説明

皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定方法

【課題】皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定する方法及び皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する装置及びプログラムを提供し、皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定を誰にでも簡便に客観的かつ定量的に行えるようにする。
【解決手段】皮膚表面の立体形状の目視評価値と肌の画像の表色系信号の分布のフラクタル次元との相関関係を利用して、皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定する技術に関し、さらに詳しくは、肌の性状値のフラクタル次元を指標として、皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
第三者によって、美しい肌であると認識されることは、女性のみならず多くの人の大きな願いの一つである。このため、美しい肌に見せるための化粧料や美容法の研究開発が盛んに行われている。しかしながら、肌の状態は個人によって大きく異なり、さらに加齢や生活環境によっても変化するものであるため、化粧料の種類や化粧の方法、肌の手入れ法などを適切に選択するためには、対象となる肌が第三者にどのように見えるのかを客観的に判断することが必要である。例えば、デパートの化粧品売り場や、薬局、化粧品店の店頭においては、被験者のしわの状態やなめらかさを評価する簡便な方法が求められている。
【0003】
視覚的な肌の美しさを構成する要素についてはさまざまな研究がなされ、皮膚表面のしわの大きさや数、その他毛穴などの凹凸感は、肌の美しさに大きく影響を与えることが知られている。従来、皮膚表面の形状の評価は、皮膚画像を直接観察することなどにより行われていたが、近年では、皮膚表面やそのレプリカを適当な光電変換手段で撮像して得られた画像情報をプログラムにより処理し、皮膚表面形状や光学的性質を定量的に評価する方法が報告されている。
例えば、皮膚のレプリカを複数の光源により照明し、皮溝のパターンを抽出することにより、皮溝間隔や皮溝方向を解析する装置(特許文献1)や皮膚表面画像の輝度を多段階のデジタル信号値に変換し、これを統計処理することにより皮膚表面形状を測定する方法(特許文献2)が報告されている。しかしながら、第三者に皮膚の立体形状がどのように視認されるかを推定するためには、個々の測定データを元に肌の評価の専門家が、専門知識に基づいて測定結果を分析したり、一対比較などにより、視覚的に官能評価を行い、その都度統計処理行うことが必要であるなどの問題があった。すなわち従来の方法では、皮膚表面の立体形状を的確かつ簡便に評価することは困難であった。
【0004】
このような技術背景において、皮膚の写真やレプリカから得られる肌の特定の性状値を測定、加工することにより、この数値と皮膚のしわの状態との視覚評価との相関関係を見出し、肌のしわの見え方を評価しようとする試みがなされている。例えば、皮膚表面等に各方位から光を照射して輝度信号を得た後、これを統計演算処理することにより、皮膚表面形態特徴を表す特性値を得る方法が報告され、この特性値と肌表面の視感評価値との間に相関関係があることが報告されている(特許文献3)。また、皮膚表面の微細明暗分布が強調された二次元サンプル画像を処理して明暗ピークデータを得て、明暗ピーク粗さなどの特性値を算出する皮膚表面解析システムが報告され、明暗ピーク粗さとキメの見えの粗さのスコアとの間に相関関係があることが報告されている(特許文献4)。
【0005】
このような技術においては、特定の性状値としわとの関連も一部で認められているが、これらの性状値を得るためには、なお複数の光を段階的に照射するなどの工程が必要であり、簡易な方法とはいえない部分もあった。一方、皮膚表面の立体形状の目視評価値と相関関係を有する肌の性状を示す数値がいかなるものなのかということについての研究及び解明は未だ十分ではなく、皮膚表面の立体形状を評価する指標としてさらに高い利用価値がある数値が模索されていた。
【0006】
一方、フラクタルという概念は、数学分野の研究において創造された自己相似的な図形に用いられる幾何学的概念である。また、自然界には、フラクタルな形状を有しているものが数多く存在していることが知られている。フラクタルな性質の形状を表現する1つの手段として、フラクタル次元を求めることが知られている。近年では、フラクタル次元を算出することにより、生体における特定の状態を判断する方法が報告されている。例えば、被験者の特性不安レベルの生体信号をフラクタル解析し、統計的データとの相関から不安レベルを評価する方法や(特許文献5)、組織からの反射超音波パルス信号をフラクタル解析して、組織の状態を調査する方法(特許文献6)、フラクタル解析を利用した悪性細胞の自動検出システム(特許文献7)が開示されている。
【0007】
また、メラニン等の色素分布と肌の画像を構成する画素の輝度のフラクタル次元の相関関係から、肌のメラニン色素分布を評価する方法が開示されている(特許文献8)。また、肌の性状値のフラクタル次元を指標とすれば、肌年齢の推定等が行える可能性があることが報告されている(非特許文献1)。しかしながら、フラクタル次元の具体的な利用方法については明らかにされておらず、フラクタル次元と肌年齢の関係やフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値等との関係は見出されていない。
【0008】
【特許文献1】特開昭61−64232号公報
【特許文献2】特開平2−46833号公報
【特許文献3】特開平5−329133号公報
【特許文献4】特開平6−189942号公報
【特許文献5】特開2001−299702号公報
【特許文献6】特表平11−507846号公報
【特許文献7】特表2001−512824号公報
【特許文献8】特開2000−135207号公報
【非特許文献1】「肌画像の特徴量を利用した肌年齢推定方式と肌老化予防への対応応用」(春日 正男、首都圏北部四大学発 新技術説明会 平成17年12月2日 説明資料)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定する方法及び皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する装置及びプログラムを提供し、皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定を誰にでも簡便に客観的かつ定量的に行えるようにすることを課題とする。また、本発明はさらに第三者による皮膚表面の立体形状の目視評価値と関係する肌の性状値及びその加工手段を見出し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を精度よく得る方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、肌の美しさについて研究を重ねてきた結果、皮膚表面の立体形状の目視評価値と種々の肌の性状値のフラクタル次元との間に因果関係を見出した。そして、この関係を利用して、被験者のフラクタル次元から皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定すれば、実際の第三者による皮膚表面の立体形状の目視評価値と極めて近い結果を得ることができることを知見し発明を完成させた。
すなわち本発明は、以下の通りである。
【0011】
(1) 肌の2値画像を得る工程と、
該2値画像のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価
値を算出する工程と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定方法。
(2) 前記2値画像が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値の2値化処理により得られることを特徴とする、(1)に記載の方法。
(3) 前記フラクタル次元が、相関次元法により算出されることを特徴とする、(1)又は(2)に記載の方法。
(4) 肌の起伏値を取得する工程と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した肌の起伏値の分布のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を得る工程と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定方法。
(5) 前記フラクタル次元が、ボックスカウンティング法により算出されることを特徴とする、(4)に記載の方法。
(6) 前記ボックスカウンティング法において、ボックスサイズの決定がボックス内の性状値の標準偏差に基づいて行われることを特徴とする、(5)に記載の方法。
(7) 肌の2値画像を得る手段と、
該2値画像のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定装置。
(8) 肌の起伏値を取得する手段と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した肌の起伏値の分布のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定装置。
(9) コンピュータを、
肌の2値画像のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段、
として機能させるための皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定プログラム。
(10) コンピュータを、
肌の起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した肌の起伏値の分布のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段、
として機能させるための皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定プログラム。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法及び装置を用いることにより、種々の肌の性状値を用いて、手軽に、客観的かつ定量的に、しわ等の皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明において皮膚表面の立体形状の目視評価値とは、人が肌を視認した場合に、皮膚表面の立体形状がどの程度良好に見えるかを表す統計的な評価であり、具体的には、例え
ば、ある肌と別の肌とを見比べた場合に、どちらが皮膚表面の立体形状が良好に見えるかの判定を繰り返して得られる統計的な評価である。ここで、皮膚表面の立体形状とは、視覚的に認識できる範囲での、皮溝・皮丘構造、並びに毛穴、ニキビや吹き出物及びこれらの跡の少なくとも1つにより形成される皮膚表面の凹凸感をいう。皮溝・皮丘構造には、皮溝の深さが他の皮溝に比して深くなった「しわ」が含まれる(薬事日報社、化粧品の有用性、2001、p.162−177参照)。なお、本発明における目視評価値は、目から入力された情報を人間の精神活動により加工、処理して得られるような主観的な評価値は含まない。
【0014】
本発明において、皮膚表面の立体形状の目視評価値を得るためには、肌の2値画像、及び肌の起伏値から選ばれる少なくとも1つの性状値を得る必要がある。
【0015】
肌の2値画像を得るためには、まず、肌の表面について、表色系の画像信号を取得する。
表色系の画像信号とは、例えば、RGB値、YUV値、マンセル(HVC)値、L***値、L***値、Lab値、Yxy値が挙げられる。この中でも、特にRGB値、YUV値、マンセル(HVC)値を用いることが好ましい。RGB値とは、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の光の3原色の組合せにより、色を表現するものであり、例えば各々256階調で表す場合には、約1677万色の色調表現が可能である。YUV値とは、輝度(Y)、色差(U=青色−Y)、色差(V=赤色−Y)の組合せで色を表現するものである。マンセル(HVC)値は色相、明度、彩度の3成分で色を表現するJIS表色系である。このような表色系の画像信号を構成する少なくとも1つの成分を性状値としてもよいし、複数の成分を性状値としてもよい。
【0016】
肌の表面について、表色系の画像信号を取得する得るためには、まず、被験者の肌の表面を撮像する。撮像する肌の部位は皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定したい部分であれば特に制限されず、頬などの顔面皮膚、上腕内側部などが挙げられる。例えば、推定値をファンデーションやチークなどの化粧料の選択において利用する場合などには、頬を撮像することが好ましい。また、通常は、被験者の肌を代表する領域を選択し、傷やシミが多い部位は避けることが好ましい。
また、画像を取得する範囲も解析に必要な情報を得られる範囲であれば特に制限されるものではないが、肌表面において1cm*1cm〜3cm*3cmの範囲が好ましい。
【0017】
肌の画像の少なくとも1つの表色系の画像信号を取得する手段は、特に制限されない。例えば、カラーデジタル式マイクロスコープ、カラーデジタルカメラ、カラービデオカメラ、スキャナー等の機器を用いて行うことができる。このような機器は市販のものであってもよいし、製造したものであってもよい。市販品としては、例えば、株式会社モリテックス製のi−scope及びCCDマイクロスコープ、有限会社フォルテシモのUSBビデオマイクロスコープ、又は株式会社キーエンスのデジタルマイクロスコープ等が好ましく例示できる。
撮像倍率は撮像に用いる機器等によって適した倍率とすればよい。例えば、マクロレンズ装着デジタルカメラを用いる場合は、等倍で、対象から約20cmの距離で近接撮影画像を取得することが好ましく、ビデオマイクロスコープ(例えばモリテックスi‐scope)を用いる場合には、肌を30〜50倍程度に拡大し、撮像することが好ましい。このようにして、画像を取得する場合の情報量は、2cm*2cmの範囲に換算した場合に、300*300画素(ドット、ピクセル)以上であればよいが、好ましくは500*500画素以上、さらに好ましくは700*700画素以上がよい。
【0018】
また、特定の画像信号は、常法に従って他の任意の画像信号に変換することができる。例えば、YUV値、L***値、L***値、Lab値、Yxy値は、RGB値から変
換式を用いて変換することができる。また、マンセル(HVC)値への変換は変換表を用いることができる。例えば、RGB値からYUV値へ変換する場合には、市販のソフトウェアなどを用いてRGB値のγ補正を行った後、下記式(A)を用いてYUV値に変換することができる。
【0019】
【数1】

【0020】
このようにして取得した表色系の画像信号は、コンピュータに転送した後にメディアンフィルターによるノイズ除去処理や、平滑化フィルターによる平滑化処理、鏡面反射光を除去するための低周波カットフィルター処理などの前処理を行うことが好ましい。特に平滑化処理をすることが好ましい。平滑化処理をすることにより、画素ごとの性状値の大きなばらつきを補正することができ、より高い精度でフラクタル次元を算出することができる。この場合のマスクサイズは、
【0021】
必要に応じて前処理した表色系の画像信号のそれぞれの成分を2値化する。2値化する際の閾値は、画像のヒストグラムを用いて決定することができる。このような方法としては、「大津の方法」(電子通信学会論文誌 '80/4 Vol. J63-D No.4参照)を挙げることができる。
次に、表色系の画像信号のそれぞれのビットプレーンごとに、画像信号のそれぞれの成分の論理積(AND)を求め、肌の2値画像を得る。
【0022】
皮膚の立体形状の中でも、皮溝・皮丘構造、特にしわについて目視評価値を推定したい場合には、論理積を求めて得た肌の2値画像について、8近傍処理により細線化処理を行うことが好ましい(図7参照)。このような細線化処理によって、毛穴、にきびなどの比較的大きな凹凸構造に起因する色味や産毛、シミ、光の反射の影響などのノイズを除去し、皮溝・皮丘構造のみを確実に抽出することができる。
【0023】
上記した表色系の画像信号の取得、平滑化処理などの前処理、画像信号の2値化、論理積処理、細線化処理は、市販の画像解析ソフトウェアを用いて行うことができる。例えば、三谷商事株式会社のWinROOF(登録商標)、アドビシステムズ社のAdobePhotoshop(登録商標)、及びナノシステム株式会社のNanoHunter NS2K−Pro(登録商標)等が例示できる。なお、平滑化処理用のソフトウェアは、インターネット上にも公開されているため、これを用いることもできる。
【0024】
このようにして得た肌の2値画像について、フラクタル次元を算出する。
取得した肌の2値画像からフラクタル次元を算出する方法としてはボックスカウンティング法(box‐counting)、相関次元法、fractional Brownian motion model法などが挙げられる。この中でも、相関次元法を用いることが好ましい。フラクタル次元を算出する方法は、後述する。
【0025】
起伏値とは、ある対象の表面を覆う点が、基準面からどれぐらいの高さであるかを示す数値である。
肌の起伏値は、肌の表面から直接得ることもできるし、肌の表面のレプリカを取得し、レプリカの表面形状を測定して得ることもできる。正確な起伏値を得る観点からは、レプ
リカを用いることが好ましい。
【0026】
レプリカを取得する肌の部位は、皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定したい部分であれば特に制限されず、頬などの顔面皮膚、上腕内側部などが挙げられる。評価値を化粧料の選択などに利用する場合には、頬のレプリカを取得することが好ましい。たとえば、頬部の2cm*2cmの測定領域を設定し、これを含む部分のレプリカを取得すればよい。レプリカ剤は、特に制限されないが、例えば、有限会社アサヒバイオメッドのシリコンASB−01−WW等が例示できる。レプリカを採取する方法は、肌の形状などを診断するのに用いられる常法により行うことができる。例えば、洗顔後20℃、50%湿度下で20分程度おいた肌にレプリカ剤を適用し、これを採取すればよい。
【0027】
次にこのようにして作製したレプリカの起伏値を測定する。起伏値の測定方法は特に制限されず、通常の方法を用いることができる。例えば、「シワ評価法ガイダンス」、日本香粧品科学会誌 別冊 Vol. 28, No.2 (2004)を参照することができる。
具体的には、例えば、市販のレーザータイプの3次元表面粗さ計を利用して、図5に示すような顔の部分に対して水平方向(x)及び垂直方向(y)にレーザースキャンを行って測定することができる。このような3次元粗さ計として、例えば、株式会社サイエンスシステムズ社の高精度3次元画像処理装置LIP(例えばLIP−50)、株式会社東京精密のSURFCOM、レーザーテック株式会社のVLH、PRIMOS(GFM社製)、derma-TOP-blue(Breuckmann社製)等が挙げられる。
これらの機器を用いて起伏値を測定する際のスキャンの間隔は、フラクタル次元を算出するのに十分なデータが得られる範囲であれば特に制限されないが、10μm以下の間隔で行うことが好ましい。
例えば、LIP−50を用いてスキャンする場合には、X*Yが1cm*1cmのレプリカ領域に対して、X又はY方向について10μm間隔で1000本の走査を行うことができる。
【0028】
起伏値を得る際に、x方向とy方向のサンプリング周期が異なる場合には、Sinc関数を用いてサンプリング周期を補正することが好ましい(図8参照)。
【0029】
また、光投射装置などを用いて斜光照明をレプリカに照射し、レプリカ凸部の影部分を抽出し、その面積・幅等から肌の凹部の深さ、面積率等を計測する方法によって、起伏値を得ることもできる。このような斜光照明の照射による起伏値の取得は、簡便である点で好ましい。この方法による起伏値の取得は、例えば反射用3Dレプリカ解析システム(アサヒバイオメッド)等を用いて行うことができる。
【0030】
また、半透明レプリカに光を照射し、透過した光量からレプリカの厚さを求め、レプリカの起伏値を得ることもできる(半透明レプリカ光透過法)。この方法による起伏値の取得は、例えば、3D皮膚解析システムASA−03(アサヒバイオメッド)等を用いて行うことができる。
【0031】
また、肌の表面から直接起伏値を得る方法として、例えば、格子状の光を肌に当てその光の屈折率を起伏値に換算する方法が挙げられ、市販されている機器などを用いることができる。このような機器としては、PRIMOS(GFM社製)、derma-TOP-blue(Breuckmann社製)などが挙げられる。
【0032】
このようにして取得した肌の起伏値について、フラクタル解析を行い、肌の起伏値の測定領域上の分布、すなわち、その肌の表面の形状のフラクタル次元を算出する。
【0033】
取得した起伏値からフラクタル次元を算出する方法としてはボックスカウンティング法
(box‐counting)、相関次元法、fractional Brownian
motion model法などが挙げられる。この中でも、ボックスカウンティング法を用いることが好ましい。
【0034】
以下、フラクタル次元を算出する方法について詳述する。
相関次元法とは、式(1)により定義される相関積分C(r)が、式(B)とスケーリングされるとき、logC(r)対log(r)のグラフの傾きを相関次元(フラクタル次元)Dとする方法である。
【0035】
【数2】

【0036】
【数3】

【0037】
ボックスカウンティング法とは、対象を完全に覆う正方形(立方体)を任意の大きさの正方形(立方体)で分割し、その正方形(立方体)の大きさとその対象の一部を覆う分割正方形(立方体)の数との関係から、フラクタル次元を求める方法である。
ある形状が具体的には、対象を完全に覆う正方形(立方体)を一辺の長さhで分割した場合の対象の一部を覆う正方形(立方体)の数をN(h)とした場合に、rとN(h)の間に、
N(h)=c・h-D(cは定係数) ・・・(2)
という近似式がよい相関で成り立つ場合に、その対象はフラクタルな形状であるといえ、このとき、式(2)におけるDがフラクタル次元となる。
従って、ボックスカウンティング法により、フラクタル次元Dを求めるためには、c・hとN(h)を対数プロットし、得られた直線の傾きを求めればよい。
【0038】
このようなボックスカウンティング法は、非常に簡便であり、計算機での高速処理が可能であるが、対象のフラクタル次元が半整数値から遠いほど、その解析精度が低下する。そこで、一般的なボックスカウンティング法のように単に対象の一部がボックス内に入るか否かを判定するのではなく、ボックス内のデータの標準偏差に基づいて有効的なボックスサイズを決定し、対象の一部がボックス内に入るか否かを判定する工程を含む方法を用いることが好ましい。
【0039】
このようなフラクタル次元の算出は、具体的に以下のような方法で行うことができる。
(1)まず図1に示すように、サイズX×Yに存在する2次元離散データf(x,y)をサイズh×h(m個)の領域Si(x,y)に分割する。画像信号を用いる場合には、X×Yに存在する離散データは画素であり、起伏値を用いる場合には基準面からの高さのデータである。hは、任意に決定することができる。
【0040】
(2)領域S1〜Smのそれぞれについて、性状値の標準偏差σ1〜σmを以下の式(3)により求める(図2参照)。
【0041】
【数4】

【0042】
(3)サイズhでのN(h)を以下の式(4)により計算する。
【0043】
【数5】

【0044】
このようにしてN(h)を計算することにより、h×hの領域Siにおける標準偏差を有効的なボックスの高さとしてボックスの個数をカウントすることができるため、データ計測のノイズ等の突発的なノイズの影響を抑制することが可能となる。また、フラクタル次元の推定に不可欠である、1〜2桁近くの広いスケーリング範囲が得られる。
【0045】
(4)サイズhを大きくしてf(x,y)を再分割し、(1)〜(3)の手順を用いて同様にN(h)を計算する。
(5)h=X、又はh=Yとなるまで(4)を繰り返し、N(h)を計算する。
(6)logN(h)とloghの関係を表すグラフの傾きからフラクタル次元Dを求める(図3参照)。
【0046】
このようにして求めた、被験者の肌の2値画像のフラクタル次元又は肌の起伏値の分布のフラクタル次元を用いて、皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定する。このために、予め以下のような方法で、肌の2値画像のフラクタル次元又は肌の起伏値の分布のフラクタル次元と、皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式を用意しておく。
【0047】
回帰式は、例えば以下の方法で作成することができるが、該方法に限定されない。
1)肌の状態や年齢などが十分に分布した複数の肌(以下、これらをまとめてサンプルともいう。)について、肌の2値画像のフラクタル次元又は肌の起伏値のフラクタル次元を算出する。画像処理又は起伏値の測定、フラクタル次元の算出などは、前述した方法に従って行うことができる。このとき用いるサンプルの数は、30以上、好ましくは50以上である。
【0048】
2)次に、第三者を代表するのに適当な評価者を用意し、前記肌について、皮膚表面の立体形状を、目視により評価してもらう。具体的な評価基準は、任意に設定することができる。例えば、「しわが少ない、しわが浅い」の基準に基づいて評価を行うことにより、しわの目視評価値を得ることができる。また、「凹凸感が小さい」の基準に基づいて皮膚表面の凹凸感の目視評価値を得ることができる。また、これらの基準を総合して、例えば「なめらかである」という基準を設定することもできる。これらの評価は、得点付けのような絶対的な評価であってもよいが、客観性を担保するために別のサンプルと比較して順位付けを行うなどの相対的な評価であることが好ましい。順位付けにおいては、差がない場合は、同順位とすることもできる。この際、さらに客観性を担保するために評価は視認
可能な肌の要素のみに対して行うものであることを説明する。ここで、第三者を代表するのに適当な評価者とは、少なくとも、皮溝・皮丘構造、毛穴、にきび及び吹き出物、これらの跡などの皮膚表面の凹凸感を認識でき、皮膚表面の立体形状が良好であるか否かを判断できるものであればよく、年齢や性別は問わない。また、評価者の数は、通常4名以上、好ましくは10名以上である。
【0049】
3)2)の作業は、各サンプルごとに繰り返し行うことが好ましい。作業の回数は、評価者の数などにより適宜調節すればよい。客観的な評価結果を得るために、通常3回以上、好ましくは4回以上、さらに好ましくは5回以上評価を繰り返すのがよい。
【0050】
4)次に、サンプルごとに皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する。ここで、目視評価値は、得られた得点そのものを用いてもよいし、順位付けによる相対的な評価を行った場合は、順位そのものを用いても、皮膚表面の立体形状が良好な昇順に高い数値を与えてもよい。またこれらの評価値は、サンプルごとの合計であってもよいし、平均値であってもよい。例えば、n個のサンプルについて順位付けを行った場合に、i番目のスコアをn−i+1として、各サンプルの合計スコアの平均値を求め、評価値とすることができる。また、サンプルの平均値と標準偏差から各サンプルの偏差値を求め、評価値としたり、これらの値を任意の段階に分割して評価値とすることもできる。
【0051】
5)1)で求めた肌の2値画像又は肌の起伏値のフラクタル次元と4)で求めた目視評価値を回帰分析し、これらの値の関係を示す回帰式(予測式)を求める。このような回帰分析は、常法により行うことができ、例えば市販されている統計処理用ソフトウェアを用いて行うことができる。
【0052】
次に、被験者の肌について、算出した肌の2値画像のフラクタル次元又は肌の起伏値フラクタル次元を、それぞれ肌の2値画像のフラクタル次元又は起伏値のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値との相関関係を表す回帰式に代入し、被験者の皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定することができる。このようにして得られた皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定値は、そのまま数値として表示することもできるが、偏差値や予め規定したランクなどの利用しやすいデータに加工することにより、カウンセリングやアドバイスの場面において使用しやすいものとなるため好ましい。例えば、皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定に用いる回帰式の作成において用いたサンプルの目視評価値の最低値と最大値の間を任意の複数のランクに等分し、それぞれのランクをアルファベットや数字で表示したり、皮膚表面の凹凸感の状態を示す言葉、例えばしわの状態を示す言葉など、皮膚表面の立体形状の状態を示す言葉で表示したりすることができる。
【0053】
また、さらに利用した回帰式が描く回帰直線上に、被験者のフラクタル次元を示したり、標本群の中での位置やランクなどを図に示したり、写真様の画像又はステレオグラムとして表示することもできる。図の表示方法は特に制限されず、例えば、装置のディスプレイや印刷媒体などに表示することができる。
【0054】
また、本発明の皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定装置は、肌の2値画像を得る手段と、該2値画像のフラクタル次元を算出する手段と、予め用意した肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段と、算出した目視評価値を表示する手段を含む。
【0055】
本発明の目視評価値の推定装置は、例えば、以下のような構成にすることができる。以下の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成に限定されない。
図4は、肌の2値画像や起伏値のフラクタル次元を用いて、皮膚表面の立体形状の目視
評価値を推定する装置のハードウェアブロック図である。図4に示すように、評価装置1は、入力部1、CPU(Central Processing Unit)2、ROM(Read Only Memory)3、RAM(Random Access Memory)4、磁気ディスク装置5、記録部6、操作部7、表示部8を有している。これらは、相互にバスを介して接続されている。入力部1は、カラーデジタル式マイクロスコープ、カラーデジタルカメラ、カラービデオカメラ、スキャナー等の肌の画像信号を入力する装置、3次元粗さ計などの肌の起伏値を計測する装置である。入力部1は、画像信号を入力する手段と起伏値を計測する装置の何れか一方を有していてもよいし、両方を有していてもよい。CPU2は、ROM3に記憶されているプログラムに従って、上述した前処理、RGB値の2値化、AND処理、細線化処理などのデータ処理、相関次元法、ボックスカウンティング法などによるフラクタル次元の算出、回帰式を用いた目視評価値の算出などの処理を実行する。ROM3には、本発明の評価装置が機能する上で必要なプログラムや目視評価に必要な各種回帰式などが記憶されている。RAM4は、CPU2に実行させるOS(Operating System)のプログラムやアプリケーションプログラムの一部が一時的に格納される。磁気ディスク装置5は、RAM4の外部記憶として用いられ、記録部6を有している。操作部7は、所定のコマンドや回帰式などの必要なデータを入力するときなどに操作される。表示部8は、評価値の推定値を表示することができるものであればよく、例えば、CRT(Cathode Ray Tube)や液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイなどによる表示装置やスピーカーなどの音声出力装置、プリンタなどの出力装置が挙げられる。
【0056】
また、本発明は、コンピュータ、その他の装置、機械等に前記処理の一部又は全部を実行させるためのプログラムであってもよい。また、本発明はこのようなプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録したものでもよい。
【実施例】
【0057】
以下に、本発明を実施例などを参照して詳細に説明するが、これにより本発明の範囲が限定されることはない。
【0058】
<実施例1>
2値画像(RGB)のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値との相関関係
10〜50代の39名の女性の頬部の画像を用いて、肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値との関係を表す重回帰式を得た。すなわち、前記39名について、洗顔後30分に、図5に示す部位10*7mm(サイズ640*480ピクセル)を、市販のデジタルマイクロスコープ(モリテックス製i‐scope)30倍レンズを利用して撮影した。続いて、撮影領域の中心部領域5*5mm(サイズ300*300ピクセル)を抽出して(図6参照)、この中心部領域に、低周波カットフィルター処理、ヒストグラム処理による各RGB値の2値化、RGBの各々のビットプレーン(しわを1、背景を0とした2値画像)に対する論理積(AND)処理、及び8近傍処理により細線化処理を行った(図7参照)。この2値画像について、フラクタル次元を算出する相関次元法をコンピュータに実行させるプログラムを用いて、フラクタル次元を算出した。
【0059】
一方、前記39名の女性の頬部写真(図6参照)について、第三者に皮膚表面の立体形状の目視評価をしてもらった。第三者として、4名のパネラーを選抜し、39名の頬部写真を提示して、「しわが少ない、しわが浅い」の基準を総合して皮膚表面の立体形状が良好であると視認された順に順位付けを行ってもらった。それぞれの作業を独立して4回行い、良好であると視認された順に並べたときの、40−(順位)をスコアとした。すなわち、最も良好である写真のスコアが40であり、最も良好でない写真のスコアが1である。次に、それぞれの写真について、スコアの平均値を算出し、皮膚表面の立体形状の目視評価値とした。
【0060】
さらに、前記で得た皮膚表面の立体形状の目視評価値(y)を目的変数とし、上記で得られたフラクタル次元(x)を説明変数として、回帰分析を行った。得られた回帰式は、y=104.9*x−159.2で、相関係数は、0.906、(p<0.01)であった。かように、RGB値のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値とは、高い相関関係を有することが分かる。
【0061】
<実施例2>
2値画像(RGB)のフラクタル次元を用いたしわの目視評価値の推定
10〜50代の248名の頬部をサンプルとして、前記方法(図7参照)によりRGBよりしわの構造を抽出し、相関次元法によってフラクタル次元を算出した。また、実施例1と同様にして、第三者の目視評価により肌のしわのスコアを求めた後、その偏差値を目視評価値とした。次に、肌のしわの目視評価値(y)を目的変数とし、フラクタル次元(x)を説明変数として、回帰分析を行った。得られた回帰式は、y=167.2*x−233.3で、相関係数は、0.890(p<0.01)であった。
【0062】
次に、前記248名に含まれない5名の女性被験者の頬部写真からRGB値を取得し、上記のように相関次元法でフラクタル次元を算出し、算出したフラクタル次元(x)を前記回帰式に代入して、肌のしわの目視評価値(y)を算出した。5名の女性被験者の頬部写真の目視評価値を前記方法と同様に得て、その結果を比較した。結果を表1に示す。これによると、フラクタル次元を用いた肌のしわの目視評価値の推定値とその目視評価値は、極めてよく一致していることが分かる。
【0063】
【表1】

【0064】
<実施例3>
起伏値を用いた凹凸感の目視評価値の推定
実施例1で、頬部写真を取得した39名について、図5に示す頬部より市販のシリコンを用いて、中心部の2cm*2cmの肌のレプリカ標本を採取した後、株式会社サイエンスシステムズ社の高精度3次元画像処理装置LIP−50を用いて3次元起伏値のデータを得た。レプリカの中央部の1cm*1cmの領域について、y方向(縦方向)に10μmの間隔で1000本の走査を行った。LIP−50は、x方向とy方向のサンプリング周期がそれぞれ9.4μm、10μmと異なるため、Sinc関数を用いて、xy方向の間隔が何れも10μmとなるように補完処理をした後、上述したボックスカウンティング法を用いてフラクタル次元を算出した(図3)。
【0065】
一方、前記39名の女性の頬部写真(図6参照)について、第三者に皮膚表面の立体形状の目視評価をしてもらった。第三者として、4名のパネラーを選抜し、39名の頬部写
真を提示して、「凹凸感が小さい」の基準を総合して皮膚表面の立体形状が良好であると視認された順に順位付けを行ってもらった。それぞれの作業を独立して4回行い、良好であると視認された順に並べたときの、40−(順位)をスコアとした。すなわち、最も良好である写真のスコアが40であり、最も良好でない写真のスコアが1である。次に、それぞれの写真について、スコアの平均値を算出し、皮膚表面の立体形状の目視評価値とした。
【0066】
上記で得た前記の39名の頬部写真の皮膚表面の凹凸感の目視評価値(y)と、前記起伏値から算出したフラクタル次元(x)について回帰分析を行った。両者の相関関係を図9に示す。得られた回帰式は、y=66.1*x−133.9、相関係数は0.933(p<0.01)であり、有意で且つ高い相関関係を示した。
次に、45才の女性被験者の頬部のレプリカ標本から前記と同様にして得た起伏値からフラクタル次元を求め、前記回帰式に代入し、皮膚表面の凹凸感の目視評価値を推定した。この女性被験者のレプリカ標本から得た起伏値のフラクタル次元は
D=2.24であり、皮膚表面の凹凸感の目視評価値の推定値は14.2であった。別途、皮膚表面の凹凸感について目視評価を実施したところ評価値は13であり、良好な一致を見た。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明によって、第三者の目に映る、しわ等の皮膚表面の立体形状を客観的かつ簡便に鑑別することができるため、誰でも被験者の皮膚表面の立体形状の目視評価値を推定することができる。本発明の方法や装置を用いることにより、肌のカウンセリング、手入れ方法や化粧料の選択などについてのアドバイスなどの現場で適切な情報を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ボックスカウンティング法における、分割の概念を示す図である。
【図2】ボックスカウンティング法のカウントの概念を示す図である。
【図3】フラクタル次元を示す図である。
【図4】本発明の皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定装置の一例のハードウェアブロック図である。
【図5】顔の計測対象領域の例を示す図である。
【図6】本発明の評価に用いる頬部写真の例を示す図である(写真)。
【図7】画像データの低周波カットフィルター処理及びRGB値の2値化処理後のAND画像に、細線化処理を行って抽出されたしわ構造(細線化画像)を示す図である。
【図8】レプリカから得た起伏値データをSinc関数により補正したものを示す図である。
【図9】皮膚表面の凹凸感の目視評価値と皮膚のレプリカの起伏値のフラクタル次元との関係を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌の2値画像を得る工程と、
該2値画像のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する工程と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定方法。
【請求項2】
前記2値画像が、RGB値、YUV値又はマンセル(HVC)値の2値化処理により得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フラクタル次元が、相関次元法により算出されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
肌の起伏値を取得する工程と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する工程と、
予め用意した肌の起伏値の分布のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を得る工程と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定方法。
【請求項5】
前記フラクタル次元が、ボックスカウンティング法により算出されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ボックスカウンティング法において、ボックスサイズの決定がボックス内の性状値の標準偏差に基づいて行われることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
肌の2値画像を得る手段と、
該2値画像のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定装置。
【請求項8】
肌の起伏値を取得する手段と、
該起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段と、
予め用意した肌の起伏値の分布のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段と、
算出した目視評価値を表示する手段と、
を含む皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定装置。
【請求項9】
コンピュータを、
肌の2値画像のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した肌の2値画像のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段、
として機能させるための皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定プログラム。
【請求項10】
コンピュータを、
肌の起伏値の分布のフラクタル次元を算出する手段、
予め用意した肌の起伏値の分布のフラクタル次元と皮膚表面の立体形状の目視評価値の関係を表す回帰式に、前記算出したフラクタル次元を代入し、皮膚表面の立体形状の目視評価値を算出する手段、
として機能させるための皮膚表面の立体形状の目視評価値の推定プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−252892(P2007−252892A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−39720(P2007−39720)
【出願日】平成19年2月20日(2007.2.20)
【出願人】(592155762)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】