説明

目地幅調整治具

【課題】横並びに配置したパネル間の目地幅を所定の長さに確実に調整することができ、さらに、この調整を一人でも簡単に且つ迅速に行うことができる目地幅調整治具を提案すること。
【解決手段】横並びに配置したパネル2,3間の目地幅を調整する目地幅調整治具1であって、治具本体10の一端部に、一方のパネル2の外側端部20に係止させるための係止片11を備え、治具本体10の他端部に、他方のパネル3の外側端部30に押し当てるための押し当て片12と、押し当て片12を治具本体10に沿ってスライド自在に移動させるための操作部13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、横並びに配置したパネル間の目地幅を調整する目地幅調整治具に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅等の建築物の壁面は、例えば特許文献1に示すように、複数の壁パネルをパッキンを介して横並びに配置して形成される。隣り合う壁パネル間の目地幅は、所定の長さとなるよう調整される。
【0003】
従来から、上述の建築物の壁面は、以下のようにして施工される。
【0004】
まず、一方の壁パネルを梁などの構造躯体に固定し、この一方の壁パネルの隣に横並びに他方の壁パネルを配置する。次に、他方の壁パネルをパッキンを介して一方の壁パネルに押し当て、両壁パネルの内側面同士を突き合わせる。そしてさらに、他方の壁パネルを一方の壁パネルに押し当て、両壁パネル間のパッキンを押し潰して、両壁パネル間の目地幅が所定の長さとなるよう調整する。そして、この目地幅が所定の長さとなった時点で他方の壁パネルを構造躯体に固定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−97323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のようにして両壁パネル間の目地幅を調整する場合、施工者の技能によって、その目地幅にバラツキが生じてしまうおそれがある。
【0007】
また、上述の目地幅の調整を一人で行うのは難しく、この調整を迅速に行うことは困難である。
【0008】
そこで、上記事情を鑑みて、本発明は、横並びに配置したパネル間の目地幅を所定の長さに確実に調整することができ、さらに、この調整を一人でも簡単に且つ迅速に行うことができる目地幅調整治具を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明の目地幅調整治具は、横並びに配置したパネル間の目地幅を調整する目地幅調整治具であって、治具本体の一端部に一方のパネルの外側端部に係止させるための係止片を備え、治具本体の他端部に他方のパネルの外側端部に押し当てるための押し当て片とこの押し当て片を前記治具本体に沿ってスライド自在に移動させるための操作部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明の目地幅調整治具は、横並びに配置したパネル間の目地幅を所定の長さに確実に調整することができ、さらに、この調整を一人でも簡単に且つ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態の目地幅調整治具で横並びに配置したパネルの目地幅を調整する状態を示す斜視図である。
【図2】同上の目地幅調整治具単体を示し、(a)はパネルに取り付けた状態の平面図であり、(b)は同状態を屋内側から視た正面図である。
【図3】パネルの突き合わせ部分を示す拡大図である。
【図4】本発明の実施形態の目地幅調整治具で横並びに配置したパネルの目地幅を調整する状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本実施形態の目地幅調整治具1を、横並びに配置した2枚のパネル2,3に取り付けた状態を屋内側から視た斜視図である。本実施形態の目地幅調整治具1は、横並びに配置した2枚のパネル2,3間の目地幅を調整するものである。以下、図1に示す状態を基準として上下を説明し、2枚のパネル2,3が並ぶ方向の手前側を右方とし、奥側を左方とする。
【0014】
パネル2,3は、住宅等の建物の壁面に用いられるサンドイッチパネルからなる壁パネルであり、いずれも同大同形のものである。図1に示すように、パネル3の右側面の屋内側部分には、上下方向全長に亘って右方向(右側面に対して垂直な方向)に突出する突き合せ用突起31が形成されている。この突き合せ用突起31には、全体に亘ってパッキン32が被せられている。この右側面における、突き合せ用突起31よりも屋内側部分には、上下方向全長に亘って角棒状の目地部材7が取り付けられている。目地部材7は、外周部分がロックウールフェルトなどの繊維状無機材料を用いたフェルトで形成されている。図3に示すように、パネル3の左側面にも同様に、その屋外側部分にパッキン32が被さった突き合せ用突起31が形成されている。また、パネル2の左右両側面には、パネル3と同様に、その屋外側部分にパッキン22が被さった突き合せ用突起21が形成されている。両パネル2,3を左右方向に横並びに配置して、両パネル2,3の内側端部24,34同士を接触させると、両パネル2,3は、図3に示すように、パッキン22,32を介して内側端部24,34の突き合せ用突起21,31同士が接触する。ここで、両パネル2,3を突き合せる際には、突き合せ用突起21,31の屋内側に上下方向全長に亘って目地部材7を挟み込む。なお、本実施形態のように突き合せ用突起21,31にパッキン22,32を設けずに、両パネル2,3の突き合せ用突起21,31同士を接触させる際に、別体のパッキンを挟みこむようにしてもよい。
【0015】
上述のパネル2,3は、梁などの構造躯体4に後述の取付用プレート25,35を介して固定される。本実施形態の構造躯体4は、地面に固定された略直方体状の土台部40と、この土台部40の屋内側部分の上端面に固定された断面略L字状のアングル部41と、このアングル部41の屋外側面に固定された略矩形状の自重受部42とから形成されている。土台部40の屋外側の上端面には、パネル2,3が載置される。自重受部42は、その上端部分がアングル部41の上端より上方に突出している。自重受部42は左右方向に間隔を置いて複数(図では2つ)形成されている。この間隔は、1枚のパネル2,3の左右幅の長さ程度となっている。この自重受部42は、パネル2,3の屋内側面に当接して、パネル2,3が屋内側に倒れるのを防止する部分である。また、自重受部42は、土台部40にパネル2,3を載置する際に、載置する箇所の目安となる部分である。
【0016】
パネル2,3には、屋内側面の下部に、アングル部41に取り付けるための取付用プレート25,35が固定されている。なお、図示していないが、パネル2,3には、屋内側面の上部に、梁などの構造躯体に取り付けるための取付用プレートが固定されている。取付用プレート25,35は、パネル2,3に固定される略平板状のパネル固定板26,36と、このパネル固定板26,36にワンサイドボルトにより固定される2つの断面略Z字状の取付板27,37から構成される。なお、この取付用プレート25,35は、固定したパネル2,3の左右方向の中心線に対して線対称となるように設けられている。取付板27,37は、その上端部をパネル固定板26,36に固定することで、取付板27,37の下端部がアングル部41に係止された状態となる。この状態で、パネル2,3はその下端部が構造躯体4に対して固定された状態となる。なお、パネル2,3を構造躯体4に固定するとき以外は、取付板27,37はパネル固定板26,36から外れない程度にねじ締めしておく。2つの取付板27,37は、左右方向に離間させてパネル固定板26,36にそれぞれ固定されている。ここでの離間距離は、自重受部42の左右幅よりも広めに設定されている。
【0017】
本実施形態の目地幅調整治具1は、図2(a)に示すように、左右方向を長手方向とする中空角棒状の治具本体10の一端部(左端部)に、一方のパネル2の左側端部(外側端部20)に係止させるための係止片11を備える。そして、治具本体10の他端部(右端部)に、他方のパネル3の右側端部(外側端部30)に押し当てるための押し当て片12と、押し当て片12を治具本体10に沿って左右方向にスライド自在に移動させるための操作部13とを備える。なお、本実施形態では、治具本体10を細い中空角棒状に形成して、軽量化を図って一人で操作しやすくしている。
【0018】
詳しく説明すると、治具本体10の他端部(右端部)には、操作部13を治具本体10に沿って左右方向にスライド自在に支持する操作部支持片16が取り付けられている。この操作部支持片16は、治具本体10の長手方向に対して略垂直に突出するように取り付けられている。操作部支持片16の先端部(屋外側端部)には、操作部13の後述するスライド部15が螺進退するスライドねじ孔17が左右方向に貫通して形成されている。
【0019】
係止片11は、一端部(左端部)が屋外側に折れ曲がった断面略L字状のものである。係止片11は、この一端部(左端部)を一方のパネル2の外側端部20に係止させることができる。
【0020】
操作部13は、一端(左端)に押し当て片12が回転自在に固定されており、他端部(右端部)に操作つまみ部14を備え、押し当て片12と操作つまみ部14の間にスライド部15を備える。押し当て片12は、左方向に開口した断面コ字状の平板で形成されている。操作つまみ部14は、左右方向の中央部が膨らんだ棒状のものであり、外周面に左右方向に延びる溝が多数形成されている。スライド部15は、棒状のものであり、その外周面に螺旋状のねじ溝が形成されており、操作部支持片16のスライドねじ孔17に左右方向に進退可能に螺合している。操作つまみ部14を回転させることで、押し当て片12を治具本体10に沿って左右方向にスライド移動させることができる。
【0021】
本実施形態の目地幅調整治具1は、操作つまみ部14を回転させて、押し当て片12が最大限左側(係止片11側)に位置した際に、この押し当て片12と係止片11間の距離が、所定の目地幅を介して横並びに設置した両パネル2,3の外側端部20,30間の距離と同じか、またはそれよりも狭くなるように形成されている。
【0022】
本実施形態の目地幅調整治具1は、さらに、治具本体10の、係止片11の右側(押し当て片12側)の部分に、吸着部5を備える。この吸着部5は、一端部(屋内側の端部)に吸着操作部50を備え、他端部(屋外側の端部)に吸盤部51を備える。吸着部5は、この吸着操作部50を操作することで、係止片11が係止されるパネル2に吸盤部51を着脱自在とすることができる。
【0023】
上述した構成の目地幅調整治具1を用いて、横並びのパネル2,3間の目地幅を調整する施工の一例について、以下に説明する。
【0024】
まず、パネル2を、土台部40の屋外側に載置する。このとき、左の自重受部42の左右両側に取付用プレート25の2つの取付板27,27が位置するように、パネル2を載置する。そして、パネル2の取付板27,27をねじ締めして、パネル2の下端部をアングル部41に固定する。なお、このとき、パネル2の上端部の取付用プレートを、梁などの構造躯体に固定して、パネル2の上端部を構造躯体に固定する。
【0025】
次に、パネル3を、パネル2と横並びとなるように、パネル2の右側の土台部40の屋外側に載置する。このとき、右の自重受部42の左右両側に取付用プレート35の2つの取付板37,37が位置するように、パネル3を載置する。すると、パネル3の屋内側面は、自重受部42に接触し、取付板37,37の下端部がアングル部41の屋内側面に接触して、パネル3は屋内外方向に回動しない状態で左右方向に移動自在に支持される。ここで、パネル3は、左側の取付板37がアングル部41に接触する位置から,右側の取付板37がアングル部41に接触する位置までの間で左右方向に移動自在となっている。
【0026】
次に、パネル3をパネル2側に押して、両パネル2,3の内側端部24,34の突き合せ用突起21、31を突き合せる。このとき、両パネル2,3の突き合せ用突起21、31は、パッキン22,32を介して突き合わさった状態となる。このとき、両パネル2,3の内側端部24,24は、目地部材7を介して突き合わさった状態となる(図3参照)。この状態では、両パネル2,3間の目地幅は所定の長さよりも若干長くなっている。
【0027】
そして、この状態で、パネル2の外側端部20に目地幅調整治具1の係止片11を係止させ、吸着部5の吸盤部51をパネル2に吸着させる。すると、目地幅調整治具1は手放しても、パネル2から落ちない状態となる。なお、このように目地幅調整治具1が手放してもおちてこない状態となるため、一人での施工も可能となる。そして、パネル3の右側端部(外側端部30)に、左方向に開口した断面略コ字状の上下に長い接続板6を配置する。そして、操作部13の操作つまみ部14を回転させて、パネル3の外側端部30の目地材7にこの接続板6を介して目地幅調整治具1の押し当て片12を押し当てる。
【0028】
そして、両パネル2,3間の目地幅が所定の長さとなるまで、操作部13の操作つまみ部14を回転させる。このとき、本実施形態では、押し当て片12は、操作部13のスライド部15の螺進退によりスライド移動させるので、微調整が可能であり、押し当て片12を強い力でパネル3の右側端部(外側端部30)に押し当てることができる。
【0029】
その後、この両パネル2,3間の目地幅が所定の長さになったら、操作部13の回転を止める。このとき、図4に示すように、押し当て片12と係止片11とで、両パネル2,3を外側から強く挟み込んだ状態となっている。このとき、吸着部5が治具本体10の長手方向の途中で一旦、パネル2に吸着しているので、締め付けによる治具本体10の撓みの発生を防止できている。その後、パネル3の取付用プレート35の2つの取付板37,37をアングル部41にねじ固定する。さらに、溶接により、パネル固定板36と自重受部42、及び取付板37,37とアングル部41を固定する。なお、このとき、パネル3の上端部の取付用プレートを梁などの構造躯体に固定して、パネル3の上端部を構造躯体に固定する。その後、両パネル2,3の所定幅となった隙間に目地材8を充填する。
【0030】
パネル3の固定が終わったら、目地幅調整治具1の操作部13の操作つまみ部14を回転させて、パネル3の外側端部30から押し当て片12を離す。そして、吸着部5の吸着操作部50を操作して、吸盤部51のパネル2への吸着を解除し、目地幅調整治具1を両パネル2,3から取り外す。
【0031】
本実施形態では、以上のようにして両パネル2,3間の目地幅を調整することができる。
【0032】
以上まとめると、本実施形態の目地幅調整治具1は、横並びに配置したパネル2,3間の目地幅を調整するものである。治具本体10の一端部には、一方のパネル2の外側端部20に係止させるための係止片11を備える。そして、治具本体10の他端部には、他方のパネル3の外側端部30に押し当てるための押し当て片12と、押し当て片12を治具本体10に沿ってスライド自在に移動させるための操作部13とを備えることを特徴とする。
【0033】
上述の目地幅調整治具1を用いれば、横並びに配置した両パネル2,3の両外側端部20,30に、治具本体10の一端部の係止片11と、他端部の押し当て片12をそれぞれ押し当てて、操作部13を操作して、治具本体10に沿って押し当て片12を係止片11側にスライド操作するだけで、両パネル2,3間の目地幅を調整できる。
【0034】
つまり、目地幅調整治具1を用いて、横並びのパネル2、3をその並んだ方向に沿って近づけることができ、従来のように人力だけに頼ることなく、この両パネル2,3間の目地幅を所定の長さに確実に調整することができる。
【0035】
また、係止片11と押し当て片12間の長さを操作部13でスライド調整するだけで、両パネル2,3間の目地幅を調整できるので、一人でも簡単に且つ迅速にこの調整を行うことができる。
【0036】
以上から、実施形態の目地幅調整治具1によれば、横並びに配置したパネル間の目地幅を所定の長さに確実に調整することができ、さらに、この調整を一人でも簡単に且つ迅速に行うことができる。
【0037】
なお、上述の本実施形態では、地面に近い箇所で施工を行ったが、高層箇所での施工にも本実施形態の目地幅調整治具1は好適に利用することができる。
【0038】
また、パネル2,3が上下に長い場合、パネル3の上部と下部でそれぞれ、本実施形態の目地幅調整治具1を用いて、目地幅を調整するようにすることが好適である。
【0039】
また、本実施形態では、目地幅調整治具1を、パネル2,3の屋内側で用いたが、パネル2,3の屋外側で用いてもよい。
【0040】
以上、本発明を添付図面に示す実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の各実施形態に限定されるものではなく、本発明の意図する範囲内であれば、適宜の設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0041】
1 目地幅調整治具
10 治具本体
11 係止片
12 押し当て片
13 操作部
2 パネル
20 外側端部
3 パネル
30 外側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
横並びに配置したパネル間の目地幅を調整する目地幅調整治具であって、
治具本体の一端部に一方のパネルの外側端部に係止させるための係止片を備え、
治具本体の他端部に他方のパネルの外側端部に押し当てるための押し当て片とこの押し当て片を前記治具本体に沿ってスライド自在に移動させるための操作部を備えることを特徴とする目地幅調整治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−172347(P2012−172347A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33972(P2011−33972)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000207436)日鉄住金鋼板株式会社 (178)
【Fターム(参考)】