の熱処理ゾーンで200℃で10秒間の熱処理を施した後、均一に徐冷しつつ、幅方向に4%、長手方向に1%の弛緩処理を行った。冷却後、巻き取って白色ポリエステルシートを得た。得られたシートの特性とその評価結果を表1に記載した。
【0059】
(実施例2、比較例4)
各層の樹脂種,配合比率,層厚み,シート厚みを表1記載のものに変更し、テンター内の熱処理温度を10℃上げるとともに熱処理後の長手方向の弛緩処理率を1.5%とした以外は実施例1と同様の方法で白色ポリエステルシートを得た。得られたシートの特性とその評価結果を表1に記載した。
【0060】
(実施例3、比較例1、2、6)
各層の樹脂種,配合比率,層厚み,シート厚みを表1記載のものに変更し、実施例1と同様の方法で白色ポリエステルシートを得た。得られたシートの特性とその評価結果を表1に記載した。
【0061】
(実施例4)
B層を構成する樹脂としてポリエチレンテレフタレート27重量部、環状オレフィン共重合体(COC)のマスターチップ(ポリエチレンテレフタレート63重量%、エチレンとノルボルネンの共重合体であるポリプラスチックス社製「TOPAS」を30重量%、ポリブチレンテレフタレートとポリテトラメチレングリコールの共重合物(PBT/PTMG、東レデュポン社製「ハイトレル」)7重量%からなる。以下、COCマスタ1)を73重量部混合し160℃で5時間真空乾燥後、270〜300℃に加熱された押出機(M)に供給し、A層およびC層を構成する樹脂としてポリエステル1を28重量部、二酸化チタンマスタ1を38重量部、シリカマスタ1を24重量部、アルキルベンゼンスルホン酸塩を含有する耐電防止剤マスタ(ポリエチレンテレフタレート95重量%、アルキルベンゼンスルホン酸塩5重量%からなる。以下、帯電防止剤マスタ1)10重量部を160℃で5時間真空乾燥、混合した後、280℃に加熱された押出機(S)に供給して形成し、長手方向延伸時前のロール温度を1℃下げ、ラディエイションヒーター出力を12kWとし、テンター内の熱処理温度を10℃下げ、各層厚み,シート厚みを表1記載のものとした以外は実施例1と同様の方法で白色ポリエステルシートを得た。得られたシートの特性とその評価結果を表1に記載した。
【0062】
(実施例5)
各層の樹脂種,配合比率,層厚みを表1記載のものに変更し、テンター内の熱処理温度を10℃下げ、熱処理後の長手方向の弛緩処理率を1.5%とした以外は実施例1と同様の方法で白色ポリエステルシートを得た。得られたシートの特性とその評価結果を表1に記載した。
【0063】
(実施例6、比較例5)
各層の樹脂種,配合比率,層厚み,シート厚みを表1記載のものに変更し(但し、比較例5においては、数平均粒径0.5μmのルチル型二酸化チタン粒子マスターチップ(ポリエチレンテレフタレート50重量%、ルチル型二酸化チタン50重量%からなる。以下、二酸化チタンマスタ2)を用いた)、また、C層用に押出機(S2)を別途準備し、3種原料用複合口金を用いて積層し、テンター内の熱処理温度を10℃下げ、長手方向の弛緩処理はおこなわずに巻き取りをおこなった以外は、実施例1と同様の方法で白色フィルムを得た。得られたシートの特性とその評価結果を表1に記載した。
【0064】
(比較例3)
B層を構成する樹脂としてポリエチレンテレフタレート21重量部、ポリエステル2を12重量部、PMPマスタ1を67重量部混合し160℃で5時間真空乾燥後、270〜300℃に加熱された押出機(M)に供給し、A層およびC層を構成する樹脂としてポリエステル1を72重量部、数平均粒径0.7μmの硫酸バリウム粒子マスターチップ(ポリエチレンテレフタレート50重量%、硫酸バリウム50重量%からなる。以下、硫酸バリウムマスタ1)28重量部を160℃で5時間真空乾燥、混合した後、280℃に加熱された押出機(S)に供給して形成し、各層厚み,シート厚みを表1記載のものとした以外は実施例1と同様の方法で白色ポリエステルシートを得た。得られたシートの特性とその評価結果を表1に記載した。
【0065】
(比較例7)
各層の樹脂種,配合比率,層厚み,シート厚みを表1記載のものに変更した以外は、実施例1と同様の方法で白色ポリエステルシートを得ようと試みたたが、破れが頻発し、シートを得ることができなかった。なお、A層およびC層の厚みは4μmとなるように押出し積層させた。
【0066】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、フィルム内部に空洞を含有し、反射特性、隠蔽性に優れるだけでなく、耐黄変性、形状安定性、製膜安定性に優れるので、画像表示用のバックライト装置およびランプリフレクターの反射シート、照明用器具の反射シート、照明看板用反射シート、太陽電池用背面反射シート等に好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A層、B層、C層がこの順に積層してなる白色積層ポリエステルシートであって、A層が見かけ上の粒子数が16個以上/10μm2で、かつ見かけ上のポリエステル樹脂分率が93%以下である厚み2〜9μmの層(A層)、B層がポリエステル樹脂分率が50%以下で、かつ厚さ方向10μm当たりの平均層数が7層以上のボイド層を有する層(B層)と、C層が無機粒子を5〜22重量%含有する、A層の厚みと同等もしくはA層の厚みの4倍を超えない範囲の厚みを有する層(C層)である、白色積層ポリエステルシート。
【請求項2】
100℃−10分の熱処理後における幅方向およびその直角方向のカール値が5mm以下である請求項1に記載の白色積層ポリエステルシート。
【請求項3】
100℃−30分熱処理時における45°刻みで測定した収縮率が0.6%以下でありかつ、面内の熱収縮率の差が0.3%以下である請求項1または2に記載の白色積層ポリエステルシート。
【請求項4】
A、B、C各層にルチル型二酸化チタンを含有する請求項1〜3のいずれかに記載の白色積層ポリエステルシート。
【請求項5】
どちらか一方の表面の3次元十点平均表面粗さSRzが1.5μm以上である請求項1〜4のいずれかに記載の白色積層ポリエステルシート。
【請求項6】
A層側を反射面として用いる請求項1〜5のいずれかに記載の白色積層ポリエステル反射シート。

【公開番号】特開2010−228425(P2010−228425A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−81413(P2009−81413)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】