説明

監視カメラ装置

【課題】 カメラ画像の画質が高く、設計や製造が容易であり製造コストを低く抑えることのできる監視カメラ装置を提供する。
【解決手段】 監視カメラ装置1は、チルト方向に回動可能なカメラ3と、カメラ3を覆うカメラカバー4と、カメラカバー4に設けられた二つの平面窓カバー13、14を備える。二つの平面窓カバー13、14の各々は、カメラ3で撮影可能な全チルト角範囲内に設定された二つの部分チルト角範囲に対応する二つの角度にそれぞれ配置される。カメラ3のチルト角に応じて二つの平面窓カバー13、14を切替えて、カメラ3のチルト角に対応する部分チルト角範囲の平面窓カバー13、14を撮影用の平面窓カバーとして用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カメラ画像の画質を向上した監視カメラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、施設や建物などの監視を行うための監視カメラ装置として、施設や建物の壁や天井などに設置される監視カメラ装置が知られている。この従来の監視カメラ装置では、カメラを覆うドームカバーが備えられている。このドームカバーによって、監視カメラ装置のカメラが保護されている(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−45344号公報(第3−6頁、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の監視カメラ装置においては、ドームカバーを通してカメラ画像の撮影が行われるので、このドームカバーには光学的に高い性能が要求される。従来の監視カメラ装置では、製造が比較的容易であるために、半球状のドームカバーが多く用いられている。この半球状のドームカバーでは、ドームカバーの厚さを均一に製造した場合であっても、ドームカバー(曲面の部分)を光が通過するときに、レンズ効果によって画像に歪みが生じてしまい、その結果、カメラ画像の画質が劣化してしまうという問題があった。
【0004】
そこで、上記のようなレンズ効果の影響を計算して、ドームカバーの各部の厚さを変えるように設計することも考えられる。しかし、その場合には、ドームカバーの設計が容易でなく、また、その設計どおりに各部で厚さの異なるドームカバーを製造するのは非常に困難であり、その結果、製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたもので、カメラ画像の画質が高く、設計や製造が容易であり製造コストを低く抑えることのできる監視カメラ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の監視カメラ装置は、チルト方向に回動可能なカメラと、前記カメラを覆うカメラカバーと、前記カメラカバーに設けられ、前記カメラで撮影可能な全チルト角範囲内に設定された複数の異なる部分チルト角範囲に対応して配置された複数の平面窓カバーと、を備え、前記カメラカバーは、前記カメラのチルト角に対応する前記部分チルト角範囲の平面窓カバーを撮影用の平面窓カバーとして用いるように、前記平面窓カバーの切替えが可能である構成を有している。
【0007】
この構成により、複数の平面窓カバーの各々が、全チルト角範囲のうちの異なる部分チルト角範囲を分担する。そして、カメラのチルト角に応じて複数の平面窓カバーの切替えを行うことにより、広いチルト角範囲(全チルト角範囲)の撮影を行うことができる。この場合、平面窓カバー(平面の部分)を光が通過するので、従来のドームカバーのようなレンズ効果の影響を受けることがない。これにより、カメラでの撮影時に、ボケや全体に浮くフレアー現象の発生を防止することができ、カメラ画像の画質を向上することができる。また、従来のドームカバーに比べて、平面窓カバーの設計や製造は容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0008】
また、本発明の監視カメラ装置では、前記複数の平面窓カバーは、前記全チルト角範囲のうち横方向のチルト角範囲に対応する角度に配置された第1の平面窓カバーと、前記全チルト角範囲のうち縦方向のチルト角範囲に対応する角度に配置された第2の平面窓カバーを含む構成を有している。
【0009】
この構成により、第1の平面窓カバーが横方向のチルト角範囲を分担し、第2の平面窓カバーが縦方向のチルト角範囲を分担する。そして、横方向を撮影するときには第1の平面窓カバーを使用し、縦方向を撮影するときには第2の平面窓カバーを使用する。このように、二つの平面窓カバーをカメラのチルト角に応じて使い分けることにより、広いチルト角範囲(横方向と縦方向のチルト角範囲)の撮影を行うことができる。
【0010】
また、本発明の監視カメラ装置では、前記カメラカバーは、パン方向に回転可能であり、前記第1の平面窓カバーと前記第2の平面窓カバーは、パン軸を中心にして互いに非線対称に配置され、前記カメラカバーをパン方向に反転させるパン反転を行うことにより、前記第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーとの切替えが可能である構成を有している。
【0011】
この構成により、第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーをパン軸を中心にして非線対称に配置して、第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーがそれぞれ異なるチルト角範囲を分担するように設計することができる。第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーを切り替えるときには、カメラカバーをパン反転させる。これにより、第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーの切替えを容易に行うことができる。
【0012】
また、本発明の監視カメラ装置では、前記第1の平面窓カバーに対応する部分チルト角範囲と前記第2の平面窓カバーに対応する部分チルト角範囲には、互いに重複する部分が設けられており、前記第1の平面窓カバーと前記第2の平面窓カバーの各々には、前記重複する部分に対応するオーバーラップ領域がそれぞれ設けられている構成を有している。
【0013】
この構成により、オーバーラップ領域の方向を撮影するときには、第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーのどちらを使用しても撮影を行うことができる。これにより、第1の平面窓カバーの部分チルト角範囲から第2の平面窓カバーの部分チルト角範囲へカメラのチルト角を変化させるときに、カメラのチルト角が少し変動しただけで平面窓カバーの切替えが頻繁に行われるのを抑えることができる。
【0014】
また、本発明の監視カメラ装置では、前記第1の平面窓カバーと前記第2の平面窓カバーは、前記カメラのチルト回転面に垂直であり、前記カメラがチルト回転したときに形成されるカメラ円軌跡に外接する位置に配置されており、前記カメラ円軌跡は、前記カメラがチルト回転したときにカメラ外端部により形成される円軌跡の外側に所定のクリアランスを介して形成される構成を有している。
【0015】
この構成により、第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーをカメラの近傍に配置することができる。これにより、カメラカバーの設計をコンパクトにすることができ、監視カメラ装置の小型化を図ることができる。このとき、所定のクリアランスが設けられているので、カメラがチルト回転するときにカメラとカメラカバーが接触することがない。
【0016】
また、本発明の監視カメラ装置では、前記カメラをチルト方向に回動させるチルト駆動手段と、前記カメラカバーを前記カメラと一緒にパン方向に回転させるパン駆動手段と、前記チルト駆動手段と前記パン駆動手段の駆動制御を行う制御手段と、を備え、前記制御手段は、前記カメラカバーをパン反転させたときに、パン軸を中心にして線対称なミラー反転位置まで、前記カメラをチルト回転させるミラー反転制御を行う構成を有している。
【0017】
この構成により、カメラカバーとカメラのパン駆動手段を共用することができるので、装置の小型化を図ることができる。また、この場合、カメラカバーをパン反転させて平面窓カバーの切替えを行うと、カメラがカメラカバーとともにパン反転してしまい、カメラの撮影方向が変わってしまう。このときに、カメラをミラー反転位置までチルト回転させることにより、カメラの撮影方向を元の撮影方向に戻すことができる。
【0018】
また、本発明の監視カメラ装置では、前記カメラで撮影されたカメラ画像の画像処理を行う画像処理手段を備え、前記画像処理手段は、前記ミラー反転制御が行われたときに、前記カメラのカメラ画像を上下反転させる上下反転処理を行う構成を有している。
【0019】
この構成により、平面窓カバーの切替え後に、上下方向の正しいカメラ画像を得ることができる。つまり、上記のように平面窓カバーの切替えを行って、カメラの撮影方向を元の撮影方向に戻すと、カメラ画像の上下方向が逆転してしまう。このときに、カメラ画像を上下反転させることにより、上下方向の正しいカメラ画像を得ることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、カメラのチルト角に応じて切替え可能な複数の平面窓カバーをカメラカバーに設けることにより、カメラ画像の画質が高く、設計や製造が容易であり製造コストを低く抑えることができるという効果を有する監視カメラ装置を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態の監視カメラ装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、施設や建物の天井に設置される監視カメラ装置の場合を例示する。この監視カメラ装置は、遠隔操作でカメラのパン・チルト制御が可能な自動監視カメラ装置である。
【0022】
本発明の実施の形態の監視カメラ装置を図1〜図8に示す。図1は、監視カメラ装置の概略構成を示す側断面図であり、図2は、監視カメラ装置の斜視図である。図1および図2に示すように、本実施の形態の監視カメラ装置1は、天井に取り付けられる本体2と、本体2の下面に取り付けられるカメラ3と、カメラ3を下側から覆うカメラカバー4を備えている。監視カメラ装置1の本体2は、天井板5に設けられたカメラ設置穴6の内部に取り付けられ、カメラ3は、天井板5のカメラ設置穴6から外部に露出している(図1参照)。この場合、カメラ3は、本体2とカメラカバー4の内部に収納されており、外部から保護されている。
【0023】
監視カメラ装置1の本体2は、天井の構造材7に取り付けられる取付けベース8と、取付けベース8に固定される本体ケース9と、本体ケース9の内部に収納される本体フレーム10を備えている。本体フレーム10の下面には、パン方向に回転可能なパンフレーム11が取り付けられており、パンフレーム11には、カメラ3をチルト方向に回動可能に支持するチルトフレーム12が取り付けられている。この場合、カメラ3のパン軸Xpは、垂直上下方向(図1における上下方向)に設けられており、カメラ3のチルト軸Xtは、水平方向(図1における紙面垂直方向)に設けられている。
【0024】
カメラ3は、水平方向(図1における左右方向)に対して2°から90°(垂直下方向、図1における下方向)の範囲でチルト方向に回動可能である。この場合、カメラ3で撮影可能な全チルト角範囲が、水平方向に対して2°から90°の範囲であるともいえる。また、カメラ3は、パン方向に360°回動可能である。この場合、パンフレーム11はカメラカバー4に固定されており、カメラカバー4はカメラ3と一緒にパン方向に回転可能である。
【0025】
図1および図2に示すように、カメラカバー4は、複数の平面を組み合わせた概ね箱形の形状をしている。そして、このカメラカバー4には、カメラ3のチルト回転面(図1における紙面と平行な面)に垂直な二つの平面に、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14がそれぞれ設けられている。これらの平面窓カバー13、14は、透光性を有する光学ガラスで構成されている。なお、これらの平面窓カバー13、14には、外部からカメラ3を視認されるのを防ぐために、スモーク処理が施されていてもよい。
【0026】
また、図1に示すように、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14は、カメラ3がチルト回転したときに形成されるカメラ円軌跡Sに外接する位置に配置されている。ここで、カメラ円軌跡Sとは、カメラ3がチルト回転したときにカメラ外端部によって形成された円軌跡So(図1において二点鎖線で図示した内側の円軌跡)の外側にある程度のクリアランスを設けて形成される円軌跡S(図1において一点鎖線で図示した外側の円軌跡)である。
【0027】
第1の平面窓カバー13は、カメラ3の全チルト角範囲のうち、水平方向のチルト角範囲(例えば2°から37°までのチルト角範囲)に対応する角度に配置されており、第2の平面窓カバー14は、カメラ3の全チルト角範囲のうち、垂直下方向のチルト角範囲(例えば37°から90°までのチルト角範囲)に対応する角度に配置されている。例えば、本実施の形態では、第1の平面窓カバー13は、水平方向に対して17°(垂直下方向に対して73°)の角度で配置されており、第2の平面窓カバー14は、水平方向に対して61.5°(垂直下方向に対して28.5°)の角度で配置されている。ここで、平面窓カバー13、14の水平方向に対する角度とは、平面窓カバー13、14の法線の水平方向に対する角度である。
【0028】
なお、本実施の形態のカメラ3はズーム機能を備えている。水平方向の撮影時には、カメラ3の片側画角αは、カメラ3のズーム倍率に応じて0°(最大ズームモード)から20°(最大広角モード)までの範囲で調整可能である。したがって、カメラ3のチルト角を2°に設定した場合でも、ズーム倍率を低くすることにより水平方向(最大広角モードでは−18°まで)の撮影が可能である(図5参照)。また、垂直下方向の撮影時には、カメラ3の片側画角βは、カメラ3のズーム倍率に応じて0°(最大ズームモード)から28.5°(最大広角モード)までの範囲で調整可能である。ここで、カメラ3の片側画角α、βとは、カメラ3の光軸に対する画角をいい、カメラ3の画角の半分(片側分)に相当する。
【0029】
この場合、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14は、カメラ3のパン軸Xpを中心にして互いに非線対称である。したがって、後述するように、カメラカバー4をパン反転(例えば、パン方向に180°回転)させると、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14が入れ替えられる(図6および図7参照)。
【0030】
また、第1の平面窓カバー13の部分チルト角範囲(2°から37°までのチルト角範囲)と第2の平面窓カバー14の部分チルト角範囲(37°から90°までのチルト角範囲)には、重複する部分(37°のチルト角)が設けられている。つまり、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14の各々には、重複する部分(37°のチルト角)に対応するオーバーラップ領域A1、A2がそれぞれ設けられている。
【0031】
本実施の形態では、第1の平面窓カバー13のオーバーラップ領域A1は、カメラ3の片側画角αを0°(最大ズームモード)から20°(最大広角モード)まで変化させても、ケラレが発生することがないような位置に設けられている(図6参照)。また、第2の平面窓カバー14のオーバーラップ領域A2は、カメラ3の片側画角βを0°(最大ズームモード)から28.5°(最大広角モード)まで変化させても、ケラレが発生することがないような位置に設けられている(図7参照)。
【0032】
図3は、監視カメラ装置1のブロック図である。図3に示すように、監視カメラ装置1は、パンフレーム11とともにカメラ3をパン方向に回転させるパンモータ15と、チルトフレーム12に支持されたカメラ3をチルト方向に回動させるチルトモータ16と、パンモータ15とチルトモータ16の駆動制御を行う制御部17を備えている。この制御部17は、例えばDSP(デジタル信号プロセッサ)などで構成されている。ここでは、パンモータ15が、本発明のパン駆動手段に相当し、チルトモータ16が、本発明のチルト駆動手段に相当する。また、制御部17が、本発明の制御手段に相当する。
【0033】
図6および図7を用いて後述するように、この制御部17は、パンモータ15を駆動させてカメラカバー4をパン反転させるとともに、チルトモータ16を駆動させてカメラ3をミラー反転させることにより、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14の切替え(撮影用の平面窓カバーの切替え)を行う。ミラー反転とは、パン軸Xpを中心にして線対称な位置(ミラー反転位置)まで、カメラ3をチルト回転させることをいう。
【0034】
また、監視カメラ装置1は、カメラ3で撮影されたカメラ画像に画像処理を施す画像処理部18を備えている。この画像処理部18は、例えばCPUやメモリなどで構成されており、カメラ画像の上下を反転させる上下反転処理などを行うことができる。ここでは、画像処理部18が、本発明の画像処理手段に相当する。
【0035】
図4は、本実施の形態の監視カメラ装置1の光路図を示す図である。カメラ3は、CCDなどの撮像素子19と、光路上に配置された複数のレンズ20を備えている。図4に示すように、平面窓カバー13、14を通過した光は、従来のドームカバーのようなレンズ効果の影響を受けることなく、撮像素子19の撮像面に結像する。この場合、カメラ3のCCDの撮像面に対して平面窓カバー13、14が斜めに配置されていても、カメラ画像に歪みは生じない。
【0036】
以上のように構成された監視カメラ装置1について、図5〜図8を用いてその動作を説明する。ここでは、カメラ3のチルト角を全チルト角範囲で(2°から90°まで)変化させたときに二つの平面窓カバー13、14を通してカメラ画像を撮影するときの動作を説明する。
【0037】
図5は、本実施の形態の監視カメラ装置1を用いて水平方向の撮影を行う様子を示す側断面図である。図5に示すように、本実施の形態の監視カメラ装置1を用いて水平方向(図5における左方向)の撮影を行うときには、第1の平面窓カバー13がカメラ3の正面に配置され、撮影用の平面窓カバーとして使用される。この場合、カメラ3のチルト角は、水平方向に対して2°の角度であるが、上述のように、ズーム倍率を低くしてカメラ3の画角を大きくすることにより水平方向(最大広角モードでは−18°まで)の撮影が可能である。
【0038】
図6は、第1の平面窓カバー13を用いてオーバーラップ領域A1(カメラ3のチルト角が37°)の方向の撮影を行う様子を示す側断面図である。図6に示すように、カメラ3をチルト回転させてチルト角を徐々に大きくしていった場合、カメラ3のチルト角が37°(図6における斜め左下方向)になるまで、第1の平面窓カバー13が撮影用の平面窓カバーとして使用される。この場合、カメラ3の片側画角αを0°(最大ズームモード)から20°(最大広角モード)まで変化させても、ケラレのないカメラ画像を撮影することができる。
【0039】
図7は、第2の平面窓カバー14を用いてオーバーラップ領域A2(カメラ3のチルト角が37°)の方向の撮影を行う様子を示す側断面図である。図7に示すように、カメラ3のチルト角を37°以上に設定しようとするときには、第1の平面窓カバー13から第2の平面窓カバー14へ切替えが行われる。
【0040】
平面窓カバー13、14の切替えを行う場合には、まず、カメラカバー4をパン方向に180°回転させる。このとき、カメラカバー4とともにカメラ3もパン反転するので、カメラ3の撮影方向が反対方向(図7における右方向)を向くことになる。
【0041】
その後、カメラ3をパン軸Xpを中心にして線対称な位置(ミラー反転位置)までチルト回転させる。この場合、カメラ3とパン軸Xpのなす角θが53°であるので、カメラ3を106°(=2θ)だけチルト回転させる。その結果、第1の平面窓カバー13の向きの水平方向(図7における右方向)からのチルト角は143°になる。すなわち、第2の平面窓カバー14の向きの水平方向(図7における左方向)からのチルト角は37°(=180°−143°)になる。これにより、カメラ3の撮影方向が元の撮影方向(図7における左方向)に戻される。
【0042】
このようにして、第2の平面窓カバー14がカメラ3の正面に配置され、撮影用の平面窓カバーとして使用される。このとき、カメラ3のチルト角が90°より大きいので、カメラ画像の上下が反転してしまう。そこで、カメラ画像の上下反転処理を行って、上下方向の正しいカメラ画像を得る。この場合、カメラ3の片側画角βを0°(最大ズームモード)から28.5°(最大広角モード)まで変化させても、ケラレのないカメラ画像を撮影することができる。
【0043】
図8は、第2の平面窓カバー14を用いて垂直下方向の撮影を行う様子を示す側断面図である。図8に示すように、第2の平面窓カバー14の向きの水平方向(図8における左方向)からのチルト角を徐々に大きくしていった場合、カメラ3のチルト角が90°(図8における下方向)になるまで、第2の平面窓カバー14が撮影用の平面窓カバーとして使用される。この場合、カメラ3の片側画角βを0°(最大ズームモード)から28.5°(最大広角モード)まで変化させても、ケラレのないカメラ画像を撮影することができる。
【0044】
このような本発明の実施の形態の監視カメラ装置1によれば、カメラ3のチルト角に応じて切替え可能な二つの平面窓カバー13、14をカメラカバー4に設けることにより、カメラ画像の画質を向上させることができる。また、平面窓カバー13、14は設計や製造が容易であり、監視カメラ装置1の製造コストを低く抑えることができる。
【0045】
すなわち、本実施の形態では、二つの平面窓カバー13、14の各々が、全チルト角範囲(2°から90°までのチルト角範囲)のうちの異なる部分チルト角範囲を分担する。そして、カメラ3のチルト角に応じて二つの平面窓カバー13、14の切替えを行うことにより、広いチルト角範囲(全チルト角範囲)の撮影を行うことができる。この場合、平面窓カバー13、14(平面の部分)を光が通過するので、従来のドームカバーのようなレンズ効果の影響を受けることがない。これにより、カメラ3での撮影時に、ボケや全体に浮くフレアー現象の発生を防止することができ、カメラ画像の画質を向上することができる。また、従来のドームカバーに比べて、平面窓カバー13、14の設計や製造は容易であり、製造コストを低く抑えることができる。
【0046】
具体的には、第1の平面窓カバー13が横方向のチルト角範囲(2°から37°までのチルト角範囲)を分担し、第2の平面窓カバー14が縦方向のチルト角範囲(37°から90°までのチルト角範囲)を分担する。そして、横方向を撮影するときには第1の平面窓カバー13を使用し、縦方向を撮影するときには第2の平面窓カバー14を使用する。このように、二つの平面窓カバー13、14をカメラ3のチルト角に応じて使い分けることにより、広いチルト角範囲(2°から90°までのチルト角範囲)の撮影を行うことができる。
【0047】
従来の半球状のドームカバーでは、特に水平方向付近の画質が劣化するという問題があった。そこで、従来のドームカバーの水平方向の画質を改善する方法も提案されているが、その場合には、天頂方向(垂直方向)付近の画質が劣化するという問題があった。それに対して、本実施の形態では、水平方向を撮影するときには第1の平面窓カバー13が使用され、垂直方向を撮影するときには第2の平面窓カバー14が使用される。このように、いずれの方向を撮影する場合であっても、平面窓カバー13、14が使用されるので、従来のドームカバーのようなレンズ効果の影響を受けることがなく、カメラ画像の画質が向上する。
【0048】
また、本実施の形態では、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14をパン軸Xpを中心にして非線対称に配置して、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14がそれぞれ異なるチルト角範囲を分担するように設計することができる。第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14を切り替えるときには、カメラカバー4をパン反転させる。これにより、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14の切替えを容易に行うことができる。
【0049】
また、本実施の形態では、オーバーラップ領域A1、A2の方向を撮影するときには、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14のどちらを使用しても撮影を行うことができる。このオーバーラップ領域A1、A2は、第1の平面窓カバー13から第2の平面窓カバー14への切替えのためのバッファゾーンとして設けられているともいえる。これにより、第1の平面窓カバー13の部分チルト角範囲から第2の平面窓カバー14の部分チルト角範囲へカメラ3のチルト角を変化させるときに、カメラ3のチルト角が少し変動しただけで平面窓カバー13、14の切替えが頻繁に行われるのを抑えることができる。
【0050】
また、本実施の形態では、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14をカメラ3の近傍に配置することができる。これにより、カメラカバー4の設計をコンパクトにすることができ、監視カメラ装置1の小型化を図ることができる。このとき、所定のクリアランスが設けられているので、カメラ3がチルト回転するときにカメラ3とカメラカバー4が接触することがない。
【0051】
また、本実施の形態では、カメラカバー4とカメラ3のパンモータ15を共用することができるので、装置の小型化を図ることができる。また、この場合、カメラカバー4をパン反転させて平面窓カバー13、14の切替えを行うと、カメラ3がカメラカバー4とともにパン反転してしまい、カメラ3の撮影方向が変わってしまう。このときに、カメラ3をミラー反転位置までチルト回転させることにより、カメラ3の撮影方向を元の撮影方向に戻すことができる。
【0052】
また、本実施の形態では、平面窓カバー13、14の切替え後に、上下方向の正しいカメラ画像を得ることができる。つまり、上記のように平面窓カバー13、14の切替えを行って、カメラ3の撮影方向を元の撮影方向に戻すと、カメラ画像の上下方向が逆転してしまう。このときに、カメラ画像を上下反転させることにより、上下方向の正しいカメラ画像を得ることができる。
【0053】
また、本実施の形態のカメラカバー4は、複数の平面を組み合わせた概ね箱形の形状をしている。このカメラカバー4の形状の外観は、従来のドームカバーの形状とは大きく異なる新規な形態であり、監視対象者が一見してカメラ3と認識するのは困難である。したがって、本実施の形態の監視カメラ装置1によれば、監視対象者に監視カメラ装置1の存在を気付かれることなく、監視を行うことが可能となる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0055】
例えば、以上の説明では、カメラカバー4が二つの平面窓カバー13、14を備えた場合を例示したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、カメラカバーは三つ以上の平面窓カバーを備えてもよい。
【0056】
また、以上の説明では、カメラカバーがカメラとともにパン回転する場合について例示したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、カメラカバーとカメラがそれぞれ独立にパン回転してもよい。その場合、ミラー反転制御や上下反転処理は不要となるが、カメラカバーとカメラのそれぞれにパンモータが必要になる。
【0057】
さらに、以上の説明では、遠隔操作でカメラ3のパン・チルト制御が可能な自動監視カメラ装置1の場合を例示したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、監視カメラ装置の設置時に、設置作業者が手動でカメラをパン・チルトさせて監視方向を設定する定点式の監視カメラ装置であってもよい。
【0058】
以上の説明では、横方向のチルト角範囲が水平方向に対して2°から37°までの範囲である場合を例示したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、横方向のチルト角範囲に水平方向(水平方向に対して0°)からの範囲であってもよく、水平方向より上向きの方向(例えば水平方向に対して−2°)からの範囲であってもよい。
【0059】
また、以上の説明では、縦方向のチルト角範囲が水平方向に対して37°から90°(垂直下方向)までの範囲である場合を例示したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。例えば、縦方向のチルト角範囲は、垂直下方向より小さい角度(例えば水平方向に対して80°)までの範囲であってもよく、垂直下方向より大きい角度(例えば水平方向に対して100°)までの範囲であってもよい。
【0060】
さらに、以上の説明では、第1の平面窓カバー13と第2の平面窓カバー14の部分チルト角範囲の重複する部分が37°という角度のみである場合を例示した。しかし、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、平面窓カバーの部分チルト角範囲の重複する部分は、ある程度広がりのある角度範囲(例えば36°から38°の範囲)であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明にかかる監視カメラ装置は、カメラ画像の画質が高く、設計や製造が容易であり製造コストを低く抑えることができるという効果を有し、施設や建物の天井に設置される監視カメラ装置等として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本実施の形態における監視カメラ装置の側断面図
【図2】本実施の形態の監視カメラ装置の斜視図
【図3】本実施の形態の監視カメラ装置のブロック図
【図4】本実施の形態の監視カメラ装置の光路図
【図5】本実施の形態の監視カメラ装置(第1の平面窓カバーを用いて水平方向を撮影している状態)の側断面図
【図6】本実施の形態の監視カメラ装置(第1の平面窓カバーを用いてオーバーラップ領域の方向の撮影を撮影している状態)の側断面図
【図7】本実施の形態の監視カメラ装置(第2の平面窓カバーを用いてオーバーラップ領域の方向の撮影を撮影している状態)の側断面図
【図8】本実施の形態の監視カメラ装置(第2の平面窓カバーを用いて垂直下方向を撮影している状態)の側断面図
【符号の説明】
【0063】
1 監視カメラ装置
3 カメラ
4 カメラカバー
13 第1の平面窓カバー
14 第2の平面窓カバー
15 パンモータ
16 チルトモータ
17 制御部
18 画像処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チルト方向に回動可能なカメラと、
前記カメラを覆うカメラカバーと、
前記カメラカバーに設けられ、前記カメラで撮影可能な全チルト角範囲内に設定された複数の異なる部分チルト角範囲に対応して配置された複数の平面窓カバーと、
を備え、
前記カメラカバーは、前記カメラのチルト角に対応する前記部分チルト角範囲の平面窓カバーを撮影用の平面窓カバーとして用いるように、前記平面窓カバーの切替えが可能であることを特徴とする監視カメラ装置。
【請求項2】
前記複数の平面窓カバーは、前記全チルト角範囲のうち横方向のチルト角範囲に対応する角度に配置された第1の平面窓カバーと、前記全チルト角範囲のうち縦方向のチルト角範囲に対応する角度に配置された第2の平面窓カバーを含むことを特徴とする請求項1に記載の監視カメラ装置。
【請求項3】
前記カメラカバーは、パン方向に回転可能であり、
前記第1の平面窓カバーと前記第2の平面窓カバーは、パン軸を中心にして互いに非線対称に配置され、
前記カメラカバーをパン方向に反転させるパン反転を行うことにより、前記第1の平面窓カバーと第2の平面窓カバーとの切替えが可能であることを特徴とする請求項2に記載の監視カメラ装置。
【請求項4】
前記第1の平面窓カバーに対応する部分チルト角範囲と前記第2の平面窓カバーに対応する部分チルト角範囲には、互いに重複する部分が設けられており、前記第1の平面窓カバーと前記第2の平面窓カバーの各々には、前記重複する部分に対応するオーバーラップ領域がそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の監視カメラ装置。
【請求項5】
前記第1の平面窓カバーと前記第2の平面窓カバーは、前記カメラのチルト回転面に垂直であり、前記カメラがチルト回転したときに形成されるカメラ円軌跡に外接する位置に配置されており、
前記カメラ円軌跡は、前記カメラがチルト回転したときにカメラ外端部により形成される円軌跡の外側に所定のクリアランスを介して形成されることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれかに記載の監視カメラ装置。
【請求項6】
前記カメラをチルト方向に回動させるチルト駆動手段と、
前記カメラカバーを前記カメラと一緒にパン方向に回転させるパン駆動手段と、
前記チルト駆動手段と前記パン駆動手段の駆動制御を行う制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記カメラカバーをパン反転させたときに、パン軸を中心にして線対称なミラー反転位置まで、前記カメラをチルト回転させるミラー反転制御を行うことを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれかに記載の監視カメラ装置。
【請求項7】
前記カメラで撮影されたカメラ画像の画像処理を行う画像処理手段を備え、
前記画像処理手段は、前記ミラー反転制御が行われたときに、前記カメラのカメラ画像を上下反転させる上下反転処理を行うことを特徴とする請求項6に記載の監視カメラ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−17183(P2009−17183A)
【公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176129(P2007−176129)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】