説明

直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム

【課題】直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムの小型化、熱交換効率の向上、メンテナンス性の向上を図ること。
【解決手段】本発明では、被処理物(2)を濃縮器(3)で濃縮するための濃縮機構(4)と、濃縮機構(4)で被処理物(2)を濃縮させる際に生じる蒸気(S1)を圧縮するとともにその圧縮蒸気(S2)を濃縮機構(4)に還流させるための圧縮機構(6)とを有し、前記圧縮蒸気(S2)で被処理物(2)を濃縮する直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム(1)において、濃縮機構(4)は、ケーシング(10)の下部に被処理物(2)を貯留する貯留槽(11)を設け、ケーシング(10)の中途部に中空状の水平回転軸(13)に中空状の垂直円板(14)を連通させた濃縮器(3)を回転可能に設け、ケーシング(10)の上部に貯留槽(11)に貯留した被処理物(2)を濃縮器(3)の垂直円板(14)の表面に向けて吐出する吐出ノズル(19,19)を設けることにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムは、被処理物を濃縮器で濃縮するための濃縮機構と、濃縮機構で被処理物を濃縮させる際に生じる蒸気を圧縮するとともにその圧縮蒸気を濃縮機構に還流させるための圧縮機構とを有する構成となっている。
【0003】
そして、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムは、濃縮機構で被処理物を濃縮させた際に生じた蒸気を圧縮機構で圧縮し、その圧縮蒸気を用いて濃縮機構で被処理物を濃縮するようにしている。
【0004】
この従来の直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムにおける濃縮機構では、被処理物を圧縮蒸気で加熱するための加熱缶と、被処理物を加熱缶で加熱することで生じた蒸気を分離するための蒸発缶とを有している。加熱缶は、内部に上下に伸延する複数本の加熱パイプを収容して、加熱パイプの内部を通過させる被処理物を加熱パイプの外部を通過させる蒸気で濃縮するように構成している。また、蒸発缶は、加熱パイプの先端部に連通して、加熱パイプの内部を通過した被処理物と加熱パイプの内部で加熱により生じた蒸気とに分離するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−111320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムでは、濃縮機構が被処理物を加熱する加熱缶と加熱によって生じた蒸気を分離する蒸発缶とに分離して構成していたために、装置が大型化してしまい、装置の設置スペースが制約されてしまうおそれがあった。
【0007】
また、上記従来の直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムでは、加熱パイプの内部を被処理物が加熱されながら通過する構成となっていたために、加熱パイプの内側表面に乾燥した被処理物が付着してしまい、熱交換の効率が低減してしまうおそれがあるとともに、メンテナンス作業に多大な労力や時間を要するおそれがあった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、被処理物を濃縮器で濃縮するための濃縮機構と、濃縮機構で被処理物を濃縮させる際に生じる蒸気を圧縮するとともにその圧縮蒸気を濃縮機構に還流させるための圧縮機構とを有し、前記圧縮蒸気で被処理物を濃縮する直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムにおいて、濃縮機構は、ケーシングの下部に被処理物を貯留する貯留槽を設け、ケーシングの中途部に中空状の水平回転軸に中空状の垂直円板を連通させた濃縮器を回転可能に設け、ケーシングの上部に貯留槽に貯留した被処理物を濃縮器の垂直円板の表面に向けて吐出する吐出ノズルを設けることにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、前記垂直円板の表面に付着した被処理物を掻き取るためのスクレーパーを設けることにした。
【発明の効果】
【0010】
そして、本発明では、以下に記載する効果を奏する。
【0011】
すなわち、本発明では、被処理物を濃縮器で濃縮するための濃縮機構と、濃縮機構で被処理物を濃縮させる際に生じる蒸気を圧縮するとともにその圧縮蒸気を濃縮機構に還流させるための圧縮機構とを有し、前記圧縮蒸気で被処理物を濃縮する直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムにおいて、濃縮機構は、ケーシングの下部に被処理物を貯留する貯留槽を設け、ケーシングの中途部に中空状の水平回転軸に中空状の垂直円板を連通させた濃縮器を回転可能に設け、ケーシングの上部に貯留槽に貯留した被処理物を濃縮器の垂直円板の表面に向けて吐出する吐出ノズルを設けることにしているために、濃縮機構のケーシングの内部で被処理物の濃縮と蒸気の分離とを行うことができるので従来の加熱缶と蒸発缶とを一体的に形成することができ、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムの小型化を図ることができる。
【0012】
特に、垂直円板の表面に付着した被処理物を掻き取るためのスクレーパーを設けることにした場合には、垂直円板の表面に被処理物が付着してしまうのを防止することができるので、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムにおける熱交換の効率の低減を防止し、また、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムのメンテナンスに要する労力や時間を低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムを示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムの具体的な構成について図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1に示すように、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1は、被処理物2を濃縮器3で濃縮するための濃縮機構4と、濃縮機構4で被処理物2を濃縮させる際に生じる蒸気S1を圧縮機5で圧縮するとともにその圧縮蒸気S2を濃縮機構4に還流させるための圧縮機構6と、圧縮蒸気S2を外部へ排出するための排出機構7と、被処理物2を濃縮機構4に供給するための供給機構8と、濃縮機構4で濃縮した被処理物2'を回収するための回収機構9とで構成している。
【0016】
これら直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1を構成する濃縮機構4、圧縮機構6、排出機構7、供給機構8、回収機構9の構成について以下に順に説明する。
【0017】
まず、濃縮機構4の構成について説明すると、濃縮機構4は、中空状のケーシング10の下部(底部)に被処理物2を貯留しておくための貯留槽11と濃縮した被処理物2'を貯留するための回収槽12とをそれぞれ区画して形成している。
【0018】
また、濃縮機構4は、ケーシング10の中途部に濃縮器3を回転自在に取付けている。
【0019】
この濃縮器3は、水平方向に向けて伸延する中空円筒状の水平回転軸13の中央部に垂直方向に向けて伸延する中空円板状の垂直円板14を中空部同士を連通させた状態で取付けている。
【0020】
濃縮機構4は、ケーシング10に濃縮器3の水平回転軸13の両端部をスイベルジョイント15,15を介して回転可能に軸支するとともに、水平回転軸13に駆動モーター16を連動機構17を介して接続している。
【0021】
また、濃縮機構4は、ケーシング10の回収槽12の直上方位置にスクレーパー18を垂直円板14の表面に密着させた状態で取付けている。
【0022】
さらに、濃縮機構4は、ケーシング10の上部に被処理物2を垂直円板14の表面に向けて吐出するための一対の吐出ノズル19,19を取付けている。
【0023】
そして、濃縮機構4は、駆動モーター16を駆動することで濃縮器3を回転させ、吐出ノズル19,19から吐出した被処理物2を濃縮器3の垂直円板14の表面で加熱して濃縮し、濃縮した被処理物2'をスクレーパー18で垂直円板14の表面から掻き取りながら回収するようにしている。
【0024】
次に、圧縮機構6の構成について説明すると、圧縮機構6は、濃縮機構4のケーシング10の上部(天井部)に形成した蒸気出口20に圧縮機5を連結管21を介して接続するとともに、圧縮機5に濃縮器3を連結管22及びスイベルジョイント15を介して接続している。
【0025】
また、圧縮機構6は、予備蒸気S0を供給するための蒸気供給源23を連結管22に開閉バルブ24を介して接続している。
【0026】
そして、圧縮機構6は、蒸気供給源23から供給される予備蒸気S0を濃縮機構4の濃縮器3に供給するとともに、濃縮機構4で被処理物2を濃縮する際に生じた蒸気S1を圧縮機5で圧縮し、その圧縮蒸気S2を濃縮機構4の濃縮器3に供給して、濃縮器3を加熱するようにしている。
【0027】
次に、排出機構7の構成について説明すると、排出機構7は、濃縮機構4の濃縮器3に気液分離器25を連結管26及びスイベルジョイント15を介して接続し、気液分離器25で分離した気体と液体とをそれぞれ排出ポンプ27,28で外部へ排出するようにしている。
【0028】
そして、排出機構7は、濃縮機構4の濃縮器3を加熱するために使用した予備蒸気S0又は圧縮蒸気S2を気液分離して外部へ排出するようにしている。
【0029】
次に、供給機構8の構成について説明すると、供給機構8は、被処理物2を供給するための被処理物供給源29に濃縮機構4の貯留槽11に形成した供給口30を供給管31と開閉バルブ32を介して接続している。
【0030】
また、供給機構8は、濃縮機構4の貯留槽11に形成した循環出口33と吐出ノズル19,19とを往路管34と循環ポンプ35を介して接続するとともに、吐出ノズル19,19と濃縮機構4の貯留槽11に形成した循環入口36とを復路管37を介して接続している。
【0031】
そして、供給機構8は、被処理物供給源29から供給される被処理物2を濃縮機構4の貯留槽11に貯留しておくとともに、貯留槽11に貯留した被処理物2を循環ポンプ35で往路管34及び復路管37を循環させ、一部を吐出ノズル19,19から垂直円板14の表面に向けて吐出するようにしている。
【0032】
次に、回収機構9の構成について説明すると、回収機構9は、濃縮機構4の回収槽12に形成した回収口38に回収ポンプ39を連結管40を介して接続している。
【0033】
そして、回収機構9は、回収ポンプ39を駆動することで、回収槽12に回収した濃縮後の被処理物2'を回収するようにしている。
【0034】
直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1は、以上に説明したように構成しており、以下に説明するようにして被処理物2を濃縮する。
【0035】
まず、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1は、開閉バルブ24を開放状態として蒸気供給源23から供給される予備蒸気S0を濃縮器3の内部に供給して垂直円板14を加熱するとともに、駆動モーター16を駆動して垂直円板14を回転させる。
【0036】
また、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1は、開閉バルブ32を開放状態として被処理物供給源29から供給される被処理物2を貯留槽11に貯留する。
【0037】
その後、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1は、循環ポンプ35を駆動して貯留槽11に貯留した被処理物2を吐出ノズル19,19から垂直円板14の表面に向けて吐出する。
【0038】
これにより、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1では、被処理物2が予備蒸気S0で加熱された垂直円板14の表面に接触し、熱伝導によって加熱され、被処理物2に含有される水分が蒸気S1となって蒸気出口20から排出される。
【0039】
そして、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1では、蒸気出口20から排出された蒸気S1が圧縮機5で圧縮されることで加熱され、その圧縮蒸気S2が濃縮器3の内部に供給され、これにより、濃縮器3がさらに加熱される。
【0040】
そのため、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1では、加熱された濃縮器3の垂直円板14の表面で被処理物2を良好に濃縮することができ、濃縮した被処理物2'をスクレーパー18で掻き取るようにして回収槽12に回収することができる。
【0041】
以上に説明したように、上記直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1は、被処理物2を濃縮器3で濃縮するための濃縮機構4と、濃縮機構4で被処理物2を濃縮させる際に生じる蒸気S1を圧縮するとともにその圧縮蒸気S2を濃縮機構4に還流させるための圧縮機構6とを有し、圧縮蒸気S2で被処理物2を濃縮するように構成している。
【0042】
しかも、上記直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1の濃縮機構4は、ケーシング10の下部に被処理物2を貯留する貯留槽11を設け、ケーシング10の中途部に中空状の水平回転軸13に中空状の垂直円板14を連通させた濃縮器3を回転可能に設け、ケーシング10の上部に貯留槽11に貯留した被処理物2を濃縮器3の垂直円板14の表面に向けて吐出する吐出ノズル19,19を設けた構成となっている。
【0043】
そのため、上記構成の直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1では、濃縮機構4のケーシング10の内部で被処理物2の濃縮と蒸気S1の分離とを行うことができるので、従来の加熱缶と蒸発缶とを一体的に形成することができ、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1の小型化を図ることができる。
【0044】
また、上記直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1では、垂直円板14の表面に付着した被処理物2を掻き取るためのスクレーパー18を設けた構成となっている。
【0045】
そのため、上記構成の直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1では、垂直円板14の表面に被処理物2が付着してしまうのを防止することができるので、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1における熱交換の効率の低減を防止し、また、直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム1のメンテナンスに要する労力や時間を低減させることができる。
【符号の説明】
【0046】
1 直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム 2,2' 被処理物
3 濃縮器 4 濃縮機構
5 圧縮機 6 圧縮機構
7 排出機構 8 供給機構
9 回収機構 10 ケーシング
11 貯留槽 12 回収槽
13 水平回転軸 14 垂直円板
15 スイベルジョイント 16 駆動モーター
17 連動機構 18 スクレーパー
19 吐出ノズル 20 蒸気出口
21 連結管 22 連結管
23 蒸気供給源 24 開閉バルブ
25 気液分離器 26 連結管
27,28 排出ポンプ 29 被処理物供給源
30 供給口 31 供給管
32 開閉バルブ 33 循環出口
34 往路管 35 循環ポンプ
36 循環入口 37 復路管
38 回収口 39 回収ポンプ
40 連結管 S0 予備蒸気
S1 蒸気 S2 圧縮蒸気

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理物を濃縮器で濃縮するための濃縮機構と、濃縮機構で被処理物を濃縮させる際に生じる蒸気を圧縮するとともにその圧縮蒸気を濃縮機構に還流させるための圧縮機構とを有し、前記圧縮蒸気で被処理物を濃縮する直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システムにおいて、
濃縮機構は、ケーシングの下部に被処理物を貯留する貯留槽を設け、ケーシングの中途部に中空状の水平回転軸に中空状の垂直円板を連通させた濃縮器を回転可能に設け、ケーシングの上部に貯留槽に貯留した被処理物を濃縮器の垂直円板の表面に向けて吐出する吐出ノズルを設けたことを特徴とする直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム。
【請求項2】
前記垂直円板の表面に付着した被処理物を掻き取るためのスクレーパーを設けたことを特徴とする請求項1に記載の直接加圧型ヒートポンプ式濃縮システム。

【図1】
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【公開番号】特開2011−224496(P2011−224496A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−98135(P2010−98135)
【出願日】平成22年4月21日(2010.4.21)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【出願人】(596091978)株式会社西村鐵工所 (9)
【Fターム(参考)】