説明

目地用枠体およびその製造方法

【課題】裏表を目視で容易に確認し得る目地用枠体と、この目地用枠体を製造する方法とを提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂を主原料とし、多数のセルを備える発泡体から構成され、複数のタイルを位置決めするための貫通部を有し、厚さ方向の一方の面が平滑化されている目地用枠体において、前記一方の面に電子線照射を施すことで、表層部に形成されるセルの径と厚さ方向の他方の面の表層部に形成されるセルの径との比を2以上にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、タイル壁等の施工に供される目地用枠体およびその製造方法に関し、更に詳細には、複数のタイルを予め配列させて施工を容易化するための目地用枠体と、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建物外壁の構成部材として、各種タイルが使用されている。タイルは、デザイン、素材および色合いが豊富であり、建物の製品価値を容易に向上させ得るから利用頻度も高い。一般にタイルは、1個ずつ壁に取り付けることで施工される。しかしこの施工方法では手間がかかる。そのため、複数個のタイルを予めパネル基板に貼り付けてユニット化したタイルパネルが好適に使用される。このようなタイルパネルとして、薄い金属板からなる方形の基板上に複数個のタイルを配列・貼着した例が、下記の特許文献1に開示されている。特許文献1に開示のタイルパネルは、容易な取り扱いおよび施工が可能となっている。
【特許文献1】特開平6−81442号公報
【0003】
図5は、前述の特許文献1に示される例に準じたタイルパネル20を示し、また図6〜図8は、夫々パネル20を使用したタイルの施工に関する概略工程を示している。図5に示すタイルパネル20は、複数のタイル22と、このタイル22を所要位置に位置決めする格子形状の目地用枠体50と、この両者22、50を接着等して仮固定するパネル基板24とからなる。ここでパネル基板24としては、片面接着シート材が用いられる。なお図5は、4つのタイル22からタイルパネル20を構成する例を示している。
【0004】
図6は、タイルパネル20の製造工程を示している。すなわち(1)目地用枠体50を準備する(図6(a)参照)。(2)目地用枠体50に設けられて厚さ方向に貫通する複数の貫通部50aの夫々にタイル22を位置決めしつつ嵌め込んでいく(図6(b)参照)。(3)目地用枠体50およびタイル22における厚さ方向の一方の面に、パネル基板24を貼着して、目地用枠体50およびタイル22を仮固定する(図6(c)参照)。そしてこのタイルパネル20は、図7に示す如く、モルタル等の固定手段26を使用して施工対象物(以下、単に対象物と云う)Tに対して取り付けられる(図7(a)および(b)参照)。そして固定手段26が硬化して、複数のタイル22の対象物Tへの取付固定が完了した後、タイル22を仮固定しているパネル基板24および目地用枠体50を取り外す(図7(c)参照)。図8は、図7(b)における目地用枠体50、タイル22、固定手段26および対象物Tの関係を示す断面図である。
【0005】
ここで、施工に関する一連の流れをスムーズに実施するため、(A)目地用枠体50において固定手段26と接触する面は剥がれ易く、(B)目地用枠体50においてパネル基板24と接触する面は強固な付着状態を維持することが望ましい(図8参照)。これらの点に問題があると、目地用枠体50の固定手段26からの引き剥がしが困難となる。またタイル22の対象物Tに対する施工時に、パネル基板24が剥がれてしまう問題も発生する。これは後に続く作業や、繰り返し作業を困難なものとし、生産性を大きく低下させる原因となる。この問題は、例えば目地用枠体50におけるパネル基板24との接触面を平滑な状態とし、固定手段26(引き剥がし対象)との接触面を非平滑な状態とすることで解決されていた。この接触面の状態は、目地用枠体50の素材として熱可塑性樹脂を使用し、平滑とするべき面に加熱を施した後、冷却ロール圧縮を行なうことで形成される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、このような処理により製造された目地用枠体50では、平滑化された(パネル基板24側の)接触面と、それ以外の平滑化されていない(固定手段26側の)接触面との差違が目視では殆ど確認できない。このため目地用枠体50の使用時に、裏表を間違えてしまうことがある。この裏表の間違いは、目地用枠体50の引き剥がしを困難とするだけでなく、場合によっては目地用枠体50自体を損傷させる大きな問題を招く。
【0007】
この発明は、従来技術に係る前記問題点に鑑み、これを好適に解決するべく提案されたものであって、裏表を目視で容易に確認し得る目地用枠体と、該枠体を製造する方法とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願発明の目地用枠体は、熱可塑性樹脂からなる発泡体から構成され、複数のタイルを位置決めするための貫通部を有し、厚さ方向の一方の面が平滑化されている目地用枠体において、
前記一方の面の表層部に形成されるセルの径(S)と、厚さ方向の他方の面の表層部に形成されるセルの径(L)との比(L/S)が、2以上となっていることを要旨とする。
【0009】
従って、請求項1に係る発明によれば、目地用枠体において
また平滑で密着度の高い一方の面と、比較的粗面で密着性に劣る他方の面とを、目視で容易に確認し得る。
【0010】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願発明の目地用枠体の製造方法は、主原料たる熱可塑性樹脂に対して、副原料たる発泡剤および架橋剤等の成分を添加した発泡体原料から製造され、複数のタイルを位置決めするための貫通部を有する目地用枠体の製造方法において、
前記発泡体原料から形成された前記シート状物の一方の面だけに電子線照射を施して表層部を架橋させた後に、
シート状物全体を加熱して、該シート状物全体を化学架橋および発泡させ、
次いで発泡体とされたシート状物に平滑化処理が施されたことを要旨とする。
【0011】
従って、請求項2に係る発明によれば、目視で平滑化されている面の判別をなし得る目地用枠体を好適に製造し得る。
【0012】
請求項3に記載の発明では、前記電子線照射は、加速電圧が150〜350Kvの範囲で、かつ照射線量が50〜100kGyの範囲で行なわれることを要旨とする。
従って、請求項3に係る発明によれば、目視で平滑化されている面の判別をなし得る目地用枠体を、効率的に製造し得る。
【発明の効果】
【0013】
以上に説明した如く、本発明に係る目地用枠体およびその製造方法によれば、目地用枠体の裏表を目視で容易に確認できる効果を奏する。また裏表を目視で容易に確認できる目地用枠体を好適に製造し得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明に係る目地用枠体およびその製造方法につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照しながら以下説明する。本願の発明者は、熱可塑性樹脂を主原料とする発泡体から目地用枠体を得る際に、厚さ方向の一方の表面に電子線照射による架橋を施し、その後の加熱により他の部位について架橋を施しつつ全体を発泡させることで、裏表が目視で容易に確認できる目地用枠体が得られることを見出したものである。なお、図5〜図8に既出であって、実施例に用いられる部材については、同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0015】
本発明において目地用枠体とは、タイルパネルを得る際にタイルの位置決めに使用される、例えば格子状または枠状の部材を指す。また基板側面とは、目地用枠体において、タイルを仮固定するパネル基板に接触する厚さ方向の一方の面を指す。一方、剥離面とは、目地用枠体において、タイルを対象物Tにモルタル等の固定手段によって取付施工する際に、該固定手段に接触する厚さ方向の他方の面を指す。
【0016】
本発明の好適な実施例に係る目地用枠体10は、図1に示す如く、基本的にタイルパネル20をなす複数のタイル22の位置決めをする部材であって、厚さ方向に貫通する複数の貫通部10aが設けられている。貫通部10aには、夫々タイル22が嵌め込まれるようになっている。そしてパネル基板24との接触面(以下、基板側面と云う)12には、平滑化処理が施されており、高い密着度により強い付着力を発現させている。これに対して、タイル22を対象物Tに取り付ける施工時に、固定手段26と接触する面(以下、剥離面と云う)14には、平滑化処理が施されていない。この剥離面14については、例えばエンボス加工等の公知処理を施して、積極的に凹凸状態を付与してもよい。この他、一般に目地用枠体10の厚さは、タイル22の厚さ以下とされている。なお、目地用枠体10を用いたタイルパネル20の構造は、図5で示しだ従来技術に係るタイルパネル20と略同じである。
【0017】
また基板側面12の表層部において目地用枠体10をなす発泡体のセル径(S)と、剥離面14の表層部において目地用枠体10をなすセル径(L)との比(L/S)は2以上、好適には2.5以上とされる。この値が2未満であると、セル径の差違に基づいた目視による裏表の確認が困難となる。従って、基板側面12のセル径が200μmの場合には、剥離面14のセル径は400μm以上、好適には500μm以上とすれば、本発明に係る目地用枠体10のセル径の差違を目視により容易に確認できる。
【0018】
目地用枠体10は、発泡剤でセルを形成し、かつ架橋によってセル径を調整している(後述)。このため、この方法で調整が容易なセル径を考えて、基板側面12の表層部におけるセル径(S)は、70〜300μmの範囲とされている。一方、剥離面14の表層部におけるセル径(L)が、300〜1200μmの範囲とされている。なお本実施例では、複数のタイル22をユニット化したタイルパネル20を例に挙げて説明しているが、本発明はこれに限定されず、建物の外壁および内壁等のタイルと同様に取付施工される装飾部材一般に採用し得る。また本実施例では、平滑化されている基板側面12の表層部に形成されるセル径が小さくされ、セル径が平滑性に与える影響を排除しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、剥離面14の表層部に形成されるセルの径を小さくしてもよい。
【0019】
(製造方法および製造装置)
以下に実施例に係る目地用枠体10の製造方法と、この方法を好適になす製造装置の一例とを示す。目地用枠体10の製造方法は、図2に示すように、基本的に原料準備工程S1、電子線照射工程S2、加熱発泡工程S3、平滑化工程S4および最終工程S5からなる。また各工程毎の、工程を経た結果物の様子を図3に示す。製造装置30は、図4に示す如く、前段の架橋発泡部32と、中段の平滑化処理部40と、後段の最終処理部46とからなる。なお各機器の間等には、シート状物(後述)を好適に移送するため、適宜ローラが設置されている。
【0020】
架橋発泡部32は、裏表に径の異なるセルを備え、目地用枠体10に加工される発泡体を製造する部位である。この架橋発泡部32は、原料混合・混練部34と、電子線架橋部36と、加熱発泡部38とからなる。原料混合・混練部34は、発泡体をなす各原料を混合・混練して、発泡体の基となる発泡体原料(以下、コンパウンドと云う)とする部位である。ここを通過することで原料準備工程S1が完了する。本実施例では架橋発泡部32として、汎用の押出機が使用されている。従って、原料の混合等の実施と共に、発泡後に目地用枠体10と同じ厚さとなるシート状物への成形も同時に実施可能となっている(図3(a)参照)。この混合・混練と、シート状物への成形とは個別に実施してもよい。また主原料、副原料等の混練容易性を考えて、混合・混練を多段的に実施してもよい。
【0021】
原料準備工程S1で混合・混練される目地用枠体10の各原料としては、以下の物質が挙げられる。すなわち加熱による平滑化処理が可能であって、電子線照射および(化学)架橋剤によって架橋化が可能な、主原料としての各種熱可塑性樹脂と、副原料である発泡剤、架橋剤および必要に応じて添加されるその他成分とである。ここで熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、エチレン−アクリル酸アルキルエステル、エチレン−酢酸ビニル共重合体またはエチレン−αオレフィン共重合体の如きポリオレフィン樹脂が挙げられる。発泡剤としては、ADCA(アゾジカルボンアミド)またはジニトロソペンタメチレンテトラミンの如き、公知物質が挙げられる。架橋剤としては、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル(tert−ブチルパイオキシ)ヘキサン、ジ(tert−ブチル)パーオキサイドまたはtert−ブチルクミルパーオキサイドの如き公知の有機過酸化物が挙げられる。またその他成分として、酸化防止剤、着色剤、難燃剤または充填剤等の公知物質が挙げられる。
【0022】
電子線架橋部36は、シート状とされたコンパウンドにおける厚さ方向の一方の表面(以下、処理面と云う)にだけ電子線を照射して、該処理面の表層部の電子線架橋を進行させる部位である。電子線架橋部36には、公知の電子線照射機器が使用される。ここを経ることで電子線照射工程S2が完了し、シート状のコンパウンドの処理面とこの処理面から一定の厚さ範囲内だけに架橋が生起され、硬化された状態となる(図3(b)参照)。ここで電子線照射は、好適には加速電圧を150〜350Kvの範囲とし、かつ照射線量を50〜100kGyの範囲として実施される。この範囲とすることで、最終的に得られる目地用枠体10の基板側面12の表層部におけるセル径を、70〜300μmの範囲に制御し得る。
【0023】
加速電圧は、照射される電子線の到達する深さを決定している。このため、加速電圧が150Kv未満の場合、架橋が進行される処理面の表層部の厚さが充分とならない。一方、350Kvを超えると、電子線がシート状物の厚さによっては裏側にまで到達して、後に実施される加熱発泡工程S3での化学架橋による発泡硬化の効果が得られない。すなわち、何れの場合であっても、目地用枠体10の裏表で確認できるセル径の差異が2未満となり、目視による判別が困難になる。照射線量については、50kGy未満では電子線照射を受けた部位が充分に架橋されず、充分な樹脂強度が得られない。従って、処理面の表層部のセル径を小さくし得ず、目地用枠体10の裏表で確認できるセル径の差異が2未満となり、目視による判別が困難になる。一方、100kGyを超えると、架橋度が高くなることから硬度が高くなり過ぎて、後述の加熱発泡工程S3でひび割れ等が発生し、良好な発泡体が得られなくなる。
【0024】
ここで、電子線照射による処理を施す深さは、径の小さなセルが外部から目視可能に発生する程度の数値でよい。具体的には、100μm程度とされる。しかし本発明はこれに限定されず、更に深層部にまで電子線照射による処理を施してもよく、目地用枠体10の厚さの1/2程度が好ましい。このような処理によって、処理面における架橋度を高めて、更に小さな径をもつセルを形成し得る。但し、処理がなされた部位は、弾性が高まって硬度が高くなるため、高い倍率での発泡を考える場合には、伸びが小さくなりワレ不良を生じ易いので注意が必要である。
【0025】
加熱発泡部38は、電子線照射が完了したシート状のコンパウンド全体に加熱を施す部位である。ここを通過することで、加熱によってコンパウンド全体の架橋および発泡を進行させる加熱発泡工程S3が完了する。すなわち加熱発泡工程S3を経ることで、初めてセルが形成される(図3(c)参照)。なお前述の電子線照射工程S2を経ることで、既に処理面の表層部ついては架橋がなされているため、この加熱発泡工程S3では大きく架橋が進行することはない。この加熱発泡工程S3は、例えばコンパウンドが架橋・発泡するに充分な熱量を供給可能で、かつ充分な時間を掛けて通過するように設定されたトンネル式加熱炉が使用される。また加熱ゾーンを、処理温度および時間を変えた複数に分けてもよい。この場合、架橋度および発泡度合いを細かく制御し得る。
【0026】
このときセル径は、コンパウンドの粘弾性によって変化する。具体的には、既に電子線照射によって架橋度が高い処理面の表層部では、粘性が高くなっているため、小さいセルが多数発生する。その他の部位では、架橋と発泡とが加熱によって同時的に進行するため、架橋度が低い状態で発泡が進行する。すなわち粘性が低い状態で発泡が進行するため、小さいセルが合同してサイズの大きなセルが形成される。このような機構によって、シート状のコンパウンドにおいて電子線照射を受けた処理面の表層部と、それ以外の部位とで、セル径に差違を生じさせている(図3(c)参照)。
【0027】
平滑化処理部40は、加熱溶融部42と平滑化部44からなる。加熱溶融部42は、架橋・発泡が完了したシート状の発泡体の処理面側を加熱して、半溶融させる部位である。例えば、発泡体を半溶融させるに足る熱量を供給する電気式のシート状ヒータ等が使用される。平滑化部44は、加熱溶融部42の直後に配置され、半溶融状態にある処理面を平滑化しつつ冷却する部位である。例えばチラー水(一定水温以下とされた水)を使用した水冷式の一対の冷却圧縮ロールが使用される。一対の圧縮ロールを使用する場合、2つの圧縮ロール間の距離(クリアランス)は、目地用枠体10と略同等な厚さに設定される。すなわち、平滑化部44で発泡体を処理することで、発泡体の平滑化処理と、目地用枠体10の厚さ制御との双方を同時に実施可能としている。
【0028】
ここでは加熱および冷却圧縮ロールにより平滑化処理が行なわれるが、連続加熱プレス等の公知手段によって平滑化を実施してもよい。この平滑化処理部40を経ることで、平滑化工程S4が完了し、処理面側だけが平滑化され、かつ目地用枠体10と略同じ厚さとされたシート状の発泡体が得られる(図3(d)参照)。なお、ここで半溶融とは、発泡体が輪郭形状を保持しつつ、押圧等の外力によって容易に変形し得る溶融状態を意味する。また本実施例では、電子線照射を施した処理面に平滑化処理を実施しているが、本発明はこれに限定されない。
【0029】
最終処理部46は、目地用枠体10の基となる発泡体に打ち抜きによる形状加工や、検査等を実施する最終工程S5を実施する部位である。本実施例では、目地用枠体10の厚さとして巻き取られたシート状の発泡体を、所要の長さにカットし、タイル22の配置形状に合致した複数の貫通部10aを打ち抜く処理を施している。本最終工程S5を経ることで、製品としての目地用枠体10が完成する。ここで電子線照射が施された処理面が、目地用枠体10における基板側面12となり、その裏側の面が剥離面14となる。また本実施例では目地用枠体10への形状加工を、製造工程の最終段階で実施しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、加熱発泡部38の直後に配置したり、原料混合・混練部34に配置して、コンパウンドのシート状への成形と共に、目地用枠体10としての形状に加工してもよい。このようにすることで、多様な製造ラインに容易に対処し得る。
【0030】
(実験例)
次に、本発明の好適な実施例に係る目地用枠体について、製造時になされる電子線照射に関する実験例を示す。なお本発明は、この実験例に限定されるものではない。
【0031】
主原料として低密度PE(ポリエチレン)を、副原料である発泡剤としてADCA(アゾジカルボンアミド)を、(化学)架橋剤として汎用のジクミルパーオキサイドを、夫々使用した。これを主原料100重量部、発泡剤15重量部、架橋剤0.7重量部の割合で、押出機によって混合・混練し、厚さ1.3mm、幅450mmのシート状のコンパウンドとして連続的に成形した。このシート状のコンパウンドに、下記の表1の条件で電子線照射を施して処理面を形成した後、温度185℃、時間5分の条件による第一加熱を実施し、これに連続して温度215℃、時間5分の条件による第二加熱を実施してシート状の発泡体を得た。次に発泡体の処理面に臨むように、かつ離間距離を100mm程度として設置したシート状ヒータ(500mm×500mm)を200℃の条件で発熱させて、該処理面を半溶融させた後、クリアランスが0.5mmに設定されたチラー水冷却圧縮ロールによって平滑化処理を施した。この製造方法によって、表1に記載した条件で電子線照射を実施して、実施例1〜5および比較例1〜4に係る各シート状の発泡体を製造した。そして得られたシート状の発泡体の状態と、平滑化された処理面の状態および該処理面の裏側の面の状態とを、目視にて確認した。またセル径についても、測定した。なお実験例における処理面は、本発明に係る基板側面となり、実験例における裏側の面は、本発明に係る剥離面となる。
【0032】
(使用原料等)
・低密度PE:商品名 ペトロセン;東ソー株式会社製(密度0.92kg/m、MFR(メルトマスフローレート)1.5)
・発泡剤:汎用のアゾジカルボンアミド
・(化学)架橋剤:汎用のジクミルパーオキサイド
・押出機:商品名 FS30;株式会社池貝製
・セル径の測定方法:JIS K 6767,8.6 セル数 附属書Aに準拠して25mm当たりのセルの数を計量し、ここからセル径を算出した。
【表1】

【0033】
(実験の結果)
実験の結果を上記の表1に併せて示す。この表1の結果から、電子線照射の条件は、加速電圧が150〜350Kvの範囲とされ、照射線量が50〜100kGyの範囲とされることで、裏表の判別が可能となることが確認された。また加速電圧の最適値は、200Kvであることも併せて確認された。なおこのときのセル径は、処理面側が200μm(S:セル数125個/25mm)、裏側の面側が500μm(L:セル数50個/25mm)で、セル径の比(L/S)は2.5であった。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の好適な実施例に係る目地用枠体を、タイルパネルの一部として施工対象物に取り付けた際の状態を示す断面図である。
【図2】実施例に係る製造方法を示す工程図である。
【図3】製造に係る各工程を経た結果物の状態を示す説明図である。
【図4】実施例に係る目地用枠体を製造する装置の一例を示す概略図である。
【図5】タイルパネルの構造を示す概略斜視図である。
【図6】タイルパネルの製造工程を概略的に示す説明図である。
【図7】タイルパネルを用いて対象物にタイルを取り付ける工程を概略的に示す説明図である。
【図8】タイルパネルが対象物にモルタル(固定手段)を介して取り付けられた状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 目地用枠体、10a 貫通部、12 一方の面、14 他方の面
22 タイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる発泡体から構成され、複数のタイルを位置決めするための貫通部を有し、厚さ方向の一方の面が平滑化されている目地用枠体において、
前記一方の面の表層部に形成されるセルの径(S)と、厚さ方向の他方の面の表層部に形成されるセルの径(L)との比(L/S)が、2以上となっている
ことを特徴とする目地用枠体。
【請求項2】
主原料たる熱可塑性樹脂に対して、副原料たる発泡剤および架橋剤等の成分を添加した発泡体原料から製造され、複数のタイルを位置決めするための貫通部を有する目地用枠体の製造方法において、
前記発泡体原料から形成された前記シート状物の一方の面だけに電子線照射を施して表層部を架橋させた後に、
シート状物全体を加熱して、該シート状物全体の架橋および発泡を進行させ、
次いで発泡体とされたシート状物に平滑化処理が施された
ことを特徴とする目地用枠体の製造方法。
【請求項3】
前記電子線照射は、加速電圧が150〜350Kvの範囲で、かつ照射線量が50〜100kGyの範囲で行なわれる請求項2記載の目地用枠体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−45315(P2008−45315A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−220306(P2006−220306)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(000119232)株式会社イノアックコーポレーション (1,145)
【Fターム(参考)】