説明

直交信号を用いたレーダシステム

【課題】一つのアンテナを送受信に兼用することで更なる小型化を可能にすると共に、送信端から受信端への漏れ信号を更に抑制することで送受信間の隔離度を更に高め、それにより、受信感度を高め、かつ、受信機の飽和や受信端での雑音指数の増加を更に確実に防止できるレーダシステムを提供する。
【解決手段】クワドラチャプッシュプッシュ発振器が、同じ周波数で同じ振幅の第1から第4までの信号を順に、90°ずつ位相を変えて発生させ、それら4つの信号から、逆位相でかつレベルが対称的な2つの2次高調波信号である、バランス信号と送信信号とを発生させる。送信信号はアンテナから放射され、バランス信号はグラウンドに終端される。電力合成部は、第2カプラブロックから漏れるバランス信号を、アンテナにより受信された信号と合成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直交信号を用いたレーダシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
レーダシステムは近年、衝突防止用の車載センサとしての応用が注目されている。その場合、レーダシステムの動作周波数としてはミリメートル波帯域(例えば77GHz)の利用が好ましい。しかし、このような高周波数帯域では高精度の信号源は作りにくい。更に、そのような信号源については、周波数特性に優れた高性能素子を利用すべきであるため、製作コストの更なる低減が難しい。
【0003】
図1は従来の、当業者には周知なレーダシステムを示す回路図である。 (a)では、一つのアンテナ104が送信及び受信に兼用されている。一方、(b)では、異なるアンテナ104A、104Bがそれぞれ、送信及び受信に使い分けられている。
図1の(a)に示されているレーダシステムはアンテナを一つしか含まないので、システム全体のサイズが小さい。従って、図1の(a)に示されている構造は、超小型レーダシステムに採用されている。
【0004】
図1の(b)に示されているレーダシステムでは送信と受信とが異なるアンテナで行われるので、送信端と受信端との間が十分に隔離されている。それにより、システムの受信感度が高い。更に、送信信号によっては受信機が飽和しにくい。従って、図1の(b)に示されている構造は高出力レーダシステムに採用されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図1の(a)に示されている従来のレーダシステムでは、サーキュレータ(Circulator)201と電力分配器(またはランゲカプラ)102とのそれぞれで、送信と受信との間の隔離度(Isolation)が、特にミリメートル波帯域では非常に低い。すなわち、送信端から出力される高電力の信号が受信端に漏れやすい。その結果、レーダシステムの受信感度を更に向上させるのが困難である。更に、送信端から漏れた高電力の信号が低雑音増幅器(Low Noise Amplifier)105又はミキサ(Mixer)106を飽和(Saturation)させるおそれが高いので、レーダシステム全体の信頼性を更に向上させるのが困難である。その他に、送信端からの漏れ信号によって受信端の雑音指数(Noise Figure)の更なる向上が妨げられる。
【0006】
図1の(b)に示されている従来のレーダシステムでは、送信アンテナ104Aと受信アンテナ104Bとが分離されている。従って、図1の(a)に示されているレーダシステムより、送信と受信との間の隔離度が高い。しかし、レーダシステムでは一般に、アンテナが最大の面積を占めるため、2つのアンテナ104A、104Bを含むレーダシステムは更なる小型化が困難である。特に、超小型レーダシステムに採用することは困難である。
【0007】
その他に、CW(Continuous Wave)レーダでは、ダイレクトコンバージョン受信機(direct conversion receiver)に現れる偶数次歪み(even order distortion)と、局部発振器からの漏れ信号によるDCオフセットとが、レーダシステムの受信感度の更なる向上を妨げている。一方、ドップラーレーダ(Doppler Radar)では、ドップラーシフト(Doppler Shift)が数十Hz〜数百kHz程度であり、非常に低いので、素子のフリッカノイズ(flicker noise)との区別が難しく、レーダシステムの受信感度の更なる向上を妨げている。
【0008】
更に、目標物が近付いているのか、それとも遠ざかっているのか、という、目標物に対する相対的な運動方向を知るために、レーダシステムにはクワドラチャミキサが含まれるべきである。しかし、クワドラチャミキサの動作には直交信号が必要であるので、二つの信号間に位相差を発生させるための付加回路が必要である。しかし、そのような回路の追加はレーダシステムを複雑化させるので好ましくない。
【0009】
本発明の目的は、一つのアンテナを送受信に兼用することで更なる小型化を可能にすると共に、送信端からの漏れ信号を更に抑制することで送受信間の隔離度を更に高め、それにより、受信感度を更に高め、且つ、受信機の飽和や受信端での雑音指数の増加を更に確実に防止できるレーダシステムを提供することにある。
本発明の目的は更に、妨害電波(Interfere)による偶数次歪みと、局部発振器からの漏れ信号によるDCオフセットとを共に抑制でき、目標物に対する相対的な運動方向を把握できるレーダシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によるレーダシステムは、
同じ周波数で同じ振幅の第1から第4までの信号を順に、90°ずつ位相を変えて発生させ、第1から第4までの信号から、逆位相でかつレベルが対称的な2つの2次高調波信号(2nd harmonic signal)、を発生させるクワドラチャプッシュプッシュ発振器(quadrature push−push oscillator);
2次高調波信号の一方をアンテナから放射させ、目標物により反射された信号を、アンテナを通して受信する第1カプラブロック(coupler block);
2次高調波信号の他方をグラウンドに終端させる第2カプラブロック;
第1及び第2カプラブロックから漏れる送信信号を、前記アンテナを介して受信された受信信号と合成して出力する電力合成部;
電力合成部の出力信号の位相を90゜変える90゜位相変位器;
クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力された第1信号と第3信号とを用いて電力合成部の出力信号に対してミキシングを行い、第1基底帯域信号を出力する第1クワドラチャミキサ;及び、
クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力された第2信号と第4信号とを用いて90゜位相変位器の出力信号に対してミキシングを行い、第2基底帯域信号を出力する第2クワドラチャミキサ;を有する。
【0011】
これにより、第1及び第2基底帯域信号の位相差は90゜に等しい。
第2カプラブロックは好ましくは、アンテナのインピーダンスと等価なインピーダンスを持つ終端抵抗、を含み、その終端抵抗を通し、クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力される2次高調波信号の他方をグラウンドに終端させる。その他に、第2カプラブロックは可変インピーダンス素子を含み、その可変インピーダンス素子を通し、クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力される2次高調波信号の他方をグラウンドに終端させても良い。このとき、更に好ましくは、第1及び第2クワドラチャミキサから出力される信号のDCオフセットを監視し、外部の制御信号に従って上記の可変インピーダンス素子のインピーダンスを調節するDSP、をレーダシステムがさらに有する。
【0012】
好ましくは、第1及び第2カプラブロックがそれぞれ、電力分配器またはサーキュレータと、4ポートカプラとを含む。このとき、4ポートカプラは好ましくは、ディレクショナルカプラまたはランゲカプラを含む。
電力合成部は好ましくは、3ポート合成器を含む。このとき、3ポート合成器が好ましくは、ウィルキンソンコンバイナまたはT−ジャンクションコンバイナを含む。更に好ましくは、第1及び第2クワドラチャミキサの少なくとも一つが、受動素子を用いてミキシングを行うパッシブミキサを含む。
【0013】
本発明によるレーダシステムでは、クワドラチャプッシュプッシュ発振器が、逆位相でかつ対称的なレベルの二つの2次高調波信号を発生させる。その一方は第1カプラブロックによりアンテナから送信信号として放射され、他方は第2カプラブロックにより、終端抵抗や可変インピーダンス素子を通してグラウンドで終端される。更に、第1カプラブロックにより受信された信号(アンテナの受信信号と第1カプラブロックから漏れる送信信号との混合)は電力合成部により、第2カプラブロックから漏れる信号と合成される。この場合、第1カプラブロックから漏れて受信信号に混入する送信信号(2次高調波信号の一方)は、第2カプラブロックから漏れる信号(2次高調波信号の他方)と逆位相で、かつそれらのレベルが対称的である。従って、それらは電力合成部での加算により、互いに相殺する。こうして、送信端からの漏れ信号が電力合成部の出力信号から除去されるので、電力合成部の出力信号には、アンテナにより受信された信号のみが含まれる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によるレーダシステムは上記の通り、クワドラチャプッシュプッシュ発振器及びクワドラチャミキサを用いることで、比較的低い周波数帯域に対応した素子だけから、ミリメートル波帯域以上の超高周波帯域で駆動可能な高性能レーダシステムとして構築される。従って、従来の同等な高性能レーダシステムより、低コストである。
本発明によるレーダシステムでは、クワドラチャプッシュプッシュ発振器を用いて上記2つの2次高調波信号を発生させ、それらを利用して受信信号から送信端での漏れ信号が除去される。従って、受信感度が更に向上し、次段の回路の飽和が更に確実に防止され、かつ、一つのアンテナを送受信に兼用することで更なる小型化が可能である。
【0015】
本発明によるレーダシステムでは、クワドラチャミキサを用いることで、局部発振器からの漏れ信号によるDCオフセットが除去される。更に、受信端へ流入される入力信号の偶数次歪みに起因する妨害電波が基底帯域では抑制されるので、レーダシステムの誤動作が防止される。その上、レジスティブミキサ(resistive mixer)のようなパッシブミキサ(passive mixer)でクワドラチャミキサを構成し、クワドラチャミキサにバイアス電流が流れないようにすることで、フリッカノイズが低減するので、受信感度の更なる向上が可能である。その他に、クワドラチャミキサを用いることで、出力信号の位相差の比較から、目標物に対する相対的な運動方向が感知できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施例を詳細に説明する。
図2は、本発明の実施例であるレーダシステムを示す回路図である。このレーダシステムは、クワドラチャプッシュプッシュ発振器401、第1カプラブロック302a、第2カプラブロック302b、電力合成部303、90゜位相変位器402、及びクワドラチャサブハーモニックミキサ(quadrature sub−harmonic mixer)403を含む。クワドラチャサブハーモニックミキサ403は、第1クワドラチャミキサ403a及び第2クワドラチャミキサ403bを含む。
【0017】
クワドラチャプッシュプッシュ発振器401はまず、4つの信号f1、f2、f3、f4(基本周波数(fundamental frequency)f0/2)を、90°ずつ位相を変えて発生させる。以下、4つの信号を位相順に、第1信号f1(位相0°)、第2信号f2(位相90°)、第3信号f3(位相180°)、第4信号f4(位相270°)という。更に、それら4つの信号f1〜f4から2つの2次高調波信号TB、Tx(周波数f0)を発生させる。これら2つの2次高調波信号TB、Txは特に、逆位相であり、かつそれらのレベルが対称的であり、バランスが良い。以下、これら2つの2次高調波信号を位相順に、バランス信号TB(位相0°)と送信信号Tx(位相180°)という。
【0018】
第1カプラブロック302aは送信信号Txをアンテナ104から放射する。第2カプラブロック302bはバランス信号TBをグラウンドに終端させる。ここで、第1及び第2カプラブロック302a、302bは電力分配器やサーキュレータを含んでも良い。特に、第1カプラブロック302aは電力分配器やサーキュレータを用いて送信信号Txと受信信号Rxとを区別できる。
電力合成部303は、アンテナ104を介して入力された受信信号Rx(周波数f0+fD、fDの符号は正負いずれでもあり得る)に、第2カプラブロック302bから漏れたバランス信号TB(周波数f0)を合成する。それにより、電力合成部303では、受信信号Rxに含まれている、第1カプラブロック302aから漏れた送信信号Txが、第2カプラブロック302bから漏れた逆位相のバランス信号TBと相殺する。こうして、受信信号への送信信号の混入(Tx leakage)が防止される。すなわち、電力合成部303からは、第1カプラブロック302aで混入した送信信号Txが除去された後の、純粋な受信信号Rxのみが出力される。
【0019】
90゜位相変位器402は、電力合成部303から出力される信号Rx1の位相を90゜変位させる。
電力合成部303の出力信号Rx1(周波数f0+fD、位相0°)と90゜位相変位器402の出力信号Rx2(周波数f0+fD、位相90°)とは共に、クワドラチャサブハーモニックミキサ403に伝達される。第1クワドラチャミキサ403aは、クワドラチャプッシュプッシュ発振器401から出力された、互いに逆位相の第1信号f1(周波数f0/2、位相0°)と第3信号f3(周波数f0/2、位相180°)とを差動信号として用い、電力合成部303の出力信号Rx1(周波数f0+fD、位相0°)に対してミキシングを行う。それにより、第1基底帯域信号IP(周波数fD、位相0°)が出力される。一方、第2クワドラチャミキサ403bは、クワドラチャプッシュプッシュ発振器401から出力された、互いに逆位相の第2信号f2(周波数f0/2、位相90°)と第4信号f4(周波数f0/2、位相270°)とを差動信号として用い、90゜位相変位器402の出力信号Rx2(周波数f0+fD、位相90°)に対してミキシングを行う。それにより、第2基底帯域信号QP(周波数fD、位相90°)が出力される。
【0020】
こうして、第1及び第2基底帯域信号IP、QPの周波数が同じ値fDに一致し、更に、両者間の位相差が90゜に設定される。これら2つの直交信号IP、QPから目標物の位置が分析される。特に、出力信号の位相が進角(lead)、または遅角(lag)のいずれであるのかを識別することで、目標物に対する相対的な運動方向が分かる。
図3は、図2に示されているレーダシステムの細部の構成を示す回路図である。第1及び第2カプラブロック302a、302bはそれぞれ、4ポートカプラ501を含む。4ポートカプラ501は好ましくは、ランゲカプラ(Lange coupler)を含む。その他に、ディレクショナルカプラを含んでも良い。第1及び第2カプラブロック302a、302bは更に、電力分配器またはサーキュレータを含んでも良い。それにより、特に第1カプラブロック302aでは、送信信号Txと受信信号Rxとが区別される。
【0021】
電力合成部303は3ポート合成器502を含む。3ポート合成器502は好ましくは、ウィルキンソンコンバイナ(Wilkinson Power Combiner)を含む。その他に、T−ジャンクションコンバイナ(T−Junction combiner)を含んでも良い。その場合は更に好ましくは、クワドラチャサブハーモニックミキサ403がレジスティブミキサのようなパッシブミキサとして構成される。それにより、クワドラチャサブハーモニックミキサ403にはバイアス電流が流れないようにできる。その結果、フリッカノイズが低減する。
【0022】
第2カプラブロック302bは好ましくは、可変インピーダンス素子を含む。第2カプラブロック302bは可変インピーダンス素子のインピーダンスを調節することで、局部発振器からクワドラチャサブハーモニックミキサ403を介して侵入する漏れ信号に起因するDCオフセットを除去できる。それと共に、受信端へ流入される入力信号から偶数次歪みを除去できる。
【0023】
以上の構成により、本発明の実施例によるレーダシステムは次のように動作する。
図4はクワドラチャプッシュプッシュ発振器401の細部の構成を示す回路図である。クワドラチャプッシュプッシュ発振器401はまず、第1から第4までの信号f1、f2、f3、f4を発生させる(図5参照)。更に、互いに逆位相である、第1信号f1と第3信号f3との間で基本周波数成分を互いに相殺させ、2次高調波成分TBのみを残す(図5参照)。同様に、互いに逆位相である、第2信号f2と第4信号f4との間で基本周波数成分を互いに相殺させ、2次高調波成分Txのみを残す(図5参照)。こうして、周波数が第1から第4までの信号f1〜f4の基本周波数の2倍である、バランス信号TBと送信信号Txとが発生する。バランス信号TBと送信信号Txとは特に、互いに逆位相であり、かつレベルが対称的である。
【0024】
送信信号Txとバランス信号TBとはそれぞれ、第1及び第2カプラブロック302a、302bに含まれているランゲカプラ501に入力される(図3参照)。このとき、第1カプラブロック302aには、50Ωにマッチングされたアンテナ104が連結しているので、送信信号Txがアンテナ104から放射される。放射された送信信号Txは更に目標物により反射され、その反射信号Rxがアンテナ104により受信される。一方、第2カプラブロック302bは、アンテナ104のインピーダンスと等価なインピーダンス50Ωを持つ終端抵抗202でグラウンドに接続されている(図3参照)ので、バランス信号TBはグラウンドで終端(terminate)され、外部には放射されない。
【0025】
第1及び第2カプラブロック302a、302bのそれぞれでは、ランゲカプラ501の持つ、送受信の隔離性によって、受信端への送信信号Tx 、及びバランス信号TBの混入がある程度抑制される。しかし、その隔離度が低いので、送信信号Tx、及びバランス信号TBの各レベルがある程度を超えるとき、送信信号Tx、及びバランス信号TBがそれぞれ、第1及び第2カプラブロック302a、302bの受信端に漏れる。特に第1カプラブロック302aでは、送信信号Txが受信信号Rxに混入する。しかし、第1及び第2カプラブロック302a、302bのそれぞれから漏れる送信信号Tx及びバランス信号TB間ではレベルが対称的であり、かつ位相が180゜異なる。従って、電力合成部303、すなわちウィルキンソンコンバイナ502によって第1と第2とのカプラブロック302a、302bの出力信号同士が加算されるとき、第1のカプラブロック302aの出力信号に混入している送信信号Txは、第2カプラブロック302bの出力信号、すなわち受信端に漏れたバランス信号TBにより相殺される。こうして、電力合成部303の出力信号には実質上、目標物から反射された受信信号Rxのみが残る。
【0026】
図6は90゜位相変位器402及びクワドラチャサブハーモニックミキサ403の細部の構成を示す回路図である。電力合成部303から出力された受信信号Rxは、90゜位相変位器を含むランゲカプラ501によって、元の受信信号Rxと同相の成分Rx1と、位相が90゜異なる成分(以下、直交成分という)Rx2とに分離される。同相成分Rx1は第1クワドラチャミキサ403aに入力され、クワドラチャプッシュプッシュ発振器401から出力された第1信号f1と第3信号f3とによるミキシングを受ける。それにより、第1基底帯域信号IPが出力される。同様に、ランゲカプラ501により分離された直交成分Rx2は第2クワドラチャミキサ403bに入力され、クワドラチャプッシュプッシュ発振器401から出力された第2信号f2と第4信号f4とによるミキシングを受ける。それにより、第2基底帯域信号QPが出力される。
【0027】
図7は、第2カプラブロック302bから出力されたバランス信号TBを可変インピーダンス素子801を通してグラウンドに終端させる場合を示す回路図である。図2に示されている、アンテナ104に連結している回路部分は実際には、終端抵抗202で終端された回路部分とは異なるので、両者間ではインピーダンスにミスマッチが生じやすい。このミスマッチを補償するためには好ましくは、図7に示されているように、終端抵抗202に代え、可変インピーダンス素子801が第2カプラブロック302bに接続される。
【0028】
この場合、更に好ましくは、DSP(Digital Signal Processor)802が搭載され、可変インピーダンス素子801のインピーダンスを調整する。具体的には、クワドラチャサブハーモニックミキサ403から出力される第1及び第2基底帯域信号IP、QPのDCオフセットをDSP802により監視する。更に、第1と第2との基底帯域信号IP、QP間でのDCオフセットの相違に応じて可変インピーダンス素子801のインピーダンスを決め、制御信号Ctrlによって外部からDSP802に対してそのインピーダンスを指定する。その制御信号Ctrlに従い、DSP802は可変インピーダンス素子801のインピーダンスを変化させる。このインピーダンス変化が上記のミスマッチを補償するので、アンテナ104に連結している回路部分と可変インピーダンス素子801に連結している回路部分との間でインピーダンスマッチングが高精度に維持される。
【0029】
本発明の実施例は、以上に説明された好適な実施例に限られるわけではない。実際、本発明の属する技術分野における通常の知識を有した者であれば、上記の説明に基づき、特許請求の範囲に記載されている本発明の技術的範囲内で、多種多様な変形が実施可能であろう。従って、このような変形は当然に、本発明の技術的範囲に属するものとして理解されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】従来のレーダシステムを示す回路図である。
【図2】本発明の実施例によるレーダシステムを示す回路図である。
【図3】図2に示されているレーダシステムの細部の構成を示す回路図である。
【図4】図2に示されているクワドラチャプッシュプッシュ発振器の細部の構成を示す回路図である。
【図5】図2に示されているクワドラチャプッシュプッシュ発信器により発生する4つの信号と、それらから発生する2つの2次高調波信号を示す波形図である。
【図6】図2に示されている90゜位相変位器とクワドラチャサブハーモニックミキサとの細部の構成を示す回路図である。
【図7】本発明の実施例によるレーダシステムの変形例として、可変インピーダンス素子が付加された場合を示す回路図である。
【符号の説明】
【0031】
101 発振器
102 電力分配器
103 電力増幅器
104 アンテナ
105 低雑音増幅器
106 ミキサ
107 フィルタ
201 サーキュレータ
202 終端抵抗
302a 第1カプラブロック
302b 第2カプラブロック
303 電力合成器
401 クワドラチャプッシュプッシュ発振器
402 90°位相変位器
403 クワドラチャサブハーモニックミキサ
501 ランゲカプラ
801 可変インピーダンス素子
802 DSP

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ周波数で同じ振幅の第1から第4までの信号を順に、90°ずつ位相を変えて発生させ、前記第1から第4までの信号から、逆位相でかつレベルが対称的な2つの2次高調波信号、を発生させるクワドラチャプッシュプッシュ発振器;
前記2次高調波信号の一方をアンテナから放射させ、目標物により反射された信号を、前記アンテナを通して受信する第1カプラブロック;
前記2次高調波信号の他方をグラウンドに終端させる第2カプラブロック;
前記第1及び第2カプラブロックから漏れる送信信号を、前記アンテナを介して受信された受信信号と合成して出力する電力合成部;
前記電力合成部の出力信号の位相を90゜変位させる90゜位相変位器;
前記クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力された第1信号と第3信号とを用いて前記電力合成部の出力信号に対してミキシングを行い、第1基底帯域信号を出力する第1クワドラチャミキサ:及び、
前記クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力された第2信号と第4信号とを用いて前記90゜位相変位器の出力信号に対してミキシングを行い、第2基底帯域信号を出力する第2クワドラチャミキサ;
を有するレーダシステム。
【請求項2】
前記第2カプラブロックが、前記アンテナのインピーダンスと等価なインピーダンスを持つ終端抵抗、を含み、前記終端抵抗を通し、前記クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力される前記2次高調波信号の他方をグラウンドに終端させる、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項3】
前記第2カプラブロックが、可変インピーダンス素子を含み、前記可変インピーダンス素子を通し、前記クワドラチャプッシュプッシュ発振器から出力される前記2次高調波信号の他方をグラウンドに終端させる、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項4】
前記第1及び第2クワドラチャミキサから出力される信号のDCオフセットを監視し、外部の制御信号に従って前記可変インピーダンス素子のインピーダンスを調節するDSP、をさらに含む、請求項3に記載のレーダシステム。
【請求項5】
前記第1及び第2基底帯域信号の位相差が90゜である、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項6】
前記第1及び第2カプラブロックが、電力分配器またはサーキュレータと、4ポートカプラと、を含む、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項7】
前記4ポートカプラがディレクショナルカプラまたはランゲカプラを含む、請求項6に記載のレーダシステム。
【請求項8】
前記電力合成部が3ポート合成器を含む、請求項1に記載のレーダシステム。
【請求項9】
前記3ポート合成器がウィルキンソンコンバイナまたはT−ジャンクションコンバイナを含む、請求項8に記載のレーダシステム。
【請求項10】
前記第1及び第2クワドラチャミキサの少なくとも一つが、受動素子を用いてミキシングを行うパッシブミキサ、を含む、請求項1に記載のレーダシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−30199(P2006−30199A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204981(P2005−204981)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】416,Maetan−dong,Yeongtong−gu,Suwon−si Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】