説明

皮膚の引伸し用糸部材

【課題】皮膚のたるみを効果的に除去することができる新規な皮膚の引伸し用糸部材を提供する。また、極めて簡単な構造で、人体への適用も安全であり、皮膚のたるみを除去することによって、しわをなくし、張りのある皮膚を作ることができる皮膚の引伸し用糸部材を提供する。
【解決手段】皮膚内層に埋設される糸状物であって、皮膚内層で伸張した後に収縮するコイル部が形成されてなることを特徴とする皮膚の引伸し用糸部材であって、前記糸状物が金を含有したり、前記糸状物が針に巻装されてなる場合がある。前記糸状物のコイル部の直径は概ね1mmで、コイル部の収縮状態の長さ30mm以上の場合もある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、顔面の矯正等に用いられる皮膚の引伸し用糸部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば顔面のしわをなくす目的で、しわの溝部分にコラーゲンなどを注入することが行われている。本発明者は、先に、人体腹部などの脂肪から本人が使用するためにコラーゲンを取り出しこれを皮膚内に注入することを提案し、人体からの脂肪抽出を効果的に行うとともに、この抽出された脂肪分からコラーゲンを簡単かつ効率よく分離する新規なコラーゲン採取装置などを提供してきた(特許文献1を参照)。
【0003】
しかしながら、コラーゲンの注入は皮膚に弾力性を持たせることに対しては有効であるが、皮膚のたるみを除去することについては今一つ満足できないものがあった。
【特許文献1】特公平6−11309号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この発明は、皮膚のたるみを効果的に除去することができる新規な皮膚の引伸し用糸部材を提供するものである。また、この発明は、極めて簡単な構造で、人体への適用も安全であり、皮膚のたるみを除去することによって、しわをなくし、張りのある皮膚を作ることができる皮膚の引伸し用糸部材を提供するものである。
【0005】
さらに、また、この発明は、糸部材の材質として金を含有するものを選択することによって、皮膚内のコラーゲンの作出を増大させ、これによって張りのある皮膚を作り出すという相乗的効果を期することができる皮膚の引伸し用糸部材を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、請求項1の発明は、皮膚内層に埋設される糸状物であって、皮膚内層で伸張した後に収縮するコイル部が形成されてなることを特徴とする皮膚の引伸し用糸部材に係る。
【0007】
請求項2の発明は、前記糸状物が金を含有するものである請求項1に記載の皮膚の引伸し用糸部材に係る。
【0008】
請求項3の発明は、前記糸状物が針に巻装されてなる請求項1又は2に記載の皮膚の引伸し用糸部材に係る。
【0009】
請求項4の発明は、前記糸状物のコイル部の直径が概ね1mmで、コイル部の収縮状態の長さ30mm以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の皮膚の引伸し用糸部材に係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明による皮膚の引伸し用糸部材によると、皮膚内層に埋設される糸状物であって、皮膚内層で伸張した後に収縮するコイル部が形成されているので、コイル部を皮膚内層で伸張させ次いで収縮させることによって皮膚表面を引伸して、皮膚のたるみやしわをなくして、張りのある皮膚を作ることができる。
【0011】
請求項2の発明によると、前記糸状物が金を含有するものであることより、金による人体内でのコラーゲンの作出を増大させ、これによって皮膚に弾力性を増加させることができる。なお、金は人体内のアレルギー反応を極力抑えることができる作用を有することはいうまでもない。
【0012】
請求項3の発明によると、前記糸状物が針に巻装されてなるものであるから、皮膚内層に引伸し用糸部材を容易にかつ確実に挿入し、所定位置に効果的に効率よく埋設することができる。
【0013】
請求項4の発明によると、前記糸状物のコイル部の直径が概ね1mmで、コイル部の収縮状態の長さ30mm以上とすることにより、一般的な顔面の皮膚のたるみを解消するに最適でかつ最良な部材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下添付の図面に従ってこの発明の具体例を説明する。
図1はこの発明の皮膚の引き伸し用糸部材を顔面の皮膚のたるみを除去するために使用する例を表した概略正面図、図2はこの発明の引伸し用糸部材を皮膚内層に挿入する状態を表した断面図、図3は前記引伸し用糸部材を皮膚内層で伸張させた状態を示す断面図、図4は前記引伸し用糸部材を皮膚内層で収縮させた状態を示す断面図である。
【0015】
図示したように、この発明の皮膚の引伸し用糸部材10は、皮膚30の内層31に埋設される糸状物11であって、皮膚内層31で伸張15Aした後に収縮15Bするコイル部15が形成されてなることを特徴とする。糸状物11は、コイル部15を形成することができ、かつ該コイル部15が皮膚内層31で伸張15A(図3参照)した後に収縮15B(図4参照)することができできれば、その材質は特に限定されない。ポリプロピレンなどの樹脂やステンレスなどの金属や合金が有利に用いられる。コイル部15を皮膚内層で確実に伸張及び収縮させるために、形状記憶合金を用いてもよい。
【0016】
この発明の皮膚の引伸し用糸部材10のコイル部15の皮膚内層31での伸張及び収縮について図とともに説明する。図は皮膚の引き伸し用糸部材10を顔面Fの皮膚30のたるみを除去するために使用する例を表したもので、図1及び図2に示すように、引伸し用糸部材10は針20に巻装されて、顔面の頬のたるみを効果的に解消できる位置の皮膚内層31に埋設される。図1の符号35は、皮膚のたるみによって形成されたしわである。
【0017】
糸部材10の皮膚内層31への埋設に際しては、図1及び図2のように、針20を皮膚30の突入口Hから突出口Iに挿通して、コイル部15を皮膚内層31に配置した後、糸状物11のコイル部15の両端部11A,11Bを該突入口H及び突出口Iから突出した状態で針20を抜く。そして、図3のように、糸状物11の両端部11A,11Bを矢印a、b方向に引っ張り、前記糸状物11に形成されたコイル部15を伸張15Aさせた状態で、糸状物11のコイル部15の両端近傍を切断cする。
【0018】
コイル部15を伸張15Aさせた状態で糸状物11を切断cすると、伸張状態のコイル部15Aにかかっていた張力が開放され、糸状物の切断端部11C、11Cが皮膚内層31に埋入されるとともに、図4に示すように、コイル部15の弾性力により、コイル部15は矢印d、eの方向に収縮15Bする。このコイル部15の収縮によって、表面側の皮膚30は矢印f、g方向に引伸される。このようにして、皮膚のたるみは解消され、しわ35が除去される。
【0019】
この発明の皮膚の引伸し用糸部材10は、請求項2の発明として規定したように、前記糸状物11が金を含有するものであることが好ましい。金の含有率は、特に限られないが、含有率が高いと弾力性のあるコイル部15の形成が困難となるので、金と他の金属との合金で前記糸状物を作成することが望ましい。
【0020】
糸状物11に金を含有するものを用いることで、人体内のアレルギー反応を極力抑えることができる作用を有するほかに、皮膚内でのコラーゲンの作出を増大させるとという相乗効果を期待することができる。すなわち、一般に、金が皮膚内層に埋設されることで、皮膚内でのコラーゲンの作出が促進されることが知られている。従って、金を含有した糸状物を用いれば、たるみが解消されるだけでなく、新たにコラーゲンが作出され、しわがなくなり、より張りがある皮膚を作り出すことができる。コラーゲンが作出される量は、金の表面積に比例すると考えられるところ、コイル部は表面積が大きくコラーゲンの量も増大するものと推定される。これによって、皮膚に弾力性を増加させることができる。
【0021】
また、請求項3の発明として規定しかつ実施例で説明したように、前記糸状物11が針に巻装されることによって、皮膚内層に引伸し用糸部材を容易にかつ確実に挿入し、所定位置に効果的に効率よく埋設することができる。皮膚へのダメージを軽減させることもできる。針の大きさは特に限定されないが、扱いやすいサイズとして、例えば、直径0.9mm、長さ90mmの針などが用いられる。
【0022】
また、前記糸状物11のコイル部の直径や収縮状態の大きさは特に限定はないが、請求項4の発明として規定したように、前記糸状物のコイル部の直径が概ね1mmで、コイル部の収縮状態の長さ30mm以上とすることにより、一般的な顔面の皮膚のたるみを解消するに最適でかつ最良な部材とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】この発明の皮膚の引き伸し用糸部材を顔面の皮膚のたるみを除去するために使用する例を表した概略正面図である。
【図2】この発明の引伸し用糸部材を皮膚内層に挿入する状態を表した断面図である。
【図3】前記引伸し用糸部材を皮膚内層で伸張させた状態を示す断面図である。
【図4】前記引伸し用糸部材を皮膚内層で収縮させた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0024】
10 皮膚の引伸し用糸部材
11 糸状物
15、15A、15B コイル部
20 針
30 皮膚
31 皮膚内層
35 しわ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚内層に埋設される糸状物であって、皮膚内層で伸張した後に収縮するコイル部が形成されてなることを特徴とする皮膚の引伸し用糸部材。
【請求項2】
前記糸状物が金を含有するものである請求項1に記載の皮膚の引伸し用糸部材。
【請求項3】
前記糸状物が針に巻装されてなる請求項1又は2に記載の皮膚の引伸し用糸部材。
【請求項4】
前記糸状物のコイル部の直径が概ね1mmで、コイル部の収縮状態の長さ30mm以上である請求項1ないし3のいずれか1項に記載の皮膚の引伸し用糸部材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate