説明

皮剥ぎ装置及びそれを用いた被覆電線の皮剥ぎ工法

【課題】 被覆電線の電線端末側を所定長さに皮剥ぎして芯線を露出させる作業において、芯線にバラケを生じさせず、遠隔操作が容易な皮剥ぎ装置及びそれを用いた皮剥ぎ工法を提供する。
【解決手段】 被覆電線の端末側を挿入して収容する電線収容穴を内面に形成した1対の保持部材11、12と、1対の保持部材11、12の対向間隔を変化させて、開状態で被覆電線の電線収容穴への挿入を容易な状態とし、閉状態で被覆電線を保持する状態とする間隔変化手段5、15、54と、電線収容穴に挿入された被覆電線の端面に当接して被覆電線の電線収容穴に収容される長さを所定長さに規制する収容長さ規制部76と、電線収容穴の入口近傍位置に、刃先が前記収容長さ規制部76側方向に斜めに向くと共に電線収容穴内に突出するように配設された皮剥ぎ刃7とを備えて、皮剥ぎ部3が構成されている。またこの皮剥ぎ部3に連結して前記保持部材が保持した被覆電線の中心を回転軸芯として皮剥ぎ部3を回転駆動する回転駆動部2が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線の端末側の絶縁被覆を所定長さに剥ぎ取る皮剥ぎ装置及びそれを用いた被覆電線の皮剥ぎ工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電路接続、電路分岐あるいは電路と機器との接続に際して電線の絶縁被覆を剥ぎ取る皮剥ぎ作業が必要となる。この皮剥ぎ作業を効率的に且つ正確に行うために皮剥ぎ装置が用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記従来技術として引用するケーブル被覆段剥ぎ工具は、図8に示すように、電動回転工具に装着されて回転駆動されるアタッチメント102に筒状のケーブルガイド103を取り付け、ケーブルガイド103の開口部にケーブル108の電線端末を挿入し、電動回転工具によりアタッチメント102を回転駆動しながら押し進めることにより、回転するケーブルガイド103の側面に設けられた切断刃105がケーブル108の被覆層109を螺旋状に切り取る。被覆層109が剥ぎ取られて露出した芯線110がストッパ112の先端に当接した状態で電線端末から所定長さに被覆層109を剥ぎ取ることができるので、ストッパ112の固定位置を調節することにより、被覆層109の剥ぎ取り長さを変化させることができる。この工具は2重の被覆層109a,109bを設けたケーブル108から各被覆層を段差を設けて剥ぎ取るように構成されているので、切断刃105は段差を設けて2つの刃が設けられている。
【特許文献1】特開平08−317525号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術に一例を示したように、従来の被覆電線の皮剥ぎ装置では、被覆電線の端末から皮剥ぎを開始して所要の皮剥ぎ長さまでの被覆を剥ぎ取っていた。被覆電線の端末は切断時の加圧などにより変形が生じている場合があり、変形があると切断刃が芯線に当たる可能性が大きくなる。端末から被覆を剥がしていくと、芯線が素線を束ねて撚り合わせた撚り線であるとき、切断刃が芯線に当たると、端末では素線に拘束力がないため、素線にバラケが生じる問題があった。素線にバラケが生じたとき、電線の線種や撚り状態によっては皮剥ぎ装置を電線から抜き出すことが困難になる場合もある。また、バラケの量が大きいと、電線接続のための接続管を芯線上に挿入することが困難になる。
【0005】
また、被覆電線の皮剥ぎは、電線間の接続であったり、電路の分岐であったり、電線を機器に接続するような場合に必要な作業である。これらの作業は停電を発生させないように活線工事を行うのが原則である。従って、接続する被覆電線の端末から所定長さに絶縁被覆を剥ぎ取る作業も活線作業となり、皮剥ぎ装置を遠隔操作して被覆電線の端末から絶縁被覆を剥ぎ取ることになる。しかしながら、従来技術に係る皮剥ぎ装置では活線工事に対応する構成要素はなく、地上の安全な場所で被覆電線の皮剥ぎ作業を行うだけのものである。
【0006】
活線工事を行うには、空中に存在する被覆電線にアプローチする必要があり、そのためには、空中にある被覆電線の端末を皮剥ぎ装置の電線収容穴に収める必要があるが、不安定で向きが一定でない被覆電線の端末を電線径と略同等の穴径である電線収容穴に差し込むことは容易でない。従来構造では被覆電線の端末を収容するため電線収容穴の開口は、電線径と略同等であるため、遠隔操作によって空中にある被覆電線にアプローチすることが困難であり、電気工事車のリフトによって処理する被覆電線端末の至近位置に近づく必要があり、活線工事の危険性を増大させることになる。
【0007】
本発明が目的とするところは、撚り芯線のバラケが生じ難い皮剥ぎ作業を可能とし、それを遠隔操作によっても可能にする皮剥ぎ装置及びそれを用いた被覆電線の皮剥ぎ工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明に係る皮剥ぎ装置は、被覆電線の端末側を挿入して収容する電線収容穴を内面に形成した保持部材と、電線収容穴に挿入された被覆電線の端面に当接して被覆電線の電線収容穴に収容される長さを所定長さに規制する収容長さ規制部と、電線収容穴の入口近傍位置に、刃先が前記収容長さ規制部側方向に斜めに向くと共に電線収容穴内に突出するように配設された皮剥ぎ刃とを備えて、皮剥ぎ部が構成され、この皮剥ぎ部に連結して前記保持部材が保持した被覆電線の中心を回転軸芯として皮剥ぎ部を回転駆動する回転駆動部が設けられてなることを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、電線収容穴に被覆電線をその端面が収容長さ規制部に当接するように収容した後、被覆電線を皮剥ぎする所定長さの終端位置において絶縁被覆に皮剥ぎ刃の先端を食い込ませ、次いで回転駆動部により皮剥ぎ部を回転駆動すると、皮剥ぎ刃はその刃幅で絶縁被覆を切り出し、皮剥ぎ刃の刃先が収容長さ規制部側方向に斜めに向くように構成されていることにより、被覆電線は排出方向に移動するので、絶縁被覆は皮剥ぎ刃によって螺旋状に切り出される。皮剥ぎ刃による絶縁被覆層の切り出しが被覆電線の端末に達したとき、被覆電線は所定長さに絶縁被覆が剥がされて芯線が露出した状態になって取り出される。この皮剥ぎ装置による絶縁被覆の剥ぎ取りは、端末からではなく所定皮剥ぎ長さの終端位置から端末に向けて螺旋状に絶縁被覆が剥ぎ取られるので、撚り芯線にバラケを発生させることがない。
【0010】
また、本発明に係る被覆電線の皮剥ぎ工法は、上記発明の皮剥ぎ装置を用いた被覆電線の皮剥ぎ工法であって、絶縁支持棒上に皮剥ぎ装置を支持して空中にある被覆電線の端末に接近させ、電線収容穴に被覆電線の端末側を所定長さで収容し、次いで、前記皮剥ぎ刃を絶縁被覆に食い込ませ、次いで、前記絶縁支持棒に設けた回動操作手段により皮剥ぎ装置の回転駆動部を遠隔操作し、これによって皮剥ぎ部を回転させることにより、皮剥ぎ刃がその刃幅で絶縁被覆を切り出すと共に、被覆電線を電線収容穴の入口側に送り出すことにより、絶縁被覆を端末に向けて螺旋状に皮剥ぎすることを特徴とする。
【0011】
上記皮剥ぎ工法によれば、遠隔操作によっても空中に不安定な状態にある被覆電線の端末側にアプローチすることが容易となる。被覆電線の端末側に皮剥ぎ装置を装着した後、皮剥ぎ部を遠隔操作によって回転駆動することにより、被覆電線は端末からではなく、所定皮剥ぎ長さの終端位置から端末に向けて螺旋状に絶縁被覆が剥ぎ取られるので、撚り芯線にバラケを発生させることがない。所定皮剥ぎ長さの終端位置から端末に向けて絶縁被覆を剥ぎ取るので、絶縁被覆が除去されて芯線が露出した被覆電線は皮剥ぎ装置から排出され、作業効率や作業安全性を確保することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、従来技術のように端末から絶縁被覆を剥ぎ取るのでなく、所定剥ぎ取り長さの剥ぎ取り終端位置から端末に向けて螺旋状に絶縁被覆層を剥ぎ取っていくので、撚り芯線に剥ぎ取り刃が接触した場合でも芯線にバラケを生じさせることがない。従ってその後の電線接続の際に接続管を芯線に被せる作業を容易に実施することができる。
【0013】
なお請求項2および請求項4に示すように、電線収容穴の開状態で被覆電線の端末側を電線収容穴に挿入収容するように構成すると、被覆電線の端末を電線収容穴に導入する作業が容易であり、皮剥ぎ装置を絶縁支持棒の先端に装着して遠隔操作することが容易に実施できる。従って、空中に存在する被覆電線に地上あるいは作業車上からアプローチすることができ、絶縁支持棒を用いた遠隔操作により活線工事に対応させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1は、本発明の実施例1に係る皮剥ぎ装置1の構成を示すもので、回転駆動部2に着脱可能に皮剥ぎ部3を装着して構成され、遠隔操作によって空中にある被覆電線の端末側の絶縁被覆を所定長さに剥ぎ取ることができるように構成されている。
【0015】
前記回転駆動部2は、支持筒4にパイプ状の絶縁支持棒の先端を差し込むことにより、皮剥ぎ装置1を絶縁支持棒の先端に支持できると同時に、支持筒4の中心軸上に設けられた回転軸6に周知の絶縁支持棒の回動操作手段の先端が連結される。前記回動操作手段によって回転軸6が回転駆動されることにより、回転駆動部2に装着された皮剥ぎ部3が回転して皮剥ぎ動作がなされる。
【0016】
前記皮剥ぎ部3は、対向配置した上保持部材11と下保持部材12との対向面にそれぞれ断面半円形状の電線保持凹部13,14が形成され、図示するように上保持部材11と下保持部材12との対向面を閉じたとき、電線保持凹部13,14により形成される断面円形の電線収容穴に被覆電線の端末側を保持することができる。
【0017】
図2、図3に示すように、上保持部材11は皮剥ぎ部3を前記回転駆動部2に連結する連結筒8にボルト22によって固定され、下保持部材12は、上保持部材11に対する対向間隔を調節できるように取り付けられている。なお、前記連結筒8には内部が見えるように視認孔19が設けられている。
【0018】
操作リング5に周知の遠隔操作棒の先端フックを差し込んで回転させると、上保持部材11と下保持部材12との対向間隔を調節することができ、対向間隔を広げた状態にして被覆電線の端末側を電線保持凹部13,14上に収容し、対向間隔を狭めることにより収容した被覆電線の端末側を電線保持凹部13,14の間で保持することができる。
【0019】
操作リング5のネジ軸(間隔変化手段)15は下保持部材12を貫通し、上保持部材11に設けられたネジ孔54に螺合しているので、操作リング5を回転させると上保持部材11に対する下保持部材12の対向間隔を調節することができ、それぞれの対向面に形成された電線保持凹部13,14の対向間隔が変化する。下保持部材12と上保持部材11との間にはスプリング55が介装され、下保持部材12は上保持部材11に対し前記対向間隔が大となる方向に付勢されている。
【0020】
また、下保持部材12の対向面から起立する一対のガイド軸16,16は、上保持部材11に設けられたネジ孔54の両側に形成されたガイド穴に摺動するように貫通しているので、下保持部材12の上保持部材11に対する対向間隔変化を位置ずれなく行うことができる。
【0021】
上下の各保持部材11,12の対向面にそれぞれ形成された電線保持凹部13,14の内周面には、図4に下保持部材12側の電線保持凹部14として示すように、両電線保持凹部13,14に連続するように螺旋状に送り出し突起10が形成されている。下保持部材12には、前記送り出し突起10の螺旋傾斜に対応する傾斜角度にして皮剥ぎ刃7が取り付けられ、その刃先が電線収容穴の奥側方向に斜めに向くように構成されている。この皮剥ぎ刃7は、図3に示すように、上保持部材11と下保持部材12との対向面を閉じたとき、その刃先が電線収容凹部14内に突出するように取り付けられる。皮剥ぎ刃7の刃先が電線収容凹部14内に突出する突出量は、被覆電線の絶縁被覆の厚さに対応する。また皮剥ぎ刃7の刃先近傍には、剥ぎ取られた被覆を外部に排出するための排出口56が上保持部材11と下保持部材12との間に形成されている。
【0022】
上保持部材11が固定された連結筒8は、図2に示すように、回転駆動部2に設けられた連結受9に先端を挿入し、周囲4箇所のボルト23により連結固定される。連結受9は内部に被覆電線の端末挿入位置を規制するストッパ面(収容長さ規制部)76を形成した駆動ブロック17に固定されている。駆動ブロック17はその駆動軸18に固定された傘歯車32と、回転軸6に固定された傘歯車31とがギアボックス20内で噛合することにより、回転軸6に加えられる回転駆動力により皮剥ぎ部3を回転駆動することができる。
【0023】
上記構成になる皮剥ぎ装置1を用いた被覆電線の皮剥ぎ工法及び皮剥ぎ動作について、図5を参照して説明する。尚、図5においては、各構成要素の詳細な符号は記載していないので、図5に記載していない構成要素については図1〜図4を参照されたい。
【0024】
図5(a)に示すように、皮剥ぎ部3の上保持部材11と下保持部材12との対向間隔が開いた状態にし、操作リング5が下向きになる状態にして、支持筒4に図示しない絶縁支持棒の先端側を嵌合させて皮剥ぎ装置1を空中に持ち上げ、空中に存在する被覆電線40にアプローチし、その端末側が電線保持凹部13,14に挿入されるように、絶縁支持棒を操作して皮剥ぎ装置1を移動させる。
【0025】
被覆電線40が電線保持凹部13,14上に挿入された状態は、連結筒8の直径方向4箇所に穿かれた視認穴19から確認でき、端末が駆動ブロック17の内部に形成したストッパ面76に当接して皮剥ぎ装置1が移動し難くなったことで、被覆電線40が端末から所定長さ位置まで挿入されたことが確認できる。端末(被覆電線の端面)がストッパ面76に当接したとき、絶縁被覆41を剥ぎ取る長さの終端位置に皮剥ぎ刃7が位置するようになる。
【0026】
次に、操作リング5に図示しない遠隔操作棒の先端フックを係合させ、遠隔操作棒の回転操作により操作リング5を下保持部材12が上保持部材11側に移動する方向に回転させて、上保持部材11と下保持部材12との間に被覆電線40を、その周囲を拘束することによって保持する。皮剥ぎ刃7の刃先は電線保持凹部14の内周面より内側に突出しているので、締め付けにより下保持部材12が上保持部材11側に移動すると、皮剥ぎ刃7の刃先は被覆電線40の絶縁被覆41に食い込んだ状態となる。この操作により皮剥ぎ装置1が被覆電線40の端末側に装着されるので、遠隔操作棒を操作リング5から取り外す。
【0027】
次いで、絶縁支持棒の手元側から回動操作手段を操作して回転軸6を回転駆動すると、図5(b)に示すように、皮剥ぎ部3が回転して皮剥ぎ動作が開始される。皮剥ぎ部3が回転すると、絶縁被覆41は皮剥ぎ刃7の刃幅で切り出され、皮剥ぎ刃7の先端が前記ストッパ面76側に向くように斜めに取付けられていること、および電線保持凹部13,14の内面に送り出し突起10が形成されていることで、皮剥ぎ装置1を端末側に移動させる力が作用し、絶縁被覆41は螺旋状に剥ぎ取られていく。この操作を被覆電線40の端末から皮剥ぎ装置1が外れるまで行うと、図5(c)に示すように、剥ぎ取られた絶縁被覆41は皮剥ぎ刃7の周囲開口部から外に垂れ下がるように取り出され、被覆電線40は端末から所定長さに芯線42が露出した状態になる。
【0028】
上記皮剥ぎ動作では、被覆電線40は皮剥ぎに必要な端末からの所定長さ位置の終端位置から端末に向けて剥ぎ取るので、拘束力のない端末の芯線42にバラケが発生しない。
【0029】
上記構成になる皮剥ぎ装置1を遠隔操作して空中にある被覆電線40にアプローチするとき、被覆電線40の端末側の状態は様々であることが推測できる。即ち、作業者の位置から見て端末の向きは上下左右の不特定方向に向いていると推測でき、端末は何らかの支持体で支持されていない限り自重で垂れ下がったり、跳ね上ったりしているので、水平状態にある場合の方が少ないと思われる。
【0030】
被覆電線40の端末を収容する電線収容穴が開かない構造の皮剥ぎ装置では、空中にある被覆電線40の端末を電線収容穴に差し込むことは容易でないが、本構成のように上保持部材11と下保持部材12との対向間を開いた状態で空中にある被覆電線にアプローチすれば、一対の電線保持凹部13,14の間に被覆電線40の端末を収容する作業が容易になる。
【0031】
以上説明した皮剥ぎ工法は、活線工事を行う上で必要な空中にある被覆電線に対する皮剥ぎ作業として説明したが、地上の安定した場所で被覆電線の端末側から絶縁被覆を剥ぎ取る場合であっても同様に実施できることは言うまでもない。
【0032】
次に図6、図7を参照して、この発明の実施例2に係る端末皮剥器を説明する。
【0033】
図6、図7は、本発明の実施形態に係る皮剥ぎ装置1Aの構成を示すもので、回転駆動部2Aに皮剥ぎ部3Aを装着して構成され、遠隔操作によって空中にある被覆電線の端末側の絶縁被覆を所定長さに剥ぎ取ることができるように構成されている。
【0034】
前記回転駆動部2Aは、支持筒4Aにパイプ状の絶縁支持棒の先端を差し込むことにより、皮剥ぎ装置1Aを絶縁支持棒の先端に支持できると同時に、支持筒4Aの中心軸上に設けられた回転軸6Aに周知の絶縁支持棒の回動操作手段の先端が連結される。前記回動操作手段によって回転軸6Aが回転駆動されることにより、回転駆動部2Aに装着された皮剥ぎ部3Aが回転して皮剥ぎ動作がなされる。
【0035】
前記皮剥ぎ部3Aは、対向配置した上保持部材11Aと下保持部材12Aとの対向面にそれぞれ断面半円形状の電線保持凹部が形成され、図示するように上保持部材11Aと下保持部材12Aとの対向面を閉じたとき、電線保持凹部により形成される断面円形の電線収容穴に被覆電線の端末側を保持することができる。
【0036】
上保持部材11Aは本体連結筒と一体であり前記回転駆動部2Aに連結し、下保持部材12Aは、上保持部材11Aに対する対向間隔を調節できるように取り付けられている。
【0037】
操作ツマミ5Aを回転させると、上保持部材11Aと下保持部材12Aとの対向間隔を調節することができ、対向間隔を狭めることにより収容する被覆電線の端末側を電線保持凹部の間で保持することができる。
【0038】
操作ツマミ5Aのネジ軸(間隔変化手段)は下保持部材12Aに設けられたネジ孔に螺合しているので、操作ツマミ5Aを回転させると上保持部材11Aに対する下保持部材12Aの対向間隔を調節することができ、それぞれの対向面に形成された電線保持凹部の対向間隔が変化する。操作ツマミ5Aにはピン孔が設けられており、本体連結筒から突出したピンにより回転防止となっている。操作ツマミ5Aにはバネが内蔵され、本体に押しつけられている。操作ツマミ5Aをピン長さ以上引く事により、回転が可能となる。
【0039】
上保持部材11Aには、傾斜角度にて皮剥ぎ刃7Aが取り付けられ、その刃先が電線収容穴の奥側方向に斜めに向くように構成されている。この皮剥ぎ刃7Aは、当初その刃先が電線収容凹部内に突出しないように取り付けられる。皮剥ぎ刃7Aは操作リング5Bを回転させる事により突出する。皮剥ぎ刃7Aの刃先が電線収容凹部内に突出する突出量は、被覆電線の絶縁被覆の厚さに対応する。また皮剥ぎ刃7Aの刃先近傍には、剥ぎ取られた被覆を外部に排出するための排出口が上保持部材11Aに形成されている。
【0040】
上保持部材11Aと一体成型されている連結筒は、回転駆動部2Aに設けられた穴に通連されたシャフトにピンにより連結固定される。連結筒は内部に被覆電線の端末挿入位置を規制するストッパ面(収容長さ規制部)76Aを形成している。連結筒は固定された傘歯車32Aと、回転軸6Aに固定された傘歯車31Aとがギアボックス20A内で噛合することにより、回転軸6Aに加えられる回転駆動力により皮剥ぎ部3Aを回転駆動することができる。
【0041】
上記構成になる皮剥ぎ装置1Aを用いた被覆電線の皮剥ぎ工法及び皮剥ぎ動作について説明する。
【0042】
図6、7に示すように、皮剥ぎ部3Aの上保持部材11Aと下保持部材12Aとの対向間隔が開いた状態から、操作ツマミ5Aを回転して絶縁電線外径まで狭め、支持筒4Aに図示しない絶縁支持棒の先端側を嵌合させて皮剥ぎ装置1Aを空中に持ち上げ、空中に存在する被覆電線にアプローチし、その端末側が電線保持凹部に挿入されるように、絶縁支持棒を操作して皮剥ぎ装置1Aを移動させる。
【0043】
被覆電線の端末が連結筒の内部に形成したストッパ面76Aに当接して皮剥ぎ装置1Aが移動し難くなったことで、被覆電線が端末から所定長さ位置まで挿入されたことが確認できる。端末(被覆電線の端面)がストッパ面76Aに当接したとき、絶縁被覆を剥ぎ取る長さの終端位置に皮剥ぎ刃7Aが位置するようになる。
【0044】
次に、操作リング5Bに図示しない遠隔操作棒の先端フックを係合させ、遠隔操作棒の回転操作により操作リング5Bを皮剥ぎ刃7Aが筒内に移動する方向に回転させて、皮剥ぎ刃7Aの刃先が被覆電線の絶縁被覆に食い込んだ状態とする。この操作により皮剥ぎ装置1Aが被覆電線の端末側に装着されるので、遠隔操作棒を操作リング5Bから取り外す。
【0045】
その後の作業・効果は実施例1と同じため省略する。
【0046】
実施例2では、上保持部材11Aと下保持部材12Aの中心点を結んだ線上に刃先を配置しており、電線の中心もその線上に配置されるため、電線の被覆厚さが略同じであれば電線外径(導体外径)が変わっても部品を取り替える必要がない。但し、上保持部材11Aと下保持部材12Aが接触した状態(それ以上間隔が縮まらない状態)で把持できない小径の電線の場合には、下保持部材12Aだけを取り替える。
【0047】
また、実施例2では上保持部材11Aと下保持部材12Aを電線挿入前に狭めているが、挿入性を重視すれば実施例1と同様操作ツマミ5Aをリング形状とし、電線挿入後に電線を挟む事も可能である。
【0048】
さらに皮剥ぎ刃7Aの位置を変更かつ孔内に突出する状態で固定すれば、操作リング5Bを回転し電線を挟むと同時に刃を電線被覆に食い込ませる事も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
以上の説明の通り本発明によれば、被覆電線の端末側の絶縁被覆を剥ぎ取って芯線を所定長さに露出させるとき、所定剥ぎ取り長さの終端位置に対応する被覆電線の所定位置から被覆電線の端末に向けて螺旋状に絶縁被覆層を剥ぎ取っていくので、端末の芯線に剥ぎ取り刃が接触した場合でも芯線にバラケを生じさせることがない。従って、その後の電線接続の際に接続管を芯線に被せる作業を容易に実施することができる。また、電線収容穴の開口径を拡大した状態で被覆電線の端末側を電線収容穴に収容することができるので、被覆電線の端末を電線収容穴に導入する作業が容易であり、皮剥ぎ装置を絶縁支持棒の先端に装着して遠隔操作することが容易に実施できる。従って、空中に存在する被覆電線に地上あるいは作業車上からアプローチすることができ、絶縁支持棒を用いた遠隔操作により活線工事に対応させることができる皮剥ぎ装置を提供し、それを用いて効率的で安全性の高い皮剥ぎ作業を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施例1に係る皮剥ぎ装置の構成を示す斜視図。
【図2】同上皮剥ぎ装置の断面図。
【図3】同上皮剥ぎ装置の一部断面正面図。
【図4】同上構成における電線保持凹部の構造を示す平面図。
【図5】同上皮剥ぎ装置を用いた皮剥ぎ工法の手順を示す説明図。
【図6】本発明の実施例2に係る皮剥ぎ装置を示す正面図。
【図7】その要部の左側面図。
【図8】従来技術に係る皮剥ぎ装置の構成を示す断面図。
【符号の説明】
【0051】
1、1A 皮剥ぎ装置
2、2A 回転駆動部
3、3A 皮剥ぎ部
4、4A 支持筒
5、15、54 間隔変化手段
6、6A 回転軸
7、7A 皮剥ぎ刃
10 送り出し突起
11、11A 上保持部材
12、12A 下保持部材
13,14 電線保持凹部
40 被覆電線
41 絶縁被覆
42 芯線
76、76A ストッパ面(収容長さ規制部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆電線の端末側を挿入して収容する電線収容穴を内面に形成した保持部材と、電線収容穴に挿入された被覆電線の端面に当接して被覆電線の電線収容穴に収容される長さを所定長さに規制する収容長さ規制部と、電線収容穴の入口近傍位置に、刃先が前記収容長さ規制部側方向に斜めに向くと共に電線収容穴内に突出するように配設された皮剥ぎ刃とを備えて、皮剥ぎ部が構成され、
この皮剥ぎ部に連結して前記保持部材が保持した被覆電線の中心を回転軸芯として皮剥ぎ部を回転駆動する回転駆動部が設けられてなることを特徴とする皮剥ぎ装置。
【請求項2】
被覆電線の端末側を挿入して収容する電線収容穴を内面に形成した1対の保持部材と、1対の保持部材の対向間隔を変化させて、開状態で被覆電線の電線収容穴への挿入を容易な状態とし、閉状態で被覆電線を保持する状態とする間隔変化手段と、電線収容穴に挿入された被覆電線の端面に当接して被覆電線の電線収容穴に収容される長さを所定長さに規制する収容長さ規制部と、電線収容穴の入口近傍位置に、刃先が前記収容長さ規制部側方向に斜めに向くと共に電線収容穴内に突出するように配設された皮剥ぎ刃とを備えて、皮剥ぎ部が構成され、
この皮剥ぎ部に連結して前記保持部材が保持した被覆電線の中心を回転軸芯として皮剥ぎ部を回転駆動する回転駆動部が設けられてなることを特徴とする皮剥ぎ装置。
【請求項3】
請求項1記載の皮剥ぎ装置を用いた被覆電線の皮剥ぎ工法であって、
絶縁支持棒上に皮剥ぎ装置を支持して空中にある被覆電線の端末に接近させ、電線収容穴に被覆電線の端末側を所定長さで収容し、
次いで前記皮剥ぎ刃を絶縁被覆に食い込ませ、
次いで、前記絶縁支持棒に設けた回動操作手段により皮剥ぎ装置の回転駆動部を遠隔操作し、これによって皮剥ぎ部を回転させることにより、皮剥ぎ刃がその刃幅で絶縁被覆を切り出すと共に、被覆電線を電線収容穴の入口側に送り出すことにより、絶縁被覆を端末に向けて螺旋状に皮剥ぎすることを特徴とする被覆電線の皮剥ぎ工法。
【請求項4】
請求項2記載の皮剥ぎ装置を用いた被覆電線の皮剥ぎ工法であって、
絶縁支持棒上に皮剥ぎ装置を支持して空中にある被覆電線の端末に接近させ、開状態の電線収容穴に被覆電線の端末側を所定長さで収容し、
次いで、絶縁操作棒を用いて間隔変化手段を遠隔操作して電線収容穴を閉状態とし被覆電線を電線収容穴内に保持すると共に前記皮剥ぎ刃を絶縁被覆に食い込ませ、
次いで、前記絶縁支持棒に設けた回動操作手段により皮剥ぎ装置の回転駆動部を遠隔操作し、これによって皮剥ぎ部を回転させることにより、皮剥ぎ刃がその刃幅で絶縁被覆を切り出すと共に、被覆電線を電線収容穴の入口側に送り出すことにより、絶縁被覆を端末に向けて螺旋状に皮剥ぎすることを特徴とする被覆電線の皮剥ぎ工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−136328(P2008−136328A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−321946(P2006−321946)
【出願日】平成18年11月29日(2006.11.29)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(000196565)西日本電線株式会社 (57)
【出願人】(591083772)株式会社永木精機 (65)
【Fターム(参考)】