説明

皮膚組織測定用プローブ

【課題】光ファイババンドルの先端部と皮膚との相対位置を精密に制御して、皮膚組織の光学特性値変化を抑制できる皮膚組織測定用プローブを提供する。
【解決手段】皮膚表面31に光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33を接触させて、該プローブ33から近赤外光を該皮膚に照射することで皮膚組織の光学的信号を測定する皮膚組織測定用プローブ。プローブ33を皮膚に対して接近離反する方向へ駆動させる駆動機構部35を、固定部34内で上下動自在とされる昇降部材37に螺合して取り付けられるねじ部41の頭部に設けたギヤ部42に、固定部34の上部に回転自在に設けた回転操作部材43の内側に形成した駆動ギヤ47を噛み合せて該ねじ部41を回転させることで、プローブ33を皮膚に対して接近離反させるように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の皮膚組織に近赤外光を照射すると共に、前記皮膚組織からの拡散反射あるいは透過光を受光し、得られた皮膚組織からの信号の測定を行い、生体成分の定性・定量分析を行う生体成分センシング技術に関する。特に、皮膚組織中のグルコース濃度変化を代用特性として生体の血糖値を測定する血糖値モニタリング装置において皮膚組織スペクトルを測定する皮膚組織測定用プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
血糖値測定あるいは血糖値モニタリングについては、以前より糖尿病患者の血糖値管理へのニーズが高かったが、近年、集中治療室(ICU)で血糖値を適切な範囲に管理することで死亡率の低下、合併症の発生率の低下等の医療効果が医学的に検証され、その応用分野が広がっている。
【0003】
血糖値の測定手法は、採血した血液を用い、グルコースオキシダーゼ等の酵素反応を利用して定量する侵襲的手法(酵素電極法…GOD法、GDH法等、酵素比色法…HX法等)と、採血のような体を傷つける操作を行わないで、生体から得られる何らかの情報をもとに血糖値を推定する非侵襲的手法に大別できる。
【0004】
測定装置としては、臨床検査用の大型装置のみならず侵襲的手法による携帯型血糖計が糖尿病患者の自己血糖値測定(SMBG)に広く利用されており、患者の指等の身体部位を針(ランセット)で穿刺し、1滴程度の血液を採取して血糖値測定を行う。このような採血による血糖値測定の信頼性は高く、自己血糖値測定に用いられる携帯型血糖計でも市販されているほとんどの機種において測定誤差は10%以下である。
【0005】
非侵襲的に血糖値を推定する手法としては様々なものが提案されているが、推定精度や信頼性に課題を残しており、今の時点で、日本国の薬事承認や米国のFDA認可を得た製品はない。提案されている手法の中では、近赤外光を用いる手法が最も知られている。近赤外光により非侵襲的に血糖値を測定する手法は、生体組織に近赤外光を照射し、生体組織内を拡散反射した光を測定して得られる信号やスペクトルから生体組織を定性・定量分析を行う。
【0006】
その一例を示すと、特許文献1に開示されるような生体組織から得られた近赤外スペクトルから血糖値を測定する手法が提案されている。図6(A)及び(B)は、特許文献1に開示された非侵襲式の光学式血糖値測定システムを示すもので、ハロゲンランプ1から発光された近赤外光は熱遮蔽板2、ピンホール3、レンズ4、光ファイババンドル5を介して生体組織6に入射される。
【0007】
光ファイババンドル5には、測定用光ファイバ7の一端とリファレンス用光ファイバ8の一端が接続されている。測定用光ファイバ7の一端は、皮膚組織用測定用プローブ9に接続されており、リファレンス用光ファイバ8の他端はリファレンス用プローブ10に接続されている。さらに、皮膚組織測定用プローブ9およびリファレンスプローブ10は、光ファイバ7を介して測定側出射体11、リファレンス側出射体12にそれぞれ接続されている。
【0008】
人体の前腕部など生体組織6の表面に皮膚組織測定用プローブ9の先端面を接触させて近赤外スペクトル測定を行う時、ハロゲンランプ1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光は、この光ファイババンドル5内を伝達する。そして、近赤外光は、図6(B)に示すような皮膚組織測定用プローブ9の先端から同心円周上に配置された12本の発光ファイバ20より生体組織6の表面に照射される。
【0009】
生体組織6に照射された測定光は、生体組織6内で拡散反射した後に、拡散反射光の一部が皮膚組織測定用プローブ9の先端中心に配置されている受光ファイバ19に受光される。受光された光は、この受光ファイバ19を介して、測定側出射体11から出射される。測定側出射体11から出射された光は、レンズ13を通して回折格子14に入射し、分光された後、受光素子15において検出される。
【0010】
受光素子15で検出された光信号は、A/Dコンバーター16でAD変換された後、パーソナルコンピュータなどの演算装置17に入力される。血糖値は、このスペクトルデータを解析することによって算出される。リファレンス測定は、セラミック板などの基準板18を反射した光を測定し、これを基準光として行う。すなわち、ハロゲンランプ1から光ファイババンドル5に入射した近赤外光は、リファレンス用光ファイバ8を通して、リファレンス用プローブ10の先端から基準板18の表面に照射される。
【0011】
基準板18に照射された光の反射光は、リファレンス用プローブ10の先端中心に配置された受光ファイバ19を介してリファンレス側出射体12から出射される。前記測定側出射体11とレンズ13の間、及びこのリファンレス側出射体12とレンズ13の間には、それぞれシャッター22が配置してある。そして、シャッター22の開閉によって、測定側出射体11からの光とリファンレス側出射体12からの光のいずれか一方が選択的に通過するようになっている。
【0012】
皮膚組織測定用プローブ9とリファレンス用プローブ10の端面は、図6(B)のように円上に配置された12本の発光ファイバ20と、その中心に配置された1本の受光ファイバ19で構成されている。発光ファイバ20と受光ファイバ19の中心間距離Lは、0.65mmである。測定側出射体11とリファレンス側出射体12の端面は、図示を省略するが、出射ファイバが中心に配置されている。
【0013】
この装置では、皮膚組織のうち真皮部分のスペクトルを選択的に測定するため、図6(B)に示すように、中心間距離L=0.65mmに受光ファイバ19を配置し、入射点と検出点とする皮膚組織測定用プローブ9を用いている。この皮膚組織測定用プローブ9を皮膚表面に接触させスペクトル測定を行うと、入射光ファイバより照射された近赤外光は皮膚組織内を拡散反射し、入射された光の一部が検出用光ファイバに到達する。そして、その光の伝播経路はバナナ・シェイプと呼ばれる経路をとり、真皮部分を中心に伝播する。したがって、吸光信号のSN比が向上し、精度よく生体成分濃度の測定ができる。
【0014】
また、従来の皮膚組織測定用プローブとしては、例えば特許文献2に開示された構造がある。この皮膚組織測定用プローブは、光ファイババンドルの先端部を支持すると共に皮膚表面との接触を保持する光ファイババンドルの先端部の支持体と、この支持体に設けられて光ファイババンドルの先端部を皮膚表面に対して直交する方向に移動させて前記先端部と皮膚表面との接触面を無負荷時の生体組織表面位置より−150μmから500μmの範囲内に保持する駆動手段とを備えた構造としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開2006−87913号公報
【特許文献2】特開2008−104838号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
採血によらず非観血的、非侵襲的に血糖値を推定する手法は、患者に負担をかけず血糖値を測定できるため、そのニーズは高く、多くの研究開発が行われ、検討に用いられた測定手法としても様々なものが提案されている。しかしながら、推定精度や信頼性に課題を残しており、今の時点で、日本国の薬事承認や米国のFDA認可を得た製品はない。
【0017】
また、本発明が対象とする近赤外光を用いた非侵襲血糖値測定においても推定精度や信頼性に課題を残しているが、推定精度や信頼性を低下させる一つの要因として測定中の体動に伴う皮膚組織測定用プローブ9と皮膚との接触状態の変化がある。
【0018】
皮膚組織測定用プローブと皮膚とが必要以上に強く接触すると、皮膚状態が大きく変化し易く、皮膚表面の平滑化に伴う表皮層の光学特性値の変化や、皮膚組織の圧縮に伴う光学特性値の変化が生じる。これらの光学特性値の変化は、血糖値の予測に大きな影響をもたらし、場合によっては、接触状態が安定するまで血糖値の測定ができない。
【0019】
皮膚組織測定用プローブと皮膚とを適切な状態で接触させるには、皮膚組織測定用プローブの皮膚接触部分と皮膚の位置関係を数十μm単位で制御する必要がある。しかし、皮膚に対するダメージを小さくするためには皮膚組織測定用プローブを小さくかつ軽くする必要があり、皮膚接触部分と皮膚の位置関係を操作する機構も必然的に小さくなってしまうことから、上記位置関係の調整が困難である。また、血糖値測定を行う上で、条件設定の信頼性が損なわれ、結果として測定精度が悪くなるという問題もある。
【0020】
そこで、本発明は、光ファイババンドルの先端部と皮膚との相対位置を精密に制御して、皮膚組織の光学特性値変化を抑制できる皮膚組織測定用プローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
請求項1に記載の発明は、皮膚表面に光ファイババンドルの先端部を固定し、該先端部から近赤外光を該皮膚に照射することで皮膚組織の光学的信号を測定する皮膚組織測定用プローブであって、前記皮膚表面に対して受発光ファイバを垂直に接触させる前記光ファイババンドルの先端部と、前記先端部の周囲に配置される固定部と、前記光ファイババンドルの先端部を皮膚に対して接近離反する方向へ駆動させる駆動機構部とを備え、前記駆動機構部は、前記固定部に形成された穴部に収納されて上下動自在とされ且つ前記光ファイババンドルの先端部を保持固定する昇降部材と、該昇降部材に螺合して取り付けられるねじ部と、該ねじ部に設けられたギア部と、前記固定部の上部に回転自在に設けられ、前記ギア部と噛み合って前記ねじ部を回転させることにより前記昇降部材を昇降動させて前記先端部を皮膚に対して接近離反する方向へ駆動させる回転操作部材とからなることを特徴とする。
【0022】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の皮膚組織測定用プローブであって、前記皮膚表面に対する前記光ファイババンドルの先端部位置を示す表示手段を有したことを特徴とする。
【0023】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の皮膚組織測定用プローブであって、前記表示手段は、前記皮膚表面と前記光ファイババンドルの先端部が同一平面位置にあることを示す第1表示部と、前記先端部が前記同一平面位置から上方の測定位置にあることを示す第2表示部とを有したことを特徴とする。
【0024】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の皮膚組織測定用プローブであって、前記ねじ部の締め切り位置は、前記皮膚表面と前記光ファイババンドルの先端部が同一平面位置となることを特徴とする。
【0025】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4の何れか1項に記載の皮膚組織測定用プローブであって、前記固定部を前記皮膚の測定部位に装着保持する装着補助部材を備え、該装着補助部材を、フレキシブルな装着部材としたことを特徴とする。
【0026】
請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の皮膚組織測定用プローブであって、前記第1表示部及び前記第2表示部を前記回転操作部材に設けると共に、前記第1表示部及び前記第2表示部の位置合わせのための指標を、前記装着補助部材に設けたことを特徴とする。
【0027】
請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項6の何れか1項に記載の皮膚組織測定用プローブであって、前記装着補助部材の前記皮膚との接触面側に一方の電極を設け、前記光ファイババンドルの先端部を導電性部材として該先端部を他方の電極とし、これら両電極間の通電状態を検知して前記光ファイババンドルの先端部と前記皮膚との接触を検知する検知手段を備えたことを特徴とする。
【0028】
請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の皮膚組織測定用プローブであって、前記両電極間に電流が流れた時に点灯する表示手段を有したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0029】
請求項1に記載の皮膚組織測定用プローブは、固定部の上部に回転自在に設けた回転操作部材を回転操作して、光ファイババンドルの先端部を保持固定する昇降部材に螺合したねじ部を回転させることにより、前記光ファイババンドルの先端部を皮膚に対して接近離反する方向へ駆動する駆動機構部を備えている。このため、本発明によれば、ねじ部を直接回すよりも回転操作部材を回転させ、その回転力をねじ部に設けたギヤ部を介して該ねじ部を回転させることで、小さな力で光ファイババンドルの先端部を数μm単位で精度良く昇降動させることができる。皮膚に対するダメージを小さくするには、光ファイババンドルの先端部を小さく且つ軽くする必要があるため、該先端部を皮膚に対して接近離反する駆動機構部もこれに応じて小さくする必要がある。しかし、駆動機構部が小さくなるとその操作性が悪くなり、前記先端部の皮膚に対する相対位置の精度が悪くなる。これに対して、本発明によれば、光ファイババンドルの先端部を小さく且つ軽くしても、前記先端部と皮膚との相対位置を精密に調整することができるため、測定精度を高めることができる。
【0030】
請求項2に記載の皮膚組織測定用プローブによれば、皮膚表面に対する光ファイババンドルの先端部位置を示す表示手段を有しているので、この表示手段を確認することで、前記先端部の皮膚に対する相対位置設定を簡単に行うことができる。
【0031】
請求項3に記載の皮膚組織測定用プローブにおいては、前記表示手段を、皮膚表面と光ファイババンドルの先端部が同一平面位置にあることを示す第1表示部と、先端部が前記同一平面位置から上方の測定位置にあることを示す第2表示部とにより構成している。第1表示部では皮膚表面と光ファイババンドルの先端部が同一平面位置にあることを示しているため、この第1表示部を確認することで、光ファイババンドルの先端部を皮膚に対して必要以上に強く接触させることを防止できる。第2表示部では光ファイババンドルの先端部が前記同一平面位置から上方の測定位置にあることを示しているため、この第2表示部を確認することで、前記先端部を測定位置に容易に配置させることができる。
【0032】
請求項4に記載の皮膚組織測定用プローブにおいては、ねじ部の締め切り位置を、皮膚表面と光ファイババンドルの先端部が同一平面位置となるようにしている。このため、本発明によれば、ねじ部を回して締め切った場合でも光ファイババンドルの先端部が皮膚表面と同一平面位置になり、該先端部が皮膚を必要以上に押し付けることを防止することができる。
【0033】
請求項5に記載の皮膚組織測定用プローブにおいては、固定部を皮膚の測定部位に装着保持する装着補助部材を備え、その装着補助部材をフレキシブルな装着部材としている。このため、本発明によれば、装着補助部材によって固定部を皮膚の測定部位に安定して装着保持することができる。また、本発明によれば、フレキシブルな装着部材である装着補助部材によって、曲面を有する柔軟組織である生体部位であっても固定部の皮膚に対する接触状態を安定させ、この接触状態の変化による皮膚組織の光学特性値変化を起こし難くすることができる。その結果、固定部への影響を小さくすることができ、光ファイババンドルの先端部への影響を最小化することができる。
【0034】
請求項6に記載の皮膚組織測定用プローブにおいては、第1表示部及び第2表示部を回転操作部材に設けると共に、第1表示部及び第2表示部の位置合わせのための指標を装着補助部材に設けた構造としている。このため、本発明によれば、回転操作部材に設けた第1及び第2表示部を装着補助部材に設けた指標に合わせることで、誰にでも簡単に光ファイババンドルの先端部と皮膚との相対位置を精度良く設定することができる。
【0035】
請求項7に記載の皮膚組織測定用プローブによれば、装着補助部材の皮膚との接触面側に一方の電極を設け、光ファイババンドルの先端部を導電性部材として該先端部を他方の電極とし、これら両電極間の通電状態を検知して光ファイババンドルの先端部と皮膚との接触を検知する検知手段を備えたので、この検知手段によって光ファイババンドルの先端部と皮膚との接触を電気的に検知することができ、これら先端部と皮膚との接触状態を安定化させることができる。
【0036】
請求項8に記載の皮膚組織測定用プローブによれば、両電極間に電流が流れた時に点灯する表示手段を設けたので、この表示手段の点灯を確認するだけで、光ファイババンドルの先端部と皮膚との接触状態を容易に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は皮膚組織測定用プローブで測定する皮膚組織を模式的に示す図である。
【図2】図2は第1実施形態の皮膚組織測定用プローブを示し、(A)はその平面図、(B)はその断面図である。
【図3】図3は第1実施形態の皮膚組織測定用プローブを装着させる生体部位を示す図である。
【図4】図4は第2実施形態の皮膚組織測定用プローブを示し、(A)はその平面図、(B)はその断面図である。
【図5】図5は第3実施形態の皮膚組織測定用プローブを示し、(A)はその平面図、(B)はその断面図である。
【図6】図6は従来の皮膚組織測定装置を示し、(A)はその全体構成図、(B)は光ファイババンドルの先端部を拡大して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明を適用した具体的な実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0039】
非侵襲的に血糖値を推定するには、前記したように波長が1300nm以上2500nm以下の近赤外光を皮膚に照射することで皮膚組織の光学的信号(拡散反射スペクトル)を測定することで推定できる。生体の皮膚組織は、図1に示すように、大きく分類すると表皮組織S1、真皮組織S2、皮下組織S3の3層の組織で構成される。
【0040】
表皮組織S1は、角質層を含む組織で、組織内に毛細血管はあまり発達していない。皮下組織S3は、主に脂肪組織で構成されている。したがって、この二つの組織内に含まれる水溶性の生体成分濃度、特に、グルコース濃度と血中グルコース濃度(血糖値)との相関は低いと考えられる。
【0041】
一方、真皮組織S2については、毛細血管が発達していることと、水溶性の高い生体成分濃度、特にグルコースが組織内で高い浸透性を有することから組織内生体成分濃度、特にグルコース濃度は間質液(ISF: Interstitial Fluid)と同様に血糖値に追随して変化すると考えられる。したがって、真皮組織S2を標的としたスペクトル測定を行えば、生体成分濃度、特に血糖値変動と相関するスペクトル信号の測定が可能となる。
【0042】
波長が1300nm以上2500nm以下の近赤外光を用いる場合、図1に示すように、発光部100と受光部101を中心間距離L=0.65mmとして両者を離して構成した近赤外スペクトル皮膚組織測定用プローブを皮膚に接触させる。そして、近赤外スペクトル測定を行うと、発光部から照射された近赤外光Hvは照射面より皮膚組織に照射され、皮膚組織内を拡散反射してその一部が受光部に到達する。この際の光の伝播経路は、真皮組織S2を中心として、皮膚組織内伝播し、バナナ・シェイプと呼ばれる形状をとるので、皮膚組織の深さ方向の選択的測定を可能とし、精度良い測定ができる。
【0043】
[第1実施形態]
図2は第1実施形態の皮膚組織測定用プローブを示し、(A)はその平面図、(B)はその断面図、図3は第1実施形態の皮膚組織測定用プローブを装着させる生体部位を示す図である。第1実施形態の皮膚組織測定用プローブ30は、皮膚表面31に対して受発光ファイバを垂直に接触させる光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33と、プローブ33の周囲に配置される固定部34と、プローブ33を皮膚表面31に対して接近離反する方向(図2(B)の矢印X方向)へ駆動する駆動機構部35と、固定部34を皮膚の測定部位に装着保持する装着補助部材36とを有している。
【0044】
プローブ33の先端には、図1で示したように、1300nm以上2500nm以下の近赤外光Hvを皮膚表面31に向けて照射する発光部と、皮膚組織内を拡散照射して戻る光を受光する受光部とが設けられている。発光部と受光部は、図6(B)と同じ構造であるので、ここではその説明は省略する。
【0045】
固定部34は、プローブ33を保持する基台として機能し、例えば平面視円形状をなす台として形成されている。この固定部34には、プローブ33を保持固定する後述のプローブ駆動用昇降部材37を上下動自在に収容させる穴部38が設けられている。この穴部38は、貫通穴ではなく、底部39を有した止まり穴とされている。また、底部39には、プローブ33の先端を皮膚表面31に接触させるための貫通孔40が形成されている。
【0046】
駆動機構部35は、固定部34に形成された穴部38に収納されて上下動自在とされるプローブ駆動用昇降部材37と、このプローブ駆動用昇降部材37を上下動させるねじ部41と、ねじ部41に設けられたギヤ部42と、ギヤ部42と噛み合ってねじ部41を回転させることによりプローブ駆動用昇降部材37を昇降動させて前記プローブ33を皮膚に対して接近離反する方向へ駆動させる回転操作部材43とから構成されている。
【0047】
プローブ駆動用昇降部材37は、平面視矩形状をなし、前記穴部38に上下動可能に挿入されている。そして、このプローブ駆動用昇降部材37には、光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33を挿入させて保持するためのプローブ挿入保持孔44が形成されている。また、プローブ駆動用昇降部材37には、ねじ部41を取り付けるためのねじ穴45が貫通して設けられている。
【0048】
ねじ部41は、時計回り方向に回すことで、プローブ駆動用昇降部材37を上昇させ、該プローブ駆動用昇降部材37に保持させたプローブ33を皮膚表面31から離間する方向へ移動させる。一方、ねじ部41は、反時計回り方向に回すことで、該プローブ駆動用昇降部材37を下降させ、プローブ33を皮膚表面31へ接近させる方向へ移動させる。
【0049】
前記ねじ部41には、例えばピッチ0.25mmの雄ねじが形成されたものが使用される。ねじ部41をピッチ0.25mmという小さなねじピッチとすることで、プローブ33の移動距離を数ミクロン単位で精密に制御することができる。一方、プローブ駆動用昇降部材37には、これに応じたピッチの雌ねじを形成したねじ穴45が形成されている。
【0050】
前記ギヤ部42は、前記ねじ部41の頭部に該ねじ部41と一体的に設けられている。かかるギヤ部42は、前記固定部34の穴部38から常に上方に突出した状態を保持する。一方、ねじ部41の先端部は、固定部34に形成された穴部38の底面に常に接触した状態とされる。また、前記ねじ部41を反時計回り方向に回して締め切た位置では、皮膚表面31とプローブ33の先端とが同一平面位置となるようにされている。
【0051】
回転操作部材43は、前記固定部34の上部に、図2(A)の矢印Cで示す方向に回転自在に設けられている。具体的には、回転操作部材43は、下面に形成した円環状凹部54を前記固定部34の上部に被せるようにして嵌合装着されることで、該固定部34に対して回転自在とされている。この回転操作部材43は、光ファイババンドル32を外方へ導出させる導出孔46を中心に有した円盤体として形成されている。また、この回転操作部材43には、前記ねじ部41の頭部に設けられたギヤ部42と噛み合う駆動ギヤ47が形成されている。前記駆動ギヤ47は、前記導出孔46の内側側壁に円周方向に沿って形成されている。
【0052】
装着補助部材36は、前記固定部34を皮膚の測定部位に装着保持させるもので、該固定部34を中心として上下左右方向にそれぞれ延在して設けられた十字形状とされている。かかる装着補助部材36は、測定部位周辺の皮膚に密着して前記プローブ33を皮膚表面31に対して垂直に保つフレキシブルな装着部材として形成されている。装着補助部材36は、例えば柔軟性に富んだポリウレタンやシリコンゴム等の素材で形成されており、前記固定部34に接着剤で取り付けられている。
【0053】
固定部34を中心として上下左右方向にそれぞれ延在する装着補助部材36は、その柔軟な特性により、何れも曲面を有する柔軟組織である生体部位に密着する。例えば、図3に示す腕48のうち斜線で示す部位Sに固定部34を装着保持する場合、4方向に延びる装着補助部材36がそれぞれ腕を肘から手首に延びる方向Aと、これと直交する方向である腕48に巻き付く方向Bにそれぞれ装着される。4方向にそれぞれの装着補助部材36が腕48に装着されることで、体動による影響を固定部34に伝え難くなる。
【0054】
十字形状とされた装着補助部材36のうち、固定部34が装着される中央部分には、プローブ33の先端部を皮膚表面31に接触させるための開口孔48が形成されている。また、この装着補助部材36には、皮膚表面31と対向する面に両面テープ49が取り付けられている。両面テープ49は、装着補助部材36とほぼ同一の大きさとされた十字形状とされている。両面テープ49の一方の粘着面は、装着補助部材36に接着され、他方の粘着面は、皮膚表面31に接着される。この両面テープ49には、前記開口孔48と対向する部位にプローブ33の先端部を臨ませる孔部50が形成されている。
【0055】
そして、この皮膚組織測定用プローブ30には、皮膚表面31に対する光ファイババンドル32の先端部位置を示す表示手段が設けられている。表示手段は、皮膚表面31とプローブ33の先端が同一平面位置にあることを示す第1表示部51と、プローブ33が前記同一平面位置から上方の測定位置にあることを示す第2表示部52と、を有している。これら第1表示部51及び第2表示部52は、何れも回転操作部材43に設けられている。
【0056】
第1表示部51は、回転操作部材43の天面43aに、該回転操作部材43の中心から外側へ径方向に向かって一本の太線として印刷されている。第2表示部52は、同じく回転操作部材43の天面43aに、該回転操作部材43の中心から外側へ径方向に向かって二本の細線として印刷されている。なお、第1表示部51を一本の太線とし、第2表示部52を二本の細線としたが、両方の表示部51、52が区別できれば、線種はこの実施形態に限定されない。
【0057】
また、この皮膚組織測定用プローブ30には、第1表示部51及び第2表示部52の位置合わせのための指標53が設けられている。前記指標53は、光ファイババンドル32が延在する方向(引き出される方向)とは反対側の装着補助部材36の表面36aに、中央に太線、その両側に配置した細線として印刷されている。この指標53は、固定部34の近傍部に設けられ、第1表示部51及び第2表示部52と合致した時にそれらが一直線となる。
【0058】
本実施形態の皮膚組織測定用プローブ30にて生体の血糖値を測定するには、図3で示した腕48の斜線で示す部位Sに、肘から手首に向かう方向Aに沿って光ファイババンドル32を配策するようにしてこの方向Aと平行な2つの装着補助部材36を両面テープ49にて皮膚表面31に貼り付ける。その後、残りの2つの装着補助部材36を腕48に巻き付けるようにして両面テープ49で皮膚表面31に貼り付ける。なお、光ファイババンドル32は、プローブ33が取り付けられる位置から上方へ逆U字形状をなすように屈曲(湾曲)される。
【0059】
次に、回転操作部材43を回転操作してねじ部41を反時計回り方向に回転させる。回転操作部材43を時計回り方向へ回転操作すると、該回転操作部材43の内側側壁に形成された駆動ギヤ47と前記ねじ部41の頭部に設けられたギヤ部42が噛み合って、前記ねじ部41が反時計回り方向に回転する。
【0060】
すると、プローブ駆動用昇降部材37に固定されたプローブ33が上方位置から皮膚表面31へと下降する。回転操作部材43の回転操作は、図2に示すように、前記指標53に前記第1表示部51が合致する位置まで行う。前記指標53に第1表示部51が合致すると、プローブ33の先端位置が皮膚表面31と同一平面位置となるため、該プローブ33の先端が皮膚表面31に軽く接触する。また、指標53に第1表示部51が合致した状態では、ねじ部41が締め切り位置にあるため、プローブ33が皮膚に対して必要以上に押し込まれることはなく、皮膚表面31にプローブ33が軽く接触した状態を維持する。
【0061】
その後、回転操作部材43を先の回転方向とは反対の反時計回り方向へ回転操作する。すると、今度は、ねじ部41が時計回り方向に回転して、プローブ33を皮膚表面31から上昇させる。回転操作部材43の回転操作は、前記指標53に前記第2表示部52が合致する位置まで行う。前記指標53に第2表示部52が合致すると、プローブ33の先端位置が皮膚表面31から上方の測定位置に設けられる。この測定位置は、プローブ33の先端と皮膚表面31が同一となる同一平面位置から上方に500μm以内の位置、好ましくは100μmの位置である。前記測定位置に配置されたプローブ33は、前記ギヤ部42と駆動ギヤ47との噛み合いによるため、位置ずれを起こすことはない。
【0062】
そして、測定位置に保持させたプローブ33の発光部から近赤外光を皮膚表面31に対して垂直に照射し、皮膚組織内を拡散反射した光りを受光部で受光する近赤外スペクトル測定を行う。これにより、近赤外スペクトル測定で得られたスペクトル信号から血糖値を推定することができる。
【0063】
本実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、ねじ部41を直接回すよりもこのねじ部41よりも大きな回転操作部材43を回転させ、その回転力をねじ部41に設けたギア部42を介して該ねじ部41を回転させることで、小さな力で光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33を数μm単位で精度良く昇降動させることができる。皮膚に対するダメージを小さくするには、プローブ33を小さく且つ軽くする必要があるため、該プローブ33を皮膚に対して接近離反する駆動機構部35もこれに応じて小さくする必要がある。しかし、駆動機構部35が小さくなるとその操作性が悪くなり、前記プローブ33の皮膚に対する相対位置の精度が悪くなる。これに対して、本実施形態によれば、プローブ33を小さく且つ軽くしても、前記プローブ33と皮膚との相対位置を精密に調整することができるため、測定精度を高めることができる。従って、プローブ33の皮膚表面31に対する相対位置を高精度なものとできることから、推定精度や信頼性の高い血糖値測定が可能となる。
【0064】
また、本実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、皮膚表面31に対するプローブ33の先端部位置を示す表示手段を有しているので、この表示手段を確認することで、前記プローブ33の皮膚に対する相対位置設定を簡単に行うことができる。この表示手段を、皮膚表面31とプローブ33の先端部が同一平面位置にあることを示す第1表示部51と、プローブ33の先端部が前記同一平面位置から上方の測定位置であることを示す第2表示部52とで構成しているので、第1表示部51を確認することでプローブ33の先端部を皮膚に対して必要以上に強く接触させることを防止できる。また、第2表示部52を確認することで、前記プローブ33を測定位置に容易に配置させることができる。
【0065】
また、本実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、回転操作部材43に設けた第1及び第2表示部51、52を装着補助部材36に設けた指標53に合わせるだけで、誰にでも簡単にプローブ33と皮膚との相対位置を精度良く設定することができる。
【0066】
また、本実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、ねじ部41の締め切り位置を皮膚表面31とプローブ33の先端部が同一平面位置となるようにしているので、ねじ部41を回して締め切った場合でもプローブ33の先端部が皮膚表面31と同一平面位置になり、該プローブ33が皮膚を必要以上に押し付けることを防止することができる。
【0067】
また、本実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、フレキシブルな装着部材である装着補助部材36によって、曲面を有する柔軟組織である生体部位であっても固定部34の皮膚に対する接触状態を安定させ、この接触状態の変化による皮膚組織の光学特性値変化を起こし難くすることができる。特に、皮膚組織測定用プローブ30を四肢や腹部等の皮膚表面部位に装着する場合は、体動により皮膚とプローブ33の接触面が大きく変形するような状態でも、柔軟な装着補助部材36が変形を吸収し、固定部33への影響を小さくする。その結果、プローブ33への影響を最小化することができ、近赤外スペクトルから推定する血糖値の予測誤差を小さくすることができる。
【0068】
[第2実施形態]
図4は第2実施形態の皮膚組織測定用プローブを示し、(A)はその平面図、(B)はその断面図である。第2実施形態では、第1実施形態の皮膚組織測定用プローブ30と異なる点に関してのみ説明するものとし、第1実施形態と同一構成部分については同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0069】
第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30では、光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33と皮膚との接触状態を、後述する両電極間を流れる電流の通電状態で検知する検知手段を備えた構造である。具体的には、装着補助部材36の前記皮膚との接触面側に一方の電極55を設け、光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33を他方の電極とし、これら両電極間の通電状態を検知して前記プローブ33と皮膚との接触を検知する。
【0070】
一方の電極55は、十字形状とした装着補助部材36のうち何れかの方向に延在する装着補助部材36、例えば光ファイババンドル32の引き出し方向とは反対側の装着補助部材36に設けている。かかる電極55は、前記装着補助部材36の皮膚との接触面側に埋め込まれるようにして取り付けられている。そして、この電極55の先端面55aは、これに対応する部位がくり抜かれた両面テープ49の開口孔56に露出し、該両面テープ49の装着面49aと面一とされている。
【0071】
一方の前記電極55には、外部端子57が取り付けられている。この外部端子57は、装着補助部材36を貫通して両面テープ49が取り付けられる側とは反対側の面36aに突出している。
【0072】
他方の電極は、例えばプローブ33の外周部分をステンレス製の円筒部材で被覆することにより形成される。ステンレスは、導電性金属からなるため、前記プローブ33の外周部分に取り付けられることで電極として機能する。
【0073】
また、第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30では、回転操作部材43の天面43aに、円周方向に沿って30度毎に12個の太線を印刷した表示部61を設けている。この表示部61は、第1実施形態の第1表示部51及び第2表示部52とは異なり、回転操作部材43を回転操作させる際の目盛りとして使用される。
【0074】
また、第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30では、先端部から後方に屈曲する光ファイババンドル32の屈曲終端部を、固定手段で装着補助部材36に固定した構造としている。プローブ33付近では、受発光ファイバを可能な限り曲げないように皮膚表面31に対して垂直方向に光ファイババンドル32を長く伸ばす傾向がある。しかし、光ファイババンドル32を長くし過ぎると装置自体の取り扱いが悪くなる。そのため、先端部であるプローブ33から後方上方へと逆U字形状をなすように屈曲部分32Aを形成し、その屈曲部分32Aの屈曲終端部を固定手段63で装着補助部材36に固定する。
【0075】
固定手段63は、光ファイババンドル32の屈曲部分32Aの屈曲終端部に取り付けられる第1固定部材である雄部材58と、この雄部材58と結合して光ファイババンドル32を装着補助部材36に固定する第2固定部材である雌部材59とからなる。これら雄部材58と雌部材59からなる固定手段63は、例えば着脱自在なスナップボタン構造であり、測定時に光ファイババンドル32を装着補助部材36に固定する際に使用される。雄部材58には、光ファイババンドル32を挿入保持させる孔部60が形成されている。
【0076】
前記固定手段63が設けられる位置は、光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33が設けられる位置から距離L=50mm以内の位置とされる。この位置には、装着補助部材36に固定される雌部材59が設けられる。
【0077】
前記プローブ33と前記皮膚との接触を前記検知手段で検知するには、一方の電極55と他方の電極であるプローブ33間に、微弱で一定の交流電流を流す。すると、皮膚表面31に接触する一方の電極55及びプローブ33間には、皮膚を介して電流が流れる。この両電極間に流れた微弱電流を電流計等の検知装置で検知する。電流計の針が振れた場合は、プローブ33が皮膚表面31に接触したと判断される。電流計の針が振れなかった場合は、プローブ33が皮膚表面31と非接触状態であると判断される。交流電源部としては、例えば数十kHz〜数百kHz程度の微弱電流を通電するものを使用する。
【0078】
なお、通電確認のための交流電源部と検知装置は、血糖値測定前の初期設定作業で使用し、血糖値測定の際には外される。
【0079】
このように構成された皮膚組織測定用プローブ30で血糖値を測定するには、第1実施形態と同様に、回転操作部材43を回転操作してプローブ33を皮膚上方から徐々に下げて行く。前記プローブ33の先端が皮膚表面31に接触すると、皮膚を介して両電極間に電流が流れ、電流計の針が振れる。この針が振れたときの回転操作部材43の位置を、前記指標53に対する前記表示部61との位置関係として覚えておく。そして、電流計の針が振れた状態から回転操作部材43を回転操作して、およそ250μm程度プローブ33を更に下降させる。これで、プローブ33が皮膚に対して充分に接触されることになる。
【0080】
次に、前記指標53と前記表示部61との位置関係から電流計の針が振れた位置まで前記回転操作部材43を戻す。この回転操作部材43を戻した位置を、プローブ33の測定位置とする。そして、測定位置に保持させたプローブ33の発光部から近赤外光を皮膚表面31に対して垂直に照射し、皮膚組織内を拡散反射した光りを受光部で受光する近赤外スペクトル測定を行う。これにより、近赤外スペクトル測定で得られたスペクトル信号から血糖値を推定することができる。
【0081】
第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33と皮膚との接触状態を、両電極間の通電状態を検知して電気的に検知するようにしたので、前記プローブ33の先端部と皮膚との接触状態を安定化させることができる。これにより、プローブ33と皮膚との不適切な設定がなくなり、近赤外スペクトルから推定する血糖値の予測誤差を小さくすることができる。
【0082】
また、第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、一方の電極55を装着補助部材36に設けたので、別途電極を生体に貼る必要がなく、装着する際の操作を容易にすることができ、血糖値測定までの準備時間を短縮することができる。
【0083】
第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、固定手段63で先端部から後方に屈曲する光ファイババンドル32の屈曲終端部を固定するため、体動等により光ファイババンドル32にかかる力が前記固定手段63で遮断され、該光ファイババンドル32の先端部に伝達し難くなる。そのため、光ファイババンドル32の先端部であるプローブ33と皮膚表面31との相対位置を安定化させることができる。
【0084】
また、第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、固定手段63を着脱自在としたので、光ファイババンドル32の取り扱いが容易になると共に、装着補助部材36を消毒洗浄する作業が容易になる。
【0085】
[第3実施形態]
図5は第3実施形態の皮膚組織測定用プローブの平面図である。第3実施形態では、第2実施形態の皮膚組織測定用プローブ30と異なる点に関してのみ説明するものとし、第2実施形態と同一構成部分については同一の符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0086】
第2実施形態では、一方の電極55と他方の電極であるプローブ33間に流れた電流を検知する手段として電流計等の検知装置を用いたが、第3実施形態では、両電極間の通電状態を点灯させて検知する表示手段62を使用した構造としている。具体的には、何れかの装着補助部材36にLED等の光源を表示手段62として設けている。なお、両電極間に通電する電流は、第2実施形態で使用した交流電流ではなく直流電流とする。
【0087】
前記表示手段62は、電極55と固定手段63が設けられた装着補助部材36以外の何れか一方の装着補助部材36に設けられ、その上面36aに表示部が露出する。この表示手段62が点灯した場合は、プローブ33が皮膚表面31に接触したと判断される。表示手段62が点灯しなかった場合は、プローブ33が皮膚表面31と非接触状態であると判断される。
【0088】
第3実施形態の皮膚組織測定用プローブ30によれば、両電極間に電流が流れた時に点灯する表示手段62を設けたので、この表示手段62の点灯状態を確認するだけで簡単にプローブ33と皮膚との接触状態を検知することができる。また、本実施形態によれば、両電極間の通電状態を確認するには、電源を端子57とプローブ33に接続するだけで良い。そのため、皮膚組織測定用プローブ30を皮膚に装着する際の操作を容易にすることができ、血糖値測定までの準備時間を短縮することができる。
【符号の説明】
【0089】
30…皮膚組織測定用プローブ
31…皮膚表面
32…光ファイババンドル
33…プローブ(光ファイババンドルの先端部、他方の電極)
34…固定部
35…駆動機構部
36…装着補助部材
37…プローブ駆動用昇降部材(駆動機構部)
41…ねじ部(駆動機構部)
42…ギヤ部
43…回転操作部材(駆動機構部)
47…駆動ギヤ
48…腕(生体部位)
51…第1表示部(表示手段)
52…第2表示部(表示手段)
53…指標
55…電極(一方の電極)
57…外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚表面に光ファイババンドルの先端部を固定し、該先端部から近赤外光を該皮膚に照射することで皮膚組織の光学的信号を測定する皮膚組織測定用プローブであって、
前記皮膚表面に対して受発光ファイバを垂直に接触させる前記光ファイババンドルの先端部と、
前記先端部の周囲に配置される固定部と、
前記光ファイババンドルの先端部を皮膚に対して接近離反する方向へ駆動させる駆動機構部とを備え、
前記駆動機構部は、前記固定部に形成された穴部に収納されて上下動自在とされ且つ前記光ファイババンドルの先端部を保持固定する昇降部材と、該昇降部材に螺合して取り付けられるねじ部と、該ねじ部に設けられたギア部と、前記固定部の上部に回転自在に設けられ、前記ギア部と噛み合って前記ねじ部を回転させることにより前記昇降部材を昇降動させて前記先端部を皮膚に対して接近離反する方向へ駆動させる回転操作部材とからなる
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。
【請求項2】
請求項1に記載の皮膚組織測定用プローブであって、
前記皮膚表面に対する前記光ファイババンドルの先端部位置を示す表示手段を有した
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。
【請求項3】
請求項2に記載の皮膚組織測定用プローブであって、
前記表示手段は、前記皮膚表面と前記光ファイババンドルの先端部が同一平面位置にあることを示す第1表示部と、前記先端部が前記同一平面位置から上方の測定位置にあることを示す第2表示部とを有した
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。
【請求項4】
請求項3に記載の皮膚組織測定用プローブであって、
前記ねじ部の締め切り位置は、前記皮膚表面と前記光ファイババンドルの先端部が同一平面位置となる
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の皮膚組織測定用プローブであって、
前記固定部を前記皮膚の測定部位に装着保持する装着補助部材を備え、該装着補助部材を、フレキシブルな装着部材とした
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。
【請求項6】
請求項5に記載の皮膚組織測定用プローブであって、
前記第1表示部及び前記第2表示部を前記回転操作部材に設けると共に、前記第1表示部及び前記第2表示部の位置合わせのための指標を、前記装着補助部材に設けた
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。
【請求項7】
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の皮膚組織測定用プローブであって、
前記装着補助部材の前記皮膚との接触面側に一方の電極を設け、前記光ファイババンドルの先端部を導電性部材として該先端部を他方の電極とし、これら両電極間の通電状態を検知して前記光ファイババンドルの先端部と前記皮膚との接触を検知する検知手段を備えた
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。
【請求項8】
請求項7に記載の皮膚組織測定用プローブであって、
前記両電極間に電流が流れた時に点灯する表示手段を有した
ことを特徴とする皮膚組織測定用プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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