説明

目地交差部用の乾式止水材挿入用治具

【課題】圧縮状態にした発泡シール材等の弾力性を有する乾式止水材を十字状等の目地交差部内から各目地部内にわたるように容易に挿入でき、しかも、挿入した乾式止水材を復元により目地交差部内を囲む面部に品質良好に密着させて高い止水性能を確保できる、目地交差部用の乾式止水材挿入用治具を提供する。
【解決手段】治具4が、目地交差部ベースプレート部5と、目地交差部から各目地部側に突出する複数の目地部ベースプレート部6…とを連接状態に備え、各目地部ベースプレート部6は、その内面部に、乾式止水材の目地側突出部分を目地幅方向に圧縮状態となるよう保持する対の側壁7,7を備え、各目地部ベースプレート部6は目地交差部ベースプレート部5との連接部8を中心に外側に屈折回動させることができるようになされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地交差部用の乾式止水材挿入用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、図5(イ)に示すように、上下左右の外壁面材1…で囲まれた十字状の目地交差部2の止水は、湿式シーリングによって行われるのが一般的であるが、定形止水材を用いて乾式にて目地交差部2の止水を行うようにしたものも提案されている。
【特許文献1】特開平06−123456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、十字状の目地交差部2では、図5(ロ)〜(ハ)に示すように、上下左右の目地部3…の目地幅や目地中心ラインLの位置に施工上の寸法誤差やズレを生じやすく、乾式で目路交差部2を止水しようとすると、目地交差部2を囲む外壁面材1…の角部においてピンホールを生じたりして、止水性能を低下させてしまいやすい。
【0004】
そこで、発泡シール材などの弾力性に富んだ乾式止水材を用い、これを圧縮状態にして目地交差部内から各目地部内にわたるように挿入し、復元させることで目地交差部内から各目地部内にわたる部分を囲む面部に密着させて止水状態を形成する方法が考えられるが、施工が容易ではないという問題がある。
【0005】
本発明は、上記のような問題点に鑑み、圧縮状態にした弾力性を有する乾式止水材を目地交差部内から各目地部内にわたるように容易に挿入することができ、しかも、挿入した乾式止水材を復元により目地交差部内から各目地部内にわたる部分を囲む面部に品質良好に密着させて高い止水性能を確保することができる、目地交差部用の乾式止水材挿入用治具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、圧縮状態にした弾力性を有する乾式止水材を目地交差部内から複数の各目地部内にわたるように挿入し、復元させて前記目地交差部を止水状態にするのに用いられる目地交差部用の乾式止水材挿入用治具であって、
目地交差部に配置される目地交差部ベースプレート部と、該目地交差部ベースプレート部に連接され、目地交差部から各目地部側に突出する複数の目地部ベースプレート部とを備え、
各目地部ベースプレート部は、その内面部に、乾式止水材の目地側突出部分を目地幅方向に圧縮状態となるように保持する対の側壁を一体的に備えると共に、該対の側壁は目地部内に挿入可能であり、かつ、各目地部ベースプレート部は目地交差部ベースプレート部との連接部を中心として外側に屈折回動させることができるようになされていることを特徴とする目地交差部用の乾式止水材挿入用治具によって解決される。
【0007】
この治具では、乾式止水材の目地部側に突出する各部分を、幅方向に圧縮し、各目地部ベースプレート部の対の側壁間に挿入配置することにより、乾式止水材を容易に必要な圧縮状態に保持することができる。その圧縮保持状態において、治具の各目地部ベースプレート部の対の側壁を、目地交差部から延びる各目地部内に挿入する。そして、乾式止水材の目地側突出部分を目地部内に残すように、目地部ベースプレート部を一つづつ順次に目地交差部ベースプレート部との連接部を中心として外側に屈折回動させていく。すると、乾式止水材の目地側突出部分も各目地部内において一つづつ順次に復元をしていって目地内を挟む面部に密着保持されていき、治具を乾式止水材から容易に取り外すことができ、圧縮状態にした弾力性を有する乾式止水材を目地交差部内から各目地部内にわたるように容易に挿入配置することができる。
【0008】
しかも、目地部ベースプレート部を一つづつ順次に目地交差部ベースプレート部との連接部を中心として外側に屈折回動させていくことで、乾式止水材の目地部に突出する部分を各目地部内において一つづつ順次に復元させて目地内を挟む面部に密着保持させていくことができるので、乾式止水材を目地交差部内を囲む面部に品質良好に密着させて高い止水性能を確保することができる。
【0009】
特に、目地部ベースプレート部は、その内面部に目地部内に挿入可能な対の側壁を一体的に備え、目地交差部ベースプレート部との連接部を中心として外側に屈折回動させることができるようになされているので、目地部ベースプレート部を目地交差部ベースプレート部との連接部を中心として外側に屈折回動させていくことで、対の側壁は、乾式止水材の目地側突出部分を目地交差部とは反対の方向に引っ張りながら目地外へ抜け出ていき、それにより、目地交差部内における乾式止水材の配置状態を品質良好なものにすることができると共に、乾式止水材の目地側突出部分と対の側壁との分離を容易にすることができる。
【0010】
なお、目地部ベースプレート部を外側に屈折回動させていく際に乾式止水材の目地側突出部分を目地部内に残す方法としては、圧縮保持状態における乾式止水材が低反発性などによる形状保持力を有する場合は、それを利用してベースプレート部を外側に屈折回動させるだけでよく、また、そのような形状保持力が不足している場合は、乾式止水材の目地側突出部分を工具などでおさえながらベースプレート部を外側に屈折回動させるようにするとよい。
【0011】
上記の治具において、目地部ベースプレート部が、目地交差部ベースプレート部に対して幅方向に相対変位可能に連接されているのもよい。この場合は、目地交差部から延びる各目地部の中心ラインの位置に施工誤差などによって大きなズレを生じているときに、目地部ベースプレート部を目地交差部ベースプレート部に対して幅方向に相対変位させることで、そのようなズレを吸収させることができ、各目地部ベースプレート部の対の側壁をそのような目地部内に対しても挿入させていくことが可能になる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は、以上のとおりのものであるから、圧縮状態にした弾力性を有する乾式止水材を目地交差部内から各目地部内にわたるように容易に挿入することができ、しかも、挿入した乾式止水材を復元により目地交差部内から各目地部内にわたる部分を囲む面部に品質良好に密着させて高い止水性能を確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施最良形態を図面に基づいて説明する。
【0014】
図1に示す第1実施形態の目地交差部用の乾式止水材挿入用治具4は、図5(イ)に示すような十字状の目地交差部2に発泡シール材などの弾力性に富んだ乾式止水材を挿入するのに用いることができるようになされているもので、プラスチック品などからなり、目地交差部2に配置される中央の目地交差部ベースプレート部5と、該目地交差部ベースプレート部5に連接され、目地交差部2から四方の各目地部の側に突出する4つの目地部ベースプレート部6…とを備えた十字状のものからなっていて、各目地部ベースプレート部6には、その内面部に、乾式止水材の目地側突出部分を目地幅方向に圧縮状態となるように保持する所定の高さ寸法の対の側壁7,7が立ち上がり状態に一体的に備えられている。
【0015】
各対の側壁7,7間の間隔寸法は、目地部3…の幅について生じる施工上の寸法誤差や目地交差部2を挟む目地3…の中心ラインL…の相対的なズレなどを考慮し、そのような寸法誤差やズレがあっても、対の側壁7,7を目地交差部2から延びるそのような目地部3内に挿入することができるような間隔寸法に設計されている。
【0016】
そして、各目地部ベースプレート部6…は、図1(ハ)に示すように、目地交差部ベースプレート部5との薄肉化された連接部8を中心として外側に屈折回動させることができるようになされている。
【0017】
上記の治具4では、次のようにして、乾式止水材を目地交差部内から各目地部内にわたるように挿入することができる。まず、図2(イ)(ロ)(ハ)に示すように、十字状の乾式止水材9の各目地側突出部分9a…を幅方向に圧縮し、それら各部分9a…を治具4の各目地部ベースプレート部6…の対の側壁7,7間に嵌め込み、各対の側壁7,7でそれら各部分9aを目地幅方向に圧縮した状態に保持する。図2(ニ)は、治具4に嵌め込まれて圧縮状態に保持された乾式目地材の姿図である。なお、乾式止水材9は、圧縮させることによって治具4に嵌め込むことのできる十字状にすることができるようなものであってもよく、自然状態では十字状以外の形態をしたものであってもよい。
【0018】
次に、図3(イ)に示すように、この治具4を、屋外側から、外壁の目地交差部分に沿わせ、各目地部ベースプレート部6…の対の側壁7,7を、外壁の目地交差部2から四方に延びる各目地部3…内に挿入し、目地交差部ベースプレート部5の内面部と目地部ベースプレート部6の内面部を外壁面に当接させた状態にする。
【0019】
しかる後、図3(ロ)に示すように、いずれか一つの目地部ベースプレート部6を、乾式止水材9の目地側突出部分9aを目地部3内に残すようにして、目地交差部ベースプレート部5との連接部8を中心に外側に屈折回動させていく。
【0020】
この屈折回動操作により、目地部ベースプレート部6の対の側壁7,7は、乾式止水材9の目地側突出部分9aを目地交差部2とは反対の方向に引っ張りながら目地3の外へと抜け出ていき、それにより、目地交差部2から延びる目地部3内における乾式止水材9の配置状態が品質良好なものになり、また、乾式止水材9の目地側突出部分9aと対の側壁7,7とが容易に分離されていく。
【0021】
なお、目地部ベースプレート部6を外側に屈折回動させるだけでは、乾式止水材9の目地側突出部分9aが目地部3内に残らない場合は、乾式止水材9の目地側突出部分9aを工具などでおさえて目地部3内に残しながら、目地部ベースプレート部6を外側に屈折回動させていくとよい。その場合に、工具などでのおさえを容易にするため、図示しないが、各目地部ベースプレート部6…に孔などの開口部を設けておき、その開口部を通じて工具を差し込み、乾式止水材9の目地側突出部分9aを屋外側からおさえることができるようにしておくのもよい。
【0022】
こうして目地部3内に残された乾式止水材9の目地側突出部分9aは、目地幅方向に復元し、目地部3内を挟む面部に密着状態となって保持されていく。
【0023】
これを残る各目地部ベースプレート部6…に対して順次に行っていけば、治具4によって圧縮状態にされていた乾式止水材9は治具4から解放されていき、図3(ハ)に示すように、目地内に乾式止水材9を残したまま、治具4を取り外して、乾式止水材9を目地交差部2内から各目地部3…内にわたる挿入設置状態にすることができる。
【0024】
このように、上記の治具4によれば、乾式止水材9を容易に必要な圧縮状態に保持することができ、その圧縮保持状態において、治具4の各目地部ベースプレート部6の対の側壁7,7を、目地交差部2から延びる各目地部3に挿入し、乾式止水材9の目地側突出部分9a…を目地部3内に残すように、目地部ベースプレート部6…を一つづつ順次に目地交差部ベースプレート部5との連接部8を中心として外側に屈折回動させていけば、乾式止水材9の目地側突出部分9aも各目地部3内において一つづつ順次に復元をしていって目地3内を挟む面部に密着保持されていき、治具4を乾式止水材9から容易に取り外すことができ、乾式止水材9を目地交差部2内から各目地部3…内にわたるように容易に挿入配置することができる。
【0025】
しかも、目地部ベースプレート部6…を一つづつ順次に目地交差部ベースプレート部5との連接部8を中心として外側に屈折回動させていくことで、乾式止水材9の目地側突出部分9aを各目地部3内において一つづつ順次に復元させて目地3内を挟む面部に密着保持させていくことができるので、乾式止水材9を目地交差部2内を囲む面部に品質良好に密着させて高い止水性能を確保することができる。
【0026】
図4に示す第2実施形態の治具4は、各目地部ベースプレート部6が、目地交差部ベースプレート部5に対して幅方向に相対変位可能に連接されているもので、連接部8は、各目地部ベースプレート部6の側の筒8aに、目地交差部ベースプレート部5側のピン8bが回転可能に挿入されて目地部ベースプレート部6が目地交差部ベースプレート部5に対して屈折回動できるようになされていると共に、筒8aはピン8bよりも短尺で、筒8aがピン8bに沿って移動することにより、各目地部ベースプレート部6が、目地交差部ベースプレート部5に対して幅方向に相対変位することができるようになされており、図4(ホ)に示すように、目地交差部ベースプレート部5を挟んで位置する上下の目地部ベースプレート部6,6及び左右の目地部ベースプレート部6,6をそれぞれ幅方向に相対的に寸法aだけずらせて位置させることができるようになされている。その他は、第1実施形態と同様である。
【0027】
この治具4によれば、図5(ロ)(ハ)(ニ)に示すように、目地交差部2から延びる各目地部3…の中心ラインL…の位置に施工誤差などによってズレを生じている場合であっても、目地部ベースプレート部6…を目地交差部ベースプレート部5に対して幅方向に相対変位させることで、そのようなズレを吸収させることができ、各目地部ベースプレート部6の対の側壁7,7をそのような目地部内に対しても挿入させることが可能になる。
【0028】
以上に、本発明の実施形態を示したが、本発明はこれに限られるものではなく、発明思想を逸脱しない範囲で各種の変更が可能である。例えば、上記の実施形態では、十字状の目地交差部に対して乾式止水材を挿入した場合を示したが、同じ十字状の治具4で、T字状やL字状の目地交差部に乾式止水材を挿入するのに用いることも可能であるし、目地交差部がT字状やL字状である場合は、治具をT字状やL字状の治具に構成することも可能である。
【0029】
また、乾式止水材9の種類に制限はなく、要は、弾力性を有し、圧縮させて、目地交差部2から目地部にわたるように配置し、復元させることで目地交差部を止水状態にすることができる各種の乾式止水材であればよい。
【0030】
更に、上記の実施形態では、乾式止水材を外壁の目地交差部に挿入するのに治具4を用いた場合を示したが、本発明の治具は、止水が必要な各種箇所における目地交差部への乾式止水材の挿入に広く用いることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】第1実施形態の挿入用治具の全体を示すもので、図(イ)は斜視図、図(ロ)は内面図、図(ハ)は側面図である。
【図2】図(イ)は同治具への乾式止水材の嵌め込み状態を示す内面図、図(ロ)は同側面図、図(ハ)は要部拡大内面図、図(ニ)は治具に保持された状態の乾式止水材を治具を省略して示す斜視図である。
【図3】図(イ)〜図(ハ)は、目地交差部への乾式止水材の挿入方法を順次に示す側面図である。
【図4】図(イ)は第2実施形態の挿入用治具の全体を示す内面図、図(ロ)は目地交差部ベースプレート部と目地部ベースプレート部との連接部を拡大して示す内面図、図(ハ)及び図(ニ)は目地幅方向への目地部ベースプレート部の動きを示す拡大内面図、図(ホ)は目地幅方向への目地部ベースプレート部の動きの範囲示す拡大内面図である。
【図5】図(イ)は十字目地部を備えた外壁の正面図、図(ロ)〜図(ニ)はそれぞれ、目地交差部を挟む各目地部の中心ラインのズレの態様を示す拡大正面図である。
【符号の説明】
【0032】
2…目地交差部
3…目地部
4…乾式止水材挿入用治具
5…目地交差部ベースプレート部
6…目地部ベースプレート部
7…側壁
8…連接部
8a…筒
8b…ピン
9…乾式止水材
9a…目地側突出部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮状態にした弾力性を有する乾式止水材を目地交差部内から複数の各目地部内にわたるように挿入し、復元させて前記目地交差部を止水状態にするのに用いられる目地交差部用の乾式止水材挿入用治具であって、
目地交差部に配置される目地交差部ベースプレート部と、該目地交差部ベースプレート部に連接され、目地交差部から各目地部側に突出する複数の目地部ベースプレート部とを備え、
各目地部ベースプレート部は、その内面部に、乾式止水材の目地側突出部分を目地幅方向に圧縮状態となるように保持する対の側壁を一体的に備えると共に、該対の側壁は目地部内に挿入可能であり、かつ、各目地部ベースプレート部は目地交差部ベースプレート部との連接部を中心として外側に屈折回動させることができるようになされていることを特徴とする目地交差部用の乾式止水材挿入用治具。
【請求項2】
前記目地部ベースプレート部が、目地交差部ベースプレート部に対して幅方向に相対変位可能に連接されている請求項1に記載の目地交差部用の乾式止水材挿入用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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