説明

皮下注入器

【課題】留置部材を連結部材から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止を確実に行なうことが可能な皮下注入器を提供する。
【解決手段】皮下注入器は、装着者の体内に薬液を注入するための皮下注入器であって、留置部材10と、スライド移動させることによって留置部材10に対して着脱可能に取付けられる連結部材20とを備える。連結部材20は、本体部分21と、本体部分21に設けられ、連結部材20を留置部材10に取付けたときにカニューラ12に連通する針20Bと、本体部分21に固定され、留置部材10から連結部材20を取り外したときに針20Bを覆うように形成され、留置部材10に連結部材20を取り付けたときには、留置部材10から圧縮力を受けて軸方向に収縮することにより、針20Bが貫通して針20Bとカニューラ12とが連通するように形成された針カバー20Aとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮下注入器に関し、特に、装着者の体内に薬液を注入するための皮下注入器に関する。
【背景技術】
【0002】
たとえばインスリン持続皮下注入法(CSII:Continuous Subcutaneous Insulin Infusion)に用いられる皮下注入器が従来から知られている。具体例としては、たとえば、特許第3864925号公報(特許文献1)および特許第4063893号公報(特許文献2)に記載されたものなどが挙げられる。
【0003】
上述したインスリン持続皮下注入法は、留置針を皮下に留置することでインスリンを常時注入し、血糖値を精度良くコントロールするための医療行為である。しかし、患者の日常生活(たとえば入浴や運動等)において、皮下注入器の輸液ラインが邪魔になり、患者の生活の利便性を低下させてしまう傾向があった。そこで、近年では、輸液ラインを着脱可能なものとし、薬液を注入する際に必要な最小限の部品のみを皮膚上に留置させる機構が設けられている。
【0004】
通常、着脱可能な機構とは、輸液ライン分離時に、皮膚上に留置される部位(留置部材)と、ポンプから留置部材に到るまでの部位(連結部材)との連結機構および分離機構を意味し、これら2つの機構によって、何度でも留置部材と連結部材とを連結・分離できるようになっている。
【特許文献1】特許第3864925号公報
【特許文献2】特許第4063893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、留置部材と連結部材との連結・分離を繰り返す皮下注入器では、留置部材を連結部材から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止が重要である。
【0006】
これに対し、特許文献1,2に記載の皮下注入器では、連結部材を留置部材から分離したときに、連結部材に設けられた穿刺針が外部に露出することになる。このことは、上述した無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止の観点からは、好ましくない。
【0007】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、留置部材を連結部材から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止を確実に行なうことが可能な皮下注入器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る皮下注入器は、装着者の体内に薬液を注入するための皮下注入器であって、装着者の体表に固定可能なベース部、および、該ベース部を装着者の体表に固定したときに装着者の体内に達する薬液通路を有する留置部材と、ベース部の延在方向に沿ってスライド移動させることによって留置部材に対して着脱可能に取付けられる連結部材とを備え、連結部材は、本体部分と、本体部分に設けられ、連結部材を留置部材に取付けたときに薬液通路に連通する針状の薬液供給部と、本体部分に固定され、留置部材から連結部材を取り外したときに薬液供給部を覆うように形成され、留置部材に連結部材を取り付けたときには、留置部材から圧縮力を受けて軸方向に収縮することにより、薬液供給部が貫通して該薬液供給部と薬液通路とが連通するように形成されたカバー部材とを含む。
【0009】
上記構成によれば、留置部材から連結部材を取り外したときに薬液供給部を覆うように形成されたカバー部材を設けることにより、連結部材を留置部材から分離したときに、連結部材に設けられた穿刺針が外部に露出することを防止できる。この結果、留置部材を連結部材から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止を確実に行なうことが可能な皮下注入器を提供することができる。
【0010】
上記皮下注入器において、好ましくは、留置部材は、ベース部に対して装着者の体の外側に突出する突出部を有し、カバー部材は、連結部材を留置部材に取り付けたときに突出部に当接する。
【0011】
上記構成によれば、突出部に当接したカバー部材を圧縮変形させて、薬液供給部によりカバー部材を容易に貫くことができる。
【0012】
上記皮下注入器において、好ましくは、カバー部材は、薬液供給部が貫通することで形成された孔部を留置部材から連結部材を取り外したときに閉塞可能な自己閉塞性を有する。
【0013】
上記構成によれば、薬液供給部が貫通することで形成された孔部をカバー部材の自己閉塞性により閉塞することができるので、留置部材を連結部材から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止がさらに容易である。
【0014】
上記皮下注入器において、好ましくは、カバー部材の側面に凹部が設けられる。これにより、カバー部材を圧縮変形させやすくすることができるので、薬液供給部によりカバー部材を容易に貫くことができる。
【0015】
上記皮下注入器は、好ましくは、インスリン持続皮下注入法に用いられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、皮下注入器において、留置部材を連結部材から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止を確実に行なうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に、本発明の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0018】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本発明の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本発明にとって必ずしも必須のものではない。また、以下に複数の実施の形態が存在する場合、特に記載がある場合を除き、各々の実施の形態の構成を適宜組合わせることは、当初から予定されている。
【0019】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る皮下注入器の連結部材を留置部材に取付ける前の状態を示す斜視図である。また、図2は、上記皮下注入器の連結部材を留置部材に取付けた状態を示す斜視図である。
【0020】
図1,図2を参照して、本実施の形態に係る皮下注入器は、インスリン持続皮下注入法(CSII)に用いられるものであって、留置部材10と、連結部材20とを含んで構成される。留置部材10は、インスリン持続皮下注入法の実施時に、患者の体表に留置するための部材である。連結部材20は、必要に応じて、留置部材10に対して脱着するための部材である。すなわち、インスリンを皮下に注入する際には、連結部材20は留置部材10に連結され、インスリンの注入を中断する際(たとえば、入浴時など)には、連結部材20は留置部材10から分離される。
【0021】
連結部材20は、本体部分21と、本体部分21に対して回動可能に設けられた蓋部分22と、輸液ライン23と、コネクタ24とを含む。連結部材20の本体部分21および蓋部分22を矢印DR20方向(患者の体表に沿う方向)にスライドさせた後、連結部材20の蓋部分22を矢印DR22方向に回動させることで、患者の体表に固定された留置部分10に、連結部材20が取付けられる。コネクタ24は、薬液を供給するポンプ(図示せず)と接続されている。ポンプ(図示せず)からコネクタ24を介して輸液ライン23に供給された薬液は、本体部分21中の薬液通路および留置部材10内の薬液通路を介して、患者の体内に導かれる。
【0022】
図3,図5は、ぞれぞれ、図1におけるIII−III断面図、および図2におけるV−V断面図である。また、図4は、図3に示す状態と、図5に示す状態との中間の状態を示す側面断面図である。
【0023】
図3〜図5を参照して、留置部材10は、ベース部11と、カニューラ12と、隔壁部13と、係止部14とを含む。留置部材10は、たとえば、皮下導入用の針を備えたインサータと呼ばれる器具を用いて患者の体表における所定の位置(下腹部や臀部等)に固定されるが、インサータを用いないで皮下導入用の針を利用して固定する場合もある。留置部材10を患者の体表に固定すると、カニューラ12が患者の体内に達する。ベース部11の下面には、たとえば不織布からなる接着層(図示せず)が設けられており、該接着層により、留置部材10が患者の体表に固定される。隔壁部13および係止部14は、ベース部11上に設けられている。係止部14は、ベース部11上に隔壁部13を係止する。隔壁部13は、その一部が係止部14から突出するように設けられている。
【0024】
連結部材20は、上述した本体部分21、蓋部分22、輸液ライン23、およびコネクタ24に加え、有底筒状の針カバー20Aと、中空の針20Bとをさらに含む。針カバー20Aの一端側は本体部分21に固定され、他端側は自由端とされている。また、針20Bには、輸液ライン23から薬液が供給される。
【0025】
図3に示すように、連結部材20を留置部材10に取付ける前は、針20Bは針カバー20Aに収納されている。この状態から連結部材20をスライド移動させると、図4に示すように、針カバー20Aが隔壁部13に当接して圧縮変形し、針20Bは針カバー20Aおよび隔壁部13を貫通する。その後、蓋部分22を矢印DR22方向に回動させることで、図5に示す状態となる。これにより、針20Bとカニューラ12とが連通し、ポンプからの薬液が患者の体内に導かれる。なお、針カバー20Aは、圧縮変形しやすいように、蛇腹状に形成されている。
【0026】
なお、連結部材20は、弾性部材25をさらに含む。弾性部材25の作用については、後述する。
【0027】
留置部材10のカニューラ12は、患者の体内に挿入された状態で、日常生活における動きに対応するため、ある程度の柔軟性と強度を有することが好ましい。カニューラ12は、たとえば、フッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、またはポリウレタンなどの樹脂を用いて形成される。
【0028】
留置部材10の隔壁部13および連結部材20の針カバー20Aは、連結部材20を留置部材10に取付けるときには、針20Bを貫通させる必要があり、連結部材20を留置部材10から取り外したときには、針20Bにより空けられた孔を閉じる必要があるため、ある程度の自己閉塞性を有することが好ましい。隔壁部13および針カバー20Aは、たとえば、天然ゴム、合成ポリイソプレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴム、シリコンゴム、ウレタンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、アクリルゴム、フッ素ゴム、または熱可塑性エラストマなどの弾性材料を用いて形成される。
【0029】
連結部材20の針20Bは、たとえばステンレスなどの金属またはポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS樹脂などの硬質プラスチックから構成される。これにより、針20Bにより針カバー20Aを容易に貫くことができる。また、留置部材10および連結部材20におけるカニューラ12、隔壁部13、針カバー20Aおよび針20B以外の部分は、たとえば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、エチレン−酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、アクリル系樹脂、ABS樹脂、アイオノマ、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンなどの樹脂材料を用いて形成される。
【0030】
図6は、留置部材10を示す斜視図であり、図7は、図6におけるVII−VII断面図である。
【0031】
図6,図7を参照して、留置部材10は、ベース部11に対して装着者の体の外側に突出するガイド部11Aを含む。ガイド部11Aは、留置部材10に対して脱着される連結部材20のスライド移動をガイドする。ガイド部11Aは、偶数正多角形(本実施の形態では正八角形)形状を有する。ガイド部11Aが正八角形形状を有する場合、4組の対辺がそれぞれ連結部材20のスライド移動をガイドするガイド面として機能するため、異なる四方向に沿って連結部材20のスライド移動をガイドすることができる。このように、複数の方向のスライド移動に対応することで、留置部材10に対してどの方向から連結部材20を取付けるかを適宜選択することが可能となり、留置部材10に対する連結部材20の着脱を容易に行なうことができる。また、多角形状に形成されたガイド部11Aは、留置部材10に連結部材20を取り付けたときに、ベース部11の延在方向に直交する軸まわり(図6,図7中の上下方向軸まわり)の連結部材20の回転を抑制する『回転抑制部』としても機能する。
【0032】
図6,図7に示すように、ベース部11は、薄肉の円板形状を有している。また、隔壁部13は、内部空間13Aを有しており、内部空間13Aとカニューラ12とが連通している。係止部14は、フランジ部14Aを有する。フランジ部14Aは、ベース部11と同様に、円板形状を有する。フランジ部14Aは、ガイド部11Aおよび隔壁部13に対して径方向外方に突出するように設けられているが、ベース部11よりは小径である。隔壁部13の一部は、フランジ部14Aよりも上方に突出している。留置部材10に連結部材20を取付けた際は、隔壁部13におけるフランジ部14Aよりも上方に突出した部分に針20Bが挿通される。
【0033】
図8〜図11は、それぞれ、連結部材20の上面図、下面図、側面図、および側断面図である。
【0034】
図8〜図11を参照して、連結部材20の本体部分21は略U字状に形成される。より具体的には、本体部分21は、後端部21A、支点部21B、先端部21Cおよび開口部21Dを有する。留置部材10のガイド部11Aは、開口部21Dに受け入れられている。図9に示すように、後端部21Aを矢印DR21A方向に押圧する(すなわち、本体部分21を両側から摘む)ことにより、支点部21Bを支点として先端部21Cが矢印DR21C方向に変形する。これにより、略U字状に形成された連結部材20の両端の間隔が広がり、本体部分21に対する蓋部分22のロックが解除される。なお、本体部分21の側面には、指の形に沿いやすい形状の凹部21Eが形成されている。これにより、本体部分21を2本の指で挟持しやすくなる。
【0035】
なお、本体部分21と蓋部分22とのロック機構は、図10に示すように、本体部分21の先端部21Cと、先端部21Cに係合する係合部22Aとによって構成されるものである。すなわち、先端部21Cが矢印DR21C方向に変形する(図12(a)を参照)ことにより、先端部21Cと係合部22Aとの係合が解かれ、蓋部分22が開方向(矢印DR22A方向)に回動する(図12(b)を参照)ものである。
【0036】
図11に示すように、連結部材20は、留置部材10に形成されたフランジ部14Aと係合するレール部26を有する。留置部材10のフランジ部14Aおよびレール部26は、留置部材10に連結部材20を取り付けたときにベース部11の延在方向に直交する方向において連結部材20を拘束する。
【0037】
さらに、蓋部分22は爪部27を有する。爪部27は、本体部分21に対して蓋部分22をロックしたときに留置部材10に当接する。これにより、留置部材10に連結部材20を取り付けたときにベース部11の延在方向に連結部材20を拘束する。
【0038】
以上のようにして、留置部材10からの連結部材20の外れが防止される。そして、連結部材20には、上述の弾性部材25がさらに設けられている。弾性部材25は、たとえば、短冊状に形成された板バネにより構成される。弾性部材25の一端側(根本側)は、本体部分21に固定され、弾性部材25の他端側(先端側)は、自由端とされている。図11に示すように、蓋部分22が開いた状態で、弾性部材25の先端部250が蓋部分22に当接している。したがって、蓋部分22を閉じた状態(本体部分21に対して蓋部分22をロックした状態)では、弾性部材25に付勢力が生じる。なお、本実施の形態では、図9に示すように、左右対称に2つの弾性部材25が設けられているが、弾性部材25は1つであってもよいし、3つ以上設けられていてもよい。また、弾性部材25としては、板バネの他にも、コイルスプリングなどの公知の弾性部材を用いることができる。
【0039】
弾性部材25は、本体部分21に対して蓋部分22をロックしたときには、本体部分21と蓋部分22との間、および、留置部材10と連結部材20との間で変形させられる(図5に示す状態)。連結部材20を留置部材10から取り外す際は、連結部材20の後端部21Aを矢印DR21A方向に押圧して連結部材20の両端の間隔を広げることにより本体部分21と蓋部分22とのロックを開放することは上述のとおりであるが、上記のように弾性部材25が変形していることにより、弾性部材25の付勢力(復元力)が、蓋部分22を回動方向(図11中の矢印DR22A方向)に付勢することになる。この結果、留置部材10からの連結部材20の取外しが行ないやすくなる。また、弾性部材25の設置位置などを適宜変更することにより、弾性部材25は、蓋部分22を回動方向に付勢するだけでなく、連結部材20をスライド方向(図11中の矢印DR20A方向)に付勢することが可能となる。この結果、留置部材10からの連結部材20の取外しがさらに行ないやすくなる。
【0040】
ここで、針カバー20Aの形状の変形例について説明する。図16(a)に示すように、本実施の形態では、蛇腹状に形成された針カバー20Aを示したが、針カバー20Aの形状は、図16(b)に示すように、軸方向中央部の径が小さくなったものであってもよいし、図16(c)に示すように、単純な円筒形状であってもよい。ただし、図16(a)や図16(b)に示すように、針カバー20Aの側面に凹部200Aを形成した場合には、針カバー20Aを軸方向に圧縮変形させやすくすることができるので、穿刺抵抗が小さくなって、針20Bにより針カバー20Aを容易に貫くことができる。
【0041】
以上説明したように、本実施の形態に係る皮下注入器によれば、留置部材10から連結部材20を取り外したときに針20Bを覆うように形成された針カバー20Aを設けることにより、連結部材20を留置部材10から分離したときに、連結部材20に設けられた針20Bが外部に露出することを防止できる。この結果、留置部材10を連結部材20から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止を確実に行なうことが可能な皮下注入器を提供することができる。
【0042】
また、針20Bが貫通することで形成された孔部を針カバー20Aの自己閉塞性により閉塞することができるので、留置部材10を連結部材20から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止がさらに容易である。
【0043】
さらに、本実施の形態に係る皮下注入器によれば、留置部材10におけるベース部11の延在方向に沿って連結部材20をスライド移動させることによって留置部材10に連結部材20を取付けることができるので、留置部材10に対する連結部材20の取付けが行ないやすくなる。さらに、連結部材20に設けられた弾性部材25により蓋部分22を回動方向(矢印DR22A方向)に付勢することができるので、留置部材10からの連結部材20の取外しが行ないやすくなる。このように、本実施の形態によれば、留置部材10に対する連結部材20の着脱が容易な皮下注入器が提供される。
【0044】
また、連結部材20の本体部分21における略U字の両端の間隔を広げることによって本体部分21に対する蓋部分22のロックを解除させることにより、連結部材20の所定位置を両側から挟むようにして本体部分21に対する蓋部分22のロックを解除することができるので、ロックを解除するために蓋部分22を上方向に持ち上げる必要がない。このような構成を備えない従来の皮下注入器では、蓋部分22を上方向に持ち上げることに伴なって留置部材10が患者の体から外れてしまうことを防止するため、連結部材20を取り外す際、片方の手で留置部材10を押さえながら、他方の手で連結部材20の取外しを行なう必要がある。これに対し、本実施の形態に係る皮下注入器では、連結部材20を取り外す際に留置部材10を押さえる必要がなく、片手で連結部材20の取外しを行なうことが可能となる。したがって、留置部材10からの連結部材20の取外しをさらに容易に行なうことが可能となる。
【0045】
上述した内容について要約すると、以下のようになる。すなわち、本実施の形態に係る皮下注入器は、装着者の体内に薬液を注入するための皮下注入器であって、装着者の体表に固定可能なベース部11、および、該ベース部11を装着者の体表に固定したときに装着者の体内に達する『薬液通路』としてのカニューラ12を有する留置部材10と、ベース部11の延在方向に沿ってスライド移動させることによって留置部材10に対して着脱可能に取付けられる連結部材20とを備える。連結部材20は、本体部分21と、本体部分21に設けられ、連結部材20を留置部材10に取付けたときにカニューラ12に連通する『薬液供給部』としての針20Bと、本体部分21に固定され、留置部材10から連結部材20を取り外したときに針20Bを覆うように形成され、留置部材10に連結部材20を取り付けたときには、留置部材10から圧縮力を受けて軸方向に収縮することにより、針20Bが貫通して針20Bとカニューラ12とが連通するように形成された『カバー部材』としての針カバー20Aとを含む。
【0046】
より具体的には、留置部材10は、ベース部11に対して装着者の体の外側に突出する『突出部』としての隔壁部13を有し、針カバー20Aは、連結部材20を留置部材10に取り付けたときに隔壁部13に当接する。
【0047】
なお、本実施の形態では、インスリン持続皮下注入法に用いられる皮下注入器について説明したが、上記皮下注入器は、その他の薬液を体内に供給するための用途(たとえば疼痛治療など)にも適用可能である。
【0048】
(実施の形態2)
図13は、実施の形態2に係る皮下注入器の連結部材を留置部材に取付けた状態を示す側断面図である。図13を参照して、本実施の形態に係る皮下注入器は、実施の形態1に係る皮下注入の変形例であって、留置部材10におけるガイド部11Aに設けられた挿入孔11Bを通じて針20Bを挿通する構造を有することを特徴とする。すなわち、本実施の形態に係る皮下注入器では、ガイド部11Aが『突出部』を構成し、連結部材20を留置部材10に取り付ける際、針カバー20Aは、ガイド部11Aに当接して圧縮変形する。
【0049】
本実施の形態に係る皮下注入器でも、実施の形態1と同様に、留置部材10を連結部材20から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止を確実に行なうことができる。
【0050】
(実施の形態3)
図14は、実施の形態3に係る皮下注入器の連結部材を留置部材に取付けた状態を示す斜視図である。また、図15は、図14におけるXV−XV断面図である。図14,図15を参照して、本実施の形態に係る皮下注入器は、実施の形態1,2に係る皮下注入器の変形例であって、留置部材10に対して上側(装着者の体表から離れた側)から連結部材20を取付ける構造を有することを特徴とする。すなわち、本実施の形態に係る皮下注入器では、図15に示すように、針カバー20Aおよび針20Bが上下方向に設けられており、本体28を留置部材10に対して上側から取付ける際、針カバー20Aが隔壁部13の上面に当接して圧縮変形する。
【0051】
本実施の形態に係る皮下注入器でも、実施の形態1,2と同様に、留置部材10を連結部材20から分離したときの無菌性の確保、および、装着者への薬液の暴露の防止を確実に行なうことができる。
【0052】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態1に係る皮下注入器の連結部材を留置部材に取付ける前の状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る皮下注入器の連結部材を留置部材に取付けた状態を示す斜視図である。
【図3】図1におけるIII−III断面図である。
【図4】図3に示す状態と、図5に示す状態との中間の状態を示す側面断面図である。
【図5】図2におけるV−V断面図である。
【図6】図1〜図5に示す皮下注入器に含まれる留置部材を示す斜視図である。
【図7】図6におけるVII−VII断面図である。
【図8】図1〜図5に示す皮下注入器に含まれる連結部材の上面図である。
【図9】図1〜図5に示す皮下注入器に含まれる連結部材の下面図である。
【図10】図1〜図5に示す皮下注入器に含まれる連結部材の側面図である。
【図11】図1〜図5に示す皮下注入器に含まれる連結部材の側断面図である。
【図12】図8〜図11に示す連結部材における本体部分と蓋部分とのロック機構を示す図である。
【図13】本発明の実施の形態2に係る皮下注入器の連結部材を留置部材に取付けた状態を示す側断面図である。
【図14】本発明の実施の形態3に係る皮下注入器の連結部材を留置部材に取付けた状態を示す斜視図である。
【図15】図14におけるXV−XV断面図である。
【図16】針カバーの形状について説明する図である。
【符号の説明】
【0054】
10 留置部材、11 ベース部、11A ガイド部、11B 挿入孔、12 カニューラ、13 隔壁部、13A 内部空間、14 係止部、14A フランジ部、20 連結部材、20A 針カバー、20B 針、21,28 本体部分、21A 後端部、21B 支点部、21C 先端部、21D 開口部、21E 凹部、22 蓋部分、22A 係合部、23 輸液ライン、24 コネクタ、25,25A 弾性部材、26 レール部、27 爪部、200A 凹部、250 先端部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の体内に薬液を注入するための皮下注入器であって、
前記装着者の体表に固定可能なベース部、および、該ベース部を装着者の体表に固定したときに前記装着者の体内に達する薬液通路を有する留置部材と、
前記ベース部の延在方向に沿ってスライド移動させることによって前記留置部材に対して着脱可能に取付けられる連結部材とを備え、
前記連結部材は、
本体部分と、
前記本体部分に設けられ、前記連結部材を前記留置部材に取付けたときに前記薬液通路に連通する針状の薬液供給部と、
前記本体部分に固定され、前記留置部材から前記連結部材を取り外したときに前記薬液供給部を覆うように形成され、前記留置部材に前記連結部材を取り付けたときには、前記留置部材から圧縮力を受けて軸方向に収縮することにより、前記薬液供給部が貫通して該薬液供給部と前記薬液通路とが連通するように形成されたカバー部材とを含む、皮下注入器。
【請求項2】
前記留置部材は、前記ベース部に対して前記装着者の体の外側に突出する突出部を有し、前記カバー部材は、前記連結部材を前記留置部材に取り付けたときに前記突出部に当接する、請求項1に記載の皮下注入器。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記薬液供給部が貫通することで形成された孔部を前記留置部材から前記連結部材を取り外したときに閉塞可能な自己閉塞性を有する、請求項1または請求項2に記載の皮下注入器。
【請求項4】
前記カバー部材の側面に凹部が設けられた、請求項1から請求項3のいずれかに記載の皮下注入装置。
【請求項5】
インスリン持続皮下注入法に用いられる、請求項1から請求項4のいずれかに記載の皮下注入器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2010−51701(P2010−51701A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−221963(P2008−221963)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000135036)ニプロ株式会社 (583)
【Fターム(参考)】