説明

目止め塗工紙

【課題】顔料及び接着剤からなる目止め塗工層を紙基材上に設けながら、従来と同等以上の目止め性を有し、汎用性の高いオフセットや凸版印刷方式での情報記録が可能な目止め塗工紙とするとともに、産業用工程紙に求められる耐熱性を付与した目止め塗工紙とする。
【解決手段】紙基材1の片面に、顔料及び接着剤からなる目止め塗工層を有する目止め塗工紙について、接着剤が合成樹脂ラテックスとポリビニルアルコールとを含有し、目止め塗工層が多分岐高分子を含有し、S.H.O法によるピンホールが25cm2当りピンホール15個以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙基材の表面に目止め塗工層が設けられた目止め塗工紙に関するものである。より詳しくは、目止め塗工層上に剥離剤層や粘着剤層が設けられて剥離紙やタック紙などとして用いられる目止め塗工紙に関するもので、目止め塗工層上に見栄えの良い印刷を施すことも可能な、ビジュアル化に対応した目止め塗工紙に関するものである。特に、半導体製造工程等の産業用工程紙として使用される高温雰囲気に晒されても耐加熱劣化性がある、印刷適性と耐加熱劣化適性とを兼ね沿えた目止め塗工紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、剥離紙やタック紙においては、高価なシリコーン剤や粘着剤等の使用料削減を目的として、シリコーン剤や粘着剤等の紙基材への浸透を防止するため、耐溶剤性及び耐水性に優れたポリエチレンやポリプロピレン、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどの高分子化合物を、塗工、貼合、ラミネート等の手段により紙基材上に被膜形成せしめた基材を用いることが一般的に知られている。しかしながら、このように強固な耐溶剤性及び耐水性を有する被膜層を持つ剥離紙やタック紙は、離解性に劣り、古紙として回収しパルプの原料として使用すると、離解時に被膜層そのものが大きなシート状に残存したり、細片化した被膜層が抄紙工程に混入したりし、シリンダードライヤーなどに融着する等の様々な問題が発生する。そのため、このようなラミネート型の紙は古紙として利用できず、使用後は廃棄物として焼却処分等されているのが現状である。しかしながら、昨今のリサイクル化の推進や環境保護への取り組みといった社会的動向を背景に、古紙として回収し、容易に離解可能であり、パルプの原料として使用可能であることが、必要不可欠な条件となりつつある。
【0003】
そこで、現在では、ラミネートに置き換わる方策として、顔料とアセチル化デンプンおよび/またはリン酸エステル化デンプンを用いた接着剤とからなる目止め塗工層を紙基材上に設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。もっとも、特許文献1は、粘着剤層に凹凸や空隙ができて剥離性が低下し、剥離紙としての機能を果たせなくなる恐れがあるため、従来公知の印刷用に供される塗工紙と比べ、カレンダーにて目止め層表面の高密度化、平滑度を高めるのが好ましいとしている。
【0004】
このように、顔料と接着剤とからなる目止め塗工層を紙基材上に設ける方策は、カレンダーによる平坦化処理と顔料及び接着剤から成る所謂浸透防止層(目止め層)の効果により、耐溶剤性及び耐水性、高価なシリコーン剤や粘着剤等の使用量削減を図ることができる。
【0005】
一方、昨今のビジュアル化は、従来剥離後廃棄されていた剥離紙や貼り付けにより記載情報が隠蔽されてしまう粘着紙などにおいても求められるようになり、シリコーンや粘着剤が塗布される目止め層への情報記録が試みられている。しかしながら、本来目止め塗工紙として供するために、顔料と接着剤とからなる目止め塗工層を紙基材上に設け、カレンダーにて塗工層表面の高平滑化が図られた目止め層への印刷は、特に目止め層が高密度化しているため、インクの乾燥性、セット性が極端に悪く、汎用性の高いオフセットやトッパン印刷方式での情報記録は、極めて困難な状況にある。
【0006】
また、半導体製造工程等で使用される工業用工程紙用途での剥離紙は、粘着剤層をデバイス基盤に貼り付けた状態で導電固定工程を200℃以上の加熱条件で行われる。しかしながら、紙は一般に180℃以下の温度で使用するもので、200℃以上の高温処理時には強度劣化と退色が進み、耐熱性にも問題があった。これらを解決する手段として、顔料及びバインダー又はバインダーのみを用いる方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、この方法によると、引裂強さを補えても、被膜が強すぎ、先の印刷適性を併せもつことは、困難な状況にある。
【特許文献1】特開平8−120599号公報
【特許文献2】特開2006−291383号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする主たる課題は、顔料及び接着剤からなる目止め塗工層を紙基材上に設けながら、従来と同等以上の目止め性を有し、汎用性の高いオフセットや凸版印刷方式での情報記録が可能な目止め塗工紙を提供するとともに、産業用工程紙に求められる耐熱性を付与した目止め塗工紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決した本発明は、次のとおりである。
〔請求項1記載の発明〕
紙基材の少なくとも片面に、顔料及び接着剤からなる目止め塗工層を有する目止め塗工紙であって、
前記接着剤が合成樹脂ラテックスとポリビニルアルコールとを含有し、
前記目止め塗工層は、多分岐高分子を含有し、
S.H.O法によるピンホールが、25cm2当りピンホール15個以下である、
ことを特徴とする、目止め塗工紙。
【0009】
〔請求項2記載の発明〕
前記目止め塗工層表面の加熱劣化試験によるΔa値が、5未満であり、
当該加熱劣化試験による引裂強度の残存率が、50%以上である、
請求項1記載の目止め塗工紙。
ここで、前記加熱劣化試験とは、塗工紙を270℃に設定した恒温槽内で6分間熱処理した後、温度23℃、湿度50%環境の恒温恒湿室内で24時間保持し、この加熱処理をした後の塗工紙と当該加熱処理をする前の塗工紙とを比較する試験であり、
Δa値=「当該加熱処理前のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」−「当該加熱処理後のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」の絶対値、
引裂強度の残存率(%)=(「当該加熱処理後のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」/「当該加熱処理前のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」)×100である。
【0010】
〔請求項3記載の発明〕
前記合成樹脂ラテックスが、粒径250〜300nmの合成樹脂ラテックス「A」と粒径80〜100nmの合成樹脂ラテックス「B」とを含み、前記合成樹脂ラテックス「A」:前記合成樹脂ラテックス「B」が70:30〜30:70の質量割合であり、
前記ポリビニルアルコールが、ケン化度98〜99mol%で、重合度300〜2400である、
請求項1又は請求項2記載の目止め塗工紙。
【0011】
〔請求項4記載の発明〕
前記目止め塗工層は、ロッドを装着したロッド型塗工装置を用いて設けられており、
前記ロッドが、溝を有さないプレーンロッド、又は、深さが25μm以下、ピッチが50μm以下、山の長さが10μm以下の溝を有するロッドとされている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の目止め塗工紙。
【発明の効果】
【0012】
本発明によると、顔料及び接着剤からなる目止め塗工層を紙基材上に設けながら、従来と同等以上の目止め性を有し、汎用性の高いオフセットや凸版印刷方式での情報記録が可能で、270℃の乾燥雰囲気に6分以上晒しても紙の色目が変化し難く、引裂強度の残存率が50%以上保持できることを特徴とする目止め塗工紙となる。またこの目止め塗工紙は容易に離解可能であり、パルプ原料に再利用が容易である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明の実施の形態を説明する。
本実施の形態の目止め塗工紙は、図1に示すように、紙基材1の少なくとも片面、図示例では両面に、顔料及び合成樹脂ラテックス、ポリビニルアルコール及び多分岐高分子を含む目止め塗工層2,2を有する。
【0014】
本形態の紙基材1は、機械的離解作用により水中で分散しやすいパルプを主成分とするものであれば特に制限はなく、一般的に包装用途などで使用されている晒、または未晒クラフト紙(酸性紙または中性紙)や、純白ロール紙、その他ダンボール用、建材用、白ボール用、チップボール用等に用いられる板紙等が任意に使用できる。ただし、好ましくはヤンキードライヤー等で緊張乾燥がなされた片艶クラフト紙、またはスーパーキャレンダーなどによるキャレンダー処理が施された晒/未晒クラフト紙等、表面が高平滑処理されたものである。このように高平滑な紙基材1を使用した場合、目止め塗工層2,2中の平板状顔料は、乱れることなく均一に、かつ塗工面に対して平行に配列しやすくなるため、目止め性能が格段に向上する。
【0015】
本形態においては好ましくは目止め塗工層2,2表面の3次元表面粗さRaが、0.6μm〜5.0μm、更に好ましくは2.0μm〜5.0μmである。3次元表面粗さRaをコントロールすることで、オーバーコートするニス・シリコーン・PVA・長鎖アルキル系樹脂・アクリル樹脂等の機能性樹脂皮膜3,3の皮膜精度を低塗布量で実施できると共に、オーバーコート前のオフセット・凸版印刷時のセット性を同時に満たすことができる。具体的には、3次元表面粗さRaが5.0μmを超えると、機能性樹脂皮膜3,3の皮膜精度が悪化する傾向が生じ、機能を発揮する皮膜形成が困難になる場合がある。他方、3次元表面粗さRaが0.6μmを下回ると、機能性樹脂皮膜3,3の皮膜精度が良過ぎることで、転写汚れを発生し易くなる問題が生じる。
【0016】
本形態において、3次元表面粗さRaをコントロール(調節)する方法は、特に限定されず、例えば、近年盛んに採用されている弾性ロールを用いたソフトカレンダー等の密度を上げることなく表面を平坦化する平坦化処理手段にて塗工層表面を平坦化する方法、予め、澱粉やPVA、アクリル樹脂等のクリアーコート剤をアンダー塗工する方法、原紙の抄造段階における脱水後の工程において、予め原紙表裏面に平坦化処理(プレカレンダー処理)する方法等を例示することができる。
【0017】
ここで、3次元表面粗さRaは、JIS B 0601にて定義される中心線平均粗さ(μm)である。当該中心線平均粗さ(Ra)とは、触針式の粗さ測定器にて計測した基材の断面波形を粗さ曲線とし、この粗さ曲線をある一定範囲で抜き取った部分(基準長さ)において、当該基準長さ方向で、かつ粗さ曲線で囲まれる面積を二等分するような平均線を、この断面波形の中心線とした場合に、この抜き取り部分における中心線と粗さ曲線f(x)に囲まれた面積の総和を、基準長さで除した数値をマイクロメートル(μm)表示した値を指す。
【0018】
本形態の目止め塗工紙は、S.H.O法による耐溶剤性値が、25cm2当りピンホール15個以下、好ましくは0個〜10個以下である。S.H.O法でピンホールの個数を25cm2中に15個以下にすることで、オーバーコートする機能性樹脂皮膜3,3形成時の染み込みによる皮膜精度の低下を抑え、低塗工量で安定した皮膜を形成できる。
【0019】
本形態において、ピンホールの個数をコントロール(調節)する方法は、先の平坦化処理にも起因するものの、例えば、本発明に基づく塗工層塗料処方を用いながら、塗工量を増やす方法、ソフトカレンダー等の密度を上げることなく表面を平坦化する平坦化処理手段にて塗工層表面を平坦化する方法、予め、澱粉やPVA、アクリル樹脂等のクリアーコート剤をアンダー塗工することで、塗工層の含浸を制御する方法等を例示することができる。
【0020】
本形態の目止め塗工紙は、目止め塗工層2,2表面の加熱劣化試験によるΔa値が、5未満、好ましくは0.5〜3.0である。また、加熱劣化試験による引裂強度の残存率が、50%以上、好ましくは65%〜80%であることで、半導体製造工程で用いる産業用工程紙のように、200℃以上の高温環境下で紙にテンションを掛けても紙端からの裂けを発生しにくくすることができる。これに対し、Δa値が5以上であると、加熱による紙の変色が発生し、見た目に悪くなる。他方、引裂強度の残存率が50%未満であると、工程中の断紙の要因となり、工程中の紙粉や異物の混入要因となる。
【0021】
ここで、加熱劣化試験とは、塗工紙を270℃に設定した恒温槽内で6分間熱処理した後、温度23℃、湿度50%環境の恒温恒湿室内で24時間保持し、この加熱処理をした後の塗工紙と当該加熱処理をする前の塗工紙とを比較する試験であり、Δa値=「当該加熱処理前のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」−「当該加熱処理後のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」の絶対値、引裂強度の残存率(%)=(「当該加熱処理後のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」/「当該加熱処理前のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」)×100である。
【0022】
また、Δa値を調節する方法は、特に限定されず、例えば、塗工層中に水酸基を多く含むことが可能な多分岐高分子を使用する方法、ポリビニルアルコールを添加する方法、無機物結晶水による気化熱を利用し紙面温度を下げる方法等によることができる。特に、多分岐高分子とポリビニルアルコールを併用することにより多分岐高分子とポリビニルアルコール分子を結合させることで多分岐高分子内にヒドロキシル基を多く含むことで保水性の高い塗工層の形成を誘発できる。なお、多分岐高分子またはポリビニルアルコールを添加して調節する場合において、好ましい多分岐高分子とポリビニルアルコールは、後述する。
【0023】
さらに、引裂強度の残存率を調節する方法も特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコールを添加する方法、ポリアクリルアマイドを添加する方法、原紙のフリーネスを下げる方法等によることができる。特に、ポリビニルアルコールを添加して調節する場合において、好ましいポリビニルアルコールは、後述する。
【0024】
本形態の顔料には、平均アスペクト比5以上、好ましくは5〜10の平板性の顔料が主原料(50質量%以上)として好適に用いられる。平均アスペクト比が5未満のものは、顔料自体の平板性が低くなり、塗工面に対して顔料を敷き詰める用に配向する事が困難であるため目止め性能が劣る。ここで、本形態でいうアスペクト比は、顔料の体積平均粒子径を、その厚さで除した値であり、この時の顔料の厚さは、電子顕微鏡による直接観察によって求める方法、及びMaxwellの曲路効果(J.Macromol.Sci.(Chem),Al(5),929(1967))によって求める方法などがある。特に後者の場合は、顔料を含んだ目止め層2,2のガス透過係数が顔料のアスペクト比と体積分率より求められることから、顔料と接着剤との配合比率を変えた目止め層において、このガス透過係数を求めることによってアスペクト比が得られ、このアスペクト比と体積平均粒子径より、顔料の厚さが決まる。このアスペクト比は、その値が大きいほどより平板性が高く、目止め層中における層数が多くなるために高い目止め性能を発揮するといえる。本形態においては、測定の簡便性や精度の点から、顔料の厚さの測定には電子顕微鏡による直接観察より得られた値を用いている。
【0025】
本形態で好適に用いられる顔料は、先にも記したようにアスペクト比が5以上であり、かつ塗工後もその平板性を保持するものであれば特に限定されるものではないが、この条件を満たす顔料の中でも、特にフィロケイ酸塩化合物(層状構造を有する層状ケイ酸塩化合物)であることが好ましい。フィロケイ酸塩化合物に属するものは板状または薄片状であって明瞭な劈開を有し、クレー(クレー鉱物)、雲母族、脆雲母族、パイロフィライト、タルク、スメクタイト、バーミキュライト、緑泥石、セプテ緑泥石、蛇紋石、スチルプノメレーン、モンモリロナイトなどがある。これらの中でも特に雲母族、タルクが好ましい。雲母族には、白雲母(マスコバイト)、絹雲母(セリサイト)、金雲母(フロコパイト)、黒雲母(バイオタイト)、フッ素金雲母(人造雲母)、紅マイカ、ソーダマイカ、バナジンマイカ、イライト、チンマイカ、パラゴナイト、ブリトル雲母などが挙げられる。
【0026】
本形態において、好適に用いられる顔料の組合わせとしては、クレーを、好ましくは50〜75質量%使用し、他の顔料として重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ホワイトカーボン、酸化チタン、水酸化アルミニウムを用いることで、理由は定かではないが溶剤系オーバーコートの被膜形成が向上する傾向が得られる。被膜形成が向上する理由としては、異なる性状の顔料を用いることで、顔料同士が間隙を補完しあい、顔料の配向性、積層による多層化、緻密性を向上するためと推測される。
【0027】
クレーが75質量%を超えると溶剤系オーバーコートが浸透しやすくなり、目止め精度が低下する場合が生じる。他方、クレーが50質量%を下回ると目止め性は良いものの、目止め層自身にベタツキが生じ、溶剤によりゲル化し、粘着性を示してしまう。最適には60〜70質量%である。
【0028】
本形態に用いることができる好適なクレーとしては、特にアスペクト比5以上、体積平均粒子径(μm)が0.5μm〜5.0μmの微粒クレーが好ましい。使用するクレーが微粒でかつアスペクト比を10以下にすることで、後述するラテックス・多分岐高分子の効果と相まって、紙基材1に塗布後塗料が不動化し層を構成するまでに顔料が塗工層の近傍において塗工層表面と略並行に均一な配向性を発揮し、顔料及び機能性樹脂皮膜3,3間に溶剤バリヤー性を持った目止め性とインキセット性とを同時に持った凹凸を形成する。アスペクト比が5未満になると、塗工層表面近傍における、顔料による被覆性が劣るため、溶剤の目止め性が弱く塗布量が増える結果になる。他方、アスペクト比が高すぎると顔料粒子が、塗工層表面に対し直角に配向する様な立体障害を起こす場合が生じやすくなり、溶剤の目止め性が低下すると共に、粒子毎の間隙が多くなって熱影響を受けやすくなるため好ましくない。そのため好適には、アスペクト比5〜10がより好ましい。
【0029】
本形態における顔料の体積平均粒子径(μm)は、0.5μm〜5.0μm、好ましくは0.5μm〜4.0μmである。体積平均粒子径が0.5μm未満であると、目止め層2,2中での顔料の配向が塗工層や紙基材1に対して平行になりにくく熱に対する断熱性が劣り、熱影響を受けやすい。他方、5.0μmを超えて大きくなると顔料の一部が塗工層表面に対し直角に配向する様な立体障害を起こす場合が生じやすくなり、目止め層2,2から顔料の端部が突き出る可能性が高くなるばかりでなく、配向した顔料の目止め層中における重なり合いが少なくなってしまうために目止め性能向上効果が減少してしまう恐れがある上、粒子毎の間隙が多くなって熱影響を受けやすくなるため好ましくない。
【0030】
ここで、当該顔料の体積平均粒子径は、光散乱理論を応用したレーザー回折による粒度分布測定装置において測定した値である。このような測定装置としては、コールター社製レーザー回折・光散乱粒度測定装置LS230,LS200,LS100、また島津製作所製レーザー回折式粒度分布装置SALD2000,SALD3000、堀場製作所製レーザー回折・散乱式粒度分布装置LA910,LA700,LA600などが挙げられる。
【0031】
本形態に用いられる顔料は、前記顔料の他に、炭酸カルシウム、クレー、無定形シリカ、水酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化チタンなど、通常、紙の塗工に用いられるものも適宜使用できる。
【0032】
また、本形態に用いられる顔料と合成樹脂ラテックスとの好ましい配合比率(固形比)は、50:75〜50:25である。このような紙基材1は、目止め剤の紙基材1への浸み込み(選択吸収)を防止できる。また、このような目止め塗工層2,2を設けることによって、紙基材1の表面をより高平滑にすることができる。
【0033】
本形態において、目止め塗工層2,2は、多分岐高分子、好ましくは多分岐ポリエステルアミドを含有する。
【0034】
本形態で使用する多分岐高分子は、骨格にエステル基および少なくとも1つのアミド基を含有し、少なくとも800g/molの数平均モル質量を有する縮合重合体である。好ましくは、多分岐ポリエステルアミドで、800〜16,000g/molのモル質量を有する。
【0035】
好ましい多分岐ポリエステルアミドは、「化1」で示される。
【化1】

ここでYは、
【化2】

(C1−C20)(シクロ)アルキル、又は(C6−C10)アリール、H、A−OR7
【化3】

であり、Dは、置換または非置換の、(C2−C24)アリールまたは(シクロ)アルキル脂肪族ビラジカルであり、
1は、
【化4】

(式中、X2は、X1が少なくとも1回繰り返して存在し、
【化5】

で終了するもの)であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6は、互いに独立して、H、(C6−C10)アリール又は(C1−C8)(シクロ)アルキルラジカルから選択され、nは1〜4であり、OR7は、ヒドロキシ官能モノマー、オリゴマー又はポリマー由来であり、ここに、R7は、H、アリール、アルキル、シクロアルキル又はポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリテトラヒドロフラン又はナイロンオリゴマーのラジカルであってもよく、R8およびR9は、互いに独立して、ヘテロ原子により置換されていても、置換されていなくてもよい(C6−C10)アリール基又はヘテロ原子により置換されていても、置換されていなくてもよい(C1−C28)アルキル基の群から選択され、C(O)R10は、モノマー、オリゴマー又はポリマー単官能カルボン酸由来である。nが1である場合、エステル化が最も速くなるので、好ましくは、nは1である。
【0036】
多分岐高分子の調製(Aに位置する反応)は、WO−A−99/16810、WO−A−00/58388及びWO−A−00/56804に記載されているような公知の方法で行うことができる。これらの公報は、多分岐高分子を、環状無水物又はジカルボン酸とアルカノールアミン、好ましくは、ジ(アルカノールアミン)とを反応させることにより調製することを記載している。多分岐高分子の調製に関する他の方法は、a)ヒドロキシ又はアミン官能モノマー、オリゴマー又はポリマーと、第1のモル過剰の環状カルボン酸無水物とを接触させ、酸官能エステル、それぞれ、酸官能アミド及び環状カルボン酸無水物の混合物を形成する方法、b)混合物と、第1のモル過剰に対して第2のモル過剰のアルカノールアミンとを接触させる方法などがある。
【0037】
多分岐高分子の調製(Aに位置する反応)に適当なジカルボン酸は、C2−C24(シクロ)アルキル、アリールまたは(シクロ)アルキル−アリールラジカル由来のジカルボン酸である。ジカルボン酸は、飽和であっても、または不飽和であってもよい。ジカルボン酸の例としては、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロフタル酸、コハク酸またはグルタル酸が挙げられる。
【0038】
好ましい環状無水物は、無水フタル酸、無水テトラヒドロフタル酸、無水マレイン酸、無水(メチル)コハク酸および無水グルタル酸である。
【0039】
好ましいアルカノールアミンは、ジ(アルカノール)アミン、より好ましくは、ジ−β−アルカノールアミンである。例としては、ジイソブタノールアミンおよびジイソプロパノールアミンが挙げられる。
【0040】
特に、骨格にコハク酸、末端基に水酸基、脂肪酸エステル、アセテート安息香酸塩、カルボキシル基、ターシャリーアミン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドを含む2,5−フランジオン、1,1−イビノビス[2−プロパノール]、1,3−イソベゾンフランジオン、ジヒドロ2,5−フランジオン多分岐高分子を使用することで顔料及びラテックスの水酸基に作用し、凝集している超微粒子をミクロ分散させることで、紙基材1に塗布後不動化する前に紙基材1の表面の毛細管を微粒子で充填し、紙基材1への浸透防止効果が得られ、顔料とラテックス間に入り電気的に安定した状態で存在することができ、塗料粘度の減粘作用と高保水性とを同時に発揮し、レベリング速度を速め、カレンダーを必要としない(したがって、高密度化されない)平坦な目止め塗工層2,2を形成できる。
【0041】
目止め塗工層2,2中の多分岐高分子の配合質量割合は、0.2〜10%、好ましくは1.0〜5.0%が好適である。0.2%未満になると多分岐高分子の特徴であるミクロ分散・減粘作用・高保水性を得られない場合があり、他方、10%を超えると効果が頭打ちになりコスト競争力を悪化させる問題が生じる場合がある。
【0042】
本形態においては、接着剤は合成樹脂ラテックス及びポリビニルアルコールを含有し、合成樹脂ラテックスとポリビニルアルコールの質量割合は50:50〜10:90であることが好ましい。合成樹脂ラテックスの質量割合が50を超えると、熱影響により(ラテックスの酸化劣化による)色目が変化しやすくなり、加熱劣化試験によるΔa値を前述した範囲に調節するのが難しくなる。他方、質量割合が10未満になるとポリビニルアルコールの被膜性が高いため、色目の変化は生じにくいものの、加熱時の折り割れを生じやすくなり、例えば半導体製造工程で用いる剥離紙のように、200℃以上の高温環境下で紙にテンションを掛けた場合には、紙端からの裂けが発生しやすく、引裂強度の残存率が低下する問題が生じる。
【0043】
本形態において用いる合成樹脂ラテックスは、ゲル含有量70%以上、好ましくは80%〜90%であるとともに、粒子径の異なる合成樹脂ラテックス「A」及び合成樹脂ラテックス「B」を含むことが好ましい。
【0044】
合成樹脂ラテックス「A」は、粒径250nm〜300nm、好ましくは290nm〜300nmの合成樹脂ラテックスであり、合成樹脂ラテックス「B」は、のと粒径80nm〜100nm、好ましくは85nm〜95nmの合成樹脂ラテックスが用いられる。
【0045】
更に好適には、合成樹脂ラテックス「A」:合成樹脂ラテックス「B」が70:30〜30:70、好ましくは60:40〜40:60の質量割合であると、理由は定かではないが、目止め塗工層2,2が基紙表層に塗布され、乾燥される過程において、含有する顔料と顔料との間隙を粒径の異なる合成樹脂ラテックスが緻密に充填(細密充填)することから、オーバーコートする溶剤系のニス・シリコーン・非シリコーン樹脂により好適な皮膜形成を成すことができる。
【0046】
より詳細には、合成樹脂ラテックス「B」が粒径80nm未満、合成樹脂ラテックス「A」が300nm超になると細密充填のバランスが崩れ平坦性が得られない。好適には合成樹脂ラテックス「A」が290nm〜300nmの粒子、合成樹脂ラテックス「B」が85nm〜95nmの粒径のものを、合成樹脂ラテックス「A」:合成樹脂ラテックス「B」が70:30〜30:70の配合質量割合となるように含むと、最適である。
【0047】
ゲル含有量が70%未満になると、溶剤に対する耐溶剤性が低く目止め性が低下する。他方、ゲル含有量が90%を超えると効果が頭打ちでコスト競争力が無くなる。ゲル含有量が80%で粒子径の異なる2種類のラテックスを組み合わせると、最適である。
【0048】
以上の合成樹脂ラテックスとしては、スチレン−ブタジエン系共重合体、アクリル−スチレン系共重合体、メタクリレート−ブタジエン系共重合体、アクリルニトリル−ブタジエン系共重合体、アクリル系共重合体、ポリエステル系共重合体、ポリウレタン系共重合体などが挙げられる。これらの中でも、耐水性が良好で、伸びが良く折割れによる目止め塗工層2,2の亀裂が生じにくいスチレン−ブタジエン系共重合体が好適である。また、スチレン−ブタジエン系共重合体としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリルグリシジルエーテルなどで変性されたスチレン−ブタジエンラテックス(変性SBR)を使用することもできる。
【0049】
本形態において、接着剤に使用するポリビニルアルコールは、ケン化度98〜99mol%、重合度300〜2400を使用すると、印刷適性が最適で、加熱処理による色の変化が少なく、加熱劣化試験によるΔa値を前述した範囲に調節することができる。これに対し、ポリビニルアルコールとしてケン化度97mol%以下を使用すると、印刷時の湿し水の影響によりブランケット上でのポリビニルアルコールの溶出が進み好ましくない。また、ポリビニルアルコールの重合度が2400を超えると塗膜形成時の荒れが生じ好ましくなく、重合度が300未満になると被膜の形成が容易でない。好適には、重合度500〜1700である。
【0050】
また、本形態において使用する顔料と接着剤との配合(質量)比率(固形比)は、好ましくは30:70〜70:30である。顔料の比率が30未満になると目止め層のべたつきが生じ、70より高くなると目止め層のピンホールが増え、目止め紙の機能を十分に持たせることが難しくなり、さらには加熱劣化後の平板状顔料の脱落が生じるため、好ましくない。
【0051】
以上の目止め塗工層2,2の形成装置は特に限定されず、例えば、ブレードコーター、カーテンコーター、グラビアコーター、エアーナイフコーター、コンマコーター、ダイコーター等の公知の装置を使用して紙基材1に塗工して形成することができる。ただし、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーターなどの塗工表面をスクレイプする塗工方式が、平板状顔料の配向を促す傾向があるので好ましい。より好ましくは、ロッド型塗工装置を使用することで塗工量調整を紙基材1とロッド間の隙間で行うことができ、低シェア条件で平面塗工ができ、同じ平面塗工を行うブレードコーターより低シェア条件で塗工できシェア圧が加わることでの水分・ラテックス成分の含浸による不動化・レベリング不良を防止できる。
【0052】
ロッド型塗工装置においては、塗工量の調整やクレーの含有率が高い場合に生じやすい塗工ムラの是正に対し、ロッドの溝深さが25μm以下、当該溝のピッチが50μm以下、当該溝の山の長さが10μm以下とされている溝を有するロッドが用いられるが、顔料の突出を抑え顔料の平坦化を促進し、塗工層表面の粗さを抑えることが出来ると共に、平板顔料の平坦な緻密な表面構成を確保でき、ピンホールの改善や印刷適性を向上させることができることから、より好ましくは、ロッドが溝を有さないプレーンロッドを用いて塗工することが好ましい。
【0053】
目止め塗工層2,2の塗工量は、好ましくは3g/m2〜10g/m2、より好ましくは4g/m2〜8g/m2である。塗工量が3g/m2未満であると、基材表面の被覆性に劣り、基材表面の表面性の影響を受けやすく、表面平坦性や印刷適性低下やピンホール発生問題が生じ、S.H.O法によるピンホールが、ピンホール15個以下を満たすことが出来ない場合がある。他方、塗工量が10g/m2を超えると、塗工層の割れや目止め塗工紙に硬さが生じ作業性が低下すると共に、コストアップになり、塗工層のベタツキや古紙原料としてリサイクルする際の水離解性に悪影響を与える。
【0054】
ここで云うS.H.O法とは、トルエン9と染料1を混ぜた有機溶剤試験液1mlを、ピペットにて採取し、目止め塗工紙の塗工層表面上に滴下したのち、25cm2以上の範囲になるように、前記有機溶剤試験液をヘラで満遍なくのばし広げる。3分後、反対面より、前記有機溶剤試験液が反対面側に滲み生じた斑点(ピンホール)の個数を目視確認し評価する試験方法を云う。
【0055】
本形態の目止め塗工紙は、片面に目止め塗工層を設けた場合はカール制御と寸法安定性を補う目的で裏面にバックコート層として、特に限定されるものではないが、ケン化度98〜99mol%のポリビニルアルコールを塗布しても良い。
【実施例】
【0056】
次に、本発明の実施例を説明する。
まず、上質紙(大王製紙株式会社製、坪量64g/m2)からなる紙基材の両面に表1に示すように各種条件を変化させた目止め塗工層を設け、得られた目止め塗工紙について、乾燥性及びセット性(印刷適正)を評価した。また、得られた目止め塗工紙の両面に溶剤系シリコーンを塗工して剥離紙とし、この剥離紙表面のべたつき感を評価した。なお、各種条件及び評価方法の詳細は、次のとおりである。
【0057】
〔クレー(顔料)〕
製品名:カオグロス、製造元:THIELE社を原料に、湿式粉砕機にて体積平均粒子径(径)、アスペクト比を適宜調整して使用した。表中「比」とあるのはアスペクト比である。
【0058】
〔その他の顔料〕
表中、カルシウムとあるのは軽質炭酸カルシウムであり、アルミニウムとあるのは水酸化アルミニウムである。
【0059】
〔接着剤〕
・合成樹脂ラテックス
〔A〕大粒径:300nm 製品名:A5840、製造元:旭化成(株)
290nm 製品名:NDS5001、製造元:日本ゼオン(株)
250nm 製品名:2507H、製造元:日本ゼオン(株)
〔B〕小粒径:110nm 製品名:LX410、製造元:日本ゼオン(株)
100nm 製品名:2570X5、製造元:日本ゼオン(株)
90nm 製品名:S2A、製造元:日本ゼオン(株)
80nm 製品名:LX110、製造元:日本ゼオン(株)
50nm 製品名:1561、製造元:日本ゼオン(株)
・ポリビニルアルコール
ケン化度 98mol、重合度 1000:PVA−110、製造元:クラレ(株)
ケン化度 98mol、重合度 500:PVA−105、製造元:クラレ(株)
ケン化度 98mol、重合度 2400:PVA−124、製造元:クラレ(株)
ケン化度 87mol、重合度 300:PVA−203、製造元:クラレ(株)
ケン化度 87mol、重合度 3500:PVA−235、製造元:クラレ(株)
ケン化度 98mol、重合度 3500:PVA−135H、製造元:クラレ(株)
【0060】
〔多分岐高分子〕
製品名:トップブランS−1、製造元:日本DMS
【0061】
〔ロッド仕様〕
実施例3は、深さ20μm、ピッチ20μm、山の長さ10μmのワイヤー付きロッドを使用した。実施例10は、深さ25μm、ピッチ50μm、山の長さ20μmのワイヤー付きロッドを使用した。実施例13は、深さ20μm、ピッチ40μm、山の長さ10μmのワイヤー付きロッドを使用した。比較例1は、深さ30μm、ピッチ60μm、山の長さ30μmのワイヤー付きロッドを使用した。
【0062】
〔表面粗さ(Ra)〕
レーザー顕微鏡:カラーレーザー顕微鏡 高解像度タイプVK−9700型 キーエンス社製
【0063】
〔ピンホール〕
S.H.O法:トルエン9と染料1を混ぜた有機溶剤試験液1mlを、ピペットにて採取し、目止め塗工紙の塗工層表面上に滴下したのち、25cm2以上の範囲になるように、前記有機溶剤試験液をヘラで満遍なくのばし広げる。3分後、反対面より、前記有機溶剤試験液が反対面側に滲み生じた斑点(ピンホール)の個数を目視確認し評価する。
【0064】
〔加熱劣化試験〕
塗工紙を270℃に設定した恒温槽内で6分間加熱処理した後、温度23℃、湿度50%環境の恒温恒湿室内で24時間保持し、この加熱処理をした後の塗工紙と当該加熱処理をする前の塗工紙とを比較した。
(1)Δa値=「当該加熱処理前のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」−「当該加熱処理後のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」の絶対値
Δa値が5未満であると変色し難い。
(2)引裂強度の残存率(残存引裂強度)(%)=(「当該加熱処理後のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」/「当該加熱処理前のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」)×100
引裂強度の残存率が50%以上であると十分な耐熱性を保持する。
【0065】
〔印刷適性〕
RI印刷試験器(石川島播磨重工業社製 RI−II型)を使用し、TV(タック)−16のインキを試験片にベタ印刷を実施した。
(1)乾燥性:印刷後1分・3分・5分・10分後に上質紙(白紙)を印刷面に接触させ、インキの転写状況より乾燥性を比較した。
◎:印刷後1分・3分・5分・10分後いずれも転写なし。
○:印刷後1分では僅かに転写が見られるが、使用に差し支えなし。
×:10分後においても転写する。
(2)セット性:印刷後3日間静置後の印刷上がりを目視評価した。
◎:インキの着肉ムラ、光沢ムラとも無い。
○:若干、着肉ムラ、光沢ムラが見られるが、使用に差し支えなし。
×:着肉ムラ、光沢ムラが見られる。
【0066】
〔目止め塗工層のベタツキ〕
塗布面を触診する官能試験を実施した。
◎:全くベタツキがない。
○:若干のベタツキであり、使用に支障なし。
×:ベタつく。
【0067】
〔市販品A、市販品B及び市販品C〕
印刷用として市販されている一般の塗工紙を入手し、目止め塗工紙として使用できるか否か確認したが、目止め性が殆ど無く、目止め塗工紙としては使用できい品質であった。
【0068】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、紙基材の表面に目止め塗工層が設けられた目止め塗工紙として、より詳しくは、目止め塗工層上に剥離剤層や粘着剤層が設けられて剥離紙やタック紙などとして用いられる目止め塗工紙として、適用可能である。特に、目止め塗工層上に見栄えの良い印刷を施すことも可能な、ビジュアル化に対応した目止め塗工紙として適用可能である。加えて、加熱劣化し難いことから産業用工程紙としての基材として適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1】本実施の形態の目止め塗工紙の断面図である。
【符号の説明】
【0071】
1…紙基材、2…目止め塗工層、3…機能性樹脂皮膜。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙基材の少なくとも片面に、顔料及び接着剤からなる目止め塗工層を有する目止め塗工紙であって、
前記接着剤が合成樹脂ラテックスとポリビニルアルコールとを含有し、
前記目止め塗工層は、多分岐高分子を含有し、
S.H.O法によるピンホールが、25cm2当りピンホール15個以下である、
ことを特徴とする、目止め塗工紙。
【請求項2】
前記目止め塗工層表面の加熱劣化試験によるΔa値が、5未満であり、
当該加熱劣化試験による引裂強度の残存率が、50%以上である、
請求項1記載の目止め塗工紙。
ここで、前記加熱劣化試験とは、塗工紙を270℃に設定した恒温槽内で6分間熱処理した後、温度23℃、湿度50%環境の恒温恒湿室内で24時間保持し、この加熱処理をした後の塗工紙と当該加熱処理をする前の塗工紙とを比較する試験であり、
Δa値=「当該加熱処理前のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」−「当該加熱処理後のJIS P 8150に準じた色差測定試験による色差(a値)」の絶対値、
引裂強度の残存率(%)=(「当該加熱処理後のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」/「当該加熱処理前のJIS P 8116に準じた用紙の縦方向(流れ方向)の引裂強度」)×100である。
【請求項3】
前記合成樹脂ラテックスが、粒径250〜300nmの合成樹脂ラテックス「A」と粒径80〜100nmの合成樹脂ラテックス「B」とを含み、前記合成樹脂ラテックス「A」:前記合成樹脂ラテックス「B」が70:30〜30:70の質量割合であり、
前記ポリビニルアルコールが、ケン化度98〜99mol%で、重合度300〜2400である、
請求項1又は請求項2記載の目止め塗工紙。
【請求項4】
前記目止め塗工層は、ロッドを装着したロッド型塗工装置を用いて設けられており、
前記ロッドが、溝を有さないプレーンロッド、又は、深さが25μm以下、ピッチが50μm以下、山の長さが10μm以下の溝を有するロッドとされている、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の目止め塗工紙。

【図1】
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【公開番号】特開2009−209472(P2009−209472A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52398(P2008−52398)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】