説明

監視装置及び監視方法

【課題】 信号波形に含まれている監視信号波形の振幅を高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができ、監視対象の状態を高い精度で監視することができる監視装置及び監視方法を提供する。
【解決手段】 ステップAでは、監視対象の状態を示す監視信号波形を含む信号波形を検出する。ステップB1では、検出した信号波形を高速フーリエ変換して、フーリエ変換信号を出力する。ステップB2では、フーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を選択する。ステップB3では、選択されたフーリエ変換信号を高速フーリエ逆変換して、フーリエ逆変換信号を出力する。ステップCでは、フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視対象の状態を監視する監視装置及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
装置等の監視対象の状態(例えば、監視対象に異常が発生しているか否か)を監視する監視装置あるいは監視方法として種々の提案がなされている。
例えば、装置の異常の有無を診断する異常診断方法として、特許文献1に記載の異常診断方法が知られている。
特許文献1に記載の異常診断方法は、まず、装置から発生する振動を示す振動データを測定する。次に、測定した振動データを高速フーリエ変換(FFT)することにより、振動データに含まれている複数の周波数成分(周波数スペクトル)を抽出する。そして、抽出した各周波数成分、あるいは、抽出した各周波数成分から正常時に抽出した各周波数成分を差し引いた残留周波数成分に基づき、尖り度、歪み度、波高率や波形率等の時間領域パラメータを識別指標として、装置に異常が発生しているか否か及び異常が発生している箇所を判定する。
また、商用電力系統に接続されているインバータが単独運転状態となったことを検出する単独運転検出方法として、特許文献2に記載の単独運転検出方法が知られている。
特許文献2に記載の単独運転検出方法は、商用電力系統の停電時に、柱上トランスの励磁特性に起因して第3高調波電圧が発生することを利用するものである。すなわち、バンドパスフィルタにより連系点の電圧から第3高調波成分を抽出し、抽出した第3高調波成分を絶対値回路により全波整流した後積分回路で積分し、積分回路の出力をサンプリング回路により一定の周期で検出する。そして、第3高調波成分の検出値が急激に増大した場合に、インバータが単独運転状態にあることを判定する。
【特許文献1】特開2001−318031号公報
【特許文献2】特開平7−154920号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に記載の異常診断方法では、振動データを高速フーリエ変換することによって、振動データに含まれている周波数成分とその振幅を抽出している。ここで、高速フーリエ変換を用いて振動データに含まれている周波数成分を抽出する場合、短時間で振動データから周波数成分を抽出することができるが、周波数に関する情報のみとなり、時間に関する情報が失われる。このため、高速フーリエ変換を用いながら、振動データに含まれている周波数成分の振幅の時間変化を求めるには、振動データを短時間の切り出し区間毎に切り出し、切り出し区間毎の振動データを高速フーリエ変換する(「短時間フーリエ変換」と言う)必要がある。この時、切り出した区間の立ち上がりの部分が「0」から急激に立ち上がることに起因する周波数成分が混入するのを防止するために、通常、切り出し区間の振動データに窓関数がかけられる。
この場合、切り出し区間が短いと、時間分解能は高くなる(周波数成分の抽出時間間隔が短くなる)が、周波数分解能は低下(周波数成分の抽出精度が低下)する。一方、切り出し区間が長いと、周波数分解能は高くなるが、時間分解能は低下する。
したがって、特許文献1に記載の異常診断方法では、振動データに含まれている周波数成分の振幅の時間変化を、高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出するのが困難であり、異常診断の精度がよくない。
また、特許文献2に記載の単独運転検出方法は、バンドパスフィルタ、絶対値回路、積分回路及びサンプリング回路を用いているため、第3高調波成分の時間分解能を高めるには限度がある。なお、特許文献2に記載のバンドパスフィルタ、絶対値回路、積分回路及びサンプリング回路に代えて高速フーリエ変換回路を用いたとしても、前述したように、連系点電圧に含まれている第3高調波成分の振幅の時間変化を、高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出するのが困難である。
本発明が解決しようとする課題は、信号波形に含まれている、監視対象の状態を示す監視信号波形の振幅の時間変化を高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができ、監視対象の状態を高い精度で監視することができる監視装置及び監視方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記課題を解決するための本発明の第1発明は、請求項1に記載の構成を備える監視装置である。
本発明は、監視信号波形を含む信号波形を検出する信号波形検出手段と、信号波形をフーリエ変換してフーリエ変換信号を出力するフーリエ変換手段と、フーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる帯域フィルタと、帯域フィルタを通過したフーリエ変換信号をフーリエ逆変換してフーリエ逆変換信号を出力するフーリエ逆変換手段と、フーリエ逆変換手段から出力されたフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する判定手段を備えている。
本発明で言う「監視信号波形」は、監視対象の状態を示す波形成分で、監視対象における信号波形に含まれるものである。
「信号波形検出手段」は、監視対象の状態を示す監視信号波形が含まれている信号波形、例えば、電力系統に接続されている電機機器の電圧や電流の波形、電力系統の所定地点の電圧や電流の波形、監視対象である機器の振動や発生音等の連続する波形を一定区間切り出して検出する。信号波形検出手段により検出する信号波形の種類や数は、監視対象や監視する状態等に応じて適宜選択される。例えば、1箇所あるいは複数箇所の信号波形を検出する態様、異なる種類の信号波形を検出する態様が用いられる。また、「信号波形検出手段」としては、1箇所の信号波形を検出する信号波形検出手段や複数箇所の信号波形を検出可能な信号波形検出手段を用いることができる。
「フーリエ変換手段」は、信号波形を所定の切り出し区間で切り出し、切り出した信号波形をフーリエ変換する。この切り出し区間の長さは、所望の周波数分解能でフーリエ変換を行うことができる時間間隔に設定される。「フーリエ変換手段」としては、処理速度が速い、高速フーリエ変換を実行する高速フーリエ変換手段(FFT)を用いるのが好ましい。
帯域フィルタの周波数帯域としては、監視信号波形の周波数を中心周波数とする狭帯域を用いるのが好ましい。監視信号波形の周波数は、監視対象や監視する状態等に応じて決定される。周波数帯域の数は、監視対象の状態を判定するために必要な監視信号波形の数に応じて適宜設定される。また、帯域フィルタとしては、1つの周波数帯域のフーリエ変換信号のみを通過させる帯域フィルタを用いてもよいし、複数の周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させることができる帯域フィルタを用いてもよい。
「フーリエ逆変換手段」は、切り出した信号波形をフーリエ変換手段でフーリエ変換したフーリエ変換信号毎にフーリエ逆変換する。「フーリエ逆変換手段」としては、処理速度が速い、高速フーリエ逆変換処理を実行する高速フーリエ逆変換手段(IFFT)を用いるのが好ましい。
判定手段が判定する監視対象の状態としては、異常状態を含めて種々の状態を選択することができる。
フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する方法には、フーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態に基づいて監視対象の状態を判定する方法が含まれる。
フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する方法としては、監視対象や監視する状態等に応じて適宜の方法が用いられる。例えば、フーリエ逆変換信号の振幅あるいは振幅の変化率が判定条件を満足したことにより判定する方法、フーリエ逆変換信号の振幅と信号波形の振幅の比あるいは比の変化率が判定条件を満足したことにより判定する方法を用いることができる。あるいは、フーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態と、予め求めた、監視対象の所定状態時におけるフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態との比較結果(例えば、一致率)により判定する方法を用いることができる。なお、監視対象が異常状態となったことを判定する場合には、監視対象が異常状態に移行した時刻の前後所定期間における特徴部分(異常状態になったことを判別可能な特徴部分)のフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態を予め求めるのが好ましい。また、1つの信号波形から求めた複数のフーリエ逆変換信号それぞれの振幅あるいは振幅の時間変化状態に基づいて判定する方法を用いることができる。さらには、複数の信号波形から求めた複数のフーリエ逆変換信号それぞれの振幅あるいは振幅の時間変化状態に基づいて判定する方法を用いることができる。
なお、判定手段により判定結果の出力方法としては、種々の出力方法を用いることができる。例えば、監視対象が異常状態であることを判定した場合、異常状態となった時刻の前後所定期間におけるフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態をグラフや表の形態で表示手段や印刷手段に出力する方法を用いることができる。また、監視対象や監視対象に関連する機器を制御する制御装置に異常状態判定信号を出力し、所定の制御を実行させる方法を用いることもできる。
また、本発明の第2発明は、請求項2に記載の構成を備える監視装置である。
本発明は、電力線及び電力線に接続された電気機器を有する電力系統における監視対象の状態を監視する。
本発明は、電力系統における監視対象の状態を示す監視信号波形を含む電圧波形あるいは電流波形を信号波形として検出する信号波形検出手段と、検出した信号波形をフーリエ変換してフーリエ変換信号を出力するフーリエ変換手段と、フーリエ変換手段から出力されたフーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる帯域フィルタと、帯域フィルタを通過したフーリエ変換信号をフーリエ逆変換してフーリエ逆変換信号を出力するフーリエ逆変換手段と、フーリエ逆変換手段から出力されたフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する判定手段を備えている。
「信号波形検出手段」は、電力系統における監視対象の状態を示す監視信号波形が含まれている信号波形、例えば、電力系統に接続されている電気機器(例えば、発電機、負荷、遮断器等)の電圧や電流の波形、電力系統の所定地点の電圧や電流の波形を検出する。電力系統における電気機器等の振動の波形や発生音等の波形を検出してもよい。
信号波形検出手段により検出する信号波形の種類や数は、監視対象や監視する状態等に応じて適宜選択される。例えば、1箇所あるいは複数箇所の信号波形を検出する態様、異なる種類の信号波形を検出する態様が用いられる。また、「信号波形検出手段」としては、1箇所の信号波形を検出する信号波形検出手段や複数箇所の信号波形を検出可能な信号波形検出手段を用いることができる。
フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する方法や判定結果の出力方法は、第1発明と同様に種々の判定方法や出力方法を用いることができる。
また、本発明の第3発明は、請求項3に記載の構成を備える監視装置である。
本発明では、帯域フィルタは、フーリエ変換信号の中から、電力系統の基本周波数の整数倍の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる。
「電力系統の基本周波数」は、電力系統の電源周波数(一般的な商用電源系統では、50Hzあるいは60Hz)を意味する。また、「基本周波数の整数倍の周波数を含む周波数帯域」としては、任意の1つの整数倍の周波数を含む周波数帯域を用いてもよいし、任意の連続するあるいは離散的な複数の整数倍の周波数を含む周波数帯域を用いてもよい。
また、本発明の第4発明は、請求項4に記載の構成を備える監視装置である。
本発明では、信号波形検出手段は、複数の監視信号波形を含む信号波形を検出し、帯域フィルタは、フーリエ変換信号の中から、複数の監視信号波形それぞれの周波数を含む複数の周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させ、フーリエ逆変換手段は、帯域フィルタを通過した複数の周波数帯域のフーリエ変換信号をフーリエ逆変換して複数のフーリエ逆変換信号を出力し、判定手段は、フーリエ逆変換手段から出力された複数のフーリエ逆変換信号それぞれの振幅に基づいて監視の状態を判定する。
複数の監視信号波形は、監視対象や監視する状態等に応じて適宜選択される。例えば、電源周波数が50Hzあるいは60Hzである電力系統の監視対象が異常状態であることを監視する場合には、50Hzあるいは60Hzの整数倍の周波数を有する複数の監視信号波形を選択することができる。
また、本発明の第5発明は、請求項5に記載の構成を備える監視装置である。
本発明は、電力線及び電力線に接続された電気機器を有する電力系統における監視対象の状態を監視する。
本発明は、電力系統の複数の監視対象に対応して設けられた複数の検出装置と、処理装置を備えている。
複数の検出装置は、基準時刻信号送信手段から送信された基準時刻信号を受信する受信手段と、対応する監視対象から、監視信号波形を含む電圧波形あるいは電流波形を信号波形として検出し、検出した信号波形を、受信手段で受信した基準時刻信号に対応する時刻信号とともに出力する信号波形検出手段を有している。
処理装置は、複数の検出装置から時刻信号とともに出力された各信号波形をフーリエ変換し、各信号波形それぞれに対応するフーリエ変換信号の組を出力するフーリエ変換手段と、各信号波形それぞれに対応するフーリエ変換信号の組の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる帯域フィルタと、帯域フィルタを通過した、各信号波形それぞれに対応するフーリエ変換信号をフーリエ逆変換し、各信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号を出力するフーリエ逆変換手段と、同じ時刻に、複数の検出装置それぞれで検出された信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する判定手段を有している。
複数の検出装置は、監視対象の状態を判定するために必要な監視信号波形が含まれている信号波形を検出可能に配置される。
受信手段としては、基準時刻信号送信手段から送信された基準時刻信号を受信可能な受信手段が用いられる。例えば、GPS(Global Positioning System)から送信されている基準時刻信号を受信可能なGPS受信手段を用いることができる。
「基準時刻信号に対応する時刻信号」には、基準時刻信号そのものや、各検出装置内で計時され、基準時刻信号により更正される時刻信号が含まれる。
「時刻信号とともに波形信号を出力する」態様としては、処理装置が、各検出装置が検出した波形信号の検出時間を判別可能であればよい。
「同じ時刻に、複数の信号波形検出手段それぞれで検出された信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号」は、同じ時刻に各検出装置が検出した信号波形から、フーリエ変換手段、帯域フィルタ及びフーリエ逆変換手段により取得したフーリエ逆変換信号を意味する。
「同じ時刻に、前記複数の信号波形検出手段それぞれで検出された信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する」方法としては、監視対象や監視する状態等に応じて種々の判定方法を用いることができる。例えば、同じ時刻に検出された信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変化状態を相互に比較し、比較結果に基づいて判定する方法、同じ時刻に検出された信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変化状態が、監視する状態に対応した判定条件を満足することによって判定する方法、同じ時刻に検出された信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変化状態と、監視する状態に対応して予め求めた各フーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変換状態との比較結果(一致率)により判定する方法を用いることができる。
また、本発明の第6発明は、請求項6に記載の構成を備える監視方法である。
本発明は、監視信号波形を含む信号波形を検出するステップ(a)と、検出した信号波形をフーリエ変換してフーリエ変換信号を出力するステップ(b)と、フーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を選択するステップ(c)と、選択したフーリエ変換信号をフーリエ逆変換してフーリエ逆変換信号を出力するステップ(d)と、出力されたフーリエ逆変換信号の振幅と、予め求めた、監視対象の所定状態時におけるフーリエ逆変換信号の振幅との比較結果に基づいて、監視対象の状態を判定するステップ(e)を備えている。
検出する信号波形の種類や数、選択する周波数は、監視対象や監視する状態等に応じて適宜選択される。
周波数帯域は、監視信号波形の周波数を中心周波数とする狭帯域に設定するのが好ましい。
出力されたフーリエ逆変換信号の振幅と、予め求めた、監視対象の所定状態におけるフーリエ逆変換信号の振幅とを比較する方法には、振幅の時間変化状態を比較する方法が含まれる。
また、本発明の第7発明は、請求項7に記載の構成を備える監視方法である。
本発明では、ステップ(d)の後に、信号波形に含まれている複数の監視信号波形それぞれの周波数を含む複数の周波数帯域に対してステップ(c)及びステップ(d)を実行し、複数の周波数帯域それぞれに対応するフーリエ逆変換信号を出力するステップ(f)を設け、ステップ(e)では、ステップ(f)で出力された、複数の周波数帯域それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅と、予め求めた、監視対象が所定状態時における複数の周波数帯域それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅との比較結果に基づいて、監視対象の状態を判定する。
【発明の効果】
【0005】
請求項1に記載の監視装置では、切り出し区間で切り出した(検出された)信号波形をフーリエ変換したフーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を選択し、選択したフーリエ変換信号をフーリエ逆変換している。すなわち、信号波形に含まれている周波数成分のうち、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域の周波数成分を、切り出し区間における振幅の時間変化情報を含んだ状態で取得することができる。これにより、高い時間分解能を維持しながら、切り出し区間を長くして周波数分解能を高くすることができるため、監視信号波形の振幅を高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができ、監視対象の状態を高い精度で監視することができる。
また、本発明は、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号のみをフーリエ逆変換しているため、処理速度を速めることができる。
なお、フーリエ変換手段やフーリエ逆変換手段として高速フーリエ変換手段や高速フーリエ逆変換手段を用いることにより、処理時間をより速めることができる。
請求項2に記載の監視装置を用いれば、請求項1に記載の監視装置と同様に、監視信号波形の振幅を高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができるため、電力系統における監視対象の状態を高い精度で監視することができる。
請求項3に記載の監視装置を用いれば、電力系統の基本周波数の整数倍の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号のみをフーリエ逆変換するため、帯域フィルタの処理が簡単であり、また、処理時間をより速めることができる。
請求項4に記載の監視装置を用いれば、監視対象の状態をより正確に監視することができる。
請求項5に記載の監視装置を用いれば、電力系統の種々の監視対象の状態(例えば、電力系統における高調波の状態)を正確に判定することができる。
請求項6に記載の監視方法を用いれば、監視信号波形の振幅を高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができるため、監視対象の状態を高い精度で監視することができる。
請求項7に記載の監視方法を用いれば、監視対象の状態をより正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
まず、本発明の概要を説明する。
本発明は、信号波形に含まれている、監視対象の状態を示す監視信号波形の振幅あるいは振幅の時間変化状態に基づいて監視対象の状態を監視する。
ここで、監視対象の状態(特に、監視対象が異常状態になったこと)を迅速に判定するためには、監視信号波形の振幅の時間変化状態、すなわち、監視信号波形の非定常スペクトルを解析する必要がある。
本発明では、監視信号波形の振幅を、高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができる非定常スペクトル解析方法を用いている。
【0007】
本発明で用いる非定常スペクトル解析方法の一実施の形態の概念を図1に示す。図1に示す実施の形態では、非定常スペクトル解析方法として、マルチフィルタによる非定常スペクトル解析方法を用いている。
まず、ステップAで、監視信号波形を含む信号波形を検出する。検出する信号波形は、電気機器や電力線の電圧や電流の波形、監視対象から発生される振動や音の波形等、監視対象の状態を示す監視信号が含まれていればよい。
次に、ステップBで、信号波形に含まれている監視信号波形の振幅の時間変化状態を解析する処理、すなわち、非定常スペクトル解析処理を実行する。非定常スペクトル解析処理は、ステップB1〜B3の処理により構成される。
ステップB1では、ステップAで検出した信号波形を所定の切り出し区間毎に切り出し、切り出した信号波形を高速フーリエ変換(FFT)してフーリエ変換信号を得る。
ステップB2では、帯域フィルタによって、ステップB1で得たフーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させ、周波数帯域の周波数を除くフーリエ変換信号を除去する(監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を選択する)。
ステップB3では、ステップB2で選択したフーリエ変換信号を高速フーリエ逆変換(IFFT)してフーリエ逆変換信号を得る。これにより、切り出し区間で切り出した信号波形の中から、時間変化している振幅を有する監視信号波形が抽出される。
次に、ステップCでは、ステップBで抽出した監視信号波形の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する。監視信号波形の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する方法としては、信号波形の種類や数、帯域フィルタの周波数帯域、監視対象や監視する状態等に応じて適宜の判定方法が用いられる。判定方法については、後述する。
【0008】
次に、マルチフィルタによる非定常スペクトル解析方法を具体的に説明する。
図2に示すように、入力信号[f(t)](tは時間)を、異なるシステム関数[H(ω)]を有する帯域フィルタ(バンドパスフィルタ)に同時に入力した場合を考える。システム関数[H(ω)]としては、図3に示すように、中心周波数[ω]で対称な周波数帯域を示すシステム関数を用いている。また、システム関数[H(ω)]を有する帯域フィルタから出力される出力信号を[g(t)]とする。
この場合、出力信号[g(t)]の振幅包絡線の時間変動は、入力信号[f(t)]に含まれている、中心周波数[ω]に対応する周波数帯域の周波数成分の振幅の時間変化を示している。すなわち、帯域フィルタのシステム関数[H(ω)]の中心周波数[ω]を、監視信号波形の周波数に一致させると、帯域フィルタの入力信号[f(t)]に含まれている監視信号波形の周波数と等しい周波数の成分の振幅の時間変化は、帯域フィルタの出力信号[g(t)]の振幅包絡線により求めることができる。
【0009】
ここで、システム関数[H(ω)]を有する帯域フィルタの入力信号[f(t)]、出力信号[g(t)]をフーリエ変換したフーリエ変換信号をそれぞれ[F(ω)]、[H(ω)]とすると、(式1)が成立する。
【数1】

(式1)
したがって、出力信号[gn(t)]は、(式1)をフーリエ逆変換した(式2)によって得ることができる。
【数2】

(式2)
なお、帯域フィルタの時間分解能及び周波数分解能はシステム関数[Hn(ω)]によって決定されるが、帯域フィルタの時間分解能と周波数分解能は互いに相反している。例えば、通過帯域を狭帯域とするシステム関数[Hn(ω)]を用いて帯域フィルタの周波数分解能を高めると、帯域フィルタの応答速度が遅くなる。したがって、帯域フィルタのシステム関数[Hn(ω)]は、必要とする時間分解能や周波数分解能、解析を行う周波数帯域、解析の目的等に応じて適宜設定される。
以下に示す本発明の実施の形態では、システム関数[Hn(ω)]を、(3式)のように設定している。
【数3】

(式3)
なお、α、βは定数である。βは、計算時間を有利にするために導入されたものである。(式3)のシステム関数では、帯域フィルタの周波数帯域幅は、周波数帯によって変化しない。
【0010】
次に、前述した、マルチフィルタによる非定常スペクトル解析方法を用いて、発電機が連系運転状態から単独運転状態になったことを監視する、本発明の一実施の形態の監視装置を説明する。以下では、図4に示す電力系統について説明する。
図4に示す電力系統は、電力線と、電力線に接続されている電気機器(発電機G、Gn、負荷L、遮断器CB1、CBn等)によって構成されている。ここで、遮断器CB1を介して電力線に接続されている発電機Gが、単独運転状態になったことを監視する監視対象である。電力線には、負荷Lが接続されているとともに、遮断器CBnを介して他の発電機Gnが接続されている。すなわち、発電機Gは他の発電機Gnと連系運転状態にある。
本実施の形態では、例えば、遮断器CBnが遮断されて発電機Gと他の発電機Gnとの接続が遮断されることによって、発電機Gが単独運転状態になったことを監視する。
【0011】
ここで、電力系統では、各地点の電圧や電流の波形に含まれている周波数成分は、電力系統の基本周波数(一般的な商用電力系統では、50Hzあるいは60Hz)の波形と、電力系統の基本周波数の整数倍の周波数を有する周波数成分の波形(以下、「高調波波形」という)が大部分を占めている。
また、発電機Gが連系運転状態から単独運転状態になった場合における、発電機の電圧(遮断器CB1より発電機G側の端子電圧)の波形に含まれている高調波波形の各次数別の振幅と発電機の電圧の基本周波数の波形の振幅との比(含有率)の時間変動状態の1例を図6に示す。なお、図6は、時刻[1.1秒]に発電機が単独運転状態に移行した場合のものである。
図6に示すように、発電機が単独運転状態となった時刻[1.1秒]の前後で、高調波波形のうち、第5高調波波形、第7高調波波形、第11高調波波形、第13高調波波形及び全高調波波形それぞれの含有率が急激に低下している。
このように、発電機が単独運転状態になると、高調波波形の波形が図6に示すように時間変動する場合には、発電機の電圧に含まれている高調波波形の中の、第5高調波波形、第7高調波波形、第11高調波波形、第13高調波波形のいずれかあるいは複数あるいは全部の波形の振幅の時間変動状態と発電機の電圧の基本周波数の波形の振幅の時間変動状態の比(含有率)を判定することにより、発電機が単独運転状態になったことを監視することができる。
なお、通常、電力系統の電圧の波形の振幅の平均値は、略一定に制御されている。このため、信号波形として電圧の波形を検出し、発電機が単独運転状態になったことを監視する場合には、電圧の波形に含まれている高調波波形の振幅の含有率の時間変化状態を判定する方法に代えて、電圧の波形に含まれている高調波波形の振幅の時間変化状態を判定する方法を用いることもできる。
【0012】
本実施の形態の監視装置の概略構成図を図5に示す。
本実施の形態の監視装置は、波形検出装置10、処理装置20、記憶装置30、出力装置40を有している。
波形検出装置10は、監視対象の状態を示す監視信号波形を含む信号波形を検出する。本実施の形態では、波形検出装置10は、発電機Gの端子電圧の波形を検出する。
処理装置20は、波形解析手段21と判定手段22を有している。また、波形解析手段21は、高速フーリエ変換手段21a、帯域フィルタ21b、高速フーリエ逆変換手段21cを有している。高速フーリエ変換手段21a、帯域フィルタ21b、高速フーリエ逆変換手段21c及び判定手段22は、ソフトウェアで構成することもできるし、ハードウェアで構成することもできる。例えば、各手段の処理を1台の処理装置(CPU)で実行させてもよいし、各手段の処理を複数の処理装置(CPU)それぞれで実行させてもよい。
記憶装置30には、各手段が実行するプログラムや、監視対象の状態を判定するために予め求めたフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態(基準時間変化状態)や、随時取得したフーリエ逆変換信号等が記憶される。
出力装置40としては、判定手段22での判定結果をグラフや表の形態で出力する表示装置や印刷装置、端末装置等が用いられる。また、出力装置40としては、監視対象(本実施の形態では、発電機G)が単独運転状態となった時に所定の制御を行う制御装置を用いることもできる。
【0013】
本実施の形態では、発電機Gは本発明の「電力線に接続された電気機器」に対応し、本発明の「電力系統における監視対象」であり、波形検出装置10が本発明の「信号波形検出手段」に対応し、高速フーリエ変換手段21aが本発明の「フーリエ変換手段」に対応し、帯域フィルタ21bが本発明の「帯域フィルタ」に対応し、高速フーリエ逆変換手段21cが本発明の「フーリエ逆変換手段」に対応し、判定手段22が本発明の「判定手段」に対応し、発電機Gの単独運転状態または連系運転状態が本発明の「監視対象の状態」に対応する。
【0014】
高速フーリエ変換手段21aは、波形検出装置10で検出された信号波形を高速フーリエ変換して、フーリエ変換信号を出力する。本実施の形態では、高速フーリエ変換手段21aは、波形検出装置10で検出した発電機Gの端子電圧の波形を切り出し区間毎に切り出し、切り出した電圧の波形を高速フーリエ変換して、フーリエ変換信号を出力する。このフーリエ変換信号は、例えば、記憶装置30に記憶される。
帯域フィルタ21bは、高速フーリエ変換手段21aで高速フーリエ変換されたフーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過(選択)させる。監視信号波形の周波数は、監視対象や監視する状態等に応じて決定される。本実施の形態では、系統連系時の高調波の状態に対して、発電機が単独運転状態となったことを示す高調波の状態を予め知っておくことで、監視信号波形の周波数を決定することができる。また、本実施の形態では、帯域フィルタ21bは、発電機Gの電圧の波形に含まれている高調波波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる。
なお、帯域フィルタ21bの周波数帯域としては、高調波波形の周波数を中心周波数とする狭帯域に設定するのが好ましい。
また、本実施の形態では、帯域フィルタ21bの周波数帯域は、電力系統の基本周波数(例えば、50Hzあるいは60Hz)の整数倍の周波数(高調波波形の周波数)を含む周波数帯域に設定される。さらに、帯域フィルタ21bの周波数帯域は、監視対象あるいは監視する状態等に応じて適宜設定される。例えば、発電機が単独運転状態になると、高調波波形の含有率が図6に示すように時間変動する場合には、第5高調波波形、第7高調波波形、第11高調波波形、第13高調波波形それぞれの周波数を含む周波数帯域のいずれかあるいは複数あるいは全部が設定される。
高速フーリエ逆変換手段21cは、帯域フィルタ21bを通過したフーリエ変換信号(帯域フィルタ21bに設定されている周波数帯域のフーリエ変換信号)を高速フーリエ逆変換して、フーリエ逆変換信号を出力する。この場合、前述したように、高速フーリエ逆変換手段から出力される、帯域フィルタ21bの周波数帯域に対応するフーリエ逆変換信号の振幅の時間変動は、信号波形に含まれている監視信号波形の振幅の時間変動状態を示している。本実施の形態では、帯域フィルタ21cに設定されている、高調波波形の周波数に対応する周波数帯域を通過したフーリエ変換信号の時間変動は、当該周波数帯域の周波数に対応する高調波波形の時間変動を示している。
【0015】
なお、帯域フィルタ21bによって複数の周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる場合には、各周波数帯域それぞれが設定されている帯域フィルタを用いてもよいし、複数の周波数帯域を設定可能な帯域フィルタを用いてもよい。複数の周波数帯域を設定可能な帯域フィルタを用いる場合には、帯域フィルタに設定されている周波数帯域のフーリエ変換信号の選択処理と、選択されたフーリエ変換信号のフーリエ逆変換処理(図1のステップB2及びB3の処理)を、周波数帯域毎に繰り返すことにより、各周波数帯域に対応するフーリエ逆変換信号を得る。
【0016】
判定手段22は、高速フーリエ逆変換手段21cから出力されたフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する。
判定手段22での、フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判別する態様には、フーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態に基づいて監視対象の状態を判定する態様も含まれる。
また、判定手段で判定する監視対象の状態には、監視対象が異常状態にあること、監視対象が異常状態になったこと、監視対象の劣化状態等の異常に関する状態だけでなく、系統の接続状態等の正常時に発生する状態が含まれる。
【0017】
判定手段22により、フーリエ逆変換の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する判定方法としては、監視対象や監視する状態等に応じて種々の判定方法が用いられる。
判定方法を決定する場合には、監視対象及び監視する状態(以下、「監視状態」という)に対して、監視対象の監視状態を示す信号波形(例えば、正常時の信号波形)を選択するとともに、監視対象の監視状態時における信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅の時間変動状態を予め求める。
そして、求めたフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態を基準時間変化状態とし、抽出したフーリエ逆変換の振幅の時間変化状態が基準時間変化状態と一致するか否かによって判定する第1の判定方法か、求めたフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態から判定条件を決定し、抽出したフーリエ逆変換信号の振幅あるいは振幅の変化率が判定条件を満足するか否かによって判定する第2の判定方法を用いるかを決定する。
なお、第1の判定方法は、処理量は多いが判定精度は高い。一方、第2の判定方法は、処理量は少ないが判定精度は第1の判定方法に比べて低い。第1の判定方法を用いるか第2の判定方法を用いるかは、監視対象、監視状態、処理時間、監視精度等に応じて選択される。
【0018】
第1の判定方法では、求めたフーリエ逆変換信号の振幅の時間変動状態の中から、監視対象の状態の判定が容易な特徴部分の時間変動状態を基準時間変動状態として記憶装置30に記憶させる。この場合、記憶装置30に記憶させるフーリエ逆変換信号の基準時間変動状態は、監視対象の1つの監視状態に対応する基準時間変動状態だけを記憶させてもよいし、監視対象の複数の監視状態それぞれに対応する複数の基準時間変動状態を記憶させてもよい。
そして、監視対象の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態と、記憶装置30に記憶されているフーリエ逆変換信号の基準時間変動状態とを比較し、比較結果に基づいて(例えば、フーリエ逆変換信号の振幅の時間変動状態の一致率に基づいて)、監視対象の状態を判定する。なお、記憶装置30に監視対象の複数の監視状態それぞれに対応する複数の基準時間変動状態を記憶させている場合には、記憶装置30に記憶されている基準時間変動状態のいずれに一致するかを判定する。
例えば、発電機が単独運転状態になったことを監視する場合、発電機が単独運転状態になると、高調波波形の振幅の含有率が図6に示すように時間変動する時には、発電機が単独運転状態になったことを判別可能な特徴部分の第5高調波波形、第7高調波波形、第11高調波波形、第13高調波波形それぞれの振幅のいずれかあるいは複数あるいは全部の時間変化状態を基準時間変化状態として記憶装置30に記憶させる。そして、発電機の電圧の波形から抽出した、帯域フィルタ21bに設定されている、高調波波形の周波数帯域に対応するフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態が、記憶装置30に記憶されているフーリエ逆変換信号の振幅の基準時間変動状態と一致していることを判別することにより、発電機が単独運転状態に移行したことを判定する。勿論、高調波波形の振幅と信号波形の比(含有率)の時間変動状態が一致していることを判別する方法を用いることもできる。
【0019】
第2の判定方法では、求めたフーリエ逆変換信号の振幅の時間変動状態に基づいて、監視対象が監視状態にあることを判定するための判定条件を決定し、記憶装置30に記憶させる。
判定条件としては、監視対象が監視状態となる可能性があること、あるいは、監視対象が監視状態となったことを判定可能な判定条件が設定される。判定条件としては、例えば、フーリエ逆変換信号の振幅に関する判定条件あるいはフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態に関する判定条件を設定することができる。
例えば、監視対象の監視状態に対応させて、フーリエ逆変換信号の振幅の上限判定値や下限判定値を設定することができる。この場合には、監視対象の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅が、上限判定値以上となったこと、あるいは、下限判定値以下となったことを判別することにより、監視対象が監視状態となる可能性があること、あるいは、監視対象が監視状態となったことを判定する。
あるいは、監視対象の監視状態に対応させて、フーリエ逆変換信号の振幅の増加率判定値や減少率判定値を設定することができる。この場合には、監視対象の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅の変化率が、増加率判定値以上の増加率で増加したこと、あるいは、減少率判定値以上の減少率で減少したことにより、監視対象が監視状態となる可能性があること、あるいは、監視対象が監視状態となったことを判定する。
あるいは、監視対象の監視状態に対応させて、フーリエ逆変換信号の振幅と信号波形の振幅との比(含有率)の上限判定値、下限判定値、増加率判定値、減少率判定値を設定することができる。この場合には、監視対象の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅と信号波形の振幅との比(含有率)が、上限判定値以上となったこと、あるいは、下限判定値以下となったこと、監視対象の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅と信号波形の振幅との比(含有率)の変化率が、増加率判定値以上の増加率で増加したこと、あるいは、減少率判定値以上の減少率で減少したことにより、監視対象が監視状態となる可能性があること、あるいは、監視対象が監視状態となったことを判定する。
あるいは、フーリエ逆変換信号の振幅あるいは含有率に対する上限判定値あるいは下限判定値と増加率判定値あるいは減少率判定値を設定することができる。
また、監視対象が監視状態にあることを判定する判定方法としては、所定の1つの周波数帯域に対応するフーリエ逆変換信号の振幅が判定条件を満足しているか否かを判定する方法を用いることもできるし、複数の周波数帯域に対応する複数のフーリエ逆変換信号の振幅がそれぞれの判定条件を満足しているか否かを判定する方法を用いることもできる。
さらに、複数の信号波形それぞれから抽出したフーリエ逆変換信号の振幅が判定条件を満足しているか否かを判定する方法を用いることもできる。
【0020】
判定手段22は、フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて判定した判定結果を出力装置40に出力することができる。
例えば、監視対象が異常状態になったことを判定した場合には、監視対象が異常状態になった時刻の前後所定期間のフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態を、出力装置40として用いられている表示装置や印刷装置あるいは端末装置に出力し、グラフや表の形態で出力させる。
あるいは、監視対象の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態を時間信号とともに記憶装置30に記憶させておき、必要な場合に、指示された期間のフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態を記憶装置30から読み出し、出力装置として用いられている表示装置、印刷装置、端末装置に出力する。
あるいは、出力装置40として用いられている報知装置に異常発生信号等の状態信号を出力し、光や音による報知情報を出力させる。あるいは、制御装置に異常発生信号等の状態信号を出力し、監視対象や監視対象に関連する設備を制御させる。
【0021】
以上のように、本実施の形態の監視装置では、監視信号波形を含む信号波形を高速フーリエ変換してフーリエ変換信号を出力し、フーリエ変換信号の中から、監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を選択し、選択したフーリエ変換信号を高速フーリエ逆変換してフーリエ逆変換信号を出力し、フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を監視している。
これにより、切り出し区間が長くても高い時間分解能を得ることができるため、監視信号波形の振幅を高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができる。したがって、監視対象の状態を正確、迅速に監視することができる。
また、監視信号波形の周波数を有する周波数帯域のフーリエ変換信号のみを高速フーリエ逆変換するため、処理負担が軽減され、処理時間が速くなる。
また、オンラインで監視対象の状態を判別することができる。
【0022】
以上では、発電機の電圧の波形を信号波形として検出したが、発電機の電流の波形を検出することもできる。電流の波形を信号波形として検出する場合には、電流の波形の振幅が、負荷変動等によって変動するため、電流の波形に含まれている高調波波形の振幅に基づいて監視対象の監視状態を判定する判定方法としては、電流の波形の振幅が変動することを考慮して設定する必要がある。
例えば、高調波波形の振幅に対する判定条件と、高調波波形の振幅と電圧の波形の振幅との比(含有率)に対する判定条件を設定し、両判定条件が満足されたことにより監視対象の状態を判定する方法を用いる。
監視対象や監視状態によっては、電圧の波形よりも電流の波形を信号波形として検出する方が監視対象の状態を監視し易い場合もある。
【0023】
以上の実施の形態では、1箇所で検出した信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を監視したが、複数箇所で検出した信号波形それぞれから抽出したフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を監視することもできる。
本発明を、複数箇所で検出した信号波形に基づいて監視対象の状態を監視する監視装置として構成した他の実施の形態を説明する。
以下では、図7に示す電力系統について説明する。
図7に示す電力系統は、電力線と、電力線に接続されている電気機器(発電機G1、G2、負荷L、遮断器CB1、CB2等)によって構成されている。本実施の形態では、電力系統の地点X1、X2、X3に対応して検出装置111、112、113が設けられ、検出装置111、112、113により検出した地点X1、X2、X3それぞれの電圧から抽出した、高調波波形の周波数に対応するフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて、電力系統の監視対象の状態が監視できる。例えば、高調波を発生する機器の起動時等に高調波が発生し、別の地点の力率調整用コンデンサ等に高調波が流入している場合、複数の地点で同時検出することによって、力率調整用コンデンサ等に流入する高調波が主にどの機器から発生しているかを監視することができる。あるいはまた、地点X1、X2、X3の間の電力線の短絡故障や地絡故障が監視できる。
ここで、複数の地点の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号に基づいて監視対象の状態を監視するには、同じ時刻に複数の地点から検出した信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号を判別する必要がある。そこで、本実施の形態では、基準時刻信号送信装置から送信される基準時刻信号を受信可能な受信装置を設け、複数の地点の電圧の波形を基準時刻信号により管理するように構成している。
【0024】
本実施の形態の監視装置の概略構成図を図8に示す。
本実施の形態は、地点X1、X2、X3に対応して設けられた検出装置111、112、113、処理装置120、記憶装置130、出力装置140を備えている。
検出装置111〜113は、波形検出装置111a〜113aと、GPS受信装置111b〜113bを有している。
GPS受信装置111b〜113bは、GPSから送信される基準時刻信号を受信する。なお、基準時刻信号受信装置は、基準時刻信号送信装置から送信される基準時刻信号を受信することができればよく、GPS受信装置に限定されない。
波形検出装置111a〜113aは、地点X1〜X3の電圧の波形を検出する。地点X1〜X3の電圧の波形には、監視信号波形としての、電力系統の基本周波数の整数倍の周波数の波形(高調波波形)が含まれている。なお、監視対象や監視状態によっては、電圧の波形よりも電流の波形を信号波形として検出する方が監視対象の状態を監視し易い場合もある。そして、検出した地点X1〜X3の電圧の波形を、GPS受信装置111b〜113bで受信した基準時刻信号に対応する時刻信号とともに処理装置120に出力する。
基準時刻信号に対応する時刻信号としては、基準時刻信号そのものを用いてもよいし、各検出装置111〜113に設けられ、基準時刻信号送信手段から送信される基準時刻信号により更正される時刻信号を用いてもよい。これにより、各検出装置111〜113の波形検出装置111a〜113aで検出された電圧の波形を、共通の基準時刻に基づいて管理することができる。
また、電圧の波形を時刻信号とともに送信する方法としては、処理装置120が、波形検出装置111a〜113aから出力された電圧の波形を検出した時刻が判別可能な方法であればよく、種々の方法を用いることができる。
【0025】
処理装置120は、図5に示した処理装置20と同様に、波形解析手段121と判定手段122を有している。また、波形解析手段121は、高速フーリエ変換手段121a、帯域フィルタ121b、高速フーリエ逆変換手段121cを有している。各手段121a〜121c及び122は、ソフトウェアで構成することもできるし、ハードウェアで構成することもできる。
記憶装置130には、各手段が実行するプログラムや、予め求めたフーリエ逆変換信号の振幅の時間変化状態(基準時間変化状態)や、随時取得したフーリエ逆変換信号等が記憶される。
出力装置140としては、表示装置、印刷装置、端末装置、また、異常時に所定の制御を行う制御装置を用いることができる。
【0026】
本実施の形態では、検出装置111〜113が本発明の「検出装置」に対応し、波形検出装置111a〜113aが本発明の「信号波形検出手段」に対応し、GPS受信装置111b〜113bが本発明の「受信手段」に対応し、高速フーリエ変換手段121aが本発明の「フーリエ変換手段」に対応し、帯域フィルタ121bが本発明の「帯域フィルタ」に対応し、高速フーリエ逆変換手段121cが本発明の「フーリエ逆変換手段」に対応し、判定手段122が本発明の「判定手段」に対応する。
【0027】
高速フーリエ変換手段121aは、例えば、図5に示した高速フーリエ変換手段21aと同様の方法を用いて、検出装置111〜113の波形検出装置111a〜113aそれぞれで検出された地点X1〜X3の電圧の波形を切り出し区間毎に切り出し、切り出した電圧の波形を高速フーリエ変換し、各地点の電圧の波形に対応する(各信号波形に対応する)フーリエ変換信号の組を出力する。この時、検出装置111〜113から、検出した電圧の波形とともに出力された時刻信号に基づいて、切り出した区間の電圧の波形の検出時刻を管理する。
なお、検出装置111〜113から、切り出し区間毎の電圧の波形を時刻信号とともに出力する方法を用いることもできる。この場合には、切り出し区間毎の電圧の波形の検出時刻の管理が容易となる。
帯域フィルタ121bは、例えば、図5に示した帯域フィルタ21bと同様の方法を用いて、高速フーリエ変換手段121aから出力された、各地点の電圧の波形に対応するフーリエ変換信号の組の中から、監視信号波形である高調波波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過(選択)させる。帯域フィルタ121bの周波数帯域は、監視対象や監視状態等に応じて適宜設定される。
高速フーリエ逆変換手段121cは、図5に示した高速フーリエ逆変換手段21cと同様の方法を用いて、帯域フィルタ121bを通過した、各地点の電圧の波形に対応する(各信号波形に対応する)フーリエ変換信号を高速フーリエ逆変換して、フーリエ逆変換信号を出力する。
なお、フーリエ逆変換信号を記憶装置130に記憶させる場合には、フーリエ逆変換信号を抽出した電圧の波形を検出した時刻情報(切り出した電圧の波形を検出した時刻情報)をフーリエ逆変換信号とともに記憶させる。これにより、同じ時刻に検出された信号波形に対応するフーリエ逆変換信号を容易に判別することができる。
【0028】
判定手段122は、同じ時刻に、検出装置111〜113の波形検出装置111a〜113aそれぞれで検出された地点X1〜X3の電圧の波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する。
同じ時刻に検出された電圧の波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を判定する方法としては、監視対象や監視状態等に応じて種々の判定方法を用いることができる。
例えば、同じ時刻に検出された電圧の波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変化状態を相互に比較し、比較結果が予め定めた比較結果に一致することによって判定する方法を用いることができる。あるいは、同じ時刻に検出された電圧の波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変化状態が、予め定めた判定条件を満足することによって判定する方法を用いることができる(例えば、高調波の状態の判定の場合)。あるいは、同じ時刻に検出された電圧または電流の波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変化状態が、監視対象の所定状態時に予め求めた各フーリエ逆変換信号それぞれの振幅や振幅の時間変化状態に一致することによって判定する方法を用いることができる(例えば、電力線の短絡故障や地絡故障の判定の場合)。あるいは、同じ時刻に検出された電流の波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号それぞれの振幅の時間変化状態を相互に比較し、振幅の時間変化状態が一致することによって、一方の監視対象の監視状態と他方の監視対象の監視状態が関連していることを判定できる(例えば、高調波の状態の判定の場合)。
【0029】
以上のように、本実施の形態の監視装置では、切り出し区間が長くても監視信号波形の振幅を高い時間分解能で取得することができるため、監視信号波形の振幅を高い周波数分解能及び高い時間分解能で検出することができる。したがって、監視対象の状態を正確に監視することができる。
また、同じ時刻に検出した複数の信号波形から抽出したフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて監視対象の状態を監視しているため、監視対象の種々の状態をより正確に監視することができる。
また、各検出装置に、基準時刻信号送信手段から送信される基準時刻信号を受信する受信手段を設けるだけで、各検出装置での電圧の波形の検出時刻を共通の時刻によって管理することができる。さらに、既存の基準時刻信号送信手段から送信されている基準時刻信号を受信する受信手段を用いることにより、検出装置を安価に構成することができる。
【0030】
本発明は、実施の形態で説明した構成に限定されず、種々の変更、追加、削除が可能である。
例えば、電力系統の監視対象の状態を監視する場合について説明したが、本発明は、電力系統の監視対象の状態に限定されず、種々の監視対象の状態を監視するために用いることができる。
また、信号波形として電力系統の電圧の波形や電流の波形を用いたが、信号波形としては、監視対象の状態を示す監視信号波形が含まれていればよく、電圧の波形や電流の波形以外の種々の信号波形を用いることができる。
また、複数の検出装置それぞれに基準時刻信号を受信する受信手段を設けたが、各検出装置に、監視対象の監視に影響がない程度の精度を有する時刻検出手段が設けられている場合には、この受信手段を省略することができる。
また、発電機が単独運転状態になったことを監視する場合について説明したが、本発明は、これ以外の種々の監視対象の種々の状態を監視することができる。
また、フーリエ変換手段及びフーリエ逆変換手段として、高速フーリエ変換手段及び高速フーリエ逆変換手段を用いたが、他のフーリエ変換手段やフーリエ逆変換手段を用いることもできる。
また、判定方法としては、監視対象や監視状態等に応じた種々の判定方法を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施の形態の概要を説明する図である。
【図2】マルチフィルタの構成を示す図である。
【図3】帯域フィルタの特性を示す図である。
【図4】発電機が単独運転状態になったことを監視する場合の概略図である。
【図5】本発明の監視装置の一実施の形態の概略構成図である。
【図6】発電機が単独運転状態となった前後の高調波成分の時間変化状態を示す図である。
【図7】電力系統の状態を監視する場合の概略図である。
【図8】本発明の監視装置の他の実施の形態の概略構成図である。
【符号の説明】
【0032】
10、11a、112a、113a 波形検出装置(信号波形検出手段)
20、120 監視装置(監視手段)
21、121 波形解析手段
21a、121a 高速フーリエ変換手段
21b、121b 帯域フィルタ
21c、121c 高速フーリエ逆変換手段
22、122 判定手段
30、130 記憶装置
40、140 出力装置
111b、112b、113b GPS受信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象の状態を監視する監視装置であって、
前記監視対象の状態を示す監視信号波形を含む信号波形を検出する信号波形検出手段と、
前記信号波形検出手段で検出された信号波形をフーリエ変換してフーリエ変換信号を出力するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段から出力された前記フーリエ変換信号の中から、前記監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる帯域フィルタと、
前記帯域フィルタを通過した前記周波数帯域のフーリエ変換信号をフーリエ逆変換してフーリエ逆変換信号を出力するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段から出力された前記フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて前記監視対象の状態を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項2】
電力線及び電力線に接続された電気機器を有する電力系統における監視対象の状態を監視する監視装置であって、
前記電力系統における前記監視対象の状態を示す監視信号波形を含む電圧波形あるいは電流波形を信号波形として検出する信号波形検出手段と、
前記信号波形検出手段で検出された信号波形をフーリエ変換してフーリエ変換信号を出力するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段から出力された前記フーリエ変換信号の中から、前記監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる帯域フィルタと、
前記帯域フィルタを通過した前記周波数帯域のフーリエ変換信号をフーリエ逆変換してフーリエ逆変換信号を出力するフーリエ逆変換手段と、
前記フーリエ逆変換手段から出力された前記フーリエ逆変換信号の振幅に基づいて前記監視対象の状態を判定する判定手段と、
を備えることを特徴とする監視装置。
【請求項3】
請求項2に記載の監視装置であって、
前記帯域フィルタは、前記フーリエ変換手段から出力された前記フーリエ変換信号の中から、電力系統の基本周波数の整数倍の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる、
ことを特徴とする監視装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の監視装置であって、
前記信号波形検出手段は、前記監視対象の状態を示す複数の監視信号波形を含む信号波形を検出し、
前記帯域フィルタは、前記フーリエ変換手段から出力された前記フーリエ変換信号の中から、前記複数の監視信号波形それぞれの周波数を含む複数の周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させ、
前記フーリエ逆変換手段は、前記帯域フィルタを通過した前記複数の周波数帯域のフーリエ変換信号をフーリエ逆変換して複数のフーリエ逆変換信号を出力し、
前記判定手段は、前記フーリエ逆変換手段から出力された前記複数のフーリエ逆変換信号それぞれの振幅に基づいて前記監視対象の状態を判定する、
ことを特徴とする監視装置。
【請求項5】
電力線及び電力線に接続された電気機器を有する電力系統における監視対象の状態を監視する監視装置であって、
電力系統の複数の監視対象それぞれに対応して設けられた複数の検出装置と、処理装置を備え、
前記複数の検出装置は、
基準時刻信号送信装置から送信された基準時刻信号を受信する受信手段と、
それぞれに対応する監視対象の状態を示す監視信号波形を含む電圧波形あるいは電流波形を信号波形として検出し、検出した信号波形を、前記受信手段で受信した基準時刻信号に対応する時刻信号とともに出力する信号波形検出手段を有し、
前記処理装置は、
前記複数の検出装置から時刻信号とともに出力された各信号波形をフーリエ変換し、各信号波形それぞれに対応するフーリエ変換信号の組を出力するフーリエ変換手段と、
前記フーリエ変換手段から出力された、各信号波形それぞれに対応するフーリエ変換信号の組の中から、前記監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を通過させる帯域フィルタと、
前記帯域フィルタを通過した、各信号波形それぞれに対応する、前記周波数帯域のフーリエ変換信号をフーリエ逆変換し、各信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号を出力するフーリエ逆変換手段と、
同じ時刻に、前記複数の信号波形検出手段それぞれで検出された信号波形それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅に基づいて前記複数の監視対象の状態を判定する判定手段を有する、
ことを特徴とする監視装置。
【請求項6】
監視対象の状態を監視する監視方法であって、
前記監視対象の状態を示す監視信号波形を含む信号波形を検出するステップ(a)と、
前記ステップ(a)で検出した信号波形をフーリエ変換してフーリエ変換信号を出力するステップ(b)と、
前記ステップ(b)で出力されたフーリエ変換信号の中から、前記監視信号波形の周波数を含む周波数帯域のフーリエ変換信号を選択するステップ(c)と、
前記ステップ(c)で選択した前記周波数帯域のフーリエ変換信号をフーリエ逆変換してフーリエ逆変換信号を出力するステップ(d)と、
前記ステップ(d)で出力された前記周波数帯域のフーリエ逆変換信号と、予め求めた、前記監視対象の所定状態時における記周波数帯域のフーリエ逆変換信号の振幅を比較し、比較結果に基づいて前記監視対象の状態を判定するステップ(e)と、
を備えることを特徴とする監視方法。
【請求項7】
請求項6に記載の監視方法であって、
前記ステップ(d)の後に、信号波形に含まれている複数の監視信号波形それぞれの周波数を含む複数の周波数帯域に対して前記ステップ(c)及びステップ(d)を実行し、前記複数の周波数帯域それぞれのフーリエ逆変換信号を出力するステップ(f)を設け、
前記ステップ(e)では、ステップ(f)で出力された、前記複数の周波数帯域それぞれに対応するフーリエ逆変換信号と、予め求めた、前記監視対象の所定状態時における前記複数の周波数帯域それぞれに対応するフーリエ逆変換信号の振幅を比較し、比較結果に基づいて前記監視対象の状態を判定する、
ことを特徴とする監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−50732(P2006−50732A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−226345(P2004−226345)
【出願日】平成16年8月3日(2004.8.3)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【Fターム(参考)】