説明

監視方法および監視システム

【課題】所定の館内における人物の配置を推定すること。
【解決手段】監視システム100は、検出装置10で代表される検出装置10a〜検出装置10cと、人数取得装置20と、処理装置30とを含む。また、第3領域110cに重なるように定義される出入口領域120は、人数取得装置20によって監視され、取得した人数情報を処理装置30に出力する。複数の検出装置10は、それぞれ割り当てられた領域を監視し、人物等から発せられる赤外線を検出し、動き情報として、所定の周期で処理装置30に出力する。処理装置30は、取得した動き情報と人数情報とを用いて、それぞれの領域における人物等の存在の有無を推定する。推定処理は、同一領域における過去の動き情報等を用いる方法と、同一時刻における他の領域の動き情報等を用いる方法と、同一領域における未来の動き情報等を用いる方法を用いることによって、実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視技術に関し、特に、美術館などの部屋の中の人の配置を監視する監視方法およびそれを用いた監視システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、さまざまな場面で監視システムが導入されている。監視システムは、たとえば、セキュリティシステムの一部として、また、介護を補助するシステムなどとして用いられる。一般に、人物を監視するシステムにおいては、たとえば、監視カメラなどを用いて、外部からその人物を監視し、その人物の動きなどを監視している。また、監視対象の人物が携帯する端末からその人物に関する情報、たとえば、音声や体温などの身体的な情報を得ることによって、その人物の状態を推定している。また、環境側に設置されたセンサをもちいて被験者の状態を推定するとともに、被験者から直接情報を得るセンサを用いて被験者の状態を取得し、両者の情報を複合的に用いることによって、被験者の状態を推定するものもある(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−092356号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、設置された監視カメラは、監視される人物にとって、心理的な圧迫となる場合がある。特に、美術館などに監視カメラが設置されていると、監視カメラの存在が気になって、観覧者が美術品を集中して見られないということもある。また、監視された画像を解析するためには、多大な労力が必要となる。また、携帯端末などを用いた状態の推定は、その推定精度の低さが課題となっていた。また、特許文献1に開示された手法では、観覧者に端末を所持させなければならないといった弊害がある。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易に、所定の館内における人物の配置を推定できる監視方法およびそれを用いた監視システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の監視システムは、人間または動物などの対象物の動きをそれぞれ検出する複数の検出装置と、複数の検出装置の出力を処理する処理装置とを備えた監視システムであって、複数の検出装置のそれぞれは、割り当てられた領域における対象物の動きの有無を検出する検出部と、検出部による検出情報を処理装置に所定の出力周期で出力する出力部と、を有する。処理装置は、複数の検出装置から出力される検出情報を受け取る受取部と、受取部が受け取った検出情報をもとに、対象物の位置を推定する推定部と、を有する。それぞれの検出装置の出力部における出力周期は、同期していてもよい。
【0006】
この態様によると、複数の検出装置から出力される検出情報をもとに、複数の領域内における対象物の位置を推定することによって、容易に人物の配置を推定できる。
【0007】
検出装置は、出力周期よりも間隔の短いサンプリング周期で赤外線の変化を検出する赤外線センサであって、検出部は対象物の動きを検出すると、検出情報の状態値をオンに設定して、そのオン値を維持し、出力部が検出情報を出力すると、状態値をオフに設定してもよい。
【0008】
この態様によると、赤外線センサによって対象物の動きを検出すると、検出情報の状態値をオンに設定してそのオン値を維持し、出力部が検出情報を出力すると状態値をオフに設定することによって、所定の規則を有する状態遷移モデルが構成され、その状態遷移モデルを用いることにより、効果的に人物の配置を推定できる。
【0009】
処理装置は、受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有してもよい。推定部は、記録部に記録されたある領域の検出情報と、その検出情報に連続して記録されている同一領域の検出情報を用いて、その領域における対象物の存在の有無を推定してもよい。
【0010】
この態様によると、記録部に記録されたある領域の検出情報と、その検出情報に連続して記録されている同一領域の検出情報を用いて、その領域における対象物の存在の有無を推定することによって、効率的に人物の配置を推定できる。
【0011】
推定部は、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域のその時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行してもよい。
【0012】
ここで、「その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報」とは、ある時刻を基準としたときの過去の任意の時刻において検出された検出情報を含む。この態様によると、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域のその時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行することによって、簡易に人物の配置を推定できる。
【0013】
推定部は、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理を実行してもよい。
【0014】
ここで、「検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報」とは、ある時刻を基準としたときの未来の時刻において検出された検出情報を含む。この態様によると、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の所定の時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理を実行することによって、簡易に人物の配置を推定できる。
【0015】
推定部は、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行しても、対象物の存在の有無が推定できなかった場合、記録部に記録された領域の時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理を実行してもよい。
【0016】
この態様によると、順時判定処理を実行しても、対象物の存在の有無が推定できなかった場合、逆時判定処理を実行することによって、推定できなかった領域について、過去と未来の情報を効率的に使用でき、簡易に人物の配置を推定できる。
【0017】
推定部は、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理を実行しても、対象物の存在の有無が推定できなかった場合、記録部に記録された領域の時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行してもよい。
【0018】
この態様によると、逆時判定処理を実行しても、対象物の存在の有無が推定できなかった場合、順時判定処理を実行することによって、過去と未来の情報を効率的に使用でき、推定できなかった領域について、簡易に人物の配置を推定できる。
【0019】
処理装置は、受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有してもよい。推定部は、記録部に記録されたある領域の検出情報と、その領域の周囲の領域に関して記録されている検出情報を用いて、その領域ないしは周囲の領域における対象物の存在の有無を推定してもよい。
【0020】
この態様によると、記録部に記録されたある領域の検出情報と、その領域の周囲の領域に関して記録されている検出情報を用いて、その領域ないしは周囲の領域における対象物の存在の有無を推定することによって、効率的に人物の配置を推定できる。
【0021】
推定部は、記録部にある同一の時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の同一の時刻における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理を実行してもよい。
【0022】
この態様によると、記録部に同一時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の同一時刻における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理を実行することによって、推定できなかった領域について、簡易に人物の配置を推定できる。
【0023】
処理装置は、受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有してもよい。推定部は、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域のその時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理、もしくは、記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域のその時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行しても対象物の存在の有無が推定できなかった場合、記録部に時刻と同一の時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理を実行してもよい。
【0024】
この態様によると、逆時判定処理、もしくは、順時判定処理を実行しても対象物の存在の有無が推定できなかった場合、同刻判定処理を実行することによって、推定できなかった領域について、簡易に人物の配置を推定できる。
【0025】
処理装置は、受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有してもよい。推定部は、記録部にある同一の時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理を実行しても対象物の存在の有無が推定できなかった場合、記録部に記録されたある領域の時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域における時刻の対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理、もしくは、記録部に記録されたある領域の時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に記録された同一領域の検出情報を用いて、その領域の時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行してもよい。
【0026】
この態様によると、同刻判定処理を実行しても対象物の存在の有無が推定できなかった場合、逆時判定処理、もしくは、順時判定処理を実行することによって、推定できなかった領域について、簡易に人物の配置を推定できる。
【0027】
処理装置は、受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有してもよい。推定部は、すべての時刻におけるすべての領域の対象物の存在の有無が推定されるまで、記録部に記録されたある領域の第1時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の第1時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理と、記録部に第2時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の領域における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理と、記録部に記録されたある領域の第3時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の第3時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理との3つの判定処理のうち、複数の判定処理を順次実行してもよい。
【0028】
推定部は、順次判定処理、同刻判定処理、逆時判定処理、同刻判定処理の並び順で、繰り返し実行してもよい。
【0029】
この態様によると、順時判定処理と、同刻判定処理と、逆時判定処理との3つの判定処理のうち、複数の判定処理を順次実行することによって、推定できなかった領域について、簡易に人物の配置を推定できる。
【0030】
この態様によると、順次判定処理、同刻判定処理、逆時判定処理、同刻判定処理の並び順で、繰り返し実行することによって、推定できなかった領域について、簡易に人物の配置を推定できる。
【0031】
推定部が対象物の存在の有無が推定できなかった場合、出力部は、出力周期を短く設定してもよい。出力部は、複数の領域内の対象物の数が多くなるほど、出力周期を短く設定してもよい。この態様によると、出力周期を短く設定することによって、対象物の存在の有無の推定が容易となり、簡易に人物の配置を推定できる。また複数の領域内の対象物の数が多くなるほど、前記出力周期を短く設定することによって、推定処理に要する時間を低減できる。
【0032】
また、処理装置は、出力を要求するための出力要求信号を出力部に通知してもよい。出力部は、通知された出力要求信号に応じて、処理装置に検出情報を出力してもよい。また、出力部は、出力要求信号が通知されるまで、前記検出部による検出情報を保持し、前記処理装置から出力要求信号が通知された場合、保持していた検出情報を前記処理装置に出力してもよい。出力部は、出力要求信号が通知されるまでに記憶されたすべての検出情報をまとめて処理装置に出力する。この場合、処理装置は出力部の出力を制御できるため、出力部の仕様によらず処理装置を設計できることとなり、設計の柔軟性を向上できる。
【0033】
本発明の別の態様は、監視方法である。この方法は、複数の領域における人間または動物などの対象物の動きをそれぞれ検出し、検出されたそれぞれの検出情報を所定の周期で記憶し、記憶されたそれぞれの検出情報をもとに、複数の領域における対象物の位置を推定する。
【0034】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、所定の館内における人物の配置を容易に推定できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
本発明の実施形態を具体的に説明する前に、まず概要を述べる。本発明の実施形態は、人間または動物など(以下、人物等という)を監視する監視システムに関し、美術館などの比較的混雑していない構内における人物等の監視に適している。本発明の実施形態にかかる監視システムは、複数の赤外線検出装置をもちいて、任意の時点における人物等の配置を推定する機能をもつ。
【0037】
複数の赤外線検出装置は、館内のすべての場所(以下、「領域」ともいう。)を網羅的に監視できるように、天井などに配置される。個々の赤外線検出装置は、特定の構内のうちの所定の領域において、人物等から発せられる赤外線の変化を検出することによって、その領域内の人物等の動きを検出する。ここで、人物等の動作が検出された場合、動作を示す状態値をオンに設定してそのオン値を維持する。また、赤外線検出装置は、それぞれ割り当てられた領域において検出された人物等の動きを示す動作情報を定期的に処理装置に出力し、出力を契機として、状態値をオフに設定する。
【0038】
これにより、動作情報と人物の存在の有無とを関係づける状態遷移モデルが構成される。処理装置は、それぞれの領域に対応する検出装置から出力された動作情報を記憶する。処理装置は、記憶された複数の動作情報を用いて、動作情報と人物の存在の有無とが関係づけられた状態遷移モデルにより、任意の時刻および任意の領域における人物の存在の有無を推定する。これにより、任意の時刻における人物等の配置を推定できる。
【0039】
推定された人物等の配置は、たとえば、障害者等を誘導するための情報として用いることができる。この場合、誘導員や誘導ロボットなどに対して、館内に存在する人物等の配置情報を定期的に送信することによって、混雑していない場所を選定しながら、より安全に誘導できることとなる。また、本実施形態の監視システムに加え、構内の出入り口に監視カメラを設置することによって、セキュリティ性をより向上できる。監視カメラによって確認された人物は、本実施形態の監視システムによって、任意の時刻における位置が推定され、さらにその位置からその人物等の軌跡を捕捉できる。この技術は、たとえば、宝石などの展示会などにおける窃盗犯の動き特定することにも応用できる。その展示会の会場すべてを網羅するように、複数の監視カメラを用いる場合とくらべ、ほぼ同等に高度なセキュリティシステムを実現できることとなる。
【0040】
図1は、本発明の実施形態にかかる監視システム100の構成例を示す図である。監視システム100は、検出装置10で代表される検出装置10a〜検出装置10cと、人数取得装置20と、処理装置30とを含む。図1では、検出装置10aには、第1領域110aが割り当てられ、検出装置10bには、第2領域110bが割り当てられ、検出装置10cには、第3領域110cが割り当てられていることを示す。それぞれの検出装置10が、それぞれに割り当てられた領域を監視することで、たとえば、美術館などの全領域の監視が可能となる。また、第3領域110cに重なるように定義される出入口領域120は、人数取得装置20によって監視される。なお、説明の便宜上、3つの領域と1つの出入口領域を図示したが、3以外の数の領域が存在してもよく、また、2以上の出入口領域が存在してもよい。また、それぞれの領域は、たかだか1人しか入れない広さとする。
【0041】
複数の検出装置10は、それぞれ割り当てられた領域を監視し、人物等から発せられる赤外線を検出する。検出装置10は、検出した赤外線を解析し、人物等の動き情報を生成する。また、検出装置10は、生成した動き情報を、所定の周期で処理装置30に出力する。また、検出装置10は、処理装置30の指示にしたがって、動き情報を初期化する。検出装置10は、自身の出力を契機として、動き情報を初期化してもよい。
【0042】
図2は、図1の検出装置10の構成例を示す図である。検出装置10は、赤外線検出部12と、出力部16と、初期化部18とを含む。赤外線検出部12は、たとえば、赤外線センサーなどにより、割り当てられた領域内の人物等から放射された赤外線を検出する。赤外線センサーにフレネルレンズなどを装着させてもよい。これにより、検出する対象場所を絞ることができ、特定の狭い範囲での人物等の動きを検出することができる。また、赤外線センサーとしてデュアル素子タイプを使用し、背景のゆらぎの検出を少なくしてもよい。また、検出した赤外線信号を増幅するための増幅器にバンドパスフィルターを連結することによって、ゆっくりした変化、または、速すぎる変化を検出しなくともよい。また、ウインドウコンパレータを使用し、変化の少ない動きを検出しなくともよい。
【0043】
赤外線検出部12は、検出した赤外線の変化を出力部16に通知する。ここで、赤外線検出部12は、人物等が、他の領域から、当該検出装置10に割り当てられた領域に移動した場合、あるいは、割り当てられた領域から他の領域へと移動した場合に、動き情報として、動作を示す情報を出力部16に通知する。また、割り当てられた領域内において、人物等が動いた場合にも、動作を示す情報を出力部16に通知する。一方、割り当てられた領域内において、人物等が動かなかった場合、あるいは、割り当てられた領域内に誰も移動してこなかったような場合、動き情報として、無動作を示す情報を出力部16に通知する。以下においては、説明の便宜上、動作を示す情報を1で示し、また、無動作を示す情報を0で示す。
【0044】
出力部16は、通知された情報を所定の周期で処理装置30に送信する。所定の周期内の途中において、動作を示す情報が通知された場合、次の周期の先頭で、動作を示す情報を処理装置30に送信する。送信の周期は、たとえば、人物等の移動速度や、複数の領域内の人数に応じて設定されてもよいし、固定値であってもよい。なお、出力部16における送信の周期は、赤外線検出部12における検出の周期よりも長いものとする。
【0045】
初期化部18は、処理装置30からの指示にもとづいて、赤外線検出部12の出力を初期化する。初期化とは、出力部16ないしは処理装置30に出力すべき情報(以下、出力情報という)を無動作を示す情報に設定することを含む。なお、検出装置10は、初期化部18を含まなくてもよい。この場合、赤外線検出部12は、出力部16が処理装置30に出力したことを契機として、出力情報を初期化すればよい。
【0046】
図3は、図2の赤外線検出部12の入出力例を示すタイミングチャートである。横軸は、時間を示す。縦軸は、動き情報を示す。赤外線検出部12は、0.5の周期で、赤外線の変化を検出する。また、赤外線検出部12は、1の周期で出力情報を処理装置30に出力するものとした。また、t=3、10のそれぞれのタイミングで、他の領域から、当該検出装置10に割り当てられた領域内に移動したものと仮定している。また、t=5のタイミングで、当該検出装置10に割り当てられた領域から他の領域に移動したものと仮定している。また、t=13のタイミングで当該領域内で人物等が動いたものと仮定している。
【0047】
まず、t=0〜3においては、当該検出装置10に割り当てられた領域内には人物が存在せず、また、他の領域から移動してくることもないため、赤外線検出部12は赤外線を検出せず、無動作を示す情報を出力部16に通知する。つぎに、t=3において、他の領域から、当該検出装置10に割り当てられた領域内に移動してきたため、赤外線検出部12は赤外線の変化を検出し、出力部16に通知する。t=4において、出力部16は、動作を示す情報を処理装置30に送信し、また、赤外線検出部12は、動き情報を初期化する。
【0048】
t=5において、当該検出装置10に割り当てられた領域から他の領域に移動したため、赤外線検出部12は赤外線の変化を検出し、動き情報として、動作を示す情報を出力部16に通知する。赤外線検出部12は、次に初期化されるタイミングであるt=8になるまで、動作を示す情報の出力を維持しつづける。t=8において、出力部16は、動き情報として、動作を示す情報を処理装置30に送信し、また、赤外線検出部12は、出力を初期化する。t=8〜10においては、当該検出装置10に割り当てられた領域内には人物が存在せず、また、他の領域から移動してくることもないため、赤外線検出部12は赤外線を検出せず、無動作を示す情報を出力部16に通知する。
【0049】
t=10において、他の領域から、当該検出装置10に割り当てられた領域内に移動してきたため、赤外線検出部12は赤外線を検出し、出力部16に通知する。赤外線検出部12は、次に初期化されるタイミングであるt=12になるまで、動作を示す情報の出力を維持しつづける。t=12において、出力部16は、動作を示す情報を処理装置30に送信する。ここで、赤外線検出部12は、いったん初期化するものの、当該検出装置10に割り当てられた領域内において人物等が移動したため、赤外線検出部12は赤外線を検出し、動作を示す情報を出力部16に通知する。赤外線検出部12は、次に初期化されるタイミングであるt=16になるまで、動作を示す情報の出力を維持しつづける。t=16において、出力部16は、動作を示す情報を処理装置30に送信する。
【0050】
以上をまとめると、出力部16は、所定の周期内において、一度も赤外線の変化が検出されなかった場合、その周期のおわりのタイミングで、無動作を示す情報を処理装置30に出力する。また、出力部16は、所定の周期内において、一度でも、赤外線の変化が検出された場合、その周期のおわりのタイミングで、動作を示す情報を処理装置30に出力する。
【0051】
図1に戻る。人数取得装置20は、出入口領域120を監視することによって、第1領域110a〜第3領域110cの中に存在する人物等の数を検出する。人数取得装置20は、たとえば、出入口に赤外線レーザを水平方向に2本放射すればよい。2本の赤外線レーザは、出入口の出口側から入口側に向けて、所定の間隔を有するように設けられてもよい。所定の間隔は、人物等が歩くスピードに合わせて調節されてもよい。これにより、人物等がその2本の赤外線レーザを順番に遮断した場合、遮断した順序によって、入室もしくは退室が判断できる。ここで、入室した人数から退室した人数を減ずることによって、第1領域110a〜第3領域110cの中に存在する人物等の数を導出できる。領域内に複数の出入口がある場合、出入口ごとに、人数取得装置20を設け、入室した総数と退室した総数とを用いれば、同様に、領域内の人物等の数を導出できる。導出された人数(以下、人数情報という)は、所定の周期で処理装置30に通知される。所定の周期は、検出装置10が処理装置30に出力する周期と同一の周期であってもよく、また、整数分の一の周期であってもよい。また、それぞれの検出装置10が処理装置30に出力する周期は、同期しているものとする。
【0052】
処理装置30は、検出装置10から、所定の周期で動き情報を取得する。たとえば、図3に示した出力を取得する場合、t=4、8、12、16のタイミングで、それぞれ1を取得することとなる。また、処理装置30は、人数取得装置20から、人数情報を取得して記憶する。さらに、処理装置30は、動き情報などを取得するたびに、取得した動き情報と人数情報とを用いて、それぞれの領域における人物等の存在の有無(以下、人flagという)を推定する。推定処理は、動き情報等を取得するたびに、領域ごとに実行される。詳細は後述するが、推定処理は、同一領域における過去の動き情報等を用いる方法(以下、順時判定処理という)と、同一時刻における他の領域の動き情報等を用いる方法(以下、同刻判定処理という)と、同一領域における未来の動き情報等を用いる方法(以下、逆時判定処理という)のいずれかの方法、もしくは、それらを組み合わせた方法を用いることによって、実施される。推定された人flagは、メモリに記憶される。これらの方法を用いたとしても推定できなかった場合、人flagは、「不確定」として記憶される。
【0053】
図4は、図1の処理装置30の構成例を示す図である。処理装置30は、第1受信部32と、第1メモリ34と、第2受信部36と、位置推定部38と、第2メモリ40と、制御部42と、指示部44とを含む。第1受信部32は、検出装置10から出力された動き情報を受信して、受信した時刻あるいは検出した時刻と対応付けながら、第1メモリ34に記憶する。第2受信部36は、人数取得装置20から送信された人数情報を受信して、受信した時刻と対応付けながら、第1メモリ34に記憶する。位置推定部38は、第1メモリ34に記憶された動き情報と人数情報とを用いて、時刻ごとに、また、領域ごとに、人物等の存在の有無を推定し、第2メモリ40に記憶する。制御部42は、位置推定部38を制御する。また、制御部42は、指示部44を制御して、検出装置10に対して、初期化を指示させる。指示部44は、検出装置10に対して、初期化を指示する。
【0054】
上述したこれらの構成は、ハードウエア的には、任意のコンピュータのCPU、メモリ、その他のLSIで実現でき、ソフトウエア的にはメモリにロードされた最適化機能のあるプログラムなどによって実現されるが、ここではそれらの連携によって実現される機能ブロックを描いている。したがって、これらの機能ブロックがハードウエアのみ、ソフトウエアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは、当業者には理解されるところである。
【0055】
ここで、第1メモリ34に記憶された動き情報と人数情報の関係について、状態遷移図を用いて説明する。図5は、図1の監視システム100における状態遷移の例を示す状態遷移図200である。状態遷移図200は、状態S0〜状態S3を含み、任意の領域における状態を示す。それぞれの状態は、以下のように、当該領域内の動き情報および人数情報により定義される。なお、人物等が存在しない場合、人flag=0で示され、人物等が存在する場合、人flag=1で示される。
状態S0:動き情報=0、人flag=0
状態S1:動き情報=1、人flag=1
状態S2:動き情報=0、人flag=1
状態S3:動き情報=1、人flag=0
【0056】
状態S0は、直近の動き情報が0であり、かつ、当該領域内に人物等が存在しないことを示す。同様に、状態S1は、直近の動き情報が1であり、かつ、当該領域内に人物等が存在することを示す。状態S2は、直近の動き情報が0であり、かつ、当該領域内に人物等が存在することを示す。状態S3は、直近の動き情報が1であり、かつ、当該領域内に人物等が存在しないことを示す。
【0057】
それぞれの状態は、次時刻における動き情報に応じて、他の状態に遷移する。時刻とは、出力部16が処理装置30に出力する時刻を示す。また、次時刻とは、出力部16が処理装置30に出力した後に、次に出力すべき時刻を示す。具体的に説明する。状態S0において、次時刻における動き情報が0の場合、たとえば、周囲の領域から人物等の移動がなく、引き続き人物等が存在しない状態が継続しているような場合、第1遷移202により、状態S0の状態を維持する。一方、次時刻における動き情報が1の場合、たとえば、周囲の領域から人物等が移動してきたような場合、第2遷移204により、状態S1に遷移する。
【0058】
状態S1において、次時刻における動き情報が0の場合、たとえば、当該領域内に存在する人物等が領域内において静止していたような場合、第3遷移206により、状態S2に遷移する。一方、次時刻における動き情報が1の場合、2つの遷移が発生しうる。たとえば、当該領域内で人物等が動いたものの引き続き人物等が存在しているような場合、第4遷移208により、状態S1の状態を維持する。また、当該領域に存在している人物等が次時刻において、周囲の領域に移動した場合、第5遷移210により、状態S3に遷移する。ここで、処理装置30が取得できる情報は、動き情報と人数情報のみであり、「当該領域内で人物等が動いたものの引き続き人物等が存在しているような場合」といったような具体的な情報ではないため、状態S1の状態において、動き情報が1であった場合、遷移先が特定できないこととなる。以下、このような状態を「不確定」と表記する。一度でも、状態が不確定となると、その時刻以降の同一領域における状態も、不確定の状態が継続してしまう。なお、不確定の状態を脱するための方法については、後述することとする。
【0059】
状態S2において、次時刻における動き情報が0の場合、たとえば、当該領域内に存在する人物等が領域内において静止していたような場合、第6遷移212により、状態S2の状態を継続する。一方、次時刻における動き情報が1の場合、上述した状態S1と同様に、2つの遷移が発生しうる。たとえば、当該領域内で人物等が動いたものの引き続き人物等が存在しているような場合、第7遷移214により、状態S1に遷移する。また、当該領域に存在している人物等が次時刻において、周囲の領域に移動した場合、第8遷移216により、状態S3に遷移する。したがって、状態S1の状態と同様に、状態S2の状態においても、動き情報が1である場合、遷移先が特定できないこととなる。
【0060】
状態S3において、次時刻における動き情報が0の場合、たとえば、周囲の領域から人物等の移動がなく、引き続き人物等が存在しない状態が継続しているような場合、第10遷移220により、状態S0に遷移する。一方、次時刻における動き情報が1の場合、たとえば、周囲の領域から人物等が移動してきたような場合、第9遷移218により、状態S1に遷移する。
【0061】
以上をまとめると、以下のようになる。
○状態S1と状態S2の状態において、次時刻の動き情報が1である場合、次時刻以降の状態、および、人flagは、不確定となる。
○上記以外の場合、状態、および、人flagは、確定する。
【0062】
ここで、処理装置30の推定処理にかかる動作について説明する。前述したごとく、処理装置30は、領域ごとに取得された動き情報と人数情報とを用いて、任意の時刻における人物等の存在の有無を推定する。具体的には、以下に説明する(1)〜(3)のいずれかの判定処理を用いて、人物等の存在の有無を推定する。ここで、(2)、(3)に示す方法は、主に、不確定な状態が生じた場合に用いられる。なお、以下においては、説明の便宜上、次時刻を「現在」と表記する。また、次時刻の1つ前の時刻を「過去」と表記する。
【0063】
(1)順次判定処理
図5の状態遷移図200の遷移についてまとめると、図6のように示される。図6は、図5の状態遷移図200における現在と過去の状態の状態関係図400を示す図である。状態関係図400は、過去状態欄410と現在状態欄420と遷移欄430とを含む。ここで、過去の状態とは、現在の時刻(以下、「基準時刻」とも表記する。)に対して、1つ前の時刻における状態を示す。1つ前の時刻における状態とは、たとえば、基準の時刻において検出された動き情報よりも1つ前の時刻において検出された動き情報を示す。過去状態欄410または現在状態欄420に示したS0〜S3は、図5の状態遷移図200の状態S0〜状態S3に対応する。また、S0〜S3の右側に示したかっこ内のX/Yのうち、Xは動き情報を示し、Yは人flagを示す。また、遷移欄430は、過去の状態から現在の状態に遷移する場合における遷移番号を示す。遷移番号として示した202〜220は、図5の状態遷移図200の第1遷移202〜第10遷移220にそれぞれ対応する。また、「×」は、その遷移はありえないことを示す。
【0064】
ここで、過去の状態を用いて、現在の状態における人flagを推定する方法を示す。図示するごとく、過去の状態がS0もしくはS3である場合、現在の状態は、S0またはS1のいずれかに遷移する。ここで、過去のS0とS3における人flagは双方とも0である。したがって、過去の状態における人flagが0である場合、現在の状態はS0またはS1に遷移することとなる。また、現在の状態のS0とS1は、過去もしくは現在の状態の動き情報により識別できる。まとめると、過去の状態における人flagが0である場合、現在の状態の動き情報によって、現在の状態における人flagを確定できることとなる。
【0065】
同様に、過去の状態がS1もしくはS2である場合、現在における状態は、S1またはS2またはS3のいずれかに遷移する。ここで、過去の状態のS1とS2における人flagはすべて1である。したがって、過去の状態における人flagが1は、現在の状態のS1またはS2またはS3に遷移することとなる。また、現在の状態のS1とS2とS3のうち、現在の状態のS2の動き情報は0である一方、S1とS3は1であるため、動き情報が0である場合は、現在の状態を識別できる。まとめると、過去の状態における人flagが1である場合であって、かつ、現在の状態の動き情報が0の場合、現在の状態における人flagを確定できることとなる。一方、過去の状態における人flagが1である場合であって、かつ、現在の動き情報が1の場合、現在の状態は確定せず、不確定となる。
【0066】
図7は、図1の処理装置30にかかる順次判定処理の動作例を示すフローチャートである。この処理は、領域ごとの動き情報が取得されるたびに実行されてもよい。また、特定の領域の動き情報が取得されたことを契機として、実行されてもよい。まず、位置推定部38は、第1メモリ34に記憶された基準時刻の動き情報と、第2メモリ40に記憶された1つ前の人flagとを読み出す(S10)。ここで、1つ前の人flagが0である場合(S12のY)、S14の判定処理に移り、1である場合(S12のN)、S20の判定処理に移る。S14において、読み出した動き情報が0である場合(S14のY)、基準時刻の人flagは0であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における基準時刻の人flagを0に設定する(S16)。一方、読み出した動き情報が1である場合(S14のN)、基準時刻の人flagは1であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における基準時刻の人flagを1に設定する(S18)。
【0067】
S20においては、1つ前の人flagが1である場合(S20のY)、S22の処理に移り、1つ前の人flagが1でない場合(S20のN)、S24の処理に移る。S24において、読み出した動き情報が0である場合(S22のY)、基準時刻の人flagは1であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における基準時刻の人flagを1に設定する(S18)。一方、読み出した動き情報が1である場合(S22のN)、基準時刻の人flagは不確定であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における基準時刻の人flagとして不確定を示す情報を設定する(S24)。
【0068】
(2)同刻判定処理
この処理は、現在、または、過去の状態において、人flagが不確定となった領域が存在する場合などに用いられる。この同刻判定処理は、人数情報と、基準時刻において人flagが確定した領域の数とを用いて、基準時刻において人flagが確定していない領域の人flagを確定させる方法である。ここで、基準時刻と同じ時刻において人flagが確定している他の領域のうち、人flagが1となっている領域の数が人数情報と等しい場合、不確定となっている全ての領域の人flagは0と判定できる。また、人数情報から同時刻の人flagが1となっている領域の数を引いた値が不確定の領域の数と等しい場合、不確定となっている全ての領域の人flagは1と判定できる。その他の場合、同刻判定処理では、不確定の状態を脱することができない。
【0069】
図8は、図1の処理装置30にかかる同刻判定処理の動作例を示すフローチャートである。この処理は、任意の時刻において、人flagが不確定となった領域が存在する場合、当該時刻の領域を対象として実行されてもよい。まず、位置推定部38は、第1メモリ34に記憶された人数情報と、第2メモリ40に記憶された当該時刻における人flagが1と設定されている領域の数とを比較する(S26)。ここで、人数情報と領域の数とが等しい場合(S26のY)、第2メモリ40に記憶されている当該時刻における人flagが不確定と記憶されているすべての領域について、その人flagを0に設定する(S28)。人数情報と領域の数とが異なる場合(S26のN)であって、人数情報から領域の数を引いた値が、当該時刻において人flagが不確定と設定されている領域の数と等しい場合(S30のY)、第2メモリ40に記憶されている当該時刻における人flagが不確定と記憶されているすべての領域について、その人flagを1に設定する(S32)。一方、人数情報と領域の数とが異なる場合(S26のN)であって、人数情報から領域の数を引いた値が、当該時刻において人flagが不確定と設定されている領域の数と等しくない場合(S30のN)、処理を終了する。
【0070】
(3)逆時判定処理
この処理は、過去の状態において任意の領域の人flagが不確定となった後、(2)に示した同刻判定処理によって、当該領域の人flagが確定した場合に用いられる。この逆時判定処理は、基準時刻における人flagをもちいて、過去にさかのぼって、不確定となっていた過去における人flagを確定させる方法である。ここでは、逆時判定処理を図6を用いて説明する。
【0071】
図6に示すごとく、現在の状態がS0である場合、過去における状態は、S0またはS3のいずれかから遷移してきたものといえる。ここで、過去のS0とS3における人flagは双方とも0である。したがって、現在の状態がS0である場合、動き情報によらずに、過去の状態における人flagは0となる。同様に、現在の状態のS2またはS3には、過去の状態のS1またはS2のいずれかから遷移してきたものといえる。ここで、確定すべき過去のS1とS2における人flagは双方とも1である。したがって、現在の状態がS2またはS3である場合、動き情報によらずに、過去の状態における人flagは1となる。一方、現在の状態のS1には、過去の状態のS0からS3のいずれかから遷移してきたものといえる。これらの遷移には識別性がないため、現在の状態がS1の場合、過去の状態も不確定となり、逆時判定処理では、不確定を脱することができない。
【0072】
図9は、図1の処理装置30にかかる逆時判定処理の動作例を示すフローチャートである。この処理は、特定の領域、たとえば、過去に人flagが不確定となっていた領域についての現在の人flagが確定したことを契機として、実行されてもよい。まず、位置推定部38は、第1メモリ34に記憶された現在の動き情報と、第2メモリ40に記憶された現在の人flagとを読み出す(S34)。ここで、現在の人flagが0である場合(S36のY)、S38の判定処理に移り、1である場合(S36のN)、S44の判定処理に移る。S38において、読み出した動き情報が0である場合(S38のY)、現在の人flagは0であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における過去の人flagを0に設定する(S40)。一方、読み出した動き情報が1である場合(S38のN)、現在の人flagは1であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における過去の人flagを1に設定する(S42)。
【0073】
S44においては、現在の人flagが1である場合(S44のY)、S46の処理に移り、現在の人flagが1でない場合(S44のN)、S48の処理に移る。S46において、読み出した動き情報が0である場合(S46のY)、過去の人flagは1であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における現在の人flagを1に設定する(S42)。一方、読み出した動き情報が1である場合(S46のN)、現在の人flagは不確定であると判定される。ここで、位置推定部38は、第2メモリ40における現在の人flagとして不確定を示す情報を設定する(S48)。
【0074】
(4)(1)〜(3)の組み合わせ
(1)〜(3)のいずれに示した方法によっても、不確定を脱することができない場合が存在する。しかしながら、いずれかの時刻において、すべての領域の人flagが確定した場合、(1)〜(3)の方法を順次実行することによって、不確定を脱する確率を向上できる。
【0075】
不確定を脱する確率を向上させるためには、いずれかの時刻におけるいずれかの領域の人flagが不確定となった後に、任意の時刻において、すべての領域の人flagを確定させる必要がある。任意の時刻において、すべての領域の人flagを確定させるためには、(2)の方法を用いるのが好適である。たとえば、本実施形態にかかる監視システム100が設置された構内のすべての人物等が、人flagが確定している領域に移動したときに、(1)の方法により、その時刻における人flagが1と確定する。この場合、当該時刻の他の領域における人flagが確定していなかったとしても、(2)の方法により、他の領域には人物等は存在していないと判定されるため、当該時刻におけるすべての領域の人flagが確定することとなる。
【0076】
このような場合、確定した時刻を現在の状態として、さらに、(3)に示した逆時判定処理を用いることにより、過去に遡って、不確定を脱することができる。過去におけるすべての不確定が脱しきれなかった場合でも、不確定を脱することができた過去の時刻において、(2)の方法を再び用いることにより、不確定を脱することができる場合がある。これによっても、不確定を脱することができなかった領域がなお存在する場合、(1)もしくは(3)を実行することによって、さらに不確定な個所を減少することができる。
【0077】
以上の処理を可能なかぎり繰り返すことによって、不確定な領域を限りなく減少できる。なお、検出装置10における検出の周期を短くすることによっても、不確定な状態を脱することができる。検出の周期を短くすることによって、ほとんどの領域において、S0もしくはS3の安定状態が継続するため、すべての領域における人flagが確定する時刻が増加することとなる。そうすると、前述したように、(1)〜(3)の方法を組み合わせることによって、不確定な個所を減少することができるようになる。また、本実施形態にかかる監視システム100は、美術館等の比較的混雑していない構内に設置されるものである。このような場合、構内の人物等は、静止した状態を維持する場合が多いといえる。そうすると、不確定な状態に移行する確率が低いため、(1)〜(3)のいずれかの方法により、不確定を脱する確率が高いといえる。なお、混雑している構内においては、混雑の度合いに応じて、検出装置10の検出周期を短くすれば、同様の効果を得られることは言うまでもない。また、検出周期を短く設定することによって、推定処理に要する時間を低減できる。
【0078】
図10は、図1の処理装置30の動作例を示すフローチャートである。まず、処理装置30は、複数の検出装置10から動き情報をそれぞれ取得し、また、人数取得装置20から人数情報を取得する(S50)。つぎに、処理装置30は、現在の時刻と対応づけながら、取得した動き情報と人数情報とをメモリに記憶する(S52)。ここで、処理装置30は、それぞれの領域に人物等が存在するか否かを判定するために、領域ごとに、図7に示した順次判定処理を実行する(S54)。当該時刻におけるすべての領域について、人物等の存在の有無を示す人flagが判定されたことを契機として、処理装置30は、判定された人flagのうち、不確定となった領域が存在するか否かを確認する(S56)。ここで、不確定となった領域が存在しない場合(S56のN)、S58の処理に移る。S58においては、終了判定が実行される(S58)。終了判定においては、監視システム100を操作する人の指示により、または、あらかじめ設定された時刻になったことを契機として、この処理が終了する(S58のY)。終了しない場合(S58のN)、S50の処理に戻る。
【0079】
不確定となった領域が存在していた場合(S56のY)、図8に示す同刻判定処理を実行する(S60)。ここで、現在の時刻において、人flagが不確定となっている領域が存在しない場合(S62のN)、S50の処理に戻る。一方、人flagが不確定となっている領域が存在する場合(S62のY)、図9に示す逆時判定処理(S64)や、同刻判定処理(S66)や、順次判定処理(S68)を実行する。このS64、S66、S68を実行する順序は、適宜入れ替えてもよい。また、S64の逆時判定処理とS68の順時判定処理は、人flagが不確定となった領域を対象として実行される。また、S66の同刻判定処理は、人flagが不確定となった領域を含む時刻を対象として実行される。S64、S66、S68は、人flagが不確定となっている領域がなくなるまで、もしくは、予め設定された回数繰り返される(S70)。人flagが不確定となっている領域がなくなった場合、もしくは、予め設定された回数だけ繰り返された場合(S70のY)、S50の処理に戻る。
【0080】
具体例を用いて説明する。ここでは、順次判定処理と同刻判定処理が用いられる例について示す。図11(a)は、本発明の実施形態の第1の動作例における領域を示す図である。図示するごとく、監視システム100が設置される構内は、領域A〜領域Pの16の領域を含み、領域Aと領域Mに出入口が設けられている。それぞれの領域は、対応する検出装置10によって監視され、その領域内の人物等の動作が検出される。また、領域Aと領域Mに設けられた出入口は人数取得装置20により監視され、構内の人数が取得される。
【0081】
図11(b)は、本発明の実施形態の第1の動作例における各領域にかかる動き情報の例を示す図である。図11(b)は、第1メモリ34に記憶された動き情報を示す。これらの動き情報は、図11(a)に示す領域A〜領域Pのそれぞれの領域について、時刻t0からt7までの間に取得されたものとする。図示するごとく、それぞれの時刻とそれぞれの領域について、動き情報が0もしくは1として記憶される。図11(c)は、本発明の実施形態の第1の動作例における人数の遷移例を示す図である。図11(c)は、第1メモリ34に記憶された人数情報を示す。これらの人数情報は、時刻t0からt7までの間における構内の人数の推移であり、図11(a)に示す領域Aと領域Mを監視する人数取得装置20により取得されたものとする。図示するごとく、それぞれの時刻について、人数情報が記憶される。
【0082】
図11(a)〜(c)に示す条件のもとで、処理装置30による推定処理の流れについて説明する。図12(a)は、本発明の実施形態の第1の動作例における各領域の配置の推定結果を示す図である。図12(a)に示す推定結果は、第2メモリ40に記憶された人flagを示す。また、図12(a)に示す推定結果は、人flagが確定した領域についてのみ0または1を図示し、不確定となった領域には不確定を示す情報として「不」を図示した。以下、時刻ごとに、説明する。
【0083】
まず、時刻t0においては、初期状態であるため、すべての領域における人flagは0と推定される。次に、時刻t1において、図11(a)に示す動き情報は、領域Aについてのみ1となり、他の領域は0となっている。また、時刻t1の1つ前の時刻t0における人flagは、すべての領域について0となっている。したがって、図7に示す順次判定処理により、領域Aについては、人flagが1と判定され、他の領域については、人flagが0と判定される。
【0084】
つぎに、時刻t2において、図11(a)に示す動き情報は、領域Aと領域Bについてのみ1となり、他の領域は0となっている。また、時刻t2の1つ前の時刻t1における人flagは、領域Aについて1、他のすべての領域について0となっている。したがって、図7に示す順次判定処理により、領域Aについては、人flagが不確定と判定され、領域Bについては、人flagが1と判定され、他の領域については、人flagが0と判定される。そうすると、不確定となった領域が存在するため、処理装置30は、同刻判定処理を実行することとなる。ここで、図11(c)に示される時刻t2における人数は、1であり、また、図12(a)において、時刻t2において人flagが1となっている領域の数は1となる。したがって、時刻t2における領域Aの人flagは、0と判定される。
【0085】
以下、時刻t3〜t7にかけて、時刻t1、t2と同様に、各領域の人flagが判定される。この例においては、時刻が進むにつれて、人flagが不確定となる領域の数は増加する。また、時刻t3〜t7においては、図11(c)に示されるそれぞれの時刻における人数と、図12(a)において、対応する時刻において人flagが1となっている領域の数とは等しい。したがって、図12(a)において、「不」と示された領域の人flagは、同刻判定処理により、すべて0と判定されることとなる。
【0086】
図12(b)は、図12(a)の各領域の配置から推定される人物等の軌跡を示す図である。すべての時刻におけるすべての領域について、「不」と示される領域が存在しなくなったような場合、人物等の軌跡を推定できる場合がある。図12(b)は、人物XとYが、それぞれ入室し、括弧で示されるタイミングで、それぞれの領域に移動したことを示す。なお、人物Xの軌跡を実線の矢印で示し、人物Yの軌跡を破線の矢印で示した。図示するごとく、人物Xは、時刻t1のタイミングで領域Aに入室し、以後、時刻t2〜時刻t7にかけて、領域A→領域B→領域C→領域D→領域H→領域L→領域Pに移動したことを示す。また、人物Yは、時刻t4のタイミングで領域Mに入室し、以後、時刻t5〜時刻t7にかけて、領域M→領域I→領域J→領域Fに移動したことを示す。
【0087】
さらに具体例を示す。ここでは、順次判定処理、同刻判定処理、および、逆時判定処理が用いられる例について説明する。図13(a)は、本発明の実施形態の第2の動作例における領域を示す図である。図示するごとく、監視システム100が設置される構内は、領域A〜領域Iの9の領域を含み、領域Aに出入口が設けられている。それぞれの領域は、対応する検出装置10によって監視され、その領域内の人物等の動作が検出される。また、領域Aに設けられた出入口は人数取得装置20により監視され、構内の人数が取得される。
【0088】
図13(b)は、本発明の実施形態の第1の動作例における各領域にかかる動き情報の例を示す図である。図13(b)は、第1メモリ34に記憶された動き情報を示す。これらの動き情報は、図13(a)に示す領域A〜領域Iのそれぞれの領域について、時刻t0からt7までの間に取得されたものとする。図示するごとく、それぞれの時刻、領域について、動き情報が0もしくは1として記憶される。図13(c)は、本発明の実施形態の第2の動作例における人数の遷移例を示す図である。図13(c)は、第1メモリ34に記憶された人数情報を示す。これらの人数情報は、時刻t0からt7までの間における構内の人数の推移であり、図13(a)に示す領域Aを監視する人数取得装置20により取得されたものとする。図示するごとく、それぞれの時刻について、人数情報が記憶される。
【0089】
図13(a)〜(c)に示す条件のもとで、処理装置30による推定処理の流れについて説明する。図14(a)は、本発明の実施形態の第2の動作例における各領域の配置の第1の推定結果を示す図である。第1の推定結果は、時刻t0〜t2における推定処理を示し、第2メモリ40に記憶された人flagを示す。また、図14(a)に示す推定結果は、人flagが確定した領域についてのみ0または1を図示し、不確定となった領域には不確定を示す情報として「不」を図示した。以下、時刻ごとに、説明する。
【0090】
まず、時刻t0においては、初期状態であるため、すべての領域における人flagは0と推定される。次に、時刻t1において、図13(a)に示す動き情報は、領域Aについてのみ1となり、他の領域は0となっている。また、時刻t1の1つ前の時刻t0における人flagは、すべての領域について0となっている。したがって、図7に示す順次判定処理により、領域Aについては、人flagが1と判定され、他の領域については、人flagが0と判定される。
【0091】
時刻t2において、図13(a)に示す動き情報は、領域Aと領域Bについてのみ1となり、他の領域は0となる。また、時刻t2の1つ前の時刻t1における人flagは、領域Aについて1、他のすべての領域について0となっている。したがって、図7に示す順次判定処理により、領域Aについては、人flagが不確定と判定され、領域Bについては、人flagが1と判定され、他の領域については、人flagが0と判定される。
【0092】
図14(b)は、本発明の実施形態の第2の動作例における各領域の配置の第2の推定結果を示す図である。第2の推定結果は、時刻t2〜t7における推定処理を示す。なお、順時判定処理により不確定と判定される領域を破線の円で示す。また、破線の円で示される2つの領域をまたぐ矢印は、矢印の始点にかかる領域の人flag等をもとにして、順次判定処理、同刻判定処理もしくは逆時判定処理のいずれかの方法により、矢印の終端にかかる領域の人flagが判定されることを示す。後述する図14(c)についても同様とする。
【0093】
時刻t2においては、不確定となった領域として、領域Aが存在するため、処理装置30は、同刻判定処理を実行する。そうすると、図13(c)に示される時刻t2における人数は、1であり、また、時刻t2において人flagが1となっている領域の数は1となる。したがって、時刻t2における領域Aの人flagは、0と判定される。
【0094】
つぎに、時刻t3において、図13(a)に示す動き情報は、領域Bと領域Cについてのみ1となり、他の領域は0となっている。また、時刻t3の1つ前の時刻t2における人flagは、領域Bをのぞき、すべての領域について0となっている。したがって、図7に示す順次判定処理により、領域Bについては、人flagが不確定と判定され、また、領域Cについては、人flagが1と判定され、他の領域については、人flagが0と判定される。ここで、不確定となった領域Bは、同刻判定処理により、人flagが0と判定される。
【0095】
同様に、時刻t4について、順次判定処理により、領域Cを除き、人flagが確定する。また、不確定となった領域Cは、同刻判定処理により、人flagが1と判定される。さらに、時刻t5〜t6においても、同様に、順次判定処理や同刻判定処理を実行する。図示するごとく、時刻t5〜t6においては、同刻判定処理を実行したとしても、不確定を脱することができない領域が存在することとなる。さいごの時刻t7においては、順次判定処理により、不確定となる領域が存在するものの、同刻判定処理により、すべての領域の人flagが確定することとなる。
【0096】
同刻判定処理を用いても不確定の状態を脱しきれない場合、不確定の状態となる領域は複数となる。たとえば、時刻t5では、領域Aと領域Cが不確定の状態となる。このように、順次判定処理や同刻判定処理を用いても、不確定の状態を脱しきれない領域が存在する場合、その領域については、次の時刻以降も不確定となる場合が多い。たとえば、時刻t6、t7では、領域Aと領域Cが引き続き不確定の状態となる。一方、不確定の状態となる領域が複数であっても、例外的に、不確定を脱しきれる場合がある。たとえば、時刻t7では、順次判定処理によっては、領域Aと領域Bと領域Cと領域Fが不確定の状態となるものの、同刻判定処理によって、不確定を脱することができる。そうすると、時刻t7において人flagが確定する一方、時刻t7より過去のt6やt5において、不確定な領域が存在することとなる。このような場合、すべての領域についての人flagが確定した時刻t7を基準として、逆時次判定処理を実行することにより、過去の時刻である時刻t6やt5における不確定の状態を脱することができる場合がある。
【0097】
以上をまとめると以下のような規則を導出できる。
○順次判定処理や同刻判定処理を用いても、不確定の状態を脱しきれない領域が発生した場合、未来の時刻において、同刻判定処理によりすべての領域についての人flagが確定するまで、不確定な状態が継続する。
○この不確定な状態の継続は、未来の時刻において、同刻判定処理により、すべての領域についての人flagが確定することにより停止される。
○さらに、すべての領域についての人flagが確定した未来の時刻を基準として、逆時判定処理を実行することにより、過去にさかのぼって、不確定な状態を脱することができることとなる。
【0098】
図14(c)は、本発明の実施形態の第2の動作例における各領域の配置の第3の推定結果を示す図である。ここでは、すべての領域についての人flagが確定した時刻t7を基準として、逆時判定処理を実行することにより、過去にさかのぼって、不確定な状態を脱することができることを示す。
【0099】
時刻t7より過去の時刻であって、人flagが不確定となっている領域は、領域Aと領域Bと領域Cである。まず、処理装置30は、領域Aについて、逆時判定処理を実行する。ここで、基準の時刻t7における領域Aの人flagは、0となっており、また、動き情報は1となっている。したがって、時刻t6における領域Aの人flagは、1と確定される。ここで、領域Aにおいては、確定した時刻t6の1つ前の時刻である時刻t5の人flagも不確定であるため、時刻t6を基準として、逆時判定処理を実行する。基準の時刻t6における領域Aの人flagは、1となっており、また、動き情報は1となっている。したがって、時刻t5における領域Aの人flagは、確定せず、不確定なままとなる。なお、図中に示す領域Aにおける時刻t6からt5への矢印と、その先端の「X」は、時刻t6を基準とした逆時判定処理では、時刻t5の不確定を確定させることができなかったことを示している。
【0100】
つぎに、処理装置30は、領域B、領域Cについて、順に、逆時判定処理を実行する。基準の時刻t7における領域B、領域Cの人flagは、0となっており、また、動き情報は0となっている。したがって、時刻t6における領域Bと領域Cの人flagは、双方とも、0に確定される。ここで、領域Cにおいては、確定した時刻t6の1つ前の時刻である時刻t5の人flagも不確定であるため、時刻t6を基準として、逆時判定処理を実行する。基準の時刻t6における領域Cの人flagは、0となっており、また、動き情報は1となっている。したがって、時刻t5における領域Cの人flagは、1に確定される。
【0101】
この状態において、人flagが不確定となっている時刻は、時刻t5のみである。また、時刻t5において、人flagが不確定となっている領域は、領域Aのみである。前述したように、同一時刻内において、人flagが不確定となっている領域が1つのみである場合、その領域の人flagは、同刻判定処理により、確定することができる。ここで、時刻t5について、同刻判定処理を実行すると、不確定となっていた領域Aの人flagは、0に確定することとなる。
【0102】
上述した例においては、順次判定処理、同刻判定処理を実行した後に、逆時判定処理と同刻判定処理を実行することによって、すべての時刻におけるすべての領域において、人flagを確定することができた。しかしながら、これらの処理によっても、人flagが確定できない領域が存在する場合、再度、順次判定処理、逆時判定処理、同刻判定処理を順次実行することによって、確定させることができる場合を増加できる。このような場合においても確定しない場合、検出装置10や人数取得装置20における検出周期を短くすることによって、確定させることができる確率をより増加できることとなる。
【0103】
図14(d)は、図14(c)の各領域の配置から推定される人の軌跡を示す図である。図14(d)は、人物XとYが、それぞれ入室し、括弧で示されるタイミングで、それぞれの領域に移動したことを示す。なお、人物Xの軌跡は実線の矢印で示し、人物Yの軌跡は破線の矢印で示した。図示するごとく、人物Xは、時刻t1のタイミングで領域Aに入室し、以後、時刻t2〜時刻t7にかけて、領域A→領域B→領域C→領域C→領域C→領域F→領域Iに移動したことを示す。また、人物Yは、時刻t4のタイミングで領域Aに入室し、以後、時刻t5〜時刻t7にかけて、領域A→領域B→領域A→領域Dに移動したことを示す。
【0104】
図14(d)に示す人物の軌跡により、前述した(4)の推定方法でも述べたように、以下の規則が導ける。
○本実施形態にかかる監視システム100が設置された構内のすべての人物等が、人flagが確定している領域に移動したとき、たとえば、前述の例における時刻t7において領域Dまたは領域Iに異動したときに、(2)の方法により、当該時刻におけるすべての領域の人flagが確定することとなる。その時刻におけるすべての領域の人flagが確定することにより、逆時判定処理により、過去にさかのぼって、不確定を脱することができる。
【0105】
以上、本発明を実施の形態をもとに説明した。この実施の形態は例示であり、実施の形態および変更例同士の組合せ、もしくは、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0106】
本発明の実施の形態においては、出力部16は、所定の周期で動作を示す情報を処理装置30に出力するとして説明した。しかしながらこれにかぎらず、たとえば、処理装置30は、動作を示す情報の出力を要求するための出力要求信号を出力部16に通知し、出力部16は、その出力要求信号に応じて、処理装置30に動作を示す情報を出力してもよい。また、出力部16は、処理装置30から出力要求信号が通知されるまで、動作を示す情報をストックしておき、出力要求があったことを契機として、ストックした情報をまとめて処理装置30に出力してもよい。この場合、処理装置30は出力部16の出力を制御できるため、出力部16の仕様によらず処理装置30を設計できることとなり、設計の柔軟性を向上できる。
【0107】
また、図11(a)や図13(a)に示すごとく、監視する領域の形状は方形状であるとして説明した。しかしながらこれにかぎらず、たとえば、監視する領域は、円形状であってもよく、また、多角形状であってもよい。これらの場合であったとしても、同様の効果を得られることは当業者にとって容易に想到できるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】本発明の実施形態にかかる監視システムの構成例を示す図である。
【図2】図1の検出装置の構成例を示す図である。
【図3】図2の赤外線検出部の入出力例を示すタイミングチャートである。
【図4】図1の処理装置の構成例を示す図である。
【図5】図1の監視システムにおける状態遷移の例を示す状態遷移図である。
【図6】図5の状態遷移図における現在と過去の状態の状態関係図を示す図である。
【図7】図1の処理装置にかかる順次判定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図8】図1の処理装置にかかる同刻判定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図9】図1の処理装置にかかる逆時判定処理の動作例を示すフローチャートである。
【図10】図1の処理装置の動作例を示すフローチャートである。
【図11】図11(a)は、本発明の実施形態の第1の動作例における領域を示す図である。図11(b)は、本発明の実施形態の第1の動作例における各領域にかかる動き情報の例を示す図である。図11(c)は、本発明の実施形態の第1の動作例における人数の遷移例を示す図である。
【図12】図12(a)は、本発明の実施形態の第1の動作例における各領域の配置の推定結果を示す図である。図12(b)は、図12(a)の各領域の配置から推定される人物等の軌跡を示す図である。
【図13】図13(a)は、本発明の実施形態の第2の動作例における領域を示す図である。図13(b)は、本発明の実施形態の第1の動作例における各領域にかかる動き情報の例を示す図である。図13(c)は、本発明の実施形態の第2の動作例における人数の遷移例を示す図である。
【図14】図14(a)は、本発明の実施形態の第2の動作例における各領域の配置の第1の推定結果を示す図である。図14(b)は、本発明の実施形態の第2の動作例における各領域の配置の第2の推定結果を示す図である。図14(c)は、本発明の実施形態の第2の動作例における各領域の配置の第3の推定結果を示す図である。図14(d)は、図14(c)の各領域の配置から推定される人の軌跡を示す図である。
【符号の説明】
【0109】
S0 状態、 S1 状態、 S2 状態、 S3 状態、 10 検出装置、 12 赤外線検出部、 16 出力部、 18 初期化部、 20 人数取得装置、 22 遷移、 30 処理装置、 32 第1受信部、 34 第1メモリ、 36 第2受信部、 38 位置推定部、 40 第2メモリ、 42 制御部、 44 指示部、 100 監視システム、 110 領域、 120 出入口領域、 200 状態遷移図、 202 第1遷移、 204 第2遷移、 206 第3遷移、 208 第4遷移、 210 第5遷移、 212 第6遷移、 214 第7遷移、 216 第8遷移、 218 第9遷移、 220 第10遷移、 300 領域欄、 310 時刻欄、 320 人数欄、 400 状態関係図、 410 過去状態欄、 420 現在状態欄、 430 遷移欄。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間または動物などの対象物の動きをそれぞれ検出する複数の検出装置と、前記複数の検出装置の出力を処理する処理装置とを備えた監視システムであって、
前記複数の検出装置のそれぞれは、
割り当てられた領域における対象物の動きの有無を検出する検出部と、
前記検出部による検出情報を前記処理装置に所定の出力周期で出力する出力部と、を有し、
前記処理装置は、
前記複数の検出装置から出力される検出情報を受け取る受取部と、
前記受取部が受け取った検出情報をもとに、対象物の位置を推定する推定部と、を有することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
前記検出装置は、前記出力周期よりも間隔の短いサンプリング周期で赤外線の変化を検出する赤外線センサであって、
前記検出部は対象物の動きを検出すると、検出情報の状態値をオンに設定して、そのオン値を維持し、前記出力部が検出情報を出力すると、状態値をオフに設定することを特徴とする請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記処理装置は、前記受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有し、
前記推定部は、前記記録部に記録されたある領域の検出情報と、その検出情報に連続して記録されている同一領域の検出情報を用いて、その領域における対象物の存在の有無を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記推定部は、前記記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項5】
前記推定部は、前記記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項6】
前記推定部は、前記記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行しても、対象物の存在の有無が推定できなかった場合、前記記録部に記録された前記領域の前記時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、前記領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項7】
前記推定部は、前記記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理を実行しても、対象物の存在の有無が推定できなかった場合、前記記録部に記録された前記領域の前記時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行することを特徴とする請求項3に記載の監視システム。
【請求項8】
前記処理装置は、前記受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有し、
前記推定部は、前記記録部に記録されたある領域の検出情報と、その領域の周囲の領域に関して記録されている検出情報を用いて、その領域ないしは周囲の領域における対象物の存在の有無を推定することを特徴とする請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項9】
前記推定部は、前記記録部にある同一の時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の前記同一の時刻における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理を実行することを特徴とする請求項8に記載の監視システム。
【請求項10】
前記処理装置は、前記受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有し、
前記推定部は、前記記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域のその時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理、もしくは、前記記録部に記録されたある領域のある時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域のその時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行しても対象物の存在の有無が推定できなかった場合、前記記録部に前記時刻と同一の時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項11】
前記処理装置は、前記受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有し、
前記推定部は、前記記録部にある同一の時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理を実行しても対象物の存在の有無が推定できなかった場合、前記記録部に記録されたある領域の前記時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域における前記時刻の対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理、もしくは、前記記録部に記録されたある領域の前記時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に記録された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理を実行することを特徴とする請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項12】
前記処理装置は、前記受取部が所定の周期で受け取る検出情報を、領域毎に記録して保持する記録部をさらに有し、
前記推定部は、すべての時刻におけるすべての領域の対象物の存在の有無が推定されるまで、前記記録部に記録されたある領域の第1時刻における検出情報と、その検出情報よりも前に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記第1時刻における対象物の存在の有無を推定する順時判定処理と、前記記録部に第2時刻に記録された複数の領域の検出情報を用いて、任意の領域周囲の領域における対象物の存在の有無を推定する同刻判定処理と、前記記録部に記録されたある領域の第3時刻における検出情報と、その検出情報よりも後に検出された同一領域の検出情報を用いて、その領域の前記第3時刻における対象物の存在の有無を推定する逆時判定処理との3つの判定処理のうち、複数の判定処理を順次実行することを特徴とする請求項1または2に記載の監視システム。
【請求項13】
前記推定部は、順次判定処理、同刻判定処理、逆時判定処理、同刻判定処理の並び順で、繰り返し実行することを特徴とする請求項12に記載の監視システム。
【請求項14】
前記推定部が対象物の存在の有無が推定できなかった場合、前記出力部は、前記出力周期を短く設定することを特徴とする請求項1から13のいずれかに記載の監視システム。
【請求項15】
前記出力部は、前記複数の領域内の対象物の数が多くなるほど、前記出力周期を短く設定することを特徴とする請求項14に記載の監視システム。
【請求項16】
前記処理装置は、出力を要求するための出力要求信号を出力部に通知し、
前記出力部は、通知された出力要求信号に応じて、前記処理装置に検出情報を出力することを特徴とする請求項1から15のいずれかに記載の監視システム。
【請求項17】
前記出力部は、出力要求信号が通知されるまで、前記検出部による検出情報を保持し、前記処理装置から出力要求信号が通知された場合、保持していた検出情報を前記処理装置に出力することを特徴とする請求項16に記載の監視システム。
【請求項18】
複数の領域における人間または動物などの対象物の動きをそれぞれ検出し、検出されたそれぞれの検出情報を所定の周期で記憶し、記憶されたそれぞれの検出情報をもとに、前記複数の領域における対象物の位置を推定することを特徴とする監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−77361(P2008−77361A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−255057(P2006−255057)
【出願日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(593165487)学校法人金沢工業大学 (202)
【Fターム(参考)】