説明

皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂およびその製造法

【課題】 化粧料として有用な、角質の健常化、固化した毛穴の油脂の除去・溶解に有効な皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂およびその製造法の提供。
【解決手段】 オリーブ油50〜90重量%および馬油10〜50重量%を含有することを特徴とする皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂、ならびにオリーブ油50〜90重量%および馬油10〜50重量%からなる混合油脂の固形分を分画、除去することを特徴とする当該油脂の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料として有用な、角質の健常化、固化した毛穴の油脂の除去・溶解に有効な皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の油を単独で、あるいは2種以上を混合して含有する皮膚外用剤や発毛・育毛剤が知られており、例えば、特許文献1および2には、オリーブ植物から得られる抽出物を含有する皮膚外用剤、美肌剤、美白剤、皮膚に対する抗老化剤が開示されている。特許文献3には、リノール酸、リノレン酸およびγ−リノレン酸の不飽和脂肪酸と炭素数20以上の脂肪酸を含むオイルからなる細胞賦活剤を含有する皮膚外用剤が開示されており、オリーブ油および馬油が例示されている。特許文献4にはオリーブ油を含有する皮膚外用剤が開示されている。また、特許文献5には、発毛剤の主たる有効成分として馬油等の哺乳動物由来の油脂を用いた養毛剤が開示されている。
しかし、肌や頭皮の賦活効果に関しては、オリーブ油においても、馬油においても、単独での効果が知られているに過ぎず、それらの混合による効果を示唆するところはない。また、オリーブ油は主たる脂肪酸の70%以上がオレイン酸であり、液化安定性に優れているものの、動物油脂に多く含まれるパルミトレイン酸の含有量が少なく、人体への適合、浸透性において難がある。また、馬油はパルミトレイン酸、リノール酸の含有量が多く、人体への適合、浸透性に問題はないものの、酸化しやすく安定性に難がある。
【特許文献1】特開2001−181198号公報
【特許文献2】再表01/26670号公報
【特許文献3】特開2003−277261号公報
【特許文献4】特開2003−63942号公報
【特許文献5】特開平8−26937号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記のような難点を解消した、化粧料として有用な、角質の健常化、固化した毛穴の油脂の除去・溶解に有効な皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂およびその製造法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者は、肌の若返りに有効な化粧料組成物を開発する過程で、過度の角質化が見られる患者、および、脱毛者を多数診てきたが、皮膚炎、ニキビなどの改善に水溶性化粧料は有効であったものの、角質化した皮膚には水溶液のみでは浸透せず、また、頭皮においては、毛穴に詰まった固形油脂分が水溶液の浸透を阻害することを知見した。そこで、既に変質している皮膚の改善を目的として、浸透性の高い油脂分の開発を行った結果、特に、皮膚賦活化に有効であると言われているオリーブ油と馬油を混合し、さらに、その固形油脂を分画・除去することにより、この目的に適した、浸透性に優れた混合油脂が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0005】
すなわち、本発明は、
(1)オリーブ油50〜90重量%および馬油10〜50重量%を含有することを特徴とする皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂、
(2)液体透明油脂である上記(1)記載の油脂、
(3)皮膚外用剤である上記(1)記載の油脂、
(4)発毛・育毛剤である上記(1)記載の油脂、
(5)オリーブ油50〜90重量%および馬油10〜50重量%からなる混合油脂の固形分を分画、除去することを特徴とする上記(1)記載の油脂の製造法などを提供するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、上記のごとく、特定の割合でオリーブ油と馬油を混合することにより、各々単独の場合の難点が解消された、経皮吸収に優れ、安定性にも優れた皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂が提供できる。
また、最近、アトピー性皮膚炎の患者へのステロイド剤塗布により過度の角質化が見られ、象皮などの問題を呈しており、ステロイド剤の投与を止められない患者において有効な象皮の改善策がなく苦慮されているが、本発明の混合油脂は、象皮の健常化を促進し、皮膚の健常化に有効な外用剤として使用できる。
さらに、発毛促進においては、頭皮の毛穴に詰まった固化した油脂分が毛穴の健常な発達を阻害し、発毛の傾向があっても、毛穴そのものが未発達、或いは、固化した油脂分が詰まっているため、その後正常な太さの毛髪に発達することを阻害していることが判っており、発毛促進法として、頭皮の洗浄を行うなどして余分な固形油脂分の除去が計られているが、本発明の液体油脂は、毛穴に浸透する液体油脂により固形油脂分が浮き出す、或いは、溶解することにより容易に毛穴の発達を健常化し、発毛扶助に有効な外用剤として使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の油脂は、オリーブ油50〜90重量%、好ましくは70〜80重量%と、馬油10〜50重量%、好ましくは20〜30重量%の混合油脂である。この比率で混合することによって、固化しやすい融点の高い飽和脂肪酸の構成比率を20重量%以下に抑えられ、これにより、安定した液化油脂を提供することができる。さらに、人と親和性の高いパルミトレイン酸を2重量%以上含み、オレイン酸の含有量を70重量%以下に抑えることで、吸収に優れた油脂とすることができる。
【0008】
本発明の油脂は、自体公知の方法により、両方の油脂を混合することにより製造できるが、一般に、馬油は常温では白く懸濁しているので、混合油脂の固形分を分画、除去して、液体透明油脂とすることが好ましい。例えば、混合後50℃までの低温で融解し、ついで、10℃以下に冷却後、ろ過することで、常温で固化した飽和脂肪酸を除き、透明で安定した液体透明油脂とすることができる。
【0009】
本発明においては、馬油成分の不飽和脂肪酸の酸化を抑えるために、アルファ・トコフェロールなどの抗酸化油脂を添加してもよい。
得られた混合油脂は、皮膚外用剤として、或いは、発毛・育毛剤として肌や頭皮に適宜適用することができる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。実施例中の「%」は重量%を意味する。
【実施例1】
【0010】
以下の処方に従い、50℃以下の温度で混合後、ろ過により、表1に示す脂肪酸組成の本発明の液体透明油脂を得た。比較のため、原料オリーブ油と原料馬油の脂肪酸組成も示す。
オリーブ油 74.9%
馬油 25.0%
α−トコフェロール 0.1%
【表1】

【実施例2】
【0011】
象皮に関する試験
被験者(29歳女性)
アトピー性皮膚炎により、瞼、目元が象皮化した。実施例1の本発明の油脂を2週間塗布したところ、象皮化が改善された。
被験者(13歳男性)
アトピー性皮膚炎により、肘関節内側が象皮化した。実施例1の本発明の油脂を10日間塗布したところ、象皮化が改善された。
【実施例3】
【0012】
頭皮に関する試験
被験者(35歳男性)
30歳を過ぎたころより、脱毛が激しくなり、前頭部はほぼ脱毛した状態であった。初回時の頭皮洗浄液と、本発明の油脂適用1ヶ月後の頭皮洗浄液の脂肪酸組成と量を比較した。結果を表2に示す。
【表2】

洗浄により、排出する総脂肪酸量が激減するともに、不飽和脂肪酸であるオレイン酸、リノール酸の比率が増え、正常人の皮脂の脂肪酸組成に近づいていることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0013】
以上記載したごとく、本発明によれば、化粧料として有用な、角質の健常化、固化した毛穴の油脂の除去・溶解に有効な皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂およびその製造法が提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オリーブ油50〜90重量%および馬油10〜50重量%を含有することを特徴とする皮膚または頭皮の保護、活性化用油脂。
【請求項2】
液体透明油脂である請求項1記載の油脂。
【請求項3】
皮膚外用剤である請求項1記載の油脂。
【請求項4】
発毛・育毛剤である請求項1記載の油脂。
【請求項5】
オリーブ油50〜90重量%および馬油10〜50重量%からなる混合油脂の固形分を分画、除去することを特徴とする請求項1記載の油脂の製造法。