説明

目視検査用回転補助装置

【課題】手作業による目視検査において検査の精度を高めたい場合や、検査の速度を速めたい場合など、被検査物の検査状況に応じて合理的に管理することが可能になる目視検査用回転補助装置を提供する。
【解決手段】装置を机上に固定せしめる固定盤体40と、該固定盤体40に上下揺動自在に連結された支持アーム50とを設ける。披検査物Pを保持して回転せしめる回転保持体10を支持アーム50の先端に前後揺動自在に連結する。披検査物Pの回転速度および回転角度が選択できるように制御装置20を構成する。披検査物Pの回転動作を開始せしめる操作スイッチ30を作業員が操作可能な位置に設定する。回転保持体10の回転速度は、作業員が検査可能な回転速度の上限値と下限値とを特定し、これら上限値と下限値との速度の間隔を等比数列化した複数の回転速度を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業員が行う目視検査を補助する目視検査用回転補助装置に係り、作業員が被検査物を検査し易い位置に設置して効率的なスピードで順次回転させることができる目視検査用回転補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、披検査物の外観を目視で検査する場合、作業員が手に持った披検査物を回しながら検査する。この場合、各作業員は各自のペースで検査することになる。
【0003】
一方、披検査物の外観をカメラで検査する場合、カメラの焦点位置に披検査物を設置し、この披検査物をステッピングモーターで回転させながら検査する検査手段が特許文献1に記載されている。この検査手段は、カメラで撮影した画像データに基づいて円筒物の外周部分を自動的に検査するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6‐43107号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の検査手段の如き自動検査装置は、披検査物の外観検査が自動的に行えるので、検査に係る時間などを正確に管理することができる。しかしながら、画像処理機能などを備えた極めて高価な装置にならざるを得ない。
【0006】
そのため、この種の自動検査装置が導入できない場合は、通常、作業員の手作業による目視検査が行われる。この場合、検査に係る時間や精度は、作業員の経験により大きく異なることになる。そのため、目視検査を合理的に行おうとする場合は、できるだけ多くの経験や実績のある作業者を選定することぐらいしか選択の余地はなかった。
【0007】
しかしながら、このような経験豊富な作業員は限られており、通常はアルバイトなど経験の少ない作業員が大半を占めている。そのため、例えば比較的難しい目視検査において十分な時間をかけて検査の精度を高めたい場合や、比較的簡単な目視検査において検査の速度を速めたい場合など、検査の状況が異なっていても、実際の目視検査においてこのような作業上の調整をすることは極めて困難な状況にある。したがって、従来の手作業による目視検査では、検査の精度や時間などを合理的に管理することはできなかった。
【0008】
そこで、本発明は上述の課題を解消すべく創出されたもので、手作業による目視検査において検査の精度を高めたい場合や、検査の速度を速めたい場合など、被検査物の検査状況に応じて合理的に検査することが可能になり、しかも、作業員の経験の有無に係らずに作業工程を合理的に管理することができる目視検査用回転補助装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成すべく本発明における第1の手段は、手作業による目視検査において使用される目視検査用回転補助装置であって、当該装置を机上に固定せしめる固定盤体40と、該固定盤体40に上下揺動自在に連結された支持アーム50とを設け、披検査物Pを保持して回転せしめる回転保持体10を支持アーム50の先端に前後揺動自在に連結し、該回転保持体10に保持した披検査物Pの回転速度および回転角度が選択できるように制御装置20を構成したことにある。
【0010】
第2の手段の前記回転保持体10は、披検査物Pを保持する保持具11と、前記制御装置20で制御された設定速度で該保持具11を披検査物Pごと回転せしめる回転モーター12とを備え、該制御装置20は、作業員が検査可能な回転速度の上限値と下限値との間の速度幅を等比数列化した複数段階の回転速度と共に、披検査物Pを一次的に停止せしめる複数の回転角度が設定されている。
【0011】
第3の手段において、前記保持具11は、回転モーター12の回転軸に着脱自在に装着される略円柱状の芯金にて構成され、該芯金の外周に中空部品からなる披検査物Pを嵌合装着するように構成されている。
【0012】
第4の手段において、前記回転モーター12を回転せしめる操作スイッチ30を静電式タッチスイッチにて構成し、該操作スイッチ30を前記回転保持体10の近傍に配設したことを課題解消のための手段とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の請求項1に記載の目視検査用回転補助装置により、披検査物Pの回転速度および回転角度を選択した条件で設定できるので、手作業による目視検査において検査の精度を高めたい場合や検査の速度を速めたい場合など、被検査物の検査状況に応じて目視検査を合理的に管理することが可能になった。この結果、作業員の経験の有無に係らず、作業ミスを少なくすることができると共に、披検査物P交換の作業時間を標準化することも可能になった。
【0014】
しかも、披検査物Pを保持して回転せしめる回転保持体10を支持アーム50の先端に前後揺動自在に連結し、披検査物Pの回転動作を開始せしめる操作スイッチ30を設定したことで、作業員が最も検査しやすい視覚に披検査物Pを設定できるので、目視検査を効率良く行うことが可能になる。
【0015】
請求項2に記載の如く、回転保持体10の回転速度は、作業員が検査可能な回転速度の上限値と下限値とを特定し、これら上限値と下限値との間の速度幅を等比数列化した複数の回転速度に設定されているので、披検査物Pの回転速度を調整する際に、作業員の体感に沿った調整が可能になり、作業員の手作業による目視検査において最適な調整になる。
【0016】
また、等比数列化して設定されている複数の回転速度と共に、披検査物Pを一次的に停止せしめる複数の回転角度が設定することで、より精密な目視検査が可能になる。
【0017】
更に、請求項3に記載の如く、保持具11は、外径の異なる複数の芯金にて構成され、該芯金に中空部品からなる披検査物Pを嵌合装着するように構成すると、例えば、中空圧造部品などの全周目視検査にとって最適な回転動作を提供することが可能になる。
【0018】
請求項4のように、操作スイッチ30として静電式タッチスイッチを使用し、前記回転保持体10の近傍に装着すると、作業員が前記披検査物Pを前記保持具11に装着した後の手指が自然に触れる位置に装着されることになるので、多数の披検査物Pを順次交換しながら目視検査する作業を合理化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施例を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施例を示す平面図である。
【図3】本発明の使用状態を示す側面図である。
【図4】本発明の保持具の一実施例を示す側面図である。
【図5】制御装置の設定モードを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明によると、手作業による目視検査において検査の精度を高めたい場合や、検査の速度を速めたい場合など、被検査物の検査状況に応じて合理的に検査することが可能になる。この結果作業員の経験の有無に係らず、披検査物P交換の作業時間を標準化することも可能になり、目視検査の作業工程を合理的に管理することができるなどといった種々の効果を実現した。
【実施例】
【0021】
本発明装置は、手作業による目視検査において、披検査物Pを一定の速度で回転させる目視検査用回転補助装置である。本発明の基本構成は、回転保持体10、制御装置20、操作スイッチ30、固定盤体40、支持アーム50などからなる(図2参照)。
【0022】
回転保持体10は、披検査物Pを保持して回転せしめるもので、保持具11と回転モーター12とを有する。保持具11は、披検査物Pを保持する部材であり、この保持具11に披検査物Pを保持した状態で、回転モーター12が披検査物Pごと保持具11を一定の速度で回転させるものである。
【0023】
図示例の保持具11は芯金11Aを装着したもので、径の異なる複数の該芯金11Aの中から中空部品からなる披検査物Pに嵌合する芯金11Aを選択して保持具11に装着し、この芯金11Aに披検査物Pの中空部を嵌合させるように構成されている(図1参照)。このとき、芯金11Aの下端部近傍に上端部よりも広がるテーパー11Bを形成することで、この芯金11Aに披検査物Pを嵌合した際に適度なグリップ力が得られ、披検査物Pの空回り等を防止できる(図4参照)。また、この芯金11Aは、披検査物Pの形状やサイズに適した芯金11Aを選択使用することが可能である。このような保持具11によると、例えばチューブナットやスリーブなどの中空圧造部品の目視検査において使い勝手が良好になる。
【0024】
また、保持具11は図示例に限られるものではなく、この他図示していないが、例えば磁性体を装着した保持具11で披検査物Pを磁着せしめるものや、披検査物Pの一部を把持する構造を有する保持具11など、披検査物Pの種類に応じて保持具11の設計変更は自由である。
【0025】
回転モーター12は、保持具11を披検査物Pごと回転せしめるもので、パルスモーターやステッピンモーターなどが使用される。この回転モーター12の回転速度や回転角度等は、後述する制御装置20によって制御する。図示例では、回転モーター12の回転軸に直接芯金11Aを装着した状態を示しているが、回転モーター12と保持具11との間に他の構成を介することも可能である。
【0026】
制御装置20は、回転モーター12を制御するように複数種類の回転速度が設定されている。この回転速度は、例えば、実際の披検査物Pを使用した実験から作業員が検査可能な回転速度の上限値と下限値とを特定し、これら上限値と下限値との速度の間隔を等比数列化することで、10段階の回転速度を設定している(図5参照)。また、このような等比数列化して設定されている回転速度と共に、披検査物Pを一次的に停止せしめる複数の回転角度を設定している。
【0027】
図示例では、回転速度の上限値を0.6秒、下限値を4.8秒とした9段階の回転速度を設定し、これら上限値と下限値との間の速度幅を等比数列化によって3.7秒、2.8秒、2.2秒、1.7秒、1.3秒、1.0秒、0.8秒に調整している。一方、披検査物Pを一次的に停止せしめる複数の回転角度は、一時停止無を含め、2分割〜9分割までの10段階を割り出しておき、各停止時間を0.1秒〜0.8秒と手動に至るまで同じく10段階の設定を可能にしている。このような設定値を予め設けることで、手作業に適した調整が可能になる。
【0028】
制御装置20には、回転モーター12の動作内容を設定する入力ボタン21を設けている。例えば図5に示す如く、披検査物Pを回転時の速度を設定せしめる連続回転設定モードと、回転角度と停止時間を設定せしめる割り出し設定モードを予め用意しておき、入力ボタン21で各モードの設定内容を示す番号を表示させることで、各設定モードが制御装置20に登録されるように構成している。この設定モードは、この他、各動作の基本動作を設定する動作設定モードなど、細かく設定することも可能である。
【0029】
操作スイッチ30は、制御装置20に制御されている回転保持体10の回転モーター12を作業員が操作するスイッチである。したがって、この操作スイッチ30は、作業員が操作しやすい位置に設置する。図示例では、前記保持具11の近傍に静電式タッチスイッチを設置したもので作業員が披検査物Pを保持具11装着した後に、作業員の手指が自然に触れる位置に設けられている(図2参照)。このような位置に操作スイッチ30を設置することで、披検査物Pを交換するたびに自然に操作スイッチ30を操作することができ、極めて合理的な作業が可能になる。
【0030】
また、別の形態の操作スイッチ30として、作業員の操作し易い位置に設置されたレバー式の操作スイッチ30や、本発明装置から離れた位置でパソコンのマウス状を成す操作スイッチ30、あるいは、光学式センサにて披検査物Pの設置を自動検知する操作スイッチ30など(いずれも図示せず)、操作スイッチ30の形態は任意に変更することが可能である。
【0031】
固定盤体40は、本発明装置を机上に固定せしめる部材である。図示例の固定盤体40は、箱体状を成し、内部に制御装置20を収納している。この固定盤体40は、本発明装置を固定するために、一定の荷重が必要になる。そのため、重くなった固定盤体40の運搬を容易にすべく一対のハンドル41を固定盤体40の上面に設けている(図2参照)。更に、この固定盤体40の上面に、披検査物Pを照らす照明器具や披検査物Pを拡大する拡大鏡などをオプションとして備えることが可能である(図示せず)。
【0032】
固定盤体40には、支持アーム50が上下揺動自在に連結されている。そして、この支持アーム50の先端に、披検査物Pを保持して回転せしめる前記回転保持体10を前後揺動自在に連結することで、回転保持体10の高さや角度を作業員の視覚に適した位置に調整することが可能にしている(図3参照)。図示例では、一対の支持アーム50の先端に揺動軸51を設け、この揺動軸51に回転保持体10を前後に揺動するように連結したものである。また、支持アーム50の基端部は、連結軸52を介して固定盤体40に固定されている一対の支持突起42に上下に揺動するように連結されている。したがって、支持アーム50は上下方向に揺動して支持アーム50の先端部の高さを調整できると共に、この先端部に装着した固定盤体40の角度を前後に調整することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の検査対象部品は、披検査物Pとして円筒状の部品から中実の異形部品に至るまで自由に選択することができる。また、本発明の構成は図示例に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で自由な設計変更が可能である。
【符号の説明】
【0034】
P 披検査物
10 回転保持体 11 保持具
12 回転モーター
20 制御装置 21 入力ボタン
30 操作スイッチ
40 固定盤体 41 ハンドル
42 支持突起
50 支持アーム 51 揺動軸
52 連結軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
手作業による目視検査において使用される目視検査用回転補助装置であって、当該装置を机上に固定せしめる固定盤体と、該固定盤体に上下揺動自在に連結された支持アームとを設け、披検査物を保持して回転せしめる回転保持体を支持アームの先端に前後揺動自在に連結し、該回転保持体に保持した披検査物の回転速度および回転角度が選択できるように制御装置を構成したことを特徴とする目視検査用回転補助装置。
【請求項2】
前記回転保持体は、披検査物を保持する保持具と、前記制御装置で制御された設定速度で該保持具を披検査物ごと回転せしめる回転モーターとを備え、該制御装置は、作業員が検査可能な回転速度の上限値と下限値との間の速度幅を等比数列化した複数段階の回転速度と共に、披検査物を一次的に停止せしめる複数の回転角度が設定されている請求項1記載の目視検査用回転補助装置。
【請求項3】
前記保持具は、回転モーターの回転軸に着脱自在に装着される略円柱状の芯金にて構成され、該芯金の外周に中空部品からなる披検査物を嵌合装着するように構成された請求項1記載の目視検査用回転補助装置。
【請求項4】
前記回転モーターを回転せしめる操作スイッチを静電式タッチスイッチにて構成し、該操作スイッチを前記回転保持体の近傍に配設した請求項1記載の目視検査用回転補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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