説明

監視システム

【課題】撮影領域内の障害物による死角をカバーして鉄道車輌内を撮影することができる技術を提供する。
【解決手段】カメラ11は、監視空間である車輌を撮影するよう設置されている。鏡12は、吊り広告等の障害物13によるカメラ11の死角になる範囲を映すようにカメラ11の撮影領域内に設置されている。画像処理部は、カメラ11の撮影画像G11から鏡画像G12´を抽出し、反転処理及び拡大処理を行って、撮影画像G11と画像処理後の鏡画像G12を記録部に記録させる。表示制御部は、記録された撮影画像G11と鏡画像G12とを読み出して同期させて再生するとともに、車輌配置図G1にカメラ11の撮影範囲と鏡12の反射範囲とを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視空間を監視する監視システムに係り、特に、鉄道車輌に設置された監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な場所に監視カメラが設置され、事件発生時等に監視カメラの記録映像が活用されている。
【0003】
例えば、車輌の前方と後方にカメラ付き非常通報装置が配置された鉄道車輌が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この鉄道車輌では、いずれかの非常通報装置が乗客によって押下されると、押下された非常通報装置のカメラで撮影された通報者の映像と、他方の非常通報装置のカメラで撮影された車室内の映像とが、乗務員室に設置された非常通報受報器に伝送される。乗務員は、非常通報を受けて通報者と通話する際に、通報者と車両内の状況との両方を見ながら状況把握を行うことができる。
【0004】
また、監視カメラの設置台数を減らして店内を広範囲に撮影する監視装置が知られている(例えば、特許文献2を参照)。この監視装置では、凸面鏡の軸心上に対向して設置されたカメラにより、凸面鏡に映る店内の反射虚像を撮影し、撮影画像の歪みをなくし左右反転する変換処理を行った画像と、同様に他のカメラで撮影されて変換された画像とを、店内の配置に近い形で合成してモニタ画面に表示している。また、この監視装置では、拡大表示する際に、カメラをズームアップさせずに記録画像から拡大画像情報を生成して表示することで、カメラの死角を作り出さないようにしている。
【0005】
また、同様に鏡を使った監視装置として、自動車の前方を撮影するカメラの撮影領域内であって、自動車のボンネットが撮影される位置に反射ミラーを配置した車両監視装置が知られている(例えば、特許文献3を参照)。この車両監視装置では、1台のカメラで車両の車外前方と反射ミラーに反射した車室内とを同時に撮影している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−056921号公報
【特許文献2】特開2004−153492号公報
【特許文献3】特開2007−313950号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、鉄道車輌には、吊り広告等が設けられることが多く、吊り広告等の障害物に遮られて監視カメラに死角が生じやすい。このような監視カメラの死角をカバーするためには、特許文献1に記載の技術のように、複数台のカメラを設置すればよいが、鉄道車輌内では、設置スペースや電源、通信ケーブルの艤装等における制限事項が多く、また、費用面の負担が大きかった。
【0008】
また、特許文献2に記載の技術や特許文献3に記載の技術では、撮影領域内に障害物がある場合に、その障害物によるカメラの死角をカバーすることができなかった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、撮影領域内の障害物による死角をカバーして鉄道車輌内を撮影することができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の監視システムは、鉄道車輌内を撮影する撮影手段と、撮影領域内に設けられ、障害物による前記撮影手段の死角になる範囲を映す鏡と、撮影画像から鏡画像を抽出し、前記鏡画像を反転処理して、拡大処理する画像処理手段と、前記撮影手段とネットワークを介して接続され、前記撮影画像と前記画像処理手段により処理された前記鏡画像とを記録する記録手段と、記録された前記撮影画像と前記鏡画像とを同期させて再生させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、撮影領域内の障害物による死角をカバーして鉄道車輌内を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る実施形態の監視システムの構成を示す機能ブロック図である。
【図2】図1に示す監視システムのカメラと鏡とが配置された車両の配置図である。
【図3】図1に示す画像処理部が取得する撮影画像と鏡画像のイメージ図である。
【図4】図1に示す表示部の表示画面例である。
【図5】図1に示す監視システムの処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0014】
図1は、鉄道車輌の監視システムの構成を示す機能ブロック図である。また、図2は、車輌内に設置されたカメラと鏡と吊り広告等の障害物との配置関係を示す配置図である。監視システムXは、監視空間に配置されたカメラ11及び鏡12と映像記録装置2と映像再生装置3とネットワーク4とを備える。なお、図1及び図2では、1台の車輌1だけを示し、他の車輌1を省略して示しているが、各車輌1にカメラ11及び鏡12が配置されているものとする。
【0015】
カメラ11は、ネットワークカメラ等で構成され、超高解像度で撮影が可能であり、撮影画像をJPEG等で圧縮して、ネットワーク4を介して配信する画像配信機能を有する。また、カメラ11は、監視空間である車輌1の長手方向を撮影するように車輌1内に設置されている。
【0016】
鏡12は、カメラ11の撮影領域内に設けられた吊り広告等の障害物13の近傍に設置されている。カメラ11から見た鏡12の鏡面には、障害物13のカメラ11に対する反対面側、すなわち、カメラ11の死角になる範囲が映っている。鏡12は、鏡面がカメラ11によって撮影され、かつ、障害物13によってカメラ11の死角になる範囲が鏡面に映るように、設置角度が調整されて車輌1内に設置されている。
【0017】
映像記録装置2は、ネットワーク4を介してカメラ11と接続されたネットワーク録画装置等で構成され、画像処理部21と記録部22とを備える。
【0018】
画像処理部21は、ネットワーク4を介してカメラ11の撮影画像を取得して、撮影画像から鏡12の鏡画像を抽出する。画像処理部21は、抽出した鏡画像の左右反転処理を行う。画像処理部21は、鏡画像を拡大処理する。なお、画像処理部21は、鏡画像の左右反転処理を行ってから拡大処理を行ってもよいし、拡大処理を行ってから反転処理を行ってもよい。
【0019】
図3は、図面左側がカメラ11によって撮影された撮影画像G11であり、図面右側が画像処理部21によって画像処理された鏡画像G12を示す。図3に示すように、まず、画像処理部21は、カメラ11の撮影画像G11を取得すると、撮影画像G11から鏡12の位置を検出して、検出した鏡12の位置から鏡画像G12´を抽出する。鏡画像G12´は、画像処理部21によって画像処理される前の画像である。そして、画像処理部21は、抽出した鏡画像G12´に反転処理及び拡大処理を行って、画像処理後の画像である鏡画像G12を生成する。
【0020】
図1に戻り、画像処理部21は、撮影画像G11(画像処理部21による編集前である元画像)と画像処理を行った鏡画像G12とを関連付けて記録部22に記録させる。例えば、画像処理部21は、撮影画像G11と鏡画像G12とを時間軸で同期させて(対応する撮影時刻の)1つの画像データとして記録部22に記録させてもよい。また、画像処理部21は、撮影された車輌1を識別するために、カメラ11の識別番号や車輌1の識別番号を撮影画像G11と鏡画像G12とに関連付けて記録させてもよい。
【0021】
記録部22は、カメラ11によって撮影された撮影画像G11と、画像処理部21によって画像処理された鏡画像G12とを動画として記録する。
【0022】
映像再生装置3は、表示制御部31と表示部32とを備えている。表示制御部31は、ユーザの操作に応じて、例えば、指定された車輌番号と撮影期間とに対応する撮影画像G11と鏡画像G12とを記録部22から読み出して、撮影画像G11と鏡画像G12とを同時再生して表示部32に表示させる。その際、表示制御部31は、原寸の車輌配置図に撮影画像G11及び鏡画像G12の撮影範囲(画角)を反映させて表示させる。カメラ11の撮影範囲については、カメラ11や鏡12の設置位置、カメラ11のレンズの焦点距離情報、鏡12の反射特性、車輌寸法情報等に基づいて予め算出されればよい。
【0023】
図4は、表示部32の表示画面例である。図4に示すように、撮影画像G11と鏡画像G12とは、共に表示されており、それぞれの撮影時刻で同期されて再生される。そのため、撮影画像G11では障害物13によって遮られて映っていない箇所について、鏡画像G12によりその時その場で何が起きていたのか確認することができる。また、図4では、カメラ11の撮影範囲(図4の車輌配置図G1において実線で示す)と鏡12の撮影(反射)範囲(図4の車輌配置図G1において点線で示す)とが、原寸の車輌配置図G1に反映されている。
【0024】
次に、図5を参照して監視システムXの処理の流れを説明する。
【0025】
ステップA10で、カメラ11は監視空間を撮影する。ステップA11で、画像処理部21は、カメラ11の撮影画像G11を取得する。ステップA12で、画像処理部21は、取得した撮影画像G11から鏡画像G12´を抽出する。ステップA13で、画像処理部21は、抽出した鏡画像G12´の反転処理を行って鏡画像G12´´を生成する。ステップA14で、画像処理部21は、鏡画像G12´´の拡大処理を行って画像処理を終えた鏡画像G12が生成される。
【0026】
ステップA15で、画像処理部21は、撮影画像G11と鏡画像G12とを関連付けて記録部22に記録させる。
【0027】
ステップA16で、表示制御部31は、ユーザの操作に応じて、記録部22に記録された撮影画像G11と鏡画像G12とを読み出して、同期させて表示させる。以上により、本処理が終了する。
【0028】
これにより、監視システムXは、撮影領域内の障害物13による死角をカバーして車輌1内を撮影することができる。そのため、死角をカバーするためにカメラ11を増設する必要がないので、増設するカメラ11の設置スペースや電源、通信ケーブルの艤装等における制限事項を気にする必要もなく、また、設置費用を軽減することができる。
【0029】
なお、図2では示していないが、鏡12は車輌1内に複数設置されていてもよい。この場合、各鏡12の鏡面は、少なくとも1つの鏡12の鏡面がカメラ11で直接撮影されればよい。カメラ11で直接撮影されない他の鏡12の鏡面は、他の鏡12の鏡面を経由して又は直接、カメラ11で直接撮影される鏡12の鏡面に映っていればよい。つまり、カメラ11で直接撮影されない鏡12は、合わせ鏡となって間接的にカメラ11で撮影されればよい。
【0030】
この場合、画像処理部21は、撮影画像G11から鏡画像G12´を抽出する際に、鏡画像G12´に含まれる鏡画像G12´も抽出して反転拡大処理を行い、撮影画像G11と複数の鏡画像G12とを関連付けて記録部22に記録させればよい。なお、鏡12で二度反射する鏡12の像は、左右反転が元に戻るので、画像処理部21は、各鏡12の配置関係に基づいて、鏡画像G12´に含まれる鏡画像G12´が遇数回目に鏡12に反射したものである場合、反転処理を行わずに拡大処理を行えばよい。
【0031】
また、画像処理部21により撮像画像から鏡画像G12´を抽出しやすくするため、鏡12に認識マークが設けられてもよい。例えば、認識マークは、鏡12の外枠等に描かれる所定のオブジェクトパターンであってもよい。また、認識マークを鏡12の左右で区別可能なものにすることで、鏡画像G12´の認識マークが左右反転しているか否かにより、画像処理部21により反転処理を行うか否かを決めることもできる。つまり、画像処理部21は、抽出した鏡画像G12´の認識マークが左右反転していれば、鏡画像G12´に左右反転処理を行って拡大処理を行い、鏡画像G12´の認識マークが左右反転していなければ、鏡画像G12´に左右反転処理を行わずに拡大処理を行えばよい。
【0032】
なお、本実施形態では、画像処理部21が映像記録装置2に含まれるものとして説明したが、画像処理部21は、カメラ11に含まれていてもよいし、カメラ11や映像記録装置2とは別の情報処理装置に設けられていてもよい。
【0033】
以上、本実施形態を概説すると、
(1)本実施形態の監視システムは、鉄道車輌内を撮影する撮影手段と、撮影領域内に設けられ、障害物による前記撮影手段の死角になる範囲を映す鏡と、撮影画像から鏡画像を抽出し、前記鏡画像を反転処理して、拡大処理する画像処理手段と、前記撮影手段とネットワークを介して接続され、前記撮影画像と前記画像処理手段により処理された前記鏡画像とを記録する記録手段と、前記記録された前記撮影画像と前記鏡画像とを同期させて再生表示させる表示制御手段とを備えたことを特徴とする。
(2)また、前記表示制御手段は、前記撮影手段の撮影範囲と前記鏡の撮影範囲とを反映させた車輌配置図を表示させてもよい。
(3)また、前記鏡は複数設置され、前記画像処理手段は前記鏡画像から鏡画像を抽出してもよい。
【0034】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々様々に変更が可能であることは言うまでもない。なお、上記実施形態において、同様の機能を示す構成には、同一の符号を付してある。
【符号の説明】
【0035】
1:車輌
2:映像記録装置
3:映像再生装置
4:ネットワーク
11:カメラ
12:鏡
13:障害物
21:画像処理部
22:記録部
31:表示制御部
32:表示部
G1:車輌配置図
G11:撮影画像
G12:(画像処理後の)鏡画像
G12´:(画像処理前の)鏡画像
X:監視システム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車輌内を撮影する撮影手段と、
撮影領域内に設けられ、障害物による前記撮影手段の死角になる範囲を映す鏡と、
撮影画像から鏡画像を抽出し、前記鏡画像を反転処理して、拡大処理する画像処理手段と、
前記撮影手段とネットワークを介して接続され、前記撮影画像と前記画像処理手段により処理された前記鏡画像とを記録する記録手段と、
記録された前記撮影画像と前記鏡画像とを同期させて再生させる表示制御手段と
を備えたことを特徴とする監視システム。

【図1】
image rotate

【図5】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate