説明

盗難警報用音響発生装置および盗難防止制御システム

【課題】 車両外部から盗難警報用サイレンが破壊されるのを防ぎつつ、警報音の音圧が低下することを抑制することができる盗難警報用音響発生装置および盗難防止制御システムを提供する。
【解決手段】 車両の外部と盗難警報用サイレン10との間に、盗難警報用サイレン10から発せられる警報音の周波数によって共振する高強度・高ヤング率の遮断部16が設けられることにより、盗難警報用サイレン10から発せられて遮断部16に衝突した警報音は、遮断部16が警報音の周波数で共振することでその振動を車両の外部側の空気へと伝えるため、結果、遮断部16に遮音されることなく車両外部へと伝えられる。よって、車両外部から盗難警報用サイレン10が破壊されるのを防ぎつつ、警報音の音圧が低下することを抑制することができることから、車両の盗難を試みる盗人を効果的に威嚇することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、盗難警報用音響発生装置および盗難防止制御システムに関する。特に、車両の内部に設けられたサイレンから外部へと発する警報音の音圧の低下を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の盗難被害を防止することを目的として、車両に搭載される盗難防止装置が広く知られている。
【0003】
車両用の盗難防止装置としては、車両の盗難に関する異常を検出する1または複数の検出センサと、検出センサからの検出信号に基づいて実施される盗難防止手段と、盗難防止手段を統括するメインユニットとを備えたものが知られている。また、盗難防止手段としては、メインユニットからの指示に基づいて車両の外部に向けて盗人を威嚇するための警報音を発する盗難警報用サイレンを備えたシステムが広く適用されている。このような構成として、オーディオ用スピーカを報知手段として用いることで警報音を発生させる技術について、例えば、特許文献1に開示されている。
【0004】
上記の盗難防止装置は、盗難を防止する車両の内部に設置されるが、特に、盗難警報用サイレンは、車両後方のトランク横で、給油口と反対側の車体内部によく設置される。しかし、車両の盗難を目論む盗人は、車両を盗難する際に、車両の外部から盗難警報用サイレンにアクセスし、サイレンを無効化または破壊しようと試みる場合がある。そのため、盗難警報用サイレンをできるだけ外部からアクセスしにくい車両内部の奥深くに設置したり、また、盗難警報用サイレンに保護カバーを設けたりすることで、盗難警報用サイレンが無効化または破壊されることを防止する対策が考えられる。このような構成として、盗難警報ベルの動作を外部から妨害されないように、警報ベル部をカバーで覆う技術について、例えば、特許文献2に開示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平7−329722号公報
【特許文献2】特開平8−040328号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献2の盗難防止警報器は、警報ベルを覆う保護カバーによって警報音が遮音されることで、その音圧が低下してしまうために、車両の盗難を試みる盗人に対する威嚇効果が減衰する、といった問題が考えられる。
【0007】
同様に、盗難警報用サイレンをより外部からアクセスしにくい車両の奥深くに設置する場合も、車両内部の複数の構成部品等によって警報音が遮音されるため、その音圧が低下してしまう、といった問題が懸念される。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされてものであり、車両外部からの盗人による攻撃から盗難警報用サイレンを保護し、かつサイレンから発せられる警報音の音圧が低下するのを抑制することができる遮断部を有する盗難警報用音響発生装置および盗難防止制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の盗難警報用音響発生装置は、車両用の盗難防止装置の構成品として、車両の内部に設置される音響発生装置と、当該音響発生装置と前記車両の外部側との間に設けられ、前記音響発生装置を前記車両の外部から遮断する遮断部とを備え、前記遮断部は、前記音響発生装置から前記車両の外部に向けて発せられる警報音の周波数で共振する構成であることを特徴とする(請求項1)。
【0010】
特に、本発明の盗難警報用音響発生装置は、前記遮断部が、当該遮断部の固有振動数を、前記音響発生装置から前記車両の外部に向けて発せられる警報音の周波数の整数倍±αに調整されることを特徴とすることができる(請求項2)。
【0011】
また、本発明の盗難警報用音響発生装置は、前記遮断部が、前記音響発生装置を前記車両の内部に固定するための取付部材であることを特徴とすることができる(請求項3)。
【0012】
更に、本発明の盗難警報用音響発生装置は、前記遮断部が、前記車両の車体の構成品の一部であることを特徴とすることができる(請求項4)。
【0013】
そして、本発明の盗難防止制御システムは、請求項1から請求項4のいずれか1記載の盗難警報用音響発生装置と、当該盗難警報用音響発生装置を制御する制御部とを備えた車両用の盗難防止制御システムとすることができる(請求項5)。
【発明の効果】
【0014】
本発明の盗難警報用音響発生装置および盗難防止制御システムによれば、車両の外部と盗難警報用サイレンとの間に、サイレンから発せられる警報音の周波数で共振する遮断部が設けられることにより、車両外部から盗難警報用サイレンが破壊されるのを防ぎつつ、警報音の音圧が低下することを抑制することができるため、車両の盗難を試みる盗人を効果的に威嚇することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面と共に詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の実施例1について図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の盗難警報用音響発生装置を組み込んだ車両用の盗難防止装置の概略構成を示した説明図である。
【0017】
図1に示すように、盗難防止装置1は、複数の検出センサと、システム全般を統括するメインユニット2と、車両の盗難を試みる盗人を威嚇するための盗難防止手段とで構成される。
【0018】
本実施例の盗難防止装置1には、ドアセンサ3、ボンネットセンサ4、トランクセンサ5、侵入検知センサ6が設置されている。これら各検出センサは、警戒モードONの時に車両の異常を検出し、メインユニット2へ信号を送る役割を担う。
【0019】
ドアセンサ3は、ロックされたドアがこじ開けられるのを検知するセンサで、ドア回転軸の回転を検出するか、ドアの移動を直接検知する形式のいずれでもよく、回転センサ、磁気センサ、光センサ等が適用される。ボンネットセンサ4およびトランクセンサ5は、ボンネット、トランクの開閉を検知するセンサで、ドアセンサ3と同じく回転センサ、磁気センサ、光センサ等が適用される。侵入検知センサ6は、車両に近づき車内に侵入しようとする者を検知するセンサで、マイクロ波の電磁波によって一定の空間にバリアを形成し、バリア内に不審者が侵入するとマイクロ波の出力状態が変化することにより侵入を検知する形式のものや、赤外線レーダが車内の動く物体を検知する形式のものが適用される。また、その他の検出センサとして、加速度センサを用いて車体の振動を検知する振動センサや、二軸加速度センサを用いて車体に傾斜が生じた事を検知する傾斜センサ、超音波を用いて窓ガラスの破損を検出する超音波センサ等があり、これら複数の検出センサを組み合わせることにより、車両の盗難に関する異常を検出することができる。
【0020】
メインユニット2は、盗難防止装置1のシステム全般を統括する。メインユニット2は、車両のイグニッションスイッチがオフとなり、かつキーレス20からのドアロック信号を受信することで警戒モードONとなり、盗難防止装置1の各制御を開始する。この場合、メインユニット2と別体のチューナ(図示しない)がキーレス20からのドアロック信号を受け、メインユニット2に信号を送っても良い。また、盗難防止装置1の警戒モードON・OFFをメカ式キーによるドアロックと連動させることもできるが、ピッキング等によりドアロックが解除されることで、盗難防止装置1の警戒モードも解除されてしまうため、警戒モードのON・OFFはキーレス20のドアロック信号と連動させることが好ましい。そして、メインユニット2は、車両のECU(Electronic Control Unit)と一体とすることができるし、ECUと別体で設けることもできる。なお、メインユニット2は、本発明の盗難警報用音響発生装置を制御する制御部に相当する。
【0021】
次に、メインユニット2の制御の流れに沿って、盗難防止装置1の動作を説明する。図2はメインユニット2の処理を示すフローチャートの一例である。まず、メインユニット2は、ステップS1にてエンジンの停止要求がされたか否か、すなわちイグニッションがオフにされたか否かを判断する。ステップS1の判断結果がYESである場合、すなわちイグニッションがオフの場合は、次にステップS2へ進む。
【0022】
メインユニット2は、ステップS2で、キーレス20からのドアロック要求信号を受信したか否かを判断する。ステップS2の判断結果がYESである場合、すなわちキーレス20からのドアロック要求信号を受信した場合、メインユニット2は次のステップS3へ進む。ステップS2の判断結果がNOである場合、すなわちキーレス20からのドアロック要求信号を受信していない場合は、メインユニット2は再度ステップS1の処理を繰り返す。
【0023】
メインユニット2は、ステップS3で、警戒モードをONにし、盗難防止装置1の各システムの制御を開始する。つづいて、メインユニット2は、ステップS3の処理の後に、ステップS4へ進む。
【0024】
メインユニット2は、ステップS4で、各検出センサからの情報に基づいて、車両の盗難が発生しているか否かを判断する。ステップS4の判断結果がYESである場合、すなわち車両の盗難が発生している場合、メインユニット2は次のステップS8へ進む。ステップS4の判断結果がNOである場合、すなわち車両の盗難が発生していない場合は、メインユニット2はステップS5からステップS6へ進む。
【0025】
メインユニット2は、ステップS5で、車両のイグニッションがONにされたか否かを判断し、つづいてステップS6で、ドアロックがOFFにされたか否かを判断する。ステップS5の判断結果がYESの場合、すなわちイグニッションがONにされた場合、または、ステップS6の判断結果がYESの場合、すなわちドアロックがOFFにされた場合、メインユニット2は、次のステップS7へと進み、警戒モードをOFFにして各システムの制御を終了し、再びステップS1の処理を繰り返す。ここで、車両のイグニッションがONにされていない場合、すなわちステップS5の判断結果がNOの場合であっても、ステップS6の判断結果がNOの場合、すなわちドアロックがONである場合は、メインユニット2は警戒モードを解除せずに、再度ステップS4の処理を繰り返す。
【0026】
メインユニット2は、ステップS4の判断結果がYESの場合、次のステップS8に進む。ステップS8で、メインユニット2は、ヘッドランプ7、ハザードランプ8、ホーン9、および盗難警報用サイレン10に対し、盗難防止手段を実行するよう指示し、制御の処理を終了する。
【0027】
ここで、本実施例の盗難防止手段は、車両のヘッドランプ7、およびハザードランプ8を点灯させる、車両のホーン9を鳴らす、そして、車両後方のトランク横で、給油口と反対側の車体内部に設置された盗難警報用サイレン10から警報音を発することで、車両の盗難を試みる盗人を威嚇するものである。
【0028】
図3は、本実施例の盗難防止手段である盗難警報用サイレン10の内部の概略構成を示した説明図である。盗難警報用サイレン10は、内部バッテリ11、通信回路12、マイクロコンピュータ13、吹鳴回路14、およびスピーカ15とで構成される。通信回路12は、異常を検出したメインユニット2からの指示をマイクロコンピュータ13に伝える。そして、マイクロコンピュータ13は、メインユニット2からの指示に基づき、吹鳴回路14およびスピーカ15に対し、警報音の発生、停止を指示する通信制御を行う。また、マイクロコンピュータ13は、メインユニット2と盗難警報用サイレン10とを通信する通信線の断線検知も行う。つまり、盗難警報用サイレン10とメインユニット2との間の通信線が断線した場合、マイクロコンピュータ13がその断線を検知し、内部バッテリ11の電力を使用して吹鳴回路14に警報音の発生を指示する。よって、盗人がメインユニット2との通信線を切断した場合でも、盗難警報用サイレン10が自ら警報音を発することで、盗人を威嚇することができる。なお、マイクロコンピュータ13は、本発明の盗難警報用音響発生装置を制御する制御部に相当する。
【0029】
また、吹鳴回路14からスピーカ15を通じて発生される警報音の周波数は、盗人への威嚇効果を高めるために、人間の耳に聞こえ易い2.0kHzから3.55kHzの間に設定することが好ましいが、より好ましくは2.5kHz前後に設定するとよい。
【0030】
図4は、盗難警報用サイレン10に遮断部16が取り付けられている状態を示した説明図である。遮断部16は、盗難警報用サイレン10を外部から保護するために、車両の外部と盗難警報用サイレン10との間であって、盗難警報用サイレン10に近接した位置に設けられ、少なくとも1ヶ所以上が盗難警報用サイレン10に接合される構成である。そして、盗難警報用サイレン10と遮断部16は、取付部材17によって車両の内部に固定される。
【0031】
このように、車両の外部と盗難警報用サイレンとの間に遮断部を設置することにより、盗人による車両外部からの盗難警報用サイレンの無効化または破壊活動から、盗難警報用サイレンを保護することができる。
【0032】
更に、遮断部16は、盗難警報用サイレン10からの警報音の周波数によって共振する構成である。
【0033】
車両の盗難に関する異常を検出しサイレンから警報音が発せられると、その警報音は空気中を振動し車両外部へと伝わるが、大部分はサイレン近傍に設置された遮断部に衝突する。すると、遮断部は、サイレンから伝えられた警報音の周波数によって共振を開始する。そして、共振した遮断部は、その振動を車両の外部側の空気へと伝えるため、結果、遮断部に衝突した警報音は遮断部によって遮音されることなく車両外部へと伝えられる。よって、盗難警報用サイレンの遮断部を警報音の周波数で共振させることにより、警報音の音圧が低下することを抑制することができる。
【0034】
遮断部16は、その固有振動数を調整することによって、盗難警報用サイレン10の警報音の周波数で共振することができる。固有振動とは、物体を自由に振動させた際に検出される特定の振動のことである。また、共振とは、エネルギーを有する物体が外部から与えられた刺激により固有振動を起こすことであり、特に外部からの刺激が物体の固有振動数に近い状態をいう。よって、遮断部16の固有振動数を、盗難警報用サイレン10から発せられる警報音の周波数と等しいか、もしくは近い値に調整することで、遮断部16は警報音の周波数によって共振が誘発される。その結果、遮断部に衝突した警報音を遮音することなく車両外部へと伝えることができる。
【0035】
一般的に、物体の固有振動数は次式で表わされる。
【0036】
f(Hz)=(1/2π)・(K/m)1/2 ・・・(1)
【0037】
ここで、Kは物体のばね定数、mは実効質量を示している。また、ばね定数Kは次式で表わされる。
【0038】
K=P/δ=βEI/l=βEbt/12l ・・・(2)
【0039】
ここで、Pは荷重、δは最大たわみ、βは物体の支持方法と荷重の状態によって決まる係数であり、例えば、片持ちばりβ=3、両端支持はりβ=48、両端固定はりβ=192である。また、Eは物体のヤング率、Iは断面二次モーメント、そしてb、t、lはそれぞれ物体の幅、厚さ、長さを示している。
【0040】
上記(1)(2)式より、物体の固有振動数は、その物体の質量、支持方法、ヤング率、形状によって決定される。これより、遮断部16の質量、支持方法、ヤング率、形状を調整することで、遮断部16の固有振動数を警報音の周波数と等しい値に設定することができることから、警報音の周波数によって遮断部16を共振させることができる。
【0041】
遮断部16は、車両外部からの攻撃から盗難警報用サイレン10を保護するために、高い強度が必要とされる。更に、盗難警報用サイレン10から発せられる警報音の周波数2.0kHzから3.55kHzによって共振する固有振動数が必要であるため、高いヤング率が必要とされる。そのため、遮断部16に適用される材料は、例えば金属、複合材、水晶やカーボン、セラミックス等の無機材料などの高強度・高ヤング率材を用いることができる。
【0042】
また、遮断部16の質量は、遮断部16の固有振動数が盗難警報用サイレン10からの警報音の周波数で共振する値となるように決定されるが、周波数2.0kHzから3.55kHzによって共振するために高い固有振動数が必要であることから、遮断部16の質量は軽量であることが好ましい。
【0043】
更に、遮断部16の形状は、盗難警報用サイレン10を外部から保護できる形状を採用する。例えば、遮断部16は、接着剤やネジ止めによって盗難警報用サイレン10の下部と接合され、そこから盗難警報用サイレン10の前方に、くの字型に屈曲する板形状を採用することができる。また、遮断部16の支持方法は、遮断部16と盗難警報用サイレン10とが、どのように何ヶ所で接合されるかによって決定する。この場合、遮断部16が車両の外部から攻撃された際に、遮断部16の屈曲部が破損したり接合部分が剥離したりするのを抑制するために、遮断部16は、盗難警報用サイレン10によって2ヶ所以上で支持される形状、例えば、盗難警報用サイレン10の下部と上部とに、コの字型やアーチ型形状等で接合することもできる。
【0044】
そして、遮断部16の固有振動数の調整は、例えば、遮断部16を盗難警報用サイレン10に接合した後に、FFT(Fast Fourier Transform)アナライザを使用して遮断部16の固有振動数を確認しつつ、遮断部16のヤング率、支持方法、質量および形状を調整する方法で進めることができる。
【0045】
以上のように、本実施例1の盗難警報用サイレン10は、車両の外部と盗難警報用サイレン10との間に、盗難警報用サイレン10から発せられる警報音の周波数によって共振する遮断部16が設けられることにより、車両外部から盗難警報用サイレン10が破壊されるのを防ぎつつ、盗難警報用サイレン10から発せられる警報音の音圧が低下することを抑制することができる。そのため、車両の盗難を試みる盗人を効果的に威嚇することができる。
【実施例2】
【0046】
次に、本発明の実施例2について説明する。図5は、実施例の盗難警報用サイレン10に遮断部18が取り付けられている状態を示した説明図である。なお、実施例1と同様の構成要素については、図面中、同一の参照番号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0047】
遮断部18は、実施例1と同様に、車両の外部と盗難警報用サイレン10との間であって、盗難警報用サイレン10に近接した位置に設けられ、少なくとも一ヶ所以上が盗難警報用サイレン10に接合されるが、更に、盗難警報用サイレン10との接合部分以外の少なくとも一ヶ所以上が、車両の内部に接合される構成である。
【0048】
このような構成とすることで、もともと車両内部に存在する盗難警報用サイレンの取付部材が遮断部を兼ねるため、新規な部品を追加する必要がなくなる。よって、盗難警報用サイレンを外部からの攻撃から保護しつつ、部品数を増加させることなく、製造工数の短縮化、および低コスト化を達成することができる。
【0049】
更に、遮断部18は、実施例1と同様に、盗難警報用サイレン10からの警報音の周波数によって共振する構成である。そのため、遮断部18の材料としては、実施例1の遮断部16と同様に、軽量かつ高強度・高ヤング率の材料を適用することができる。
【0050】
ここで、遮断部18の形状は、盗難警報用サイレン10を外部から保護しつつ、盗難警報用サイレン10を車両の内部に固定できる形状を採用する。例えば、遮断部18は、接着剤やネジ止めによって盗難警報用サイレン10の下部と接合され、そこから盗難警報用サイレン10の前方にくの字型に屈曲した後に、再度逆方向へくの字型に屈曲して車両に接合される板形状等を採用することができる。また、遮断部18は、車両の外部から攻撃された際に、遮断部18の屈曲部が破損したり接合部分が剥離したりするのを抑制するために、盗難警報用サイレン10、または車両とそれぞれ二ヶ所以上で接合することもできる。
【0051】
また、実施例1と同様に、遮断部18の固有振動数の調整は、例えば、遮断部18を盗難警報用サイレン10および車両に接合した後に、FFTアナライザを使用して遮断部18の固有振動数を確認しつつ、遮断部18のヤング率、支持方法、質量および形状を調整する方法で進めることができる。
【0052】
以上のように、本実施例2の盗難警報用サイレン10は、車両の外部と盗難警報用サイレン10との間に、盗難警報用サイレン10から発せられる警報音の周波数で共振し、かつ盗難警報用サイレン10を車両の内部に固定する取付部材を兼ねた遮断部18が設置されることにより、部品数の増加を抑制しつつ、車両外部から盗難警報用サイレン10が破壊されるのを防ぐことができ、かつ警報音の音圧が低下することを抑制することができる。そのため、製造工数の短縮化、および低コスト化を達成しつつ、車両の盗難を試みる盗人を効果的に威嚇することができる。
【0053】
上記実施例は本発明を実施するための一例にすぎない。よって本発明はこれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0054】
例えば、盗難警報用音響発生装置の遮断部として、車両内部の車体構成品の一部を利用することができる。
【0055】
このような構成とすることで、もともと車体を構成する部材が遮断部を兼ねるため、部品数の増加を抑制することができる。よって、製造工数の短縮化、および低コスト化を達成しつつ、車両の盗難を試みる盗人を効果的に威嚇することができる。
【0056】
この場合、遮断部として利用する車体構成品を、サイレンから発せられる警報音の周波数によって共振させるために、車体構成品に高強度・高ヤング率材を接合したり、車体構成品を研削や屈曲して質量や形状を変化させたりすることで、その固有振動数を調整することができる。
【0057】
また、遮断部の固有振動数を、サイレンから発せられる警報音の周波数の整数倍に設定しても、遮断部の共振を誘発させることができる。更に、遮断部の固有振動数と警報音の周波数との間に誤差があっても、その誤差±αが0〜20%であれば共振が誘発されるが、より共振を誘発しやすくするために、誤差±αは小さい値が望ましく、例えば±αが0〜5%に調整されるとよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】盗難防止装置の外観を示した図である。
【図2】メインユニットが行う制御のフローを示している。
【図3】盗難警報用サイレンの内部の概略構成を示した説明図である。
【図4】盗難警報用サイレンに遮断部が取り付けられている状態を示した説明図である。
【図5】盗難警報用サイレンに遮断部が取り付けられている状態を示した説明図である。
【符号の説明】
【0059】
1 盗難防止装置
2 メインユニット(制御部)
3 ドアセンサ
4 ボンネットセンサ
5 トランクセンサ
6 侵入検知センサ
10 盗難警報用サイレン
11 内部バッテリ
12 通信回路
13 マイクロコンピュータ(制御部)
14 吹鳴回路
15 スピーカ
16 遮断部
17 取付部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の盗難防止装置の構成品として、車両の内部に設置される音響発生装置と、
当該音響発生装置と前記車両の外部側との間に設けられ、前記音響発生装置を前記車両の外部から遮断する遮断部とを備え、
前記遮断部は、前記音響発生装置から前記車両の外部に向けて発せられる警報音の周波数で共振する構成であることを特徴とする盗難警報用音響発生装置。
【請求項2】
請求項1記載の盗難警報用音響発生装置において、
前記遮断部は、当該遮断部の固有振動数を、前記音響発生装置から前記車両の外部に向けて発せられる警報音の周波数の整数倍±αに調整されることを特徴とする盗難警報用音響発生装置。
【請求項3】
請求項1、2のいずれか1記載の盗難警報用音響発生装置において、
前記遮断部は、前記音響発生装置を前記車両の内部に固定するための取付部材であることを特徴とする盗難警報用音響発生装置。
【請求項4】
請求項1、2のいずれか1記載の盗難警報用音響発生装置において、
前記遮断部は、前記車両の車体の構成品の一部であることを特徴とする盗難警報用音響発生装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1記載の盗難警報用音響発生装置と、
当該盗難警報用音響発生装置を制御する制御部とを備えた車両用の盗難防止制御システム。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−280001(P2009−280001A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131986(P2008−131986)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】