説明

監視システム

【課題】異常状態への迅速かつ適切な対処を可能として、半導体デバイス製造工程における薬液漏れに起因する被害を最小限に抑えることができる監視システムを提供すること。
【解決手段】半導体デバイス製造工程において用いられる流体が正常に使用されているか監視して前記流体が人体に悪影響を与えることを防止する監視システムであって、気体濃度検出センサ(101a)、液体漏れ検出センサ(101b)、液体を溜めるタンクの液面の高さを検出するセンサ(101c)、のいずれかのセンサ(101)による異常状態の検出によって、アラームの発動、電子メールによるオペレータへの異常状態の通知、研削加工装置(11)の停止、の少なくとも一つの動作を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス製造工程において発生するおそれのある、人体に悪影響を与える流体(気体および液体)の漏れに対処するための監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造工程で用いられる研削加工装置においては、半導体ウェーハなどのワーク(被加工物)を洗浄するために、オゾン水などの人体に悪影響を与える薬液を使用する場合がある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−108209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体デバイス製造工程において、人体に悪影響を与える薬液を使用する場合は、薬液が正常に使用されているか否かを適切に監視すること、および、異常状態への迅速かつ適切な対処が要請されている。
【0005】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、異常状態への迅速かつ適切な対処を可能として、半導体デバイス製造工程における流体の漏れに起因する被害を最小限に抑えることができる監視システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の監視システムは、研削加工装置で研削したワークの洗浄に用いられる流体が正常に使用されているか監視して前記流体が人体に悪影響を与えることを防止する監視システムであって、前記流体は、フッ酸、アンモニア、オゾンのいずれかを含み、気体濃度検出センサ、液体漏れ検出センサ、液体を溜めるタンクの液面の高さを検出するセンサ、のいずれかのセンサによる異常状態の検出によって、アラームの発動、電子メールによるオペレータへの異常状態の通知、前記研削加工装置の停止、の少なくとも一つの動作を行うことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、半導体デバイス製造工程において、人体に悪影響を与える薬液を使用する場合に、気体濃度検出センサ、液体漏れ検出センサ、液体を溜めるタンクの液面の高さを検出するセンサ、のいずれかのセンサによる異常状態の検出によって、アラームの発動、電子メールによるオペレータへの異常状態の通知、研削加工装置の停止、の少なくとも一つの動作を自動で行うことができるため、異常状態への迅速かつ適切な対処ができ、半導体デバイス製造工程における流体の漏れに起因する被害を最小限に抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、異常状態への迅速かつ適切な対処を可能として、半導体デバイス製造工程における流体の漏れに起因する被害を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施の形態に係る監視システムが適用される設備を示す概略図である。
【図2】上記実施の形態に係る監視システムを示す概略図である。
【図3】上記実施の形態に係る監視システムの操作手段のモニタに表示されるエラー画面を示す模式図である。
【図4】上記実施の形態に係る監視システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】上記実施の形態に係る監視システムが異常状態を検知した際の一連の処理をまとめた異常検知処理テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本実施の形態に係る監視システムが適用される設備を示す概略図である。図1に示すように、この監視システムが適用される設備内には、クリーンルームなどの作業室1と、廃液設備2と、オペレータが駐在する事務所3が含まれる。
【0011】
作業室1には、一または複数の研削加工装置11と、研削加工装置11に薬液を供給する複数のタンクが設置されている。本実施の形態では、複数のタンクとして、アンモニアを貯蔵する第1のタンク12と、フッ化水素(フッ酸)を貯蔵する第2のタンク13と、オゾン水生成用の酸素を貯蔵する第3のタンク14の3つのタンクが設置されている。第1のタンク12には、第1の純水配管12aが接続されている。第1の純水配管12aの途中部には、第1の純水配管12aを開閉するための第1の純水バルブ12bが接続されている。同様に、第2のタンク13には、第2の純水配管13aが接続され、第2の純水配管13aの途中部には、第2の純水配管13aを開閉するための第2の純水バルブ13bが接続されている。第3のタンク14には、第3の純水配管14aが接続され、第3の純水配管14aの途中部には、第3の純水配管14aを開閉するための第3の純水バルブ14bが接続されている。第1〜第3の純水配管12a,13a,14aは、それぞれ図示しない純水供給源に接続されている。
【0012】
また、第1のタンク12には、研削加工装置11に薬液を供給するための第1の供給配管12cが接続されている。同様に、第2のタンク13には、研削加工装置11に薬液を供給するための第2の供給配管13cが接続されている。第3のタンク14には、研削加工装置11に薬液を供給するための第3の供給配管14cが接続されている。
【0013】
研削加工装置11は、ワークに研削加工を施すための研削ユニットと、ワークに洗浄処理を施すための洗浄手段を備えている。この洗浄手段において、第1のタンク12(第2のタンク13、第3のタンク14)から第1の供給配管12c(第2の供給配管13c、第3の供給配管14c)を介して供給された薬液が使用される。また、研削加工装置11には、後述する廃液設備2の廃液タンク21に薬液を廃棄するための、一または複数本の廃液配管が接続されている。本実施の形態では、廃液配管として、廃液配管15が接続されている。廃液配管15の途中部には、廃液配管15を開閉するための廃液バルブ15aが接続されている。
【0014】
ここで、研削加工装置11におけるワークの処理について説明する。研削加工装置11に搬入されたワークは、研削ユニットによってその表面を研削加工された後、研削加工装置11における洗浄手段に搬送される。洗浄手段では、希釈したアンモニアまたはフッ酸もしくはオゾン水を用いて研削加工後のワークを洗浄する。洗浄で使用したアンモニアまたはフッ酸もしくはオゾン水は、廃液配管15を通して廃棄される。なお、アンモニア、フッ酸およびオゾン水は、いずれも皮膚に触れた場合、あるいは吸引した場合などに人体に悪影響を与える薬液である。
【0015】
ここで、洗浄手段で用いる希釈したアンモニアは、第1の純水バルブ12bを開き、第1の純水配管12aから第1のタンク12に純水を供給することにより生成され、供給配管12cから研削加工装置11の洗浄手段に供給される。また、希釈したフッ酸は、第2の純水バルブ13bを開き、第1の純水配管13aから第2のタンク13に純水を供給することにより生成され、供給配管13cから研削加工装置11の洗浄手段に供給される。そして、オゾン水は、第3の純水バルブ14bを開き、第3の純水配管14aから第3のタンク14に純水を供給し、酸素から生成したオゾンを純水に溶解させることにより生成され、供給配管14cから研削加工装置11の洗浄手段に供給される。
【0016】
作業室1には、作業者の入退室やワークなどの搬入搬出の際に開閉するドア16が設けられている。このドア16の近傍であって作業室1の内側(例えば、内壁面)には、制御装置17が設置されている。制御装置17は、作業室1内の作業者による操作(例えば、後述するエラー画面の表示切替え操作など)を受け付ける。また、ドア16の近傍であって作業室1の外側(例えば、外壁面)には、操作装置18が設置されている。操作装置18は、作業室1外の作業者による操作(例えば、後述するエラー画面の表示切替え操作など)を受け付ける。
【0017】
また、作業室1には、後述するセンサ101と、自動排煙装置102とが設置されている(図2参照)。センサ101は、作業室1内の所定位置に設置され、それぞれに割り当てられた検出対象の変化を検出する。自動排煙装置102は、作業室1に設けられた排気ダクトに接続され、作業室1内の換気を行う。
【0018】
廃液設備2には、一または複数の廃液タンクが設置される。図1に示すように、本実施の形態では、廃液タンク21が設置されている。廃液タンク21は、廃液配管15に接続されている。廃液タンク21は、廃液配管15を介して排出された廃液を貯蔵する。廃液タンク21に貯蔵された廃液は、例えば、産業廃棄物業者等により定期的に取り除かれる。
【0019】
事務所3には、事務所3内に駐在するオペレータが利用するコンピュータ31が設置される。コンピュータ31は、詳細について後述するように、制御装置17から送信された電子メールの表示処理等を行う。また、事務所3には、後述する報知手段103が設置されている(図2参照)。この報知手段103は、作業室1内で異常状態が検出された場合に当該異常状態を報知する。
【0020】
続いて、本実施の形態に係る監視システムの構成について説明する。図2は、本実施の形態に係る監視システム100の構成を示す概略図である。なお、図2に示す監視システム100において、図1に示された構成要素については、同一の符号を付与し、その詳細な説明を適宜省略する。
【0021】
本実施の形態に係る監視システム100は、システム全体の制御を制御装置17に内蔵されるPLC(Programmable Logic Controller)171で行う。監視システム100においては、作業室1等に設置されたセンサ101から出力されるセンサ信号をPLC171でモニタリングし、センサ信号に応じて異常状態の報知や各種装置の停止などの制御を自動的に行うように構成されている。
【0022】
制御装置17は、システム全体の制御を行うPLC171と、このPLC171に接続された報知手段172、操作手段173およびメール処理部174とを備えている。報知手段172は、ブザー172aおよび警告灯172bを含んで構成される。報知手段172は、PLC171の制御の下、ブザー172aや警告灯172bによるアラームを発動する。警告灯172bは、例えば、複数色に発光可能な回転灯で構成される。
【0023】
操作手段173は、表示部173aおよび入力部173bを含んで構成される。操作手段173は、PLC171の制御の下、表示部173aに作業室1または廃液設備2内の異常状態を表示するエラー画面を表示する。操作手段173は、入力部173bを介して、表示部173aに表示されるエラー画面の切替え指示等の入力を受け付ける。
【0024】
メール処理部174は、PLC171の制御の下、事務所3に設置されたコンピュータ31および端末104a〜104cに異常状態の発生を通知する電子メールを送信する。この場合において、メール処理部174は、PLC171に入力されたセンサ信号の種別(センサ信号の出力元となるセンサ101の種別)に応じて、電子メールの送信先アドレスを変更する。このように送信先アドレスを決定することにより、例えば、後述するガスセンサ101aからPLC171へセンサ信号が入力された場合と、液面センサ101cからPLC171へセンサ信号が入力された場合とで、電子メールの送信先を異なったものとすることができる。
【0025】
本実施の形態に係る監視システム100においては、このような制御装置17(より具体的には、PLC171)に研削加工装置11と、操作装置18と、センサ101と、自動排煙装置102と、報知手段103とが接続されている。これらの構成要素は、制御装置17と有線または無線により接続される。
【0026】
センサ101には、作業室1内に備えられたガスセンサ101a、漏液センサ101bおよび廃液設備2における廃液タンク21に備えられた液面センサ101cが含まれる。ガスセンサ101aおよび漏液センサ101bは、作業室1内に分散して配置されている。ガスセンサ101aは、例えば、作業室1のドア16付近、研削加工装置11周辺、第1〜第3のタンク12,13,14周辺などに配置される。漏液センサ101bは、例えば、研削加工装置11周辺、第1〜第3のタンク12,13,14周辺などに配置される。
【0027】
ガスセンサ101aは、気体濃度検出センサを構成するものであり、作業室1内のアンモニア、フッ酸およびオゾンの濃度を測定し、測定結果に応じてセンサ信号をPLC171に出力する。漏液センサ101bは、液体漏れ検出センサを構成するものであり、作業室1内の漏液を検出し、検出結果に応じてセンサ信号をPLC171に出力する。液面センサ101cは、廃液タンク21の液面レベルを検知し、液面レベルが所定のレベル以上となった場合にセンサ信号をPLC171に出力する。
【0028】
操作装置18は、PLC171およびメール処理部174を除き、制御装置17と同等の機能を有する。操作装置18は、報知手段181と、操作手段1826とを備えている。報知手段181は、ブザー181aおよび警告灯181bを含んで構成され、PLC171の制御の下、ブザー181aや警告灯181bによるアラームを発動する。操作手段182は、表示部182aおよび入力部182bを含んで構成され、PLC171の制御の下、表示部182aにエラー画面を表示すると共に、入力部182bを介して作業者からの入力を受け付ける。
【0029】
報知手段103は、事務所3内に設置される。報知手段103は、ブザー103aおよび警告灯103bを含んで構成される。報知手段103は、PLC171からの制御信号に応じて、ブザー103aや警告灯103bによるアラームを発動する。
【0030】
本実施の形態に係る監視システム100においては、センサ101から出力されたセンサ信号をPLC171でモニタリングする。センサ信号を受け取ると、PLC171は、当該センサ信号に基づいて報知手段172、181、103によるアラームの発動、操作手段173、182によるエラー画面の表示、メール処理部174による電子メールの送信、研削加工装置11における加工の停止、自動排煙装置102の駆動を制御する。PLC171は、例えば、センサ信号の種別に応じて、これらの制御のいずれか1つまたは組合せを選択して行う。
【0031】
なお、メール処理部174から電子メールは、その送信先がPLC171に入力されたセンサ信号の種別に応じて変更される。例えば、ガスセンサ101aからPLC171へセンサ信号が入力された場合には、事務所3内のコンピュータ31と、作業室1の責任者の端末(例えば、コンピュータや携帯電話等)104aと、オペレータの端末104bと、オペレータ104bの上長の端末104cへ電子メールが送信される。また、液面センサ101cからPLC171へセンサ信号が入力された場合には、事務所3内のコンピュータ31と、オペレータの端末104bのみに電子メールが送信される。
【0032】
ここで、操作手段173(182)の表示部173a(182a)に表示されるエラー画面の一例について説明する。図3は、操作手段173(182)の表示部173a(182a)に表示されるエラー画面を示す模式図である。図3Aは、漏液センサ101bにより検出されたエラー情報を表示するエラー画面(以下、説明の便宜上「漏液モニタ」という)を示している。図3Bは、ガスセンサ101aにより検出されたエラー情報を表示するエラー画面(以下、説明の便宜上「ガスモニタ」という)を示している。
【0033】
図3Aに示す漏液モニタにおいては、エラー内容を表示するエラー表示領域401と、漏液を検出した漏液センサ101bの場所を表示するマップ402と、リセットボタン403およびモニタ切替ボタン404,405とが設けられている。エラー表示領域401には、作業室1内を複数に分割して定義されるエリア(ここでは、エリアA〜エリアF)ごとに異常状態を示す表示部401aが設けられている。例えば、エリアAに異常状態が発生した場合、エリアAに対応する表示部401aが点滅するように構成される。リセットボタン403は、異常状態の検出に伴うアラームの発動等の停止を受け付けるボタンである。モニタ切替ボタン404は、ガスモニタへの切替え指示を受け付けるボタンである。モニタ切替ボタン405は、液面センサ101cにより検出されたエラー情報を表示するエラー画面(以下、説明の便宜上「廃液モニタ」という)への切替え指示を受け付けるボタンである。
【0034】
図3Bに示すガスモニタにおいては、エラー内容を表示するエラー表示領域411と、ガス濃度の異常を検出したガスセンサ101aの場所を表示するマップ412と、リセットボタン413およびモニタ切替ボタン414,415とが設けられている。エラー表示領域411には、作業室1内のエリア(ここでは、エリアA、エリアB)に設置されたガスセンサ101aにおける検出対象ガス毎に異常状態を示す表示部411aが設けられている。リセットボタン413およびモニタ切替ボタン415は、それぞれリセットボタン403およびモニタ切替ボタン405と同一の機能を有する。モニタ切替ボタン414は、漏液モニタへの切替え指示を受け付けるボタンである。
【0035】
作業室1内の作業者、あるいは、作業室1外の作業者は、このようなエラー画面を確認することにより、どの場所でどのような種類の異常状態が発生しているのかを直感的に把握することができる。その上で発生した異常事態にどのように対処すべきかを迅速かつ適切に判断することができる。
【0036】
続いて、本実施の形態に係る監視システム100の動作について説明する。図4は、本実施の形態に係る監視システム100の処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すように、監視システム100が作動すると、センサ101による作業室1内のガス濃度の異常、漏液の有無および廃液設備2における廃液タンク21の液面レベルの監視が開始される。センサ101による監視は異常状態が検知されるまで継続し(ステップST101:No)、センサ101において異常状態が検知されると(ステップST101:Yes)、センサ101からPLC171へセンサ信号が入力される。
【0037】
PLC171へセンサ信号が入力されると、PLC171の制御の下、研削加工装置11の停止処理(ステップST102)、報知手段172、181、103の発動処理(ステップST103)およびメール処理部174のメール通知処理(ステップST104)が、並行して自動で行われる。この場合において、PLC171は、例えば、異常状態を検知した際の一連の処理が予め定められたテーブル(以下、「異常検知処理テーブル」という)の内容に従って、ステップST102〜ST104の処理を行う。
【0038】
図5は、監視システムが異常状態を検知した際の一連の処理をまとめた異常検知処理テーブルの一例を示す図である。図5に示す異常検知処理テーブルにおいては、センサ101からPLC171へ入力されるセンサ信号の種類と、PLC171に制御される被制御対象とが関連付けられている。異常検知処理テーブルにおいて、最初の列(ヘッダ列)には、センサ101からPLC171へ入力されるセンサ信号の種類が定められている。一方、最初の行(ヘッダ行)には、PLC171に制御される被制御対象が定められている。
【0039】
図5に示す異常検知処理テーブルにおいて、L1のヘッダ列に記載された「オゾン」とは、ガスセンサ101aにより、オゾンガス濃度異常が検出された場合にPLC171に入力されるセンサ信号を示している。同様に、L2のヘッダ列に記載された「フッ酸」とは、ガスセンサ101aにより、フッ酸ガス濃度異常が検出された場合に入力されるセンサ信号を示している。L3のヘッダ列に記載された「アンモニア」とは、ガスセンサ101aにより、アンモニアガス濃度異常が検出された場合に入力されるセンサ信号を示している。また、L4のヘッダ列に記載された「液面レベル」とは、液面センサ101cにより、所定のレベル以上の廃液タンク21の液面レベルが検出された場合に入力されるセンサ信号を示している。さらに、L5のヘッダ列に記載された「漏液検知」とは、漏液センサ101bにより、漏液が検出された場合に入力されるセンサ信号を示している。
【0040】
ここで、具体的な異常状態を挙げて監視システム100の動作について説明する。ここでは、異常状態の一例として、作業室1内のエリアAに設置された漏液センサ101bにより漏液が検知された場合を説明する。漏液センサ101bにより漏液が検知されると、漏液センサ101bからPLC171へその旨を示すセンサ信号が入力される。当該センサ信号が入力されると、PLC171は、図5に示す行L5に示すように、以下の処理を同時に自動で行う。
【0041】
PLC171は、制御装置17、操作装置18、事務所3にそれぞれ設置された報知手段172、181、103を作動させ、ブザー172a、181a、103aや、警告灯172b、181b、103bによるアラームを発動させる。なお、警告灯172b、181b、103bは、操作手段173、181bの表示部173a、182aおよびコンピュータ31の画面表示が見えない箇所に設置すると効果的である。
【0042】
また、PLC171は、制御装置17および操作装置18における操作手段173、182の表示部173a、182aに、エラー画面(上述した漏液モニタ、図3A参照)を表示する。この場合、漏液モニタにおいては、エラー表示領域401において「エリアA」の異常を示す表示部401aが点滅し、マップ402において「エリアA」に対応する領域402aが点灯する。このエラー画面により、発生した異常状態の内容およびその発生箇所を把握することが可能となる。
【0043】
さらに、PLC171は、メール処理部174で送信先アドレスを決定し、コンピュータ31および指定された端末へ漏液を通知する電子メール(以下、「漏液通知メール」という)を送信する。これにより、監視システム100が適用される設備周辺にいない作業者または管理者に対しても、速やかに異常状態の発生を通知することが可能となる。また、漏液通知メールには、図3Aに示すような、漏液を検出した漏液センサ101bの設置位置などを示す詳細な情報を付加してもよい。
【0044】
さらに、PLC171は、作業室1における自動排煙装置102を作動させる。オゾン水は気化しやすく、アンモニアおよびフッ酸も大気圧で気化するため、これらの薬液が漏液することによって人体に悪影響を与えるガスが発生する可能性が高い。自動排煙装置102の作動により、漏液した薬液が気化することにより発生したガスが作業室1内外に拡散することを防ぐことができる。
【0045】
さらに、PLC171は、作業室1における研削加工装置11の加工を停止させる。これにより、異常状態が発生した状態でワークに対する加工が継続して行われることを防止できる。したがって、異常状態の発生により研削加工装置11に十分な薬液が供給されない場合に、ワークに適切な洗浄処理を施すことができずに、半導体デバイス製造に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0046】
続いて、異常状態の他の例として、作業室1のエリアBに設置されたガスセンサ101aによりオゾンガス濃度の異常が検知された場合を説明する。ガスセンサ101aによりオゾンガス濃度の異常が検知されると、ガスセンサ101aからPLC171へその旨を示すセンサ信号が入力される。当該センサ信号が入力されると、PLC171は、図5に示す行L1に示すように、以下の処理を同時に自動で行う。
【0047】
PLC171は、制御装置17、操作装置18、事務所3にそれぞれ設置された報知手段172、181、103を作動させ、ブザー172a、181a、103aや、警告灯172b、181b、103bによるアラームを発動させる。なお、反応したガスセンサ101aの設置位置に応じて、ブザー172a、181a、103aにおけるブザー音や、警告灯172b、181b、103bにおける発光色を変更する構成としてもよい。
【0048】
また、PLC171は、制御装置17および操作装置18における操作手段173、182の表示部173a、182aに、エラー画面(上述したガスモニタ、図3B参照)を表示する。この場合、ガスモニタにおいては、エラー表示領域411において「エリアB」における「オゾン濃度」異常を示す表示部411aが点滅し、マップ412において「エリアB」に対応する領域412aが点灯する。
【0049】
さらに、PLC171は、メール処理部174で送信先アドレスを決定し、コンピュータ31および指定された端末へオゾンガス濃度異常を通知する電子メール(以下、オゾンガス濃度異常通知メール)という)を送信する。また、オゾンガス濃度異常通知メールには、図3Bに示すような、ガス濃度異常を検出したガスセンサ101aの設置位置などを示す詳細な情報を付加してもよい。
【0050】
さらに、PLC171は、作業室1における自動排煙装置102を作動させる。自動排煙装置102の作動により、漏液センサ101bにより漏液が検知された場合と同様に、オゾンガスが作業室1内外に拡散することを防ぐことができる。
【0051】
さらに、PLC171は、作業室1における研削加工装置11の加工を停止させる。これにより、異常状態が発生した状態でワークに対する加工が継続して行われることを防止できる。したがって、異常状態の発生により研削加工装置11に十分な薬液が供給されない場合に、ワークに適切な洗浄処理を施すことができずに、半導体デバイス製造に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0052】
さらに、異常状態の他の例として、廃液設備2における廃液タンク21に設置された液面センサ101cにより液面レベルの異常が検知された場合を説明する。液面センサ101cにより液面レベルの異常が検知されると、液面センサ101cからPLC171へその旨を示すセンサ信号が入力される。当該センサ信号が入力されると、PLC171は、図5に示す行L4に示すように、以下の処理を自動で行う。
【0053】
PLC171は、制御装置17、操作装置18、事務所3にそれぞれ設置された報知手段172、181、103を作動させ、ブザー172a、181a、103aや、警告灯172b、181b、103bによるアラームを発動させる。
【0054】
また、PLC171は、メール処理部174で送信先アドレスを決定し、コンピュータ31および指定された端末へ液面レベルの異常を通知する電子メール(以下、「液面レベル異常通知メール」という)を送信する。
【0055】
次に、センサ101によって異常状態が検知され、PLC171により行われた一連の処理からの復旧処理について説明する。復旧処理は、検知された異常状態に応じたエラー要因を復旧した後、作業者等が、制御装置17(操作装置18)における操作手段173(182)の表示部173a(182a)に表示されたリセットボタン403(413)を押すことで行われる。リセットボタン403(413)が押されると、エラー要因が復旧されている場合のみ、各装置等が通常動作に戻り復旧される。
【0056】
以上のように、本実施の形態に係る監視システム100によれば、半導体デバイス製造工程において、人体に悪影響を与える薬液を使用する場合に、ガスセンサ101a、漏液センサ101b、液面センサ101c、のいずれかのセンサ101による異常状態の検出によって、報知手段172、181、103におけるアラームの発動、メール処理部174による電子メールによるオペレータへの異常状態の通知、研削加工装置11の停止、の少なくとも一つの動作を自動で行うことができるため、異常状態への迅速かつ適切な対処ができ、半導体デバイス製造工程における流体の漏れに起因する被害を最小限に抑えることが可能となる。
【0057】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、さまざまに変更して実施可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更が可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施可能である。
【0058】
例えば、上記実施の形態においては、センサ101において異常状態が検出され、センサ101からPLC171へセンサ信号が入力された場合に、PLC171の制御の下、報知手段172における警告灯172bを点灯する構成について説明したが、この構成に限定されず、適宜変更が可能である。例えば、警告灯172bは、作業室1において薬液や研削加工装置11の正常使用が行われている間には、青色に点灯する構成とし、異常状態が発生した場合に他の色(例えば、赤色)に点灯する構成であってもよい。これにより、作業室1内で薬液や装置を使用していることを周囲に通知することができ、不用意な入室を避けることが可能となる。なお、報知手段181、103についても同様である。
【0059】
また、上記実施の形態においては、図5に示す被制御対象として、報知手段172、181、103と、操作手段173、182と、メール処理部174と、自動排煙装置102と、研削加工装置11とを定めている。しかしながら、異常検知処理テーブルに定める被制御対象については、これに限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、第1〜第3のタンク12〜14へ純水を供給する純水バルブ12b〜14bをそれぞれ被制御対象に含めるようにしてもよい。この場合、PLC171は、センサ101からのセンサ信号の種類に応じて、特定のタンク(第1〜第3のタンク12〜14)への純水の供給を停止することができる。これにより、新たな薬液の生成を防ぐことが可能となる。また、この純水の供給の停止に連動して、研削加工装置11が停止するようにしてもよい。これにより、研削加工装置11への薬液の供給が停止しても、研削加工装置11において処理が続行され、ワークに適切な洗浄処理を施すことができずに、半導体デバイス製造に悪影響を及ぼすことを防止できる。
【0060】
さらに、供給配管12c〜14cを遮断する遮断装置を備えておき、当該遮蔽装置を被制御対象に含めるようにしてもよい。例えば、オゾンガスの濃度異常を示すセンサ信号が入力された場合、PLC171は、オゾン水供給用の供給配管14cに設けられた遮断装置を駆動し、オゾン水の供給を停止する。この場合には、研削加工装置11ヘのオゾン水の供給が遮断されるので、新たなオゾンガスの発生を防ぐことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上説明したように、本発明は、異常状態への迅速かつ適切な対処を可能として、半導体デバイス製造工程における流体の漏れに起因する被害を最小限に抑えることができるため、半導体デバイス製造工程における監視システムに有用である。
【符号の説明】
【0062】
1 作業室
11 研削加工装置
12 第1のタンク
12a 第1の純水配管
12b 第1の純水バルブ
12c 第1の供給配管
13 第2のタンク
13a 第2の純水配管
13b 第2の純水バルブ
13c 第2の供給配管
14 第3のタンク
14a 第3の純水配管
14b 第3の純水バルブ
14c 第3の供給配管
15 廃液配管
15a 廃液バルブ
16 ドア
17 制御装置
171 PLC
172 報知手段
172a ブザー
172b 警告灯
173 操作手段
173a 表示部
173b 入力部
174 メール処理部
18 操作装置
181 報知手段
181a ブザー
181b 警告灯
182 操作手段
182a 表示部
182b 入力部
2 廃液設備
21 廃液タンク
3 事務所
31 コンピュータ
100 監視システム
101 センサ
101a ガスセンサ
101b 漏液センサ
101c 液面センサ
102 自動排煙装置
103 報知手段
103a ブザー
103b 警告灯
104a〜c 端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削加工装置で研削したワークの洗浄に用いられる流体が正常に使用されているか監視して前記流体が人体に悪影響を与えることを防止する監視システムであって、
前記流体は、フッ酸、アンモニア、オゾンのいずれかを含み、
気体濃度検出センサ、液体漏れ検出センサ、液体を溜めるタンクの液面の高さを検出するセンサ、のいずれかのセンサによる異常状態の検出によって、
アラームの発動、電子メールによるオペレータへの異常状態の通知、前記研削加工装置の停止、の少なくとも一つの動作を行うことを特徴とする監視システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−156296(P2012−156296A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13866(P2011−13866)
【出願日】平成23年1月26日(2011.1.26)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】