説明

監視方向確認装置

【課題】防犯センサの設置者が誤差の少ない適切な位置から防犯センサの監視方向を目視できるようにした監視方向確認装置を提供する。
【解決手段】監視方向確認装置1は、防犯センサ2の監視方向を確認するために確認者が見通す2つの窓部18,18 を備えている。各窓部は、防犯センサの互いに異なる2つの監視方向上にそれぞれ配置される。2つの窓部において、それぞれ他方の窓部と対向する側の外周に、他方の窓部の形状と相似の外形で自己の形状と同心かつ視認可能な縁部19が形成されている。奥側の窓部の縁部の外縁が手前の窓部の外縁に一致するよう眼の位置を調整する。視野内に監視領域内の目標物が見えれば監視方向は適正である。取付台の位置を本固定して防犯センサを取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ光線や可視光線、超音波等の探査信号を監視領域に照射して侵入物等の物体を検出する防犯センサに関係する発明であり、特に当該防犯センサを設置する場合等に、防犯センサの監視方向を確認するために有用な監視方向確認装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、屋外等の広域な監視領域において侵入者等の侵入物を監視するために、レーザ光線や可視光線、超音波、赤外線等の探査信号を監視領域に照射し、監視領域内にある物体で反射した探査信号を受けて当該物体を検出する防犯センサが知られている。このような防犯センサは、例えば監視対象となる建物の屋外壁面等に位置調整が可能な取付台等を介して取り付けられ、当該建物の外部にある庭等の所定領域が監視領域となるように設置される。
【0003】
例えば、特許文献1には、センサ部からのレーザ光で監視エリア内の所定角度範囲を回転走査し、その反射光を受光して算出した距離値によって侵入者の存在を判定するレーザセンサを用いた警備システムが開示されている。
【0004】
このようなレーザセンサを設置する場合には、レーザセンサから照射されるレーザ光の照射方向が、監視エリア内において侵入者の存在を判定するのに適切な方向となっていることが必要である。一例であるが、壁面等に設置されたレーザセンサを中心とした水平面内において、180度の角度範囲内で監視を行なう場合には、0度の監視方向と、これとは方向が同じで向きが逆である180度の監視方向とを確認し、各監視方向が適切な高さで必要な方向に向いていることを確認する必要がある。具体的には、必要な各方向に存在する目標物を各方向で目視により確認することによって各監視方向が適切であることを確認することができる。
【0005】
このようなレーザ光を用いたセンサにおいてレーザ光の照射方向(すなわちセンサの監視方向)を目視で確認するための機構として、確認しようとするレーザ光の照射方向を見通すことができる2つの覗き窓をセンサの筐体に形成し、センサの設置者がこれら2つの覗き窓を通して視認することができる方向がセンサの監視方向であるように構成した防犯センサが知られている。
【0006】
例えば、特許文献2には、照準孔から見える視野をミラーによって覗き窓へ反射させ、設置者が当該覗き窓を覗いた場合にミラーを介して照準孔から見える視野が当該防犯センサにおける監視方向、すなわちレーザ光の照射方向であることを確認できる照準器を備えた防犯センサが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−241062号公報
【特許文献2】特許第3378741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述したような防犯センサの照準器によれば、防犯センサの監視方向を確認するために設置者が照準器の視野を覗く場合、設置者の覗き方によって視野が異なってしまい、防犯センサの監視方向を正確に確かめられない場合があるという問題があった。図14及び図15は、前記防犯センサの照準器の構造を模式的に表現した図であり、覗き窓と照準孔が図中の2つの窓に対応している。図14に示すように、防犯センサの設置者が、窓100、101から規定の位置よりも眼を離して見た場合には、相対的に視野が狭くなるが、図15に示すように、規定の位置よりも眼を窓100、101に近づけすぎた状態で見ると、眼の位置が窓の中心から多少ずれていても窓100、101の孔から外を広く見通せてしまうため、相対的に視野が大きくなってしまい、誤差が大きくなってしまうという問題があった。
【0009】
このように、防犯センサの監視方向を窓からの視野で確認する場合、窓からの視野が防犯センサの監視方向と一致するように、窓から一定距離離れた規定の位置から覗くことが好ましいが、防犯センサの設置者にとって眼を窓からどの程度離すべきかを判断することは、当該規定の位置が明確でない限り困難であり、また規定の位置が分かっていたとしても、実際には窓に対する自己の眼の現在の位置が好適な位置であるかを否かを知る手段がないため、適正な視野で防犯センサの監視方向を確認することは困難であった。このため、必要な監視領域を適切にカバーできるように防犯センサを設置する作業には多大な手間を要しており、これが適切に行われない場合には監視すべきでない領域を監視範囲としたために誤報が多発してしまうという問題があった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、防犯センサの設置者(即ち防犯センサの監視方向の確認者)が、簡単な使用方法で、誤差の少ない適切な位置から窓部を見通して防犯センサの監視方向を目視することができるようにした監視方向確認装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の監視方向確認装置は、所定の角度範囲内で角度の異なる複数の監視方向に探査信号を照射して監視範囲内の物体が反射した探査信号を受けることにより前記物体を検出する防犯センサの監視方向を確認するために確認者が見通す2つの窓部を備えた監視方向確認装置であって、前記2つの窓部の各々は、前記防犯センサの互いに異なる2つの監視方向上にそれぞれ配置されており、前記2つの窓部において、それぞれ他方の前記窓部と対向する側の外周に、外形が、当該他方の前記窓部の形状と相似であって自己の形状と同心かつ視認可能な縁部が形成されていることを特徴としている。
【0012】
また本発明によれば、前記2つの窓部は、形状及び大きさが同一であり、前記縁部は前記窓部の形状に沿った所定幅に形成されるように構成することができる。
【0013】
また本発明によれば、前記縁部の所定幅をx、前記窓部の中心から前記窓部の外縁までの距離をr、前記2つの窓部間の距離をw、前記確認者の視点から手前の前記窓部までの距離をdとした場合に、
x=r(w/d)
によって求められる所定幅xに前記縁部を形成するように構成することができる。
【0014】
また本発明の監視方向確認装置は、所定の角度範囲内で角度の異なる複数の監視方向に探査信号を照射して監視範囲内の物体が反射した探査信号を受けることにより前記物体を検出する防犯センサの監視方向を確認するために確認者が見通す2つの窓部を備えた監視方向確認装置であって、前記2つの窓部の各々は、前記防犯センサの互いに異なる2つの監視方向上にそれぞれ配置されており、前記2つの窓部の外縁には、前記各窓部のそれぞれ対応する前記監視方向と交差する方向に突出する突出部がそれぞれ設けられており、前記2つの窓部に設けられた前記各突出部は、前記2つの窓部を見通したときに重ならない位置に設けられていることを特徴としている。
【0015】
また本発明によれば、前記防犯センサを設置面に設置するための取付台に着脱可能であって、前記取付台に取り付けた際の前記窓部の高さ位置が、前記防犯センサが前記取付台に設置された際に前記探査信号を照射する高さ位置と同一となるように構成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の監視方向確認装置は、設置される防犯センサの監視方向を確認するための装置であって、防犯センサの設置者は、監視方向確認装置の2つの窓部を通して遠方の視界を観察する。その際、重なって見える2つの窓部の見え方について、奥側の窓部の周囲に設けられた縁部の外縁が、手前の窓部の外縁に一致するように眼の位置を調整する。この眼の位置の調整により、設置者は誤差の少ない適切な距離分監視方向確認装置から眼を離して防犯センサの監視方向を見ていることを確認できる。またこの監視方向確認装置では、この状態の時に得られる視野が防犯センサの監視方向に一致しているため、設置者は現在の取付台の壁面等に対する固定位置が適切か否かを判断できる。さらに、設置者は、2つの窓部の一方から他方を見た第1の視野によって防犯センサの第1の監視方向を確認し、また2つの窓部の他方から一方を見た第2の視野によって防犯センサの第2の監視方向を確認する。これらが適切であれば、取付台の位置を本固定し、これに防犯センサを取り付ける。
【0017】
また本発明によれば、前記2つの窓部の形状及び大きさを同一とし、前記縁部を前記窓部の形状に沿った所定幅に形成するように構成することにより、第1の視野と第2の視野が同一になるので、設置者にとって方向による見え方の差がなくなり、使用しやすいという実際上の利点が得られる。
【0018】
また本発明によれば、前記縁部の所定幅をx、前記窓部の中心から前記窓部の外縁までの距離をr、前記2つの窓部の距離をw、確認者の視点から手前の前記窓部までの距離をdとした場合に、x=r(w/d)によって必要な縁部の幅の値を適切に決定することができる。
【0019】
また本発明の監視方向確認装置は、設置される防犯センサの監視方向を確認するための装置であって、防犯センサの設置者は、監視方向確認装置の2つの窓部を通して遠方の視界を観察する。その際、重なって見える2つの窓部の見え方について、奥側の窓部の突出部がない部分の外縁に、手前の窓部の外縁に形成された突出部の先端が一致するように眼の位置を調整する。この眼の位置の調整により、設置者は誤差の少ない適切な距離分監視方向確認装置から眼を離して防犯センサの監視方向を見ていることが確認できる。また、この監視方向確認装置では、この状態の時に得られる視野が防犯センサの監視方向に一致しているため、設置者は現在の取付台の壁面等に対する固定位置が適切か否かを判断できる。さらに、設置者は、2つの窓部の一方から他方を見た第1の視野によって防犯センサの第1の監視方向を確認し、また2つの窓部の他方から一方を見た第2の視野によって防犯センサの第2の監視方向を確認する。これらが適切であれば、取付台の位置を本固定し、これに防犯センサを取り付ける。
【0020】
また以上説明した本発明の監視方向確認装置によれば、前記取付台に対して着脱可能に構成され、前記取付台に前記監視方向確認装置を取り付けると、前記窓部の高さが、前記防犯センサを前記取付台に取り付けた際の前記照射部の高さと同一となる。このため、防犯センサが監視方向確認装置を備えるための構成を有していなくても監視方向確認装置を用いて防犯センサの監視方向を確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】正面側から見た防犯センサと取付台の斜視図である。
【図2】背面側から見た防犯センサと取付台の斜視図である。
【図3】防犯センサの監視方向を模式的に示す図である。
【図4】取付台に実施形態の監視方向確認装置を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図5】取付台に取り付けた実施形態の監視方向確認装置における確認方向と、防犯センサの監視方向を重ねて示す横断面図である。
【図6】実施形態の監視方向確認装置における窓部の形態を示す図である。
【図7】実施形態の監視方向確認装置における監視方向の確認方法を示す図であり、(a)は良好な使用状態、(b)は目の位置が近い不適切な使用状態、(c)は照準がずれた不適切な使用状態をそれぞれ示す図である。
【図8】実施形態の監視方向確認装置における縁部の幅を求める方法の説明図である。
【図9】実施形態の監視方向確認装置における縁部の幅を求める他の方法の説明図である。
【図10】他の実施形態の監視方向確認装置における確認方向と、防犯センサの監視方向を重ねて示す横断面図である。
【図11】他の実施形態の監視方向確認装置における窓部の形態を示す図である。
【図12】他の実施形態の監視方向確認装置における窓部の形態を示す図である。
【図13】図12に示す実施形態の監視方向確認装置における監視方向の確認方法を示す図である。
【図14】従来の防犯センサの照準器の構造を模式的に表現した図であり、防犯センサの設置者が、覗き窓から規定の位置よりも眼を離して見た場合を示す図である。
【図15】従来の防犯センサの照準器の構造を模式的に表現した図であり、防犯センサの設置者が、覗き窓から規定の位置よりも眼を近づけすぎた状態で見た場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
1.第1実施形態(図1〜図8)
(1)防犯センサ及び取付台の構成(図1〜図3)
実施形態の監視方向確認装置1は、防犯センサ2の監視方向を確認するための装置である。防犯センサ2を壁面等の設置面に取り付けるために取付台3を用いるが、この取付台3に対して防犯センサ2を固定する前に、この監視方向確認装置1を着脱可能に取り付け、監視方向の確認を行なう。まず、この監視方向確認装置1が対象とする防犯センサ2と取付台3について説明する。
【0023】
図1及び図2に示す防犯センサ2は、監視対象である建物等の屋外壁面等に取付台3を介して設置され、予め設定された監視領域内にレーザ光を照射しながら所定周期で空間走査を行い、光路上にある物体で反射した反射光を受光することで、監視領域内の被測定物である侵入者等の物体の位置を検出する。このようにして、防犯センサ2は、監視領域内に出現する物体を監視し、異常発生と判定した場合には、発生した異常の種別と、自己のアドレス情報とを含む検知信号を警備装置に出力し、この警備装置によりネットワークを介して遠隔の監視センターに異常通報する。
【0024】
図1及び図2に示すように、防犯センサ2は、略円筒形を縦に2分割した如き筐体4を備えている。この筐体4の周状の正面側には、周方向に略180°以上の範囲にわたって透光性の照射窓5が形成されている。図示はしないが、筐体4内の中央部には、照射窓5の高さの位置にレーザ光を照射して所定角度範囲内で走査するための装置が設けられており、以下に説明するように照射窓5から外にレーザ光を照射することができるようになっている。
【0025】
図示はしないが、防犯センサ2の筐体4内には、レーザ光により監視領域を走査してレーザ光を反射した被測定物である物体の位置を検出する検知部が設けられている。この検知部は、例えば890nm程度の近赤外線を照射するレーザ発振部と、レーザ光を反射して前記物体検出センサから照射する走査鏡と、走査鏡を等速で回転駆動する走査制御部と、受光素子を備えてレーザ発振部の近傍に設けられる反射光検出部と、レーザ光の照射結果として測距データを生成する測距データ生成部とを備えている。
【0026】
レーザ発振部より発射されるレーザ光は、走査鏡と走査制御部とによって照射方向を制御され、少なくとも監視領域の全体を走査する。この走査は、防犯センサ2がレーザ光を照射する角度範囲について、水平な面内に沿って行なうこともできるし、又は所定の俯角をもって遠距離となるほど地面に近づくような平面に沿って行なうこともできる。走査は、所定の周期間隔(例えば30msec)で行なわれ、例えば同方向について繰り返して行なってもよく、また往方向の走査を行なった後に復方向の走査を行なっても良い。
【0027】
測距データ生成部は、レーザ光の照射から反射光の検出までに要する時間から、防犯センサ2とレーザ光を反射した物体(測定点)との距離を算出し、この距離と、走査制御部により回転駆動される走査鏡の角度(監視領域における監視方向)とによって、レーザ光を反射した物体、すなわちレーザ光を反射した測定点の相対位置を算出する。この相対位置は、防犯センサ2を基準とした測定点の位置であって、さらに具体的には当該物体においてレーザ光を反射した面の位置である。
【0028】
図3に示すように、この実施形態の防犯センサ2は、筐体4内の検知部におけるレーザ光の照射位置(図中点Aで示す)を中心とした水平面内において、180度の角度範囲内で監視を行なうものとされており、0度の監視方向(イ)と、これとは軸線が同じで向きが逆である180度の監視方向(ロ)との間の180度の角度範囲内において、例えば0.25度間隔で設定された多数の監視方向に所定の周期時間(例えば30msec)で1走査が完了するようにレーザ光を間欠的に照射する。従って、180度の角度範囲は、30msecで行なう1回の走査において721回照射されたレーザ光でカバーされ、測距データ生成部は同個数の距離値を得る。これら監視方向毎に得られた721個の距離値のセットが1走査で得られる一つの測距データとなり、この測距データは角度(監視方向)と距離のテーブルデータとして測距データ生成部のメモリ又は制御部のメモリに記憶される。
【0029】
なお、測距データ生成部は、所定の周期時間(例えば前述した30msec)で検知部による1回の走査が終了する度に、得られた測距データを制御部に出力し、制御部はこの測距データに基づいて監視領域内に出現する物体を監視し、異常の有無を判定する。
【0030】
図1及び図2に示すように、防犯センサ2は、屋外壁面等に取り付けられる取付台3を介して壁面等に設置される。この取付台3は、全体が板状の部材であって、壁面に対する取付用に複数個の長孔6を有しており、壁面上での微妙な位置調整ができるようになっている。取付台3の上部には上方に先端を向けた一対のフック部7,7が設けられており、また取付台3の下部には前方に先端を向けた一対の固定片8,8が設けられている。
【0031】
図1及び図2に示すように、防犯センサ2の筐体4の背面には、取付台3のフック部7に相当する上方位置に、導入案内溝9と、導入案内溝9の上端に設けられた係止棒10とからなる係止部11が、一対設けられている。また、取付台3の固定片8に相当する下方位置には、詳細は図示しないが、前記取付台3の固定片8とねじ等の固定具で一体化される固定部12,12が設けられている。
【0032】
図1及び図2に示すように、壁面等の所定位置に取付台3を固定すれば、取付台3のフック部7に対して防犯センサ2の背面の係止部11を合せ、フック部7を導入案内溝9から挿入して係止棒10に係止させる。そして、取付台3の固定片8に対して防犯センサ2の固定部12を位置決めし、図示しないねじ等によって防犯センサ2を取付台3に固定する。
【0033】
(2)監視方向確認装置1の構成(図4〜図6)
図4は、本実施形態の監視方向確認装置1を、取付台3に取り付けた状態を示している。この監視方向確認装置1は、取付台3の所定箇所に設けられた図示しない目印等により、取付台3に対して所定の位置関係で取り付けられる。
【0034】
図4及び図5に示すように、この監視方向確認装置1は、鉛直面に平行な第1側板15と第2側板16が所定間隔をおいて互いに平行に配置され、水平面に平行な上板17で両側板15,16が連結一体化された構造である。なお両側板15,16は下縁が斜めであり、設置時に手前側が短く、取付台3側が長くなるような台形とされている。
【0035】
図4に示すように、監視方向確認装置1の両側板15,16には、取付台3に取り付けられる防犯センサ2の監視方向を確認するために確認者が見通す2つの窓部18,18が設けられている。これら2つの窓部18,18は、防犯センサ2における監視領域へ向かうレーザ光の光軸と、確認者が2つの窓部18,18を通じて遠方を覗いたときの視線の方向とが同一となる位置に設けられている。本実施形態では、2つの窓部18,18は、監視方向確認装置1を取付台3に取り付けた状態において取付台3の下端から2つの窓部18,18までの高さと、防犯センサ2を取付台3に取り付けた状態において取付台3の下端から防犯センサ2の照射窓5(正確には、照射窓においてレーザ光が通過する位置)までの高さとが同一となる位置に設けられている。つまり、これら2つの窓部18の各々は、防犯センサ2の互いに異なる2つの監視方向、具体的には前述した0度の監視方向(イ)及び180度の監視方向(ロ)の軸線上にそれぞれ配置されている。
【0036】
すなわち、本実施形態の監視方向確認装置1では、図5に示すように、図3に示した2つの監視方向(イ)、(ロ)と、図4に示す直線Lとが一致しており、この線状に両窓部18,18が配置されている。
【0037】
図6に示すように、本実施形態においては、側板15,16に形成された窓部18は円形の貫通孔であり、側板15と側板16で対向する面すなわち側板15,16の内面には、窓部18の形状に沿って環状の縁部19が設けられている。縁部19は所定寸法の幅を有する白色の領域であり、この縁部19の外側は黒く塗装されている。また、窓部18において90度で交差させた2本の直径の延長線に相当する4本の線分(以下十字線という)が、縁部19に設けられている。側板15と側板16で対向しない面すなわち側板15,16の外面は縁部19の外側と異なる色(本実施形態では白色)とされており、この側板15,16の外面には、側板15,16の内面の縁部19に設けられた十字線に対応するように、同様の十字線が設けられ、この十字線を構成する線分の一方の端点が窓部18の内縁に接して設けられている。そして、2つの窓部18の形状、寸法、構造は同一である。なお、これらの十字線は必ずしも必須ではない。また、側板15,16の内面において、縁部19と縁部19の外側とは白と黒で色分けしているが異なる色で色分けしてもよく、縁部19と縁部19の外側が観察者からみて識別可能な態様となっていればよい。さらに、窓部18は貫通孔としているが、2つの窓部18,18を介してその先の様子が観察者によって見通せる態様であればよい。例えば、窓部18,18は透光性を有する材質であってもよい。
【0038】
(3)監視方向確認装置1の使用方法(図7)
本実施形態の監視方向確認装置1の使用方法を説明する。
防犯センサ2の設置者は、取付台3に監視方向確認装置1を取り付け、図7(a)、(b)、(c)の各上段に示すように、この監視方向確認装置1の2つの窓部18,18を通して遠方の視界を観察する。その際、同図(a)の中段及び下段に示すように、重なって見える2つの窓部18の見え方において、奥側の窓部18の内面に設けられた白色の縁部19の外縁が、手前の窓部18の外縁に一致するように眼の位置を調整する。すなわち、設置者は、手前側の窓部18から奥側の窓部18の縁部19の白色の全体は見えるが、縁部19の外側にある黒色の領域は見えないようにする。このような状態にある時、窓部18に対する目の距離は適正であり、目標照準も適正であり、この状態での視野の中心は、防犯センサ2の監視方向に一致している。すなわち、このまま取付台3に防犯センサ2を取り付ければ、この視野で見えている場所の中心に防犯センサ2からのレーザ光が到達することになる。そこで設置者は、窓部18からの視野を見て、防犯センサ2の監視方向の目安となる目標物(例えばある特定の樹木等)が見えるか否かを確認し、現在の取付台3の壁面等に対する固定位置が適切か否かを判断する。設置者は、2つの窓部18の一方から他方を見た第1の視野によって防犯センサ2の第1の監視方向(例えば前述の0度の監視方向(イ))を確認し、また2つの窓部18の他方から一方を見た第2の視野によって防犯センサ2の第2の監視方向(例えば180度の監視方向(ロ))を確認する。これらが適切であれば、取付台3の位置を本固定し、これに防犯センサ2を取り付ける。
【0039】
図7(b)上段に示すように、防犯センサ2の設置者が、窓部18に対して規定の距離よりも近い位置から見た場合には、同図(b)の中段及び下段に示すように、手前の窓部18から、奥側の窓部18の内面に設けられた白い縁部19と、この縁部19の外側の黒い領域が全周にわたって両方とも見えている。視野がこのような状態の場合には、設置者は目を遠ざけて同図(a)のような視野が得られるようにする。
【0040】
図7(c)上段に示すように、防犯センサ2の設置者が、窓部18に対して中心がずれた位置から見た場合には、同図(c)の中段及び下段に示すように、手前の窓部18から、奥側の窓部18の内面に設けられた白い縁部19が偏芯して見え、またその外側の黒い領域が部分的に見えている。視野がこのような状態の場合には、設置者は奥側の縁部19に設けられた十字線と手前の窓部18に接して設けられた十字線とが一致するように目を配置し、目の位置が2つの窓部18,18の中心を結ぶ中心軸上に位置するようにする。
【0041】
なお本実施形態によれば、2つの窓部18,18を、形状及び大きさが同一であり、縁部19,19は窓部18,18の形状に沿った所定幅に形成されるように構成しているので、互いに反対側から見る第1の視野と第2の視野の見え方が同一になるので、設置者にとって観察する際の感覚の違いがなくなり、使用しやすいという実際上の利点が得られる。
【0042】
(4)監視方向確認装置1における縁部19等の寸法設定方法(図8)
監視方向確認装置1における縁部19の所定幅の寸法の求め方について図8を参照しながら説明する。図8は、観察者から見える窓部18,18の状態が図7の(a)の状態を模式的に示している。
まず、縁部19の所定幅をxとする。
そして、前提条件として、窓部18の中心から窓部18の外縁までの距離r、2つの窓部18の距離wが、監視方向確認装置1の構造から所与の値として定められているものとする。また、監視方向確認装置1から監視領域内にある基準点までの距離D、基準点における視野の半径vは、監視方向確認装置1の設計者が任意に選択する基準点においてどの程度の視野半径の中で監視方向を観察者に確認させたいかによって適宜決定される所与の値とする。
ここで、観察者の視点から監視方向確認装置1までの距離dは次のようにして求める。
v:d+w+D=r:d+w
v(d+w)=(d+w+D)r
vd−rd=r(w+D)−vw
(v−r)d=rD−w(v−r)
d=rD/(v−r)−w
【0043】
これにより、dが定まるので、窓部18の外周にある縁部19の幅xは次のようにして求める。
x+r:d+w=r:d
(x+r)d=(d+w)r
dx=rd+rw−rd
dx=rw
x=rw/d
【0044】
2.第2実施形態(図9)
第1実施形態において、図8を参照して窓部18の外周にある縁部19の幅xを求める手法を説明したが、第2実施形態として、他の考え方による縁部19の幅xの設定手法について図9を参照して説明する。使用する符号の意味は図8と同様である。また、以下に説明する実施形態では第1の実施形態と異なる部分についてのみ説明し、他の部分については第1の実施形態と同様である。
【0045】
ここでは、監視方向確認装置1の窓部18から覗いた観察者の視野は、観察者の体の揺れによって必ずしも安定せず、第1実施形態において図7(a)を参照して説明したような理想的な状態が安定して得られるとは限らない。つまり、図7(a)の状態となるように視点と手前側の窓部18との距離を合せたとしても、観察者の体が微動して上下に動く場合もある。また、監視方向確認装置1を厚紙などのたわみやすい部材で構成した場合、風などによって監視方向確認装置1にゆがみが生じ側板15と16とが相対的に上下にずれることも考えられる。そこで、窓部18から適正な距離離れて視野が理想の状態から多少上下にずれることは許容するものとし、その許容範囲として、手前側の窓部18の内縁が、奥側の窓部18の内縁に重なるまでは適正な視野と考えることとする。図9では、図7(a)の利用的な状態を実線で示し、上下方向に視点のずれが生じた場合の状態を二点鎖線で示している。図9に示すように、手前側の窓部18の上部の外縁が奥側の窓部18の上部の外縁に重なったように見える状態となる場合を考えると、奥側の窓部18において縁部19の幅x分だけ中心軸が上方向にずれることとなる。ここで、図9に示す基準点における中心軸のずれΔvについては例えばΔv=10cmまで認めるものとした場合に、縁部19の幅xの算出方法について説明する。
【0046】
d+w:x=d+w+D:Δv
Δvd+Δvw=xd+xw+xD
(Δv−x)d+Δvw−xw+xD=0…(1)
また、図8を用いて説明したようにd=rw/x…(2)
【0047】
(1),(2) よりxを求める。ここで、説明を簡略化するために具体的な数値例として、r=0.3、w=8.5、D=3000(単位はcm)とすると、
(1) 式から
10d−dx−3008.5x+85=0…(1) ’
また(2) 式から
d=2.55/x…(2) ’
【0048】
(2) ’を(1) ’に代入すると、
(25.5/x)−2.55−3008.5x+85=0
(25.5/x)−3008.5x+82.45=0
3008.5x2 −82.45x−25.5=0
これを解くと、x≧0より
x≒0.1(cm)となる。
【0049】
3.第3実施形態(図10)
第1実施形態の監視方向確認装置1は、図5に示したように、防犯センサ2の互いに異なる2つの監視方向、すなわち0度の監視方向(イ)及び180度の監視方向(ロ)の軸線上に窓部18,18がそれぞれ配置されていた。しかしながら、防犯センサ2の監視領域の角度範囲は、必ずしも180度とは限らず、監視領域の広狭や使用態様等の必要性に応じて任意に設定されるものであり、これより角度範囲が大きくても小さくても構わない。従って、本発明の監視方向確認装置1における視野の方向も対象とする防犯センサ2の監視方向に合わせて様々なものを用意しておくことができる。
【0050】
図10は、角度範囲Bが120度の監視領域を有する防犯センサ2に対応した第3実施形態の監視方向確認装置1’であり、その2つの窓部18,18は、防犯センサ2の監視領域の両端を区画する第1の監視方向(ハ)の直線上と、第2の監視方向(ニ)の直線上に配置されている。この場合、監視方向確認装置1の奥壁部20には、これら両監視方向(ハ)(ニ)に相当する窓部18,18からの光をそれぞれ他方の窓部18,18に反射するための反射鏡21が設けられている。従って、監視方向(ハ)上の窓部18から覗けば、反射鏡21を介して第2の監視方向(ニ)上の窓部18を経た視野を得ることができるし、逆に監視方向(ニ)上の窓部18から覗けば、反射鏡21を介して第2の監視方向(ハ)上の窓部18を経た視野を得ることができる。本例によっても第1乃至第2実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0051】
4.第4実施形態(図11)
以上説明した各実施形態では窓部18は円形であったが、これに限定するものではない。例えば、図11に示す第4実施形態では、窓部28の形状は角孔(正方形)であり、その内面側の周囲には正方形で所定幅の縁部29が形成されている。このような形状であっても、第1実施形態の丸孔の窓部18と同等の使用方法で同等の効果を得ることができる。なお、本実施形態においても、縁部19の幅は、第1実施形態または第2実施形態と同様にして定めることができる。また、窓部28の形状が長方形など縦横比が異なる形状である場合は、長手方向及び長手方向と直交する幅方向について、それぞれ第1実施形態または第2実施形態の考え方を適用して算出された値を縁部19の幅として定めればよい。
【0052】
5.第5実施形態(図12、図13)
図12は、第5実施形態の窓部38であり、第1実施形態と同様な円形の窓部18の外縁に、窓部38が配置された監視方向の直線(図面の紙面に垂直な方向)と直交する方向(図面の紙面に平行な方向)に向けて突出する三角形状の突出部39が縁の周方向に90度間隔で設けられている。但し、所定間隔をおいて平行に対面する他方の窓部38に設けられた各突出部39は、前記一方の窓部38に設けられた突出部39と45度ずれた異なる位置に設けられている。また、内面側において窓部18の周囲は黒く塗装される。
【0053】
図13に示すように、この監視方向確認装置1”を使用する場合には、重なって見える2つの窓部38,38の見え方について、奥側の窓部38の突出部39がない部分の外縁に、手前の窓部38の外縁に形成された突出部39の先端が一致するように眼の位置を調整する。この監視方向確認装置1”では、この状態の時に得られる視野が防犯センサ2の監視方向に一致しているため、設置者は現在の取付台3の壁面等に対する固定位置が適切か否かを判断できる。本実施形態によっても前記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0054】
以上説明したように本発明の各実施形態によれば、2つの窓部越しに覗くことにより得られる視野によって防犯センサの監視方向を確認する監視方向確認装置において、奥側の窓部の内面にある縁部等に対して手前の窓部の外縁等を合致させるという感覚的に理解しやすい手法で、観察者の目と監視方向確認装置の距離及び照準を適正に設定することができ、防犯センサの監視方向を目視で正確に直接確認することができる。これによって、必要な監視領域を適切にカバーできるように防犯センサを設置することができ、監視領域の設定ミスによる誤報の発生を減少させることができる。
なお、本発明の各実施形態では、監視方向確認装置は防犯センサとは別体の装置であったが、監視方向確認装置は防犯センサに内蔵されて、防犯センサの筐体を外した際に2つの窓部が外部に露出した状態となるなど、防犯センサと一体の構成でもよい。この場合は防犯センサの監視方向と2つの窓部の中心を結ぶ軸は完全に一致させることはできないが、センサの監視方向と2つの窓部を結ぶ中心軸とが平行であり、かつ近傍にあるように構成することで本発明と同等の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0055】
1,1’,1”…監視方向確認装置
2…防犯センサ
3,3’…取付台
4…筐体
18,28,38…窓部
19,29…縁部
39…窓部の突出部
(イ)、(ロ)、(ハ)、(ニ)…防犯センサの監視方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の角度範囲内で角度の異なる複数の監視方向に探査信号を照射して監視範囲内の物体が反射した探査信号を受けることにより前記物体を検出する防犯センサの監視方向を確認するために、確認者が見通す2つの窓部を備えた監視方向確認装置であって、
前記2つの窓部の各々は、前記防犯センサの互いに異なる2つの監視方向上にそれぞれ配置されており、
前記2つの窓部において、それぞれ他方の前記窓部と対向する側の外周に、外形が、当該他方の前記窓部の形状と相似であって自己の形状と同心かつ視認可能な縁部が形成されていることを特徴とする監視方向確認装置。
【請求項2】
前記2つの窓部は、形状及び大きさが同一であり、前記縁部は前記窓部の形状に沿った所定幅に形成されることを特徴とする請求項1記載の監視方向確認装置。
【請求項3】
前記縁部の所定幅をx、前記窓部の中心から前記窓部の外縁までの距離をr、前記2つの窓部間の距離をw、前記確認者の視点から手前の前記窓部までの距離をdとした場合に、
x=r(w/d)
によって求められる所定幅xに前記縁部を形成することを特徴とする請求項2に記載の監視方向確認装置。
【請求項4】
所定の角度範囲内で角度の異なる複数の監視方向に探査信号を照射して監視範囲内の物体が反射した探査信号を受けることにより前記物体を検出する防犯センサの監視方向を確認するために確認者が見通す2つの窓部を備えた監視方向確認装置であって、
前記2つの窓部の各々は、前記防犯センサの互いに異なる2つの監視方向上にそれぞれ配置されており、
前記2つの窓部の外縁には、前記各窓部のそれぞれ対応する前記監視方向と交差する方向に突出する突出部がそれぞれ設けられており、
前記2つの窓部に設けられた前記各突出部は、前記2つの窓部を見通したときに重ならない位置に設けられていることを特徴とする監視方向確認装置。
【請求項5】
前記防犯センサを設置面に設置するための取付台に着脱可能であって、
前記取付台に取り付けた際の前記窓部の高さ位置が、前記防犯センサが前記取付台に設置された際に前記探査信号を照射する高さ位置と同一となることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の監視方向確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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