目の形態分類マップ
【課題】目の形態特徴分析法と、メーキャップによる形態操作法とを統合する美容ツールを提供する。
【解決手段】上下まぶたによって形成される眼裂の輪郭形状であって眼裂の上下径と左右径の比率で特定される目のフレーム形態と、瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状で特定される目のフォルム形態と、目頭を通る水平線と目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度で特定される目の角度形態の3つの目の形態において、被分類対象者の目の形態を標準バランスの目の形態と対比し、前記3つの形態における両者のそれぞれの乖離を求め、標準バランスの目と被分類対象者の目とのフレーム形態における乖離の程度に基づいて被分類対象者の目のフレーム形態を配置するフレーム軸と、標準バランスの目と被対象者の目とのフォルム形態との対比に基づいて被分類対象者の目のフォルム形態を配置するフォルム軸とからなり、両軸を互いに直交して設けた図表からなることを特徴とする。
【解決手段】上下まぶたによって形成される眼裂の輪郭形状であって眼裂の上下径と左右径の比率で特定される目のフレーム形態と、瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状で特定される目のフォルム形態と、目頭を通る水平線と目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度で特定される目の角度形態の3つの目の形態において、被分類対象者の目の形態を標準バランスの目の形態と対比し、前記3つの形態における両者のそれぞれの乖離を求め、標準バランスの目と被分類対象者の目とのフレーム形態における乖離の程度に基づいて被分類対象者の目のフレーム形態を配置するフレーム軸と、標準バランスの目と被対象者の目とのフォルム形態との対比に基づいて被分類対象者の目のフォルム形態を配置するフォルム軸とからなり、両軸を互いに直交して設けた図表からなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、目をその形態に基づいて分類する方法、該分類された目の形態をまとめて表示する目の形態マップ及び目の形態別に適用して標準バランスの目に近づけ得るようにした目の化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アイメーキャップ法、すなわち目の化粧法への関心が高まっており、メーキャップ用の化粧品及び用具と共に化粧方法に関する情報が種々の美容雑誌、或いは一般雑誌等に紹介されている。しかしながら、従来提案されている目の化粧法は、目のみを取り出して目の特徴を把握しつつ目のみに化粧を適用しようとするものではなく、顔全体とのバランスにおいて目に注目するものであるにすぎない。このような、顔全体の中で目に注目した化粧法は、例えば、特開平10−289322号公報、特開2000−14661公報等に開示されている。
【0003】
目の形態特徴を切り口とした情報は、メーキャップにおける演出の重要な要素であり、大きくぱっちりとしたという形態特徴をもつ目に憧れが集中している状況にも関わらず極めて少ない。僅かに、一重や奥二重、目尻が下がったなどの大まかな特徴を把握し、これらの特徴をネガティブな特徴として抽出し、それらを解決するための化粧法を、ケース バイ ケースで示すにとどまっている。
【0004】
目を形態特徴に基づいて分類することは、個々人の目の特徴を把握し、その特徴に応じて、メーキャップの施し方を決定するために不可欠である。しかし現状では、人類学において人種特徴を記述するための上まぶたの分類はあるものの、より詳細な要素をとりあげ、かつ、系統的に分類する方法を示したものはない。更に、目の化粧法と結びつく形での、目の形態特徴の分類は提案されていない。又、ケース バイ ケースでのメーキャップ法では、個々に異なる目を魅力的に演出する方法を見つけるのは困難であり、試行錯誤しながら個々の化粧対象者に適応するアイメーキャプを施しているに過ぎず、トライ&エラーの繰り返しとなり、非効率的である。美容技術者の技術の向上においても、整理された分析法と、メーキャップ法がないため、経験が重要な要素となっている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−289322号公報
【特許文献2】特開2000−014661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、目の形態特徴に着目し、目の形態タイプに従った分類法を提案し、又該分類法によって分類された目のタイプ別に、的確、かつ迅速に大きく、バランスを整え、魅力的な演出をするための目の化粧法を提供することを課題とし、更に目の形態特徴分析法と、メーキャップによる形態操作法とを統合する美容ツールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためにこの発明が採った手段は、上下まぶたのまつげの生え際を目安とする上下まぶたによって形成される眼裂の輪郭形状であって眼裂の上下径と左右径の比率で特定される目のフレーム形態と、瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状で特定される目のフォルム形態と、目頭を通る水平線と目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度で特定される目の角度形態の3つの目の形態において、被分類対象者の目の形態を標準バランスの目の形態と対比し、前記3つの形態における両者のそれぞれの乖離を求め、標準バランスの目と被分類対象者の目とのフレーム形態における乖離の程度に基づいて被分類対象者の目のフレーム形態を配置するフレーム軸と、標準バランスの目と被対象者の目とのフォルム形態との対比に基づいて被分類対象者の目のフォルム形態を配置するフォルム軸とからなり、両軸を互いに直交して設けた図表からなることを特徴とする。
【0008】
フレーム軸とフォルム軸で仕切られる各象限内に、角度形態の軸をそれぞれ配置した目の形態分類マップを用いることを特徴とする。
【0009】
フレーム軸とフォルム軸の交点に、標準バランスの目の形態を位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、目の形態をフレーム形態、フォルム形態及び角度形態の指標を利用して、タイプ別に的確に分類することができ、標準バランスの目の形態を中心に位置させたマップに構成することができ、特定の顧客の目の形態をマップ上に位置付けて、その顧客の目の形態特徴を容易、かつ確実に把握、確認することが可能となる。又、標準バランスの目の形態との差異を容易に確認できるため、差異を緩和させるようなアイメーキャップの施し方を直ちに把握し、標準バランスの目に近づけ、目を大きく、バランスを整えて見せ、魅力的な演出をするための目の化粧法を経験則によらず、的確に提供することができる。更に目の形態特徴分析法と、メーキャップによる形態操作法とを示す複合的な美容ツールを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。この発明は、目の形態特徴を眼裂の形状を示すフレーム軸、目の凹凸形状を示すフォルム軸、目の角度形態を示す角度軸及び標準バランスの目の形態の4つの要素を指標として、分類するようにしたことを特徴とする。又、該分類された目の形態特徴を、視覚的に認識可能とした図表(マップ)上に配置し、該マップ上に特定の個人の目の形態を位置付けて、特定の個人の目の形態特徴を容易に把握し、目の化粧を施す際に資する美容ツールを提供することを特徴とする。更に、分類され把握された被化粧対象者の目の形態を、標準バランスの目の形態と対比して、標準バランスの目の形態に近づけて、目を大きく見せるとともに均整を整えて魅力的に見せるアイメーキャップ法を提供することを特徴とするものである。
【0012】
フレーム形態は、まつげの生え際を目安とする上下まぶたによってできる眼裂の輪郭形状であり、フレーム軸は眼裂の上下径と左右径の比率に従って軸上に配列したものである。フレーム軸は、例えば垂直軸として設けられ、後述する標準バランスの目の形態をフレーム軸の中央に配し、フレーム軸の一方、すなわち上側には、眼裂の上下径と左右径の比率を1:3とする標準バランスの目よりも、上下径が長く、左右径が短い目の形態を配置し、軸の他方、すなわち下側には、上下径が短く、左右径が長い目の形態を配置する。
【0013】
目の凹凸形状をしめすフォルム形態は、例えば瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状によって把握する。フォルム軸は前記フレーム軸と直交する水平方向の軸として構成され、フォルム軸の中心には標準バランスの目の形態が配置され、フォルム軸の一方、すなわち左側には、標準バランスの目の形態よりも、上まぶたの隆起が平面的(一重や奥二重に一般的なまぶたの肉付きのよい隆起形状)で、下まぶたの肉付きは薄く、眼球の曲面は目立たたない目の形態が配され、軸の他方、すなわち右側には、上まぶたの隆起が立体的(二重や三重に一般的に見られる彫りの深い状態。眉弓骨との眼窩の境界に窪みがあり、眼球の隆起が顕著に見られる)で、下まぶたは、眼球の顕著な曲面が現れ、又は眼窩脂肪のふくらみにより立体的である目の形態が配される。
【0014】
目の角度形態は、目頭を通る水平線と、目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度とするものであり、標準バランスの目の角度形態は、9度より大きく11度より小さい角度であり、最も好ましくは10度の角度である。この標準バランスの目の角度形態を基準として、角度が9度より大きく11度より小さければ標準、9度以下であれば目尻下降、11度以上であれば目尻上昇と判断する。目の角度形態の上下を示す角度軸は、前記フレーム軸、フォルム軸を平面に投影したとき、二つの軸で区切られる4つの象限内に個別に存在するように表現される。
【0015】
標準バランスの目の形態の特徴は、a. 眼裂の上下径(虹彩の中心を通る垂線)と左右径の比率が1:3のフレーム形態を有し、b. 顔を側面から見たときの上下まぶたの形状には、顕著な凹凸がなく、眉弓骨(眉の生えている部分の下にあるやや隆起した骨)から、ほお骨にかけての曲線がなだらかであるフォルム形態を有し、c.目頭を通る水平線と、目頭と目尻を結ぶ直線がなす角度が10度であり、d. 瞼溝は、二重と奥二重の中間的形状を示し、目頭側の溝は狭く、目尻側の溝は目頭側より広く、e.眼裂の上下径の幅と、眼裂の上縁から眉までの幅が、1対1のバランスのフォルム形態を有している。図1は、標準バランスの目の形態を示す正面図である。
【0016】
かかる標準バランスの目の形態特徴は、次のようにして作成された。まず、20代の女性40名分の顔写真を作成し、コンピュータグラフィックスの画像処理技術(モーフィング)の応用によって、等分に合成して、40名の平均化画像を得た。モーフィングによる平均化は、2枚の顔写真に、対応する特徴点を指定し、その特徴点を基準とし、両者の形状と色彩の中間画像を作成することで行われる。そして、図2に示すように、上記の作業を、新しくできた中間画像同士にも実施し、モーフィングを繰り返すことで、最終的に1枚の画像を得る。かかる画像処理により得られた最終画像は、40名分の平均値となる。40名の20代女性の顔写真は、目又は顔の形態特徴を限定せず、無作為に抽出したものであり、形態特徴に偏りはない。
【0017】
かかる標準バランスの目の形態は、フィルム、アクリル板、ガラス等の透明なシート状物に印刷、焼付け等の手段で描出し、被対象者の顔の実物や写真に、目の虹彩と位置を基準として重ね合わせて、目の形態の分類、分類マップ上の位置の把握或いは標準バランスの目の形態との乖離度の把握を行うための器具として使用可能とする。該透明なシート状物は、顔の大きさ、撮影カメラとの距離による写真のサイズを考慮して、縮尺の異なるものを複数用意する。
【0018】
まつげについては、生え際のラインと毛の密度の状態がフレーム形態の形状認識に寄与するため、フレーム形態に関わる要素として位置付ける。又、まつげの長さと角度形態は、目部分の立体感に寄与するため、フォルム形態にも関わる要素として位置付ける。ただし、まつげの要素(長さ・密度)は、目のタイプ分類自体には反映させず、状態を判断するのみとする。
【0019】
次に図3を参照しつつ、コンピュータ画像処理によるフレーム形態と角度形態の評価法について説明する。フレーム形態と角度形態をコンピュータ画像処理で評価する場合には、図3に示すように標準バランスの目のフレーム形態(A)の輪郭と比較対象の目のフレーム形態(B)の輪郭とを、両者の虹彩の大きさと位置を合わせて重ね、その乖離度(C)によって判断する。
【0020】
目の形態分類マップは、図4に示すように前記フレーム軸、フォルム軸、角度軸及び標準バランスの目の形態の4つの指標を用い、標準バランスの目の形態をフレーム軸とフォルム軸の交点である中心に配置し、フレーム軸を垂直軸に、フォルム軸を水平軸にして表示した図表である。該マップには、標準バランスの目の形態、横が短い目のフレーム形態、横が長い目のフレーム形態並びにまぶたが立体的な目の形態、まぶたが平面的な目の形態をそれぞれの位置にイラストで表示した。標準バランスの目の形態のイラストは、マップの中心に位置されており、横が短い目と横が長い目の二つのフレーム形態のイラストをフレーム軸の上下端に配し、まぶたが平面的な目とまぶたが立体的な目のフォルム形態のイラストをフォルム軸の左右端に配置し、各イラストにはそれぞれ説明その目の形態の説明が付されている。
【0021】
目の角度形態については、フレーム形態・フォルム形態の平面に投影し、フレーム軸、フォルム軸で仕切られる4つの象限に、それぞれ上がり目の形態・標準の形態(角度10度)・下がり目の形態が存在すると理解されるので、各象限内に3タイプのイラストを配して表現した。各表記されたイラストは、それぞれの目の形態特徴を簡便に把握できるようにするためのものである。
【0022】
図5は、前記目の形態分類マップに用いた目の形態分類タイプと名称を示しており、形態分類タイプは、大分類9タイプに小分類3タイプを乗じた27分類に分類される。すなわち、目の形態タイプを、フレーム軸の特徴によりRound(横が短い)、Standard(標準)、Oval(横が長い)の3つに区分と、フォルム軸の特徴よりHeavy-lided(まぶた平面的)、Standard(標準)、Deep-set(まぶた立体的)の3つに区分して、各象限内に位置する目の形態タイプを大きく9つに分類(大分類)し、各分類タイプをフレーム形態とフォルム形態の名称の頭文字を組み合わせて表現する。更に、角度形態の要素を見極め、Upward(目尻上昇)、Standard(目尻標準)、Downward(目尻下降)の3タイプに振り分ける(小分類)。かくして、目の形態タイプは、大分類9タイプ×小分類3タイプ=27分類となる。尚、上記Round、Oval、Heavy-lided、Standard、Deep-set、Upward、Downward等の、目の形態タイプを表現する種々の名称は、単に一例を示したに過ぎず、かかる名称に限定されるものではない。
【0023】
図5は、これら27分類の目のタイプを、頭文字のみを使用して表記してある。例えば、 RH-Sタイプ、SO−Dタイプなど であり、RH-Sタイプは、フレーム形態が、眼裂の上下径を1としたとき左右径の比が3より小さい、すなわち横が短く(Round)、フォルム形態はまぶた平面的(Heavy-lided)で、しかも角度形態は目尻標準(Standard)な、タイプを意味しており、図5の左上の象限内に属する。又、OS-Dタイプは、フレーム形態が眼裂の上下径を1としたとき左右径の比が3より大きい、すなわち横が長く(Oval)、フォルム形態は標準的(Standard)で、角度形態は目尻下降(Downward)なタイプを意味し、下側中央の象限に位置している。
【0024】
図5の目の形態分類マップを用いて目のタイプ別にバランス調整アイメーキャップを施すことができる。すなわち、アイメーキャップは、分類された目のタイプの位置と、標準バランスの目の形態であるStandardとの位置関係を見て、フレーム形態・フォルム形態・角度形態を、標準バランスの目の形態であるStandardの形態に近づけるよう調整する。例えば、RD−Sタイプであれば、横が短いフレーム形態を1:3の標準バランスに近づけるため、横幅を長く感じさせるようなアイメーキャップテクニックを用いる。又、フォルム形態は標準バランスの目の形態よりも立体的であるため、平面的に見せるようなアイメーキャップテクニックを用いて、Standardのフォルム形態に近づくよう調整する。この場合、角度形態はStandardのため、調整は不要である。
【0025】
又、図1に示すようにフォルム形態は、眼裂の上下径の幅と眼裂の上縁から眉までの幅(まぶたの幅)との比が、1対1のバランスにあるものが標準バランスの目のフォルム形態であり、被化粧対象者のフォルム形態が1対1のバランスにない場合、1対1のバランスになるようにアイメーキャップを施す。例えば、まぶたが狭い場合には、明るめの色を用いて陰影感を減少させる化粧法を適用し、逆にまぶたが広い場合には、暗めの色を用いて陰影感を強調する化粧法を適用する。かかる化粧テクニックは、陰影情報によってもたらされる長さや立体感の錯視を、応用したものであり、陰影情報を操作することにより、図形の奥行きと幅に異なる知覚が起こることを利用している。
【0026】
以上説明したように、被化粧対象者にアイメーキャップを施す場合、標準バランスの目の形態との対比により、フレーム形態、フォルム形態の相違部分を標準バランスのそれに近づけるようにする。この場合、当該被化粧対象者の目の形態と標準バランスの目の形態を対比することが必要であり、アイメーキャップを施す場合、縦若しくは横のいずれかを基準としてバランス調整を行うが、標準バランスの1:3よりも縦幅が大きい場合、当該縦幅を基準の1として、横幅が3となるように化粧を施す。
【0027】
すなわち、当該被化粧対象者の目のフレーム形態が、縦若しくは横のいずれかが大きい場合、大きい方を基準として利用する方法である。例えば、当該化粧対象者の目のフレーム形態のバランスが、標準バランスの1対3よりも縦幅があれば、当該縦幅を1として、横幅の3を割り出し、横幅が3となるように化粧を施す。又、横幅が大きければ、当該横幅を3で割った値を1として縦幅を考慮し、縦幅が1となるように化粧を施すものである。かかるバランスの把握法によって、より簡便に標準バランスの目の形態に近づける化粧を施すことが可能であり、且、当該被化粧対象者の目を、より大きく演出し、魅力的に見せることができる。
【0028】
この発明の目の形態分類マップを利用することによって、個々の目の形態の位置と、標準バランスの目の形態(Standard)との位置関係を瞬時に把握でき、表示された軸が、目的の形態に近づけるために用いるメーキャップテクニックを示しているため、簡便にメーキャップを施すことができる。まつげにもメーキャップを施す場合には、濃さと長さを調整するマスカラを、図6の「マスカラ選択サークル」を併用することで、まつげの特徴、すなわちまつげの長さと多さに合ったマスカラを選択することができる。このマスカラ選択サークルは、中心をマップの縦・横軸の直交座標に位置付け、まつげの長短と多少の特徴を目の形態特徴に整合させて使用する。例えば、まつげが長く多い場合、図6のサークルの右上の象限に属するので、カールタイプのマスカラを選択すればよいこととなる。
【0029】
目に対しては、丸い目、上がり目など、一般的な呼称がある。この一般的な目の呼称を、この発明の目の形態分類マップの指標に従ってって、形態特徴によって位置付けることが可能であり、共通理解の得やすい、一般的な目の呼称に従った形態タイプの分類を行うことができる。図7は、この発明に従った目の形態特徴と代表的な一般的呼称との対応を示すマップである。
【0030】
目を大きく・バランスよく・魅力的に演出するアイメーキャップ法は、美容技術者の経験則に基づき、「目のフレーム形態のたてとよこの比率を1:3に近づける・フォルム形態を標準バランスの立体感に近づける」と仮に設定した。そして、この仮説を検証するため、目の形態特徴の異なるモデルに、23パターンのアイメーキャップを施し、その中から形態操作の違いが顕著にわかる13パターンを厳選し、その写真を用いて、アンケート調査を行った。
【0031】
アンケート方法は、20代と40代の女性の各年代24名と、化粧品会社勤務の美容技術者16名の合計64名を回答者とし、前記、目の形態分類マップを利用し、すべての象限から9名のモデルを選定し、各モデルに対し、13パターンのメーキャップを施した写真とアイメーキャップ前の状態の写真を用いて行った。写真は、目元のみ(正面と斜め)と、顔全体のものを用いた。
【0032】
メーキャップパターンは、アイライン、アイシャドー、マスカラ、つけまつげを、単品、又は複数を組み合わせて施した。更に、アイラインやシャドーをくっきりと入れるか、ぼかして入れるか、或いは、マスカラを普通につけるか、たっぷりとつけるか、というメーキャップテクニックのバリエーションも設け、全部で13パターンとした。図8は、9名のモデルのマップ上の目に位置を示し、アルファベットが各モデルに対応し、矢印が目の角度形態を示している。
【0033】
図9は、メーキャップパターンの例を示し、左上の写真(A)がメーキャップ前を、右上の写真(B)がマスカラのみを上下のまつげにたっぷりと塗布したメーキャップを、左下の写真(C)が黒のアイラインで、まつげの生え際を強調し、フレーム形態を囲むと共に、フレーム形態の上のラインをぼかしたメーキャップを、右下の写真(D)はまつげの生え際にアイラインを入れ、描いたラインをぼかし、上まぶたにはアイシャドーも入れ、立体感を出し、更につけまつげを上まぶたに加えてメーキャップを施した。
【0034】
アンケート項目は、目元写真について、好き、嫌い、大きく見えるの3項目についてそれぞれ該当する順に3つの写真を選択させた。又、モデルの目になじむ、似合っていて、かつ大きく見える、もっともよいの3項目について、各1つの写真を選択するようにした。更に、顔写真については、もっとも目が大きく見える、似合っていてかつ大きく見える、好き、嫌いの4項目について各1枚ずつ写真を選択させた。
【0035】
アンケートの結果、目元写真で「似合ってかつ大きく見える」と評価された3名のモデルの化粧パターンは、(i)上下まぶたにアイシャドー及びアイラインを、1:3のフレーム形態バランスに近づけるよう入れる、(ii)そのアイシャドーをぼかし、まぶたの立体感を標準バランスに近づけるように施す、(iii)マスカラをたっぷりとまつげに塗布し、上につけまつげを加えることで、まつげを強調し、まつげを含む目の領域のたて・よこの長さの比率を、フレーム形態のみより大きな1:3のバランスに仕上げ、更にフォルム形態のバランス、すなわち眼裂の上下径とまぶたの広さが1対1に見えるように仕上げる化粧テクニックを施したものであった。
【0036】
もともとまつげが長いモデルは、つけまつげは敬遠されるなど、モデルの元来の目の特徴によって、化粧度合い(濃さ)への許容度には、若干のばらつきがみられたが、その他のモデルにおいても、似合って大きく見えると判断されたメーキャップパターンには、フレーム形態の比率を1:3に近づけ、フォルム形態の比率を1:1の標準バランスに近づけたものという共通性が見られた。以上の結果から、フレーム形態の比率を1:3の標準バランスに近づけ、且フォルム形態の比率を1:1の標準バランスに近づけることが、目の分類マップの全象限の形態特徴の目においても、「似合って大きく」見せる効果があることが明らかとなった。
【0037】
よって、「似合って大きく」見せるアイメーキャップ法は、どのような目のタイプに対しても分類マップの基準である「標準バランスの目の形態」のバランスに調整する、という法則によって実現できることが明らかとなり、的確で簡便な目の形態分類法と、分類されたそれぞれの目を大きく魅力的に見せるためのアイメーキャップの法則を同時に示す美容ツールの作成が可能となった。
【実施例】
【0038】
次に、この発明の目の形態分類法に従って、特定の顧客の目を分類し、マップ上に適用して所要のアイメーキャップを施し、目を大きく、魅力的に見せるような化粧を施す過程を以下に詳細に説明する。具体的には、以下のステップ1から4にて、アイメーキャップを来店の顧客に対して実施した。
【0039】
(step 1:目のタイプ・位置の見極め)
図5のアイビューティーナビゲーションマップを用い、各人の目のタイプを、標準バランスと照合して判断する。ここでは、モデルAを例に行う。(i)モデルAの目のフレーム形態の輪郭ラインを線で囲み、「標準バランスの目」の輪郭ラインと比較すると、縦幅が短く、横幅が長いことがわかる。従って、フレーム軸は下側のエリア、Oタイプに入ると判断できる。(ii)まぶたが一重で、上まぶたの平面性が強いため、フォルム軸は、左側のエリア、Hタイプと判断される。(iii)最後に目尻の角度形態についてみると、標準バランスよりも上昇しているため、Uタイプである。よって、モデルAの目のタイプはOH-Uとなる。
【0040】
図10は、モデルA(図10A)のフレーム形態を細い実線で表し(図10B)、標準バランスの目のフレーム形態を太い実線で表し(図10C)、両者のフレーム形態を図10Cに示すように重ね合わせることにより、標準バランスのフレーム形態とモデルAのフレーム形態との相違を容易に確認することができる。かかる確認は、コンピュータによるグラフィック処理によっても簡単に行うことが可能であり、図5のマップと組み合わせることにより、直接モデルAの目の分類タイプを出力することができるであろう。
【0041】
(step 2:お客さまのメーキャップ度合いとご要望の確認)
実施するアイメーキャップは、お客さまの好みに応じて、化粧の度合いを決定することが可能である。本発明によるアイメーキャップ法では、フレーム形態とフォルム形態の調整を行う際、すべてのアイメーキャップ品を使わなくても実施できる。例えば、目のフレーム形態にラインを入れる際、アイラインのみでも可能であるし、アイラインとアイシャドーの二つを用いても可能である。要するに、目の形態を法則に則って操作することが肝要であり、その際に、メーキャップ品による制限は特にない。従って、お客さまの好みに応じ、ナチュラルからしっかりしたメーキャップの度合いまで対応することが可能である。モデルAは、化粧への関心が非常に高く、しっかりしたメーキャップが希望であるため、アイラインペンシル、アイシャドー、マスカラのメーキャップ品を用いることとした。
【0042】
(step 3:マップ上での目の位置と、標準バランスの目のバランスとの差を確認し、メーキャップの方向性を見極める)
モデルAと標準バランスの目とのフレーム形態の乖離は、図11に矢印で示す斜線部である。よって、メーキャップ方針は、(i)目の領域の縦幅を上まぶた側に出す、(ii)目尻の上がり具合を標準レベルにする、(iii)横幅はほぼ同じなので、手を加えない、とした。
【0043】
(step 4:アイメーキャップを施す)
まず、アイメーキャップは、step2で述べたモデルAの嗜好により決めたメーキャップ品を用いて行う。モデルAの場合は、化粧への関心が高く、つけまつげも使用したいとの意向もあるので、アイラインペンシル、アイシャドー、マスカラを使い、しっかりとした度合いのメーキャップを施す。具体的なメーキャップは、(i)目の領域の縦幅を上まぶた側に出す、(ii)目尻の上がり具合を標準レベルに戻す、(iii)横幅は標準バランスとほぼ同じなので、手を加えない、の方針で実施する。
【0044】
(i)の方針を実現するために、アイラインペンシルを用いてフレーム形態の上側のラインを整え、まつげの生え際に、まつげの隙間を埋めるようにラインを描く。上側のフレーム形態の丸みを斜線部(標準バランスの目)に近づけるため、中央をやや太めに描いておく。次にアイシャドーを用い、フォルム形態を調整する。上側の斜線部を目安に、アイシャドーを外側に向かってぼかすように入れ、上まぶたの陰影感を出し、はれぼったいまぶたを、やや窪んだように見せる。このとき、影になるようなダークな色調のアイシャドーを用いることで、立体感を出すことができる。
【0045】
(ii)目尻の上がり具合を標準レベルに近づける方針を実現するために、目尻下の斜線部を意識してメーキャップを施す。まず、まつげの隙間を埋めるように下まつげの生え際にアイラインを描く。このとき、目尻側はやや下げ気味に描いておくことで、目尻の上昇が緩和して感じられる。斜線部にアイシャドーを入れ、目のフレーム形態が、標準バランスの1:3の比率に近づくようにする。こうすることで、フレーム形態の比率と形状、角度形態が調整できる。
【0046】
(iii)横幅は標準バランスの目とほぼ同じなので、手を加えないために、前記(i)、(ii)による調整する際、横幅を出したり、狭くしたりしない。つまり、本人の目の横幅にならって、アイラインやアイシャドーを入れるようにすればよい。
【0047】
又、まつげのメーキャップは、マスカラ選択ツールを使って、最適なものを選ぶ。モデルAのまつげは、長く、量は少ない方であるので、目の形態タイプOHの位置に、選択サークルの該当部分(長・少)がくるよう、サークルを回転させて、ボリュームタイプのマスカラを選択する。尚、マスカラ選択サークルは、透明若しくは半透明のシート状のものとし、マップ上にハトメ金具等で回転自在に結合し、360度回転させることができるように構成するのが好ましい。実際上は、マップ上でマスカラ選択サークルを表示したシートを中心において回転自在に接合し、分類された目のタイプの位置に、まつげタイプの該当位置を合わせるようにして使う。
【0048】
まつげの調整とマスカラの塗布は、まず、まつげをアイラッシュカーラーを用いて、上まつげを上側にカールさせる。モデルAのまつげは長いので、上側にカールしすぎると、縦幅が出すぎて、フレーム形態のバランスが崩れるため、目頭側と目尻側のまつげを上げ、中央のまつげはあまり上げないようにする。マスカラも、前記と同様に、中央には軽く、目頭と目尻にはボリュームをもたせるようにしっかりと塗布する。以上のステップで、フレーム形態の比率、フォルム形態の立体感、フレーム形態・フォルム形態の両者に関わるまつげの調整が終わり、標準バランスの目の形態に近づけることができた。図12は、メーキャップ前とメーキャップ後の目元と顔全体の写真を示す。
【0049】
図1に示す標準バランスの目の形態を、透明なシート状物に描出した器具を用意する。尚、図1には、眼裂上下径の比、左右径の比及び角度が表示されているが、かかる表示はなくても良いであろう。透明なシート状物は、フィルム、アクリル等のプラスチックシート、ガラス板等を用いることが出来る。描出の手段としては、印刷、写真焼付け、コピーその他の手段で形成することができる。標準バランスの目の形態を描出した透明なシート状物を、目の虹彩の大きさと位置を基準として、被化粧対象者の顔の実物や写真に重ね合わせることにより、標準バランスの目の形態との相違や乖離度を把握することが出来、当該被対象者の目の形態の分類を行ったり、分類マップ上の位置を把握したり、前記アイメーキャップを施すために使用することが出来る。
【0050】
透明なシート状物は、縮尺の異なるものを複数用意し、顔の大きさや撮影カメラとの距離の相違による写真に対応可能とするのが好ましい。被対象者の顔の実物との対比に際しては、シートを接離させることにより虹彩の大きさと位置とを合致させることが出来るので、縮尺の異なる複数のパターンを用意することは必ずしも必要としない。透明なシート状物は、美容ツールとして用意し、店頭において化粧インストラクターや顧客が使用したり、販売して家庭で使用可能としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】基準となる標準的な目のバランスを示す図
【図2】モーフィングの繰り返しによる平均画像の作成を示す図
【図3】コンピュータグラフィックスによるフレーム形態の形状を判断する例を示す図
【図4】この発明にかかる目の形態分類マップを示す図
【図5】この発明にかかる目の形態タイプの分類と名称を示す図
【図6】マスカラ選択サークルを示す図
【図7】この発明にかかる目の形態特徴と一般的呼称との対応を示す図
【図8】アンケートを実施したモデルの目のマップ上の位置を示す図
【図9】アイメーキャップパターンの例を示す図
【図10】モデルAのフレーム形態及び標準バランスの目のフレーム形態との差異を示す図
【図11】モデルAと標準バランスの目との差を示す図
【図12】モデルAのメーキャップ前とメーキャップ後の写真
【技術分野】
【0001】
この発明は、目をその形態に基づいて分類する方法、該分類された目の形態をまとめて表示する目の形態マップ及び目の形態別に適用して標準バランスの目に近づけ得るようにした目の化粧方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、アイメーキャップ法、すなわち目の化粧法への関心が高まっており、メーキャップ用の化粧品及び用具と共に化粧方法に関する情報が種々の美容雑誌、或いは一般雑誌等に紹介されている。しかしながら、従来提案されている目の化粧法は、目のみを取り出して目の特徴を把握しつつ目のみに化粧を適用しようとするものではなく、顔全体とのバランスにおいて目に注目するものであるにすぎない。このような、顔全体の中で目に注目した化粧法は、例えば、特開平10−289322号公報、特開2000−14661公報等に開示されている。
【0003】
目の形態特徴を切り口とした情報は、メーキャップにおける演出の重要な要素であり、大きくぱっちりとしたという形態特徴をもつ目に憧れが集中している状況にも関わらず極めて少ない。僅かに、一重や奥二重、目尻が下がったなどの大まかな特徴を把握し、これらの特徴をネガティブな特徴として抽出し、それらを解決するための化粧法を、ケース バイ ケースで示すにとどまっている。
【0004】
目を形態特徴に基づいて分類することは、個々人の目の特徴を把握し、その特徴に応じて、メーキャップの施し方を決定するために不可欠である。しかし現状では、人類学において人種特徴を記述するための上まぶたの分類はあるものの、より詳細な要素をとりあげ、かつ、系統的に分類する方法を示したものはない。更に、目の化粧法と結びつく形での、目の形態特徴の分類は提案されていない。又、ケース バイ ケースでのメーキャップ法では、個々に異なる目を魅力的に演出する方法を見つけるのは困難であり、試行錯誤しながら個々の化粧対象者に適応するアイメーキャプを施しているに過ぎず、トライ&エラーの繰り返しとなり、非効率的である。美容技術者の技術の向上においても、整理された分析法と、メーキャップ法がないため、経験が重要な要素となっている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−289322号公報
【特許文献2】特開2000−014661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、目の形態特徴に着目し、目の形態タイプに従った分類法を提案し、又該分類法によって分類された目のタイプ別に、的確、かつ迅速に大きく、バランスを整え、魅力的な演出をするための目の化粧法を提供することを課題とし、更に目の形態特徴分析法と、メーキャップによる形態操作法とを統合する美容ツールを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためにこの発明が採った手段は、上下まぶたのまつげの生え際を目安とする上下まぶたによって形成される眼裂の輪郭形状であって眼裂の上下径と左右径の比率で特定される目のフレーム形態と、瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状で特定される目のフォルム形態と、目頭を通る水平線と目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度で特定される目の角度形態の3つの目の形態において、被分類対象者の目の形態を標準バランスの目の形態と対比し、前記3つの形態における両者のそれぞれの乖離を求め、標準バランスの目と被分類対象者の目とのフレーム形態における乖離の程度に基づいて被分類対象者の目のフレーム形態を配置するフレーム軸と、標準バランスの目と被対象者の目とのフォルム形態との対比に基づいて被分類対象者の目のフォルム形態を配置するフォルム軸とからなり、両軸を互いに直交して設けた図表からなることを特徴とする。
【0008】
フレーム軸とフォルム軸で仕切られる各象限内に、角度形態の軸をそれぞれ配置した目の形態分類マップを用いることを特徴とする。
【0009】
フレーム軸とフォルム軸の交点に、標準バランスの目の形態を位置させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、目の形態をフレーム形態、フォルム形態及び角度形態の指標を利用して、タイプ別に的確に分類することができ、標準バランスの目の形態を中心に位置させたマップに構成することができ、特定の顧客の目の形態をマップ上に位置付けて、その顧客の目の形態特徴を容易、かつ確実に把握、確認することが可能となる。又、標準バランスの目の形態との差異を容易に確認できるため、差異を緩和させるようなアイメーキャップの施し方を直ちに把握し、標準バランスの目に近づけ、目を大きく、バランスを整えて見せ、魅力的な演出をするための目の化粧法を経験則によらず、的確に提供することができる。更に目の形態特徴分析法と、メーキャップによる形態操作法とを示す複合的な美容ツールを提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この発明の好ましい実施の形態を、以下に詳細に説明する。この発明は、目の形態特徴を眼裂の形状を示すフレーム軸、目の凹凸形状を示すフォルム軸、目の角度形態を示す角度軸及び標準バランスの目の形態の4つの要素を指標として、分類するようにしたことを特徴とする。又、該分類された目の形態特徴を、視覚的に認識可能とした図表(マップ)上に配置し、該マップ上に特定の個人の目の形態を位置付けて、特定の個人の目の形態特徴を容易に把握し、目の化粧を施す際に資する美容ツールを提供することを特徴とする。更に、分類され把握された被化粧対象者の目の形態を、標準バランスの目の形態と対比して、標準バランスの目の形態に近づけて、目を大きく見せるとともに均整を整えて魅力的に見せるアイメーキャップ法を提供することを特徴とするものである。
【0012】
フレーム形態は、まつげの生え際を目安とする上下まぶたによってできる眼裂の輪郭形状であり、フレーム軸は眼裂の上下径と左右径の比率に従って軸上に配列したものである。フレーム軸は、例えば垂直軸として設けられ、後述する標準バランスの目の形態をフレーム軸の中央に配し、フレーム軸の一方、すなわち上側には、眼裂の上下径と左右径の比率を1:3とする標準バランスの目よりも、上下径が長く、左右径が短い目の形態を配置し、軸の他方、すなわち下側には、上下径が短く、左右径が長い目の形態を配置する。
【0013】
目の凹凸形状をしめすフォルム形態は、例えば瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状によって把握する。フォルム軸は前記フレーム軸と直交する水平方向の軸として構成され、フォルム軸の中心には標準バランスの目の形態が配置され、フォルム軸の一方、すなわち左側には、標準バランスの目の形態よりも、上まぶたの隆起が平面的(一重や奥二重に一般的なまぶたの肉付きのよい隆起形状)で、下まぶたの肉付きは薄く、眼球の曲面は目立たたない目の形態が配され、軸の他方、すなわち右側には、上まぶたの隆起が立体的(二重や三重に一般的に見られる彫りの深い状態。眉弓骨との眼窩の境界に窪みがあり、眼球の隆起が顕著に見られる)で、下まぶたは、眼球の顕著な曲面が現れ、又は眼窩脂肪のふくらみにより立体的である目の形態が配される。
【0014】
目の角度形態は、目頭を通る水平線と、目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度とするものであり、標準バランスの目の角度形態は、9度より大きく11度より小さい角度であり、最も好ましくは10度の角度である。この標準バランスの目の角度形態を基準として、角度が9度より大きく11度より小さければ標準、9度以下であれば目尻下降、11度以上であれば目尻上昇と判断する。目の角度形態の上下を示す角度軸は、前記フレーム軸、フォルム軸を平面に投影したとき、二つの軸で区切られる4つの象限内に個別に存在するように表現される。
【0015】
標準バランスの目の形態の特徴は、a. 眼裂の上下径(虹彩の中心を通る垂線)と左右径の比率が1:3のフレーム形態を有し、b. 顔を側面から見たときの上下まぶたの形状には、顕著な凹凸がなく、眉弓骨(眉の生えている部分の下にあるやや隆起した骨)から、ほお骨にかけての曲線がなだらかであるフォルム形態を有し、c.目頭を通る水平線と、目頭と目尻を結ぶ直線がなす角度が10度であり、d. 瞼溝は、二重と奥二重の中間的形状を示し、目頭側の溝は狭く、目尻側の溝は目頭側より広く、e.眼裂の上下径の幅と、眼裂の上縁から眉までの幅が、1対1のバランスのフォルム形態を有している。図1は、標準バランスの目の形態を示す正面図である。
【0016】
かかる標準バランスの目の形態特徴は、次のようにして作成された。まず、20代の女性40名分の顔写真を作成し、コンピュータグラフィックスの画像処理技術(モーフィング)の応用によって、等分に合成して、40名の平均化画像を得た。モーフィングによる平均化は、2枚の顔写真に、対応する特徴点を指定し、その特徴点を基準とし、両者の形状と色彩の中間画像を作成することで行われる。そして、図2に示すように、上記の作業を、新しくできた中間画像同士にも実施し、モーフィングを繰り返すことで、最終的に1枚の画像を得る。かかる画像処理により得られた最終画像は、40名分の平均値となる。40名の20代女性の顔写真は、目又は顔の形態特徴を限定せず、無作為に抽出したものであり、形態特徴に偏りはない。
【0017】
かかる標準バランスの目の形態は、フィルム、アクリル板、ガラス等の透明なシート状物に印刷、焼付け等の手段で描出し、被対象者の顔の実物や写真に、目の虹彩と位置を基準として重ね合わせて、目の形態の分類、分類マップ上の位置の把握或いは標準バランスの目の形態との乖離度の把握を行うための器具として使用可能とする。該透明なシート状物は、顔の大きさ、撮影カメラとの距離による写真のサイズを考慮して、縮尺の異なるものを複数用意する。
【0018】
まつげについては、生え際のラインと毛の密度の状態がフレーム形態の形状認識に寄与するため、フレーム形態に関わる要素として位置付ける。又、まつげの長さと角度形態は、目部分の立体感に寄与するため、フォルム形態にも関わる要素として位置付ける。ただし、まつげの要素(長さ・密度)は、目のタイプ分類自体には反映させず、状態を判断するのみとする。
【0019】
次に図3を参照しつつ、コンピュータ画像処理によるフレーム形態と角度形態の評価法について説明する。フレーム形態と角度形態をコンピュータ画像処理で評価する場合には、図3に示すように標準バランスの目のフレーム形態(A)の輪郭と比較対象の目のフレーム形態(B)の輪郭とを、両者の虹彩の大きさと位置を合わせて重ね、その乖離度(C)によって判断する。
【0020】
目の形態分類マップは、図4に示すように前記フレーム軸、フォルム軸、角度軸及び標準バランスの目の形態の4つの指標を用い、標準バランスの目の形態をフレーム軸とフォルム軸の交点である中心に配置し、フレーム軸を垂直軸に、フォルム軸を水平軸にして表示した図表である。該マップには、標準バランスの目の形態、横が短い目のフレーム形態、横が長い目のフレーム形態並びにまぶたが立体的な目の形態、まぶたが平面的な目の形態をそれぞれの位置にイラストで表示した。標準バランスの目の形態のイラストは、マップの中心に位置されており、横が短い目と横が長い目の二つのフレーム形態のイラストをフレーム軸の上下端に配し、まぶたが平面的な目とまぶたが立体的な目のフォルム形態のイラストをフォルム軸の左右端に配置し、各イラストにはそれぞれ説明その目の形態の説明が付されている。
【0021】
目の角度形態については、フレーム形態・フォルム形態の平面に投影し、フレーム軸、フォルム軸で仕切られる4つの象限に、それぞれ上がり目の形態・標準の形態(角度10度)・下がり目の形態が存在すると理解されるので、各象限内に3タイプのイラストを配して表現した。各表記されたイラストは、それぞれの目の形態特徴を簡便に把握できるようにするためのものである。
【0022】
図5は、前記目の形態分類マップに用いた目の形態分類タイプと名称を示しており、形態分類タイプは、大分類9タイプに小分類3タイプを乗じた27分類に分類される。すなわち、目の形態タイプを、フレーム軸の特徴によりRound(横が短い)、Standard(標準)、Oval(横が長い)の3つに区分と、フォルム軸の特徴よりHeavy-lided(まぶた平面的)、Standard(標準)、Deep-set(まぶた立体的)の3つに区分して、各象限内に位置する目の形態タイプを大きく9つに分類(大分類)し、各分類タイプをフレーム形態とフォルム形態の名称の頭文字を組み合わせて表現する。更に、角度形態の要素を見極め、Upward(目尻上昇)、Standard(目尻標準)、Downward(目尻下降)の3タイプに振り分ける(小分類)。かくして、目の形態タイプは、大分類9タイプ×小分類3タイプ=27分類となる。尚、上記Round、Oval、Heavy-lided、Standard、Deep-set、Upward、Downward等の、目の形態タイプを表現する種々の名称は、単に一例を示したに過ぎず、かかる名称に限定されるものではない。
【0023】
図5は、これら27分類の目のタイプを、頭文字のみを使用して表記してある。例えば、 RH-Sタイプ、SO−Dタイプなど であり、RH-Sタイプは、フレーム形態が、眼裂の上下径を1としたとき左右径の比が3より小さい、すなわち横が短く(Round)、フォルム形態はまぶた平面的(Heavy-lided)で、しかも角度形態は目尻標準(Standard)な、タイプを意味しており、図5の左上の象限内に属する。又、OS-Dタイプは、フレーム形態が眼裂の上下径を1としたとき左右径の比が3より大きい、すなわち横が長く(Oval)、フォルム形態は標準的(Standard)で、角度形態は目尻下降(Downward)なタイプを意味し、下側中央の象限に位置している。
【0024】
図5の目の形態分類マップを用いて目のタイプ別にバランス調整アイメーキャップを施すことができる。すなわち、アイメーキャップは、分類された目のタイプの位置と、標準バランスの目の形態であるStandardとの位置関係を見て、フレーム形態・フォルム形態・角度形態を、標準バランスの目の形態であるStandardの形態に近づけるよう調整する。例えば、RD−Sタイプであれば、横が短いフレーム形態を1:3の標準バランスに近づけるため、横幅を長く感じさせるようなアイメーキャップテクニックを用いる。又、フォルム形態は標準バランスの目の形態よりも立体的であるため、平面的に見せるようなアイメーキャップテクニックを用いて、Standardのフォルム形態に近づくよう調整する。この場合、角度形態はStandardのため、調整は不要である。
【0025】
又、図1に示すようにフォルム形態は、眼裂の上下径の幅と眼裂の上縁から眉までの幅(まぶたの幅)との比が、1対1のバランスにあるものが標準バランスの目のフォルム形態であり、被化粧対象者のフォルム形態が1対1のバランスにない場合、1対1のバランスになるようにアイメーキャップを施す。例えば、まぶたが狭い場合には、明るめの色を用いて陰影感を減少させる化粧法を適用し、逆にまぶたが広い場合には、暗めの色を用いて陰影感を強調する化粧法を適用する。かかる化粧テクニックは、陰影情報によってもたらされる長さや立体感の錯視を、応用したものであり、陰影情報を操作することにより、図形の奥行きと幅に異なる知覚が起こることを利用している。
【0026】
以上説明したように、被化粧対象者にアイメーキャップを施す場合、標準バランスの目の形態との対比により、フレーム形態、フォルム形態の相違部分を標準バランスのそれに近づけるようにする。この場合、当該被化粧対象者の目の形態と標準バランスの目の形態を対比することが必要であり、アイメーキャップを施す場合、縦若しくは横のいずれかを基準としてバランス調整を行うが、標準バランスの1:3よりも縦幅が大きい場合、当該縦幅を基準の1として、横幅が3となるように化粧を施す。
【0027】
すなわち、当該被化粧対象者の目のフレーム形態が、縦若しくは横のいずれかが大きい場合、大きい方を基準として利用する方法である。例えば、当該化粧対象者の目のフレーム形態のバランスが、標準バランスの1対3よりも縦幅があれば、当該縦幅を1として、横幅の3を割り出し、横幅が3となるように化粧を施す。又、横幅が大きければ、当該横幅を3で割った値を1として縦幅を考慮し、縦幅が1となるように化粧を施すものである。かかるバランスの把握法によって、より簡便に標準バランスの目の形態に近づける化粧を施すことが可能であり、且、当該被化粧対象者の目を、より大きく演出し、魅力的に見せることができる。
【0028】
この発明の目の形態分類マップを利用することによって、個々の目の形態の位置と、標準バランスの目の形態(Standard)との位置関係を瞬時に把握でき、表示された軸が、目的の形態に近づけるために用いるメーキャップテクニックを示しているため、簡便にメーキャップを施すことができる。まつげにもメーキャップを施す場合には、濃さと長さを調整するマスカラを、図6の「マスカラ選択サークル」を併用することで、まつげの特徴、すなわちまつげの長さと多さに合ったマスカラを選択することができる。このマスカラ選択サークルは、中心をマップの縦・横軸の直交座標に位置付け、まつげの長短と多少の特徴を目の形態特徴に整合させて使用する。例えば、まつげが長く多い場合、図6のサークルの右上の象限に属するので、カールタイプのマスカラを選択すればよいこととなる。
【0029】
目に対しては、丸い目、上がり目など、一般的な呼称がある。この一般的な目の呼称を、この発明の目の形態分類マップの指標に従ってって、形態特徴によって位置付けることが可能であり、共通理解の得やすい、一般的な目の呼称に従った形態タイプの分類を行うことができる。図7は、この発明に従った目の形態特徴と代表的な一般的呼称との対応を示すマップである。
【0030】
目を大きく・バランスよく・魅力的に演出するアイメーキャップ法は、美容技術者の経験則に基づき、「目のフレーム形態のたてとよこの比率を1:3に近づける・フォルム形態を標準バランスの立体感に近づける」と仮に設定した。そして、この仮説を検証するため、目の形態特徴の異なるモデルに、23パターンのアイメーキャップを施し、その中から形態操作の違いが顕著にわかる13パターンを厳選し、その写真を用いて、アンケート調査を行った。
【0031】
アンケート方法は、20代と40代の女性の各年代24名と、化粧品会社勤務の美容技術者16名の合計64名を回答者とし、前記、目の形態分類マップを利用し、すべての象限から9名のモデルを選定し、各モデルに対し、13パターンのメーキャップを施した写真とアイメーキャップ前の状態の写真を用いて行った。写真は、目元のみ(正面と斜め)と、顔全体のものを用いた。
【0032】
メーキャップパターンは、アイライン、アイシャドー、マスカラ、つけまつげを、単品、又は複数を組み合わせて施した。更に、アイラインやシャドーをくっきりと入れるか、ぼかして入れるか、或いは、マスカラを普通につけるか、たっぷりとつけるか、というメーキャップテクニックのバリエーションも設け、全部で13パターンとした。図8は、9名のモデルのマップ上の目に位置を示し、アルファベットが各モデルに対応し、矢印が目の角度形態を示している。
【0033】
図9は、メーキャップパターンの例を示し、左上の写真(A)がメーキャップ前を、右上の写真(B)がマスカラのみを上下のまつげにたっぷりと塗布したメーキャップを、左下の写真(C)が黒のアイラインで、まつげの生え際を強調し、フレーム形態を囲むと共に、フレーム形態の上のラインをぼかしたメーキャップを、右下の写真(D)はまつげの生え際にアイラインを入れ、描いたラインをぼかし、上まぶたにはアイシャドーも入れ、立体感を出し、更につけまつげを上まぶたに加えてメーキャップを施した。
【0034】
アンケート項目は、目元写真について、好き、嫌い、大きく見えるの3項目についてそれぞれ該当する順に3つの写真を選択させた。又、モデルの目になじむ、似合っていて、かつ大きく見える、もっともよいの3項目について、各1つの写真を選択するようにした。更に、顔写真については、もっとも目が大きく見える、似合っていてかつ大きく見える、好き、嫌いの4項目について各1枚ずつ写真を選択させた。
【0035】
アンケートの結果、目元写真で「似合ってかつ大きく見える」と評価された3名のモデルの化粧パターンは、(i)上下まぶたにアイシャドー及びアイラインを、1:3のフレーム形態バランスに近づけるよう入れる、(ii)そのアイシャドーをぼかし、まぶたの立体感を標準バランスに近づけるように施す、(iii)マスカラをたっぷりとまつげに塗布し、上につけまつげを加えることで、まつげを強調し、まつげを含む目の領域のたて・よこの長さの比率を、フレーム形態のみより大きな1:3のバランスに仕上げ、更にフォルム形態のバランス、すなわち眼裂の上下径とまぶたの広さが1対1に見えるように仕上げる化粧テクニックを施したものであった。
【0036】
もともとまつげが長いモデルは、つけまつげは敬遠されるなど、モデルの元来の目の特徴によって、化粧度合い(濃さ)への許容度には、若干のばらつきがみられたが、その他のモデルにおいても、似合って大きく見えると判断されたメーキャップパターンには、フレーム形態の比率を1:3に近づけ、フォルム形態の比率を1:1の標準バランスに近づけたものという共通性が見られた。以上の結果から、フレーム形態の比率を1:3の標準バランスに近づけ、且フォルム形態の比率を1:1の標準バランスに近づけることが、目の分類マップの全象限の形態特徴の目においても、「似合って大きく」見せる効果があることが明らかとなった。
【0037】
よって、「似合って大きく」見せるアイメーキャップ法は、どのような目のタイプに対しても分類マップの基準である「標準バランスの目の形態」のバランスに調整する、という法則によって実現できることが明らかとなり、的確で簡便な目の形態分類法と、分類されたそれぞれの目を大きく魅力的に見せるためのアイメーキャップの法則を同時に示す美容ツールの作成が可能となった。
【実施例】
【0038】
次に、この発明の目の形態分類法に従って、特定の顧客の目を分類し、マップ上に適用して所要のアイメーキャップを施し、目を大きく、魅力的に見せるような化粧を施す過程を以下に詳細に説明する。具体的には、以下のステップ1から4にて、アイメーキャップを来店の顧客に対して実施した。
【0039】
(step 1:目のタイプ・位置の見極め)
図5のアイビューティーナビゲーションマップを用い、各人の目のタイプを、標準バランスと照合して判断する。ここでは、モデルAを例に行う。(i)モデルAの目のフレーム形態の輪郭ラインを線で囲み、「標準バランスの目」の輪郭ラインと比較すると、縦幅が短く、横幅が長いことがわかる。従って、フレーム軸は下側のエリア、Oタイプに入ると判断できる。(ii)まぶたが一重で、上まぶたの平面性が強いため、フォルム軸は、左側のエリア、Hタイプと判断される。(iii)最後に目尻の角度形態についてみると、標準バランスよりも上昇しているため、Uタイプである。よって、モデルAの目のタイプはOH-Uとなる。
【0040】
図10は、モデルA(図10A)のフレーム形態を細い実線で表し(図10B)、標準バランスの目のフレーム形態を太い実線で表し(図10C)、両者のフレーム形態を図10Cに示すように重ね合わせることにより、標準バランスのフレーム形態とモデルAのフレーム形態との相違を容易に確認することができる。かかる確認は、コンピュータによるグラフィック処理によっても簡単に行うことが可能であり、図5のマップと組み合わせることにより、直接モデルAの目の分類タイプを出力することができるであろう。
【0041】
(step 2:お客さまのメーキャップ度合いとご要望の確認)
実施するアイメーキャップは、お客さまの好みに応じて、化粧の度合いを決定することが可能である。本発明によるアイメーキャップ法では、フレーム形態とフォルム形態の調整を行う際、すべてのアイメーキャップ品を使わなくても実施できる。例えば、目のフレーム形態にラインを入れる際、アイラインのみでも可能であるし、アイラインとアイシャドーの二つを用いても可能である。要するに、目の形態を法則に則って操作することが肝要であり、その際に、メーキャップ品による制限は特にない。従って、お客さまの好みに応じ、ナチュラルからしっかりしたメーキャップの度合いまで対応することが可能である。モデルAは、化粧への関心が非常に高く、しっかりしたメーキャップが希望であるため、アイラインペンシル、アイシャドー、マスカラのメーキャップ品を用いることとした。
【0042】
(step 3:マップ上での目の位置と、標準バランスの目のバランスとの差を確認し、メーキャップの方向性を見極める)
モデルAと標準バランスの目とのフレーム形態の乖離は、図11に矢印で示す斜線部である。よって、メーキャップ方針は、(i)目の領域の縦幅を上まぶた側に出す、(ii)目尻の上がり具合を標準レベルにする、(iii)横幅はほぼ同じなので、手を加えない、とした。
【0043】
(step 4:アイメーキャップを施す)
まず、アイメーキャップは、step2で述べたモデルAの嗜好により決めたメーキャップ品を用いて行う。モデルAの場合は、化粧への関心が高く、つけまつげも使用したいとの意向もあるので、アイラインペンシル、アイシャドー、マスカラを使い、しっかりとした度合いのメーキャップを施す。具体的なメーキャップは、(i)目の領域の縦幅を上まぶた側に出す、(ii)目尻の上がり具合を標準レベルに戻す、(iii)横幅は標準バランスとほぼ同じなので、手を加えない、の方針で実施する。
【0044】
(i)の方針を実現するために、アイラインペンシルを用いてフレーム形態の上側のラインを整え、まつげの生え際に、まつげの隙間を埋めるようにラインを描く。上側のフレーム形態の丸みを斜線部(標準バランスの目)に近づけるため、中央をやや太めに描いておく。次にアイシャドーを用い、フォルム形態を調整する。上側の斜線部を目安に、アイシャドーを外側に向かってぼかすように入れ、上まぶたの陰影感を出し、はれぼったいまぶたを、やや窪んだように見せる。このとき、影になるようなダークな色調のアイシャドーを用いることで、立体感を出すことができる。
【0045】
(ii)目尻の上がり具合を標準レベルに近づける方針を実現するために、目尻下の斜線部を意識してメーキャップを施す。まず、まつげの隙間を埋めるように下まつげの生え際にアイラインを描く。このとき、目尻側はやや下げ気味に描いておくことで、目尻の上昇が緩和して感じられる。斜線部にアイシャドーを入れ、目のフレーム形態が、標準バランスの1:3の比率に近づくようにする。こうすることで、フレーム形態の比率と形状、角度形態が調整できる。
【0046】
(iii)横幅は標準バランスの目とほぼ同じなので、手を加えないために、前記(i)、(ii)による調整する際、横幅を出したり、狭くしたりしない。つまり、本人の目の横幅にならって、アイラインやアイシャドーを入れるようにすればよい。
【0047】
又、まつげのメーキャップは、マスカラ選択ツールを使って、最適なものを選ぶ。モデルAのまつげは、長く、量は少ない方であるので、目の形態タイプOHの位置に、選択サークルの該当部分(長・少)がくるよう、サークルを回転させて、ボリュームタイプのマスカラを選択する。尚、マスカラ選択サークルは、透明若しくは半透明のシート状のものとし、マップ上にハトメ金具等で回転自在に結合し、360度回転させることができるように構成するのが好ましい。実際上は、マップ上でマスカラ選択サークルを表示したシートを中心において回転自在に接合し、分類された目のタイプの位置に、まつげタイプの該当位置を合わせるようにして使う。
【0048】
まつげの調整とマスカラの塗布は、まず、まつげをアイラッシュカーラーを用いて、上まつげを上側にカールさせる。モデルAのまつげは長いので、上側にカールしすぎると、縦幅が出すぎて、フレーム形態のバランスが崩れるため、目頭側と目尻側のまつげを上げ、中央のまつげはあまり上げないようにする。マスカラも、前記と同様に、中央には軽く、目頭と目尻にはボリュームをもたせるようにしっかりと塗布する。以上のステップで、フレーム形態の比率、フォルム形態の立体感、フレーム形態・フォルム形態の両者に関わるまつげの調整が終わり、標準バランスの目の形態に近づけることができた。図12は、メーキャップ前とメーキャップ後の目元と顔全体の写真を示す。
【0049】
図1に示す標準バランスの目の形態を、透明なシート状物に描出した器具を用意する。尚、図1には、眼裂上下径の比、左右径の比及び角度が表示されているが、かかる表示はなくても良いであろう。透明なシート状物は、フィルム、アクリル等のプラスチックシート、ガラス板等を用いることが出来る。描出の手段としては、印刷、写真焼付け、コピーその他の手段で形成することができる。標準バランスの目の形態を描出した透明なシート状物を、目の虹彩の大きさと位置を基準として、被化粧対象者の顔の実物や写真に重ね合わせることにより、標準バランスの目の形態との相違や乖離度を把握することが出来、当該被対象者の目の形態の分類を行ったり、分類マップ上の位置を把握したり、前記アイメーキャップを施すために使用することが出来る。
【0050】
透明なシート状物は、縮尺の異なるものを複数用意し、顔の大きさや撮影カメラとの距離の相違による写真に対応可能とするのが好ましい。被対象者の顔の実物との対比に際しては、シートを接離させることにより虹彩の大きさと位置とを合致させることが出来るので、縮尺の異なる複数のパターンを用意することは必ずしも必要としない。透明なシート状物は、美容ツールとして用意し、店頭において化粧インストラクターや顧客が使用したり、販売して家庭で使用可能としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】基準となる標準的な目のバランスを示す図
【図2】モーフィングの繰り返しによる平均画像の作成を示す図
【図3】コンピュータグラフィックスによるフレーム形態の形状を判断する例を示す図
【図4】この発明にかかる目の形態分類マップを示す図
【図5】この発明にかかる目の形態タイプの分類と名称を示す図
【図6】マスカラ選択サークルを示す図
【図7】この発明にかかる目の形態特徴と一般的呼称との対応を示す図
【図8】アンケートを実施したモデルの目のマップ上の位置を示す図
【図9】アイメーキャップパターンの例を示す図
【図10】モデルAのフレーム形態及び標準バランスの目のフレーム形態との差異を示す図
【図11】モデルAと標準バランスの目との差を示す図
【図12】モデルAのメーキャップ前とメーキャップ後の写真
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下まぶたのまつげの生え際を目安とする上下まぶたによって形成される眼裂の輪郭形状であって眼裂の上下径と左右径の比率で特定される目のフレーム形態と、瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状で特定される目のフォルム形態と、目頭を通る水平線と目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度で特定される目の角度形態の3つの目の形態において、被分類対象者の目の形態を標準バランスの目の形態と対比し、前記3つの形態における両者のそれぞれの乖離を求め、標準バランスの目と被分類対象者の目とのフレーム形態における乖離の程度に基づいて被分類対象者の目のフレーム形態を配置するフレーム軸と、標準バランスの目と被対象者の目とのフォルム形態との対比に基づいて被分類対象者の目のフォルム形態を配置するフォルム軸とからなり、両軸を互いに直交して設けた図表からなることを特徴とする目の形態分類マップ。
【請求項2】
フレーム軸とフォルム軸で仕切られる各象限内に、角度形態の軸をそれぞれ配置した目の形態分類マップを用いることを特徴とする請求項1記載の分類マップ。
【請求項3】
フレーム軸とフォルム軸の交点に、標準バランスの目の形態を位置させたことを特徴とする請求項1又は2記載の分類マップ。
【請求項1】
上下まぶたのまつげの生え際を目安とする上下まぶたによって形成される眼裂の輪郭形状であって眼裂の上下径と左右径の比率で特定される目のフレーム形態と、瞼溝と上下まぶたの隆起の凹凸形状で特定される目のフォルム形態と、目頭を通る水平線と目頭と目尻を結ぶ対角線のなす角度で特定される目の角度形態の3つの目の形態において、被分類対象者の目の形態を標準バランスの目の形態と対比し、前記3つの形態における両者のそれぞれの乖離を求め、標準バランスの目と被分類対象者の目とのフレーム形態における乖離の程度に基づいて被分類対象者の目のフレーム形態を配置するフレーム軸と、標準バランスの目と被対象者の目とのフォルム形態との対比に基づいて被分類対象者の目のフォルム形態を配置するフォルム軸とからなり、両軸を互いに直交して設けた図表からなることを特徴とする目の形態分類マップ。
【請求項2】
フレーム軸とフォルム軸で仕切られる各象限内に、角度形態の軸をそれぞれ配置した目の形態分類マップを用いることを特徴とする請求項1記載の分類マップ。
【請求項3】
フレーム軸とフォルム軸の交点に、標準バランスの目の形態を位置させたことを特徴とする請求項1又は2記載の分類マップ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−29674(P2010−29674A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−217400(P2009−217400)
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【分割の表示】特願2003−371235(P2003−371235)の分割
【原出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月18日(2009.9.18)
【分割の表示】特願2003−371235(P2003−371235)の分割
【原出願日】平成15年10月30日(2003.10.30)
【出願人】(000001959)株式会社資生堂 (1,748)
【Fターム(参考)】
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