説明

盗撮防止装置

【課題】映画館でのビデオカメラ等によるスクリーン盗撮防止装置を提供する。
【解決手段】盗撮映像の品位を低下させるため、スクリーンに投射する複数の波長の赤外光を前記スクリーンの明るさによって切り替える。投射される赤外光は盗撮機器の正常機能を妨害し盗撮を防止するが、使用する投射光は非可視である為、観客に鑑賞を妨げることは無い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗撮者が映画館において不法に著作物の盗撮を行い、違法な著作物販売などにより不当な利益を得ることを防止する事やインターネットなどに公開し、著作者に不利益を与える事を防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
1980年代、映画館でスクリーンを録画し、館内に流れる音声を録音して作成されたと考えられる映画の所謂海賊版ビデオが出回るようになった。これは、家庭用の録画録音機器の普及によって、映画館内に機器を容易に持ち込めるようになったためだと考えられている。この種の海賊版は、正規版のメディアから複製された海賊版と比較すると、影像や音声の品質が劣る一方で、映画が一般公開された直後に出回る点で、興行収入への影響が無視できないものであった。
【0003】
1990年代入ると、カメラやマイクの高性能化、小型化により、映画館における映画の録画・録音を、より鮮明に、かつ隠密に行うことが可能になった。さらに、これまで海賊版の流通媒体として主に使われてきたアナログのビデオテープに代わって、DVDやインターネットといったデジタル技術を基盤としたデータ複製、送信手段が普及した結果、海賊版を映像劣化させることなく複製し、短時間に世界中に流通させることが可能となった。その結果、海賊版の流通による興行収入への影響はいっそう深刻なものになっていった。アメリカ映画業協会の海外管轄団体であるMPA(Motion Picture Association of America)の試算によると、2005年、日本国内の映画館における盗撮によって流出した海賊版による日本国内の損害額は、邦画と洋画を合わせて180億円であったという。そして、同年の日本における映画興行収入は約1980億円であったことから、海賊版の流通が、興行収入を1割近く減少させていると指摘している。
【0004】
2007年8月30日に、「映画の盗撮の防止に関する法律」が施行され、法律によって映画館に置ける盗撮を防止する事が可能になった。この法律を有効に運用し、盗撮防止を行うのは勿論であるが、実際の運用では、盗撮者とのトラブル、盗撮に関係しない一般客への悪影響など、困難な場面も予想される。盗撮者を発見し、摘発する装置を導入し、運用する事が盗撮を根絶する為の重要手段であり、盗撮を効果的に防止する手段の開発も望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
著作権保護の為の従来技術としては、特開2006−258651の方法として映画館での盗撮防止の為、盗撮に使用する映像機器レンズの反射光を判定検出する方法がある。特開2002−197562の方法として、盗撮、盗聴する機器の存在を赤外線の有無で検知する装置及び方法。特開2001−313006による光ファイバーで赤外光を導入、発光させ、盗撮を防止する方法がある。いずれの場合もスクリーンに投射し、盗撮を防止するものではない。特開2003−057753は可視光をスクリーンに投射し盗撮される映像品位を低下させるものであるが可視光を投射するため映画鑑賞を妨げてしまう。本発明は映画館でスクリーン上映された映像として善意の観客には悪影響を与えることなく、悪意の盗撮に対しては盗撮された映像の品位を悪化させ、結果として不法媒体の流通を防ぐ事に有る。
【特許文献1】特開2006−258651
【特許文献2】特開2002−197562
【特許文献3】特開2001−313006
【特許文献4】特開2003−057753
【0006】
これらの装置の欠点を改良し、盗撮防止の効果を十分に高めた盗撮防止装置を提供しようとするのが、本出願と同一の出願人による特許出願、特願2008−203590である。内容の詳細については、省略する。
【特許文献5】特願2008−203590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明が解決しようとする課題は、盗撮者が映画館に於いて盗撮を行い、販売などにより不当な利益をうることを防止し、また、インターネットなどに公開し、著作者に不利益を与える事を防止する装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、特願2008−203590の装置で、スクリーンからビデオカメラに向けて強力な赤外光を放射することで、ビデオカメラの自動焦点調整機構に狂いが生じることを利用し、ビデオカメラに強制的にピンボケ状態を作り出し、盗撮したビデオテープ、ハードディスクなどの映像を鑑賞に堪えないまでに劣化させる事を目的とする。また、ビデオカメラに使われているCCDなどの撮像素子に用いられる三原色フィルターが、本来ならカットすべき赤外光を或る程度通過させる事を利用し、スクリーンから客席に向けて不可視且つ強力な赤外光を放射する事で、盗撮したビデオテープ、ハードディスクなどの映像を見るに堪えないまでに劣化させる事を目的とする盗撮防止装置を提案した。
【0009】
特願2008−203590の装置で、スクリーン方向から客席に向かって強力な赤外光を投射した場合、盗撮防止装置が発する赤外光成分の中に可視光成分が含まれると人の目に見えてしまい映画鑑賞の邪魔になる為、人の目に見える波長成分が殆ど含まれない中心波長が900〜980nmの波長の赤外光を用いた。しかし盗撮者が、盗撮防止装置の効果を弱め盗撮することを目的として、ビデオカメラのレンズ前面に強力な赤外カットカットフィルターを配置した場合、盗撮防止装置の効果をより高める為に、より波長の短い中心波長が800〜900nmの赤外光を投射する必要が有る。しかし、安全性、コストなどから通常光源として用いるLEDなどの光源では、中心波長が800〜900nmの赤外光には目に見える可視光成分も含まれている。これらの課題を両立させる為、上映される映画の画面が暗く人の目が盗撮防止装置から投射される赤外光に対する感度が高い場合は中心波長が900〜980nmの比較的波長の長い赤外光を、画面が明るく人の目が盗撮防止装置から投射される赤外光に対する感度が低い場合は、中心波長が800〜900nmの比較的波長が短く、ビデオカメラに対する妨害効果の高い赤外光を投射することで、光学的に盗撮防止装置の効果を減じようとする前記手段に対抗し、盗撮防止装置の効果を維持することを目的としている。
【0010】
スクリーン上の映像よりも盗撮防止装置から出る赤外光の方が明るいとビデオカメラが判定すると、ビデオカメラは盗撮防止装置にピントを合わせる。このとき盗撮防止装置の赤外光を点滅すると、より大きな盗撮防止効果が得られる。ビデオカメラの自動焦点機構は、1〜3秒の時定数で動作するように設計されている為、盗撮防止装置を1〜3秒程度の間隔で点滅すれば、ビデオカメラの自動焦点機構は常に新しい目標を探して動作することになり、大きなピンボケ効果が得られる。盗撮防止装置からの赤外光が消えると、ビデオカメラは新しい目標を探して焦点を合わせようとするが、映画館内は暗いので焦点合わせに時間がかかり、大きく焦点がずれる為、盗撮防止装置の赤外光を点滅させれば、大きくピンボケ状態を作り出すことが出来る。なぜなら、盗撮防止装置が停止している間は、画面に焦点が合っている。盗撮防止装置が動作すると、ビデオカメラは盗撮防止装置に焦点を合わせようとするため焦点が狂い、ピンボケ状態になる。盗撮防止装置の赤外光が消えると、カメラは新しい目標を探して焦点を合わせようとするが、周囲が暗いと焦点合わせに時間がかかり、大きく焦点がずれる。ビデオカメラの自動焦点調整装置を切り、ピントを手動調整すれば、本件の盗撮防止装置の影響を受けないが、暗い映画館内で他の人に見つからないようにピントを合わせるのは非常に困難で、実用的でない。
【0011】
図1に、本発明による装置の配置を示す。図1は、盗撮防止装置101をスクリーン102の裏に配置した場合である。図1で、101は盗撮防止装置、102はスクリーン、103は映写機、104は盗撮用ビデオカメラ、105は客席、106は映写室を示す。盗撮防止装置から投射される赤外光により、ビデオカメラの焦点自動調整機構に狂いを生じさせ、ビデオカメラにピンボケの状態を生じさせる。また、盗撮防止装置から投射される赤外光により、ビデオカメラのカラーフィルターを通過した赤外光が撮像装置上に妨害パターンを生じさせ、盗撮した映像が鑑賞に堪えないようにすることにより、盗撮防止効果を生じさせる。盗撮防止装置をスクリーンの前に配置しても、同一の効果が得られる。この状況を記録し、盗撮防止効果を示す動画像の記録媒体も有るが、本明細書では記載できない為、割愛する。
【発明の効果】
【0012】
映画の盗撮を行う者が、盗撮防止装置の効果を減じる目的で、図2の様にビデオカメラ107の前面に可視光通過赤外光阻止フィルター108を配置することが考えられる。このフィルター108は図3の109の様な光学特性を持ち、可視光成分はさほど減衰させないまま、赤外成分を減衰させる特性を持つ。図3で、盗撮防止装置が映画鑑賞の妨げにならないように、人の目に見える波長成分が殆ど含まれない中心波長が900〜980nmの波長の赤外光111を用いた場合、赤外光阻止フィルター108により、盗撮防止装置の効果が減じられる場合がある。一方、赤外光阻止フィルター108を用いられても盗撮防止装置の効果を維持する為、中心波長が800〜900nmの波長の赤外光110を用いた場合、スクリーン上に写される映像が暗いと、盗撮防止装置から投射される赤外光に112の赤の可視成分が含まれている為、目に見えてしまい、映画鑑賞の邪魔になる場合がある。
【0013】
盗撮防止装置から投射される赤外光に図3の符号112の赤の可視成分が含まれていたとしても、スクリーン102の明るさがある程度以上になれば、目には見えなくなる。この特性を利用し、通常は盗撮防止装置から人の目に見える波長成分が殆ど含まれない中心波長が900〜980nmの波長の赤外光111を投射しておく。盗撮防止装置が、スクリーンが明るくなったと判定すると、赤外光111に加えビデオカメラに与える影響の大きい800〜900nmの波長の赤外光110を投射する様にすれば、900〜980nmの波長の赤外光111だけを用いた場合に比べ、赤外光阻止フィルター108を用い盗撮を試みるビデオカメラに対する盗撮防止効果は大きい。
【0014】
図4で、盗撮防止装置101の筐体内に中心波長が、図3における900〜980nmの波長の赤外光111を投射する発光素子114と、図3における800〜900nmの波長の赤外光110を投射する発光素子115と、上映用スクリーン102の明るさを検出する明るさセンサー113を、盗撮防止装置101の筐体内に配置する。盗撮防止装置から常時人の目に見える波長成分が殆ど含まれない中心波長が900〜980nmの波長の赤外光を投射しておき、明るさセンサー113がスクリーンの明るさがある閾値を越えたと判断した場合、ビデオカメラに与える影響の大きい800〜900nmの波長の赤外光の投射を開始するようにすれば、自動的に投射する赤外光の波長を切り替えることが出来、映画の鑑賞に悪影響を与えることなく、高い効果の盗撮防止装置を提供することが出来る。
【0015】
明るさセンサーには、人の目に対する赤外光の影響の強さを判定する為、視感度補正された特性を持つものを用いると良い。
【0016】
図4のように配置された盗撮防止装置で、装置から客席に向けて投射される赤外はスクリーンを透過する時に減衰し、更に、後方の客席に到達するまでに広がり減衰する為、盗撮を行うビデオカメラに十分な影響を与えるように、非常に高出力な発光装置を用いる。特願2008−203590のように、盗撮防止装置では、盗撮を行うビデオカメラのピントを強制的にボケさせる為、ある周期で赤外光を点滅させる。明るさセンサーを用いて盗撮防止装置から投射される赤外光の波長を切り替える装置でも、赤外光投射装置から900〜980nmの波長の赤外光111を間欠的に投射する。図5で、900〜980nmの波長の投射機101の発光素子114から投射された赤外光116aが、スクリーンで反射して116bのように明るさセンサー113に到達すると、映写機103に照らされたスクリーン102の明るさより盗撮防止装置から出る赤外光の反射光116bの明るさの方が遙かに強い為、明るさセンサー113はスクリーンが明るいと誤判断し、人の目に見える800〜900nmの波長の赤外光を発光素子115から投射してしまう。センサーが視感度補正されており、赤外領域をカットしていたとしても、赤外領域にも感度を持つ為、誤動作は発生する。
【0017】
ビデオカメラに与える影響は大きいが、人の目に見える成分を有し、映画鑑賞に妨げになる波長成分を含む中心波長800〜900nmの赤外光を盗撮防止装置で発光させるのに、盗撮防止装置に含まれる900〜980nmの波長の投射機の発光による誤動作を防ぐ為、図6に赤外光の発光タイミングを示す、赤外光の発光器が動作していない、すなわち、発光期間の前にスクリーンの明るさを117の期間に検出し、118の期間に判定し、スクリーンの明るさが800〜900nmの波長の赤外光を発光させても映画鑑賞に悪影響を与えない明るさを越えていると判断した場合、119の期間800〜900nmの波長の赤外光を発光させるようにすれば、盗撮防止装置が自身の発光、反射による誤動作を行うことを防ぐことが出来る。誤動作を防ぐ為、中心波長800〜900nm,900〜980nmの何れの波長の発光期間も、スクリーンの明るさの検出は行わない。本発明では2つの波長を用いる場合を提案したが、より綿密な制御を行い、より効果の高い盗撮防止装置を実現しようとする場合、2つ以上の波長を用いるようにすれば、よりよい結果が得られるのは言うまでもない。また、レーザーなどの発光波長の広がりが狭い光源を用いれば、より精密な制御が行える。
【0018】
通常、発光期間は同じ発光の強さを維持する所謂直流駆動を行う。これは、発光の強さを最大値に維持でき、回路的にも簡単な利点がある。しかし、発光期間に、通常のビデオカメラに用いられるコンポジットビデオ信号等に類似した波形だが、ビデオカメラに同期していない波形に応じて光の強さを変化させると、ビデオカメラのビデオ信号と僅かにずれている為、撮影した画像に所謂フリッカや縞模様が生じ、盗撮した映像をより見にくくする効果がある。
【発明の実施するための形態】
【0019】
盗撮に使用するビデオカメラ104は、撮像素子特性として、近赤外領域は可視光域に比べて低感度とはいえ或る程度の感度を有する。本発明の盗撮防止装置は、この波長域は不可視で有る事を利用し、赤外LEDや赤外レーザーなどの不可視光をスクリーン方向から投影し、観客の目には見えない光で、盗撮に使用するビデオカメラの自動焦点機構あるいは自動路露出機構に狂いを生じさせ、盗撮された画像を鑑賞に堪えなくして盗撮防止効果を得る物である。また、ハレーションやゴーストなどの映像の品質低下や偽画像を生じさせ、盗撮防止効果を得る物である。
【0020】
CCDやMOSなどの撮像素子の材料はシリコンであり、通常の撮像素子の発電可能な波長は、400nm〜1000nmである。この内、400nm〜700nmは可視領域であり、700〜1000nm程度の波長を持つ発光素子でスクリーンを投射照明しても、この波長領域は人間の目には見えないので上映の妨げにはならない。人間には影響が無く、検知出来ない赤外光であるが、CCDまたはMOS型撮像素子では700nm〜1000nmを検知してしまい、この赤外領域の光で撮像素子に不自然な信号または信号飽和を起こすことが可能となる。人間の目と撮像素子の検知機能の違いを応用して、ビデオカメラによる不法撮影の妨害を行う事が出来る。700nm〜1000nmの光波長は所謂近赤外領域であり、本装置の発光器には、近赤外LEDや近赤外レーザーを用いる。
【0021】
一般的に、盗撮防止装置の発光素子には、LEDを用いる。LEDは、安全性、寿命、コストなどの点で優れており、盗撮防止装置に用いるのに適している。しかし、LEDは目的とする波長よりも短い波長領域と、目的とする波長よりも長い波長領域にも発光成分を有する。図3の110に比較的波長の短い近赤外LEDの発光特性を、111に比較的波長の長い近赤外LEDの発光特性を示す。110のように、発光波長の中心値が可視領域に近いと、赤の成分112が目に見え、映画鑑賞の邪魔をする恐れがある。しかし一般に、発光赤外波長の中心値が可視光に近くて、短い赤外光ほどビデオカメラの撮像素子の感度が高く、発光赤外波長の中心値が可視光に近い波長の赤外LEDを用いた方が盗撮防止装置による盗撮ビデオカメラへの盗撮防止効果は大きい。111のように発光波長の中心値が可視光から遠い波長であれば、映画鑑賞の邪魔をする赤い光の成分112を含まないので映画鑑賞の妨げにならないが、ビデオカメラのLEDに対する感度が低く、盗撮防止効果は小さい。
【0022】
盗撮防止装置に、盗撮防止効果の大きい比較的短い赤外波長のLEDを用いると、LEDの持つ可視光成分により映画鑑賞の妨げになる。しかし、映画の場面によりスクリーンの明るさは変化している。スクリーンが暗い場面では短い波長のLEDを用いると映画鑑賞の妨げになるが、スクリーンが明るい場面では、スクリーン背面にある盗撮防止装置から出る光はスクリーンの明るさにマスクされてしまい、人の目から見えなくなる。
【0023】
すなわち、図4のスクリーン背面に置かれた盗撮防止装置1で、映画鑑賞への妨げにならない波長の長いLED114を常時点灯しておく。明るさセンサー113でスクリーンの明るさを検出し、スクリーンの明るさが目に影響のない値を超えた場合、盗撮防止効果の大きい波長の短いLEDを点灯するようにすれば、映画鑑賞の妨げにならず、且つ盗撮防止効果の大きい盗撮防止装置を実現できる。
【0024】
盗撮者が盗撮防止装置の存在に気付き、盗撮防止装置の効果を減ずる目的で盗撮用ビデオカメラの前面に図3の119の様な特性を有する赤外カットフィルターを設置した場合、波長の長い図3の111の様な特性を持つ図4の114のLEDだけを用いていると、図2における赤外カットフィルター108は図4の114のLEDの波長域で大きな減衰量を持つ為LEDの光を大きく減衰させ、盗撮防止装置の効果を低下させる恐れがある。しかし、映画鑑賞の妨げにならない範囲で図3の110の様な波長特性を持つ図4の115のLEDを用いれば、図3の9の様な特性を有する赤外カットフィルターを設置したビデオカメラで盗撮されたとしても、前述の赤外カットフィルターは700nm〜800nmの可視光と赤外光の中間領域で十分減衰せず、この波長域の光を透過させてしまう為、十分な盗撮防止効果を得ることが出来る。
【0025】
スクリーンが暗い場面では、映画鑑賞への妨げにならない波長の長い図4の114の発光LEDを常時点灯しておき、スクリーンが明るい場面では図4の115の発光LEDで114の発光される波長に比較して、より短い赤外光を点灯すれば、赤外カットフィルターなどを有するビデオカメラで盗撮されても、盗撮防止効果を維持することが出来る。スクリーンの明るさを判定し、この切り替えを行うのに、図4の113の明るさセンサーを用いる。図4のように配置された盗撮防止装置101で、前記装置から客席に向けて投射される赤外光はスクリーンを透過する時に減衰し、更に、後方の客席に到達するまでに広がり減衰する為、盗撮を行うビデオカメラに十分な影響を与えるように、非常に高出力な赤外発光装置を用いる。また、盗撮防止装置101では、盗撮を行うビデオカメラ104のピントを強制的にボケさせる為、ある周期で赤外光を点滅させる。明るさセンサーを用いて盗撮防止装置から投射される赤外光の波長を切り替える装置でも、赤外光投射装置から900〜980nmの波長の赤外光を間欠的に投射する。図5で、900〜980nmの波長の投射機114から投射された赤外光116aが、スクリーンで反射して116bのように明るさセンサー113に到達する。ここで、映写機に照らされたスクリーン102の明るさより、盗撮防止装置から出る赤外光の反射光116bの光の強度の方が遙かに強い為、明るさセンサー113はスクリーンが明るいと誤判断し、人の目に見える800〜900nmの波長の赤外光を発光素子115から投射してしまい、映画鑑賞者に図3における符号112の赤い光を認識させ、映画鑑賞を妨げてしまう。
【0026】
この誤動作を防ぐ為には、、赤外光の発光器が動作していない図6の117の期間にスクリーンの明るさを検出し、118の期間に判定し、スクリーンの明るさが図3における符号110の波長の赤外光を発光させても映画鑑賞に悪影響を与えない明るさを越えていると判断した場合、図6の符号119の発光期間に図3における符号110の波長の赤外光を発光させるようにすれば、盗撮防止装置の発光、反射による誤動作を行うことを防ぐことが出来る。同じ理由で、誤動作を防ぐ為、図3の符号110、111の何れの波長の発光期間も、スクリーンの明るさの検出は行わない。
【0027】
明るさセンサーでは、LEDの赤色光成分図3の符号112の成分を検出するのに、前述赤成分の人の目への影響を計るのがよい。この目的から、明るさセンサーには、人の目の感度で視感度補正された素子を用いるのがよい。視感度補正された明るさセンサーは、赤外領域をカットしているとは言え、僅かながら赤外領域にも感度を持つ。盗撮防止装置から出る光は、スクリーンからの光に比べて非常に強力な為、誤動作は発生する。この誤動作を防ぐ為にも、図6の発光タイミング制御を行うことが重要と言える。
【0028】
盗撮用ビデオカメラの記録画像に大きな誤動作により盗撮画像を鑑賞するに耐えないダメージを与える為、例えば図7の様なパターンを用いる。図7で、120は発光部、121は制御部、122は明るさ検出部である。発光部120の大きさは、凡そ30cm角である。大型のシアターでは、スクリーンの幅が20m以上、高さが6m以上有るが、そのような環境下で十分な盗撮防止効果を得る為、盗撮防止装置の大きさは、縦、横とも1.2m以上の大きさにする。この大きさで明るさ検出を中央の1箇所だけで行った場合、盗撮防止装置の大きさが画面高さの20%程度有る為、盗撮防止装置のカバーする範囲の一部が明るく一部が暗い様な状態が起きる。この場合、明るさセンサーがスクリーンが明るいと判断して波長の短いLED115を発光させると、盗撮防止装置の一部が暗く、人の目に赤色光の成分が見えてしまう恐れがある。
【0029】
明るさセンサーがスクリーンの明るさを正確に判定し、盗撮防止装置から出る赤色光が映画鑑賞を妨げないようにするには、発光部をブロック分け、例えば図8の例では8分割し、発光部120のそれぞれ中央付近に明るさセンサー122を配置し、おのおの独立に明るさ検出、明るさ制御を行えば、盗撮防止装置からでる赤色光が映画鑑賞を妨げることはない。
【0030】
通常、盗撮防止装置では、2秒間発光、3秒間停止というように一定時間連続して発光させる。発光時間にビデオカメラは盗撮防止装置にピントを合わせようとする為、スクリーンからピントが外れ、盗撮画像はピンボケ効果になる。しかし、発光期間に通常のビデオカメラに用いられるコンポジットビデオ信号に類似した波形だが、ビデオカメラに同期していない波形に応じて光の強さを変化させると、ビデオカメラのビデオ信号と僅かにずれている為、撮影した画像に所謂フリッカや縞模様が生じ、盗撮した映像をより見にくくする効果がある。図9に通常のビデオ信号の例、図10にビデオ信号に似せた盗撮防止装置の発光信号を示す。100IREを盗撮防止装置の最大発光レベルとして発光させる。ビデオカメラ内部では、図9の様なビデオ信号で動作しているが、図10の様な信号を作り、この信号の強さに応じて盗撮防止装置を発光させると、図10の信号はビデオカメラ内部の信号に近似しているが同期はしていない為、ビデオカメラ内部の信号と盗撮防止装置の信号間で所謂ビート現象を起こし、ビデオカメラの録画画像に縞模様やフリッカを生じさせる。
【0031】
図11に、実際に図10の波形で駆動した試験装置で撮影した画像の例を示す。図11で、123は盗撮防止装置の試験装置、124はその発光部を示す。試験装置をビデオカメラで撮影すると、下部から125の間は発光している期間の為明るいが、125の点で発光が止む為暗くなり、境界線が現れる。この線の位置と明るさは、フレーム毎にビデオカメラの垂直周波数と盗撮防止装置の疑似ビデオ信号との間に現れるビートに応じて変化する為、盗撮画像は非常に見にくいものとなり、盗撮を不可能にする。駆動する波形は、ビデオ信号に近似していなくても、ビデオ信号の垂直周波数である60Hzで駆動しても、フリッカなどを発生させる事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】 映画館内に於ける各機器の配置例
【図2】 ビデオカメラと盗撮を行う為の赤外カットフィルターの配置例
【図3】 近赤外LEDの波長特性の例と赤外カットフィルターの特性の例
【図4】 この発明に係る盗撮防止装置の構成例とスクリーンに対する配置の例
【図5】 明るさ制御の説明図
【図6】 明るさ制御の誤動作を防ぐ為の制御タイミング図
【図7】 盗撮防止装置の各部の配置例
【図8】 改良した盗撮防止装置の配置例
【図9】 コンポジットビデオ信号の例
【図10】 ビデオ信号に似せた盗撮防止装置の発光信号の例
【図11】 図10の波形で動作させた試験装置で撮影した画像の例
【符号の説明】
【0033】
101 盗撮防止装置
102 スクリーン板
103 映写機
104 盗撮用ビデオカメラ
105 客席
106 映写機室
107 盗撮用ビデオカメラ
108 映画館内の盗撮ビデオカメラ装着する赤外光フィルター
109 盗撮を行う為の赤外カットフィルターの特性の例
110 波長の短い近赤外LEDの波長特性の例
111 波長の長い近赤外LEDの波長特性の例
112 波長の短い近赤外LEDの赤色光成分
113 明るさセンサー
114 波長の長い近赤外LED
115 波長の短い近赤外LED
116a 波長の長い近赤外LEDからでた赤外光
116b 波長の長い近赤外LEDからでた赤外光のスクリーンでの反射光
117 スクリーンの明るさを検出する期間
118 スクリーンの明るさを判定する期間
119 盗撮防止装置を発光させる期間
120 盗撮防止装置の赤外光発光部
121 盗撮防止装置の制御部
122 明るさセンサー
123 盗撮防止装置の試験装置
124 発光部
125 ビートによる明るさの境界線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映画を上映閲覧する所謂映画館に於いて、ビデオカメラでの盗撮を防止する為、目に不可視で且つ、ビデオカメラの撮像素子に写る赤外光をスクリーン方向からビデオカメラに向けて投射する事により、盗撮を防止する事を特徴とする盗撮防止装置に於いて、観客の映画鑑賞の妨げにならず、且つ盗撮を行うビデオカメラの機能を低下させる為、明るさセンサーでスクリーンの明るさを検出し、スクリーンが暗い時は観客の目に見えない中心波長が900〜980nmの赤外光を、スクリーンが明るい時は、盗撮防止装置から投射される赤外光が若干観客の目に見えるが、ビデオカメラに与える影響が大きい中心波長が800〜900nmの赤外光を、スクリーン近傍またはスクリーン背後からビデオカメラに向かって発射することにより、盗撮した画像を鑑賞に堪えないようにすることを特徴とする盗撮防止装置。
【請求項2】
盗撮防止装置から投射される赤外光の波長を切り替えるため、明るさセンサーがあらかじめ設定した明るさを越えたと判定した時に中心波長が800〜900nmの赤外光を、中心波長が900〜980nmの赤外光に加えて投射することを特徴とする請求項1に記載の盗撮防止装置。
【請求項3】
明るさセンサーで波長の切り替えを行う請求項1に記載の盗撮防止装置で、赤外光投射期間は明るさセンサーの明るさ検出を停止し、明るさ検出アルゴリズムの誤動作を防止することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の盗撮防止装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2または請求項3において使用する明るさセンサーに、人の目の視感度に近い波長特性を持つセンサーを用いることを特徴とする盗撮防止装置。
【請求項5】
明るさセンサーを用いて投射波長の切り替えを行う盗撮防止装置において測定位置の誤差による映画鑑賞の妨害を防止する為、分散配置された発光部の中心付近にそれぞれ独立した明るさセンサーを設け、発光部の位置毎に独立して波長切り替えの制御を行うことを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4に記載の盗撮防止装置。
【請求項6】
通常のビデオカメラに用いられるコンポジットビデオ信号に類似した波形だが、ビデオカメラに同期していない波形で盗撮防止装置の発光部を発光させ、盗撮した映像をより見にくくすることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5に記載の盗撮防止装置。
【請求項7】
発光期間に約60Hzの周波数で駆動発光することでビデオカメラの同期信号とのビート映像を発生させ、盗撮した映像をより見にくくすることを特徴とする請求項1または請求項2または請求項3または請求項4または請求項5または請求項6に記載の盗撮防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−231748(P2010−231748A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−100347(P2009−100347)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【出願人】(508238392)株式会社iSAFE (3)
【Fターム(参考)】