説明

皮膚保護方法

皮膚とビピリジリウム除草剤(例えばパラコート及びジクワット)を含有する組成物の接触に伴う皮膚保護方法であって、当該組成物にアルギン酸塩を導入することを含んで成る皮膚保護方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚保護方法に関し、特に皮膚とビピリジリウム除草剤を含有する組成物の接触に伴う皮膚保護の方法に関する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本明細書中で使用される用語”皮膚保護”とは、皮膚とビピリジリウム除草剤を含有する組成物との接触による有害事象の軽減を意味する。かかる有害事象とは、皮膚刺激及び急性皮膚毒性に制限されず他も含む。改良された皮膚保護は、ビピリジリウム除草剤の皮膚浸透の軽減をもたらすことができ、又はそうでなくても一般的に皮膚浸透の軽減は改良された皮膚保護の指標となる。本発明はビピリジリウム除草製剤(かかる製剤には慣習的に含有される皮膚刺激原を含む)に関する改良された皮膚保護をもたらすが、本発明は実際に達成されるかかる保護メカニズムには依存しないと理解される。有害である皮膚刺激及び急性皮膚毒性作用は、一般的に希釈後の除草剤スプレーに対する希釈前の除草剤濃縮物との接触により生じ、そして特に長期の接触により生じる。
【0003】
ビピリジリウム除草剤は、長年農薬への使用として登録され、そして製造ラベルの推奨の通りならば安全に効果的に使用され得る。皮膚との事故的な接触に対する適した予防策は推奨されている。管理当局は、皮膚接触から生じる潜在的な危険を査定し、そして組成物に応じて分類した。皮膚刺激は、公に利用できる現行の管理プロトコールで定められた期間、通常4時間、で農薬濃縮物へ皮膚を曝すことへの影響の観点から定義される。暴露部位の洗浄そして後の観察期間の後に、皮膚刺激は国家管理当局又はEUのような国際管理当局の管理基準に伴い分類される。皮膚刺激を査定するための他の方法は、管理目的及び他の目的のために開発され、且つ皮膚刺激の可能性の決定に利用することもできる。経皮投与により全身毒性を誘発する皮膚毒性は、製剤の投与量(mg/kg)により定められる。皮膚刺激又は皮膚毒性の明白な任意の減少が高く所望される。
【0004】
EP 0467529では、少なくとも50グラム/リットルの濃度のパラコート又はジクワット、或いはそれらの混合物の塩を、10から400グラム/リットルの三ケイ酸マグネシウム懸濁液と一緒に混合物中に含む液体の水性除草剤組成物、更に吐剤及び/又は下剤を含む組成物を発表する。三ケイ酸マグネシウムは、ヒト胃液のpHでゲルを形成し、そしてこの明細書では更に以下を含んで成る水性液体除草剤を開示する:(i)パラコート又はジクワット、或いはそれらの混合物の塩を含んで成る除草成分;(ii)ヒト胃液のpHでゲルとなるであろうゲル化剤;並びに(iii)吐剤及び/又は下剤;ここでゲル化剤に対する除草成分の比率は1:1から20:1である。この発明の目的は、ビピリジリウム塩の摂取に伴う有害事象の軽減の可能性である。このようにして、この発明に係る組成物を一定量摂取した場合、酸性である胃液(非常に広い限度で変化するが、男性で約pH 1.92、そして女性で約pH 2.59の平均値を有する)は胃の中で組成物をゲル化する原因となるであろう。胃内容物の粘度の増加は、胃排出速度を減速させる。ビピリジリウム除草剤はゲル中で必然的にトラップされ、胃から吸収性の小腸へのそのゲルの動きは妨げられるであろう。この組成物中に存在する吐剤は、比較的迅速に吸収され、嘔吐によりビピリジリウム除草剤を含むゲルの放出を短時間で導き、それにより摂取された除草剤を、ビピリジリウム化合物の吸収が本来起こり得る更に下の消化管へ移動させることを妨げる。組成物中の任意の吸収されないビピリジリウム除草剤を移動させることを補助する下剤が存在する好適な組成物は、吐剤の作用にもかかわらず、胃から小腸中へ通過した。摂取されたEP 0467259の発明に伴うビピリジリウム組成物の場合、ゲル化剤、吐剤、そして下剤を含む場合の組合された効果は、実質的に消化管から血流へのビピリジリウム化合物の吸収を減少させ、それによって製品の経口毒性を減少させるであろう。
【0005】
EP 0467259で発表された製剤は、実際は商業的に実行可能でないことを証明した。保存及び移送の間、不溶性のゲル化剤、三ケイ酸マグネシウムの粒子の組成物中のむらのない分散の保持を補助するための増粘剤又は懸濁剤を含むことが必須であることが見出された。しかしながら増粘剤が組成物の粘度を増加させることは非常に自然であり、高-粘度組成物に関連した問題と固体無機ゲル化剤の沈殿を最小にする粘度の増加の必要性の間で均衡をとる必要がある。実際にはこの均衡は、組成物を注ぐ又は測定することの難しさ、スプレータンク中の水中で効果的に組成物を分散させることの難しさ、及び空の容器をすすぐことの難しさ、をもたらす過剰な粘度を更に示す固体ゲル化剤の沈殿物に対して、この組成物は比較的安定性が低い、という満足できない妥協案を示した。分散した固体の無機ゲル化剤の沈殿物は、吐剤に対する三ケイ酸マグネシウムの成分濃度へ導びかれ得るので、任意に一回使用される製剤容器の比率でありさえすれば、スプレータンク中に存在する成分の相関した比率は、意図された比率とは一致せず、且つ安全性の効果は最適とはかけ離れた結果になり得る。好適な増粘剤又は懸濁剤は固体のキサンタンガム、商品名KELZANであり、そしてこれは実施例で使用された唯一の懸濁剤である。しかしながら、他の適切な懸濁剤はアルギン酸塩を含むという短いコメントもある。
【0006】
WO 02/076212では、驚くことにアルギン酸塩自体が、pH感受性ゲル化剤として使用される場合、ビピリジリウム塩製剤と共に使用するためのpH感受性ゲル化剤の効果があることを開示する。従って、WO 02/076212は、パラコート塩、ジクワット塩 、又はそれらの混合物を含んで成る組成物の製造におけるpH誘発性ゲル化剤としてのアルギン酸塩の使用を開示し、更にこの組成物が吐剤及び/又は下剤を含んで成り、ヒト胃液の酸性pHで、pH誘発性ゲルの効果が起こることを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
EP 0467529及びWO 02/076212中に発表された発明は、ビピリジリウム除草剤濃縮製剤を故意又は偶然に摂取した場合の経口毒性をひたすら軽減させることを導くことが理解されるであろう。そのメカニズムは、吸収される前の嘔吐により、及びその嘔吐作用にもかかわらず胃から小腸を通過するビピリジリウム除草剤を任意に吸収させずに除去することを補助する瀉下により、胃からゲル化組成物を物理的に放出することに依存する。我々はアルギン酸塩が皮膚とビピリジリウム除草剤組成物との接触による皮膚刺激及び/又は皮膚毒性を軽減させる驚くべき効果を有することをここに見出した。この効果は、WO 02/076212で与えられた教示から予測できるものではなく、そしてアルギン酸塩が胃のpHでゲルに作用し、その後嘔吐により物理的に放出されるという完全に異なるメカニズムである。
【0008】
創傷の覆いとして、特に重篤な滲出慢性創傷(例えば静脈性下肢潰瘍、糖尿病性潰瘍、及び圧迫潰瘍等)の覆いとして、不織シート(non-woven sheet)、又は繊維もしくはロープの包帯の形態にある固形アルギン酸カルシウムが典型的に使用される。論文はWound Care newsletter, October 1998に発表され、アルギン酸塩繊維が創傷からの液体排出物を吸収し相互作用し、親水性ゲルへ変化することを開示する。アルギン酸塩は湿度を保持し、顆粒組織の形態を育成する傾向にある。除去の際、覆いは生理食塩水で洗浄することができる。
【0009】
本発明によれば、皮膚とビピリジリウム除草剤を含む組成物とを接触させることに伴う皮膚保護方法を提供し、当該方法は前記組成物中にアルギン酸塩を導入することを含んで成る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
用語ビピリジリウム除草剤は、パラコート、ジクワット及びパラコートとジクワットの混合物を含む。パラコート及びジクワットは、通常では農薬的に許容され得る水溶性塩類の形態に製剤化される。本発明で使用するための組成物は、適切には適用前に希釈することを意図した水性濃縮物である。
【0011】
このように本発明に係る水性組成物は、適切にはパラコートもしくはジクワット、又はそれらの混合物(単独又は組合せは、本明細書においてビピリジリウムイオンとして表現されたビピリジリウム塩として言及した)を少なくとも25グラム/リットル、例えば少なくとも40グラム/リットルを含む。この組成物はビピリジリウムイオンを50グラム/リットルより多く含み、例えば100グラム/リットルより多く含んでよい。200グラム/リットル以上含む組成物を調整してよいが、約250又は350g/L過剰量にあるパラコートの濃度は、組成物安定性の問題が生じる上限に達する。一般的に組成物はビピリジリウムイオンを400グラム/リットルより多く含まない。このように典型的な濃縮組成物は、50グラム/リットルから250グラム/リットルのビピリジリウムイオンを含んで成る。
【0012】
本明細書において使用される用語アルギン酸塩とは、海藻から抽出された天然ブロックコポリマーの分類であり、且つウロン酸ユニット、特に1:4で1-4a,L-グルロン酸(guluronic acid)と1-4b,D-マンヌロン酸がグリコシド結合により連結したウロン酸ユニットから成ることを意味する。一般構造を以下に示す。
【化1】

【0013】
マンヌロン酸/グルロン酸残基の比率(M:G)は、もとの海藻によって異なる。典型的にアルギン酸塩は”高−G”又は”高−M”として分類される。アルギン酸塩はしばしばナトリウム塩の形態にある固体であるが、様々な商業的な等級では、多様な比率で残留カルシウムイオン含んでよい。
【0014】
アルギン酸塩作用のメカニズムによって皮膚保護が達成されることは理解されておらず、いくつかの選択的理論を説明手段により生み出すことができる。しかしながら、どのメカニズムも、WO 02/076212中に発表された”誘発性ゲル”のメカニズムとは非常に相違していることは明白である。そもそも皮膚は弱酸性のある環境にあってよく、胃はなおさら酸性環境下にあってよい。胃は実際には、飲み込んだ組成物を受容し、そして高い酸性の胃液との接触によりこの組成物をゲル化させる酸性容器である。胃は嘔吐により体内からこの組成物を除去するのを補助する。対照的に、皮膚は中性又は非常に弱い酸性表面であり、任意の有意なゲル化作用を最も”誘発”しにくい。更に、液体組成物が皮膚と接触した時、即座に乾燥が始まるであろう。皮膚刺激は、組成物が皮膚上で乾燥する際に残る残渣由来のビピリジルの皮膚透過特性に少なくともある程度由来する。アルギン酸塩は、皮膚の上を乾燥させる組成物として皮膚保護作用を有するようだが、どのように達成されるかは正確には分かっていない。
【0015】
固体アルギン酸カルシウムの覆いが重篤な滲出慢性創傷の治癒を促進するメカニズムと、本発明の皮膚保護作用との間にはいかなる相関性も見られない。
【0016】
我々は、アルギン酸塩の付加が、一般的に皮膚刺激性農薬組成物に対し、有意な皮膚保護を必ずしも提供しないこと、及びアルギン酸塩の皮膚保護作用が、特にビピリジリウムイオンを含む除草剤組成物に非常に特異的であるらしいことを見出した。その理由は知られていない。
【0017】
本発明の方法の使用に適した商業的に入手し得るアルギン酸塩の例を以下の表に示す。
【表1】

【0018】
提供される皮膚保護は、アルギン酸塩の分子量に厳密には依存しない。アルギン酸の平均分子量は、好適には5,000から250,000、例えば10,000から250,000、また特に10,000から200,000である。我々は例えば、良好な皮膚保護はMANUTEX RM(分子量120,000から190,000)及びMANUTEX RD(分子量12,000から80,000)を共に用いて提供されることを見出した。所望されるならばアルギン酸の様々な等級の混合物を使用してよい。アルギン酸塩の分子量は、定義された一式の条件の下で水中のその溶液の粘度を反映する。好適なアルギン酸塩は、60 rpmでナンバー3軸を有すLVモデルのBROOKFIELD粘度計(Brookfield Engineering laboratory, Stoughton, Massachusetts)を用いた測定として、2から2000mPas、例えば2から1,500 mPas、そして特に2から1000mPas、そして好適には4から450 mPas、25℃で1%水性溶液(本明細書において”1%溶液粘度”として言及する)中で平均粘度を有する。
【0019】
特に好適なアルギン酸塩は、商品名MANUTEX RM及びMANUTEX RDという商品名で販売されている。MANUTEX,MANUGEL,KELGIN及びKELCOSOLはISPの商標である。組成物中のアルギン酸塩の濃度は、一般的に1から50g/l、例えば3から50g/1又は選択的に5から20g/lの範囲であり、そして特に5から15g/lの範囲である。所望されるならば、より高い濃度を使用してよいが、商業的実施において許容され得る範囲を超えて組成物の粘度を増加させる傾向がある。一方、3g/1未満の濃度では、十分な皮膚保護を提供できない。組成物のpHは、アルギン酸塩により提供される皮膚保護の観点から見ると重要でなく、ビピリジル組成物のpHは本来のpHで使用してよく、或いは安定性又は任意の他の理由のために改良することが所望されるならば調整してよい。パラコート組成物の典型的な値は、約pH4とpH9との間であり、例えば約pH6.5とpH7.5との間、及び特に約pH7である。ジクワットのためのpHは、約pH5からpH6の間で調整されるのがより一般的である。慣習的な酸又は塩基、例えば酢酸又は水酸化ナトリウムを、組成物のpHを調整することが所望されるならば使用してよい。
【0020】
この製剤の本来のpHでの高い粘度は多くの応用に所望されるものではなく、実施例1の方法を使用して測定された本発明の製剤の粘度(”組成物粘度”)は、300mPas未満であり、そして好適には200mPas未満、例えば10から250mPas、そして好適には20から200mPasが好ましい。しかしながら、例えば300mPas以上の粘度を有する高い粘度の製剤は、いくつかの特化された応用に利用性を有することができることが認識されるであろう。この組成物の粘度は、もちろん任意の界面活性剤の存在を含むその内容物の全てに依存するであろう。
【0021】
本発明の範囲は、任意の特定の水性ビピリジリウム除草剤組成物に制限されない。しかしながらアルギン酸塩が、慣習的なアジュバント又は他の付加物を頻繁に含む商業的に有用である濃縮物に対して皮膚保護を提供すべきことは明確に所望されている。一般的に商業的な組成物は、1つ以上の界面活性剤又はアジュバントをこの組成物中に含み、除草剤のバイオパフォーマンスを改善させる。かかる界面活性剤は当業者に周知であり、そして陽イオン性、非イオン性、及び陰イオン性化合物を含む。例示は参考文献により組み入れられたEP 0467529の開示中に挙げられている。1つ以上の界面活性剤が存在する場合、全ての界面活性剤の濃度は、好適には組成物の25から200g/lであり、好適には50から150g/1であり、例えば50から100g/1であり、そして特に50から70g/lである。アルギン酸塩の存在は、ビピリジリウム除草剤、界面活性剤及び下記の通り存在し得る他の成分を含む全体として摂取される組成物に関する皮膚保護を増強させることが理解されている。生物学的挙動を増強させるために含まれる界面活性剤は、皮膚病学的な副作用に寄与し得る。しかしながら、我々は全般にアルギン酸塩の作用がビピリジリウム除草剤成分に主に関与し、皮膚保護は界面活性剤のみを含む水性成分に対して必ずしも提供されないことを見出した。実際に皮膚刺激性界面活性剤を含むビピリジリウム組成物は、アルギン酸塩の存在下でさえ、アルギン酸塩を含み界面活性剤を含まない対応の組成物よりも重度な皮膚刺激を示し得る。しかしながら重要なことは、アルギン酸塩及び界面活性剤を含むビピリジリウム組成物が、界面活性剤を含みアルギン酸塩を含まない対応の組成物より低い皮膚刺激を見せることである。
【0022】
典型的な陰イオン性界面活性剤の例は、アルキルベンゼンスルホン酸、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム又はドデシルベンゼンスルホン酸マグネシウム(商業的に入手できる、例えばNANSA HS90/Sを含む);アルキルエトキシカルボン酸、例えば一般式R(OCH2CH2)nOCH2CO2Hの化合物(式中、R=Cl2-C14アルキル、及びn=6から12(商業的に入手できる、例えばEMPICOL CBF及びEMPICOL CBLを含む);C5-C20の直鎖又は分岐鎖アルキルスルホコハク酸2ナトリウム、例えばラウリルスルホコハク酸2ナトリウム及びイソデシルスルホコハク酸2ナトリウム(商業的に入手できる、例えばAEROSOL A268を含む);ジ(C5-C12直鎖又は分岐鎖)アルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(商業的に入手できる、例えばAEROSOL OTを含む);アルキルスルホコハク酸ナトリウム、例えばラウリルスルホコハク酸ナトリウム(商業的に入手できる、例えばTEXIN 128 Pを含む);ナトリウムナフタレンホルムアルデヒド濃縮物(商業的に入手できる、例えばMORWET D425を含む);メチルオレオイルタウレートナトリウム(商業的に入手できる、例えばADINOL OT64を含む);カルボン酸エステル(商業的に入手できる、例えばEURACOL M, TAを含む);リン酸エステル(商業的に入手できる、例えばCRODAFOSを含む);TEA-PEG-3 cocamide スルフェート(商業的に入手できる、例えばGENAPOL AMSを含む)の塩を含む。
【0023】
典型的な非イオン性界面活性剤の例は、ノニルフェノールエトキシレート(商業的に入手できる、例えばSYNPERONIC NP8を含む);エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのブロックコポリマー(商業的に入手できる、例えばSYNPERONIC PE/F88を含む);アルキルアミンエトキシレート(商業的に入手できる、例えばSYNPROLAM35x15,ETHOMEEN C25又はT25及びNOVAMINEを含む);エトキシ化した直鎖アルコール(商業的に入手できる、例えばLUBROL17A17を含む);他のアルコールエトキシレート(商業的に入手できる、例えばSYNPERONIC A range (11,15,20,等),ATPLUS 245を含む);及び脂肪酸エトキシレート(商業的に入手できる、例えばCHEMAXを含む)を含む。界面活性剤、例えばアルキルアミンエトキシレートは、陽イオン性界面活性剤として分類されることがあるが、本発明の大部分の組成物における中性pHでは、非イオン性であると考えるのが適切であることを留意すべきである。
【0024】
典型的な陽イオン性界面活性剤の例は、アミンエトキシレートとアルコキシ化されたジアミン(商業的に入手できる、例えばJEFFAMINE 製品を含む)を含む。
【0025】
パラコートは1,1'-ジメチル-4,4'-ビピリジリウム陽イオンの一般名である。ジクワットは1,1'-エチレン-2,2'-ビピリジリウム陽イオンの一般名である。パラコート及びジクワットの塩は、ビピリジリウム原子核上の2つの陽性電荷とバランスをとるために十分な陰性電荷を運搬する陰イオンを必然的に含む。
【0026】
ビピリジリウム4級カチオンの特徴のある除草剤の効果は関連する陰イオンの性質とは無関係であるため、陰イオンの選定は例えばコストの面で好都合なことである。好適には陰イオンは一つであり、都合のよい水溶性の塩を発生させる。陰イオンの例は、1価又は多価であってよく、酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、臭化物、酪酸塩、塩化物、クエン酸塩、フルオロケイ酸塩、フマル酸塩、フルオロホウ酸塩、ヨウ化物、乳酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、メチル硫酸塩、硝酸塩、プロピオン酸塩、リン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、チオシアン酸塩、酒石酸塩、及びp-トルエンスルホン酸塩を含む。除草剤のビピリジリウム陽イオンの塩は、多くの同一の陰イオン又は種々の陰イオンの混合物から形成され得る。利便性及び経済的な理由のために、パラコートは2塩化パラコートとして普通に製造及び販売されるが、ジクワットは2臭化ジクワットとしての製造及び販売される。
【0027】
除草性ビピリジリウム4級カチオンの塩の除草活性の特徴は陽イオンにおいてのみ存在するため、特に断わりのない限り、ビピリジリウム4級カチオンの量による活性成分の濃縮物及び適用率を示すことが慣例となっている。
【0028】
所望されるならばパラコート又はジクワットは、他の農薬活性成分、特に他の除草剤との組み合わせにおいて本発明の製剤に使用され得る。パラコート及びジクワット混合物は本発明の農薬活性成分として有用でもある。本発明の組成物へ導入するために有用なパラコートとジクワットの典型的な混合相手は、アメトリン、ジウロン、アトラジン、グリホサート、ブタフェナシル、メトリブジン、プロメトリン、及びテルブチラジンを含む。本発明の組成物中に導入できる、又は本発明の組成物とのタンク混合に使用できる多くの他の可能な混合相手は、当業者により見出されるであろう。
【0029】
代表的な例は、2,4-D、AC304415、アセトクロール(Acetochlor)、アクロニフェン(Aclonifen)、アラクロール(Alachlor)、アミカルバゾン(Amicarbazone)、アミノトリアゾール(Aminotriazole)、アザフェニジン(Azafenidin)、BAS145138、ベノキサコール(Benoxacor)、ベンタゾン(Bentazon)、ビアロホス(Bialophos)、ブロモキシニル(Bromoxynil)、ブチレート、カルフェントラゾン−エチル(Carfentrazone-ethyl)、CGA 276854、クロマゾン(Clomazone)、クロピラリド(Clopyralid)、クロキントセット−メキシル(Cloquintocet-mexyl)、クロランスラム(Cloransulam)、シアナジン(Cyanazine)、ジカンバ(Dicamba)、ジクロルミド(Dichlormid)、ジクロスラム(Diclosulam)、ジフルフェンゾピル(Diflufenzopyr)、ジメタナミド(Dimethanamid)、フェンクロリム(Fenclorim)、フェントラジミド(Fentrazimide)、フロラスラム(Florasulam)、フルフェナセット(Flufenacet)、フルメツラム(Flumetsulam)、フルミクロラック−ペンチル(Flumiclorac-pentyl)、フルミオキサジン(Flumioxazin)、フルラゾール(Flurazole)、フルロキシピル(Fluroxypyr)、フルチアセット−メチル(Fluthiacet-methyl)、フルキソフェニム(Fluxofenim)、ホラムスルフロン(Foramsulfuron)、フリラゾール(Furilazole)、グルホシネート(Glufosinate)、ハロスルフロン−メチル(Halosulfuron- methyl)、イマザモックス(Imazamox)、イマザピル(Imazapyr)、イマザキン(Imazaquin)、イマゼタピル(Imazethapyr)、イオドスルフロン(Iodosulfuron)、イソプロパゾール(Isopropazol)、イソキサクロルトール(Isoxachlortole)、イソキサフルトール(Isoxaflutole)、MCPA、MCPB、MCPP、メフェンピル(Mefenpyr)、メソトリオン(Mesotrione)、メトベンズロン(Metobenzuron)、メトラクロール(Metolachlor)、メトスラム(Metosulam)、MON4660、ニコスルフロン(Nicosulfuron)、NOA-402989、ペンディメタリン(Pendimethalin)、プリミスルフロン(Primisulfuron)、プロフルアゾール(Profluazol)、プロスルフロン(Prosulfuron)、ピリデート(Pyridate)、リムサルフロン(Rimsulfuron)、S-ジメタナミド(S-Dimethanamid)、セトキシジム(Sethoxydim)、S-グルホシネート(S-glufosinate)、シマジン(Simazine)、スラルタモン(Slurtamone)、S-メトラクロール(S-Metolachlor)、スルコトリオン(Sulcotrione)、スルフェントラゾン(Sulfentrazone)、スルホセート(Sulfosate)、テルブトリン(Terbutryn)、チフェンスルフロン(Thifensulfuron)及びトリトスルフロン(Tritosulfuron)を含む。
【0030】
改良された皮膚保護に関する本発明の新規方法、偶然又は故意の摂取の効果を軽減させるように更に製剤化され、且つ一般的に慣習的な吐剤を含む本発明の方法に用いられる組成物は、評価されるであろう。
【0031】
多様な公知の吐剤を本発明の方法に使用するために組成物中に用いることができる。しかしながら、好適な吐剤はビピリジリウム除草製剤の使用のための英国特許No.1507407中に開示された吐剤の化合物であり、特に好適な吐剤は2-アミノ-6-メチル-5-オキソ-4-n-プロピル-4, 5-ジヒドロ-5-トリアゾロ[1, 5-a]-ピリミジンである。
【0032】
組成物中で使用される吐剤の量は、特に使用される吐剤のタイプに依存して変化するだろう。しかし英国特許No.1507407中で開示された分類の吐剤が使用される場合、吐剤の濃度は好適には組成物の0.1から5グラム/リットルである。200グラム/リットルのビピリジリウム化合物を含む組成物のためには、1.0から2.0グラム/リットルの濃度、特に1.5から2.0グラム/リットルの吐剤が好適である。
【0033】
本発明の組成物のいくつかの応用では、更に下剤、例えば硫酸マグネシウムを含んでもよい。
【0034】
使用される硫酸マグネシウムの濃度は、好適には水和水を含まない乾燥硫酸マグネシウムの重量に基づき、組成物の10から400グラム/リットル、より好適には10から100グラム/リットルである。より高濃度の硫酸マグネシウム、例えば400グラム/リットルまでの濃度で使用してよく、そして増加した下剤効果の提供を続けてよいが、かかる高レベルの硫酸マグネシウムは製剤の安定性に不利な作用を有し得る。本発明の方法に使用するための組成物は、例えばピリジン誘導物、英国特許No.1406881に発表されたようなもの又はn-吉草酸として、香料のような慣習的な付加剤(警告試薬:alerting agent)を含んでよい。当該組成物は色彩での識別を組成物に与えるため、色素又は染料を含んでもよい。
【0035】
本発明の方法で使用するための組成物は、成分を混合することにより簡単に都合よく調製され得る。固形アルギン酸塩をビピリジリウム塩の水性溶液に付加してよく、又はアルギン酸塩を最初に水へ混合し、続けてビピリジリウムの水性溶液へ付加してよい。
【0036】
本発明を以下の実施例で説明する。実施例中の全ての割合及びパーセンテージは、特に断わりのない限り重量による。アジュバントの濃度は、使用される組成物の重量によりそれぞれ示す。当該組成物中のアジュバントの濃度は、アジュバントが100%未満である場合に示す。例えば製品NANSA HS90/Sは、90重量%のドデシルベンゼンスルホン酸塩溶液として提供される。
【0037】
実施例1では、皮膚刺激は発表された管理プロトコールOECD 404及び402を用いて測定した。後の実施例では、皮膚刺激は刺激したマウス皮膚の電気抵抗に基づくin vitro皮膚刺激機能試験(SIFT)、及び当該in vitroモデルでの試験化学物質自体の皮膚浸透性に基づく試験を用いて測定した。動物試験量を減少させることが求められる当該試験は、”A prevaldiation study on the in vitro skin irritation function test (SIFT) for prediction of acute skin irritation in vivo: results and evaluation of ECVAM Phase III, Heylings, Diot, Esdaile, Fasano, Manning and Owen, Toxicology in Vitro 17 (2003) 123-136”に発表され、参考文献として本明細書に組み入れられている。この論文は、多種の化学物質を使用する第III 相バリデーション試験を報告する。SIFT試験の結果は、試験組成物への20時間暴露後、kオームでの電気抵抗として報告される。電気抵抗における任意の還元の規模は、皮膚刺激の程度を表示するものである。
【0038】
SIFTプロトコールは、電位性皮膚刺激の局所的暴露による皮膚のバリア機能における変化を同定する。当該in vitroモデルにおける試験化学物質自体の浸透性を測定することもまた高く所望させる。なぜなら皮膚浸透性はバリアが損傷した時に増加するからである。従ってSIFT試験はビピリジル化学物質、例えばパラコートの測定を導入するために改善された。皮膚へ適用させる前に投与する溶液に放射ラベルしたパラコートを付加することとは別に、方法論は上記Heylings等の中で発表された通りである。投与調製品は、放射ラベルが製剤中で十分に分散していること、且つ検査システム中で十分な測定を許容するに十分な特異活性で十分に分散していることを保証するために、均質性が検査される。局所的皮膚暴露後4時間の時点で、皮膚の下面(underside)を浸した生理食塩水のサンプルを採取し、そしてこの時点で皮膚に浸透させたパラコートの量を液体シンチレーションカウンティングにより測定した。In vivo測定での当該モデルのバリデーションでは、パラコートのより低い量の皮膚への浸透を示し、その後、慣習的なOECD管理試験で測定されたようにin vivoでのより少ない皮膚刺激応答を示した。パラコートの皮膚透過性を減少させる新規組成物の能力をみる当該in vitro SIFTプロトコールでの組成物の実施は、関連するコントロールと比較される。従って、100未満のパーセンテージ値は、潜在的な利益を実証する。2つの付加的な内部陽性及び陰性コントロールを、装置及び皮膚バッチが適正に作用していることを確認するために当該試験に含ませた。使用した標準品は、上記Heylings等の発表の通り、皮膚刺激性、ラウリル硫酸ナトリウム(陽性コントロール)及び未処理の皮膚(陰性コントロール)であった。全般に、我々はパラコート及びアルギン酸塩を共に含む組成物は、アルギン酸塩を含まない組成物と比較してパラコートの皮膚浸透性を減少させることを見出した。これはアルギン酸塩なしの組成物よりも皮膚に対してより低刺激性であるアルギン酸塩を含有しているような組成物である場合、in vivoにおいて具体化された。
【実施例】
【0039】
実施例1
本発明による方法に使用する組成物(組成物1)は、以下の成分を有するように調製された。
【表2】

【0040】
AEROSOL OT-Bは、85%のジオクチルスルホコハク酸ナトリウム及び15%安息香酸ナトリウムを含む。SYNPROLAM 35 X 15はアルキルアミンエトキシレートであり、R-N(CH2CH20)xH(CH2CH20)yHのように書くことができる分子式を有し、式中xとyの合計は、15であり、R =C13-C15である。MANUTEX RMは高−Mアルギン酸塩であり、低いカルシウム含有率を有し(最大0.4%)、そして200から400mPasの1%溶液粘度を有する。
【0041】
この組成物は、Paar Physica HaakeMC1+ High Shear Rheometerを用いて、25℃で、68.0mPasの300s-1(”組成物粘度”)で測定された粘度を有した。
【0042】
上記組成物を公表された管理プロトコールOECD 404及び402を用いて、皮膚刺激及び皮膚毒性について評価した。これはアルギン酸塩を含まない商業的なパラコート産物でのデータと比較して、皮膚刺激及び皮膚毒性において有意な減少を示した。
【0043】
実施例2-6
これらの実施例ではアルギン酸塩は表2に示す組成物に付加された。
【表3】

【0044】
NANSA 1169-Aは、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの30%w/w水性溶液である。GenaminT-150は、アルキルアミンエトキシレートであり、R-N(CH2CH20)xH(CH2CH20)yHのように書くことができる分子式を有し、式中xとyの合計は15であり、R=獣脂である。
【0045】
実際に付加されたアルギン酸塩について、その濃度とSIFT試験を用いた合成組成物の皮膚刺激値を表3に示す。表3では、皮膚刺激値は、100g/1パラコートを含みアルギン酸塩を含まない関連の商業的な標準品と対比し、皮膚刺激(パラコート皮膚浸透性により測定されるような)を減少させるパーセントで測定される。従って、100%未満の数値は、標準品と対比して減少した皮膚刺激値を示す。データはSIFTプロトコール中の6つの観察の最小値からの平均値である。
【表4】

【0046】
実施例7−19
表4では、皮膚刺激値は、200g/1パラコートを含み、アルギン酸塩を含まない関連の商業的な標準品と対比し、皮膚刺激(パラコート皮膚浸透性により測定されるような)を減少させるパーセントにより測定される。従って、100%未満の数値は、標準品と対比して減少した皮膚刺激値を示す。データはSIFTプロトコール中の6つの観察の最小値からの平均値である。
【表5】

【表6】

【0047】
実施例14
実施例14は更にパラコートに関してアルギン酸塩の付加により得られた皮膚刺激の減少を説明する。この実施例において、相対的な皮膚刺激値は、アルギン酸塩を含まず得られた正確に対応する組成物のパーセンテージとして表される。
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚とビピリジリウム除草剤を含有する組成物の接触に伴う皮膚保護方法であって、当該組成物にアルギン酸塩を導入することを含んで成る皮膚保護方法。
【請求項2】
前記ビピリジリウム除草剤がパラコート塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ビピリジリウム除草剤がジクワット塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ビピリジリウム除草剤がパラコート塩とジクワット塩の混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物が少なくとも25グラム/リットルのビピリジリウムイオンを含む水性濃縮組成物である、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物が50グラム/リットルから250グラム/リットルのビピリジリウムイオンを含んで成る、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記アルギン酸塩の平均分子量が、5,000から250,000である、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記平均分子量が、10,000から200,000である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記アルギン酸塩の1%溶液の粘度が、2から2000mpasである、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記アルギン酸塩の1%溶液の粘度が、2から1,500mpasである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記組成物中のアルギン酸塩の濃度が1から50g/lである、請求項1から10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記組成物中のアルギン酸塩の濃度が5から50g/lである、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記組成物が1以上の界面活性剤を含んで成る、請求項1から12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記組成物が吐剤を含んで成る、請求項1から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記組成物が下剤を含んで成る、請求項1から14のいずれか1項に記載の方法。

【公表番号】特表2006−517200(P2006−517200A)
【公表日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500197(P2006−500197)
【出願日】平成16年1月12日(2004.1.12)
【国際出願番号】PCT/GB2004/000091
【国際公開番号】WO2004/064796
【国際公開日】平成16年8月5日(2004.8.5)
【出願人】(501008820)シンジェンタ リミテッド (33)
【Fターム(参考)】