説明

皮膚洗浄料及びこれに用いるN−アシルグルタミン酸塩

【課題】泡立ち、洗浄後のツルツル感、しっとり感に優れるN−アシルグルタミン酸塩及びこのN−アシルグルタミン酸塩を含有する皮膚洗浄料を提供する。
【解決手段】35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩を含有し、かつ、N−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩の合計量が30〜50質量%であり、更に、14〜25質量%のN−オレオイルグルタミン酸塩を含有することを特徴とするN−アシルグルタミン酸塩及びこれを用いた皮膚洗浄料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、N−アシルグルタミン酸塩に関する発明であり、特にN−アシルグルタミン酸塩の脂肪酸組成を調整したN−アシルグルタミン酸塩及びこれを用いた皮膚洗浄料に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
洗顔料や身体用などの皮膚洗浄料において、安全性が高く、泡立ちが良く、すすぎ時やタオルドライ後の使用性が良いものが望まれている。使用性が良いものとは、すすぎ時では、泡切れが早く、キシミがなくツルツルした感触、タオルドライ後では、肌が乾燥せず、つっぱらない、しっとり感のあるものである。
N−アシルグルタミン酸塩は低刺激で安全性が高く、泡立ち、使用後の感触の良い洗浄剤として知られている(特許文献1)。N−アシルグルタミン酸塩を使用した洗浄剤は数多く開発されている(特許文献2、特許文献3、特許文献4)。しかしながら、N−アシルグルタミン酸塩の脂肪酸組成を調整し、N−アシルグルタミン酸塩の洗浄剤としての機能を向上させることについては研究されていない。特許文献5には植物油由来の脂肪酸でアシル化したN−アシルグルタミン酸塩が動物油由来の脂肪酸でアシル化したN−アシルグルタミン酸塩と比べて臭気が少ないことが示されている。脂肪酸組成も開示されているが、脂肪酸組成の違いによるN−アシルグルタミン酸塩の機能の違いは明示されていない。
N−アシルグルタミン酸塩のアシル基の鎖長が長いと水溶性が低下し、液状洗浄剤に配合することが困難である。ところが、固形状あるいは粉末状洗浄剤にはアシル基の鎖長が長いN−アシルグルタミン酸塩を配合することが可能であり、その特有の機能を発揮させることができる。アシル基の鎖長が長いN−アシルグルタミン酸塩は洗浄後のツルツル感(すすぎ後の肌と指との滑り感覚)に優れ、この使用感触は他の界面活性剤では実現できないものである。しかしながら、アシル基の鎖長が長いN−アシルグルタミン酸塩は、泡立ちが悪いという欠点を有している。一方、アシル基の鎖長が短いN−アシルグルタミン酸塩は、泡立ちは良いものの、洗浄後のツルツル感、保湿感は劣っている。これらの複数種のN−アシルグルタミン酸塩を混合しても、洗浄後のツルツル感、しっとり感(保湿感)と泡立ちがともに優れる洗浄剤は未だ無かった。
【特許文献1】特開平6−158089号公報
【特許文献2】特開平6−157292号公報
【特許文献3】特開2005−60298号公報
【特許文献4】特開2005−298455号公報
【特許文献5】特開2003−34670号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
アシル基の鎖長が長いN−アシルグルタミン酸塩を多く含有する固形石鹸用N−アシルグルタミン酸ナトリウムが知られており、その洗浄剤で洗顔した際の、洗浄後のツルツル感、保湿感は優れている。しかしながら、泡立ちがやや劣ることが欠点である。泡立ちを改善するために、この固形石鹸用N−アシルグルタミン酸ナトリウムに、泡立ちに優れるN−ラウロイルグルタミン酸塩を配合すると、洗浄後のツルツル感、保湿感は損なわれる問題があった。そこで、特定の脂肪酸組成のN−アシルグルタミン酸塩を調製し、泡立ち、洗浄後のツルツル感、しっとり感の全てに優れる、N−アシルグルタミン酸塩及びこのN−アシルグルタミン酸塩を含有する皮膚洗浄料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の主な構成は、次のとおりである。
(1)35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩を含有し、かつ、N−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩の合計量が30〜50質量%であり、更に、14〜25質量%のN−オレオイルグルタミン酸塩を含有することを特徴とするN−アシルグルタミン酸塩。
(2)溶液状態で均一に混合されたN−アシルグルタミン酸塩を乾燥して得られる前記(1)に記載のN−アシルグルタミン酸塩。
(3)粉末状あるいは顆粒状である前記(1)又は(2)に記載のN−アシルグルタミン酸塩。
(4)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のN−アシルグルタミン酸塩を含有することを特徴とする皮膚洗浄料。
(5)前記(1)〜(3)のいずれかに記載のN−アシルグルタミン酸塩を含有することを特徴とする粉末状あるいは顆粒状の皮膚洗浄料。
【発明の効果】
【0005】
本発明により泡立ちがよく、皮膚洗浄後はツルツル感、しっとり感(保湿感)ともに優れた洗浄剤の原料となるN−アシルグルタミン酸塩を提供することができ、また、これを利用した優れた洗浄料を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明には、35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩を含有するN−アシルグルタミン酸塩を用いる。N−ラウロイルグルタミン酸塩の含有量が35質量%未満では十分な泡立ち(起泡力)を得ることができず、50質量%を超えると洗浄後のツルツル感、しっとり感が低下する。
本発明でいう泡立ち、しっとり感及びツルツル感は例えば後述する試験例により評価することができる。泡立ちは、泡立てた泡の量の多少によって評価でき、例えば起泡力として測定することができる。しっとり感は、保湿感ともいい、洗浄後の水分を拭き取った後の肌と手の平との密着感覚や、NMF溶出試験、角層水分量を測定すること等により評価できる。ツルツル感は、すすぎ後の肌と指との滑り感覚により評価できる。
【0007】
さらに、本発明のN−アシルグルタミン酸塩は、N−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩を合わせて30〜50質量%含有し、N−オレオイルグルタミン酸塩を14〜25質量%含有する。N−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩を合わせた含有量が30質量%未満であるとツルツル感、しっとり感に劣り、50質量%を超えると十分な泡立ちを得ることが困難である。N−オレオイルグルタミン酸塩の含有量が14質量%未満であるとツルツル感、しっとり感、泡立ちの何れかが劣るか、ツルツル感、しっとり感、泡立ちが総じて悪くなる。N−オレオイルグルタミン酸塩の含有量が25質量%を超えると粉末が経時的に融着し、粉末状態を維持することが困難となる。 N−アシルグルタミン酸塩の脂肪酸組成は、上記範囲内であればよいが、そのうちでも特にN−ラウロイルグルタミン酸塩の濃度が36〜41質量%、N−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩を合わせた濃度が38〜46質量%であると起泡性に優れるため洗浄料として用いる場合、より好ましい。
【0008】
本発明のN−アシルグルタミン酸塩は、公知の方法によって得られ、例えば脂肪酸クロリドとグルタミン酸との反応によって得られる。アシル基としては炭素数8〜22の飽和または不飽和脂肪酸より誘導されるアシル基で例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘン酸等の単一組成の脂肪酸の混合物によるアシル基のほかに、パーム油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、ヒマワリ油脂肪酸、大豆油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸等の天然より得られる混合脂肪酸を精製したものあるいは合成により得られた脂肪酸の混合物によるアシル基であっても良い。
【0009】
本発明の粉末状あるいは顆粒状のN−アシルグルタミン酸塩は、脂肪酸組成の異なる複数種類の粉末状あるいは顆粒状のN−アシルグルタミン酸塩を製造し、それらを混合して35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩、30〜50質量%のN−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩の混合物及び14〜25質量%のN−オレオイルグルタミン酸塩を含有させることが可能であるが、泡立ちを向上させるためには、前記組成のN−アシルグルタミン酸塩を溶液状態で均一にしたものを乾燥して、例えば粉末状あるいは顆粒状に加工することが好ましい。
【0010】
本発明の35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩、30〜50質量%のN−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩の混合物及び14〜25質量%のN−オレオイルグルタミン酸塩を含有するN−アシルグルタミン酸塩を溶液状態で均一にしたものを粉末状あるいは顆粒状に加工する方法としては、例えば、適当量のラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びオレイン酸を含有する脂肪酸混合物のクロリドとグルタミン酸を反応させ、得られたN−アシルグルタミン酸を中和して、粉末化あるいは顆粒化することが挙げられる。本発明の35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩、30〜50質量%のN−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩の混合物及び14〜25質量%のN−オレオイルグルタミン酸塩を含有するN−アシルグルタミン酸塩を溶液状態で均一にしたものを乾燥する方法として、35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩、30〜50質量%のN−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩の混合物及び14〜25質量%のN−オレオイルグルタミン酸塩を混合し、溶媒に溶解して均一にした後、乾燥させても良い。溶媒としては、例えば熱水等が挙げられる。
【0011】
ラウリン酸は主にヤシ油脂肪酸精製物から、ステアリン酸は主にパーム油脂肪酸精製物から、オレイン酸は主にヒマワリ油脂肪酸精製物で構成することが好ましい。特に、オレイン酸については、牛脂脂肪酸、パーム油脂肪酸、大豆油脂肪酸を精製して得たものを使用した場合と比べて、ヒマワリ油脂肪酸を精製したものを用いることにより、臭気を低減させることができる。
【0012】
N−アシルグルタミン酸は、ナトリウム、カリウムなどの金属塩、トリエタノールアミン等の有機塩として使用することが好ましい。
【0013】
本発明の粉末状または顆粒状皮膚洗浄料には、本発明の効果を損なわない範囲で、N−アシルグルタミン酸塩以外の界面活性剤を配合することができる。界面活性剤はアニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤などの界面活性作用をもつものであり、天然のもの合成のものいずれでもよい。アニオン界面活性剤の代表的なものとして、脂肪酸塩、アシルイセチオン酸塩、アシルアスパラギン酸塩等が挙げられる。
【0014】
本発明の皮膚洗浄料には、糖類、糖アルコール類、有機粉体、無機粉体、高分子類、防腐剤、金属イオン封鎖剤、紫外線吸収剤、紫外線遮断剤、保湿剤、香料、pH調整剤、乾燥剤、等を含有させることができる。ビタミン類、皮膚賦活剤、血行促進剤、常在菌コントロール剤、活性酸素消去剤、抗炎症剤、美白剤、殺菌剤等の他の薬効成分、生理活性成分を含有させることもできる。
【0015】
糖類、糖アルコール類としては、グルコース、ソルビトール、マンノース、マンニトール、ガラクトース、ガラクチトール、マルトース、マルチトール、トレハロース、エリスロース、エリスリトール、キシロース、キシリトール、スクロース、ラクトース、ラクチトール、ダイフラクトースアンハイドライド等が挙げられる。
有機粉体としてはポリエチレン粉末、ポリスチレン粉末、ポリメチルメタアクリレート粉末、ナイロン粉末、ポリウレタン粉末、寒天粉末、コルク粉末、澱粉等を挙げることができる。
【0016】
無機粉体としては、タルク、カオリン、シリカ、雲母、ゼオライト、ベントナイト、二酸化チタン等が挙げられる。
【0017】
高分子類としては、アラビアゴム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、キサンタンガム、クインスシード、デキストラン、カチオン化デキストラン、プルラン、カルボキシメチルデンプン、コラーゲン、カゼイン、ゼラチンメチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー(CARBOPOL等)等を挙げることができる。
【0018】
防腐剤として、例えばメチルパラベン、エチルパラベン等を挙げることができる。
【0019】
金属イオン封鎖剤として、例えばエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩等のエデト酸塩を挙げることができる。
薬効成分としては、L−アスコルビン酸、L−アスコルビン酸リン酸エステル、L−アスコルビン酸モノパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ジパルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸−2−グルコシド等のビタミンC類等、グルタチオン、ユキノシタ抽出物等の美白剤、ローヤルゼリー、ぶなの木エキス等の皮膚賦活剤、カプサイシン、ジンゲロン、カンタリスチンキ、イクタモール、カフェイン、タンニン酸γ−オリザノール等の血行促進剤、グリチルリチン酸誘導体、グリチルレチン酸誘導体、アズレン等の消炎剤、アルギニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸類、常在菌コントロール剤のマルトースショ糖縮合物、塩化リゾチーム等を挙げることができる。
【実施例】
【0020】
〔N−アシルグルタミン酸塩の製造〕
各脂肪酸組成の混合物からなるクロリドと反応量のグルタミン酸塩を反応させ、中和反応をさせた後、溶液状態で均一とし、これを乾燥して、表1の各組成の粉末状のアシルグルタミン酸ナトリウム塩を製造した。得られた各アシルグルタミン酸ナトリウム塩を洗浄料として以下の試験に用いた。
【0021】
【表1】

【0022】
〔試験例1〕洗浄料の使用性評価試験
上記表1に示す組成のN−アシルグルタミン酸ナトリウム塩について、0.5gを手の平に取り出し、N−アシルグルタミン酸塩粉末の約10倍重量の水を加えて泡立て、通常の洗顔方法で洗顔を行い、泡立ち、ツルツル感、しっとり感について5段階評価を行った。被験者は専門パネラー10名とした。スタンダードとして比較例1の組成の固形石鹸用N−アシルグルタミン酸Na(以下単に、比較例1成分という)を用い、この評価を5段階評価のうちの3とした。
以下の評価基準により評価した。結果を表1に示した。
(1)泡立ち :泡立てた泡の量(多い5→少ない1)で評価し、比較例1成分はやや泡立ちに劣るので、スタンダードの「3点」を「△:泡立ちが劣る」として、以下の基準を設けた。
4.5点以上5点以下 ◎:泡立ちに非常に優れる。
3.5点以上4.5点未満 ○:泡立ちに優れる。
2.5点以上3.5点未満 △:泡立ちに劣る。
2.5点未満 ×:泡立ちに非常に劣る。
(2)ツルツル感 :すすぎ後の肌と指との滑り感覚(ツルツルする5→ツルツルしない1)で評価し、比較例1成分はツルツル感に優れるので、スタンダードの「3点」を○:ツルツル感に優れる」として以下の基準を設けた。
3.5点以上5点未満 ◎:ツルツル感に非常に優れる。
2.5点以上3.5点未満 ○:ツルツル感に優れる。
1.5点以上2.5点未満 △:ツルツル感に劣る。
1.5点未満 ×:ツルツル感に非常に劣る。
(3)しっとり感 :水分を拭き取ったあとの肌と手の平との密着感覚(しっとり5→さっぱり1)で評価し、比較例1成分はしっとり感に優れるので、スタンダードの「3点」を「○:しっとり感に優れる」として以下の基準を設けた。
3.5点以上5点未満 ◎:しっとり感に非常に優れる。
2.5点以上3.5点未満 ○:しっとり感に優れる。
1.5点以上2.5点未満 △:しっとり感に劣る。
1.5点未満 ×:しっとり感に非常に劣る。
【0023】
実施例1の組成のN−アシルグルタミン酸Na(以下単に、実施例1成分という)と比較例2のラウロイルグルタミン酸Na(以下単に、比較例2成分という)の評価数値を表2及び表3に示す。検定法はWilcoxonの符号付順位和検定法を用いた。なお、スタンダードとして比較例1成分を用いた。
【0024】
【表2】

【0025】
実施例1成分はスタンダードの比較例1成分と同程度のツルツル感、しっとり感を維持しながら、泡立ちが有意に改善されていた。
【0026】
【表3】

【0027】
比較例2成分は、スタンダードの比較例1成分と比べて泡立ちが有意に優れているが、ツルツル感、しっとり感が有意に劣っていた。
【0028】
〔試験例2〕洗顔パウダーの使用性評価試験
スタンダードの比較例1成分を配合した洗顔パウダーと実施例1成分を配合した洗顔パウダーについて泡立ち、ツルツル感、しっとり感を比較評価した。
比較例1成分を配合した洗顔パウダーをスタンダードとして「3点」とし、試験例1と同様の評価基準にて評価した。
各洗顔パウダーの組成を表4に、評価数値を表5に示す。洗顔パウダーは、各組成成分(粉体)を攪拌混合することにより調製した。
【0029】
【表4】

【0030】
【表5】

【0031】
実施例1成分を配合した洗顔パウダーはスタンダードの比較例1成分を配合した洗顔パウダーと同程度のツルツル感、しっとり感を維持しながら、泡立ちが有意に改善されていた。
【0032】
〔試験例2〕NMF溶出試験
表6に示す洗浄料を試料として、NMF成分として代表的なウロカニン酸、ピロリドンカルボン酸(PCA)、乳酸の3成分を指標成分としてこれらが試料成分による洗浄によって除去された量を測定した。測定は以下の手順により6名に対して行われ、その平均値を表6及び図1に示す。
(i)被試験者の前腕内側部にカップを装着する。
(ii)カップ内に試料2mLを入れ、栓をする。
(iii)カップを装着した腕を溶液が漏れないように振とう器にのせる。
(iv)そのまま10分間振とうし、NMFを抽出する。
(v)その後、カップ内の溶液をスポイトで取り出し、2mLチューブへ入れる。
(vi)この溶液を0.45μmメンブランフィルターでろ過し、高速液体クロマトグラフィーで定量する。
(vii)試料溶液及び標準溶液各々20μLをとり、下記の条件により高速液体クロマトグラフィーで測定し、得られたピーク面積から検量線法を用いてそれぞれの量を算出する。

高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析条件
カラム:TSK−GEL ODS−80Ts 4.6mmφ×150mm
検出器:フォトダイオードアレイ UV210nm
溶離液:0.5M硫酸ナトリウム、0.1Mリン酸 水溶液
流 速:0.4mL/min
注入量:20μl

【0033】
【表6】

【0034】
表6より、実施例1成分を洗浄料として用いた場合は、肌に必要とされるウロカニン酸、PCA、乳酸を合計した量が他の洗浄料に比べて少なく、本洗浄料によれば、洗浄後も皮膚のNMF成分が残存し、保湿効果が維持され、しっとり感にすぐれることが定量的にわかった。
【0035】
〔試験例3〕角層水分量
表7の洗浄料を試料として以下の手順により、洗浄前、洗浄5分後、10分後、15分後の角層水分量を測定した。測定は以下の手順により1名に対して5回行われ、その平均値を表7及び図2に示す。尚、洗浄前の角層水分量を100%とした。
(i)試料0.5gを十分に泡立てる。
(ii)前腕内側部を(i)の泡で洗浄する。
(iii)洗浄後、流水で30秒間すすぐ。
(iv)すすぎ後、タオルで水分をふき取る。
(v)その後、室温23℃、湿度40%の恒温室下にて安静にする。
(vi)安静状態で一定の時間経過後にSKICON−200EX(アイ・ビイ・エス社製)で水分量を5回測定し、平均値を求めた。
【0036】
【表7】

【0037】
表7より、実施例1成分を洗浄料に用いた場合には、洗浄後の角層水分量が比較例1成分程度であり、他の洗浄料と比較して、保湿性(しっとり感)に優れた洗浄料であることが定量的にわかった。
【0038】
〔試験例4〕起泡性試験
表8の洗浄料を試料として以下の手順により、反復攪拌法により起泡力を測定した。結果を表8及び図3に示す。
(i)試料0.5%濃度の溶液を調製し、40℃に加温する。
(ii)加温後、目盛入り1Lトールビーカーに溶液を泡立たないように注ぎ入れる。
(iii)1Lトールビーカーを反転撹拌装置(PROMIX PR-1200 柴田科学器械工業(株)社製)にセットし、撹拌して泡立てる。(右回転20秒+左回転20秒+右回転20秒)
(iv)泡立て1分後、泡量を読み取る。(データはN=3の平均値)
【0039】
【表8】

【0040】
〔試験例5〕脂肪酸組成の違いによる各種評価
表1の各組成のアシルグルタミン酸塩からなる洗浄料全てについて、その脂肪酸組成の違いによる性能を調べるため、試験例1と同様の使用性評価試験、試験例4と同様の起泡性試験をそれぞれについて行った。結果を表1に示す。
【0041】
〔試験例6〕安定性評価
表1の各組成のアシルグルタミン酸塩について、40℃1ヶ月保管後に粉体が固結していないか観察し、以下の基準により安定性を評価した。結果を表1に示す。
○:粉体に固結が生じていない。
×:粉体が固結し、粉末状あるいは顆粒状の皮膚洗浄料として使用できない。

【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明により、泡立ちがよく、皮膚洗浄後はツルツル感、しっとり感(保湿感)とともに優れた洗浄料を提供できる。

【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】各洗浄料のNMF溶出試験結果を示す図である。
【図2】各洗浄料の角層水分量を示す図である。
【図3】各洗浄料の起泡性試験結果を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
35〜50質量%のN−ラウロイルグルタミン酸塩を含有し、かつ、N−パルミトイルグルタミン酸塩とN−ステアロイルグルタミン酸塩の合計量が30〜50質量%であり、更に、14〜25質量%のN−オレオイルグルタミン酸塩を含有することを特徴とするN−アシルグルタミン酸塩。
【請求項2】
溶液状態で均一に混合されたN−アシルグルタミン酸塩を乾燥して得られる請求項1に記載のN−アシルグルタミン酸塩。
【請求項3】
粉末状あるいは顆粒状である請求項1又は2に記載のN−アシルグルタミン酸塩。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のN−アシルグルタミン酸塩を含有することを特徴とする皮膚洗浄料。
【請求項5】
請求項1〜3のいずれかに記載のN−アシルグルタミン酸塩を含有することを特徴とする粉末状あるいは顆粒状の皮膚洗浄料。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−51945(P2009−51945A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219864(P2007−219864)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(593106918)株式会社ファンケル (310)
【Fターム(参考)】