説明

皮膚状態の改善又は維持剤

【課題】経口摂取によっても効果を示す、皮膚の状態を改善又は維持するための製剤を提供すること。
【解決手段】寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖を含む皮膚状態の改善又は維持剤が提供される。本発明の改善又は維持剤は、経口摂取によっても外的刺激や内的刺激に起因する角質層の機能低下や破壊を抑制し、健常な角質層を維持することができる。さらには、本発明の改善又は維持剤は、経口摂取によってもシワを改善することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖を含む皮膚状態の改善又は維持剤に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚の最外層に存在する角質層は、皮膚の保湿能や生体の物理的保護をはじめとする生理的役割を担っている。一方で、角質層の厚さは20μmにも満たず、角質層に存在する水分量は皮膚全体の1%にも満たない。このため、僅かな外的刺激(紫外線、乾燥、大気汚染、微生物等)や、内的刺激(皮脂分泌、汗腺機能、表皮代謝等の異常や、加齢、疲労等)によって角質層の状態が悪化し、その機能が低下して皮膚の水分の蒸散や外界からの異物の侵入等を招くこととなる。また、シワは、皮膚の加齢による老化、紫外線への暴露、乾燥等により生じると言われている。
【0003】
従来、皮膚の状態を改善、維持するための組成物は、皮膚外用剤としてのみ適用されるものがほとんどであり、例えば、保湿成分として知られるセラミドを含む外用剤が開発されている(特許文献1)。しかしながら、このような保湿成分を含有する外用剤は角質層の保湿成分を一時的に補うものであり、角質層破壊の抑制やシワの改善を持続的に行えるものではない。また、保湿成分を含有する皮膚外用剤の効果が期待できるのは、塗布を行った局所的な部分のみであり、広い範囲の皮膚状態の改善、維持には不向きである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−293730号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、経口摂取によっても効果を示す、皮膚の状態を改善及び/又は維持するための製剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、驚くべきことに、寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖により角質層の機能低下の抑制やシワの改善が可能であることを見出し、これに基づき本発明に至った。
【0007】
本発明の第一の発明は、寒天、アガロース、及びアガロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む皮膚状態の改善又は維持剤に関する。本発明の第一の発明における寒天としては寒天の低分子化物が例示され、アガロオリゴ糖としてはアガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース、及びアガロデカオースからなる群より選択される少なくとも1種の化合物が例示される。また、本発明の第一の発明の改善又は維持剤としては、経口摂取用のものが例示される。さらには、本発明の第一の発明の改善又は維持剤としては、角質層維持剤及びシワの改善剤が例示される。
【0008】
本発明の第二の発明は、(A)寒天、アガロース、及びアガロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、(B)コラーゲン、及び(C)ヒアルロン酸を含む経口摂取用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖を含む皮膚状態の改善又は維持剤が提供される。本発明の改善又は維持剤は、経口摂取によっても外的刺激や内的刺激に起因する角質層の機能低下や破壊を抑制し、健常な角質層を維持することができる。さらには、シワを改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】(A)アガロオリゴ糖を摂取前、及び(B)アガロオリゴ糖摂取8週後の、45歳女性のシワの状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚状態の改善又は維持剤は、皮膚の状態を改善する作用及び/又は皮膚の破壊や機能の低下を抑制し皮膚の状態を維持する作用を有しており、寒天、アガロース、及び/又はアガロオリゴ糖を有効成分として含有する。
【0012】
寒天は、アガロースとアガロペクチンからなる多糖であり、広く食品素材として使用されている。寒天の原料としては、藻類が好適であり、例えば、テングサ科のマクサ、オニグサ、オオブサ、ヒラクサ、オバクサ、ユイキリ等、オゴノリ科のオゴノリ、オオオゴノリ等、イギス科のイギス、エゴノリ等、その他の紅藻類が例示される。寒天の原料となる藻類は、通常、天日に干して乾燥させたものを用いるが、生の藻類から寒天を調製しても良い。また、藻類を乾燥時に散水しながら漂白した、いわゆるさらし原藻も寒天の原料として使用できる。原料となる藻類を熱水抽出し、得られた抽出物を冷却することによって寒天のゲル、いわゆる「ところてん」が得られる。この「ところてん」から凍結脱水又は圧搾脱水によって水分を除き、乾燥させることによって市販されている形状の寒天が得られる。本発明において、寒天はその起源となる藻類を問わず、また、棒状、帯状、板状、糸状、粉末状等の種々の形態の乾燥物やゲル状の寒天を使用できる。また、寒天はいろいろな強度のゲルを形成できるものが市販されているが、本発明にはそのいずれもが使用できる。
【0013】
アガロースは、[D−ガラクトシル−(β1→4)−3,6−アンヒドロ−α−ガラクトシル−(β1→3)]で表わされる構造を有する多糖類である。寒天は通常、約70%のアガロースと約30%のアガロペクチンを含んでおり、寒天から公知の方法で精製を行うことによりアガロースを調製することができる。
【0014】
寒天又はアガロースは、化学的、物理的及び/又は酵素的方法で部分分解することにより低分子化することができる。本発明においては、寒天として寒天の低分子化物、アガロースとしてアガロースの低分子化物を使用しても良い。寒天又はアガロースの化学的分解方法の例としては酸性領域での加水分解、物理的分解方法の例としては電磁波や超音波の照射による細断・分解、酵素的分解方法の例としてはアガラーゼ等の加水分解酵素による加水分解が挙げられる。低分子化寒天は、伊那食品工業株式会社より「ウルトラ寒天」の名称で市販されている。ウルトラ寒天は、1.5%溶液を調製した場合のゼリー強度が約30〜200g/cmという低いゼリー強度を示す。
【0015】
アガロオリゴ糖は、3,6−アンハイドロガラクトピラノースを還元末端に有する、構成単位であるD−ガラクトシル−(β1→4)−3,6−アンヒドロ−α−ガラクトース(=アガロビオース)がα1、3結合で結合したオリゴ糖である。アガロオリゴ糖としては、アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース、及びアガロデカオースが例示される。本発明においては、1種のアガロオリゴ糖を単独で用いても良いし、2種以上のアガロオリゴ糖の混合物を用いても良い。アガロオリゴ糖は、公知の製法により製造されるものを使用することができ、特に限定はないが、例えば、国際公開第00/69285号パンフレットに記載の製法により製造することができる。すなわち、原料寒天を固体酸により酸分解することで得られる、アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、及びアガロオクタオースを含有するアガロオリゴ糖の混合物を本発明に使用することができる。なお、このように原料として寒天を用いて調製されたアガロオリゴ糖は、寒天オリゴ糖と呼ばれることもある。アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、及びアガロオクタオースを含有するアガロオリゴ糖の混合物としては、市販のもの(製品名:アガオリゴ(登録商標)、タカラバイオ社製)を使用することもできる。
【0016】
本発明の皮膚状態の改善又は維持剤は、スキンケアに有効と考えられている成分、例えば、植物油、カロテノイド、抗酸化物質、ビタミン、アミノ酸、ミネラル、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、エラスチン、ヒアルロン酸、グルコサミン、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、リノール酸、リノレン酸、アルブチン、コウジ酸、プラセンタ、ルシノール、エラグ酸、及び/又はセラミドやスクアレン等のリン脂質等を含んでもよい。これら成分は、合成品であっても天然由来品であっても良く、天然由来品である場合は、粗抽出物であっても精製物であっても良い。
【0017】
このうち、グルコサミンは、エビやカニの甲殻等に含まれる天然アミノ糖で、身体の様々な部分に含まれる粘性物質であるプロテオグリカンの構成成分である。また、コンドロイチン硫酸は、グルコサミンと同様にプロテオグリカンの構成成分として知られている多糖である。コンドロイチン硫酸は、例えばサメの軟骨から抽出することができる。また、コラーゲンは結合組織に多く含まれる構造タンパク質であり、例えば豚皮や魚鱗を原料として調製することができる。コラーゲンとしては、酵素分解等によって低分子化されたコラーゲンペプチドを用いても良い。また、ヒアルロン酸はN−アセチルグルコサミンとグルクロン酸で構成される多糖であり、例えば鶏冠からの抽出や微生物発酵法により調製することができる。ヒアルロン酸としては、酸等によって低分子化されたオリゴヒアルロン酸を用いても良い。
【0018】
本発明の皮膚状態の改善又は維持剤は、外的刺激や内的刺激による角質層の機能低下や破壊を抑制し、健常な角質層を維持することができる。すなわち、角質層維持剤は、本発明の皮膚状態の改善又は維持剤の一態様として例示される。この本発明の角質層維持剤の効果により、皮膚のバリア機能の破たんを防止し、皮膚内部の水分の蒸散を防止することができる。
【0019】
角質層の機能低下を招く外的刺激としては、紫外線への暴露、乾燥、大気汚染、微生物の皮膚への感染、ハプテン等のアレルゲンの皮膚への付着が例示される。また、角質層の機能低下を招く内的刺激としては、皮脂分泌の亢進、汗腺機能の低下、過剰な発汗、表皮代謝の異常、加齢、疲労、炎症が例示される。
【0020】
さらには、本発明の角質層維持剤を用いることにより、皮膚の角質細胞間脂質の減少を抑制することができる。
【0021】
皮膚の角質細胞間脂質は、主としてセラミド類、コレステロール、遊離脂肪酸、トリグリセリド、及びコレステリル硫酸から構成され、中でもセラミドが角質細胞間脂質の約50%を占めている。角質細胞間脂質は、角質層の皮膚バリア機能、水分保持機能、及び接着・剥離機構に重要な役割を果たしている。
【0022】
角質層中のセラミド量は、加齢とともに減少することが知られている。また、アトピー性皮膚炎や、セラミド生成酵素の欠損症であるニーマンピック病やゴーシュ病においても、セラミド量の減少が引き起こされることが知られている。本発明の角質層維持剤によれば、例えば上記の原因による角質層のセラミド量の減少を抑制することが可能である。
【0023】
本発明の皮膚状態の改善又は維持剤は、シワを改善する作用を有している。すなわち、シワ改善剤は、本発明の皮膚状態の改善又は維持剤の一態様として例示される。本発明のシワ改善剤は、経口摂取及び/又は皮膚への塗布によってシワの改善効果を示す。なお、本発明においてシワの改善とは、シワの長さを短くする、シワの深さを浅くする、又はシワをなくすことを意味する。シワの改善効果は、例えば本発明の皮膚状態の改善又は維持剤を摂取する前後の被験者のシワ体積率、シワ最大深度、シワ最大幅、シワ個数等の肌の状態を、シワ解析装置ASA−03R(アサヒバイオメッド社製)等によって解析する事により確認できる。
【0024】
本発明の皮膚状態の改善又は維持剤は、薬学的に許容できる液状又は固体状の担体と配合することにより製造でき、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤等の固形剤、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤とすることができる。また、使用前に適当な担体の添加によって液状となし得る乾燥品とすることもできる。
【0025】
担体は、本発明の皮膚状態の改善又は維持剤の投与形態及び剤型に応じて選択することができる。固体組成物とする場合は、錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、細粒剤、顆粒剤等とすることができ、例えば、デンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などが担体として利用される。また経口摂取用の個体組成物の調製に当っては、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤沢剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合することもできる。例えば、錠剤又は丸剤とする場合は、所望によりショ糖、ゼラチン、ハイドロキシプロピルセルロースなどの糖衣又は胃溶性もしくは腸溶性物質のフィルムで被覆しても良い。液体組成物からなる経口剤とする場合は、薬理学的に許容される乳濁剤、溶液剤、懸濁剤、シロップ剤などとすることができ、例えば、精製水、エタノールなどが担体として利用される。また、更に所望により湿潤剤、懸濁剤のような補助剤、甘味剤、風味剤、防腐剤などを添加しても良い。なお、本発明の皮膚状態の改善又は維持剤は経口投与によっても十分な効果を発揮することから、その投与の簡便性の観点から経口投与用の剤形とするのが好適な形態である。
【0026】
以上の各種組成物は、それぞれ公知の医薬/食品用担体などを利用して、適宜、常法により製造することができる。また、かかる製剤における寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖の含有量は、その投与形態、投与方法などを考慮し、好ましくは後述の投与量範囲で寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖を投与できるような量であれば特に限定されるものではない。本発明の皮膚状態の改善又は維持剤中の寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖の含有量としては、乾燥重量で0.1〜100重量%程度である。
【0027】
本発明の皮膚状態の改善又は維持剤の摂取量は、その製剤形態、投与方法、使用目的及びこれに適用される患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され、一定ではないが、一般には製剤中に含有される有効成分の量が成人1日当り10μg〜200mg/kgである。もちろん、投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。本発明の皮膚状態の改善又は維持剤はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0028】
本発明に使用する寒天、アガロース及び/又はアガロオリゴ糖は、1g/kgの投与量でマウスに経口投与しても急性毒性は認められない。
【0029】
本発明の別の態様として、本発明は下記(A)〜(C)を含む食品組成物及び経口摂取用皮膚改善剤を提供する。
(A)寒天、アガロース、及びアガロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(B)コラーゲン、並びに
(C)ヒアルロン酸。
【0030】
すなわち本発明により、寒天由来化合物、コラーゲン及びヒアルロン酸を含有する、食品組成物及び経口摂取用皮膚改善剤が提供される。本発明の食品組成物又は経口摂取用皮膚改善剤においては、各成分の一日摂取量が、寒天由来化合物100〜1000mg/日、コラーゲン80〜500mg/日、ヒアルロン酸3〜30mg/日となるように配合されていることが好ましい。本発明の一態様として経口摂取用化粧料が提供でき、本発明の皮膚改善剤や経口摂取用化粧料は、皮膚改善、具体的には、「肌の潤い」、「肌の乾燥」、「肌のしっとり感」、「肌のはりや弾力」、「肌のやわらかさ」及び「肌のつや」を改善するという効果を有しており、飲食品あるいは医薬品として有用である。
【0031】
寒天由来化合物としては、前記の寒天、アガロース、及びアガロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種の化合物が使用できる。
【0032】
ヒアルロン酸としては、特に限定されないが、例えば、哺乳類、鳥類、魚類、菌類から抽出されたものや、微生物の培養物から抽出したものが使用できる。また、ヒアルロン酸を酵素処理又は加熱加圧処理して得られた、低分子ヒアルロン酸又はヒアルロン酸分解物も、本発明におけるヒアルロン酸として使用可能である。
【0033】
コラーゲンとしては、特に限定されないが、例えば、哺乳類、鳥類、魚類等の動物の真皮、皮、骨等から抽出されたものが使用できる。また、コラーゲンを酵素、酸、アルカリ等で処理して得られたコラーゲンペプチドも、本発明におけるコラーゲンとして使用可能である。
【0034】
また本発明の食品組成物は、各成分の一日摂取量が、寒天由来化合物100〜1000mg/日、コラーゲン80〜500mg/日、ヒアルロン酸3〜30mg/日となるように配合されていることを特徴とする。各成分の一日摂取量を上記の範囲とすることにより、特に高い皮膚改善効果が得られる。
【0035】
本発明の食品組成物を製造する場合、その形状は特に限定されず、固形、半固形又は液状とすることができる。また、寒天由来化合物、ヒアルロン酸、コラーゲン以外の成分としては、任意のもの、例えば、賦形剤、調味料、着色料、pH調整剤が使用できる。
【0036】
本発明の食品組成物を簡便に摂食するためには、公知の賦形剤を用いて、錠剤、顆粒上、カプセル状又は液状の食品とすればよい。また、寒天由来化合物、ヒアルロン酸及びコラーゲンを従来の飲食品に添加し、本発明の食品組成物としてもよい。
【0037】
また本発明の経口摂取用皮膚改善剤は、寒天由来化合物100〜1000mg/日、コラーゲン80〜500mg/日、ヒアルロン酸3〜30mg/日を含有する。特に高い皮膚改善効果が得られることから、経口摂取用皮膚改善剤に含有される各成分の一日摂取量は、寒天由来化合物200〜500mg/日、コラーゲン160〜300mg/日、ヒアルロン酸10〜20mg/日となるように配合されていることが好ましい。本発明の経口摂取用皮膚改善剤を製造する場合の詳細については、上記の食品組成物の製造法と同様である。
【実施例】
【0038】
以下、本発明について実施例をもって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0039】
実施例1
6週齢のNC/Nga系雄マウスを馴化後、アガロオリゴ糖投与群とコントロール群に分けた。試験期間中、アガロオリゴ糖投与群にはアガオリゴ(登録商標、タカラバイオ社製)を3.0(W/V)%の割合で水道水に溶解したものを給水した。一方、コントロール群には水道水を給水した。給水投与開始から7日後にマウスの胸部、腹部、後肢足掌をバリカンで毛刈りし、エタノール:アセトン=4:1の割合で混合した溶液にピクリルクロライドを5%の濃度で溶解したものをハプテンとして毛刈りした各部位に一匹あたり合計150μL塗布した(0日目)。さらに、その4日後から1週間に1回の割合でオリーブ油にピクリルクロライドを0.8%の濃度で溶解したものを、背部皮膚と左右耳に一匹あたり合計200μL塗布した。また、比較としてピクリルクロライド塗布を行わない無処置群を設定した。試験期間中、背部皮膚における水分蒸散量(g/m/hr)を測定装置(Tewameter TM210)で測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】

【0041】
表1に示す通り、アガロオリゴ糖投与群の方がコントロール群に比べて皮膚からの水分蒸散量が低く抑えられ、水分の喪失を抑制した。この結果から、アガロオリゴ糖の経口摂取により、皮膚の刺激によって生じる角質層の皮膚バリア機能の低下を抑制できることが示された。
【0042】
実施例2
市販のアガロオリゴ糖、コラーゲンペプチド(豚皮由来)、ヒアルロン酸(微生物発酵生成物由来)、各添加物を表2の配合で用い、アガロオリゴ糖を含む錠剤(9mmφ、300mg/錠)A〜Cを常法に従って打錠機により作製した(打錠時の圧力=0.75t)。
【0043】
【表2】

【0044】
実施例3
アガロオリゴ糖の摂取による肌への効果を評価する目的で、インフォームド・コンセントの得られた、肌の衰えが気になる41〜61歳の成人女性13名を被験者としたプラセボ対照二重盲検試験を実施した。
【0045】
表3に示す組成でアガロオリゴ糖食とプラセボ食を調製し、被験者の7名にアガロオリゴ糖食を、6名にプラセボ食を、それぞれ毎日4カプセルずつ8週間摂取させた。なお、アガロオリゴ糖にはアガオリゴ(登録商標、タカラバイオ社製)を用いた。摂取前と摂取開始4週後、摂取開始8週後に右目尻部分のレプリカを採取し、シワ解析装置ASA−03R(アサヒバイオメッド社製)でシワ体積率、シワ最大深度、シワ最大幅、シワ個数を測定した。その結果を表4〜7に示す。また、アガロオリゴ糖摂取群のうち、代表例として、被験者(45歳女性)のアガロオリゴ糖摂取前後の皮膚を撮影した写真を図1に示す。
【0046】
【表3】

【0047】
【表4】

【0048】
【表5】

【0049】
【表6】

【0050】
【表7】

【0051】
表4〜7に示す通り、アガロオリゴ糖の摂取により、摂取前に比べシワ体積率、シワ最大深度、及びシワ最大幅の低下、並びにシワ個数の減少が認められた。アガロオリゴ糖の摂取によるシワ個数やシワ深度の低下等のシワの改善効果は、図1からも確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明により、経口摂取によって効果を示す、皮膚状態の改善又は維持剤が提供される。本発明は経口摂取という簡便な方法で効果が得られる事から、医薬分野のみならず、食品分野においても有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
寒天、アガロース、及びアガロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種の化合物を含む皮膚状態の改善又は維持剤。
【請求項2】
寒天が寒天の低分子化物である請求項1記載の改善又は維持剤。
【請求項3】
アガロオリゴ糖が、アガロビオース、アガロテトラオース、アガロヘキサオース、アガロオクタオース、及びアガロデカオースからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項1記載の改善又は維持剤。
【請求項4】
経口摂取用である、請求項1記載の改善又は維持剤。
【請求項5】
角質層維持剤である、請求項1〜4いずれか1項に記載の改善又は維持剤。
【請求項6】
シワの改善剤である、請求項1〜4いずれか1項に記載の改善又は維持剤。
【請求項7】
下記(A)〜(C)を含む経口摂取用組成物;
(A)寒天、アガロース、及びアガロオリゴ糖からなる群より選択される少なくとも1種の化合物、
(B)コラーゲン、及び
(C)ヒアルロン酸。

【図1】
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【公開番号】特開2010−95511(P2010−95511A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−150307(P2009−150307)
【出願日】平成21年6月24日(2009.6.24)
【出願人】(302019245)タカラバイオ株式会社 (115)
【Fターム(参考)】