説明

白金/スズ触媒を用いる酢酸からのエタノールの直接且つ選択的な製造

【課題】エタノールを工業的スケールで酢酸から直接に非常に高い選択率及び収率で製造する方法を提供する。
【解決手段】シリカ、黒鉛、ケイ酸カルシウム、又はシリカ−アルミナ上に担持されている白金及びスズ上で酢酸と水素を反応させることによって、気相中、約250℃の温度においてエタノールが選択的に製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、同じ表題の2008年7月31日出願の米国特許出願12/221,141に基づくものであり、ここにその優先権を主張し、その開示事項は参照として本明細書中に包含する。
【0002】
本発明は、一般に酢酸からエタノールを製造する方法に関する。より詳しくは、本発明は、好適な触媒担体上に担持されている白金及びスズから構成され、場合によっては1種類以上の更なる水素化金属を含む触媒を用いて酢酸を水素化して、高い選択率でエタノールを生成することを含む方法に関する。
【背景技術】
【0003】
酢酸をエタノールに転化させる経済的に実現可能なプロセスに対する必要性が長い間感じられている。エタノールは、種々の工業製品のための重要な商業的供給原料であり、ガソリンへの燃料添加剤としても用いられている。例えば、エタノールはエチレンに容易に脱水することができ、これは次に、ポリマー製品、或いは被覆、ポリマー製造などにおいて用いるための小分子ベースの製品に転化させることができる。エタノールは、通常は、価格の変動がより大きくなってきている供給原料から製造される。則ち、天然ガス及び原油の変動する価格は、通常製造される石油、天然ガス、又はトウモロコシ、若しくは他の農業製品を原料とするエタノールのコストにおける変動の原因となり、このために石油の価格及び/又は農業製品の価格が上昇している際には、エタノールの代替源に対する必要性が益々大きくなっている。
【0004】
酢酸の水素化によってエタノールを製造することができることが報告されているが、これらのプロセスの殆どは商業的運転のためには幾つかの欠点を有することを特徴とする。例えば、米国特許2,607,807においては、約88%の収率を達成するために700〜950barの非常に高い圧力においてルテニウム触媒上で酢酸からエタノールを生成することができるが、約200barの圧力においては約40%の低い収率しか得られないことが開示されている。しかしながら、これらの条件のいずれも、商業的な運転のためには受け入れられず、経済的でない。
【0005】
より最近では、ここでも約40〜120barの大気圧より高い圧力において、コバルト触媒を用いて酢酸を水素化することによってエタノールを製造することができることが報告されている。例えば、Shusterらの米国特許4,517,391を参照。しかしながら、ここで開示されている唯一の実施例は約300barの範囲の反応圧力を用いており、このため、このプロセスはやはり商業的運転のためには望ましくない。更に、このプロセスは、50重量%以上のコバルト、及び銅、マンガン、モリブデン、クロム、及びリン酸からなる群から選択される1以上の要素を含む触媒が必要であり、このためにこのプロセスは経済的に実現性がない。触媒材料を担持するために単純な不活性触媒担体を用いることが開示されているが、担持金属触媒の具体例はない。
【0006】
Kitsonらの米国特許5,149,680においては、白金族金属合金触媒を用いてカルボン酸及びそれらの無水物をアルコール及び/又はエステルに接触水素化する方法が記載されている。触媒は、金属レニウム、タングステン、又はモリブデンの少なくとも1つを含む成分を混合した、周期律表第VIII族の少なくとも1種類の貴金属と、第VIII族貴金属と合金を形成することができる少なくとも1種類の金属との合金を含む。ここでは、従来技術文献を凌ぐ向上したアルコールへの選択率が達成されると主張されているが、これらの最適触媒条件下での酢酸のエタノールへの水素化中において、3〜9%のメタン及びエタンのようなアルカンが副生成物として生成されることが更に報告された。
【0007】
Kitsonらの米国特許4,777,303においては、カルボン酸の水素化によってアルコールを製造する方法が記載されている。この場合において用いる触媒は、場合によっては担体、例えば高表面積黒鉛化炭素上の、モリブデン又はタングステンのいずれかである第1の成分、及び元素周期律表の第VIII族の貴金属である第2の成分を含む不均一触媒である。アルコール及びエステルの混合物の合計への選択的は僅かに約73〜87%の範囲であり、カルボン酸への転化率は約16〜58%の低さであることが報告されている。更に、酢酸のエタノールへの転化の具体例は与えられていない。
【0008】
Kitsonらの米国特許4,804,791においては、カルボン酸を水素化することによってアルコールを製造する他の方法が記載されている。このプロセスにおいては、酢酸又はプロピオン酸のいずれかを、気相中、昇温温度、及び1〜150barの範囲の圧力において、場合によっては担体、例えば高表面積黒鉛化炭素上に、必須成分として(i)元素周期律表の第VIII族の貴金属、及び(ii)レニウムを含む触媒の存在下において水素と接触させることによって、酢酸からエタノールを製造するか、又はプロピオン酸からプロパノールを製造する。酢酸のエタノールへの転化率は0.6%〜69%の範囲であり、エタノールへの選択率は約6%〜97%の範囲であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許2,607,807
【特許文献2】米国特許4,517,391
【特許文献3】米国特許5,149,680
【特許文献4】米国特許4,777,303
【特許文献5】米国特許4,804,791
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記から、既存のプロセスはエタノールへの必要な選択率を有していないか、或いは既存の技術は、高価であるか及び/又はエタノールの生成に関して非選択的である触媒を用いており、望ましくない副生成物を生成することが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、ここで、予期しなかったことに、エタノールを工業的スケールで酢酸から直接に非常に高い選択率及び収率で製造することができることが見出された。より詳しくは、本発明は、酢酸を、白金/スズ水素化触媒上において水素の存在下で水素化することを含む、酢酸からエタノールを選択的に生成する方法を提供する。より詳しくは、本発明方法のために好適な触媒は、場合によってはパラジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、イリジウム、クロム、銅、モリブデン、タングステン、バナジウム、及び亜鉛からなる群から選択される1種類以上の金属触媒と組み合わせた、好適な触媒担体上に担持されている白金及びスズの組み合わせを含む。好適な触媒担体としては、限定なしに、シリカ、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭素、ジルコニア、及びチタニアが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、例証及び例示のみの目的のための数多くの態様を参照して本発明を詳細に記載する。特許請求の範囲において示す本発明の精神及び範囲内の特定の態様に対する修正は、当業者に容易に明らかとなるであろう。
【0013】
下記においてより具体的に定義しない限りにおいて、用語はその通常の意味で与えられる。モルパーセント(モル%又は%)などの用語は、他に示さない限りにおいてモルパーセントを指す。重量パーセント(重量%又は%)などの用語は、他に示さない限りにおいて重量パーセントを指す。
【0014】
「転化率」は、供給流中の酢酸を基準とするモル%として表す。酢酸(AcOH)の転化率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから下式:
【0015】
【化1】

【0016】
を用いて計算する。
「選択率」は、転化した酢酸を基準とするモル%として表す。例えば、転化率が50モル%であり、転化した酢酸の50モル%がエタノールに転化している場合には、本発明者らはエタノール選択率が50%であると言う。選択率は、ガスクロマトグラフィー(GC)のデータから下式:
【0017】
【化2】

【0018】
を用いて計算する。
触媒金属の重量%は、金属の重量、並びに金属及び担体の合計乾燥重量に基づく。
反応は、次の化学式:
【0019】
【化3】

【0020】
にしたがって進行する。
本発明によれば、酢酸のエタノールへの転化は、例えば、所望の場合には層状固定床であってよい単一の反応区域内のような種々の形態で行うことができる。断熱反応器を用いることができ、或いは熱伝達媒体を備えたシェルアンドチューブ反応器を用いることができる。固定床には、異なる触媒粒子又はここで更に記載する複数の触媒を含む触媒粒子の混合物を含ませることができる。固定床にはまた、反応物質のための混合区域を構成する粒子状材料の層を含ませることもできる。酢酸、水素、及び場合によっては不活性キャリアガスを含む反応混合物を、混合区域への加圧流として床に供給する。この流れは、次に(差圧を用いて)反応区域又は層に供給される。反応区域は、好適な水素化触媒を含む触媒組成物を含み、ここで酢酸が水素化されてエタノールが生成する。反応器のタイプ、処理量の要求などに応じて、任意の好適な粒径を用いることができる。
【0021】
当業者に公知の種々の白金含有水素化触媒を、本発明方法におけるエタノールを生成するための酢酸の水素化において用いることができるが、用いる水素化触媒は好適な触媒担体上の白金及びスズの組み合わせを含むことが好ましい。上述したように、本発明方法において好適な触媒は、場合によっては同じ触媒担体上に担持されている第3の金属を含むことが更に好ましい。以下の金属を限定なしに第3の金属として好適な金属として言及することができる:パラジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、イリジウム、クロム、銅、モリブデン、タングステン、バナジウム、亜鉛、及びこれらの混合物。通常は、好適な担体上の好適な重量比の白金及びスズの組み合わせを水素化触媒として用いることができることが好ましい。したがって、約0.1〜2の重量比の白金及びスズ(Pt/Sn)の組み合わせが特に好ましい。より好ましくは、Pt/Snの重量比は約0.5〜1.5であり、最も好ましくはPt/Snの重量比は約1である。第3の金属としてPt/Snと共に用いることができる金属の好ましい例としては、限定なしに、例えばロジウム、イリジウム、銅、モリブデン、及び亜鉛のような上記に列記した任意の他の金属が挙げられる。
【0022】
当該技術において公知の種々の触媒担体を用いて本発明の触媒を担持することができる。かかる担体の例としては、限定なしに、ゼオライト、酸化鉄、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、炭素、黒鉛、及びこれらの混合物が挙げられる。好ましい担体は、シリカ、アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭素、ジルコニア、及びチタニアである。より好ましくは、本発明方法における触媒担体としてシリカを用いる。また、シリカの純度がより高いと、より良好で本発明における担体として好ましいことを注意することも重要である。他の好ましい触媒担体はケイ酸カルシウムである。
【0023】
本発明の他の態様においては、好ましい触媒担体は炭素である。触媒担体として好適な当該技術において公知の種々の形態の炭素を、本発明方法において用いることができる。特に好ましい炭素担体は、黒鉛化炭素、特に英国特許2,136,704に記載されている高表面積黒鉛化炭素である。炭素は、好ましくは粒子状形態、例えばペレットである。炭素粒子の寸法は、任意の与えられた反応器において許容しうる差圧(最小ペレット寸法を与える)、及びペレット内の反応物質の拡散制約(最大ペレット寸法を与える)によって定まる。
【0024】
本発明方法において好適な炭素触媒担体は、好ましくは多孔質炭素触媒担体である。好ましい粒径と共に、炭素は、好ましい表面積特性を満足するために多孔質であることが必要である。
【0025】
炭素触媒担体などの触媒担体は、それらのBET、基底面表面積、及び端面表面積によって特徴づけることができる、BET表面積は、Brunauer、Emmett、及びTellerのJ. Am. Chem. Soc. 60, 309 (1938)の方法を用いて窒素吸着によって測定される表面積である。基底面表面積は、Proc. Roy. Soc. A314, p.473〜498(特にp. 489を参照)に記載されている方法によってn−ヘプタンからのn−ドトリアコンタンの炭素上の吸着熱から求められる表面積である。端面表面積は、上述のProc. Roy. Soc.の論文(特にp. 495を参照)に開示されているn−ヘプタンからのn−ブタノールの炭素上の吸着熱から求められる表面積である。
【0026】
本発明において用いるために好ましい炭素触媒担体は、少なくとも100m/g、より好ましくは少なくとも200m/g、最も好ましくは少なくとも300m/gのBET表面積を有する。BET表面積は、好ましくは1000m/g以下、より好ましくは750m/g以下である。
【0027】
少なくとも10:1、好ましくは少なくとも100:1の基底面表面積:端面表面積の比を有する炭素触媒担体を用いることが好ましい。この比については上限があるとは考えられてはいないが、実施上は、通常は200:1を超えない。
【0028】
好ましい炭素担体は、炭素含有出発材料を熱処理することによって製造することができる。出発材料は、例えば英国特許1,168,785に開示されているようにして製造される親油性黒鉛、或いはカーボンブラックであってよい。
【0029】
しかしながら、親油性黒鉛はフレーク形状の非常に微細な粒子の形態の炭素を含んでおり、したがって触媒担体として用いるためにはあまり好適な材料ではない。本発明者らはこれらの利用を排除することを好む。同様の考察が、これも非常に微細な粒径を有するカーボンブラックに適用される。
【0030】
好ましい材料は、植物性材料、例えばヤシ活性炭、或いはピート又は石炭、或いは炭化可能なポリマーから誘導される活性炭である。熱処理にかける材料は、好ましくは炭素担体のために好ましいとして上記に示されているものよりも大きい粒径を有する。
【0031】
好ましい出発材料は、次の特性:少なくとも100、より好ましくは少なくとも500m/gのBET表面積;を有する。
規定した特性を有する炭素担体を製造するために好ましい熱処理手順は、順番に、(1)炭素を不活性雰囲気中900℃〜3300℃の温度で加熱し(2)炭素を300℃〜1200℃の温度で酸化し(3)不活性雰囲気中900℃〜3000℃の温度で加熱する;ことを含む。
【0032】
酸化工程は、酸素(例えば空気として)を酸化剤として用いる場合には、好ましくは300℃〜600℃の温度で行う。
不活性ガス中の加熱の継続時間は重要ではない。炭素において必要な変化を生起させるためには、炭素を必要な最高温度に加熱するのに必要な時間で十分である。
【0033】
酸化工程は、明らかに、炭素が完全に燃焼するような条件下で行ってはならない。これは好ましくは、過剰酸化を避けるように制御された速度で供給する気体状酸化剤を用いて行う。気体状酸化剤の例は、水蒸気、二酸化炭素、及び分子状酸素を含む気体、例えば空気である。酸化は、好ましくは、酸化工程にかける炭素の重量を基準として少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%の炭素の重量損失を与えるように行う。
【0034】
重量損失は、好ましくは、酸化工程にかける炭素の40重量%以下、より好ましくは炭素の25重量%以下である。
酸化剤の供給速度は、好ましくは所望の重量損失が少なくとも2時間、より好ましくは少なくとも4時間で起こるようなものである。
【0035】
不活性雰囲気が必要な場合には、これは窒素又は不活性ガスによって与えることができる。
上述したように、白金及びスズの装填レベルは、一般に白金の含量及びPt/Snの重量比を基準とし、約0.1〜2の範囲である。したがって、Pt/Snの重量比が0.1である場合には、白金の量は0.1又は1重量%であってよく、1又は10重量%のスズが触媒担体上に存在する。より好ましくは、Pt/Snの重量比は約0.5であり、触媒担体上の白金の量は0.5又は1重量%のいずれかであってよく、スズの量は1又は2重量%のいずれかである。より好ましくは、Pt/Snの重量比は1である。担体上の白金の量は、0.5、1、又は2重量%であり、スズの量も、0.5、1、又は2重量%である。しかしながら、より低いPt/Snの重量比を用いることもできる。例えば、0.2のPt/Snの重量比を用いることもできる。かかる場合においては、担体上の白金の量は0.5又は1重量%であってよく、これに対して2.5又は5重量%のスズを用いる。
【0036】
担体上に存在する場合には、第3の金属の装填量は、本発明においてはあまり重要ではなく、約0.1重量%〜約10重量%の範囲で変化させることができる。担体の重量を基準として約1重量%〜約6重量%の金属装填量が特に好ましい。
【0037】
金属の含浸は、当該技術において公知の任意の方法を用いて行うことができる。通常は、含浸の前に、担体を120℃において乾燥し、約0.2〜0.4mmの範囲の寸法分布を有する粒子に成形する。場合によっては、担体をプレスし、粉砕し、所望の寸法分布に篩別することができる。担体材料を所望の寸法分布に成形する任意の公知の方法を用いることができる。
【0038】
例えばα−アルミナのような低い表面積を有する担体に関しては、所望の金属装填量が得られるように、完全な湿潤又は過剰の液体含浸が得られるまで金属溶液を過剰に加える。
【0039】
上述したように、本発明方法において用いる水素化触媒は、白金及びスズを含む少なくとも2元の金属材料である。いかなる理論にも縛られることは意図しないが、一般に、1つの金属が促進剤金属として作用し、他方の金属が主金属であると考えられる。例えば、本発明のこの方法においては、白金及びスズの組み合わせが本発明の水素化触媒を製造するための主金属であると考えられる。しかしながら、用いる触媒担体、反応温度、及び圧力等(しかしながらこれらに限定されない)の種々の反応パラメーターによって、白金が主金属であり、スズが促進剤金属であると考えることもできる。主金属は、タングステン、バナジウム、モリブデン、クロム、又は亜鉛のような促進剤金属と組み合わせることができる。しかしながら、時には主金属を促進剤金属としても作用させることができ、その逆も可能であることを注意すべきである。例えば、鉄を主金属として用いる場合には、ニッケルを促進剤金属として用いることができる。同様に、クロムを銅と組み合わせて主金属として用いることができ(則ち、主2元金属としてCu−Cr)、これはセリウム、マグネシウム、又は亜鉛のような促進剤金属と更に組み合わせることができる。
【0040】
2元金属触媒は、一般に2工程で含浸させる。第1に「促進剤」金属、次に「主」金属を加える。それぞれの含浸工程の後に、乾燥及びカ焼を行う。2元金属触媒はまた、共含浸によって製造することもできる。例えば、本発明の白金/スズ触媒は、一般に担体触媒上に共含浸される。上記に記載の3元金属Cu/Cr含有触媒の場合には、「促進剤」金属の添加で開始する逐次含浸を用いることができる。第2の含浸工程には、2つの主金属、則ちCu及びCrを共含浸させることを含ませることができる。例えば、SiO上のCu−Cr−Coは、まず硝酸クロムを含浸させ、次に銅及びコバルトの硝酸塩を共含浸させることによって製造することができる。ここでも、それぞれの含浸の後に乾燥及びカ焼を行う。殆どの場合において、含浸は金属硝酸塩溶液を用いて行うことができる。しかしながら、カ焼によって金属イオンを放出する種々の他の可溶性塩を用いることもできる。含浸のために好適な他の金属塩の例としては、金属シュウ酸塩、金属水酸化物、金属酸化物、金属酢酸塩、アンモニウム金属酸化物、例えば7モリブデン酸アンモニウム6水和物、金属酸、例えば過レニウム酸溶液などが挙げられる。
【0041】
したがって本発明の一態様においては、触媒担体が黒鉛であり、これに白金及びスズが2元金属装填されている水素化触媒が提供される。本発明のこの形態においては、白金の装填量は約0.5重量%〜約1重量%であり、スズの装填量は約0.5重量%〜約5重量%である。具体的には、黒鉛上の1/1、1/5、0.5/0.5、及び0.5/2.5重量%の白金/スズの装填レベルを用いることができる。
【0042】
本発明の他の態様においては、触媒担体が高純度で低表面積のシリカであり、これに白金及びスズが2元金属装填されている水素化触媒が更に提供される。本発明のこの形態においては、白金の装填量は約0.5重量%〜約1重量%であり、スズの装填量は約0.5重量%〜約5重量%である。具体的には、高純度で低表面積のシリカ上の1/1、1/5、0.5/0.5、及び0.5/2.5重量%の白金/スズの装填レベルを用いることができる。
【0043】
本発明の他の態様においては、触媒担体がケイ酸カルシウムであり、これに白金及びスズが2元金属装填されている水素化触媒が更に提供される。本発明のこの形態においては、白金の装填量は約0.5重量%〜約1重量%であり、スズの装填量は約0.5重量%〜約5重量%である。具体的には、ケイ酸カルシウム上の1/1、1/5、0.5/0.5、及び0.5/2.5重量%の白金/スズの装填レベルを用いることができる。
【0044】
本発明の他の態様においては、触媒担体がシリカ−アルミナであり、これに白金及びスズが2元金属装填されている水素化触媒が更に提供される。本発明のこの形態においては、白金の装填量は約0.5重量%〜約1重量%であり、スズの装填量は約0.5重量%〜約5重量%である。具体的には、ケイ酸カルシウム上の1/1、1/5、0.5/0.5、及び0.5/2.5重量%の白金/スズの装填レベルを用いることができる。
【0045】
一般に、本発明の実施によって、酢酸を非常に高い割合でエタノールに選択的に転化させることができる。エタノールへの選択率は一般に非常に高く、少なくとも60%とすることができる。好ましい反応条件下においては、酢酸は、少なくとも80%の選択率、又はより好ましくは少なくとも90%の選択率でエタノールに選択的に転化する。より好ましくは、エタノール選択率は少なくとも95%である。
【0046】
本発明の触媒を用いる酢酸の転化率は少なくとも60%であり、エタノールへの選択率は少なくとも80%、好ましくは90%、最も好ましくは95%である。
一般に、本発明の活性触媒は、シリカ上に担持されている白金及びスズを含み、白金及びスズの装填量がそれぞれ1重量%である非促進触媒である。本発明の実施によれば、これらの触媒を用いて、酢酸を、約90%の転化率、並びに少なくとも90%のエタノール選択率、より好ましくは少なくとも95%のエタノールへの選択率で転化させることができる。
【0047】
担体としてケイ酸カルシウム、黒鉛、又はシリカ−アルミナを用い、それぞれ1重量%の白金及びスズの装填量で、他の促進剤金属を用いずに、同等の転化率及び選択率が達成される。
【0048】
本発明の他の形態においては、触媒担体としてシリカ又はケイ酸カルシウムの上にそれぞれ1重量%の白金及びスズの装填量を用い、例えばコバルト、ルテニウム、又はパラジウムのような促進剤金属を用いて、少なくとも90%のオーダーの高レベルの転化率、及び少なくとも約90%のエタノールへの高い選択率を得ることもできる。促進剤金属の装填量は、約0.1重量%〜約0.5重量%の範囲、より好ましくは約0.15重量%〜約0.3重量%の範囲であり、最も好ましくは促進剤金属の装填量は約0.2重量%である。本発明のこの形態において、他の好ましい触媒担体としては、シリカ−アルミナ、チタニア、又はジルコニアが挙げられる。
【0049】
本発明方法の他の形態においては、水素化は、触媒床を横切る圧力損失を克服するのに丁度十分な圧力において行う。
反応は、気体状態又は液体状態において、広範囲の条件下で行うことができる。好ましくは、反応は気相中で行う。例えば約200℃〜約300℃、好ましくは約225℃〜約275℃の範囲の反応温度を用いることができる。圧力は一般に反応に対して重要ではなく、大気圧以下、大気圧、又は大気圧以上の圧力を用いることができる。しかしながら、殆どの場合においては、反応圧は約1〜30絶対気圧の範囲であり、最も好ましくは反応区域の圧力は約10〜25絶対気圧の範囲である。
【0050】
反応は、1モルのエタノールを製造するために酢酸1モルあたり2モルの水素を消費するが、供給流中の酢酸と水素との実際のモル比は広範囲の限界値の間、例えば約100:1〜1:100の間で変化させることができる。しかしながら、この比は約1:20〜1:2の範囲であることが好ましい。より好ましくは、酢酸と水素とのモル比は約1:5である。
【0051】
本発明方法に関して用いられる原材料は、天然ガス、石油、石炭、バイオマスなどの任意の好適な源から誘導することができる。メタノールのカルボニル化、アセトアルデヒドの酸化、エチレンの酸化、酸化発酵、及び嫌気発酵などによって酢酸を製造することは周知である。石油及び天然ガスはより高価になってきているので、代替の炭素源から酢酸並びにメタノール及び一酸化炭素のような中間体を製造する方法により興味が持たれている。任意の好適な炭素源から誘導することができる合成ガス(シンガス)からの酢酸の製造が特に興味深い。例えば、Vidalinの米国特許6,232,352(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)においては、酢酸を製造するためにメタノールプラントを改造する方法が教示されている。メタノールプラントを改造することによって、新しい酢酸プラントのためのCO製造に関連する大きな設備コストが大きく減少するか又は大きく排除される。シンガスの全部又は一部をメタノール合成ループから迂回させ、分離器ユニットに供給してCO及び水素を回収し、これを次に酢酸を製造するために用いる。酢酸に加えて、このプロセスを用いて本発明に関して用いられる水素を製造することもできる。
【0052】
Steinbergらの米国特許RE35,377(これも参照として本明細書中に包含する)においては、石油、石炭、天然ガス、及びバイオマス材料のような炭素質材料を転化させることによってメタノールを製造する方法が与えられている。このプロセスは、固体及び/又は液体の炭素質材料を水素添加ガス化してプロセスガスを得て、これを更なる天然ガスで蒸気熱分解して合成ガスを生成することを含む。シンガスをメタノールに転化させ、これを酢酸にカルボニル化することができる。この方法では更に、上述のように本発明に関して用いることができる水素が生成する。Gradyらの米国特許5,821,111(ガス化によって廃バイオマスを合成ガスに転化させる方法が開示されている)、及びKindigらの米国特許6,685,754(これらの開示事項は参照として本明細書中に包含する)も参照。
【0053】
酢酸は、反応温度において気化させて、次に、非希釈状態か、或いは窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素などのような比較的不活性のキャリアガスで希釈して、水素と一緒に供給することができる。
【0054】
或いは、Scatesらの米国特許6,657,078(その開示事項は参照として本明細書中に包含する)に記載されている種類のメタノールカルボニル化ユニットのフラッシュ容器からの粗生成物として、蒸気形態の酢酸を直接回収することができる。粗蒸気生成物は、酢酸及び軽質留分を凝縮するか、又は水を除去する必要なしに本発明の反応区域に直接供給することができ、これによって全体の処理コストが節約される。
【0055】
接触又は滞留時間も、酢酸の量、触媒、反応器、温度、及び圧力のような変数によって広範囲に変化させることができる。通常の接触時間は、固定床以外の触媒系を用いる場合には1秒以下乃至数時間超の範囲であり、好ましい接触時間は、少なくとも気相反応に関しては約0.5〜100秒の間である。
【0056】
通常は、触媒は、例えば、通常は蒸気形態の反応物質が触媒の上又は触媒を通して通過する細長いパイプ又はチューブの形状の固定床反応器内で用いる。所望の場合には、流動床又は沸騰床反応器のような他の反応器を用いることができる。幾つかの場合においては、水素化触媒を不活性材料と組み合わせて用いて、圧力損失、流動性、熱平衡、又は触媒床における他のプロセスパラメーター、例えば反応物質化合物と触媒粒子との接触時間を調節することが有利である。
【0057】
1つの好ましい態様においては、酢酸及び水素を含む供給流を、昇温温度において、好適な触媒担体上の約0.5重量%〜約1重量%の白金及び0.5重量%〜約5重量%のスズ、並びに場合によっては該担体上に担持された、コバルト、ルテニウム、及びパラジウムからなる群から選択される第3の金属を含む好適な水素化触媒と接触させることを含む、酢酸からエタノールを選択的且つ直接に生成する方法も提供される。
【0058】
本発明方法のこの態様においては、好ましい水素化触媒は、約1重量%の白金及び約1重量%のスズを含む。本発明方法のこの態様においては、水素化触媒を固定床内で層状にして、反応を、気相中において、約1:20〜1:5のモル範囲の酢酸及び水素の供給流を用い、約225℃〜275℃の範囲の温度、及び約10〜25絶対気圧の範囲の反応区域の圧力で行い、反応物質の接触時間を約0.5〜約100秒の範囲にすることが好ましい。
【実施例】
【0059】
以下の実施例によって、本発明方法において用いる種々の触媒を製造するために用いる手順を記載する。
実施例A
黒鉛上1重量%白金/1重量%スズの製造:
約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した黒鉛(100g)を、オーブン内、窒素雰囲気下で120℃において一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、蒸留水(16mL)中の硝酸白金(Chempur)(1.64g)の溶液、及び希硝酸(1N、8.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(1.74g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内で110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含浸した触媒混合物を400℃においてカ焼した(6時間、1℃/分)。
【0060】
実施例B
高純度低表面積シリカ上0.5重量%白金/5重量%スズの製造:
約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した高純度で低表面積のシリカ(100g)を、オーブン内、窒素雰囲気下で120℃において一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、蒸留水(8mL)中の硝酸白金(Chempur)(0.82g)の溶液、及び希硝酸(1N、43.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(8.7g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内で110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含浸した触媒混合物を500℃においてカ焼した(6時間、1℃/分)。
【0061】
実施例C
高純度低表面積シリカ上1重量%白金/1重量%スズの製造:
蒸留水(16mL)中の硝酸白金(Chempur)(1.64g)の溶液、及び希硝酸(1N、8.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(1.74g)の溶液を用いた他は、実施例Bの手順を実質的に繰り返した。
【0062】
実施例D
ケイ酸カルシウム上1重量%白金/1重量%スズの製造:
蒸留水(16mL)中の硝酸白金(Chempur)(1.64g)の溶液、及び希硝酸(1N、8.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(1.74g)の溶液を用い、触媒担体としてケイ酸カルシウムを用いた他は、実施例Bの手順を実質的に繰り返した。
【0063】
実施例E
高純度低表面積シリカ上0.5重量%白金/0.5重量%スズ/0.2重量%コバルトの製造:
約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した高純度で低表面積のシリカ(100g)を、オーブン内、窒素雰囲気下で120℃において一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、蒸留水(8mL)中の硝酸白金(Chempur)(0.82g)の溶液、及び希硝酸(1N、4.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(0.87g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内で110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含浸した触媒混合物を500℃においてカ焼した(6時間、1℃/分)。このカ焼し冷却した材料に、蒸留水(2mL)中の硝酸コバルト6水和物(0.99g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内で110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含浸した触媒混合物を500℃においてカ焼した(6時間、1℃/分)。
【0064】
実施例F
高純度低表面積シリカ上0.5重量%スズの製造:
約0.2mmの均一な粒径分布の粉末化し篩別した高純度で低表面積のシリカ(100g)を、オーブン内、窒素雰囲気下で120℃において一晩乾燥し、次に室温に冷却した。これに、希硝酸(1N、8.5mL)中のシュウ酸スズ(Alfa Aesar)(1.74g)の溶液を加えた。得られたスラリーを、オーブン内で110℃に徐々に加熱(>2時間、10℃/分)して乾燥した。次に、含浸した触媒混合物を500℃においてカ焼した(6時間、1℃/分)。
【0065】
生成物のガスクロマトグラフィー(GC)分析:
オンラインGCによって生成物の分析を行った。1つの炎イオン化検出器(FID)及び2つの熱伝導度型検出器(TCD)を備えた3チャンネルの小型GCを用いて、反応物質及び生成物を分析した。フロントチャンネルには、FID及びCP-Sil 5(20m)+WaxFFap(5m)カラムを取り付け、これを用いて
アセトアルデヒド;
エタノール;
アセトン;
酢酸メチル;
酢酸ビニル;
酢酸エチル;
酢酸;
エチレングリコールジアセテート;
エチレングリコール;
エチリデンジアセテート;
パラアルデヒド;
を定量した。
【0066】
ミドルチャンネルには、TCD及びPorabond Qカラムを取り付け、これを用いて
CO
エチレン;
エタン;
を定量した。
【0067】
バックチャンネルには、TCD及びMolsieve 5Aカラムを取り付け、これを用いて
ヘリウム;
水素;
窒素;
メタン;
一酸化炭素;
を定量した。
【0068】
反応の前に、個々の化合物をスパイクすることによって異なる成分の保持時間を求め、公知の組成の較正用ガス又は公知の組成の液体溶液のいずれかを用いてGCを較正した。これによって、種々の成分に関する応答係数を決定することができた。
【0069】
実施例1
用いた触媒は、実施例Cの手順にしたがって製造したシリカ上1重量%白金/1重量%スズであった。
【0070】
30mmの内径を有し、制御された温度に昇温することができるステンレススチール製の管状反応器内に、50mLのシリカ上1重量%白金/1重量%スズを配置した。充填後の触媒床の長さは約70mmであった。
【0071】
供給液は実質的に酢酸から構成されていた。反応供給液を蒸発させ、水素及びキャリアガスとしてヘリウムと一緒に、約2500hr−1の平均合計気体時間空間速度(GHSV)で、約250℃の温度及び22barの圧力において反応器に充填した。得られた供給流は、約4.4モル%〜約13.8モル%の酢酸、及び約14モル%〜約77モル%の水素を含んでいた。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。85%の酢酸の転化率において、エタノールへの選択率は93.4%であった。
【0072】
実施例2
用いた触媒は、実施例Dの手順にしたがって製造したケイ酸カルシウム上1重量%白金/1重量%スズであった。
【0073】
2,500hr−1の気体状酢酸及び水素の供給流の平均合計気体時間空間速度(GHSV)を用い、250℃の温度及び22barの圧力において実施例1に示した手順を実質的に繰り返した。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。酢酸の転化率は70%より高く、エタノール選択率は99%であった。
【0074】
比較例
用いた触媒は、実施例Fの手順にしたがって製造した低表面積高純度シリカ上1重量%スズであった。
【0075】
2,500hr−1の気体状酢酸及び水素の供給流の平均合計気体時間空間速度(GHSV)を用い、250℃の温度及び22barの圧力において実施例1に示した手順を実質的に繰り返した。蒸気流出流の一部を、流出流の内容物の分析のためにガスクロマトグラフに通した。酢酸の転化率は10%未満であり、エタノール選択率は1%未満であった。
【0076】
特定の例に関して本発明を示したが、本発明の精神及び範囲内のこれらの例に対する修正は当業者には容易に明らかとなるであろう。上述の議論、当該技術における関連する知識、並びに背景技術及び詳細な説明に関連して上記で議論した参考文献(その開示事項は全て参照として本明細書中に包含する)を考慮すると、更なる説明は不要であると考えられる。
【0077】
これに限定されるわけではないが、本発明は以下の発明を包含する。
(1)酢酸及び水素を含む供給流を、昇温温度において、好適な触媒担体上の白金及びスズの組み合わせ、並びに場合によっては該担体上に担持されている第3の金属を含み、第3の金属が、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、イリジウム、クロム、銅、モリブデン、タングステン、バナジウム、及び亜鉛からなる群から選択される好適な水素化触媒と接触させることを含む、酢酸からエタノールを選択的且つ直接に生成する方法。
(2)触媒担体が、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭素、ジルコニア、及びチタニアからなる群から選択される、(1)に記載の方法。
(3)触媒担体がシリカである、(2)に記載の方法。
(4)触媒担体が高純度シリカである、(3)に記載の方法。
(5)触媒担体がケイ酸カルシウムである、(2)に記載の方法。
(6)触媒担体が炭素である、(2)に記載の方法。
(7)触媒担体が黒鉛である、(6)に記載の方法。
(8)触媒担体が高表面積の黒鉛化炭素である、(7)に記載の方法。
(9)触媒担体が、約0.1〜2の範囲のPt/Snの重量比の白金及びスズの組み合わせを含む、(1)に記載の方法。
(10)白金の装填量が約0.5重量%であり、スズの装填量が約0.5重量%であり、触媒担体が、シリカ、黒鉛、シリカ−アルミナ、又はケイ酸カルシウムである、(9)に記載の方法。
(11)白金の装填量が約1重量%であり、スズの装填量が約1重量%であり、触媒担体が、シリカ、黒鉛、シリカ−アルミナ、又はケイ酸カルシウムである、(9)に記載の方法。
(12)白金の装填量が約0.5重量%であり、スズの装填量が約2.5重量%であり、触媒担体が、シリカ、黒鉛、シリカ−アルミナ、又はケイ酸カルシウムである、(9)に記載の方法。
(13)白金の装填量が約1重量%であり、スズの装填量が約5重量%であり、触媒担体が、シリカ、黒鉛、シリカ−アルミナ、又はケイ酸カルシウムである、(9)に記載の方法。
(14)消費された酢酸を基準とするエタノールへの選択率が少なくとも60%である、(1)に記載の方法。
(15)消費された酢酸を基準とするエタノールへの選択率が少なくとも80%である、(1)に記載の方法。
(16)消費された酢酸を基準とするエタノールへの選択率が少なくとも90%である、(1)に記載の方法。
(17)消費された酢酸を基準とするエタノールへの選択率が少なくとも95%である、(1)に記載の方法。
(18)エタノールへの水素化を、気相中、約200℃〜300℃の範囲の温度において行う、(1)に記載の方法。
(19)エタノールへの水素化を、気相中、約225℃〜275℃の範囲の温度において行う、(18)に記載の方法。
(20)供給流が不活性キャリアガスを含む、(18)に記載の方法。
(21)反応物質が、約100:1〜1:100の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約200℃〜300℃の範囲であり、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲である、(18)に記載の方法。
(22)反応物質が、約1:20〜1:2の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約225℃〜275℃の範囲であり、反応区域の圧力が約10〜25絶対気圧の範囲である、(18)に記載の方法。
(23)酢酸及び水素を含む供給流を、昇温温度において、好適な触媒担体上の約0.5重量%〜約1重量%の白金及び0.5重量%〜約5重量%のスズ、並びに場合によっては該担体上に担持されている第3の金属を含み、第3の金属が、コバルト、ルテニウム、及びパラジウムからなる群から選択される好適な水素化触媒と接触させることを含む、酢酸からエタノールを選択的且つ直接に生成する方法。
(24)触媒担体が白金及びスズをそれぞれ約1重量%の装填レベルで含む、(23)に記載の方法。
(25)触媒担体がシリカである、(23)に記載の方法。
(26)反応物質が、約1:20〜1:5の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の温度が約225℃〜275℃の範囲であり、反応区域の圧力が約10〜25絶対気圧の範囲である、(23)に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)炭素源を酢酸に転化させること;及び
(b)蒸気形態の酢酸及び水素を含む供給流を、200℃〜300℃の温度において、触媒担体上の白金及びスズの組み合わせを含む水素化触媒と接触させること;
を含む、炭素源からエタノールを選択的且つ直接に生成する方法。
【請求項2】
触媒担体が、シリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、ケイ酸カルシウム、炭素、ジルコニア、チタニア、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
少なくとも約80重量%の消費された酢酸がエタノールへ転化される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
炭素源が、天然ガス、石油、及び石炭からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
炭素源がバイオマスである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
バイオマスを酢酸に転化させる工程が、
(i)バイオマスを、シンガスを含む第1の流れに転化させること;
(ii)シンガスの少なくとも一部を、メタノールを含む第2の流れに触媒的に転化させること;
(iii)一部のシンガスを、水素及び一酸化炭素に分離させること;及び
(iv)一部の一酸化炭素を伴う少なくとも一部のメタノールを、酢酸を含む第3の流れに触媒的に転化させること;
を含み、
ここで、接触させる工程が、少なくとも一部の酢酸を一部の水素とともに、エタノールを含む第4の流れへ還元させることを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
炭素源をメタノールに転化させること、及びメタノールを酢酸に転化させることをさらに含み、
ここで、接触させる工程が、少なくとも一部の酢酸をエタノールへ還元させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
炭素源をシンガスに転化させること、少なくとも一部のシンガスをメタノールに転化させること、及びメタノールを酢酸に転化させることをさらに含み、
ここで、接触させる工程が、少なくとも一部の酢酸をエタノールへ還元させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
炭素源をシンガスに転化させること、一部のシンガスを水素流と一酸化炭素流に分離させること、及び一部の一酸化炭素流をメタノールとともに酢酸まで反応させることをさらに含み、
ここで、接触させる工程が、少なくとも一部の酢酸を一部の水素流とともに、エタノールへ還元させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
炭素源をシンガスに転化させること、一部のシンガスを水素流と一酸化炭素流に分離させること、少なくとも一部のシンガスをメタノールに転化させること、及び一部の一酸化炭素流をメタノールとともに酢酸まで反応させることをさらに含み、
ここで、接触させる工程が、少なくとも一部の酢酸を一部の水素流とともに、エタノールへ還元させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
反応物質が、100:1〜1:100の範囲のモル比の酢酸及び水素から構成され、反応区域の圧力が約1〜30絶対気圧の範囲である、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
触媒担体が、0.1〜2の範囲のPt/Snの重量比の白金及びスズの組み合わせを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
水素化触媒が、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、レニウム、イリジウム、クロム、銅、モリブデン、タングステン、バナジウム、及び亜鉛からなる群から選択される第3の金属をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
水素化触媒が、ロジウム、イリジウム、銅、モリブデン、及び亜鉛からなる群から選択される第3の金属をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
1に記載の方法。
【請求項15】
水素化触媒が、パラジウム、及びコバルトからなる群から選択される第3の金属をさらに含有する、請求項1に記載の方法。
1に記載の方法。

【公開番号】特開2012−126731(P2012−126731A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30784(P2012−30784)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【分割の表示】特願2011−521095(P2011−521095)の分割
【原出願日】平成21年7月20日(2009.7.20)
【出願人】(500175107)セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション (77)
【Fターム(参考)】