説明

皮膜形成性組成物および方法

【課題】好ましくは乾燥して、粘着性をほとんどまたは全くもたない被膜になり、また、好ましくは、PSA被覆製品の接着を可能にする、水溶液から送達される製品中の、皮膚に対する殺細菌活性の速度および/または長さが上昇した消毒を提供する。
【解決手段】皮膜形成性組成物、ならびに製造および使用の方法であって、該組成物は、任意の活性物質、水、界面活性剤、ならびにアミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーを含み;該ポリマーのアミン当量は、少なくとも約300グラムのポリマー/アミン基当量である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膜形成性組成物であって、特に、該組成物が、組織消毒、特に皮膚消毒に有用であるように、少なくとも1種の活性物質(active agent)、好ましくは抗微生物剤を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
工業化世界において、感染の危険がある、または感染の危険を減少させるために、外科手術、カテーテル処置、または針穿刺等の侵襲的手技に先立って皮膚を消毒することは、標準技法である。こうした製品は、しばしば皮膚プレップまたは単に「プレップ」と呼ばれる。無傷の皮膚にも粘膜組織(たとえば膣、口、鼻、および眼の組織)にも使用することができる単一製品を有することは、顧客にとって特に有利である。抗微生物製品が使用されてきた他の敏感な組織としては、急性および慢性の創傷、ならびに火傷などがある。臨床医が所期の手技で成功できるように、こうした皮膚消毒薬の全てが、非常に速い微生物の減少を達成することが望ましい。
【0003】
近年、術前消毒およびカテーテル処置前消毒の両者向けに、幾つかのアルコール系消毒薬が上市されている。こうした製品は、アルコール含有率が高い(たとえば、一般に少なくとも約60重量%)ため、優れた即効性の消毒薬であるが、無傷の皮膚への使用に適するに過ぎず、粘膜組織、創傷、または火傷組織等の敏感な組織への使用には適さない。
【0004】
市販されている皮膚消毒薬の中で、皮膚上の細菌の全てを死滅させるものはないことは周知である。このような理由で、最近の製品は、外科手術中の洗い落としまたは体液への曝露に耐える皮膜形成性ポリマーを組み入れている。従来技術は、たとえば、米国特許第4,978,527号明細書(ブリンク(Brink))および同第5,763,412号明細書(カーン(Khan))に、皮膜形成性ポリマーの使用によって殺菌作用の長さを改善しようとする試みについて記述している。こうした製品の多くは、皮膚からプレップを除去するために、有機リムーバー液またはローションも必要とする。このことは、臨床医にとって不便であり、また、かなりの余分な時間を要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,978,527号明細書(ブリンク(Brink))
【特許文献2】米国特許第5,763,412号明細書(カーン(Khan))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、好ましくは乾燥して、粘着性をほとんどまたは全くもたない被膜になり、また、好ましくは、PSA被覆製品の接着を可能にする、水溶液から送達される製品中の、皮膚に対する殺細菌活性の速度および/または長さが上昇した消毒薬が依然として必要である。多種多様な活性物質のための送達媒体も、やはり必要である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、好ましくは抗微生物剤である、少なくとも1種の活性物質を含むことが好ましい、皮膜形成性組成物に関する。このような組成物は、一般に、該活性物質の局所投与に有用である。本質的に抗微生物活性を有するか、または抗微生物剤を含む組成物は、主として組織消毒、さらに詳細には、皮膚消毒を目的とする。本発明の組成物は、局所用医薬品および化粧品の送達等の、活性物質のための送達媒体としても有用である。さらに、本発明の組成物を使用して、活性物質を、皮膚または粘膜組織を通って全身的に送達することが可能である。
【0008】
本発明の皮膜形成性組成物は、皮膚および敏感な組織への局所投与に特に適する。本発明の皮膜形成性組成物は、一般に、アミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、該ポリマーのアミン当量が、少なくとも約300グラム(g)ポリマー/アミン基当量(好ましくは約3000グラム以下の量のポリマー/アミン基当量、より好ましくは、約1500グラム以下の量のポリマー/アミン基当量)である、ビニルポリマーを含む。
【0009】
好ましい一実施形態では、本発明の皮膜形成性組成物は、アミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、該ポリマーのアミン当量が、少なくとも約300グラムのポリマー/アミン基当量;水;および界面活性剤;を含み、該組成物は、以下の特徴:該ポリマーは、界面活性剤より多い量で存在するか;または該組成物の乾燥皮膜は、永続性がある;の少なくとも1つを有する。
【0010】
好ましくは、該組成物は、活性物質を含む。好ましくは、活性物質は、抗微生物剤、医薬、または化粧料である。抗微生物剤であれば、好ましくは、活性物質は、ヨウ素もしくはポビドンヨード等のヨードフォア、クロルヘキシジン、クロルヘキシジン塩類、グリセリンおよびプロピレングリコールの脂肪酸モノエステル類、塩素化フェノール類、トリクロサン、オクテニジン、またはそれらの混合物である。
【0011】
好ましくは、該界面活性剤は、好ましくは少なくとも約14、より好ましくは約19以下の、HLBを有する非イオン性界面活性剤である。ある実施形態では、該組成物は、約14未満または約19より大きいHLBを有する界面活性剤も含む。他の実施形態では、該組成物は、陰イオン性または両性の界面活性剤、たとえば、硫酸塩、スルホン酸塩、リン酸塩、ホスホン酸塩、スルホン酸アンモニウム両性、およびそれらの混合物からなる群より選択されるものも含む。
【0012】
好ましくは、該組成物は、たとえば、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、またはそれらの混合物等のα−ヒドロキシカルボン酸を含む、ヒドロキシカルボン酸緩衝剤を含む。
【0013】
好ましくは、該ビニルポリマーは、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約50℃のガラス転移温度を有する。ある実施形態では、該組成物は、アミン基を有するビニルポリマーより高いTgを有するポリマーをさらに含む。好ましくは、このようなポリマーは、ポリビニルアルコールである。
【0014】
本発明は、アミン基含有側鎖および疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、該ポリマーのアミン当量が、約300〜約3000グラムのポリマー/アミン基当量である(好ましくは、約300〜約1500グラムのポリマー/アミン基当量)ビニルポリマー;活性物質;水;および界面活性剤;を含み、該組成物は、以下の特徴:該ポリマーは、界面活性剤より多い量で存在するか;または該組成物の乾燥皮膜は、永続性がある;の少なくとも1つを有する、皮膜形成性組成物も提供する。好ましくは、該活性物質は、抗微生物剤である。
【0015】
本発明の別の皮膜形成性組成物は:アミン基含有モノマー、約1〜約30重量%の(C6〜C22)アルキル(メタ)アクリルモノマー、および約15〜約75重量%の(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリルモノマーを含むモノマーから調製される水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、該ポリマーのアミン当量が、約300〜約3000グラムのポリマー/アミン基当量であるビニルポリマー;水;および活性物質;を含む。
【0016】
本発明の好ましい組成物は、以下の特徴:該ポリマーは、該界面活性剤より多い量で存在するか;該ポリマーと活性物質との重量比は、少なくとも約0.25:1であるか;または該組成物の乾燥皮膜は、永続性(substantive)がある;の2つ以上を有する。より好ましい組成物は、これらの特徴の全てを含む。
【0017】
ある実施形態では、好ましいビニルポリマーは、ジメチルアミンオキシドメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、および(C12〜18)アルキルメタクリレートから調製される。他の、ある実施形態では、好ましいビニルポリマーは、トリメチルアミニオエチル(trimethylaminioethyl)アクリレートクロリド、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、および(C12〜18)アルキルメタクリレートから調製される。
【0018】
本発明は、組織を消毒する方法を提供する。一実施形態では、該方法は、皮膜形成性組成物を組織に塗布するステップと、該皮膜形成性組成物を組織上に残留させるステップとを含む。この実施形態では、該皮膜形成性組成物は:アミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、該ポリマーのアミン当量が、少なくとも約300グラムのポリマー/アミン基当量であるビニルポリマー;水;および界面活性剤;を含み、該組成物は、以下の特徴:該ポリマーは、該界面活性剤より多い量で存在するか;または該組成物の乾燥皮膜は、永続性がある;の少なくとも1つを有する。好ましくは、該組成物は、抗微生物剤をさらに含む。
【0019】
本発明は、活性物質を組織に送達する方法も提供する。一実施形態では、該方法は、皮膜形成性組成物を組織に塗布するステップと、該皮膜形成性組成物を組織上に残留させるステップとを含む。この実施形態では、該皮膜形成性組成物は:アミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、該ポリマーのアミン当量が、少なくとも約300グラムのポリマー/アミン基当量であるビニルポリマー;水;および活性物質;を含む。
【0020】
本発明の組成物を使用して、活性物質を送達する、様々な他の方法が提供される。これらの方法は、該組成物を組織に塗布するステップと、それを組織上に残留させるステップとを含む。このような方法は、石鹸およびシャンプーを使用し、使用中の即時希釈および塗布直後の十分なすすぎを含む、従来の方式と対照的である。すなわち、本発明の消毒剤組成物は、所望の効果をもたらす(たとえば、組織上の細菌負荷を減少させる)のに十分な時間、組織上に残留することを目的とする。本発明の組成物の刺激潜在性は非常に低いため、これが可能である。
【0021】
本発明はまた、皮膜形成性組成物を製造する方法も提供する。このような一法は、アミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、該ポリマーのアミン当量が、少なくとも約300グラムのポリマー/アミン基当量であるビニルポリマー;活性物質;水;および界面活性剤;を含む、成分を配合するステップを含む。好ましくは、該活性物質は、緩衝溶液の状態であり、その後、該ビニルポリマーおよび界面活性剤を、該緩衝化した活性物質に加える。
【0022】
本発明のある種の皮膜形成性ポリマーは、それ自体も抗微生物性である。したがって、本発明は、第四級アンモニウム基含有モノマーおよび(C8〜C22)アルキル(メタ)アクリルモノマーを含むモノエチレン性不飽和モノマーから誘導される部分を有する皮膜形成性ビニルポリマーであって;1重量%濃度の水溶液中で、該ポリマーは、30分で、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)ATCC菌株番号12228に対する抗微生物活性で、少なくとも50%の減少(好ましくは少なくとも75%の減少)を示す、皮膜形成性ビニルポリマーを提供する。
【0023】
本明細書では、以下の定義を使用する:
「乾いたヒト皮膚部位」は、人の背部または腹部を指す:
「皮膜形成性」は、環境条件(たとえば、23℃および相対湿度(RH)50%)で、無傷の皮膚上で乾かすとき、組織の単純な伸縮後に、薄片になって落ちない連続した層を形成する組成物を指す;
「ヒドロキシカルボン酸」は、遊離酸、ならびに以下に詳細に記述されている、そのラクトン類、その塩類、またはその誘導体を指す;
「正常な皮膚フローラ」は、健常者の皮膚上に存在する常在皮膚フローラを指し、多くの場合、主として表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)からなる;
「ポリマー」は、ホモポリマーおよびコポリマーを包含し、「コポリマー」は、2種以上の重合可能なモノマーの任意の長さ(オリゴマーを包含する)のポリマーを包含し、したがって、ターポリマー、テトラポリマー等々を包含し、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー、またはシーケンシャルコポリマーを包含することができる;
「側鎖」は、次の重合が、ポリマー・バックボーン(すなわち、主鎖)から枝分れを形成するモノマーの部分を指し;ビニルポリマーの場合、側鎖は、ビニル重合によって形成される炭素原子の直鎖から枝分れする2個以上の原子団である;
「安定した」は、50℃で5日(好ましくは10日、より好ましくは20日、最も好ましくは30日)間保存した後、目に見える巨視的相分離(沈殿、分相、沈降等々)の兆候を示さない消毒剤組成物を指し;あるサンプルは、50℃で5日間保存している間に僅かに濁ってくることがあるものの、巨視的沈殿および/または沈降がないため、これらのサンプルは物理的に安定していると考えられるが、最も安定したサンプルは、目に見える変化、すなわち、透明度、色等々の変化を示さない;
「実質的に非粘着性の」は、乾燥皮膜に押し付けて、直ちに離したとき、乾いた(使用直前に、アイボリー(IVORY)固形石鹸(オハイオ州シンシナティにあるプロクター・アンド・ギャンブル(Proctor and Gamble,Cincinnati,OH))等の、ローションを含まない石鹸で洗って完全に乾かした)親指に、ほとんどまたは全く粘着性を示さない、約4ミリグラムの組成物/内側前腕の皮膚平方センチメートル(mg/cm2)の乾燥皮膜を指す;
組成物(または皮膜形成性ポリマー)に使用したとき、「永続性がある(substantive)」は、組成物(または溶液状の皮膜形成性ポリマー)を、内側前腕の清浄な乾いた皮膚1平方センチメートル当たりおよそ4ミリグラム(mg/cm2)の量で、均一な湿った皮膜としてヒト皮膚に塗布して、完全に乾かした(たとえば、23℃、相対湿度50%で、少なくとも10分)とき、組成物が、15センチメートル(cm)の高さから落ち、かつ該乾いた組成物の真上の皮膚を打ち(乾いた組成物を直接ではない)、次いで該乾いた組成物の上を少なくとも約15秒間流れる、温度約23〜約24℃、流量約2.4〜2.5リットル/分(L/分)の水道水での除去に抵抗することを意味する;
「創傷」は、外科的切開、穿刺、裂傷、または火傷(この限りではない)に起因する、通常は、下にある組織への損傷を伴う、皮膚または粘膜表面等の膜の破壊を含む、哺乳類の組織への傷害を指す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
望ましい組成物、特に消毒剤組成物は、水性系であり、かつ下記の特徴:抗微生物剤が存在する(または該組成物が本質的に抗微生物剤である)場合、比較的高レベルの細菌死滅;比較的短い乾燥時間;一般に、下にある組織がはっきり見えること;乾いたとき、皮膚によく接着すること;乾いたとき、ほとんどまたは全く粘着性がないこと;長時間にわたって抗微生物剤等の活性物質を放出できること;切開用ドレープ、テープ、創傷用包帯等々の、感圧接着剤(PSA)被覆製品の優れた接着;一般に、外科手術における収縮中に生じる応力による、PSA被覆製品のリフトオフに抵抗する;長時間、たとえば、数時間から数日、PSA被覆製品の接着を可能にする;粘膜組織等の、敏感な組織上に使用するのに適する;および、比較的容易に、好ましくは有機溶剤系剥離剤を必要とせずに、除去することができる:を有する。
【0025】
本発明の好ましい組成物は、上述の特徴を全て有する。注目に値すべきは、本発明の好ましい組成物は、迅速な微生物の死滅(本発明の組成物が消毒剤組成物である場合)をもたらし、乾いて低粘着性または非粘着性の皮膜になり、PSA被覆製品の良好な接着を可能にする。さらに、本発明の好ましい組成物は、組織に優しく、タオルまたはシンプルガーゼ等の水に浸した布地で除去することができる。
【0026】
さらに、本発明の好ましい組成物は、非常に安定しており、高温に長時間曝露しても、たとえば、50℃、および60℃という高温に、たとえば、しばしば7日を超える長時間、曝露しても耐えることができる。最も安定したサンプルは、目に見える変化、たとえば色、濁度、等々の変化を全く示さない。また、本発明の好ましい組成物は、低温、たとえば、4℃に曝露したとき、およびたとえば、2サイクル以上の繰り返し凍結/解凍サイクルの間でも、非常に安定している。
【0027】
本発明の好ましい組成物は、概して、永続性もある。本発明のより好ましい組成物は、膣円蓋等の湿った環境にあるのに、永続性があり、またベタジン(BETADINE)10%ポビドンヨード溶液(コネチカット州ノーウォークにあるパーデュー・フレデリック(Purdue Frederick,Norwalk,CT))等の代表的な消毒薬より長時間、膣内に留まる。「永続性がある」組成物は、上述の通りにテストしたとき、少なくとも約15秒間、除去に抵抗するものである。好ましくは、該組成物は、よりいっそう永続性があり、同一条件で少なくとも約30秒間、より好ましくは少なくとも45秒間、最も好ましくは少なくとも約60秒間、除去に抵抗する。これは、該組成物に色を与える(たとえば、有無を容易に判断することができる、比較的暗い色を皮膚上に生じる、少量の色素または着色した有効成分、たとえば十分な濃度のポビドンヨード等を含める)ことによって、好都合に測定される。
【0028】
本発明の組成物の乾燥皮膜は、概して、柔軟でかつ丈夫である。すなわち、脆弱な皮膜であればひび割れたりまたは薄片になって落ちたりすることもあるが、本発明の組成物の乾燥皮膜はそうではない。注目に値すべきは、皮膜形成性ビニルポリマーが、低粘着性と柔軟性との間の微妙なバランスを実現するための一助となることである。
【0029】
また、本発明の好ましい組成物は、処理しやすく、速やかに乾燥することができる比較的薄い皮膜を形成する調合物を保証する粘度を有する。ブルックフィールドRTVロトビスコ(Brookfield RVT ROTOVISCO)粘度計および実施例のセクションに記載の手順を使用して23℃で測定したとき、好ましくは、組成物のブルックフィールド(Brookfield)粘度(実施例のセクションに記載)は、約1000センチポアズ(cps)以下、より好ましくは約500cps以下、よりいっそう好ましくは約250cps以下、よりいっそう好ましくは約100cps以下、最も好ましくは約50cps以下である。この低い粘度により、ほとんど労せずに、該組成物を、速やかに乾燥する一様な薄い皮膜状で、皮膚に塗れることが保証される。
【0030】
乾燥時間は、23℃、相対湿度45〜55%で測定したとき、皮膚上で、好ましくは約5分以下、より好ましくは約3分以下、よりいっそう好ましくは約2分以下、最も好ましくは約1.5分以下である。乾燥時間は、ガーゼで、組成物約3mg/cm2皮膚の一様な薄い皮膜状に塗布した組成物が、目で見て乾き、ラテックス手袋をはめた手に該組成物が移らず、かつ最小レベルの粘着性を示す、最小時間として測定される。少なくとも5被験者の平均が、一般に使用される。
【0031】
抗微生物剤が含まれる(または、該組成物が本質的に抗微生物性である)場合、本発明の組成物の特に重要な特性は、組織上、特に皮膚上の、細菌負荷を減少させる力、すなわち、速やかに、自然の皮膚フローラを死滅させる力である。好ましくは、本発明の消毒剤組成物は、ASTMテスト方法E1173−93を使用し、中程度の圧力を使用して、該組成物中に浸漬したガーゼで30秒こすり洗いすることにより、乾いたヒト皮膚部位(一般に、腹部または背部の皮膚)の正常な皮膚フローラを、2分で、少なくとも対数値で約1(10倍)、より好ましくは少なくとも対数値で約1.5、最も好ましくは少なくとも対数値で約2(100倍)、減少させることができる。
【0032】
以下にさらに詳細に記述する通り、任意の数の抗微生物剤を使用してもよい。好ましい抗微生物剤としては、ヨウ素、ヨードフォア、グルコン酸クロルヘキシジン等のクロルヘキシジン塩類、およびトリクロサン等がある。最も好ましい組成物の驚くほど速くかつ高い抗微生物活性は、特に高い使用濃度で、1種以上のヒドロキシカルボン酸緩衝剤と組み合せて、ヨウ素またはヨードフォアを有効な抗微生物剤として使用することにより、もたらされる。本明細書で使用されるとき、「使用」濃度は、組織に塗布される、該組成物の実際の濃度を指す。濃縮物が検討される。
【0033】
本発明の、ある好ましい組成物中のヒドロキシカルボン酸緩衝剤は、このような良好な細菌死滅に大いに貢献する。比較すると、本発明の組成物は、ヒドロキシカルボン酸が存在しない同一組成物より少なくとも対数値で約0.5多く、正常な皮膚フローラを減少させる。この「同一」組成物は、ヒドロキシカルボン酸の代わりに補足的な水を含み、また、ヒドロキシカルボン酸を含む組成物と同じpHに調整される。
【0034】
概して、組成物は、組織、一般に皮膚に塗布し、乾燥させ、所定の位置に少なくとも2分、しばしば数時間から数日、残留させる。注目に値すべきは、本発明の消毒剤組成物の多くが、たとえば、しばしば6時間まで、さらに24時間までという長時間にわたって、組織上、一般に皮膚上で非常に低い細菌数を維持することである。
【0035】
皮膜形成性ポリマー
永続性(たとえば、血液および体液への曝露によって洗い落とされることに対する抵抗性)を改良し、PSA被覆製品の接着を改良し、かつ/または該組成物の粘着性を減少させるために、1種以上の皮膜形成性ポリマーが本発明の組成物中に含まれる。本発明の組成物の好ましい皮膜形成性ポリマーは、永続性があり、かつ、水、食塩水、および体液等の流体への長時間曝露による除去に抵抗し、さらに、有機溶剤を必要とせずに、容易にかつ優しく除去することができる。
【0036】
本明細書に記載の皮膜形成性ポリマーは、組織消毒、特に皮膚消毒に使用する場合、特に独特である。米国特許第5,013,763号明細書(チューブシング(Tubesing)ら)および同第5,543,074号明細書(ヘーグ(Hague)ら)に記載のもの等の、第四級アンモニウムポリマーを使用するというこれまでの試みは、使用される第四級アンモニウムビニルポリマーが、親水性第四級アンモニウムモノマーのほかに、全て親水性のモノマーを含むため、失敗した。本発明の組成物は、親水性部分および疎水性部分の両方を含む皮膜形成性ポリマーを含む。好ましくは、該皮膜形成性ポリマーは、少なくとも2種のモノマー(すなわち、親水性モノマーおよび疎水性モノマー)から、より好ましくは、少なくとも3種のモノマーから調製される。
【0037】
より好ましくは、該皮膜形成性ポリマーは、アミン基を含有する(すなわち、アミン含有)側鎖を含むビニルポリマーであり、疎水性である。ビニルポリマーという用語は、モノエチレン性不飽和モノマーから調製されるポリマーを指す。アミン基は、第四級アミン(すなわち、第四級アンモニウム)基、アミンオキシド基、および/またはプロトン化第三級アミン基であってもよい。
【0038】
ある種の添加物、たとえばヨウ素およびヨードフォアを用いて、低いpH、たとえば、約3〜約5を有する組成物を調合することは、極めて好ましい。幾つかの従来の組成物は、これらのpH値でプロトン化されていてもよい、したがってイオン化していないくてもよい、カルボン酸官能ポリマーを使用しようとするが、これらは溶解しない。こうした材料とは違って、本発明の組成物で使用されるポリマーは、第四級アンモニウム基の場合には永久帯電しており、プロトン化第三級アミン基の場合にはプロトン化されていて、したがって陽イオン性であり、あるいはアミンオキシド基の場合には非イオン性および/または陽イオン性である、アミン基に依存する。たとえば、好ましいアミンオキシド含有ポリマーは、pH約4で、およそ100%プロトン化されている、したがって正に帯電していると考えられる。第四級アンモニウムおよびアミンオキシド基は、広いpH範囲にわたって、たとえば、約2〜約12で、安定性に貢献すると考えられる。第三級アミン基は、約2〜約9のpH範囲にわたって、組成物安定性に貢献すると考えられる。
【0039】
好ましいモノエチレン性不飽和アミン基含有モノマーは、モノエチレン性不飽和第四級アンモニウム、アミンオキシド、および/またはプロトン化第三級アミン基含有モノマーである。最も好ましい側鎖アミン基含有モノマーは、モノエチレン性不飽和第四級アミン、アミンオキシド、第三級アミン、またはプロトン化第三級アミン基含有(メタ)アクリルモノマーである。皮膜形成性ポリマーが形成される最も好ましいモノエチレン性不飽和アミン基含有モノマーは、第四級アンモニウムおよびアミンオキシド基含有モノマーである。必要に応じて、該第三級アミン基含有モノマーは、重合前または重合後に、本明細書に記載の適切な化学反応で、プロトン化第三級アミン基、アミンオキシド基、または第四級アンモニウム基に、容易に変換することができる。第四級アンモニウム基含有ポリマーの場合には、第四級アンモニウム基含有モノマーからポリマーを調製することが好ましい。プロトン化第三級アミン基含有ポリマーおよびアミンオキシド基含有ポリマーの場合には、先ず、対応する第三級アミンからポリマーを作り、その後、そのポリマー上の第三級アミン基を、プロトン化第三級アミンまたはアミンオキシド基に変換することが好ましい。
【0040】
ある好ましい皮膜形成性ポリマーの場合、皮膜形成性ポリマーの調製に使用されるアミン基含有モノマーは、一般に、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、少なくとも約15重量%、好ましくは少なくとも約20重量%、より好ましくは少なくとも約25重量%、最も好ましくは少なくとも約30重量%の量で使用される。該皮膜形成性ポリマーの調製に使用されるアミン基含有モノマーは、一般に、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、約70重量%以下、好ましくは65%以下、より好ましくは約60重量%以下、最も好ましくは約55重量%以下の量で使用される。
【0041】
該ポリマーのアミン当量は、好ましくは少なくとも約300、より好ましくは少なくとも約350、よりいっそう好ましくは少なくとも約400、最も好ましくは少なくとも約500グラムのポリマー/アミン基当量である。該ポリマーのアミン当量は、好ましくは約3000以下、より好ましくは約1500以下、よりいっそう好ましくは約1200以下、最も好ましくは約950グラム以下のポリマー/アミン基当量である。
【0042】
特に好ましいモノエチレン性不飽和アミン基含有モノマーは、下記の一般式(IおよびII):
【化1】

[式中:R1は、場合によってN、O、またはS原子で置換された、(C2〜C8)アルキレン基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状アルキレン基)であり;R2およびR3は、互いに独立して(C1〜C8)アルキル基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状アルキル基)、(C6〜C12)アリール基、または(C8〜C15)アラルキルまたはアルカリール基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基を有する)であり、場合によってR2および/またはR3は、結合して、アルキルモルホリン、アルキルイミダゾール、アルキルピペラジン等々の第四級アミン類またはアミンオキシド類等のアミン窒素を有する複素環系を形成してもよく;R4は、水素、(C1〜C8)アルキル基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状アルキル基)、または(C6〜C12)アリール基、または(C8〜C15)アラルキルまたはアルカリール基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状のアルキル基を有する)であり;Yは、OまたはNR5であって、R5は、水素またはメチルであり;Xは、対イオンであって、適切な化学量論で存在して、分子上の有効電荷が中性であることを確実にする、任意の適合する対イオン、たとえば、ハロゲン、(C1〜C16)アルキル硫酸塩(好ましくはメチルまたはエチル硫酸塩)、(C1〜C6)アルキルカルボキシレート、(C1〜C16)アルキルリン酸塩、(C1〜C16)アルキルスルホン酸塩、または(C1〜C16)アルキルホスホネート基から選択することが可能である。R4基は、好ましくは、平均して、少なくとも1個の炭素原子を含む。好ましくは、R2、R3、およびR4は、それぞれメチルである]を有する。
【0043】
好ましくは、式Iのモノエチレン性不飽和アミン基含有モノマーは、アクリルモノマーである。アクリルモノマーは、(メタ)アクリレート(すなわち、アクリレートまたはメタクリレート)および/または(メタ)アクリルアミド(すなわち、アクリルアミドまたはメタクリルアミド)モノマーを包含すると理解される。好ましいモノマーとしては、トリメチルアミノエチルメタクリレートの塩類、トリメチルアミノエチルアクリレートの塩類、トリメチルアミノプロピルアクリルアミドの塩類、トリメチルアミノプロピルメタクリルアミドの塩類、およびジメチルアミノエチルメタクリレートのプロトン化塩類などがある。特に好ましいモノマーは、トリメチルアミノエチルメタクリレートの塩化物およびメトサルフェート塩類である。
【0044】
好ましくは、式IIのモノエチレン性不飽和アミン基含有モノマーは、(メタ)アクリレートおよび/または(メタ)アクリルアミドモノマーである。好ましいモノマーとしては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、およびジメチルアミノプロピルメタクリルアミドのアミンオキシド類などがある。他のアミンオキシド含有モノマーおよび好適なポリマーは、米国特許第6,123,933号明細書(ハヤマ(Hayama)ら)に開示されている。
【0045】
本発明のアミン基含有モノマーは、該組成物の水溶解性または水分散性および永続性を確実にするのに十分な濃度で存在する。本明細書で使用されるとき、「水溶性」は、組成物中のポリマーが、約1重量%以上の量で脱イオン水に溶解し(ことによると加熱後)、1cm×1cmのキュベットで、650ナノメートル(nm)で測定して少なくとも70%の透過率を有する、透明または半透明の溶液を形成することを意味する。用語「水分散性」は、組成物中のポリマーが、50℃で少なくとも30日間の保存に安定な細かい微粒子分散として存在することを意味する。
【0046】
アミン基含有ポリマーは、ポリマーに親水性を与える。しかし、他のアミン基非含有親水性モノマーを使用して、水溶解性および/または安定性を助ける皮膜形成性ポリマーを調製してもよい。これらは、ヒドロキシ官能アクリレート類、ポリエチレングリコール官能アクリレート類、N−ビニルピロリドンおよびN−ビニルカプロラクタム等のビニル−ラクタム類、アクリルアミド、メタクリルアミド、加水分解した酢酸ビニル(ビニルアルコール)、および、結果として、そのホモポリマーが水溶性ポリマーとなる、他のモノマーを包含する。ビニル−ラクタム類およびPEG含有モノマーは、ヨウ素と複合体を形成してヨードフォアを作ることに注目されたい。これは、個々の組成物に有利なこともあり、または有利でないこともある。
【0047】
本発明の組成物で有用な皮膜形成性ポリマーを調製するためには、アミン基含有モノマーに加えて、少なくとも1種の疎水性モノマーが使用される。本明細書で使用されるとき、用語「疎水性モノマー」は、ホモポリマー化した場合、水室温で約0.25重量%より多くまで溶解しないであろうモノマーを指す。好ましくは、このようなポリマーは、溶解性について試験したとき、約8,000〜約250,000ダルトンの分子量を有する。
【0048】
一実施形態では、本発明は、アミン基含有側鎖ならびにアルキル−Y含有側鎖(ここで、YはOまたはNR6である)を含むビニルポリマーを含む、組成物、特に消毒剤組成物を提供する。これらの側鎖では、R6はHまたはCH3であり、またアルキル−Y含有側鎖のアルキル基は、環状、分枝鎖、または直鎖の立体配置で、平均して1〜22個の炭素原子を有し、場合によって1つ以上のヘテロ原子を含むが、但し、アルキル−Y含有側鎖モノマーのホモポリマーは、水または水と活性物質との混合物中に溶解しない。
【0049】
本発明の組成物で使用される好ましい1クラスのビニルポリマーは、少なくとも1種の共重合した疎水性モノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリルモノマーを含む。本明細書で使用されるとき、アルキル(メタ)アクリルモノマーにおける、「モノエチレン性不飽和」という用語は、アクリル性不飽和を指す。好ましくは、「アルキル(メタ)アクリル系」モノマーは、(メタ)アクリルアミド類(たとえば、オクチルアクリルアミド)、(メタ)アクリレート類、およびそれらの組合せを含む。より好ましくは、該アルキル(メタ)アクリルモノマーは、アルキル(メタ)アクリル酸エステル(すなわち、アルキルアクリレートまたはアルキルメタクリレート)であり、該アルキル基は、少なくとも1個の炭素原子(平均して)を有する。好ましくは、該アルキル基は、50以下の炭素原子、より好ましくは、36個以下の炭素原子、最も好ましくは、22個以下の炭素原子(平均して)を有する。言い換えれば、これらのアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、アルキルアルコール類(好ましくは、非第三級アルキルアルコール類)の(メタ)アクリル酸エステル類であり、そのアルキル基は、好ましくは、1〜22個の炭素原子(平均して)を含む。これらの中で、1つの好ましいアルキル基は、1〜4個の炭素原子を含む。別の好ましいアルキル基は、6〜22個の炭素原子、より好ましくは8〜22個の炭素原子、よりいっそう好ましくは8〜18個の炭素原子(平均して)を含む。該アルキル基は、場合によってヘテロ原子を含み、また直鎖状、分枝状、または環状であってもよい。
【0050】
好ましいアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、下記の一般式(III):
【化2】

[式中:R7は、HまたはCH3であり、後者は(メタ)アクリレートモノマーがメタクリレートモノマーである場合に相当し、R8は、直鎖状、分枝状、または環状アルキル基から広く選択され、また場合によって1つ以上のヘテロ原子(たとえば、N、O、またはS)を含む。R8基における炭素原子数は、モノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリルモノマーのアルキル基に関して上述した通りである]を有する。
【0051】
本発明で有用な短いアルキル基(C1〜C4)を有する好適なアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、およびn−プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、およびイソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート等々が挙げられるが、この限りではない。これらの中で特に好ましいものは、メチルメタクリレートおよびイソブチルメタクリレートである。
【0052】
本発明で有用な長いアルキル基(C6〜C22)を有する好適なアルキル(メタ)アクリレートモノマーの例としては、シクロヘキシルメタクリレート、デシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、イソアミルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソノニルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、ベヘニルメタクリレート、2−メチルブチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、それらの混合物、等々が挙げられるが、この限りではない。これらの中で特に好ましいものは、イソブチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート、およびそれらの混合物である。
【0053】
好ましくは、該モノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリルモノマーは、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、少なくとも約35重量%、より好ましくは少なくとも約45重量%、最も好ましくは少なくとも50%重量%の量で使用することができる。好ましくは、該モノエチレン性不飽和アルキル(メタ)アクリルモノマーは、重合可能な組成物の総重量を基準にして(および好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、約85重量%以下、より好ましくは約75重量%以下、最も好ましくは約65重量%以下の量で使用することができる。
【0054】
アミン基含有モノマーと長鎖モノマーとの、ある組合せは、本発明で特に有用である。長鎖アルキルモノマーは、ポリマー系のガラス転移温度(Tg)を下げて、ポリマーおよび組成物の永続性を改良するのに役立つ。概して、この低いTgは、皮膚への接着、および特に該組成物上へのPSA被覆製品の接着の両方を促進するのに役立つ。該長鎖アルキルモノマー(ホモポリマー化された場合)は、約25℃未満、好ましくは約10℃未満のTgを有するポリマーを形成する。
【0055】
好ましくは、該ビニルポリマーは、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約50℃のTgを有する。ポリマーのTgを測定する一法は、−100℃〜+100℃の範囲で、20℃/分の率での、示差走査熱量計(DSC、たとえば、コネチカット州シェルトンにあるパーキン・エルマーのピリス7シリーズ・サーマル・アナライザー(PYRIS 7−Series Thermal Analyzer,Perkin−Elmer,Shelton,CN)の使用を含むことがある。
【0056】
長鎖モノマーと組み合せて、これらのアミン基含有モノマーから調製されるポリマーは、「感圧接着剤、たとえば、第四級アンモニウム官能基を有する感圧接着剤、物品、および方法(PRESSURE SENSITIVE ADHESIVES HAVING QUATERNARY AMMONIUM FUNCTIONALITY,ARTICLES,AND METHODS)」と題する、これとともに同日出願された、出願人の譲受人の同時係属中米国特許出願第10/052,032号明細書(弁理士事件整理番号(Attorney Docket Number)56435US002)に記載のものであってもよい。
【0057】
室温でPSAである、皮膜形成性の、永続性があるポリマーの他の例としては、長鎖アルキルアクリレートポリマーおよび場合によって他の親水性モノマーと組み合せた側鎖官能性アミン基モノマーに基づくものなどがある。たとえば、PSAである特に効果的なポリマーは、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、2−エチルヘキシルアクリレート80%およびトリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド20%を含む。このクラスの別のPSAポリマーは、2−エチルヘキシルアクリレート75%、トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド20%、およびメトキシポリエチレングリコール(約9エチレンオキシ単位)モノアクリレート(AM−90Gという商品名で日本の和歌山市にある新中村化学工業株式会社から販売されている)5%を含む。
【0058】
しかし、前述の通り、好ましい組成物は、粘着性を全く持たないか、または比較的低い粘着性を有する。本発明の特に好ましい皮膜形成性ポリマーは、少なくともアミン基含有モノマー、長鎖(メタ)アクリルモノマー、および短鎖(メタ)アクリルモノマーから作られる。
【0059】
これらの特に好ましい実施形態では、該アミン基含有モノマーは、好ましくは、ポリマーに、アミン1当量につき少なくとも約300、より好ましくは少なくとも約350、よりいっそう好ましくは少なくとも約400、最も好ましくは少なくとも500グラムポリマーのアミン当量を与えるように存在し、該アミン基は、第四級アミン基、アミンオキシド基、第三級アミン基、およびそれらの組合せから選択される。好ましくは、該ポリマーのアミン当量は、約4000以下、より好ましくは約3000グラム以下、よりいっそう好ましくは約1500グラム以下、よりいっそう好ましくは約1200グラム以下、最も好ましくは約950グラム以下のポリマー/アミン基当量である。
【0060】
これらの特に好ましい実施形態では、該長鎖(メタ)アクリルモノマー(たとえば、(C6〜C22)アルキル(メタ)アクリルモノマー)は、好ましくは、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、少なくとも約1重量%、より好ましくは少なくとも約3重量%、最も好ましくは少なくとも約5重量%の量で、該ポリマーを調製するために使用される。該長鎖(メタ)アクリルモノマーは、好ましくは、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、約40重量%以下、より好ましくは約30重量%以下、よりいっそう好ましくは約20重量%以下、最も好ましくは約15重量%以下の量で、該ポリマーを調製するために使用される。最も好ましいポリマーは、約5〜約15重量%の長鎖(メタ)アクリルモノマーを含む。
【0061】
これらの特に好ましい実施形態では、該短鎖(メタ)アクリルモノマー(たとえば、(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリルモノマー)は、好ましくは、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、少なくとも約15重量%、より好ましくは少なくとも約25重量%、最も好ましくは少なくとも約30重量%の量で、該ポリマーを調製するために使用される。該短鎖アクリルモノマーは、好ましくは、重合可能な組成物の総重量を基準にして(好ましくは、ポリマーの総重量を基準にして)、約75重量%以下、より好ましくは約65重量%以下、最も好ましくは約60重量%以下の量で、該ポリマーを調製するために使用される。最も好ましいポリマーは、約30〜約60重量%の短鎖(メタ)アクリルモノマーを含む。
【0062】
最も好ましい皮膜形成性ポリマーは、2種の異なる短鎖アクリルモノマーから調製される。第1は、メチルメタクリレート等の(C1〜C2)アルキル(メタ)アクリルモノマーであり、第2は、n−、t−、またはイソ−ブチルアクリレート等の(C3〜C4)アルキル(メタ)アクリルモノマーである。非常に短い鎖のモノマーは、ガラス転移温度を高めて、該組成物の粘着性を低減させるため、ならびに若干の疎水性を与えるために、存在する。(C3〜C4)アルキル(メタ)アクリルモノマーは、該皮膜形成性ポリマーに疎水性および若干の柔軟性を与えて、使用中に容易に薄片になって落ちないことを保証するために存在する。
【0063】
本発明の皮膜形成性ビニルポリマーの幾つかは、それ自身が抗微生物性である(すなわち、それらは抗微生物性が本来備わっている)。米国特許第5,408,022号明細書(イマザト(Imazato))は、ある種の第四級アミン官能ポリアクリレートは、抗微生物活性を有することを教示している。概して、これらは、少なくとも6個連続した炭素原子を有する少なくとも1つの有機部分を含む第四級アミン基を含む。意外なことに、短鎖第四級アンモニウム基(4個の有機置換基全てが、6個未満連続した炭素原子を有する)に基づくアクリルポリマーは、少なくとも8個、好ましくは少なくとも12個連続した炭素原子を有するアルキル基を有するモノマーと共重合した場合、かなりの抗微生物活性も具有できることが分かっている。好ましくは、該アルキル基は、多くても22個の炭素原子、より好ましくは多くても18個の炭素原子を有する。たとえば、トリメチルアミノエチルメタクリレートおよび2−エチルヘキシルアクリレートに基づくポリアクリレートポリマーは、驚くほどの抗微生物活性を示す。加えて、トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド塩およびラウリルメタクリレートに基づくポリアクリレートポリマーは、よりいっそう高い抗微生物活性を有すると考えられる。特に、トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド塩、ラウリルメタクリレート、およびメチルメタクリレートに基づくポリマーは、特に有効な抗微生物剤である。
【0064】
好ましくは、本発明の組成物の粘度は、ブルックフィールドRTVロトビスコ(Brookfield RVT ROTOVISCO)粘度計を使用して23℃で測定したとき、約1000cps以下である。したがって、本発明の皮膜形成性ポリマーは、好ましくは、実施例のセクションの方法に準拠してテトラヒドロフランで測定したとき、約0.75以下、好ましくは約0.5以下のインヘレント粘度を有する。しかし、十分な永続性を確保するためには、該皮膜形成性ポリマーのインヘレント粘度は、実施例のセクションの方法に準拠してテトラヒドロフランで測定したとき、好ましくは少なくとも約0.1である。
【0065】
低粘度組成物を維持するためには、該ビニルポリマーの分子量も、低く保つことが好ましい。好ましくは、該ビニルポリマーの分子量は、概して約350,000ダルトン以下、より好ましくは約250,000ダルトン以下、よりいっそう好ましくは約150,000ダルトン以下、最も好ましくは約100,000ダルトン以下である。
【0066】
1種以上の永続性がある皮膜形成性ビニルポリマーは、組成物の総重量を基準にして、少なくとも約2重量%、好ましくは少なくとも約3重量%、より好ましくは少なくとも約5重量%の総量で、本発明の組成物中に存在する。1種以上の永続性がある皮膜形成性ビニルポリマーは、組成物の総重量を基準にして、約10重量%以下、より好ましくは約8重量%以下の総量で、組成物中に存在する。
【0067】
高濃度の、永続性がある皮膜形成性ビニルポリマーは、PSA被覆製品の接着を促進すると考えられる。しかし、ある組成物では、特に50℃を超える温度に暴露されると不安定なため、高濃度はあり得ないかもしれない。
【0068】
好ましくは、該永続性がある皮膜形成性ビニルポリマーは、該界面活性剤より多い量で存在する。より好ましくは、永続性がある皮膜形成性ビニルポリマーと界面活性剤との比率は、少なくとも約1:1、より好ましくは少なくとも約1.3:1、最も好ましくは少なくとも約1.6:1である。
【0069】
好ましくは、永続性がある皮膜形成性ポリマーと該活性物質との重量比は、約0.2:1より大きく、より好ましくは約0.25:1〜約5:1の範囲内、最も好ましくは0.5:1〜約2:1の範囲である。
【0070】
皮膜形成性ポリマーの製造方法
上述の皮膜形成性ポリマーは、溶液重合およびエマルジョン重合を含む、多種多様な従来の遊離基重合方法で調製することができる。本発明で使用される具体的な重合方法は、実施例のセクションで検討する。
【0071】
1つの溶液重合方法では、該アルキル(メタ)アクリルモノマー、アミン基側鎖モノマー(好ましくは、第四級アンモニウムモノマーまたは第三級アミンモノマー)、および任意の他のモノマー(たとえばポリ(アルキレンオキシド)モノマー)、ならびに適当な熱重合開始剤、任意の連鎖移動剤、および溶剤を、ガラス容器に入れる。次いでこの反応容器を窒素でパージして、不活性雰囲気を創る。いったんパージしたら、容器内の溶液を加熱して、添加した熱開始剤を分解し、反応の経過中ずっと、この混合物を攪拌する。一般に、約20時間で約98〜約99%の変換が得られる。必要に応じて、溶剤を除去し、ポリマーを固体として、または代わりの溶剤中に溶解/分散させて、保存することができる。たとえば、該ポリマーは、エタノール中で重合させ、水を加え、エタノールを蒸留により除去することも可能である。必要であれば、適当な有機溶剤は、反応物質および生成物に対して不活性であり、かつ別の方法で反応に悪影響を及ぼさない有機液体であってもよい。このような溶剤としては、メタノール、エタノール、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン類、およびそれらの混合物などがある。溶剤の量は、概して、反応物質および溶剤の総重量を基準にして、約30〜約80重量%である。
【0072】
アミンオキシド側鎖基を含有するポリマーの場合、好ましくは、先ず対応する第三級アミンモノマーを使用して、ポリマーを作る。いったん重合が完了したら、適当な酸化剤を使用して、該第三級アミンをアミンオキシドに酸化する。酸化物形成反応は、約20〜約100℃またはそれより高い温度で、約10分〜数日間、実行することが可能である。過酸化物、オゾン、および他の酸化剤を含む、多数の酸化剤を使用することが可能である。たとえば、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過酢酸、メタクロロ過安息香酸、ベンゾイルペルオキシド、t−ブチルヒドロペルオキシド等々が、好適である。過酸化水素は潜在的に有毒な副産物を生成せずに分解することが可能なため、好ましい酸化剤は、過酸化水素である。
【0073】
第三級アミンの全部または一部を酸化することが望ましいこともある。酸化剤は、第三級アミン1モル当たり約0.5〜約3.0当量の酸化剤で加えることが可能である。好ましくは、過剰の酸化剤を使用して、第三級アミンの約50%より多く、より好ましくは約60%より多く、よりいっそう好ましくは約70%より多く、最も好ましくは約80%より多くを酸化する。概して、過酸化水素を使用するとき、過酸化水素約0.6〜約1.3当量/モルの第三級アミンを使用することが望ましいことが分かっている。過酸化水素を該ポリマー溶液に加え、攪拌しながら、約60〜約80℃に約3〜約20時間加熱する。残留酸化剤を除去することが必要な用途もある。アミンオキシド側鎖基含有モノマーを含むモノマーを使用して、本発明のアミンオキシドポリマーを作ることも可能である。
【0074】
活性物質
本発明の組成物は、好都合なことに、該組成物に組み入れられようと、または該組成物と接していようと、少なくとも1種の活性物質と相容性である(すなわち、生物活性およびエマルジョン安定性を保持する)。活性物質は、一般に、抗細菌、抗ウイルス薬、抗真菌等の抗微生物剤、ならびにヒドロコロチゾン等のコルチコステロイド類、および局所麻酔薬を含む。活性物質の様々な組合せを、本発明の組成物で使用することができる。
【0075】
好ましくは永続性がある、経皮的ドラッグ・デリバリー媒体を製造するために、全身に有効な医薬品を本発明の組成物に加えることが望ましいこともある。皮膚に塗布したとき、医薬品は、皮膚を越えて血流内に輸送される。代表的な医薬品は、米国特許第6,086,911号明細書(ゴッドベイ(Godbey))に開示されている。
【0076】
好ましい活性物質は、抗微生物剤である。本発明のある組成物は、抗微生物性を本来備えた皮膜形成性ポリマーを含むため、抗微生物剤を補足しなくても抗微生物活性を有することができるが、必要に応じて、さらなる抗微生物剤を組成物に加えてもよい。
【0077】
抗微生物剤の例としては、ヨウ素、および一般にヨードフォアと呼ばれるその複合形などが挙げられる。ヨードフォアは、元素状のヨウ素または三ヨウ化物と、ある種の担体との複合体である。こうしたヨードフォアは、ヨウ素溶解性を高めるばかりではなく、溶液中の遊離分子形ヨウ素のレベルを下げ、ヨウ素の徐放型貯蔵所を提供する役目をする。ヨードフォアは、ポリビニルピロリドン(PVP)等のポリマー、N−ビニルラクタムと他の不飽和モノマー、たとえばアクリレート類およびアクリルアミド類等(しかし、この限りではない)とのコポリマー、ポリエーテル含有界面活性剤を含む様々なポリエーテルグリコール類(PEG)、たとえばノニルフェノールエトキシレート類等々、ポリビニルアルコール類、ポリアクリル酸等のポリカルボン酸類,ポリアクリルアミド類、デキストロース等の多糖類の担体を使用して形成されてきた。米国特許第4,957,975号明細書(ウッドワード(Woodward))には、やはり本発明で使用するのに好適なヨードフォアであるプロトン化アミンオキシド界面活性剤−三ヨウ化物複合体も報告されている。
【0078】
好ましいヨードフォアは、ポビドンヨードである。これは、ポビドンヨードUSPとして商業的に入手することができ、利用可能なヨウ素が約9〜約12重量%で存在する、K30ポリビニルピロリドン、ヨウ素、およびヨウ化物の複合体である。
【0079】
他の抗微生物剤は、該組成物と相容性である限り、含まれていてもよい。これらは、グルコン酸クロルヘキシジン(CHG)等のクロルヘキシジン塩類、パラクロロメタキシレノール(PCMX)、トリクロサン、ヘキサクロロフェン、グリセリンおよびプロピレングリコールの脂肪酸モノエステル類、たとえばグリセロールモノラウレート、グリセロールモノカプリレート、グリセロールモノカプレート、プロピレングリコールモノラウレート、プロピレングリコールモノカプリレート、プロピレングリコールモノカプレート、フェノール類、(C12〜C22)疎水物質および第四級アンモニウム基を含む界面活性剤およびポリマー、ポリヘキサメチレンビグアニド等のポリ第四級アミン類、第四級シラン類、銀、塩化銀、酸化銀およびスルファジアジン銀等の銀塩類、メチル、エチル、プロピルおよびブチルパラベン類、オクテニデン(octenidene)、等々、ならびにそれらの組合せなどを包含するが、この限りではない。抗微生物剤の様々な組合せを、本発明の組成物で使用することができる。
【0080】
本発明の組成物を使用して皮膚に送達することが可能な他の活性物質としては、化粧品組成物の成分などがある。これらは、皮膚軟化薬、湿潤剤、コンディショナー、保湿剤、ビタミン類、ハーブ・エキス、酸化防止剤、ステロイド剤または他の抗炎症薬、血管拡張薬、α−ヒドロキシ酸またはβ−ヒドロキシ酸等のエクスフォリアント、成長因子、酵素類、漂白剤またはカラーリング剤、乳化剤、人工日焼け剤、日焼け促進剤、皮膚無痛化剤、スキンタイトニング剤、しわ防止剤、皮膚修復剤、皮脂抑制剤、皮脂刺激物質、プロテアーゼインヒビター、抗掻痒成分、育毛抑制剤、育毛促進剤、皮膚センセート、抗アクネ菌トリートメント、除毛剤、アストリンゼン、脱毛剤、または魚の目、タコまたはイボの除去剤、グリッター等の装飾作用物、アロマテラピー剤を含む芳香剤、香料、日焼け止め剤、虫除け剤、デオドラント剤および制汗剤、毛染め剤、脱色剤、フケ取り剤を包含するが、この限りではない。活性物質の様々な組合せを、本発明の組成物で使用することができる。
【0081】
好ましくは、1つ以上の活性物質は、組成物の総重量を基準にして、少なくとも約0.05重量%、より好ましくは少なくとも約0.25重量%のレベルで、本発明の組成物中に存在する。1種以上の活性物質は、好ましくは、組成物の総重量を基準にして、約10.0重量%以下、より好ましくは、約8.0重量%以下のレベルで存在する。
【0082】
ヨードフォアを含む、ある種の組成物に関しては、通常は、利用可能なヨウ素レベルに換算して濃度を記述する方が好都合である。好ましくは、ヨウ素からであろうと、またはヨードフォアからであろうと、またはそれらの組合せからであろうと、利用可能なヨウ素濃度は、組成物の総重量を基準にして、少なくとも約0.25重量%、より好ましくは少なくとも約0.5重量%である。好ましくは、利用可能なヨウ素は、組成物の総重量を基準にして、約1.5重量%以下、好ましくは約1重量%以下で存在する。
【0083】
ほとんどの組成物に関する利用可能なヨウ素は、ポビドンヨードに関する米国薬局方医薬品各条(United States Pharmacopeia Official Monographs for Povidone Iodine)に記載の方法に従って決定することが可能である。ある調合物は、他の陰イオン種等の、本方法を妨害する可能性がある成分を含むことがある。このような理由で、正確さを保証するために適当な標準を実行しなければならず、また、正確さを保証するために溶剤系または試薬を変更することが必要な場合もある。当業者は、こうした考慮すべき事項を正しく理解するであろう。
【0084】
水溶性の活性物質の永続性を保証するためには、皮膜形成性ポリマーと活性物質との重量比は、好ましくは少なくとも約0.25:1、より好ましくは少なくとも約0.5:1である。好ましくは、皮膜形成性ポリマーと活性物質との重量比は、約5:1以下、より好ましくは約2:1以下である。
【0085】
界面活性剤
皮膜形成性ポリマーを用いて調合するとき、組成物における該ポリマーの溶解性および安定性を高めるために、1種以上の界面活性剤を含むことが特に望ましい。加えて、界面活性剤は、組成物が皮膚を湿らせて、滑らかな一様な塗膜を確保するのに役立つ。塗膜が薄いために速やかに乾燥し、容易なエラーのない塗布を確実にするために、全適用範囲を有する薄い一様な塗膜を提供することが特に重要である。
【0086】
使用する場合、1種以上の界面活性剤は、概して、組成物の総重量を基準にして少なくとも約0.5重量%の量で、本発明の組成物に添加される。好ましくは、1種以上の界面活性剤は、概して、組成物の総重量を基準にして、約10重量%以下、より好ましくは約7重量%以下、よりいっそう好ましくは約5重量%以下、最も好ましくは約3重量%以下の量で、本発明の組成物に添加される。界面活性剤が少なすぎると、特に高温に曝露されたとき、結果として不安定な組成物になる。界面活性剤が多すぎると、皮膚上の乾いた組成物の永続性を害することがある。こうした理由で、界面活性剤レベルは、概して、50℃で安定性を保証するのに必要な全界面活性剤の最小レベルを僅かに超えるように選択される。
【0087】
さらに、塩化ナトリウム,硫酸ナトリウム等々の低無機塩不純物を有する界面活性剤を使用することが好ましい。好ましくは、このような塩含量は、水中に20%の界面活性剤溶液が、約100マイクロモー/cm未満、より好ましくは約85マイクロモー/cm未満、最も好ましくは約75マイクロモー/cm未満の導電率を有するように、十分に低くなければならない。
【0088】
下記のタイプの界面活性剤を必要に応じて使用することができる:
a.非イオン性界面活性剤。特に有用な界面活性剤は、非イオン性界面活性剤である。ポリアルコキシ化した、特にポリエトキシル化した、非イオン性界面活性剤は、水溶液状の本発明の皮膜形成性ポリマーを特に良好に安定化することができる。概して、有用なポリアルコキシ化非イオン性界面活性剤は、好ましくは、少なくとも約14、より好ましくは少なくとも約16の親水性/親油性バランス(HLB)を有する。有用なポリアルコキシ化非イオン性界面活性剤は、好ましくは約19以下のHLBを有する。非イオン性界面活性剤の組合せを使用するとき、非イオン性界面活性剤系のHLBは、重量平均HLBを使用して決定される。本明細書で使用するとき、HLBは、界面活性剤分子におけるエチレンオキシド部分の重量%の5分の1と定義される。
【0089】
以下に、特に有用であった非イオン型界面活性剤を挙げる:
1.ポリエチレンオキシド伸長(extended)ソルビタンモノアルキレート類(すなわち、ポリソルベート類)。特に、ニッコール(NIKKOL)TL−10として(バレット・プロダクツ(Barret Products)から)販売されているポリソルベート(Polysorbate)20が非常に有効である。
【0090】
2.ポリアルコキシ化アルカノール類。少なくとも約14のHLBを有する、デラウェア州ウィルミントンにあるICIスペシャルティ・ケミカルズ(ICI Specialty Chemicals,Wilmington,DE)からブリジ(BRIJ)という商品名で販売されているもの等の界面活性剤が有用である。特に、ブリジ(BRIJ)78およびブリジ(BRIJ)700は、それぞれ20モルおよび100モルのポリエチレンオキシドを有するステアリルアルコールエトキシレートであり、非常に有用である。ニュージャージー州マウント・オリーブにあるBASFコープ、パーフォーマンス・ケミカルズ事業部(BASF Corp.,Performance Chemicals Div.,Mt.Olive,NJ.)からプルラファク(PLURAFAC)A−39の商品名で販売されているセテアレス(ceteareth)55は、やはり有用である。
【0091】
3.ポリアルコキシ化アルキルフェノール類。このタイプの有用な界面活性剤としては、少なくとも約14のHLB値を有するポリエトキシル化したオクチルフェノール類またはノニルフェノール類であり、それぞれ、イコノール(ICONOL)およびトリトン(TRITON)の商品名で、ニュージャージー州マウント・オリーブにあるBASFコープ、パーフォーマンス・ケミカルズ事業部(BASF Corp.,Performance Chemicals Div.,Mt.Olive,NJ.)およびコネチカット州ダンベリーにあるユニオン・カーバイド・コープ(Union Carbide Corp.,Danbury,CT)から販売されている。例としては、トリトン(TRITON)X100(ユニオン・カーバイド・コープ(Union Carbide Corp.,Danbury,CT)から販売されている、15モルのエチレンオキシドを有するオクチルフェノール)およびイコノール(ICONOL)NP70およびNP40(ニュージャージー州マウント・オリーブにあるBASFコープ、パーフォーマンス・ケミカルズ事業部(BASF Corp.,Performance Chemicals Div.,Mt.Olive,NJ.)から販売されている、それぞれ、40モルおよび70モルのエチレンオキシド単位を有するノニルフェノール)などが挙げられる。これらの界面活性剤の硫酸化誘導体およびリン酸化誘導体もやはり有用である。このような誘導体の例としては、ローダペクス(RHODAPEX)CO−436という商品名でニュージャージー州デートンにあるロージア(Rhodia,Dayton,NJ)から販売されている、アンモニウムノノキシノール−4−硫酸塩などが挙げられる。
【0092】
4.ポリキサマー(Polaxamer)。エチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO)のブロックコポリマーを主成分とする界面活性剤は、本発明の皮膜形成性ポリマーの安定化に有効であり、また十分な湿潤を提供することが証明されている。EO−PO−EOブロックも、PO−EO−POブロックも、HLBが少なくとも約14、好ましくは少なくとも約16である限り、十分に機能することが予期される。このような界面活性剤は、プルロニック(PLURONIC)およびテトロニック(TETRONIC)という商品名で、ニュージャージー州マウント・オリーブにあるBASFコープ、パーフォーマンス・ケミカルズ事業部(BASF Corp.,Performance Chemicals Div.,Mt.Olive,NJ.)から販売されている。BASFから販売されているプルロニック(PLURONIC)界面活性剤は、上述とは別の仕方で算出されるHLB値が報告されている。このような状況では、BASFによって報告されているHLB値を使用すべきである。たとえば、好ましいプルロニック(PLURONIC)界面活性剤は、L−64およびF−127であり、それぞれ、15および22というHLBを有する。該プルロニック(PLURONIC)界面活性剤は、本発明の組成物の安定化に非常に有効であり、該活性物質としてヨウ素を用いると非常に有効であるが、活性物質としてポビドンヨードを使用する組成物の抗微生物活性を低減する可能性がある。
【0093】
5.ポリアルコキシ化エステル類。ポリアルコキシ化グリコール類、たとえばエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、等々は、部分的にまたは完全にエステル化されていてもよい、すなわち、1つ以上のアルコールが、(C8〜C22)アルキルカルボン酸でエステル化されていてもよい。少なくとも約14、好ましくは少なくとも約16のHLBを有するこのようなポリエトキシル化エステル類は、本発明の組成物での使用に好適である。
【0094】
6.アルキルポリグルコシド類。アルキルポリグルコシド類、たとえば9欄、44行目から始まる米国特許第5,951,993号明細書(ショルツ(Scholz))に記載のものは、本発明の皮膜形成性ポリマーと相容性であり、かつポリマー安定性の一助となる可能性がある。例としては、(C8〜C16)アルキル鎖長と、10.3炭素の平均鎖長および1〜4グルコース単位を有するグルコパン(glucopon)425などが挙げられる。
【0095】
b.両性界面活性剤。両性型界面活性剤としては、プロトン化されていてもよい第三級アミン基を有する界面活性剤、ならびに第四級アミン含有双極性イオン性界面活性剤などがある。以下に、特に有用であったものを挙げる:
1.アンモニウムカルボキシレート両性。このクラスの界面活性剤は、次式:
9−(C(O)−NH)a−R11−N+(R102−R12−COO-
[式中:a=0または1であり;R9は、(C7〜C21)アルキル基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状基)、(C6〜C22)アリール基、または(C6〜C22)アラルキルまたはアルカリール基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状アルキル基)であって、R9は、場合によって、1つ以上のN原子、O原子、またはS原子、または1つ以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、またはアミン基で置換されていてもよく;R10は、Hまたは(C1〜C8)アルキル基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状基)であって、R10は、場合によって1つ以上のN原子、O原子、またはS原子、または1つ以上のヒドロキシル基、カルボキシル基、アミン基、(C6〜C9)アリール基、または(C6〜C9)アラルキルまたはアルカリール基で置換されていてもよく;R11およびR12は、互いに独立して、同じであってもまたは異なってもよく、また場合によって1つ以上のN原子、O原子、またはS原子、または1つ以上のヒドロキシル基またはアミン基で置換されていてもよい(C1〜C10)アルキレン基である]で表すことができる。
【0096】
より好ましくは、上式において、R9は(C1〜C16)アルキル基であり、R10は、好ましくはメチル基またはベンジル基で置換された、最も好ましくはメチル基で置換された、(C1〜C2)アルキル基である。R10がHであるとき、該界面活性剤は、より高いpH値で、Na、K、Li等の陽イオン性対イオンを有する第三級アミン、または第四級アミン基として存在し得ると理解される。
【0097】
このような両性界面活性剤の例としては、ある種のベタイン、たとえばココベタインおよびコカミドプロピルベタイン(マッカム(MACKAM)CB−35およびマッカム(MACKAM)Lという商品名で、イリノイ州ユニバーシティ・パークにあるマッキンタイヤ・グループ・リミテッド(McIntyre Group Ltd.,University Park,IL)から販売);ラウロアンフォアセテートナトリウム等のモノアセテート類;ラウロアンフォアセテート二ナトリウム等のジアセテート類;アミノ−およびアルキルアミノ−プロピオネート類、たとえばラウラミノプロピオン酸(それぞれ、マッカム(MACKAM)1L,マッカム(MACKAM)2L,およびマッカム(MACKAM)151Lという商品名で、マッキンタイヤ・グループ・リミテッド(McIntyre Group Ltd.)から販売)などが挙げられるが、この限りではない。
【0098】
2.スルホン酸アンモニウム両性。このクラスの両性界面活性剤は、しばしば「スルテイン(sultaine)類」または「スルホベタイン類」と呼ばれ、次式
9−(C(O)−NH)a−R11−N+(R102−R12−SO3-
[式中:R9〜R12および「a」は、上で定義されている]で表される。例としては、コカミドプロピルヒドロキシスルテイン(マッカム(MACKAM)50−SBとして、マッキンタイヤ・グループ・リミテッド(McIntyre Group Ltd.)から販売)などが挙げられる。
【0099】
c.陰イオン性界面活性剤。以下に、特に有用であった陰イオン型の界面活性剤を挙げる:
1.スルホン酸塩および硫酸塩。好適な陰イオン性界面活性剤としては、スルホン酸塩および硫酸塩、たとえば、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸、アルキルスルホン酸、アルキルエーテルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンエーテル硫酸、アルキルスルホ酢酸、第二級アルカンスルホン酸、第二級アルキル硫酸等々がある。これらの多くは、式:
9−(OCH2CH2n(OCH(CH3)CH2p−(Ph)a−(OCH2CH2m−(O)b−SO3-+
および
9−CH[SO3−M+]−R13
[式中:aおよびbは、0または1であり;n、p、m=0〜100(好ましくは0〜40、より好ましくは0〜20)であり;R9は上に定義されている通りであり;R13は、場合によって、N原子、O原子、またはS原子またはヒドロキシル基、カルボキシル基、アミド基、またはアミン基で置換されていてもよい(C1〜C12)アルキル基(飽和した直鎖状、分枝状、または環状基)であり;PH=フェニルであり;Mは、Na、K、Li、アンモニウム、トリエタノールアミン等のプロトン化第三級アミン、または第四級アンモニウム基等の陽イオン性対イオンである]で表される。
【0100】
上式において、エチレンオキシド基(すなわち、「n」基および「m」基)およびプロピレンオキシド基(すなわち、「p」基)は、逆の順序、ならびにランダム配列、連鎖配列またはブロック配列で存在することがある。好ましくは、このクラスの場合、R9は、R14−C(O)N(CH3)CH2CH2−等のアルキルアミド基、ならびにエステル基−OC(O)−CH2−を含み、ここで、R14は、(C8〜C22)アルキル基(飽和した分枝状、直鎖状、または環状基)である。
【0101】
例としては、アルキルエーテルスルホン酸、たとえば、イリノイ州ノースフィールドにあるステパン・カンパニー(Stepan Company,Northfield,IL)から販売されているポリステップ(Polystep)B12(n=3〜4,M=ナトリウム)およびB22(n=12,M=アンモニウム)等のラウリルエーテル硫酸、およびメチルタウリンナトリウム(ニッコール(NIKKOL)CMT30という商品名で、日本の東京にある日光ケミカルズ株式会社(Nikko Chemicals Co.,Tokyo,Japan)から販売);第二級アルカンスルホン酸、たとえば、ノースカロライナ州シャーロットにあるクラリアント・コープ(Clariant Corp.,Charlotte,NC)から販売されているナトリウム(C14〜C17)第二級アルカンスルホン酸類(α−オレフィンスルホン酸)であるホスタプール(Hostapur)SAS;メチル−2−スルホアルキルエステル、たとえばアルファステ(ALPHASTE)PC−48という商品名でステパン・カンパニー(Stepan Company)から販売されているメチル−2−スルホ(C12〜16)エステルナトリウムおよび2−スルホ(C12〜C16)脂肪酸二ナトリウム;ラウリルスルホ酢酸ナトリウム(商品名ランタノール(LANTHANOL)LAL)およびラウレススルホコハク酸二ナトリウム(ステパンマイルド(STEPANMILD)SL3)として、ともにステパン・カンパニー(Stepan Company)から販売されている、アルキルスルホ酢酸およびアルキルスルホコハク酸;アルキル硫酸、たとえばステパノール(STEPANOL)AMという商品名でステパン・カンパニー(Stepan Company)から販売されているラウリル硫酸アンモニウムなどが挙げられるが、この限りではない。
【0102】
2.リン酸塩。好適な陰イオン性界面活性剤は、アルキルリン酸、アルキルエーテルリン酸、アラルキルリン酸塩、およびアラルキルエーテルリン酸塩等のリン酸塩も包含する。その多くは、式:
[R9−(Ph)a−O(CH2CH2O)n(CH2CH(CH3)O)pq−P(O)[O-+r
[式中:PH、R9、a、n、p、およびMは、上に定義されており;rは、0〜2であり;q=1〜3である;が、但し、q=1のとき、r=2であり、q=2のとき、r=1であり、q=3のとき、r=0である]で表すことができる。上述の通り、エチレンオキシド基(すなわち、「n」基)およびプロピレンオキシド基(すなわち、「p」基)は、逆の順序、ならびにランダム配列、連鎖配列またはブロック配列で存在することがある。
【0103】
例としては、一般に、トリラウレス−4−リン酸と呼ばれる、ホスタファット(HOSTAPHAT)340KLという商品名でクラリアント・コープ(Clariant Corp)から販売されている、モノ−、ジーおよびトリ−(アルキルテトラグリコールエーテル)−o−リン酸エステルの混合物、ならびにクロダフォス(CRODAPHOS)SGという商品名でニュージャージー州パーシッパニーにあるクローダ・インク(Croda Inc.,Parsipanny,NJ)から販売されているPPG−5セテス10リン酸塩などが挙げられる。
【0104】
3.アミンオキシド類。好適な陰イオン性界面活性剤は、次式:
(R93−N→O
[式中:R9は上に定義されており、各R9は、同じであってもまたは異なってもよい]のアルキルおよびアルキルアミドアルキルジアルキルアミンオキシドを含むアミンオキシドも包含する。場合により、アルキルモルホリン、アルキルピペラジン等々のアミンオキシド等の界面活性剤を形成するために、R9基は、結合して窒素を含む複素環を形成してもよい。好ましくは、2個のR9基はメチルであり、1個のR9は、(C12〜C16)アルキルまたはアルキルアミドプロピル基である。
【0105】
アミンオキシド界面活性剤の例としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、ラウリルアミドプロピルジメチルアミンオキシド、およびセチルアミンオキシドである、アンモニクス(AMMONYX)LO、LMDO、およびCOという商品名で、販売されている(全て、ステパン・カンパニー(Stepan Company)から)ものなどが挙げられる。
【0106】
必要に応じて、様々な界面活性剤の組合せを使用することができる。たとえば、非イオン性界面活性剤は、上述のある陰イオン性界面活性剤と組み合せて、ある利益のために使用することができる。たとえば、1つの好ましい界面活性剤系は、ポリソルベートおよびポリエトキシル化アルキルアルコール(ポリソルベート20+ステアレス−100)の組合せを主成分とする。
【0107】
ある好ましい陰イオン性界面活性剤は、ポリアルコキシレート基を含む。これらは、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩、およびホスホン酸塩を包含する。
【0108】
ある実施形態では、十分に乾燥させた後、組成物中の他成分と会合するかまたは潜在的に会合する1種以上の界面活性剤を選択することが望ましい。たとえば、ポリアミンオキシド皮膜形成性ポリマーと組み合せた、ある種の陰イオン性界面活性剤、たとえばメチル−2−スルホアルキルエステル(たとえば、アルファステップ(ALPHASTEP)PC−48という商品名でステパン・カンパニー(Stepan Company)から販売されているメチル−2−スルホ(C12〜16)エステルナトリウムおよび2−スルホ(C12〜C16)脂肪酸二ナトリウム)は、該組成物の乾燥皮膜の永続性およびPSA被覆製品の接着力を高めるようである。ある種の硫酸塩およびスルホン酸塩を含有する界面活性剤もまた、乾燥時間を有意に減少させるようである。このメカニズムは明白ではない。理論に縛られるつもりはないが、これらの界面活性剤は、乾燥中に、皮膜形成性ポリマー上の陽イオン性アミン基と会合して、より疎水性の複合体を形成する可能性がある。硫酸塩およびスルホン酸塩、リン酸塩およびホスホン酸塩、ならびにスルホベタイン型界面活性剤は、乾燥時間を有意に減少させることが証明されている。
【0109】
媒体
本発明の組成物に適する液体媒体としては、場合によって、アセトンまたはアルコール、特に(C1〜C4)アルコール(すなわち、低級アルコール)、たとえばエタノール、2−プロパノール、およびn−プロパノール、およびそれらの混合物と組み合せた、水などがある。好ましい媒体は、注射可能級の水、すなわち、USP級「注射用水」であるが、蒸留水および脱イオン水等の、他の形態の精製水も適する。
【0110】
しかし、無傷の皮膚に塗布する場合、エタノール、イソプロパノール、またはn−プロパノール等の低級アルコールを含むことが望ましい可能性がある。こうしたアルコールが、迅速な微生物の死滅の一助となることは、周知である。こうした用途では、アルコールと水との比率は、重量基準で、好ましくは少なくとも約60:40、より好ましくは少なくとも約70:30である。こうした高濃度でアルコールを加えることはまた、該組成物の乾燥時間も減少させる。
【0111】
低級アルコールを使用するとき、界面活性剤を組み入れること(以下に、さらに詳細に検討する)は、必要なこともまたは必要でないこともある。界面活性剤を除去することにより、乾燥皮膜上へのPSA被覆製品の接着がよくなる可能性がある場合もある。
【0112】
特に好ましい組成物は水を含み、かつ揮発性有機溶剤(すなわち、密閉式引火点が約140°F(60℃)より高いもの)、たとえば、アセトン、低級アルコール類、アルカン類、揮発性シリコーン類等々を、実質的に含まない(すなわち、約10重量%未満)。
【0113】
水性調合物は、皮膚組織にも粘膜組織にも優しいため、好ましく、また、創傷クレンザーとして、開放した創傷への使用にさえ適する可能性がある。さらに、有機溶剤を含有する組成物は、引火性である可能性もあり、このことは、一般に、製品の輸送および取り扱いに際して考慮すべき事項である。
【0114】
本発明の好ましい組成物は、組成物の総重量を基準にして、約5重量%未満の揮発性有機溶剤、より好ましくは約3重量%未満の揮発性有機溶剤を含む。こうした好ましい水性組成物は、一般に不燃性であり、密閉式引火点が約140°F(60℃)より高い。約4重量%未満の低級アルコール類(C1〜C4)を加えることにより、組成物の湿潤性を改良し、さらに引火点を約140°F(60℃)より上に維持することが可能である。引火点は、テスト方法ASTM D3278−96に準拠して測定される。
【0115】
任意のヒドロキシカルボン酸緩衝剤
本発明の組成物は、保存中のpHドリフトを防止するために、緩衝化されていることが好ましい。たとえば、ヨウ素含有系では、pHを約2〜約6に、好ましくは約3〜約5に、維持することが重要なことは周知である。pHが約6より上に上昇すると、ヨウ素は、急速にヨウ化物に変換され、したがって抗微生物剤の効果が不活性化される可能性がある。はるかに低い約2のpH付近では、該組成物は、刺激性になることがある。本発明の組成物では、pHは、好ましくは約3.0〜約4.5、より好ましくは約3.5〜約4.2に調整される。
【0116】
従来の組成物は、約0.1〜約2重量%の濃度の緩衝剤を含んでいたが、本発明の好ましい組成物は、はるかに高い緩衝剤濃度で使用することができるある種のヒドロキシカルボン酸緩衝剤を含んでもよい。好ましくは、該ヒドロキシカルボン酸緩衝剤は、組成物の総重量を基準にして、少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約6重量%の量で存在する。
【0117】
意外なことに、こうした組成物(すなわち、好ましくは約3.0〜約4.5、より好ましくは約3.5〜約4.2に調整されたpH、および比較的高いヒドロキシカルボン酸緩衝剤濃度(少なくとも約5重量%、より好ましくは少なくとも約6重量%)を有する)は、(使用濃度の)アリコートをウサギ眼に点眼することによって実施される試験により示される通り、組織(たとえば、皮膚組織および粘膜組織)に対して実質的に非刺激性である。このことは、ウサギ眼刺激テスト(Rabbit Eye Irritation Test)に準拠して試験するとき、本発明の組成物は、たとえあるとしても、非常にわずかな角膜混濁を引き起こし、約96時間以下で、好ましくは約72時間以下で、実質的に完全に正常に戻る(すなわち、透明である、すなわちドレイズ(Draize)スコア0を有する)ことを示す、実施例で例証される。このことから、該組成物は、皮膚組織および粘膜組織への使用に対して非常に優しいであろうことが分かる。前報では、高レベルの、酸性pHのα−ヒドロキシ酸は、皮膚を刺激する可能性があることを示していたため、これは意外である。
【0118】
このレベルの緩衝剤は、抗微生物剤としてポビドンヨード(特にポビドンヨードUSP)を含む消毒剤組成物に特に望ましい。こうした系では、急速な微生物の死滅のレベルが有意に上昇し、また幾つかの系では、ヒドロキシカルボン酸のモル濃度と直線様式で、上昇する。
【0119】
適当なヒドロキシカルボン酸緩衝剤としては、「消毒剤組成物および方法(ANTISEPTIC COMPOSITIONS AND METHODS)」と題する、出願人の譲受人の同時係属中米国特許出願第10/051,719号明細書(弁理士事件整理番号第(Attorney Docket No.)57338US002号)に記載のものなどがある。
【0120】
本発明のヒドロキシカルボン酸緩衝剤は、好ましくは、β−およびα−ヒドロキシ酸(それぞれ、BHA、AHA、集合的にヒドロキシ酸(HA)と呼ばれる)、それらの塩類、ラクトン類、および/またはその誘導体を含む。これらは、モノ−、ジー、およびトリ−官能カルボン酸を含んでもよい。特に好ましいのは、1個または2個のヒドロキシル基、および1個または2個のカルボン酸基を有するHAである。好適なHAとしては、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、2−ヒドロキシブタン酸、3−ヒドロキシブタン酸、マンデル酸、グルコン酸、酒石酸、サリチル酸、ならびにそれらの誘導体(たとえば、ヒドロキシル、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、アルキル基、ハロゲン類、ならびにそれらの組合せで置換された化合物)などがあるが、この限りではない。好ましいHAとしては、乳酸、リンゴ酸、およびクエン酸などがある。これらの酸類は、D形、L形、またはDL形であってもよく、遊離酸、ラクトン類、またはその塩類として存在してもよい。他の好適なHAは、米国特許第5,665,776号明細書(ユ(Yu))に記載されている。ヨウ素と、特にポビドンヨードと、使用するのに好ましいHAは、乳酸およびリンゴ酸である。必要に応じて、ヒドロキシカルボン酸類の様々な組合せを使用することができる。
【0121】
ヒドロキシカルボン酸緩衝剤は、好ましくは、少なくとも約0.3モル濃度、より好ましくは少なくとも約0.45モル濃度、最も好ましくは少なくとも約0.6モル濃度で存在する。皮膚上での非常に急速な微生物の死滅が望まれる調合物の場合、ヒドロキシカルボン酸緩衝剤濃度は、0.7モル濃度を上回る。
【0122】
一般に、使用組成物の重量%で表したヒドロキシカルボン酸緩衝剤の濃度は、組成物の重量を基準にして、少なくとも約5重量%、しばしば少なくとも約7重量%である。ヒドロキシカルボン酸緩衝剤の濃度は、組成物の重量を基準にして、好ましくは約15重量%以下、より好ましくは約10重量%以下、最も好ましくは約5重量%以下である。幾つかの用途では、ヒドロキシカルボン酸緩衝剤のはるかに高い濃度を有する濃縮物を供給することが好都合なこともあるが、使用濃度に希釈したとき、指定された範囲内に入る。
【0123】
好ましくは、ヒドロキシカルボン酸(「HA」)緩衝剤(遊離酸、ならびにそのラクトン類、その塩類、またはその誘導体)と抗微生物剤(消毒剤組成物の場合)との比率は、少なくとも約4.0グラムのHA緩衝剤/グラム利用可能なヨウ素、より好ましくは、少なくとも約6.5グラムのHA緩衝剤/グラム利用可能なヨウ素、最も好ましくは、少なくとも約9.0グラムのHA緩衝剤/グラム利用可能なヨウ素である。
【0124】
他の任意の成分
所望の効果を得るために、ヒドロキシカルボン酸緩衝剤のほかにも、様々な他の成分を本発明の組成物に加えることが可能である。これらは、皮膚軟化薬および湿潤剤、たとえば、米国特許第5,951,993号明細書(ショルツ(Scholz))に記載のもの、芳香剤、着色料、粘着付与剤、可塑剤等々を包含するが、この限りではない。
【0125】
ある実施形態では、特に全身的に有効な医薬品を含むものでは、浸透促進剤を加えることが特に魅力的なことがある。こうした作用物質の幾つかは、好ましくは、ラウリルアルコール、オレイルアルコール、ラウリルアミドDEA、ラウリルピロリドン−5−カルボキシレート、およびアスコルビン酸パルミチン酸エステル等の油相中に含まれているが、グリセリン、プロピレングリコール、およびテトラグリコールのような、水性相に含まれていることが好ましいものもある。他の浸透促進剤は、米国特許第6,086,911号明細書(ゴッドベイ(Godbey))に開示されている。
【0126】
低粘着性を有する、または無粘着性の、好ましい実施形態の調合物
本発明の好ましい組成物は、タオルまたはシンプルガーゼ等の水に浸した布地で除去することができる、低粘着性または非粘着性の乾燥皮膜を提供する。乳房の下または皮膚厚内等の、皮膚が一緒にくっつくのを防止するためには、低粘着性が望ましい。
【0127】
粘着性は、組成物の皮膜約4ミリグラム(mg)/平方センチメートルの皮膚を内側前腕に伸ばし、これを完全に乾かすことによって測定することができる。次いで、乾いた親指(テスト前に、アイボリー(IVORY)石鹸で洗って完全に乾かした)を、乾いた皮膜に押し付けて、直ちに離す。好ましい調合物では、10%ポビドンヨード溶液(たとえば、ベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)という商品名で、コネチカット州ノーウォークにあるパーデュー・フレデリック・カンパニー(Purdue Frederick Company,Norwalk,CT)から販売されているもの)の性能と似て、粘着性の知覚は本質的にない。最も好ましいプレップも、ジョージア州ロズウェルにあるキンバリー・クラーク(Kimberly−Clark,Roswell,GA)から販売されているクリネックス(KLEENEX)(登録商標)ティッシュ等のティッシペーパーを、プレップ上に押し付けて離すことにより、評価することができる。このティッシュは、その自重で落下しなければならない。皮膚のタイプにはばらつきがあるため、これは、被験組成物を塗布した多数の被験者および多数の検討者で行わなければならない。
【0128】
乾燥した組成物の粘着性は、永続性がある皮膜形成性ポリマーのTg、および皮膜を可塑化することが可能な調合物中の親水性添加物(たとえば、グリコール類、ある種の低分子量有機酸類、ある種の界面活性剤、抗微生物剤、等々)のレベル等の、様々な因子に起因する可能性がある。たとえば、ある種のヨードフォア、たとえばPEG系またはPVP系のヨードフォアは、低分子量親水性化合物によって可塑化され得る。こうした化合物は、さらに、皮膜中に水を保持して、粘着性に寄与する。
【0129】
しかし、非常に親水性であるにもかかわらず、本発明の好ましい有機酸緩衝剤は、高い粘着性に著しく寄与しない。理論に縛られるつもりはないが、これは、カルボン酸とピロリドン環カルボニルまたはヨードフォアのエーテル酸素との間の水素結合会合に起因する可能性がある。
【0130】
該調合物が、皮膚温度で感圧接着剤である、永続性がある皮膜形成性ポリマーを含むのであれば、乾いた組成物の粘着性は、特に高くてもよい。このような組成物の場合、粘着性であってもよい他と同様に、ある種の賦形剤を加えて、粘着性を下げることができる。たとえば:高Tgポリマー;ある種の多官能酸;およびある種の界面活性剤;を加えることによって、粘着性を調節することができる。
【0131】
ある種の高Tgポリマー、たとえば、少なくとも約30℃、好ましくは少なくとも50℃、より好ましくは少なくとも55℃、最も好ましくは少なくとも約70℃のTgを有するものは、本発明の組成物の粘着性を有意に低下させることができる。好適なこのようなポリマーは、ポリビニルアルコールを包含する。粘着性を低下させるために好ましい高Tgポリマーは、約97%超の加水分解度を有する、加水分解したポリビニルアルコール(PVA)である。このような材料は、セルボール(CELVOL)305という商品名で、98〜98.8%加水分解したPVAとして、テキサス州ダラスにあるセラニーズ・リミテッド(Celanese Ltd.,Dallas,TX)から販売されている(Tgは、75〜80℃と報告されている)。この材料は、23℃、水中に4%で、わずか4.5〜5.5cpsという粘度を有する比較的低分子量のものであるため、特に望ましい。また、この材料はかなり親水性であるが、加水分解したPVAは、乾いた本発明の組成物の永続性に悪影響を及ぼさない。理論に縛られてはいないが、これらのポリマーは、冷水可溶性ではなく、したがって、いったん乾燥するとその後は溶液に戻らないため、高度の加水分解は、永続性に悪影響を及ぼさずに、低粘着性に寄与すると考えられる。
【0132】
ある種の多官能酸は、本発明の組成物の粘着性を劇的に低下させることができることも判明している。たとえば、リンゴ酸は、等モル量の乳酸を有する類似した調合物と比較して、調合物の粘着性を低下させることが可能である。3個以上のカルボン酸を有する分子は、ある種の組成物の粘着性を低下させる際に、特に有効である。たとえば、第四級アンモニウム側鎖官能基モノマーおよび長鎖アルキル基モノマーを含むPSA皮膜形成性ポリマーを有するある種の組成物は、クエン酸を加えることにより、非粘着化することができる。乾燥粘着性である調合物は、クエン酸3%で非常に低い粘着性を有し、またクエン酸5%で本質的に粘着性を持たないように改質することができる。理論に縛られてはいないが、こうした多官能酸は、皮膜形成性ポリマー上の第四級アンモニウム基とイオン架橋を形成することが可能であると考えられる。
【0133】
ある種の界面活性剤は、本発明の組成物の粘着性を低下させることができる。特に有効なものは、シリコーンコポリオール界面活性剤であり、これは、ポリアルキレングリコールのペンダント側鎖を有するポリジアルキルシロキサンを主成分とする界面活性剤である。こうした界面活性剤の多くは、調合物の粘着性を劇的に低下させるが、こうした界面活性剤のほとんどは、また、乾燥したプレップ上へのPSA被覆製品の接着を阻害した。ある種の低分子量シリコーンコポリオール、たとえば、メイシル(MASIL)SF−19CGという商品名で、PPG・インダストリーズ(PPG Industries)から販売されているものは、組成物の粘着性を低下させることができる上に、PSA被覆製品の接着を著しく阻害しない。
【0134】
また、本質的にPSAではないポリマーを使用することにより、組成物の粘着性を低下させることができる。こうしたポリマーは、概して、約30℃より高いガラス転移温度を有する。たとえば、多量の短鎖アルキル基を有するポリマーは、高いガラス転移温度を有する傾向があり、したがって、実質的に非粘着性の組成物を生じる。たとえば、1クラスの好ましいポリマーは、短鎖アルキル(メタ)アクリレート疎水性モノマーおよび長鎖アルキル(メタ)アクリレート疎水性モノマーの両者と共重合した側鎖アミン基官能モノマーの少なくとも3成分の組合せを主成分とする。
【0135】
特に、下記の2つのグループのポリマーが極めて望ましい。
【0136】
【表1】

【0137】
アミンオキシド含有ポリマーの調製は、実施例のセクションで後述するが、上記パーセンテージは、全ての第三級アミンがアミンオキシドに変換されることに基づいて与えられていることに注目すべきである。常にこのようであるとは限らない。好ましいポリマーでは、第三級アミンの少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約60%、最も好ましくは少なくとも約70%が、アミンオキシドに変換される。このクラスの最も好ましいポリマーは、ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z−731という商品名で、ノースカロライナ州マウント・ホリーにあるクラリアント・コープ(Clariant Corp.,Mt Holly,NC.)から販売されているものである。
【0138】
【表2】

【0139】
このクラスの最も好ましいポリマーは、トリメチルアミノエチルメタクリレートクロリド40%、メチルメタクリレート45%、ラウリルアクリレート5%、およびブチルアクリレート10%を含む(ここで、全てのパーセンテージは、重合可能な組成物の重量%である)。
【0140】
用途および使用
本発明の組成物は、適当な方法を使用して、皮膚に塗布することができる。通常は、一種の吸収材、たとえばガーゼ、フォーム・スポンジ、不織布、綿布、綿棒または綿球等々に、該組成物を染み込ませ、これを使用して、所期の部位上に組成物を塗りつける。並外れた湿潤特性を有する超高活性組成物(たとえば、高アルコール含量調合物)を使用すれば、プレップを一なでするだけでよい。しかし、たいていの場合、皮膚を十分に濡らして、皮膚の細かいところまで十分な被覆率を保証するためには、染み込ませた吸収材を皮膚全体に数回、好ましくは様々な方向に、塗りつけることが役立つと考えられる。しかし、高濃度の有機緩衝剤によって活性が増強されるため、概して、従来技術の生成物で推奨されたような広範なこすり洗いは要求されない。たとえば、ベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)の製造会社(コネチカット州ノーウォークにあるパーデュー・フレデリック・カンパニー(Purdue Frederick Company,Norwalk,CT))は、ユーザーが、5分間、十分にこすり洗いをするように指示している。本発明の組成物は、約60秒未満、好ましくは約45秒未満、最も好ましくは約30秒未満、こすり洗い、続いて、吸い取らずに2分間待つことを必要とする。しかし、厳密な無菌状態を維持するためには、術前患者皮膚プレップの使用者は、明示された切開部位から始め、「汚れた」塗布用具で決して切開部位に戻らずに、外に向かって進まなければならない。本発明の最も好ましい組成物は、本質的にこすり洗いを必要としないように、ユーザーが外に向かって進むとき、各スポットを少なくとも2回または3回塗り広げるように気を付けながら、単純な重複動作で皮膚に塗りつけることができる。
【0141】
幾つかの用途では、乾いた組成物の皮膜上にPSA被覆物品を載せることが望ましいこともある。たとえば、該組成物をカテーテル処置前用の皮膚プレップとして使用する場合、一般に、無菌を維持するために、穿刺部位を覆うことが推奨される。これは、一般に、ガーゼおよびテープまたは創傷用包帯を、穿刺部位の上に、乾いた組成物に接するように載せることによって行われる。こうした製品はPSA被覆物品であり、乾いた組成物への接着は、無菌状態を維持するために重要である。同様に、該組成物を術前皮膚プレップとして使用するのであれば、多くの場合、PSA被覆ドレープ(いわゆる切開用ドレープ)を、乾いたプレップの上に載せることが望ましい。接着剤被覆ドレープの目的は、滅菌していない皮膚を封鎖して、外科医に無菌表面を提供することである。外科医は、このドレープ越に切開を行う。したがって、ドレープが、乾いた組成物に接着し、かつ手技中に持ち上がらないことが重要である。
【0142】
PSA被覆製品、たとえばテープ、創傷用包帯、切開用ドレープ等々の、良好な初期接着および長期接着を達成するためには、下記の性質:比較的低い界面活性剤濃度(好ましくは約10重量%以下、より好ましくは約7重量%以下、よりいっそう好ましくは約5重量%以下、最も好ましくは約4重量%以下);十分に乾かしている間および/または後で、組成物中の他の成分と会合するかまたは潜在的に会合する1種以上の界面活性剤;高含有率の疎水性モノマーを含む1種以上の皮膜形成性ポリマー;比較的高い皮膜形成性ポリマー濃度(好ましくは少なくとも約2重量%、より好ましくは少なくとも約3重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%);および比較的低いヒドロキシカルボン酸濃度(好ましくは約15重量%以下、より好ましくは約12.5重量%以下、最も好ましくは約10重量%以下);を備えた組成物を調合することが極めて望ましく、また好ましい。
【0143】
乾いたとき、本発明の組成物に特に良好に接着するメディカル・テープおよび包帯としては、アクリレート系感圧接着剤、ブロックコポリマー系感圧接着剤(たとえば、テキサス州ハウストンにあるクラトン・ポリマーズ(Kraton Polymers,Houston,TX)から販売されているクラトン(KRATON)ポリマーを主成分とする接着剤)、およびゴム系感圧接着剤を使用するものなどがある。例としては、ミネソタ州セント・ポールにあるスリーエム・カンパニー(3M Company,St.Paul,MN)から、トランスポア(TRANSPORE)、ブレンダーム(BLENDERM)、ステリ・ストリプス(STERI−STRIPS)、マイクロポア(MICROPORE)、テガダーム(TEGADERM)、ステリドレープ(STERIDRAPE)、およびアイオバン(IOBAN)2という商品名で販売されているテープおよび包帯などが挙げられる。
【0144】
皮膚上の本発明の乾いた組成物の上に貼付された感圧接着剤テープは、好ましくは、乾いたポビドンヨード溶液(具体的には、ベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)(7.5%ポビドンヨード溶液)およびベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)(10%ポビドンヨード溶液)、両者ともにコネチカット州ノーウォークにあるパーデュー・フレデリック・カンパニー(Purdue Frederick Company,Norwalk,CT)から販売)の上に貼付された感圧接着剤テープの接着レベルの少なくとも約50%のレベルで接着する。これは、実施例のセクションに記載の通りに、薄い均一な量の被験組成物を皮膚に塗布し、皮膜を乾かし、PSA被覆テープ(たとえば、ミネソタ州セント・ポールにあるスリーエム・カンパニー(3M Company,St.Paul,MN)から販売されているスリーエム・アイオバン2・アンチマイクロビアル・インサイズ・ドレープ(3M IOBAN 2 Antimicrobial Incise Drape)の、0.5インチ(1.27cm)幅のサンプル)を貼付し、4.5ポンド(2.1kg)、2インチ(5.1cm)幅のローラーをかけることにより、測定することができる。少なくとも1分、好ましくは5分、待った後、該PSA被覆テープを、剥離角度180°、速度12インチ/分(30.5cm/分)で剥がす。皮膚のタイプにばらつきがあるため、統計学的に適切なサンプル(一般に、少なくとも2枚のストリップが各被験者の背部に貼付される、少なくとも8被験者)が使用される。
【0145】
本発明の組成物は、薄い皮膜状で皮膚に塗布して乾かす場合、医用接着剤製品を直ちに接着させることが好ましい。すなわち、一般におよび好ましくは、薄い皮膜を塗布した約3分以内に(または、いったん該組成物が指触乾燥状態になった後)、PSA被覆製品を該組成物の上に貼付して、わずか約5分で、好ましくは、わずか約120秒で、最も好ましくはわずか約60秒で、良好な接着を示すことができる。さらに、接着は、貼付後、少なくとも数時間、維持される。
【0146】
本発明の場合、切開用ドレープ等のPSA被覆製品の、乾いた皮膚プレップ上での主たる破損様式は、主として水分への曝露である。該組成物の一部または全部を溶解することができ、また持ち上がりを助長する水分は、患者の発散、発汗に、または外科手術用灌流液等の体外起源、血液、カテーテル関連の水腫および体液等々に由来する可能性がある。
【実施例】
【0147】
本発明の目的、特徴および利点を、個々の材料および量を含み、本発明を不当に限定すると解釈すべきではない、以下の実施例で説明する。全ての材料は、特に記載がないかまたは明白でない限り、市販されている。実施例における全ての部、パーセンテージ、比率等々は、特に記載がない限り重量基準である。
【0148】
【表3】

【表4】

【0149】
テストプロトコール
インヘレント粘度(IV)
フレッド・ビルメイヤー・ジュニア(Fred Billmeyer,Jr).によって、ワイリー・インターサイエンス(Wiley−Interscience)(1971年)発行、「ポリマー科学の教科書」、第2版、と題する教科書の84〜85ページに記載されているプロトコールに準拠して、ポリマーのインヘレント粘度を測定した。簡単に記載すると、指定された体積のポリマー溶液が毛細管を貫流するのに要する流出時間(t)を、対応する溶剤の流出時間(t0)と比較することによって、溶液粘度を測定する。次いで、測定された変数t、t0、および溶質濃度(c)を使用し、次式:
η=(ln t/t0)/c
を使用してインヘレント粘度(対数粘度としても知られる)を算出する。
【0150】
本発明の実施例の場合、IVは、テトラヒドロフラン(THF)中、皮膜形成性ポリマーの0.15〜0.50重量%溶液として測定された。アミンオキシド含有ポリマーは、THFのみの中には溶解せず、したがって、重量基準で50/50のTHF/メタノール中、0.15〜0.5重量%溶液で測定される。
【0151】
分子量測定
ポリマーを、THFで、5ミリグラム/ミリリットル(mg/mL)に希釈し、0.45ミクロン(すなわち、マイクロメートル)膜で濾過する;移動相:THF;流量:1.0ミリリットル/分(mL/分);検出器:ウォーターズ410リフラクティブ・インデックス(Waters 410 Refractive Index);カラム:UltraStyragel−6、30×7.8各ミリメートル(mm);標準:ポリスチレン、狭い分散度;7.5×106〜580の範囲の分子量のポリスチレン(polystryrene)。
【0152】
ヒト皮膚抗微生物活性
組成物を健常なボランティアの背部(「乾いた」部位を考えた)に塗布したこと、およびベースライン細菌フローラ数がASTM方法のセクション7.1で提案されているほど高くなかったこと以外は、ASTM試験方法E−1173−93 術前皮膚標本を評価するための標準試験(ASTM test method E−1173−93 Standard Test for Evaluation of a Pre−operative Skin Preparation)に類似した方法で、抗微生物活性について、組成物の多くを試験した。プレップを、製造会社の説明書による、ベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)(7.5%ポビドンヨード、コネチカット州ノーウォークにあるパーデュー・フレデリック・カンパニー(Purdue Frederick Company,Norwalk,CT)およびベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)(「塗布剤」、10%ポビドンヨード、コネチカット州ノーウォークにあるパーデュー・フレデリック・カンパニー(Purdue Frederick Company,Norwalk,CT))の2段階塗布と常に比較した。全ての試験は、乱塊法であった。試験日に、ベースライン微生物計数用に、2つのサンプル(上背部から1つと、脊椎の反対側の下背部から1つ)を採取した。被験調合物および対照を、背部で無作為に割り当てた(通常は、上背部全体で4つおよび下背部全体で4つ)。塗布完了の2.0分後に、全ての部位から、残存している細菌をサンプリングした。2通りの方法のうちの1法で使用した、被験組成物を十分に染みこませた(十分に濡れていて、滴がしたたっている)滅菌ガーゼを使用して、全ての被験サンプルを塗布した。1つの方法では、およそ2×2インチ(5.1×5.1cm)の領域を、中程度の圧力を使用して30秒間「こすり洗いした」。第2の方法では、単に、止まることのない連続運動で、中程度の圧力で3回、該部位に塗ることにより、プレップを塗布した。製造会社の指示に従って、ベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)およびベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)を塗布した。簡単に記載すると、十分に染みこませたガーゼでベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)を塗布し、5分間、こすり洗いし、拭き取った;そして、ベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)を、中心から外に向かうらせん状で、塗布した。したがって、本発明の組成物は、ベタジン(BETADINE)スクラブおよび塗布手順より、はるかに短い時間で死滅させた。ASTMテスト方法E1173のセクション8.2〜8.3に準拠して、最小限8名の被験者を使用した。被験者全員が、最小限2週間、抗微生物剤製品の使用を止めた。各組成物について、ベースラインからの対数減少を測定した。複数の部位を実行する場合、各部位の対数減少を測定した。結果を、対数減少の平均値(対数減少値の数値平均)で報告する。ASTMテスト方法E1173−93セクション6.7に準拠して、被験調合物ごとに、適切な中和剤を最初に決定した。ほとんどのポリマー系で、中和後、サンプリング溶液を使用した:リン酸二水素カリウム0.4g、リン酸水素ナトリウム10.1g、テキサス州ハウストンにあるユニオン・カーバイド・コープ(Union Carbide Corp.,Houston,TX)から販売されているトリトン(TRITON)X100界面活性剤1.0g、レシチン(CAS#8002−43−5、ニュージャージー州フェアローンにあるフィッシャーマン・サイエンティフィック(Fisher Scientific,Fairlawn,NJ)から、カタログ番号03376−250として販売)4.5g、トゥウィーン(TWEEN)80(ICI)45.0g、チオ硫酸ナトリウム1.0g、および脱イオン水で総体積を1リットルにした。全成分を一緒に加え、溶解するまで、攪拌しながらおよそ60℃に加熱することにより、サンプリング溶液を調製した。次いで、これを容器に入れ、蒸気滅菌した。
【0153】
幾つかの第四級ポリマーは、抗微生物活性を有し、また、本明細書に記載の通り、適切な中和剤を必要とすることが証明されている。第四級ポリマーを沈殿させることができるポリスルホン酸ポリマー等のポリ陰イオン性ポリマーが、功を奏する。好ましいポリスルホン酸ポリマーは、AQポリエステルとして、テネシー州キングスポートにあるイーストマン・ケミカル・カンパニー(Eastman Chemical Company,Kingsport TN)から販売されており、また、特に好ましいのは、スルホイソフタル酸ナトリウムを主成分とする直鎖状非晶質ポリエステルであると報告されている、AQ 55Sである。イーストマン(EASTMAN)AQ 55Sポリマーは、さらに、約55℃という乾燥Tgを有する、比較的高い分子量であると記述されている。これを、水中に30重量%で、水中に分散させてから、中和媒体に加えた。必要なとき、水中にAQ55Sの30% wt/wt溶液70gとして、これをサンプリング溶液に加えてから、水で最終体積を1リットルに調節した。
【0154】
永続性テスト
選択された組成物を、健常なボランティアの前腕に塗布した。組成物は、およそ5×5cmの領域全体に、およそ4ミリグラム/平方センチメートル(mg/cm2)の量で、一様な湿った塗膜として塗布し、完全に乾かした(一般に、最低限5分)。乾いた組成物を、温度23〜24℃、流量約2.5リットル/分(L/分)の水道水に暴露した。水を、腕の被験部位のすぐ上を打たせ、該部位の上を流れ落ちさせておく。腕を、およそ45°の角度に保ち、水が腕を打つ前に、水を、およそ15cmから落下させておく。色が完全になくなる時間を記録した。ベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)(10%ポビドンヨード、「塗布剤」)を、しばしば対照として使用したが、これは一般に、5秒未満、存続した。色がついていない組成物は、適当な着色料を加えることにより、試験することが可能である。着色料は、永続性に悪影響を及ぼしてはならず、したがって、顔料がしばしば使用される。
【0155】
サンプルを同一方法で塗布し、洗い落としに対する抵抗性について試験することにより、幾つかのサンプルを定性的に評価したが、時間は記録しなかった。これらのサンプルでは、「非常によい」は、洗い落としに非常によく抵抗し、60秒を超える永続性値を有すると考えられる組成物を指し、「よい」は、30秒より大きい永続性値を有する組成物を指し、「低い」は、15〜30秒の永続性値を有する組成物を指す。
【0156】
粘着性テスト
組成物を健常なボランティアの前腕に塗布し、乾かした後、乾いた組成物の粘着性を評価した。組成物を、およそ4mg/cm2の量で、一様な湿った塗膜として塗布し、完全に乾かした(一般に、最低限5分)。きれいな(洗って完全に乾かした)指または親指を、中程度の圧力で3〜5秒間、組成物に押し付けて放すことにより、粘着性を評価した。粘着性なし(ベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)、すなわち、10%ポビドンヨード、「塗布剤」に等しい)、非常に低い粘着性(テスト指へのごくわずかな粘着、テスト指を外したとき、被覆された皮膚の目に見える皮膚変形は、ほとんどない、およびない。クリネックス(KLEENEX)(登録商標)ティシュを押し付けると、その自重で落下することができる)、低粘着性(テスト指へのわずかな粘着、接着力を示す、被覆された皮膚の若干の上方への変形、クリネックス(KLEENEX)(登録商標)ティシュを押し付けると、繊維をわずかに残して、または全く残さずに剥すことができる)、中程度の粘着性(外したとき、被覆された皮膚の目に見える変形を伴って、テスト指にくっつく、剥がすとき、クリネックス(KLEENEX)(登録商標)ティシュが裂ける)、または高い粘着性(テスト指をゆっくり外すとき、被覆された皮膚が、目に見えるほど有意に引き上げられるほどくっつく)として、粘着性を主観的に評価した。
【0157】
切開用ドレープ接着力テスト
本発明の組成物上での接着剤製品の接着力を、定性的使用テストおよび定量的剥離テストの両者で評価した。
【0158】
定性試験:定性試験では、永続性テストについて上述した通り、サンプルを、前腕の片側に塗布した。ベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)(「スクラブ」、7.5%ポビドンヨード)およびベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)(「塗布剤」、10%ポビドンヨード)を、製造会社の説明書に従って、側面に塗った。両者を、少なくとも5分間、乾かした。スリーエム・アイオバン(3M IOBAN)2抗微生物性切開用ドレープ(ミネソタ州セント・ポールにあるスリーエム・カンパニー(3M Company,St.Paul,MN))のサンプルを、乾いた被験部位の上に貼付し、ドレープを約2時間装着した。装着期間の後、切開用ドレープの持ち上がりは認められなかった。ドレープを、剥離によって除去し、除去に要する力、および除去するときに感じた塗布剤に基づいて、低い(ベタジン(BETADINE)スクラブおよび塗布溶液より低い)、中程度(ベタジン(BETADINE)スクラブおよび塗布溶液に等しい)、または良好(ベタジン(BETADINE)スクラブおよび塗布溶液より良い)として、接着剤を定性的に評価した。
【0159】
定量試験:ボランティア16名に、単に、連続した円運動で、中程度の圧力を3回使用して、被験組成物を十分に染みこませたガーゼで塗ることによって、背部に被験組成物を塗布した。このプレップを5分間、乾かし、その後、乾いた組成物の上に、3M IOBAN 2抗微生物性切開用ドレープの1/2インチ(1.27cm)幅のストリップを優しく貼付した。5分以内に、このサンプルに、4.5ポンド(2.1キログラム(kg))、2インチ(5.1cm)のローラーをかけて、一様な貼付圧を確保した。貼付の10分後に、剥離角度180°(他に記載がなければ)および速度12インチ/分(30.5cm/分)で力測定機を使用して、ドレープサンプルを除去した。サンプルの長さ3インチ(7.6cm)全部を除去するのに要した平均の力を記録した。報告の値は、被験者全16名の値の平均である。
【0160】
ブルックフィールド(Brookfield)粘度テスト
粘度は、マサチュセッツ州ミドルボロにあるエンジニアリング・ラブズ・インク(Engineering Labs Inc.,Middleboro,MA)から販売されている、小さいサンプルアダプター(ULA アダプター)LVDVI+が付いたブルックフィールドRTVロトビスコ(Brookfield RVT ROTOVISCO)粘度計を使用して測定した。スピンドルサイズ00を、30回転/分(rpm)の速度で使用して、23〜25℃で、測定を行った。
【0161】
ウサギ眼刺激テスト
組成物を、その眼刺激の可能性について、市販の消毒薬:ベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)(7.5%ポビドンヨード)およびベタジン・ステライル・オフタルミック・プレップ・ソリューション(BETADINE Sterile Ophthalmic Prep Solution)(5%ポビドンヨード)と比較して評価した。このテストは、両性の、体重2.0〜3.5Kgの成体ニュージーランド(New Zealand)白色アルビノウサギに点眼することを含んでいた。試験前の、清潔な住居、高繊維ウサギ食餌(No.5326ピューリナ・ミルズ・インク(Purina Mills,Inc.))、適切で清浄な給水、適切な環境管理(16℃〜22℃、相対湿度30%〜70%、および12時間明/12時間暗周期)を含む、動物の適切な管理を確実にする。全ての動物を少なくとも5日順応させ、様々なケージ充実装置を与えた。角膜損傷または眼の異常が存在しないことを保証するために、被験材料を投与する前日に、フルオレセインナトリウム(sodium fluorscein)色素を使用して、眼を検査した。各被験材料(未希釈の被験材料0.1mL/眼)を連続2日、ウサギ3羽に与えた。被験材料の損失を防止するために、眼瞼を、1秒間、優しく合わせてから、解放した。被験材料の点眼後、およそ24時間、ウサギは洗眼しないままであった。各動物の右眼は処置したが、左眼は、対照として、未処置のままであった。各処置の1、4、24、48、および72時間後に、眼球刺激について、眼を検査した。72時間に刺激が存在した場合、96時間および120時間に、さらなる観察を行った。各動物について、存在し得る角膜損傷を明示するのを助けるために、24時間検査で開始し、陰性の応答が得られるまでの各継続検査で、フルオレセインナトリウム(Sodium Fluoroscein)を使用した。若干改良した、眼ドレイズ技法(Ocular Draize Technique)(J.H.ドレイズ(Draize):経皮毒性(Dermal Toxicity)、“Appraisal of the Safety of Chemicals in Foods, Drugs and Cosmetics”、Association of Food and Drug Officials of the U.S.(1959年、59〜51ページ)を使用して、刺激に得点をつけた。これらの実施例の最高総得点は、結膜のみから得られる得点の合計であった。可能な最高総得点は60点である(20点/眼×眼3つ)。角膜混濁に関して注目したが、これは、得点化に含まれなかった。
【0162】
出発材料
ポリマーAの調製
表1aに記載の化学化合物の量を、クォートサイズのビン(1.06リットル)に量り入れ、一緒に混合して均一な溶液とした。
【0163】
【表5】

【0164】
ビンの中の混合物を窒素でパージして、酸素を除去し、テフロン(TEFLON(登録商標))フッ素重合体樹脂(イー・アイ・デュポン・ドゥ・ヌムール・アンド・カンパニー(E.I. du Pont de Nemours and Company))裏打ちした金属のふたで密封した。このビンを、サーモスタット制御の水浴内で閉じた容器を回転させるための装置に、60℃で24時間、入れた。該ポリマーのインヘレント粘度(IV)は、THF中で0.11であると測定された(インヘレント粘度のためのテストプロトコール参照)。モノマーの、ポリマーへの変換は99.6%であった。
【0165】
脱イオン(DI)水(450グラム(g))をこのビンに加えて、ポリマーを分散させ、固形分23.5%にした。この分散液を、10% NaOH溶液を加えることによって、pH=6〜7に中和した。次に、この分散液を、700/600、700/600、700/500ppmの比率のTBHP/SFSで、60℃にて3回清掃し、残留モノマーレベルを低下させた。清掃反応は:1)初回量のTBHP(5%エタノール溶液2.8g)を加えて、10分間攪拌し;2)初回量のSFS(5%水溶液2.4g)を加えて、さらに30分間攪拌し;3)1)および2)をさらに2回繰り返す;ことによって実施した。結果として生じた分散液を、10% NaOH溶液を加えることによってpH=7〜8に中和し、続いて水浴中、60〜70℃にて、減圧下でエタノールを取り除いた。除去工程の間に、DI水約150gを加えて、蒸留されたエタノールの埋め合わせをした。ポリマー分散液の最終的な特性は以下の通りであった:固形分26.8%、Mw/Mn=58.2/16.5K;インヘレント粘度、THF中で0.13;残留モノマー、全モノマーは10ppm未満であった。
【0166】
ポリマーBの調製
表1bに記載の化学化合物の量を、クォートサイズのビン(1.06リットル)に量り入れ、一緒に混合して均一な溶液とした。
【0167】
【表6】

【0168】
ポリマーAの調製に記載の通りに、混合物を脱気し、密閉し、重合した。モノマーの、ポリマーへの変換は、99.5%を超えていた。DI水(375g)をビンに加えて、ポリマーを分散させ、固形分20%にした。ポリマーAの調製に記載の通りに、この分散液を、1000/1000、800/700、800/700ppmの比率のTBHP/SFSで、60℃にて3回清掃し、残留モノマーレベルを低下させた。清掃した分散液を、大気圧で蒸留して、エタノールを除去した。D−Cアディティブ(Additive)62(固形分を基準にして0.30%)を加えて、蒸留工程中に泡立ちを制御した。最終サンプルは、濃厚でかつ透き通っていた。ポリマー分散液の分析結果は以下の通りであった:固形分、20.5%;ブルックフィールド(Brookfield)粘度、6000cps;pH=3.9;残留モノマー、DMAEAMC 3ppm以外は、なし。
【0169】
ポリマーCの調製
表1cに記載の化学化合物の量を、クォートサイズのビン(1.06リットル)に量り入れ、一緒に混合して均一な溶液とした。
【0170】
【表7】

【0171】
75℃にて16時間であったこと以外は、ポリマーAの調製に記載の通りに、混合物を脱気し、密閉し、重合した。モノマーの、ポリマーへの変換は、97.4%であり、インヘレント粘度は、THF中で0.33であった。
【0172】
次に、H22の50%水溶液(1.1のH22/アミンモル比)25gをポリマーに加えて、60℃で20時間、第三級アミンをアミンオキシドに酸化した。
【0173】
酸化したポリマーをDI水と等部で混合し、透き通った水性分散液を作った。ポリマーAの調製に記載の通りに、この分散液を、1000/1000、1000/1000、1000/1000ppmの比率のTBHP/SFSで、60℃にて3回清掃した。次に、約0.05%のD−Cアディティブ(Additive)62消泡剤を用いて、減圧下でエタノールを取り除いた。除去されたエタノールを、DI水155gで補充した。最終的な分散液は、下記の特性を有していた:固形分、17.1%;ブルックフィールド(Brookfield)粘度、19600cps;pH=7.7;残留モノマー、LMA/IBMA/DMAEMA/MMA=570/770/検出されず/75ppm(ポリマー固形分に基づく)。
【0174】
実施例のための一般的組成物調製法
本発明の組成物を、下記の方法で調製した。ポビドンヨード(PVP−I)を含む組成物の場合、先ずPVP−Iを30重量%溶液でDI水に溶解した。概して、加える順序は重要ではないが、以下に記載の一般的な順序に従うことが好ましい。
a.全ての加水分解的に安定した非イオン性界面活性剤、特に固体である可能性があり、溶解するために加熱を必要とする可能性があるもの、たとえば、ブリジ(BRIJ)700を、サンプルジャーに量り入れる。
b.水を加え、混合し、必要に応じて、(たとえば、約60℃に)加熱して、あらゆる界面活性剤/ポリマーを溶解する、1〜2時間を要することもある。
c.添加と添加の間に完全に混合しながら、緩衝剤成分を1つずつ加える。
d.5N水酸化ナトリウムを加えることにより、pHを約2.5〜6.0、好ましくは3.5〜4.0に調整する。
e.場合によって、加水分解的に安定でないかもしれない界面活性剤、たとえば、エステル連結を含む界面活性剤を加える。
f.場合によって、陰イオン性界面活性剤を加える。
g.抗微生物剤または他の活性物質を、たとえばPVP−Iを、水中に30%溶液濃度として、加える。
h.皮膜形成性ポリマー溶液を加え、混合する。
i.必要かもしれない、最終的なpH調整を行う。
【0175】
実施例1〜10
実施例1〜10では、室温でPSAである、補足的な親水性モノマー(ポリエトキシル化したアクリレート、AM−90G)および1039gポリマー/第四級アミン当量のアミン当量を有する、第四級アンモニウム側鎖官能性ポリアクリレートポリマーの使用について、実例で説明する。これらの組成物は、表2aおよび2bに記載の成分を使用して、ポリマーAの調製ならびに一般的組成物調製法に関して上に略述した通りに調製した。
【0176】
テストプロトコールに記載の通りに、30秒「こすり洗い」塗布技術を使用して、ヒト・ボランティアに対するヒト・皮膚抗微生物活性について、組成物を評価した。テストプロトコールに略述した通りに、永続性、粘着性、および切開用ドレープ接着力についても、組成物を評価した。結果を表2aおよび2bに示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0177】
【表8】

【0178】
【表9】

【0179】
結果:実施例1は、陰イオン性界面活性剤と組み合せた、第四級アンモニウム側鎖ポリアクリレート皮膜形成性ポリマーを含む組成物を実例で説明する。該組成物は、4℃、45℃、50℃、および60℃での長期保存(30日超)に対して安定していた。該組成物を、抗微生物活性について2回試験した。対数減少の平均値は、ベタジン(BETADINE)より低いようであるが、このテスト方法にはばらつきがあるため、該組成物は、統計学的にベタジン(BETADINE)に等しい殺生物活性を有していた。本発明の組成物は、塗布時間がはるかに短かかった(実施例1では、総接触時間が2.5分であったのに比べて、ベタジン・サージカル・スクラブ(BETADINE Surgical Scrub)で5分間こすり洗いし、続いて拭き取り、ベタジン(BETADINE)溶液を塗り、これを、合計で約7分超、乾かした)ため、このことは意外であった。実施例2、2P(プラシーボ)、3、4、4P(プラシーボ)、および5は、非イオン性界面活性剤の存在下で、第四級アンモニウム側鎖官能性ポリマーと組み合せた、乳酸、リンゴ酸、およびクエン酸を主成分とする高濃縮緩衝剤系の使用を実例で説明する。該組成物は、60℃で1週間保存した後、安定していた。予想通り、有効な組成物(実施例2および4)は、プラシーボ(実施例2Pおよび4P)より優れた微生物の死滅を示した。プラシーボサンプルの「死滅」は、単に、組成物を塗布したために細菌が除去され、その後、その部位をサンプリングしたことに起因すると考えられる。実施例9および10は、比較的低い抗微生物活性を有するようであるが、これは、プルロニック(PLURONIC)L64が存在するためであろう。この界面活性剤は、比較的低いHLB(BASFによる報告では15、%EO/5の標準計算では8)を有し、これが、この結果の原因であろう。
【0180】
実施例1は、比較的高い粘着性を有していた。実施例2、4、7、8、および9は、中程度の粘着性を有していた。実施例3で分かるように、クエン酸の存在が、粘着性の低下を助けると考えられる。シリコーンコポリオール界面活性剤の使用も、粘着性を低下させるようであるが、実施例6は、低い定性的切開用ドレープ接着力を有し、実施例7および8は、良好な定性的切開用ドレープ接着力を有していた。ポリアクリレート皮膜形成性ポリマーのレベルが低く、またPVAが存在していたため、実施例10も、低い粘着性を有していた。
【0181】
実施例2を、定量的接着力テストでも評価したが、ベタジン(BETADINE)溶液上に貼付した切開用ドレープより剥離し易かった(36対55g/2.54cm)。
【0182】
全ての活性物質を含有する調合物をヒト皮膚に塗布して、十分に濡らし、かつ一様に被覆することが確認された。該組成物は、粘度が低いため、容易にヒト皮膚上に一様に塗ることができた。皮膚上に形成された乾燥皮膜は、柔軟で、丈夫で、かつひび割れしなかった。全ての調合物の永続性は優れており、永続性値は60秒より大きかった。良好な永続性にもかかわらず、サンプルは、濡れた紙タオルで拭くことにより、容易に除去された。さらに、実施例5〜9では、ポリマーレベルが低い(ポリマー/活性物質の比率0.47に対して、実施例1〜4ではポリマー/活性物質の比率0.67)にもかかわらず、該組成物は依然として非常に良好な永続性を有していた。
【0183】
実施例11〜13
実施例11〜13は、ガラス転移モノマーのレベルが高い(MMAの添加)ため、室温でPSAではない、第四級アンモニウム側鎖官能性ポリマーの使用について、実例で説明する。これらの組成物は、表3に記載の成分を使用してポリマーAの調製ならびに一般的組成物調製法に関して、上に略述した通りに調製した。
【0184】
テストプロトコールに記載の通りに、3拭き塗布剤塗布技法を使用して、ヒト・ボランティアに対するヒト・皮膚抗微生物活性について、組成物を評価した。テストプロトコールに略述した通りに、永続性、粘着性、および切開用ドレープ接着力についても、組成物を評価した。結果を表3に示す。
【0185】
全ての成分量は、固体ベースで示す。これによって、ある特定の成分を水溶液として加える場合、その水は、この成分の量の中に含まれるのではなく、組成物中の水の総量に反映されることを意味する。
【0186】
【表10】

【0187】
より高いガラス転移ポリマー(PVA)を添加したため、これらの調合物の粘着性は、概して、実施例1〜10の粘着性より低かった。実施例11および12の微生物の死滅は良好であり、またプラシーボ調合物より有意に高かった。実施例12は、曝露時間が非常に短かったにもかかわらず、ベタジン(BETADINE)スクラブおよび塗布剤と同じぐらい良く死滅させた。サンプル中に高レベルで存在する緩衝剤により助けられた。全てのサンプルが非常に良好な永続性を示した。良好な永続性にもかかわらず、サンプルは、濡れた紙タオルで拭くことによって容易に除去することができた。実施例11〜13の組成物は粘度が低いため、容易にヒト皮膚上に一様に塗ることができた。皮膚上に形成された乾燥皮膜は、柔軟で、丈夫で、かつひび割れしなかった。
【0188】
実施例14〜21
実施例14〜21は、好ましい第四級アミンおよび永続性があるアミンオキシド側鎖官能性皮膜形成性ポリマーと組み合せた高レベルの有機酸緩衝剤の使用について、実例で説明する。これらの組成物は、表4aおよび4b記載の成分を使用して、ポリマーA(2−EHA)の調製法およびポリマーC(LMA)の調製法ならびに一般的組成物調製法に関して上に略述した通りに調製した。ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z731の組成物は、炭素NMR(乾燥ポリマー100ミリグラム(mg)を、CDCl3中50マイクロモル濃度(μM)のCr(OOCCH33溶液3ミリリットル(mL)に溶解することにより測定した)で分析し、以下の通りであった:ジメチルアミノエチルメタクリレートのアミンオキシド48.7%、IBMA 18.8%、MMA 20.8%、長鎖メタクリレート(ラウリルおよびステアリルの混合物)6.8%、ジメチルアミノエタノール0.9%、およびジメチルアミノエチルメタクリレート4.0%。ダイアフォーマー(Diaformer)Z731の水溶液をHClで滴定し、NaOHで元に戻すことにより、該ポリマーのアミンオキシド基は、pH4で実質的に100%プロトン化されていることが判明した。テストプロトコールに記載の通りに、3拭き塗布剤塗布技法を使用して、ヒト・ボランティアに対するヒト皮膚抗微生物活性について、組成物を評価した。テストプロトコールに略述した通りに、永続性および粘着性についても組成物を評価した。結果を、表4aおよび4bに示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0189】
【表11】

【0190】
【表12】

【0191】
全ての組成物の永続性および粘着性の結果は優れていた。良好な永続性にもかかわらず、サンプルは、濡れた紙タオルで拭くことによって容易に除去することができた。実施例14〜17の微生物の死滅は、ヨウ素含有調合物は、平均ベースラインがわずか2.5〜3.5であった8名の参加者集団で、良好な死滅(>1.5より大きい対数減少)を有することを示し、高い緩衝剤レベルが、速やかな抗微生物活性の一助になることが分かる。さらに、これらの実施例の高い抗微生物活性から、非イオン性ポリエトキシル化アルコールおよびポリエトキシレートソルビタンエステル界面活性剤が、有効成分ポビドンヨードと相容性であることも分かる。プラシーボ調合物(14P〜17P)は、比較的低い微生物の死滅を有し、ヨウ素が主要な有効成分であることが分かる。これらの実施例は全て、その粘度が非常に低かった。実施例14および20では、粘度テストに準拠して調合物の粘度を測定し、それぞれ、7.4cpsおよび10cpsであった。見た目には、他の実施例の粘度値は類似していた。低粘度は、代表的なスポンジタイプの塗布用具を使用した、プレップの皮膚上への容易な送達を劇的に簡単にする。実施例14〜21の組成物は、低粘度であるため、容易にかつ一様にヒト皮膚に塗布することができた。皮膚上に形成された乾燥皮膜は、柔軟で、丈夫で、かつひび割れしなかった。
【0192】
実施例22〜24
実施例22〜24は、高レベルの有機酸緩衝剤を含む組成物の安定性に対する、界面活性剤系の影響について、実例で説明する。これらの実施例で使用した第四級アンモニウム側鎖官能性ポリマーは、表5に記載の成分を使用して、ポリマーAの調製および一般的組成物調製の手順に準拠して製造した。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0193】
【表13】

【0194】
実施例22の組成物は、中間のHLB値で、ポリソルベート20(ニッコール(NIKKOL)TL10)の存在下で安定しているに過ぎなかった。実施例24の高HLB単一界面活性剤系および実施例23の低HLB単一界面活性剤系は、両者とも、不安定な組成物に終わった。
【0195】
実施例25〜33
実施例25〜33は、高有機酸緩衝剤レベルおよび永続性があるポリマーを含む組成物の安定性を確保するための、HLBの重要性をさらに実例で説明する。該ポリマーは、アミン基官能側鎖ポリマーであった。これらの実施例で使用したポリマーは、表6aおよび6bに記載の成分を使用して、ポリマーAの調製および一般的組成物調製の手順に準拠して製造した。下記の通りに安定性について、またテストプロトコールに略述した通りに粘着性および切開用ドレープ接着力について、組成物を評価した。結果を、表6aおよび6bに示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。HLBは、界面活性剤系のそれを指す。
【0196】
組成物の安定性を2通りの方法で評価した。第1の方法では、透明度および色を評価するために、バイアルを、明るい頭上の蛍光灯にかざした。第2の方法では、非常に明るい小さな照明器(ニューヨーク州スカニアトレス・フォールズにあるウェルチ−アリン(Welch−Allyn,Skaneateles Falls,N.Y.)の、モデル78103、ヴァギナル・イルミネーター・システム(Model78103,Vaginal Illuminator System)F/58001)を使用して、組成物で満ちたバイアルを評価した。照明器光源をバイアルの底に直接置き、光路に特別に注意を払って、サンプルを評価した。完全に透明なサンプル、たとえば10%ポビドンヨードUSPの溶液は、光回折をほとんど伴わずにバイアルをほぼまっすぐ進む光路のために、透明に見える。該照明器で試験したとき、蛍光灯評価方法で濁って見えるサンプルは、しばしば、円錐形でより散乱性の光路を示した。23℃および60℃で、最初および4日後に、安定性を評価した。
【0197】
安定性を記述するために使用される用語は以下の通りである。「透明」は、蛍光灯および照明器の両方で評価したとき、該組成物が完全に安定した透明な溶液であったことを意味し;「濁り」は、蛍光灯および照明器の下で、該組成物が濁って見え、かつ照明器で散乱性の光路を示したことを意味する。これらのサンプルは、物理的に安定しており、特に記載がなければ、分離がなかった。これらのサンプルは、透明でなかったため、あり得る相互作用が起こった可能性がある;「沈澱」は、通常は蛍光灯の下で見え、照明器の下で明確に見える、沈降を通常伴う相分離が起きたことを意味し;「モカ」は、蛍光灯下のモカ・チョコレート飲料と類似した、より不透明な様相を意味する。照明器を使用したとき、こうしたモカ・サンプルは、濁って見えたこともまたは見えなかったこともある;「濁りを帯びた」は、照明器で評価したとき組成物は透明にみえるが、蛍光灯下ではわずかに濁っているものの、それでもなお相分離を伴わずに安定していたことを意味する。
【0198】
【表14】

【0199】
【表15】

【0200】
以上の実施例から、HLBが12.25〜18である界面活性剤系を含む組成物は、安定していたことが分かる。しかし、最も安定した組成物は、結果として透明な溶液になるもの、たとえば、HLBが15.75〜17.27である界面活性剤系を有する、実施例25、30、および31のものである。
【0201】
実施例34〜38
実施例34〜38は、粘着性を低下させるために組成物中に溶解した高Tgポリマーの使用について、実例で説明する。該組成物に加えた高Tgポリビニルアルコールは、先ず、PVAを水に加え、溶解するまで時々攪拌しながら、密閉した容器内で90℃に加熱することにより、10重量%の水中濃縮物として溶解した。Air Pruducts Bulletinが報告した、テキサス州ダラスにあるセラニーズ・リミテッド(Celanese Ltd.,Dallas,TX)から販売されているCELVOL ポリビニルアルコールの、20℃における4%水溶液に関する、%加水分解および粘度を表7aに示す。
【0202】
【表16】

【0203】
実施例は、表7bに記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して製造した。実施例25〜33に記載の通りに安定性について、またテストプロトコールに略述した通りに永続性、粘着性および切開用ドレープ接着力についても、組成物を評価した。結果を、表7bに示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0204】
【表17】

【0205】
加水分解度が非常に高い、PVAを含有する実施例34および35の永続性は非常に良好であった。こうした調合物のPVA成分は、加水分解度が高いため、冷水可溶性ではないことに注目すべきである。良好な永続性にもかかわらず、サンプルは、濡れた紙タオルで拭くことによって容易に除去することができた。
【0206】
実施例35は、上述の定性テストで試験したとき、PSA被覆製品(切開用ドレープ)の最高の接着力を有するようであった。実施例36および38で、セルボール(CELVOL)305および523組成物がなぜ安定していなかったかは明白ではない。
【0207】
実施例39〜42
実施例39〜42は、有効成分としての、トリクロサン(チバ・ガイギー(Ciba Geigy)から販売されているイルガサン(Irgasan))およびグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の使用について、実例で説明する。モノマー比が77/18/5の2−EHA/DMAEMA.Cl/AM90Gであったこと以外はポリマーAの調製法に準拠して、永続性がある皮膜形成性ポリマーを調製した。表8に記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して実施例を調製した。実施例25〜33に関する記載の通りに、安定性について組成物を評価し、結果を表8に示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0208】
【表18】

【0209】
沈殿は、溶液から出てくる抗微生物剤に起因すると考えられる。これらの実施例では、トリクロサンは、その溶解性のため、高アルコール含有系でより安定していることが、結果から分かる。トリクロサン等の、有機可溶性有効成分は、適切な界面活性剤およびハイドロトロープの使用によって安定化させることも可能である。注目すべきは、2つの有効成分の使用を示す、PVP−Iの存在下で、トリクロサンも安定していたことである。CHGサンプルは、一時期安定していたが、沈澱物を徐々に形成し、これは、皮膜形成性ポリマーからのクロリド対イオンとのイオン交換によって形成されたクロルヘキシジンクロリドであると考えられる。これは、グルコン酸塩等の、クロルヘキシジンと可溶性の塩を形成するポリマーの対イオンを選択することにより、排除することができた。
【0210】
実施例43〜48
実施例43〜48は、含水アルコール溶剤系中のアミン基側鎖を含有する永続性があるポリマーの使用について、実例で説明する。ポリマーAの調製法に準拠し、実施例44および46については、モノマー比を、80/15/5の2−EHA/DMAEME.Cl/AM90Gに変えて、これらの実施例のポリマーを製造した。組成物は、表9に記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して調製した。実施例25〜33について記載した通りに、安定性について組成物を評価し、その結果を表9に示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0211】
【表19】

【0212】
実施例43/44および45/46の低エタノール濃度および中間エタノール濃度(実施例43/44では56:44、実施例45/46では75:25のエタノール:水比)の両者で、より多い第四級モノマーを含む(20%)永続性があるポリマーは、有意に安定していたことが結果から分かる。実施例48で、アルコールレベルを80:20の比率までさらに上げると、結果として濁りを帯びた溶液を生じ、実施例47で、最終的に84:16までさらに上げると、結果として不安定な組成物となった。
【0213】
実施例49〜50
実施例49〜50は、水溶液状のポビドンヨードUSPおよび第四級アミン基側鎖を含有する永続性があるポリマーと組み合せた、第四級アンモニウム殺生物活性な、塩化ベンゼトニウムの使用について、実例で説明する。これらの実施例のポリマーは、ポリマーAの調製法に準拠して製造した。組成物は、表10に記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して調製した。実施例25〜33について記載した通りに、安定性について組成物を評価した。永続性テストに準拠して、組成物をヒト皮膚に塗布することにより、永続性を評価した。結果を、表10に示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0214】
【表20】

【0215】
実施例49および50の組成物は、安定した透明であるが、幾らか粘性のある溶液を形成した。塩化ベンゼトニウム有効成分は、永続性に悪影響を及ぼすようであった。
【0216】
実施例51〜53
実施例51〜53は、本発明の組成物における、様々なアミンオキシド側鎖基を含有する永続性がある皮膜形成性ポリマーの使用について、実例で説明する。アミンオキシド含有ポリマーの調製は、米国特許第6,123,933号明細書(ハヤマ(Hayama)ら)に記載されている。組成物は、表11に記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して調製した。実施例25〜33について記載した通りに、安定性について組成物を評価した。テストプロトコールに略述した通りに、永続性および粘着性についても組成物を評価した。結果を、表11に示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0217】
【表21】

【0218】
NMR分析を基に、ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z711およびZ731の組成物は以下の通りであると考えられる。
【0219】
【表22】

【0220】
時間を記録しなかったこと以外は永続性テストに準拠して、永続性を評価した。全3つの組成物は、60秒より大きい永続性値を有すると考えられるが、実施例51の永続性は、実施例52および53の永続性より低かった。
【0221】
全てのサンプルが安定した組成物を生成したが、実施例52の永続性があるポリマーでは、長鎖アクリレートモノマーの存在が、永続性の向上に役立つと考えられることが、結果から分かる。実施例51および52の粘着性は非常に低かったが、実施例53のそれは中程度であった。
【0222】
実施例54〜61
実施例54〜61は、アミンオキシド(ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z731、実施例58〜61)および永続性がある第四級アミン(実施例54〜57)側鎖基官能皮膜形成性ポリマーを含む組成物における、有効成分としてのトリクロサンおよびグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)の使用について、実例で説明する。実施例54〜57の第四級ポリマーは、ポリマーCの調製法に準拠し、モノマー比を5/10/40/45のLMA/IBMA/DMAEAMC/MMAに変更して、製造した。組成物は、表12に記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して調製した。実施例25〜33について記載した通りに、安定性について組成物を評価し、その結果を、表12に示す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0223】
【表23】

【0224】
トリクロサンは水に低溶解性であるため、トリクロサンを含有する組成物は、乳状分散液が生じたことが、結果から分かる。溶解性は、適切な界面活性剤を加えることにより、変えることができる可能性がある。トリクロサン分散液は「乳状」に見え、これは、トリクロサン分散液が牛乳のように見えたが、物理的に安定していて、分相しなかったことを意味する。CHGは、アミンオキシド側鎖官能性ポリマーを含んでいた実施例60および61では安定していたが、実施例56および57では、第四級アミン側鎖官能性ポリマーの存在下で安定していなかった。これらの組成物では、時間が経つと、わずかな沈澱物が徐々に生じた。これは、グルコン酸塩と塩化物イオンのイオン交換に起因し、結果としてクロルヘキシジンクロリドが沈殿すると考えられる。このような理由で、イオン交換により不安定になる可能性がある第四級有効成分の存在下で、第四級アミン側鎖官能性ポリマーを使用する場合、第四級アミン官能ポリマー上の対イオンが、該有効成分と相容性であることが好ましい。CHGの場合、適当な対イオンとしては、メトサルフェート、ラクテート、グルコネート、アセテート等々があるが、この限りではない。ジメトサルフェートは、第三級アミンを四級化して適当な対イオンをそのままにしておくために使用することができ、またイオン交換が必要ではないため、クロルヘキシジンとともに使用するのに好ましい対イオンはメトサルフェートである。
【0225】
実施例62
実施例62は、永続性があるプロトン化第三級アミン側鎖官能性皮膜形成性ポリマーの使用について、実例で説明する。該ポリマーは、ポリマーAの調製法に準拠し、モノマーおよび比率を、それぞれ5/10/40/45の重量比のラウリルメタクリレート/ブチルアクリレート/ジメチルアミノエチルアクリレート/メチルメタクリレートに変更し、ポリマーをエタノール(固形分40%)中に放置して、水中にひっくり返さずに製造した。組成物は、表13に記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して調製した。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0226】
【表24】

【0227】
組成物を、4ミル(0.1016mm)の二軸延伸PETおよびスリーエム・パナフレックス(3M PANAFLEX)930 PVC(ミネソタ州メープルウッドにあるスリーエム・カンパニー(3M Company,Maplewood,MN))の両者に塗布し、テスト方法に準拠して乾燥させたこと以外は、永続性テストに準拠して組成物を評価した。両サンプルとも、永続性時間は120秒より大きかった。皮膜は非常に黒っぽく、120秒後でもよく接着していた。PET上のサンプルはやはり非常によく接着しており、こすっただけでは除去されなかった。残留モノマーレベルが不明であったため、該サンプルを皮膚上には塗布しなかったが、これらの基材で永続性について試験したとき、第四級アミンおよびアミンオキシド官能ポリマー組成物の多くより性能が優れていた。これらの実施例から、プロトン化第三級アミン官能ポリマーは、非常に良く機能することが分かる。
【0228】
実施例63〜82および比較例C1〜C2
実施例63〜82および比較例C1〜C2は、有効成分としてポビドンヨードUSPを含む水性組成物における、様々な第四級アミン側鎖官能性ポリマーの使用について、実例で説明する。ポリマーは、ポリマーCの調製に記載の通りに調製した実施例82以外は、ポリマーAの調製法に準拠し、かつ表14a、14b、および14cに表示の比率で、調製した。組成物は、表14a、14b、および14cに記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して調製した。時間を記録しなかったこと以外は、永続性テストに準拠して、永続性を評価した。粘着性テストに記載の通りに、粘着性も評価した。結果を、表14a、14b、および14cに示す。下表で、用語「AEW」は、グラムポリマー/アミン当量で表したアミン当量(Amine Equivalent Weight)を指す。全ての成分量は、固体ベースで示す。
【0229】
【表25】

【0230】
【表26】

【0231】
【表27】

【0232】
あらゆる組成物が、永続性テストで、ベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)(10%ポビドンヨード)よりはるかによく機能し、15秒より大きい永続性値を有すると考えられた。「低永続性」と判定された実施例は、15〜30秒の永続性値を有すると考えられ、「良好な永続性」は、30秒より大きい永続性値を有すると考えられた。
【0233】
比較例C1およびC2は、他の親水性モノマーが存在しなければ、低第四級アミン含量(高第四級アミン当量)を有する第四級ポリマーは、安定した組成物を生成できないことを実例で説明する。「相容性不良」は、安定していなかった、すなわち、外見上、沈澱物が存在した、または非常に濁っていた組成物を指す。実施例77は、疎水性モノマーとアミンモノマーとの比率が比較例C2より高かった;が、さらなる親水性モノマーが存在していたため、ポリマーは組成物中で安定していた。実施例63のポリマーは、高いアミン当量を有し、他の親水性モノマーの非存在下で、安定した水性組成物(非常に低い低級アルコール含量)を生成することができる。実施例64〜73は、本発明の様々なポリマー組成物を、実例で説明する。永続性は「低い」と判定されるが、実質的にまた明らかに、ベタジン・サージカル・ソリューション(BETADINE Surgical Solution)より優れている。実施例67および68は、低レベルのブチルアクリレートおよび比較的高レベルのAM−90Gと組み合せたトリメチルアミノエチルメタクリレートのメトサルフェート塩を含むポリマーを含んでいた。親水性のポリエトキシル化AM−90Gモノマーは、非常に低いアミン含量(高アミン当量)でも、安定した組成物を作るのに役立ったが、組成物の永続性は低かった。これは、高レベルのブチルアクリレートを有する実施例63〜65より低い永続性をもたらすようである。意外なことに、さらなる親水性モノマーを含んでいなかった実施例71および72は、AM−90Gを含んでいた実施例69〜70より低い永続性を有していた。このことから、一部の親水性モノマーは、永続性を助長する可能性があることが分かる。理論に縛られてはいないが、これは、十分に乾燥する間の良好な皮膜形成の確保、または有効成分ポビドンヨードとの相互作用のいずれかまたは両者に起因すると考えられる。実施例73〜76は、本発明の組成物に組み入れると、良好な永続性を有する乾燥組成物を生成するPSA型皮膜形成性ポリマーについて、実例で説明する。実施例77〜82は、様々なレベルの高Tgコモノマー(IBOAおよびMMA)を含む皮膜形成性ポリマーについて、実例で説明する。低レベルのこうしたモノマーは、粘着性を有意に低下させなかった。高Tgコモノマーのレベルが、30%(実施例82では45%)より上まで上昇したときに限って、粘着性が有意に低下した。
【0234】
実施例83
実施例83は、トリメチルアミノエチルメタクリレートおよびラウリルメタクリレートを主成分とするポリマーの抗微生物活性について、実例で説明する。使用したポリマーおよび組成物は、実施例14に準拠して調製した。実施例14では、下記の方法で、ポリマーの抗微生物活性を測定した。
【0235】
実施例14の組成物を、飽和するまでガーゼに吸収させ、単に該調合物を連続円運動で腕に3回塗ることにより、ボランティアの内側前腕に塗布した。プレップを、少なくとも2分間、しっかり留めておき、その後、5.04cm2の面積を有するガラス製のサンプリング用シリンダーを、プレップを覆うように皮膚に押し付けた。このサンプリング用シリンダーの中に、滅菌サンプリング溶液2.5mLを分配した。このサンプリング溶液を、テフロン(登録商標)・ポリスマン(TEFLON(登録商標) policeman)を使用して、1分間、腕の上のガラス製シリンダー内で完全に混合し、シリンダー内の全領域の皮膚を確実にこすった。ピペットを使用して、この溶液を取り出し、滅菌試験管に入れた。サンプリング溶液の第2のアリコート2.5mLをこのシリンダーに加え、この工程を繰り返した。2.5−mLのアリコート2つを、1本の試験管内に合併した。およそ20〜50コロニー形成単位(CFU)/mLという、合併したサンプリング溶液中の希釈濃度を得るのに十分な濃度の表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermidis)ATCC Number 12228 50マイクロリットルを、この試験管に加えた。標準無菌溶液(Standard Sterile Solution)(SSS)および改質無菌溶液(Modified Sterile Solution)(MSS)の両対照サンプルも実行した。サンプリング溶液が細菌に有毒かどうかを決定するために、一組の対照で、SSSおよびMSSならびにバターフィールド(Butterfield)のリン酸緩衝水(PBW)に細菌を直接接種した(Journal of the Association of Official Analytical Chemists,Vol.22,625(1939))。
【0236】
KH2PO4 34gを、DI水500mLに入れ、10N NaOHでpHを7.2に調整し、十分なDI水を加えて1リットルにすることにより、0.25M原液を作ることによって、PBWを作った。この溶液を濾過し、滅菌し、1リットル滅菌ビンに分配し、冷蔵した。バターフィールド(Butterfield)のPBWは、該原液1.25mLをDI水900mLに加え、中和剤を加え、攪拌し、加熱して成分を溶解し、DI水で1リットルに希釈することによって作った。この溶液を十分に混合し、500mL用のビン2本に分配した。溶液が入っているビンを、121℃で25分間、オートクレーブ滅菌した。ビンをオートクレーブから取り出した後、中身を注意深く渦巻攪拌した。
【0237】
接種したサンプルを、即刻および溶液に30分曝露した後再度、接種したサンプリング溶液1mLを、トリプチカーゼ大豆寒天(Trypticase Soy Agar)(TSA)培地13mLに加えることによってプレーティングし、増殖について試験した。プレートを35℃で3日間インキュベートし、照明型拡大コロニーカウンター(illuminated magnified colony counter)を使用して、コロニー数を数えた。
【0238】
サンプリング溶液は、下記の通りに調製した。標準サンプリング溶液(Standard Sampling Solution)(SSS)は:リン酸二水素カリウム0.4g、リン酸水素ナトリウム10.1g、テキサス州ハウストンにあるユニオン・カーバイド・コープ(Union Carbide Corp.,Houston,TX)から販売されているトリトン(TRITON)X100界面活性剤1.0g、レシチン(CAS番号8002−43−5、ニュージャージー州フェアローンにあるフィッシャーマン・サイエンティフィック(Fisher Scientific,Fairlawn,NJ)からカタログ番号03376−250として販売)3.0g、トゥウィーン(TWEEN)80(ICI)30.0g、チオ硫酸ナトリウム1.0g、および総量を1リットルにするための脱イオン水を含んでいた。サンプリング溶液のpHは約7.9であり、通常は、調整は必要ではない。加えて、イーストマン(Eastman)AQ55Sポリマーの30重量%分散液70gを水に加え、続いて1リットルに希釈することにより、SSSと同じ方法で、改質サンプリング溶液(MSS)を調製した。該サンプリング溶液は、全ての成分を一緒に加え、溶解するまで、攪拌しながらおよそ60℃に加熱することによって調製した。次いで、これをビンに入れ、蒸気滅菌した。抗微生物活性の結果を表15aに示す。
【0239】
【表28】

【0240】
以上の結果から、ポリマー含有組成物が存在しなければ、SSSもMSSもともに、細胞に有毒ではなかったことが分かる。
【0241】
次に、実施例14を皮膚に施与し、上述の通りにSSSおよびMSSの両者で除去した。結果を表15bに示す。
【0242】
【表29】

【0243】
結果から、標準サンプリング溶液(SSS)では、PBWに比べて、即座にかつ長期にわたって死滅させることが分かった。チオ硫酸ナトリウムは、存在するヨウ素を完全に中和するのに十分な濃度であったため、これは、ヨウ素ではなく、第四級アミンポリマーが存在するためであった。全てのサンプルは無色透明であった。さらに、MSSへの曝露後は、抗微生物活性がないことが、結果から分かった。スルホン化AQポリマーMSSは、第四級アミン含有ポリマーを沈澱させ、それによって、活性を中和することが証明されている。MSS中に活性が欠如していることにより、ヨウ素が中和されたことが、さらに裏付けられる。
【0244】
この実施例は、わずか30分で95%の減少という驚くべき活性を示した。この実施例では、ポリマー濃度は分からないが、たぶん非常に低かったであろう。ポリマーの抗微生物特性を直接評価するために、水中に2重量%のポリマー5mLを直接接種し、同じ方法で抗微生物活性について試験した。この方法で、ポリマーは30分で、好ましくは少なくとも50%の細菌減少、より好ましくは少なくとも75%の細菌減少、最も好ましくは少なくとも90%の細菌減少を示した。これらのポリマーは、局所塗布、たとえばアクネ、水虫等々の処置用の有効な抗微生物剤として、化粧品および食品用の保存料として、ならびに塗装面消毒薬として、有用な可能性がある。
【0245】
実施例84〜99
実施例84〜99は、皮膜形成性ポリマーのほとんどが、水中で透き通った溶液を形成することを説明する。ポリマーを1重量%で水中に溶解し、650nmで%透過率を測定した。水ブランクを使用して、水サンプルが100%になるように、%透過率を較正した。データを、表16a、16b、16c、16d、16e、および16fに示す。高い%透過率は、これらのポリマーが、水中で溶液を形成することを示す。ポリマー組成は、ポリマーを調製するために使用した重量%モノマーで示す。
【0246】
【表30】

【0247】
【表31】

【0248】
【表32】

【0249】
【表33】

【0250】
【表34】

【0251】
【表35】

【0252】
比較例C3〜C20
比較例C3〜C20は、親水性モノマーのみからなる高度に荷電した第四級アミン側鎖官能基含有ポリマーを使用する。ポリマーの説明を表17aに示す。
【0253】
【表36】

【0254】
組成物は、表17b、17c、17d、および17eに記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して調製した。実施例25〜33について記載した通りに、安定性について組成物を評価した。テストプロトコールに記載の通りに、永続性についても組成物を評価した。結果を、表17b、17c、17d、および17eに記載する。
【0255】
【表37】

【0256】
【表38】

【0257】
【表39】

【0258】
【表40】

【0259】
あらゆる実施例で、pHは3未満であった。永続性テストに準拠して、安定した組成物を永続性について評価した。ポリクォーターニウム(Polyquaternium)−16を含有する組成物(C8〜C11)は、たいていは不安定であった。C9のみが安定した組成物をもたらしたが、その永続性は劣っていた。同様に、ポリクォーターニウム(Polyquaternium)44は、安定した組成物をもたらさなかった。ポリクォーターニウム(Polyquaternium)7は、安定した組成物をもたらした;が、永続性は比較的低かった。ポリクォーターニウム(Polyquaternium)22サンプルは、安定した組成物をもたらさなかった。GAFQUAT 734およびコポリマー825を使用すると、他の安定したサンプルのみが生じた。これらのサンプルの永続性は比較的低く、約20秒未満であった。安定した組成物は、いったん乾くと、皮膚上に非常に脆弱な組成物を形成し、短時間で、薄片になって落ちそうであった。
【0260】
実施例100〜109
アミンオキシド官能ポリマー、ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z731を使用して、実施例100〜109を調製した。ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z731は、エタノールに入った状態で入手した。水を加え、ロータリー・エバポレーターでエタノールを除去して、固形分17%の溶液を得た。ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z731アミンオキシド基は、低pHでプロトン化して、正電気を帯びるであろうポリマーをもたらすことができる。サンプルを滴定してポリマーのpKaを決定した。これは、高pH(たとえば8)で開始して、HClで低pHまで滴定し、次いで元に戻ることにより、決定した。複数のpKaが得られた。これは、コポリマーにおけるアミンオキシド基の多様な配列に起因すると考えられるであろう。データを解析して、pH4で、アミンオキシド基の100%近くがプロトン化されていることが判明した。アミン当量も算出し、およそ330gポリマー/アミン当量であった。このポリマーは高度に荷電していたであろうが、意外なことに、中程度レベル(2%未満)の多くの陰イオン性界面活性剤と相容性であった。皮膚上で調合物が十分な永続性を有することを保証するために、界面活性剤のレベルは、極端に上昇させなかった。
【0261】
これらの実施例で使用した陰イオン性のデタージェント型界面活性剤を、表18aに記載する。これらの実施例に関する組成、pH、安定性、および永続性を、表18bおよび18cに記載する。表18bおよび18cでは、全成分の量を、固体ベースで示す。これによって、ある特定の成分を水溶液として加える場合、その水は、この成分の量の中に含まれるのではなく、組成物中の水の総量に反映されることを意味する。
【0262】
【表41】

【表42】

【0263】
【表43】

【0264】
【表44】

【0265】
永続性があるアミンオキシド側鎖官能性ポリマー、ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z731は、多種多様な陰イオン性界面活性剤と驚くほど相容性であることがデータから分かる。アミンオキシド(アンモニクス(AMMONYX)LMDO)等の補助界面活性剤の存在は、第四級ポリマーの場合にもそうであったが、安定性を助ける。汚れ、油等々の除去を容易にするために、シャンプー、石鹸および他のクリーナーで広く使用されている、これらのデタージェント型界面活性剤を加えたにもかかわらず、皮膚に対する永続性は優れていた。
【0266】
実施例110〜115
実施例110〜115は、永続性があるアミンオキシド側鎖官能性皮膜形成性ポリマーと組み合せた、高レベルの有機酸緩衝剤の使用について、実例で説明する。実施例110〜112で使用したポリマーは、ダイアフォーマー(DIAFORMER)Z−731(クラリアント・コープ(Clariant Corp.))として販売されている、市販のポリ(アミンオキシドアクリレート)であった。実施例113〜115で使用されたポリマーは、ポリマーC(LMA)の調製について上に略述した通りに調製した。該ポリマーは、SMA(10%)/IBMA(25%)/DMAEMA(55%)/MMA(10%)を含んでいた。0.3重量%VAZO 67を使用して、温度65℃で、モノマーを重合した。DMAEMAと使用した過酸化水素とのモル比0.9を使用して、DMAEMAをアミンオキシドに酸化した。SFSの代わりにビタミンCで残留モノマーを清掃した。蒸留後、過酸化水素の残留レベルを測定すると、100ppm未満であった。ポリマーは、インヘレント粘度0.7を有していた。表23に記載の成分を使用して一般的組成物調製法に準拠して、組成物を調製した。
【0267】
30秒こすり洗い適用技術を使用して、テストプロトコールに記載の通りに、ヒト・ボランティアに対するヒト皮膚抗微生物活性について、組成物を評価した。テストプロトコールに略述されている通りに、永続性、ドレープ接着、および粘着性についても組成物を評価した。結果を、表23に示す。
【0268】
【表45】

【0269】
結果から、実施例110〜112は、非常に良好な抗微生物活性を有していたことが分かる。実施例110、113、および114は、格別の永続性を有していた。実施例111、112、および115の永続性は、一般に10秒未満持続するベタジン(BETADINE)のそれよりはるかに大きかった。全サンプルの粘着性は非常に低かった。実施例110〜112では、アイオバン(IOBAN)2切開用ドレープの接着(ドレープ接着(Drape Adhesion))は良好で、乾燥したベタジン(Betadine)溶液上への接着に相当すると判定された。全てのサンプルは、室温で、透明で黒っぽかった(安定していた)。
【0270】
特許、特許文献、および本明細書に引用した刊行物の完全な開示内容を、それぞれを個々に援用したかのように、参照により本明細書に全体を援用する。本発明に対する様々な修正および変更は、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、当業者に明白になるであろう。本発明は、本明細書に記載の例示的な実施形態および実施例によって不当に限定されるものではなく、このような実施例および実施形態は、単に例示のために提示されており、本発明の範囲は、本明細書に記載の特許請求の範囲によってのみ限定されるものであることを理解されたい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、前記ポリマーのアミン当量が、少なくとも約300グラムポリマー/アミン基当量であるビニルポリマー;
水;および
界面活性剤;
を含む皮膜形成性組成物であって、
前記組成物が、下記の特徴:
前記ポリマーは、該界面活性剤より多い量で存在するか;
または
前記組成物の乾燥皮膜は永続性がある;
の少なくとも1つを有する、
皮膜形成性組成物。
【請求項2】
抗微生物剤、医薬、または化粧料からなる群より選択される活性物質をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ビニルポリマーと活性物質との比率が、約0.25:1〜約5:1である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
陰イオン性または両性の界面活性剤をさらに含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤が、陰イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
アミン基を有する前記ビニルポリマーのTgより高いTgを有するポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
アミン基を有する前記ビニルポリマーのTgより高いTgを有する前記ポリマーがポリビニルアルコールである、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記アミン基が、第四級アンモニウム基、プロトン化第三級アミン基、アミンオキシド基、およびそれらの組合せからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
(C1〜C4)アルコールをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
アミン基含有モノマー;
約1〜約30重量%の(C6〜C22)アルキル(メタ)アクリルモノマー;および
約15〜約75重量%の(C1〜C4)アルキル(メタ)アクリルモノマー;
を含む、モノマーから調製される水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、
前記ポリマーのアミン当量が、約300〜約3000グラムのポリマー/アミン基当量である、ビニルポリマー;
水;および
活性物質;
を含む、皮膜形成性組成物。
【請求項12】
界面活性剤をさらに含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ヒドロキシカルボン酸緩衝剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
アミン基含有側鎖および疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、前記ポリマーのアミン当量が約300〜約3000グラムポリマー/アミン基当量であるビニルポリマー;
活性物質;
水;および
界面活性剤;
を含む皮膜形成性組成物であって、
前記組成物が、下記の特徴:
前記ポリマーは、該界面活性剤より多い量で存在するか;
または
前記組成物の乾燥皮膜は永続性がある;
の少なくとも1つを有する、
皮膜形成性組成物。
【請求項15】
前記ビニルポリマーが、ジメチルアミンオキシドメタクリレート、イソブチルメタクリレート、メチルメタクリレート、および(C12〜18)アルキルメタクリレートを含むか、またはトリメチルアミニオエチルアクリレートクロリド、ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、および(C12〜18)アルキルメタクリレートを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
皮膜形成性組成物を組織に適用するステップであって、前記皮膜形成性組成物が:
アミン基含有側鎖および共重合した疎水性モノマーを含む水溶性または水分散性のビニルポリマーであって、前記ポリマーが少なくとも約300グラムポリマー/アミン基当量のアミン当量を有するビニルポリマー;
水;および
界面活性剤;
を含み、
前記組成物が、下記の特徴:
前記ポリマーは、該界面活性剤より多い量で存在するか;
または
前記組成物の乾燥皮膜は永続性がある;
の少なくとも1つを有する、
ステップと、
前記皮膜形成性組成物を前記組織に残留させておくステップと
を含む、組織を消毒する方法。
【請求項17】
前記組成物が、抗微生物剤をさらに含む、請求項16に記載の方法。

【公開番号】特開2010−227617(P2010−227617A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−151930(P2010−151930)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【分割の表示】特願2003−561661(P2003−561661)の分割
【原出願日】平成14年12月5日(2002.12.5)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】