説明

直列多重インバータ装置とその制御方法

【課題】複数の単位インバータのうちの少なくとも1個に短絡故障等が発生しても、故障前と同じ出力電圧で交流負荷への電力供給が継続できる直列多重インバータ装置を提供する。
【解決手段】
整流器と平滑コンデンサから直流電力を受け、半導体スイッチ素子をブリッジ接続した複数個の単位インバータの出力側を直列接続して単位インバータ直列接続群を形成し、半導体スイッチの開閉制御をするとともに、複数の単位インバータ直列接続群を交流負荷に接続する直列多重式インバータにおいて、運転異常検出手段が単位インバータの異常を検出したとき、バイパス回路によって該当する単位インバータの出力側を短絡し、回路保護手段によって単位インバータを開放し保護する。さらに出力電圧余裕分供給手段によって、不足分となる電圧を補い、電力供給を継続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の単位インバータの出力側を直列接続して得られる高電圧出力を、交流負荷に供給する直列多重インバータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電力変換器としての直列多重インバータ装置として、複数の単位インバータの出力を直列接続し、高電圧出力を行う構成が知られている。このような直列多重インバータ装置において、単位インバータが故障した場合、単位インバータは回路に直列に接続されている為、電流経路がなくなり、電流を流すことが出来なくなる。このため、単位インバータが故障した場合は、装置全体を停止させていた。
また、装置全体の停止を避けるための方法としては、特許文献1があり、単位インバータの出力をバイパスするバイパス回路を持たせ、単位インバータ故障時にバイパス回路を動作させることによって、電流経路を作り、単位インバータ故障時も運転の継続を行っていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−196578号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示した、単位インバータが短絡故障や開放故障等をした場合において、単位インバータの出力を短絡し、故障した単位インバータを回路から切り離して、運転を継続する方法では、切り離した単位インバータの分の出力電圧が低下するため、出力電圧が不足し、故障前の出力条件に一致させた運転が出来なくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するもので、その目的とするところは、複数の単位インバータのうちの少なくとも1個に故障等が発生しても、残りの健全な単位インバータの運転を停止させることなく、故障前と同じ出力電圧で交流負荷の運転が継続できる直列多重インバータ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決して、本発明の目的を達成するために、以下のように構成した。
すなわち、交流電力を直流電力に変換する整流器と、前記整流器の出力である直流電力を交流電力に変換するものであって、複数の半導体スイッチ素子をブリッジ接続してなる単位インバータを複数個設け、該各単位インバータの入力側が平滑コンデンサを介して前記整流器の出力に並列に接続され、該各単位インバータの出力側を直列接続し、かつ交流負荷に接続する単位インバータ直列接続群と、前記単位インバータを構成している半導体スイッチ素子に対して所定の順序で開閉制御指令を与える単位インバータ制御手段と、前記単位インバータの運転異常状態を検出する運転異常検出手段と、前記運転異常検出手段が前記単位インバータの異常を検出したとき、該当する単位インバータに対応する回路を開放することによって、前記単位インバータを保護する回路保護手段と、前記単位インバータに並列に接続され、電気的に閉路したとき負荷電流を循環させる流路を形成するバイパススイッチと、前記運転異常検出時、該当する単位インバータに対応する前記バイパススイッチに閉路指令を与えることにより、前記単位インバータの出力を短絡させるバイパススイッチ制御手段と、前記単位インバータのバイパス時に不足する出力電圧分を補う機能を有し、前記単位インバータの出力に直列に具備された出力電圧余裕分供給手段と、を備えた。
【0007】
かかる構成により、前記運転異常検出手段が前記単位インバータの異常を検出したとき、該当する前記単位インバータに対応する前記バイパススイッチによって前記単位インバータの出力側を短絡する、それと同時に、前記単位インバータを保護する前記回路保護手段によって前記単位インバータを開放し、保護を行う。このとき、バイパス回路が単位インバータの出力を短絡することによって生じた出力電圧の不足分を、前記出力電圧余裕分供給手段によって補い、交流負荷への故障前と同等の電力供給を継続して行う。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の単位インバータのうちの少なくとも1個に故障等が発生しても、残りの健全な単位インバータの運転を停止させることなく、故障前と同じ出力電圧で交流負荷の運転が継続できる直列多重インバータ装置を提供することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の直列多重インバータ装置の第1の実施形態の主な構成を示す回路図である。
【図2】本発明の実施形態に含まれる交流電力の構成を示すもので、(a)は変圧器出力の二次側巻線の構成を示す図であり、(b)は3相交流の電圧波形を示す図である。
【図3】本発明の実施形態に含まれる整流器とコンデンサと単位インバータからなる第1直流ユニットの構成を示す回路図である。
【図4】本発明の実施形態に含まれる単位インバータの機能動作を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に含まれる単位インバータの出力電圧動作波形例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態である単位インバータ直列接続群の相電圧の出力電圧動作波形例を示す図である。
【図7】本発明の実施形態である単位インバータ直列接続群の線間電圧の出力電圧動作波形例を示す図である。
【図8】本発明の第1の実施形態の第2直流ユニットとそれに関連する主な各手段の構成を示す回路図である。
【図9】本発明の第2の実施形態の第2直流ユニットとそれに関連する主な各手段の構成を示す回路図である。
【図10】本発明の第3の実施形態の第2直流ユニットとそれに関連する主な各手段の構成を示す回路図である。
【図11】本発明の第4の実施形態の第2直流ユニットとそれに関連する主な各手段の構成を示す回路図である。
【図12】本発明の第5の実施形態の第2直流ユニットとそれに関連する主な各手段の構成を示す回路図である。
【図13】本発明の第6の実施形態の第2直流ユニットとそれに関連する主な各手段の構成を示す回路図である。
【図14】本発明の第7の実施形態の第2直流ユニットとそれに関連する主な各手段の構成を示す回路図である。
【図15】本発明の第8の実施形態の主な構成を示す回路図である。
【図16】本発明の第9の実施形態の出力電圧余裕分を発生させる回路の構成と、単位インバータの出力電圧波形を示す図である。
【図17】本発明の第9の実施形態の主な構成を示す回路図である。
【図18】本発明の第10の実施形態の主な構成を示す回路図である。
【図19】本発明の第11の実施形態の制御を説明する為の出力電圧ベクトル図である。
【図20】本発明の第11の実施形態の制御方法を説明する為の制御ブロック図である。
【図21】本発明の第12の実施形態の主な構成を示す回路図である。
【図22】本発明の第13の実施形態の主な構成を示す回路図である。
【図23】本発明の第14の実施形態の主な構成を示す回路図である。
【図24】本発明の回路保護手段の各種接続方法を示す回路図である。
【図25】本発明の回路保護手段に使用される素子を示す図である。
【図26A】本発明のバイパススイッチの第1の構成を示す回路図である。
【図26B】本発明のバイパススイッチの第2の構成を示す回路図である。
【図26C】本発明のバイパススイッチの第3の構成を示す回路図である。
【図26D】本発明のバイパススイッチの第4の構成を示す回路図である。
【図26E】本発明のバイパススイッチの第5の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態を次に説明する。実施形態の全体的な構成や、実施形態を構成する個々の要素について、述べる。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、本発明の直列多重インバータ装置の第1の実施形態の主な構成を示す回路図である。
図1において、交流電力1(111〜11m、・・・、1n1〜1nm)、から整流器2(211〜21m、・・・、2n1〜2nm)、平滑コンデンサ4(411〜41m、・・・、4n1〜4nm)を通して供給される直流電圧を交流電圧に変換する単位インバータ5(511〜51m、・・・、5n1〜5nm)の出力を直列にm個接続し、第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)を構成し、その第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)をn個並列に接続し、その出力端を交流負荷7に接続し交流電力を供給するものである。出力電圧余裕分供給手段8は、第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)に直列接続され、インバータ故障時に不足する電圧を保障する。
なお、図1において、出力電圧余裕分供給手段8は装置の中性点(NP)901側に接続されているが、交流負荷(ACLoad)7側や、単位インバータ5の直列接続間などに接続されていても良い。
【0012】
また、以上において、交流電力1(111〜11m、・・・、1n1〜1nm)、整流器2(211〜21m、・・・、2n1〜2nm)、平滑コンデンサ4(411〜41m、・・・、4n1〜4nm)、単位インバータ5(511〜51m、・・・、5n1〜5nm)、第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)と表現したが、これらを簡略して、それぞれ交流電力1、整流器2、平滑コンデンサ4、単位インバータ5、第2単位インバータ直列接続群9と表記することもある。
なお、第2単位インバータ直列接続群9には、単位インバータ5以外にも交流電力1、整流器2、平滑コンデンサ4も含まれている。しかし、これらの交流電力1、整流器2、平滑コンデンサ4を含まず、単位インバータ5のみに着目し、単位インバータ5の出力を直列に例えばm個接続した構成(511+512+・・・+51m)を単位インバータ直列接続群と表記し、第2単位インバータ直列接続群9とは区別するものとする。
【0013】
図1の直列多重インバータ装置の主回路の動作、機能の詳細を述べるために、図1に示した個々の回路の構成、機能、動作を先に説明する。
第2単位インバータ直列接続群9に含まれた構成要素を順に説明する。
【0014】
<交流電力>
交流電力1(図1)の具体的な構成を図2で示す。
図2(a)は3相交流用の変圧器1の二次側の構成を示している。変圧器1の変圧器二次側巻線104、105、106によって、変圧器出力端子(u)101、(v)102、(w)103から(u、v、w)の組み合わせの3相交流が出力される。
図2(a)においては、変圧器1の一次側は図示していないが、3相交流用の変圧器1を図1においては交流電力1(111〜11m、1n1〜1nm)と表記している。なお、図2(a)では変圧器の構成をΔ結線(デルタ結線)の場合を示したが、Y結線(スター結線)の場合もある。また、同じΔ結線の構成の変圧器を用いる場合でも、交流電力1(111〜11m、1n1〜1nm)の相互間において、3相の位相の異なる組み合わせの場合もある。
【0015】
図2(b)はよく知られている3相交流の電圧波形を示すものである。各相の電圧は正弦波形の交流であって、3相からなる各相(相1、相2、相3)が120度ずつ位相の異なる組み合わせによって構成されている。なお、前記3相からなる各相は、図2(a)においては(u、v、w)の組み合わせの3相交流に対応している。
【0016】
<第1直流ユニット、その1>
図3は整流器2と平滑コンデンサ4と単位インバータ5からなる第1直流ユニット500の構成を示す回路図である。図3に示した第1直流ユニット500の回路は第2単位インバータ直列接続群9、あるいは本実施形態の直列多重インバータ装置の基本的な動作を説明するために示したものであるので、図1の第2単位インバータ直列接続群9から後記する回路保護手段3(図1)とバイパススイッチ6(図1)は除いて示している。
以下に、第1直流ユニット500の主構成要素であるダイオード整流器401と平滑コンデンサ4と単位インバータ5について、順に述べる。
【0017】
<整流器と平滑コンデンサ>
整流器2はダイオード211、212、221、222、231、232から構成されている。ダイオード211のカソードは正極端子501に接続され、アノードはダイオード212のカソードに接続されている。ダイオード212のアノードは負極端子502に接続されている。また、ダイオード211のアノードとダイオード212のカソードの接続点には、第1直流ユニット端子(u)111から3相交流の1相分が入力されている。ダイオード211のアノードとダイオード212のカソードの接続点に入力した正弦波の電圧が正であればダイオード211を通り正極端子501に到達する。また、負であればダイオード212を通り負極端子502に到達する。
以上から、第1直流ユニット端子(u)111から3相交流の1相分の入力はダイオード211とダイオード212によって全波整流され正極端子501と負極端子502に到達し、かつ平滑コンデンサ(C)4によって蓄積され、かつ平滑化される。
【0018】
ダイオード221のカソードは正極端子501に接続され、アノードはダイオード222のカソードに接続されている。ダイオード222のアノードは負極端子502に接続されている。また、ダイオード221のアノードとダイオード222のカソードの接続点には、第1直流ユニット端子(v)112から3相交流の1相分が入力されている。ダイオード221のアノードとダイオード222のカソードの接続点に入力した正弦波の電圧が正であればダイオード221を通り正極端子501に到達する。また、負であればダイオード222を通り負極端子502に到達する。
以上から、第1直流ユニット端子(v)112から3相交流の1相分の入力はダイオード221とダイオード222によって全波整流され正極端子501と負極端子502に到達し、かつ平滑コンデンサ(C)4によって蓄積され、かつ平滑化される。
【0019】
ダイオード231のカソードは正極端子501に接続され、アノードはダイオード232のカソードに接続されている。ダイオード232のアノードは負極端子502に接続されている。また、ダイオード231のアノードとダイオード232のカソードの接続点には、第1直流ユニット端子(w)113から3相交流の1相分が入力されている。ダイオード231のアノードとダイオード232のカソードの接続点に入力した正弦波の電圧が正であればダイオード231を通り正極端子501に到達する。また、負であればダイオード232を通り負極端子502に到達する。以上から、第1直流ユニット端子(w)103から3相交流の1相分の入力はダイオード231とダイオード232によって全波整流され正極端子501と負極端子502に到達し、かつ平滑コンデンサ(C)4によって蓄積され、かつ平滑化される。
【0020】
整流器2には第1直流ユニット端子(u)111、(v)112、(w)113から3相交流の位相の異なる各相が入力しているので、さらに平均化され、正極端子501と負極端子502の間に接続された平滑コンデンサ4には、より平滑化された直流電力(電圧Vdc)が蓄積される。
なお、図2(a)の変圧器1の変圧器出力端子(u)101、(v)102、(w)103はそれぞれ、図3の第1直流ユニット端子(u)111、(v)112、(w)113に接続されている。
【0021】
<単位インバータの構成>
図3において、単位インバータ5は半導体スイッチ素子となる絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT:Insulated Gate Bipolar Transistor 以下、IGBTと略す)511〜514で構成される。
IGBT(S1)511はコレクタが正極端子501に接続され、エミッタは単位インバータ出力端子(a)503に接続されている。IGBT(S3)513はエミッタが負極端子502に接続され、コレクタは単位インバータ出力端子(a)503に接続されている。IGBT(S2)512はコレクタが正極端子501に接続され、エミッタは単位インバータ出力端子(b)504に接続されている。IGBT(S4)514はエミッタが負極端子502に接続され、コレクタは単位インバータ出力端子(b)504に接続されている。また、IGBT511〜514の各入力端子(ゲート端子)には単位インバータ制御手段10(図8)の制御信号がそれぞれ接続されている。
なお、以上の半導体スイッチ素子(IGBT511〜IGBT514)の構成をブリッジ接続と呼ぶものとする。
【0022】
このとき、IGBT(S1、S3、S2、S4)のオン(ON)、オフ(OFF)の制御を図4に示したように行うと、単位インバータ出力端子(a)503と、単位インバータ出力端子(b)504間には+Vdc、0、−Vdcを意図的に発生させることができる。なお、IGBT(S1、S3、S2、S4)のオン(ON)、オフ(OFF)の制御は単位インバータ制御手段10(図8)が一括して行う。
なお、半導体スイッチ素子は必ずしもIGBTで構成する必要はないが、IGBTが比較的に絶縁性と耐圧性に優れ、単位インバータ5(図3)として、または第2単位インバータ直列接続群9(図1)、あるいは本実施形態の直列多重インバータ装置として、高電圧を容易に得やすい。
【0023】
<単位インバータの出力波形例>
図5は単位インバータ5(図3)の単位インバータ出力端子(a)503と、単位インバータ出力端子(b)504間の出力を0と+Vdcとの間に発生させる場合におけるそれぞれの期間による出力電圧の相違を示す図である。なお、縦軸は電圧、横軸は時間である。
0と+Vdcの発生期間を等しくとった場合の出力電圧波形を示したのが図5(a)であり、0の発生期間よりも、+Vdcの発生期間を長くとった場合の出力電圧波形を示したのが図5(b)である。出力電圧の絶対値としては、ともに0と+Vdcしか出力していないが、出力電圧の平均値としては図5(b)の方が高くなる。
したがって、単位インバータ制御手段10(図8)による単位インバータ5(図3)の制御を単にオン(ON)、オフ(OFF)のみならず、オン(ON)、オフ(OFF)の期間を制御すれば出力電圧の平均値として電圧値を設定する場合には、更に選択の自由度が高まる。
【0024】
<第1直流ユニット、その2>
図3の第1直流ユニット500を構成する要素として、整流器2、平滑コンデンサ4、および単位インバータ5について、それぞれ述べたので、第1直流ユニット500としての動作を説明する。
図3において、第1直流ユニット入力端子(u)111、(v)112、(w)113から3相交流を入力している。入力した3相交流は複数のダイオードからなる整流器2に入力する。整流器2は、入力した3相交流を全波整流して、交流を直流(平均電圧がVdc)に変換する。整流器2の出力は平滑コンデンサ(C)4を経て、単位インバータ5に供給され、単位インバータ出力端子(a)503、(b)504間に+Vdc、0、−Vdcの直流電圧を単位インバータ制御手段10(図8)の制御状況に応じて出力する。
【0025】
<単位インバータ直列接続群の構成>
出力電圧を高く、あるいは出力電圧の種類を増やすために、複数の第1直流ユニット500(図3)において、単位インバータ5の出力を直列に接続したものを単位インバータ直列接続群(511+512+・・・+51m)(図1)と表記する。
また、第1直流ユニット500(図3)に回路保護手段3とバイパススイッチ6と交流電力1を更に具備したことから第2直流ユニット600(図15)が構成されている。
そして、図1において、第2単位インバータ直列接続群9は第2直流ユニット600(図15)における単位インバータ5(図3)の単位インバータ出力端子(a)、(b)を直列に連続して接続して構成される。この構成によって、第2単位インバータ直列接続群9の出力端子からは、合成されて、より高圧の電圧や様々の電圧が出力されることが可能となる。
【0026】
なお、第2単位インバータ直列接続群9は第2直流ユニット600(図15)を直列に連続して接続して構成されるので「直流ユニット直列接続群」、もしくは「第2直流ユニット直列接続群」とも表現できるが、ここでは出力電圧を合成するのであり、かつ出力電圧を直接出力しているのは単位インバータ5であるので「第2単位インバータ直列接続群」と称している。
また、前記したように第2単位インバータ直列接続群9から、交流電力1、整流器2、回路保護手段3、平滑コンデンサ4、バイパススイッチ6を除いた単位インバータ5にのみに着目して、単位インバータ5の直列接続群と捉えた場合にも単位インバータ直列接続群(511+512+・・・+51m、・・・、5n1+5n2+・・・+5nm)(図1)と表記する。
【0027】
また、1個の第1直流ユニット500(図3)の単位インバータ5(図3)には、1個の単位インバータ制御手段10(図8)が備えられ、それにより開閉が制御されている。したがって、図1に示すように第2単位インバータ直列接続群9として、複数の第2直流ユニット600(図15)があり、かつ複数の第2単位インバータ直列接続群(9〜9)があるので、多数の単位インバータ制御手段10(図8)がある。図1の回路に含まれるこれら多数の単位インバータ制御手段10(図8)を連携して動作させるため、これらを統括する統括インバータ制御手段(不図示)がある。
【0028】
<単位インバータ直列接続群の出力電圧波形例>
図6は第2単位インバータ直列接続群9(図1)において、直列の段数mが3段の場合での出力波形例を示すものである。なお、縦軸は電圧、横軸は時間である。
図6においては第2単位インバータ直列接続群9相の電圧波形を+2Vdcと+3Vdcとの間で発生させていることを示している。これは、直列に接続された3個の単位インバータの内の2個の単位インバータの出力電圧を+Vdcとし、残りの1個を0と+Vdcとの間で変化させたものである。
【0029】
また、0、+Vdc、+2Vdc、+3Vdc、およびこれらの負極性の電圧の階段状の波形(不図示)も発生できる。
なお、これらの電圧を発生させる制御は単位インバータ制御手段10(図8)が行う。
また、第2単位インバータ直列接続群9において、第2単位インバータ直列接続群9による出力である9相のみならず、第2単位インバータ直列接続群9による出力である9相から、第2単位インバータ直列接続群9による出力である9相においても同様に制御し、階段状の波形を発生させることができる。
【0030】
図7は単位インバータ5(もしくは第2直流ユニット600(図15))の段数を3段より、更に増やした場合の単位インバータ直列接続群(511+512+・・・+51m)(図1)の出力電圧波形例を示すものである。前記したように、単位インバータ5の出力は+Vdc、0、−Vdcを選択でき、第2単位インバータ直列接続群9においては単位インバータ5の直列の段数を3段を超して構成でき、かつ単位インバータ5の出力の期間を単位インバータ制御手段10(図8)で制御すれば図7(a)に示すような平均値としては曲線に近く、かつ最大値が高電圧の電圧波形を発生することができる。
【0031】
なお、図7(a)が9相〜9相の単相の出力電圧波形であるのに対して、図7(b)は例えば9相と9相との相間の線間電圧の一例を表したものである。相電圧のみならず線間電圧で考えると自由度が高くなるので、更に刻み幅が細かくなり、より正弦波に近似された電圧波形も形成できる。
【0032】
<3相出力でモータ負荷の場合>
図1において、交流負荷(ACLoad)7が3相交流モータである場合には、n組からなる第2単位インバータ直列接続群9が、n=3の3組の第2単位インバータ直列接続群9〜第2単位インバータ直列接続群9からなり、かつその出力電圧が3相(u、v、w)交流であることが究極的には望ましい。
単位インバータ制御手段10(図8)もしくは統括インバータ制御手段(不図示)で単位インバータの半導体スイッチ素子(S1〜S4)を開閉する周波数を変えれば、より近似した三相交流の波形が得られるとともに三相交流としての周波数も変えられる。
【0033】
なお、幾ら単位インバータ5(もしくは第2直流ユニット600(図15))の段数を増やしても電圧波形の段差は完全には解消されないが、負荷が電動機の場合には電動機を構成する巻線(コイル)のインダクタンスが大きく、電流は滑らかに変化するので電動機の回転は電圧波形の段差の影響をあまり受けない。
また、後記するように、インバータと負荷との間に交流リアクトル(コイル)を直列接続して電圧・電流波形を滑らかにすることもある。
【0034】
また、図1において、第2単位インバータ直列接続群9における第1直流ユニット500(図3)の整流器(211〜21m)は交流電力(111〜11m)から、それぞれ別々に3相交流電力を受けている。これは同じ3相交流だからといって、単に配線を分けて、同一交流電力から複数の第1直流ユニット500(図3)に接続すると、単位インバータ5(もしくは第1直流ユニット500)を直列に接続して高い電圧を発生されることが必ずしもできなくなるからである。したがって、それぞれの第1直流ユニット500、つまりは図1におけるそれぞれの整流器(211〜21m)には、少なくとも直流的には隔離された別の交流電力(111〜11m)を用いる必要がある。
【0035】
<出力電圧の異常検出と補償>
図8は本発明の第1の実施形態を説明するための、以下の関連する要素のみを示す部分的な回路ブロック図である。
図8においては、図1の第2単位インバータ直列接続群9のうちの1個の単位インバータ5に係る回路を主として示している。なお、交流電力1、整流器2、回路保護手段3、平滑コンデンサ4、単位インバータ5、バイパススイッチ6によって第2直流ユニット600(図15)が構成されている。
交流電力1と整流器2と平滑コンデンサ4については前述した通りである。
また、単位インバータ5と単位インバータ制御手段10の基本的な動作については説明した。ただし、本実施形態に係る異常時の動作については以下において説明を加える。
回路保護手段3、バイパススイッチ6、出力電圧余裕分供給手段8、運転異常検出手段11、およびバイパススイッチ制御手段12については、この後に説明する。
【0036】
図8において、単位インバータ5が正常に動作可能な状態にあるとき、単位インバータ制御手段10により単位インバータ5の半導体スイッチ素子S1〜S4を開閉(OFF、ON)制御することにより、適正な出力電圧が供給される。そして、図1の複数のすべての単位インバータ5が正常に動作可能な状態にあるとき、交流負荷7に交流電力が供給される。
この場合、各単位インバータ5が正常であるため、運転異常検出手段11から異常検出信号が出力されないので、バイパススイッチ制御手段12からバイパススイッチ6に対して閉路指令が与えられない。このため、バイパススイッチ6はオフ(OFF)状態のままである。
【0037】
なお、運転異常検出手段11は各単位インバータ5で短絡故障などが発生した場合に、交流出力側の電圧・電流異常や、直流入力側の電圧低下などを検出する。そして、運転異常検出手段11は、バイパススイッチ制御手段12に運転異常検出信号を出力する。
この運転異常検出信号により、バイパススイッチ制御手段12はバイパススイッチ6に閉路指令を出力する。
そして、バイパススイッチ6がオン(ON)し、交流負荷7に半導体スイッチ素子S1〜S4を通して流れていた電流がバイパススイッチを通して流れることになる。
【0038】
また、運転異常検出信号は、回路保護手段3と出力電圧余裕分供給手段8にも出力される。
回路保護手段3では、運転異常検出信号によって電源側回路を開放することで、故障した単位インバータ5と交流電力1が損傷することを防止する。
出力電圧余裕分供給手段8では、運転異常検出信号の検出により、単位インバータ5の故障により不足する出力電圧分を、故障した単位インバータ5の代わりに出力する。
これらの結果、故障等の発生していない健全な単位インバータ5と、出力電圧余裕分供給手段8から供給される交流電圧によって、故障前と同じ出力電圧で交流負荷7(図1)の運転が継続できる。
なお、出力電圧余裕分供給手段8の具体的な構成、動作等については後述する。
【0039】
(第2の実施形態、ヒューズ)
図9は本発明の第2の実施形態を説明するための、以下の関連する要素のみを示す部分的な回路図である。
図9はヒューズ13と関連する信号を除けば、図8の回路と同じ構成である。したがって、図8と同じ構成や動作についての説明は適宜省略する。
図9において、ヒューズ13は単位インバータ5を含めた第2直流ユニット600(図15)の回路で異常が発生し、過電流が流れた場合に、溶断もしくは遮断して回路を保護する。
【0040】
図9では、回路保護手段3とヒューズ13は分けているが、ヒューズ13が回路保護手段3をかねても良い。また、図9で整流器2と平滑コンデンサ4の間に回路保護手段3とヒューズ13は接続されているが、平滑コンデンサ4と単位インバータ5の間でも良い。
また、ヒューズ13の溶断に伴って動作する動作接点により、溶断が電気信号となって、運転異常検出手段11が運転異常を検出する。運転異常検出により、バイパススイッチ6が閉路されるのは図8と同様である。
【0041】
(第3の実施形態、レベル判定<1>)
図10は本発明の第3の実施形態を説明するための、以下の関連する要素のみを示す部分的な回路図である。
図10は電圧検出手段14とレベル判定手段15と、これらに関連する信号を除けば、図8の回路と同じ構成である。したがって、図8と同じ構成や動作についての説明は適宜省略する。
図10において、電圧検出手段14が整流器2の出力端子(正極端子501、負極端子502(図3))の両端に備えられている。また、電圧検出手段14の信号を判定するようにレベル判定手段15が接続されている。
【0042】
この構成により、単位インバータ5に印加される直流電圧を電圧検出手段14により検出し、レベル判定手段15は、電圧検出手段14による検出値が基準値に対して過電圧あるいは不足電圧になったことを持って検出する。レベル判定手段15はその検出信号を運転異常検出手段11に信号を送る。運転異常検出手段11はバイパススイッチ制御手段12に運転異常検出信号が送られ、バイパススイッチ6が閉路される。
【0043】
(第4の実施形態、レベル判定<2>)
図11は本発明の第4の実施形態を説明するための、以下の関連する要素のみを示す部分的な回路図である。
図11は電流検出手段16とレベル判定手段17と、これらに関連する信号を除けば、図8の回路と同じ構成である。したがって、図8と同じ構成や動作についての説明は適宜省略する。
図11において、電流検出手段16が整流器2の出力端子(正極端子501(図3))と回路保護手段3との間に備えられている。また、電流検出手段16の信号を判定するようにレベル判定手段17が接続されている。
【0044】
この構成により、レベル判定手段17は、整流器2もしくは平滑コンデンサ4に流れる電流を電流検出手段16により検出し、この検出電圧が基準値に対して所定範囲を越えたとき単位インバータ5の異常を検出する。レベル判定手段17はその検出信号を運転異常検出手段11に信号を送る。運転異常検出手段11によってバイパススイッチ制御手段12に運転異常検出信号が送られ、バイパススイッチ6が閉路される。
【0045】
(第5の実施形態、レベル判定<3>)
図12は本発明の第5の実施形態を説明するための、以下の関連する要素のみを示す部分的な回路図である。
図12は電圧検出手段18とレベル判定手段19と、これらに関連する信号を除けば、図8の回路と同じ構成である。したがって、図8と同じ構成や動作についての説明は適宜省略する。
図12において、電圧検出手段18が単位インバータ5の出力端子((a)503、(b)504(図3))間に備えられている。また、電圧検出手段18の信号を判定するようにレベル判定手段19が接続されている。
【0046】
この構成により、レベル判定手段19は、単位インバータ5の出力交流電圧を電圧検出手段18により検出し、単位インバータ5が出力する電圧を電圧検出手段18により検出し、レベル判定手段19は、電圧検出手段18による検出値が基準値に対して所定範囲を越えたとき単位インバータ5の異常を検出する。レベル判定手段19はその検出信号を運転異常検出手段11に信号を送る。運転異常検出手段11によってバイパススイッチ制御手段12に運転異常検出信号が送られ、バイパススイッチ6が閉路される。
【0047】
(第6の実施形態、レベル判定<4>)
図13は本発明の第6の実施形態を説明するための、以下の関連する要素のみを示す部分的な回路図である。
図13は電圧検出手段20とレベル判定手段21と、これらに関連する信号を除けば、図8の回路と同じ構成である。したがって、図8と同じ構成や動作についての説明は適宜省略する。
図13において、電圧検出手段20が整流器2の入力交流電圧の間に備えられている。また、電圧検出手段20の信号を判定するようにレベル判定手段21が接続されている。
【0048】
この構成により、整流器2の入力交流電圧を電圧検出手段20により検出し、レベル判定手段21は、電圧検出手段20による検出値が基準値に対して、過電圧あるいは不足電圧になったことを持って検出する。レベル判定手段21はその検出信号を運転異常検出手段11に信号を送る。運転異常検出手段11はバイパススイッチ制御手段12に運転異常検出信号が送られ、バイパススイッチ6が閉路される。
【0049】
(第7の実施形態、レベル判定<5>)
図14は本発明の第7の実施形態を説明するための、以下の関連する要素のみを示す部分的な回路図である。
図14は出力検出器22〜25と電圧検出手段26と、これらに関連する信号を除けば、図8の回路と同じ構成である。したがって、図8と同じ構成や動作についての説明は適宜省略する。
図14において、出力検出器22〜25が単位インバータ5の半導体スイッチ素子S1〜S4のそれぞれのエミッタとゲート間に備えられている。また電圧検出手段26が単位インバータの出力端子((a)503、(b)504(図3))間に備えられている。また、出力検出器22〜25と電圧検出手段20の信号を運転異常検出手段11に送るように接続されている。
【0050】
この構成において、単位インバータ制御手段10の出力検出器22〜25に検出された電圧波形を運転異常検出手段11に入力し、該電圧波形と基準電圧波形、もしくは電圧検出手段26によって検出される単位インバータ5の出力交流電圧波形との比較によって、外部要因による異常を判別する。運転異常検出手段11によってバイパススイッチ制御手段12に運転異常検出信号が送られ、バイパススイッチ6が閉路される。
【0051】
(第8の実施形態、出力電圧余裕分供給手段<1>)
図15は、第8の実施形態の主な構成を示す回路図である。
出力電圧余裕分供給手段8(図1、図8)として、各第2単位インバータ直列接続群9にそれぞれ出力電圧余裕分を生み出す単位インバータ5を含む第2直流ユニット600を接続したものである。
図15において、出力電圧余裕分供給手段8は第2直流ユニット60010(交流電力110+整流器210+回路保護手段310+平滑コンデンサ410+単位インバータ510+バイパススイッチ610)と第2直流ユニット600n0(交流電力1n0+整流器2n0+回路保護手段3n0+平滑コンデンサ4n0+単位インバータ5n0+バイパススイッチ6n0)が第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)に接続されたものである。
【0052】
図15においては、出力電圧余裕分供給手段となる第2直流ユニット600は第2直流ユニット60010と第2直流ユニット600n0の2個しか示していないが、3個以上の複数個であってもよく、またn個の全数を備えてもよい。
【0053】
また、図15においては、出力電圧余裕分供給手段となる第2直流ユニット600は各第2単位インバータ直列接続群9に対して直列方向に1段しか接続されていないが、直列方向に複数段、接続されていても良い。このとき、段数に応じて出力電圧余裕分は大きな値となり、電圧調整の範囲が広がる。
【0054】
図15において、通常の場合は出力電圧余裕分供給手段8の単位インバータ5(510、5n0)は零電圧(図4参照)を出力するか、もしくはバイパススイッチ6(610、6n0)をオンしてパイパスしておく。
また、ある第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)中の単位インバータ5(511〜51m、・・・、5n1〜5nmのいずれか)にて故障発生した場合は、図8に示す運転異常検出手段11から、バイパススイッチ制御手段12と出力電圧余裕分供給手段8に運転異常検出信号が送信される。
【0055】
運転異常検出信号を受けたバイパススイッチ制御手段12は、故障発生した単位インバータ5(511〜51m、・・・、5n1〜5nmのいずれか)に対応するバイパススイッチ6(611〜61m、・・・、6n1〜6nmのいずれか)をオン(ON)してパイパスする。
【0056】
運転異常検出信号を受けた出力電圧余裕分供給手段8は故障発生した単位インバータ5(511〜51m、・・・、5n1〜5nmのいずれか)を含む第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)に対応する出力電圧余裕分供給手段8の単位インバータ5(510、5n0)を動作させて、故障発生した単位インバータ5(511〜51m、・・・、5n1〜5nmのいずれか)の替わりに所定の出力電圧を発生することによって、故障前と同じ出力電圧で交流負荷の運転を継続する。
なお、出力電圧余裕分供給手段8の単位インバータ5(510、5n0)を動作させる場合には、それに対応するバイパススイッチ6(610、6n0)はオフ(OFF)する。
【0057】
(第9の実施形態、出力電圧余裕分供給手段<2>)
図16と図17を参照して、本発明の第9の実施形態について説明する。
図16は、第9の実施形態の出力電圧余裕分を発生させる回路の構成と、出力電圧余裕分と、単位インバータ定格出力電圧と負荷定格出力電圧の関係を示す各出力電圧の波形を示している。
図16の第9の実施形態においては、図1に示す出力電圧余裕分供給手段8として、各単位インバータ5の定格出力電圧を負荷定格出力電圧よりも大きなものにし、負荷の定格出力運転に対する電圧余裕分としている。
【0058】
つまり、第9の実施形態においては、図1に示す出力電圧余裕分供給手段8として、図15に示した余分の第2直流ユニット60010(交流電力110+整流器210+回路保護手段310+平滑コンデンサ410+単位インバータ510+バイパススイッチ610)もしくは600n0を設けるのではなく、図1の単位インバータ5(511〜51m、・・・、5n1〜5nm)の個々の出力電圧を調整する制御をして、故障時の電圧低下を補う方法をとっている。
【0059】
これを図示したのが、図17であり、第9の実施形態の主な構成を示す回路図である。
ある第2単位インバータ直列接続群9中の単位インバータ5にて故障発生した場合、図8に示す運転異常検出手段11より、単位インバータ制御手段に対して、運転異常検出信号が送信され、出力電圧余裕分供給手段8を用いて、故障していない各単位インバータ5からの出力電圧を増すことにより、故障によって不足にする出力電圧を補償し、故障前と同じ出力電圧で交流負荷の運転を継続する。
【0060】
図17において、第2単位インバータ直列接続群(9+8)、(9+8)、・・・、(9+8)において、(9)、(9)、・・・、(9)は通常時の第2単位インバータ直列接続群9の出力を発生させる回路と制御に相当するものを意味し、(8)、(8)、・・・、(8)は単位インバータ5の故障時において、発生させる余裕分の回路と制御に相当するものを意味している。
これは、もともと通常の場合においては最大の出力電圧が負荷定格出力電圧よりも大きく、余裕分として調整していた電圧を、故障発生時に使用するものである。この方法について、以下に説明を加える。
【0061】
図5において、図5(a)、図5(b)ともに単位インバータ5としては0と+Vdcの2値を出力している。図5(a)では0と+Vdcをそれぞれ出力している時間(期間)は同一であるので平均としての出力電圧は概ね+(0.5)Vdcである。一方、図5(b)では0よりも+Vdcを出力している期間が長く(概ね6倍)、平均としての出力電圧は概ね+(0.85)Vdcである。したがって、単位インバータ5としては0と+Vdcの2値の出力でありながら、平均出力電圧は単位インバータ5のオン(ON)、オフ(OFF)の制御の仕方で調整できる。
【0062】
図16の第9の実施形態においてはこの方法を用いている。通常は前記したように、出力電圧に余裕がある分を単位インバータ5のオン(ON)、オフ(OFF)の制御を負荷定格出力電圧になるように抑える方法をとり、故障の際には、故障した単位インバータ5の電圧を補うように他の単位インバータ5の制御方法を変える。
この単位インバータ5の制御は個々の単位インバータ制御手段10のみが単独で行うのではなく、複数の単位インバータ5を統括して制御する統括インバータ制御手段(不図示)と運転異常検出手段11の連携のもとに行う。
【0063】
(第10の実施形態、出力電圧余裕分供給手段<3>)
図18は、第10の実施形態を示す図である。第8の実施形態における、出力電圧余裕分供給手段8として、全ての第2単位インバータ直列接続群9に余分な単位インバータ5を接続したものである。第8の実施形態における限定された回路であるので、詳細な説明は省略する。
【0064】
(第11の実施形態、出力電圧余裕分供給手段<4>)
図19及び図20は本発明の第11の実施形態を説明する為の図であって、それぞれ出力電圧のベクトル図、制御を行う際の制御ブロック図である。
図19は、図1のような主回路において、3相交流を供給する際に、その出力電圧をベクトル図に展開したものである。ある相にて単位インバータが故障した際に、バイパスによりその出力相電圧は故障前より低下し、そのままだと、故障前と同等の出力線間電圧が確保できない。そこで、他の相において、出力電圧余裕分にて故障相で不足する電圧と逆方向に相電圧を増すことで、故障後も故障前と同等の出力線間電圧を保つことができる。
【0065】
これは、図7において前述したように、出力電圧の制御は単独の相のみで行う方法もあれば、相と相の間の線間での電圧を用いる方法もある。これは第2単位インバータ直列接続群9において、単独で出力電圧の制御を行う方法以外に、第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)において、線間でも制御できることを示している。
【0066】
図20は、以上の制御を行う際の一例を示す制御ブロック図である。
図20において、電圧リミット手段81V〜81Vは制御前の電圧指令値V〜Vを規定された出力できる最大電圧値に抑える機能を有している。故障時にはバイパスを行った相において、通常時よりも出力できる最大電圧値が減少するため、電圧リミット手段81V〜81Vは運転異常検出手段11V〜11Vから故障情報を受け取り、適宜出力できる最大電圧値を変更する役目を有している。電圧リミット手段81V〜81Vにおける電圧指令値V〜Vは図5を参照して前述したように単位インバータ5(図8)の0や+Vdcを出力する割合や、図6、図7(a)、(b)を参照して前述したように第2単位インバータ直列接続群9(図1)における単位インバータ5(図8)の連携や、第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)(図1)の相互の線間電圧における連携によって調整される。この調整は、単位インバータ制御手段10(図8)や統括インバータ制御手段(不図示)の制御によって行っている。
【0067】
したがって、故障がない場合には電圧指令値V〜Vは比較的に余裕があって、規定された最大電圧値よりも低い電圧となっている。電圧リミット手段81V〜81Vは制御前の電圧指令値V〜Vを規定された出力できる最大電圧値に抑える。前記した故障がない場合には電圧指令値V〜Vは電圧リミット手段81V〜81Vの出力電圧より低い電圧となる。
電圧リミット手段81V〜81Vの出力と、電圧指令値V〜Vはともに、それぞれ比較手段82V〜82Vに入力される。比較手段82V〜82Vはその比較結果を集計手段83Vに送る。集計手段83Vは比較手段82V〜82Vから送られた比較結果を合計する。
【0068】
出力電圧調整手段84V〜84VのそれぞれのA端子には、それぞれ電圧リミット手段81V〜81Vの出力電圧が入力する。
出力電圧調整手段84V〜84VのそれぞれのB端子には、集計手段83Vの出力電圧が入力する。
出力電圧調整手段84V〜84VのそれぞれのC端子には、それぞれ電圧指令値V〜Vが入力する。
【0069】
出力電圧調整手段84V〜84Vにおいて、A端子の入力電圧とC端子の入力電圧とが比較され、A=Cであれば、A端子の入力電圧からB端子の入力電圧を引いたものが、それぞれ出力電圧調整手段84V〜84Vの出力電圧として出力する。
また、A=CでなければA端子の入力電圧を出力電圧調整手段84V〜84Vの出力電圧として出力する。
これは、制御前の電圧指令値V〜Vは、出力できる最大電圧値V*limit(*は1〜n)にてリミットされ、リミットが掛かっていない場合、他の相のリミットオーバー値の総和を減算され、出力電圧指令V’〜V’となる。
この処理によって、故障した相でリミットに掛かり出力できなかった分の電圧を、他の相によって補い、線間電圧は故障前と同等の値を維持することが可能となる。
【0070】
なお、図20において、示した電圧リミット手段81V〜81V、比較手段82V〜82V、集計手段83V、出力電圧調整手段84V〜84Vは図1の回路図において、必ずしも、さらに加えられるものではなく、図1の出力電圧余裕分供給手段8や、単位インバータ制御手段10(図8)、統括インバータ制御手段(不図示)、運転異常検出手段11(図8)等が機能を分担して兼ねることができる。
【0071】
(第12の実施形態、出力電圧余裕分供給手段<5>)
図21は、第12の実施形態の主な構成を示す回路図である。
図21において、第2単位インバータ直列接続群9(9、9〜9)に対して、出力電圧余裕分供給手段8の第2直流ユニット60020、・・・、600n0がそれぞれに対応して、すべて用意されてはいない。
第11の実施例に示す制御を使用すれば、出力電圧余裕分供給手段8は、全ての第2単位インバータ直列接続群9に備わっている必要はない。余分な単位インバータが存在する群でバイパスを行う際は、余分な単位インバータにより不足する相電圧を補償し、余分な単位インバータが存在しない群でバイパスを行う際には、他の群において、第11の実施例に示す制御を使用することで、故障前と同等の線間電圧を確保することが出来る。この実施形態は、余分な単位インバータを少なくすることが出来る為、コストダウンとなる。
【0072】
(第13の実施形態、出力電圧余裕分供給手段<6>)
図22は、第13の実施形態の主な構成を示す回路図である。
図22において、出力電圧余裕分供給手段8としての、第2直流ユニット60010は1個のみを備えている。スイッチS1A〜SnAはそれぞれ第2直流ユニット60010における単位インバータ510の一方の端子と第2単位インバータ直列接続群9〜9の出力端子との間に接続されている。また、スイッチS1B〜SnBはそれぞれ第2直流ユニット60010における単位インバータ510の他方の端子、つまり中性点(NP)901と第2単位インバータ直列接続群9〜9の出力端子との間に接続されている。
【0073】
通常の場合である単位インバータの故障の前は、半導体スイッチ素子などで構成されるスイッチS1B〜SnBをオン(ON)しておき、故障時に運転異常検出手段11からの信号により、故障した単位インバータ5がある回路のスイッチS*Bをオフ(OFF)し、スイッチS*Aをオン(ON)することにより、余分な単位インバータを故障した単位インバータの補償に当てることができる。なお、S*BやS*Aにおいて、*に1〜nの第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)に相当する番号が対応するものとする。
また、スイッチS1A〜SnAを故障時ONスイッチ、スイッチS1B〜SnBを非故障時ONスイッチと表記する。またスイッチS1A〜SnAとスイッチS1B〜SnBを故障時切換スイッチと表記する。
【0074】
このような故障時ONスイッチS1A〜SnAと非故障時ONスイッチS1B〜SnBとからなるスイッチ回路を組むことで、出力電圧余裕分供給手段8に必要な単位インバータを少なくすることが出来る。
また、図22においては、第2直流ユニット600は1個のみの場合を示したが、複数個を備えてもよい。ただし、このとき、この切り替えのためのスイッチと配線をさらに備える必要がある。
【0075】
(第14の実施形態、出力電圧余裕分供給手段<7>)
図23は、第14の実施形態の主な構成を示す回路図である。
図23において、第2単位インバータ直列接続群9(9〜9)の出力に直列に変圧器27(27〜27)をそれぞれ接続し、変圧器27の他方の巻線に出力電圧余裕分に相当する第2直流ユニット600(60010〜600n0)の出力をそれぞれ接続して、故障時のバイパスによる出力電圧不足を、変圧器27を通して補償する。
図23では、変圧器27は中性点(NP)901側に接続したが、交流負荷(ACLoad)7側でもかまわない。
【0076】
直列多重インバータの負荷側にはフィルタやインピーダンスとしての目的で、交流リアクトルが接続されることがある。図7(a)、(b)で示した階段状の出力電圧波形であっても、このリアクトルによって電流の変化を滑らかにすることができる。
図23における変圧器27は交流リアクトルと構成が似ている為、同様の目的で接続できることが、さらなる効果となる。
【0077】
(その他の実施形態)
以上、本発明が適用される直列多重インバータ装置としての全体的な構成としての実施形態を述べてきたが、個々の回路、手段においては前述したものに限らない。以下に個々の要素の実施形態について述べる。
【0078】
<回路保護手段の実施形態>
図24は、回路保護手段3の位置の実施例を示すものである。前記の各実施形態における回路保護手段3は、図24(a)に示すように、交流電力1と整流器2との間でも良い。
また、回路保護手段3は、図24(b)のように整流器2と平滑コンデンサ4との間でもよい。なお、この位置関係は図1で示した回路保護手段3と整流器2と平滑コンデンサ4の関係と同一である。
また、回路保護手段3は、図24(c)のように平滑コンデンサ4と単位インバータ5との間でも良い。
また、回路保護手段3は、図24(d)のように単位インバータ5とバイパススイッチ6の間のいずれであっても良い。
【0079】
また、回路保護手段3に使用する素子としては図25に示すように様々な実施形態がある。
図25(a)は入力信号によってオン(ON)、オフ(OFF)ができる自己消弧型半導体素子(例えばIGBT)である半導体スイッチ素子が極性を逆方向で、並列に接続された構成である。
図25(b)は規定値以上の過電流によって溶断するヒューズである。
図25(c)は規定値以上の過電流によって遮断する遮断器である。
また、故障時の単位インバータ5の半導体スイッチ素子を開放とすることで、回路保護手段の代替としても良い。但しその場合、半導体スイッチ素子の短絡故障からは回路を保護できない。
【0080】
<バイパススイッチの実施形態>
図26(図26A、図26B、図26C、図26D、図26E)はバイパススイッチの実施形態を示すものである。
図26Aは自己消弧型半導体素子によるものである。自己消弧型半導体素子である半導体スイッチ素子(6A1、6A2)が極性を逆方向で、並列に接続された構成である。この回路が単位インバータ5の出力端子に接続されている。このとき、半導体スイッチ素子(6A1、6A2)のゲート端子を制御する。
なお、自己消弧型半導体素子として前記したようにIGBTがある。この回路の場合、逆方向電圧によって破壊されないように、IGBTは逆方向電圧阻止型IGBT(逆阻止型IGBT)を使用する。
【0081】
図26Bは自己消弧型半導体素子によるものである。自己消弧型半導体素子である半導体スイッチ素子(6B1、6B2)が極性を逆方向で、直列に接続された構成である。半導体スイッチ素子(6B1、6B2)に対して逆方向電流を流す為に、ダイオード(6B3、6B4)が半導体スイッチ素子(6B1、6B2)に並列に接続されている。この回路が単位インバータ5の出力端子に接続されている。このとき、半導体スイッチ素子(6B1、6B2)のゲート端子を制御する。
【0082】
図26Cはダイオード6C1、6C2、6C3、6C4がブリッジ接続され、その直流出力にサイリスタ(Thyristor、短絡用制御極付半導体素子)6C5が接続されている。この回路が単位インバータ5の出力端子に接続されている。このとき、サイリスタ6C5のゲート端子を制御する。
【0083】
図26Dはダイオード6D1、6D2、6D3、6D4がブリッジ接続され、その直流出力にサイリスタ6D5が接続されている。この回路が単位インバータ5の電源間(正極端子501と負極端子502間(図3))、つまり、平滑コンデンサ4(図3)に並列に接続されている。このとき、サイリスタ6D5のゲート端子を制御する。なお、この回路は図26Cの回路と同一の構成であるが、バイパスをする経路が異なっている。
【0084】
図26Eは1個のサイリスタ6E5が単位インバータ5の電源間(正極端子501と負極端子502間(図3))、つまり、平滑コンデンサ4(図3)に並列に接続されている。このとき、サイリスタ6E5のゲート端子を制御する。
【0085】
なお、図26Dと図26Eのバイパス回路については、直流側の短絡(平滑コンデンサ4(図3)の両端)も行う為、回路保護手段3での直流回路保護が必須となる。
また、図26Eに関しては、単位インバータ5の半導体スイッチ素子としてよく使われているIGBTに常備されているフリーホイールダイオードを利用して負荷側電流を通流するが、フリーホイールダイオードは通常、IGBT定格電流よりも容量が少ない為、素子の選定に注意が必要となる。
【0086】
また、前記のバイパススイッチの他に、ナイフスイッチや電磁接触器など、機械的接点でのスイッチングでもバイパスは可能である。しかし、時間応答性の問題から、前記のような半導体スイッチ素子を用いることが望ましい。
【0087】
<交流電力>
図1、図2において、交流電力1は3相交流の場合を説明したが、単相や2相、あるいは4相以上で構成してもよい。相の数が多いほど、一般的には整流器2(図1、図2)を通った後の出力電圧のリップルが少ない。
【0088】
また、図1、図15、図17、図18、図21〜図23において、交流電力1(111〜11m、・・・、1n1〜1nm)が記載されているが、3相交流そのものが供給される場合には、本実施形態に交流電力1(111〜11m、・・・、1n1〜1nm)が装置として含まれていなくともよい。
【0089】
<単位インバータ制御手段>
図8〜図14において、単位インバータ制御手段10は、単位インバータ5毎にそれぞれ備えられていることを示し、これら複数の単位インバータ制御手段10を統括して制御する統括単位インバータ制御手段(不図示)が別にさらに備えられていると説明した。しかし、前記した単位インバータ制御手段10は必ずしも個々の単位インバータ5毎に具備する必要はなく、共有してもよい。また、統括単位インバータ制御手段(不図示)が直接、複数の単位インバータ5を制御してもよい。
【0090】
<バイパススイッチ制御手段>
図8〜図14において、バイパススイッチ制御手段12は、単位インバータ5毎にそれぞれ備えられているバイパススイッチ6を制御している。このとき、バイパススイッチ制御手段12がバイパススイッチ6に対して、それぞれ具備する場合もあるし、また、ひとつのバイパススイッチ制御手段12が複数のバイパススイッチ6を一括して制御する場合もある。
【0091】
以上、本実施形態は、整流器の直流電力を交流電力に変換するものであって、単位インバータを複数個準備し、その入力側が平滑コンデンサを介して整流器に並列に接続され、各単位インバータの出力側を直列接続し、かつ交流負荷に接続する直列多重式インバータにおいて、運転異常検出手段が異常を検出したとき、該当する単位インバータに対応するバイパス回路によって単位インバータの出力側を短絡し、同時に、単位インバータを保護する保護回路によって単位インバータを開放し、保護を行う。このとき、バイパス回路が単位インバータの出力を短絡するので出力電圧が不足となるが、装置の出力電圧余裕分によって、不足分となる電圧を補い、交流負荷への故障前と同等の電力供給を継続して行うものである。
【0092】
したがって、複数の単位インバータのうちの少なくとも1個に故障等が発生しても、残りの健全な単位インバータの運転を停止させることなく、故障前と同じ出力電圧で交流負荷の運転が継続できる直列多重インバータ装置を提供する。
また、直列多重インバータ装置の構成のみではなく、直列多重インバータの制御方法についても示している。
【符号の説明】
【0093】
1、110〜1n0、111〜11m、1n1〜1nm 交流電力、変圧器
2、210〜2n0、211〜21m、2n1〜2nm 整流器
3、310〜3n0、311〜31m、3n1〜3nm 回路保護手段
4、410〜4n0、411〜41m、4n1〜4nm 平滑コンデンサ
5、510〜5n0、511〜51m、5n1〜5nm 単位インバータ
6、610〜6n0、611〜61m、6n1〜6nm バイパススイッチ
6A1、6A2、6B1、6B2 半導体スイッチ素子
6B3、6B4、6C1〜6C4、6D1〜6D4 ダイオード
6C5、6D5、6E5 サイリスタ、短絡用制御極付半導体素子
7 交流負荷、ACLoad
8、8〜8 出力電圧余裕分供給手段
9、9〜9 第2単位インバータ直列接続群
10 単位インバータ制御手段
11、11〜11 運転異常検出手段
12 バイパススイッチ制御手段
13 ヒューズ、回路保護手段
14、18、20、26 電圧検出手段
15、17、19、21 レベル判定手段
16 電流検出手段
22〜25 出力検出器
27、27〜27 変圧器
81V〜81V 電圧リミット手段
82V〜82V 比較手段
83V 集計手段
84V〜84V 出力電圧調整手段
101〜103 変圧器出力端子((u)、(v)、(w))
104、105、106 変圧器二次側巻線
111〜113 第1直流ユニット端子((u)、(v)、(w))
211、212、221、222、231、232 ダイオード
500 第1直流ユニット
501 正極端子
502 負極端子
503 単位インバータ出力端子(a)
504 単位インバータ出力端子(b)
511〜514、S1〜S4 半導体スイッチ素子、IGBT
600、60020〜600n0 第2直流ユニット
901 中性点(NP)
〜V 制御前電圧指令
’〜V’ 制御後電圧指令
1A〜SnA スイッチ、故障時ONスイッチ、故障時切換スイッチ
1B〜SnB スイッチ、非故障時ONスイッチ、故障時切換スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記整流器の出力である直流電力を交流電力に変換するものであって、複数の半導体スイッチ素子をブリッジ接続してなる単位インバータを複数個設け、該各単位インバータの入力側が平滑コンデンサを介して前記整流器の出力に並列に接続され、該各単位インバータの出力側を直列接続し、かつ交流負荷に接続する単位インバータ直列接続群と、
前記単位インバータを構成している半導体スイッチ素子に対して所定の順序で開閉制御指令を与える単位インバータ制御手段と、
前記単位インバータの運転異常状態を検出する運転異常検出手段と、
前記運転異常検出手段が前記単位インバータの異常を検出したとき、該当する単位インバータに対応する回路を開放することによって、前記単位インバータを保護する回路保護手段と、
前記単位インバータに並列に接続され、電気的に閉路したとき負荷電流を循環させる流路を形成するバイパススイッチと、
前記運転異常検出時、該当する単位インバータに対応する前記バイパススイッチに閉路指令を与えることにより、前記単位インバータの出力を短絡せしめるバイパススイッチ制御手段と、
前記単位インバータのバイパス時に不足する出力電圧分を補う機能を有し、前記単位インバータの出力に直列に具備された出力電圧余裕分供給手段と、
を備えたことを特徴とする直列多重インバータ装置。
【請求項2】
交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記整流器の出力端子間に接続された平滑コンデンサと、
複数の半導体スイッチ素子をブリッジ接続してなる単位インバータと、
を具備し、前記単位インバータの直流入力側が前記平滑コンデンサの両端子と前記整流器の出力に並列に接続されて第1直流ユニットが構成され、
複数の前記第1直流ユニットに含まれる複数の前記単位インバータの出力が直列に接続されて単位インバータ直列接続群が構成され、
複数の前記単位インバータ直列接続群が交流負荷に並列に接続されてなる直流多重インバータ装置であって、
さらに、
複数の前記単位インバータの開閉をそれぞれ制御する複数の単位インバータ制御手段と、
複数の前記単位インバータの運転異常状態をそれぞれ検出する複数の運転異常検出手段と、
複数の前記運転異常検出手段のいずれかが前記単位インバータの運転異常状態を検出したとき、運転異常状態に該当する前記単位インバータに対応する前記第1直流ユニットの回路を開放することによって、前記単位インバータを保護する回路保護手段と、
複数の前記単位インバータの出力に並列に接続され、電気的に閉路したとき負荷電流を循環させる流路をそれぞれに形成する複数のバイパススイッチと、
複数の前記運転異常検出手段のいずれかが前記単位インバータの運転異常状態を検出したとき、運転異常状態に該当する前記単位インバータに対応する前記バイパススイッチに閉路指令を与えるバイパススイッチ制御手段と、
前記単位インバータ直列接続群に直列に接続され、前記バイパススイッチが閉路して該バイパススイッチに対応する前記単位インバータの不足する出力電圧分を補う出力電圧余裕分供給手段と、
を備えたことを特徴とする直列多重インバータ装置。
【請求項3】
前記運転異常検出手段は、前記単位インバータに接続されたヒューズの溶断に伴って直流異常を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項4】
前記運転異常検出手段は、前記単位インバータに印加される直流電圧が基準値に対して過電圧あるいは不足電圧になったことを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項5】
前記運転異常検出手段は、前記単位インバータの整流器もしくは平滑コンデンサに流れる電流が基準値に対して過電流あるいは不足電流になったことを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項6】
前記運転異常検出手段は、前記単位インバータの出力交流電圧を検出すると共に、この検出電圧が基準値に対して所定範囲を越えたとき単位インバータの異常を検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項7】
前記運転異常検出手段は、前記単位インバータの整流器に入力される交流電圧が基準値に対して過電圧あるいは不足電圧になったことを検出することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項8】
前記運転異常検出手段は、前記単位インバータの出力電圧と前記単位インバータ制御手段の出力電圧の関連に基づき判定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項9】
前記出力電圧余裕分供給手段は、定格出力電圧に対して、さらに余分な単位インバータを直列に接続して備え、通常時には余分の単位インバータは零電圧を出力するか、もしくはバイパススイッチにてパイパスしておき、運転異常検出時において異常に該当する前記単位インバータを前記バイパススイッチによってバイパスして不足した出力電圧を、前記余分に備えた単位インバータの出力電圧で補うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項10】
前記出力電圧余裕分供給手段は、通常時には定格出力電圧に対して、各前記単位インバータにそれぞれ出力電圧余裕分供給手段を備え、運転異常検出時において異常に該当する前記単位インバータを前記バイパススイッチによってバイパスして不足した出力電圧を、他の単位インバータの出力電圧余裕分供給手段の出力電圧で補うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項11】
前記出力電圧余裕分供給手段は、全ての単位インバータ直列接続群に余分な単位インバータを備えたことを特徴とする請求項9に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項12】
前記出力電圧余裕分供給手段は、ある単位インバータ直列接続群中の単位インバータが運転異常検出時において異常に該当する前記単位インバータを前記バイパススイッチによってバイパスして低下する出力相電圧分を、他の単位インバータ直列接続群の出力相電圧をその不足分増すことによって、出力線間電圧は定格電圧を確保し、交流負荷の定格運転を確保する制御を行うことを特徴とする請求項9または請求項10に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項13】
前記出力電圧余裕分供給手段は、装置に複数個備わっている単位インバータ直列接続群中のいくつかにのみ余分な単位インバータを接続して備え、前記余分な単位インバータが存在する単位インバータ直列接続群で前記バイパススイッチによってバイパスを行う際は、前記余分な単位インバータで不足する相電圧を補償し、前記余分な単位インバータが存在しない単位インバータ直列接続群で前記バイパススイッチによってバイパスを行う際には、他の単位インバータ直列接続群の出力相電圧をその不足分増すことによって、故障前と同等の線間電圧を確保することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項14】
前記出力電圧余裕分供給手段の電圧余裕分は、ある単位インバータ直列接続群の単位インバータを前記バイパススイッチによってバイパスを行う際に、その単位インバータ直列接続群に故障時切換スイッチで余分な単位インバータを直列接続し、この余分な単位インバータの出力によって不足した出力を補うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項15】
さらに、複数の変圧器を備え、
前記出力電圧余裕分供給手段は、複数の前記単位インバータ直列接続群の出力にそれぞれ複数の前記変圧器の二次側巻線を直列接続し、複数の前記変圧器の一次側巻線に出力電圧を補う複数の単位インバータをそれぞれ接続した構成からなり、
いずれかの前記単位インバータ直列接続群中の単位インバータを前記バイパススイッチによってバイパスを行う際に、前記変圧器の一次側巻線に接続された前記複数の単位インバータの出力電圧で、不足する単位インバータの出力電圧を補うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項16】
前記回路保護手段は、前記整流器に供給される交流電力の供給線に直列に接続され、回路を遮断する機能を有する保護回路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項17】
前記回路保護手段は、前記整流器と前記平滑コンデンサとの間に直列に接続され、回路を遮断する機能を有する保護回路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項18】
前記回路保護手段は、前記平滑コンデンサと、前記半導体スイッチ素子のブリッジ回路からなる前記単位インバータとの間に直列に接続され、回路を遮断する機能を有する保護回路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項19】
前記回路保護手段は、前記単位インバータの出力に直列に接続され、回路を遮断する機能を有する保護回路であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項20】
前記回路保護手段は、自己消弧型半導体素子を使用したものである事を特徴とする請求項16乃至請求項19のいずれか一項に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項21】
前記回路保護手段は、規定値以上の過電流によって溶断するヒューズであることを特徴とする請求項16乃至請求項19のいずれか一項に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項22】
前記回路保護手段は、規定値以上の過電流によって遮断する遮断器であることを特徴とする請求項16乃至請求項19のいずれか一項に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項23】
前記回路保護手段は、前記単位インバータの前記半導体スイッチ素子を開放状態とすることで回路を遮断することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項24】
前記バイパススイッチは、半導体素子であって、前記単位インバータの出力間に二つ以上の半導体素子を用い、その特性を互いに逆にして、かつ並列に接続したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項25】
前記バイパススイッチに使用する半導体素子として、自己消弧型半導体素子を使用したことを特徴とする請求項24記載の直列多重インバータ装置。
【請求項26】
前記バイパススイッチとして、ダイオードをブリッジ接続し、該ブリッジ回路の直流出力に短絡用制御極付半導体素子を接続し、かつ該ブリッジ回路の直流入力を前記単位インバータの出力間に接続したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項27】
前記バイパススイッチとして、ダイオードをブリッジ接続し、該ブリッジ回路の直流出力に短絡用制御極付半導体素子を接続し、かつ該ブリッジ回路の直流入力を前記単位インバータの電源間に接続したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項28】
前記バイパススイッチは、前記整流器と前記単位インバータの前記半導体スイッチ素子の間に短絡用制御極付半導体素子を平滑コンデンサに並列に接続したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の直列多重インバータ装置。
【請求項29】
交流電力を直流電力に変換する整流器と、
前記整流器の出力である直流電力を交流電力に変換するものであって、複数の半導体スイッチ素子をブリッジ接続してなる単位インバータを複数個設け、該各単位インバータの入力側が平滑コンデンサを介して前記整流器の出力に並列に接続され、該各単位インバータの出力側を直列接続し、かつ交流負荷に接続する単位インバータ直列接続群と、
前記単位インバータを構成している半導体スイッチ素子に対して所定の順序で開閉制御指令を与える単位インバータ制御手段と、
前記単位インバータの運転異常状態を検出する運転異常検出手段と、
前記運転異常検出手段が前記単位インバータの異常を検出したとき、該当する単位インバータに対応する回路を開放することによって、前記単位インバータを保護する回路保護手段と、
前記単位インバータに並列に接続され、電気的に閉路したとき負荷電流を循環させる流路を形成するバイパススイッチと、
前記運転異常検出時、該当する単位インバータに対応する前記バイパススイッチに閉路指令を与えることにより、前記単位インバータの出力を短絡させるバイパススイッチ制御手段と、
前記単位インバータのバイパス時に不足する出力電圧分を補う機能を有し、前記単位インバータの出力に直列に具備された出力電圧余裕分供給手段と、を備え、
複数の前記単位インバータのいずれかに異常が発生した場合において、前記運転異常検出手段によって異常を検出し、前記運転異常検出手段は運転異常検出信号を前記バイパススイッチ制御手段に出力し、前記バイパススイッチ制御手段は前記バイパススイッチに閉路指令を出して、異常が発生した前記単位インバータの出力を短絡し、
また、前記単位インバータを保護する前記回路保護手段によって前記単位インバータを開放し、保護を行い、
また、前記運転異常検出手段は運転異常検出信号を前記出力電圧余裕分供給手段に出力して、前記単位インバータのバイパス時に不足する出力電圧分を補うことを特徴とする直列多重インバータ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26A】
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【図26B】
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【図26C】
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【図26D】
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【図26E】
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【公開番号】特開2012−10542(P2012−10542A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−146010(P2010−146010)
【出願日】平成22年6月28日(2010.6.28)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】