説明

直播機

【課題】車速や圃場の硬軟が変化しても整地ロータによる圃場の整地性能を維持し、同時に粉粒体吐出機から吐出される種子などを適切な深さに播くことができる直播機を提供すること。
【解決手段】走行車両に圃場内に種子を播くための直播装置142と該直播装置142の前方に直播前の圃場を整地するために回転する整地ロータ27a,27bと、後輪伝動軸回転数205の検出する車速に応じて整地ロータ27a,27bの回転速度を変更する整地ロータ変速装置72を備えた直播機であり、整地ロータ27a,27bの回転速度を車速と連動させることで例えば低車速の時に自然に多量の覆土がなされないように整地ロータ27a,27bの回転素幾度を抑えるため、圃場への播種の深さが深くならない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、施肥装置、播種装置あるいは薬剤散布装置等の粉粒体吐出機を備えた対地作業装置付きの直播機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、走行車体の座席より後側に複数の粉粒体繰出部を左右に並べて設けると共に、粉粒体繰出部の上方に粉粒体を貯留するタンクを設け、粉粒体繰出部から送り出される粉粒体を送風器からの送風により送り出して圃場に連続的に吐出する粉粒体吐出機を備えた直播機が知られている。また、該直播機はフロート付きの直播装置を備え、直播装置による播種の直前に圃場を均平化するための整地ロータを備えた構成が知られている。
【特許文献1】特開2001−211704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記特許文献1記載の直播機の整地ロータの回転速度は車速と関係ないか、車速と完全に比例したものであり、この整地ロータが圃場の硬軟に影響を与えることを全く考慮していない。従って整地ロータで整地した直後に播く場合に、整地ロータの回転速度によって圃場の硬軟が変わり、覆土による粉粒体の深さが変わってしまう。
【0004】
そこで本発明の課題は、車速や圃場の硬軟が変化しても整地ロータによる圃場の整地性能を維持し、同時に粉粒体吐出機から吐出される種子などを適切な深さに播くことができる直播機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、次の解決手段で解決できる。
すなわち、請求項1記載の発明は、圃場内に粉粒体を播くための直播装置(142)と該直播装置(142)の前方に直播前の圃場を整地するために回転する整地ロータ(27a,27b)を走行車両に備えた直播機において、走行車両の車速に応じて車速の増減量に比して整地ロータ(27a,27b)の回転速度の増減量が大きくなるように整地ロータ(27a,27b)の回転速度を変更する整地ロータ変速装置(72)を設けた直播機である。
なお、本発明の直播装置(142)は種子を播く装置に限らず、施肥装置、播種装置あるいは薬剤散布装置等をいうこととする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、整地ロータ(27a,27b)の回転速度を車速と連動させ、例えば車速が遅いとき、覆土機能のある覆土板(153)の作用により自然に多量の覆土がなされないように整地ロータ(27a,27b)の回転速度を抑えて土壌が軟らかくなりすぎないようにするため、圃場への粉粒体の播種深さが深くならないようにすることができる。こうして覆土板(153)による覆土量を適正にする効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
この発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は、施肥装置付きの乗用型の直播機の左側面図を示すものであり、この乗用型の直播機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して直播装置142が昇降可能に装着され、走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分が設けられている。
【0008】
走行車体2は、駆動輪である各左右一対の前輪10,10及び後輪11,11を備えた四輪駆動車両であって、機体の前部にミッションケース12が配置され、そのミッションケース12の左右側方に前輪ファイナルケース13,13が設けられ、該前輪ファイナルケース13の変向可能な前輪支持部から外向きに突出する前輪車軸に前輪10,10が取り付けられている。また、ミッションケース12の背面部にメインフレーム15の前端部が固着されており、そのメインフレーム15の後端左右中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸18a(図3参照)を支点にして後輪ギヤケース18,18がローリング自在に支持され、その後輪ギヤケース18,18から外向きに突出する後輪車軸に後輪11,11が取り付けられている。
【0009】
原動機となるエンジン20はメインフレーム15の上に搭載されており、該エンジン20の回転動力が、第一ベルト伝動装置21及び第二ベルト伝動装置23を介してミッションケース12に伝達される。ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ケース12内のトランスミッションにて変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。そして、走行動力は、一部が前輪ファイナルケース13,13に伝達されて前輪10,10を駆動すると共に、残りが後輪ギヤケース18,18に伝達されて後輪11,11を駆動する。また、外部取出動力は、走行車体2の後部に設けたクラッチケース25に伝達され、施肥伝動機構28によって施肥装置5へ伝動される。
【0010】
エンジン20の上部はエンジンカバー30で覆われており、その上に座席31が設置されている。座席31の前方には各種操作機構を内蔵するボンネット32があり、その上方に前輪10,10を操向操作するハンドル34が設けられている。エンジンカバー30及びボンネット32の下端左右両側は水平状のフロアステップ35になっている。フロアステップ35の後部は、後輪フェンダを兼ねるリヤステップ36となっている。
【0011】
昇降リンク装置3は平行リンク構成であって、1本の上リンク40と左右一対の下リンク41,41を備えている。これらリンク40,41,41は、その基部側がメインフレーム15の後端部に立設した背面視門形のリンクベースフレーム42に回動自在に取り付けられ、その先端側に縦リンク43が連結されている。そして、メインフレーム15に固着した支持部材と上リンク40に一体形成したスイングアーム45の先端部との間に昇降油圧シリンダ46が設けられており、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより、上リンク40が上下に回動し、直播装置142がほぼ一定姿勢のまま昇降する。
【0012】
直播装置142の下部にはセンターフロート55及びサイドフロート56,56が設けられている。これらフロート55,56を圃場の泥面に接地させた状態で機体を進行させると、フロート55,56が泥面を整地しつつ滑走し、その整地跡に直播装置142,…により種子が播かれる。各フロート55,56,56は圃場表土面の凹凸に応じて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられており、直播作業時にはセンターフロート55の前部の上下動が上下動検出機構57により検出され、その検出結果に応じ前記昇降油圧シリンダ46を制御する油圧バルブを切り替えて直播装置142を昇降させることにより、種子の播種深さを常に一定に維持する。
【0013】
施肥装置5は、肥料貯留タンク(粉粒体貯留タンク)60に貯留されている肥料(粉粒体)を肥料繰出部(粉粒体繰出部)61,…によって一定量づつ繰り出し、その肥料を施肥ホース(粉粒体移送ホース)62,…でフロート55,56,56の左右両側に取り付けた施肥ガイド63(図5参照),…まで導き、施肥ガイド63,…の前側に設けた播種用作溝器64,…によって播種条の側部近傍に形成される施肥溝内に吐出するようになっている。モータ(図示せず)で駆動のブロア(図示せず)で発生させた圧力風を左右方向に長いエアチャンバ69を経由して施肥ホース62,…内に吹き込み、施肥ホース62,…内の肥料を植付部側の肥料吐出口へ強制的に移送するようになっている。
【0014】
図2に、図1の直播機の整地ロータ支持構造の要部背面図を示し、図3に整地ロータ27とフロート55,56部分の要部平面図を示す。
整地ロータ支持構造には、左右方向の支持杆と上下方向に伸びる両側辺部材からなる矩形の支持枠体65(図1)の両側辺部材に上端を回動自在に支持された梁部材66と該梁部材66の両端に固着した支持アーム67と該支持アーム67に回動自在に取り付けられたロータ支持フレーム68が設けられている。該ロータ支持フレーム68の下端には整地ロータ27aの駆動軸70aが取り付けられている。
【0015】
図3に示すように、フロート55,56との配置位置の関係でセンタフロート55の前方にあるロータ27bはサイドフロート56の前方にあるロータ27aより前方に配置されている。そのためロータ27aの駆動軸70aへの動力は後輪11のギアケース18内の整地装置変速装置72(図1)等を介して伝達され、ロータ27bの駆動軸70bは両方のロータ27a,27aの駆動軸70a,70aの車体内側の端部からそれぞれ動力が伝達される左右一対のチェーンケース73,73内の一対のチェーン(図示せず)から動力伝達される。
【0016】
なお、整地装置変速装置72内には変速ベルトコンベア操作モータ195があり、車速に応じて整地ロータ27a,27aの回転速度を変更することができる。これについては図6を用いて後述する。
【0017】
ロータ27bの駆動軸70bは左右一対のチェーンケース73,73を介して支持されているだけなので、チェーンケース73,73の補強のために左右一対のチェーンケース73,73を橋渡しする補強部材74が設けられている。
また、ロータ27bは梁部材66に上端部が支持された一対のリンク部材76,77によりスプリング78を介して吊り下げられている。
【0018】
該一対のリンク部材76,77は梁部材66に一端部が固着支持された第一リンク部材76と該第一リンク76の他端部に一端が回動自在に連結した第二リンク部材77からなり、該第二リンク部材77の他端部と補強部材74に回動自在に支持された取付片74aとの間に前記スプリング78が接続している。
【0019】
また、ロータ上下位置調節レバー81の下端部には折曲片82が固着されており、該折曲片82は支持枠体65に回動自在に支持されている。そして前記レバー81が車両の左右方向に回動操作されると、支持枠体65の両側辺部材に回動自在に支持された梁部材66に固着支持された突出部66aの近くを折曲片82が上下に回動する。折曲片82は前記突出部66aの下方を係止しているので、該突出部66aがレバー81の機体右方向(図2の矢印S方向)の回動で、上向きに梁部材66を中心として回動する。該突出部66aの前記回動により第一リンク部材76の梁部材66との連結部と反対側の端部も梁部材66を中心として上向きに回動する。この第一リンク部材76の上方への回動により第二リンク部材77とスプリング78を介してロータ27bを上方に上げることができる。ロータ27bを上方に移動させると、駆動軸70bと駆動軸70aを介してロータ27aも同時に上方に移動する。
なお、ロータ上下位置調節レバー81は車体2のほぼ中央部に設けているので、ロータ27a,27bの上下動を行う場合に左右のバランスを取りやすい。
【0020】
本実施例ではロータ上下位置調節レバー81の標準位置で圃場面より40mmの高さにあるロータ27a,27bを図2の矢印S方向への回動で標準位置より最大15mm高くでき、図2の矢印S方向の反対方向への回動で標準位置より最大15mm低くできるように設定している。
【0021】
本実施例の直播機は乗用4輪駆動走行形態の直播機であり、直播装置142は、図1に示すように通常は作業機として直播装置142が設置されているトラクタの後部に装着される。直播装置142はメインフレーム15の後側に、昇降可能な平行リンク40,41を介して連結される。平行リンク40,41の後端の縦リンク43に直播装置142の中央部がロ−リング軸(図示せず)周りに回動自在に連結される。
【0022】
直播装置142は、上部の種子ホッパ−143から種子を繰り出す繰出ロ−ル144、種子を繰出案内する繰出筒146、更に、この繰出筒146から繰出案内される種子を下方へ放出する種子打込ロ−タ147及び放出筒148等からなる。そして、この直播装置142の下方には、播種フレ−ム150の下方に吊持され土壌面に接地して滑走するフロ−ト55,56を配置している。各フロ−ト55,56の左右両側部に播種筒149が設けられて、上側部に各放出筒148及び繰出筒146下端部をのぞませて、下方へ放出される種子と肥料をフロ−ト55,56で均平にされる土壌面に案内する。
なおフロート55,56の両側には一対の播種用作溝器64と該播種用作溝器64でできた圃場の溝を埋める一対の覆土板153が設けられている。
【0023】
図4には直播装置142の繰出部の円筒状の繰出ロ−ル144部分を示す。繰出ロ−ル144の中心部の繰出ロ−ル軸144bは、三等分角位置に繰出穴144aが形成され、各繰出穴144aの底部には跳出装置として跳出ア−ム154が繰出軸154aの周りに回動自在に設けられ、スプリング155によって繰出穴144a側へ弾発される。また、繰出ロ−ル軸144bの周りにはカムア−ム156が嵌合支持されて、このア−ム156の先端のカムロ−ラ156aに、この跳出ア−ム154の回転域を接当させて、繰出穴144aの底部から外周部へ突出作動させることができる。この跳出ア−ム154の基部ストッパ−154bを繰出ロ−ル144の内周面に接当させる。またカムロ−ラ156aの位置は、繰出ロ−ル軸144bの下位にあって、繰出穴144aから跳ね出される種子の跳出方向Aが、繰出筒146の案内壁面146aに対して下向きの鋭角Bになるように設定する。
【0024】
繰出ロ−ル144の外周回転面は掻き均すスクレ−パブラシ158で掻き均される。前記種子打込ロ−タ147は、繰出筒146の下部に設けられていて、回転周面は鋸歯状の突子147aが形成されて、各突子147a間に数粒の種子を嵌合させて回転により下方の放出筒148へ放出することができる。この種子打込ロ−タ147は、種子打込ロ−タ軸147bの周りに回転して突子147aを繰出筒146の下端部を回転圏内としている。突子147aの回転に対して接線方向の状態に繰出筒146が形成される。
【0025】
繰出ロ−ル144が回転するとホッパ−143内の種子がスプリング155で退没する繰出穴144aに入り込み繰出ロール144の回転で、スクレ−パブラシ158で掻き均されて、所定粒数の種子が下側の繰出筒146側へ繰出される。この繰出穴144aが下側象限に位置すると、穴底部に位置する跳出ア−ム154が跳出(カム)ロ−ラ156aに作用されてスプリング155に抗して外方へ押されて、この繰出穴144a内の種子を下方の案内壁面146aへ向けて矢印A方向に放出させる。このように繰出された種子は、種子打込ロ−タ147の突子147a間に係合されて、放出筒148へ変速放出される。このとき間歇的に繰出される種子は散乱することなく少ない突子147a間に係合されて放出され土中に打ち込まれる。このため播種筒149に案内されて土壌面に放出される所定粒数の種子は直播状態として播種されることになる。
なお、繰出ロ−ル144の回転は制御装置170により制御される種子繰出用モータ189(図5、図8)で作動制御される。
【0026】
また、図5にはフロート55,56部分の平面略図を示し、フロート55,56に設けられた覆土板153の作動用部材の機構図を示す。
制御装置170により作動制御される覆土板作動用モータ191(図5,図8)の入、切でワイヤ161を介して一対のアーム162,162を揺動させてアーム先端の覆土板153を矢印B方向に揺動させる。次に説明する覆土板153の揺動で播種用作溝器64で形成された溝に播種した後を覆土することができる。
【0027】
すなわち、覆土板作動用モータ191を切から入に動かすとワイヤ161を経由して一対のアーム162,162の基部が牽引され、各アーム162の先端に設けたトルクスプリング(図示せず)を介して所定の角度で連結している覆土板153が揺動する。このとき圃場と接触状態にあるサイドフロート56に取り付けられる硬軟センサ151(図5)で圃場の硬軟度をチェックする。硬軟センサ151による圃場の硬軟度に合わせて覆土板153の傾斜角度を変えることができるように硬軟センサ151の検出結果に基づき覆土板作動用モータ191を作動制御して覆土板153に連結したワイヤ161を押し引きする。圃場が硬いほど強くワイヤ161を牽引して覆土板153の傾斜度合いを高くする。
【0028】
また覆土板153の傾斜度合いをワイヤ161の牽引度で変えることができるので、この機構を利用して直播装置142からの種子の植え始めと植え終わりに覆土板153の傾斜度合いを強めて、圃場に印を付けて種子の植え付け時の参考にすることもできる。
【0029】
また、覆土板153を操作するまでもなく、種の植え始めと植え終わりとなる圃場の位置に目印となる物体(色紙、有機物からなる水溶性の物体など)を落下させることでも良い。特に畦際で種を植えるときに残りの枕地幅がわかるから便利である。目印となる物体を分解性の有機物から作製すると、公害の原因にもならない。
【0030】
また、圃場の硬軟度を硬軟センサ151で検出し、該センサ151の検出結果と直播装置142の作動を連動させ、圃場が硬いと種子打込用モータ194(図5,図8)による種子打込ロータ147への出力を速くし、圃場が柔らかいと種子打込用モータ194による種子打込ロータ147への出力を遅くする。
こうして、播種深さを圃場の硬軟に関係無く全体に均一化することができる。
【0031】
また、種子打込ロータ147の上流側の繰出筒146にはエアー流入口(図示せず)を設けておき、ここからエアーを導入し、種子打込ロータ147に向けて流し込むと種(籾)が搬送路で詰まるおそれが無くなる。
さらに種子ホッパー143に水タンク(図示せず)を付設させておくと、播種用作溝器64についた泥を水で洗い流すことができる。
【0032】
本実施例の特徴は、上記整地ロータ27a,27bの回転速度を車速と連動させる構成にしたことである。後輪伝動軸回転数センサ205(図8)で測定される車速に応じてロータ27a,27bの回転数を変更する。すなわち、図6に示すように所定の車速(例えば0.5m/s)まではロータ27a,27bの周速を車速と略同一にする)。次いで車速が速くなると共にロータ27a,27bの回転時の周速を更に増加させる。
なお、ロータ27a,27bの回転数の調整は後輪ギアケース18内に設けた整地ロータ変速装置72の変速ベルトコンベア操作モータ195で行う。
【0033】
整地ロータ27a,27bの回転速度を車速と連動させ、例えば車速が遅いとき、覆土機能のある覆土板153の作用により自然に多量の覆土がなされないように整地ロータ27a,27bの回転速度を抑えて土壌が軟らかくなりすぎないようにするため、圃場への粉粒体の播種深さが深くならないようにすることができる。こうして覆土板153による覆土量を適正にする効果がある。
【0034】
また、整地ロータ27a,27bによる圃場面の耕深の深さと播種の深さとが同一となるように直播装置142を機体に取り付け、フロート55,56底面の高さに対する播種用作溝器64の高さとロータ27a,27b下端の高さとを同一にする。
上記構成により、ロータ27a,27bが通って軟らかくなった圃場の表層とその下の固いままの層の境界領域を播種深さと同じにすることで、播種深さが安定する。このように硬い層を作る(残す)事で種籾がそれ以上に深く播かれるのを防止することができる。
【0035】
また前記ロータ27a,27bに替えて、図7の要部背面図(図7(a))と側面図(図7(b))に示すように、板体75をロータ設置部に配置しても良い。
板体75は排水機能を有する板とすることが望ましい。板体(排水板)75は、圃場表面に溜まった水を圃場の周辺部にある排水口まで押すことができるので圃場からの排水の補助手段となる。
【0036】
また、板体75は車両の横幅一杯の幅を有する物を用いると排水性能が優れたものとなるが、圃場に苗が有る状態で板体75を使用する場合には苗の植付条分の幅には板体75を配置しないようにすることが望ましい。
【0037】
また、上記構成からなる直播機では、本実施例の制御装置170は旋回内側の後輪11の回転数の検出値(後輪伝動軸回転数センサ205)に基づいて、旋回時の直播などの諸作動を自動的に行わせる旋回連動制御ができる。特に、旋回内側の後輪11が所定角度以上操舵されているときに、前記旋回連動制御ができる。
制御装置170の出入力関係を示す制御ブロック図を図8に示す。
【0038】
この制御の考え方を図9と表1に示す。
【表1】

【0039】
すなわち、ハンドル34を切り、旋回内側の後輪11のサイドクラッチ(図示せず)が切れた状態で、左右の後輪伝動軸回転数をセンサ205で検出し、旋回時の内側の後輪11の伝動軸回転数が設定値N1を超えると直播装置142を下降させる。その後、後輪11の伝動軸回転数が設定値N2と直播装置142の作動が「切り」状態に入って(=直播装置142が上げ状態に移って)からハンドル34の切り操作開始までの後輪11の伝動軸の回転数nの合計値以上になると播種「入」にする機構である。
【0040】
上記旋回連動制御のフローを図10に示す。
まず、左右の後輪11、11の伝動軸の回転数を伝動軸回転数センサ205で検出し、また基準値N1(旋回開始から機体90°旋回までの内側ドライブシャフト(伝動軸)回転信号設定値)、N2(機体90°旋回から播種クラッチ「入り」までのドライブシャフト回転信号設定値)、θ1((直進操作時のハンドル切り設定角度の)下限値)、θ2((直進操作時のハンドル切り設定角度の)上限値)をセットする。
【0041】
次いで、圃場の硬軟や水深、耕盤深さ等の圃場条件の相違に対応するために、前記回転数N1、N2及びハンドル切り角度θ1、θ2の各設定値を調節する設定ダイヤル206a〜208b(図8)により、補正値n0を設定する。
【0042】
直播装置142が種子の植え付け状態にあるか無いかをフィンガーレバー171(図8)の操作に伴う制御装置170の状態で検出して、播種「入」から播種「切」になったとき、直播装置142の作動が「入り」状態に入ってから直播装置142の作動が「切り」状態になるまでの後輪11の伝動軸の回転数nをセンサ205で検出して、その値(n)を記憶しておく。次いで、ハンドル34の切り角度(操舵角度)θをハンドル34のシャフトに設けたハンドル切れ角センサ(ポテンショメータ)193(図8)で検出して直進時(θ1<θ<θ2)以外の時には左右のいずれの方向に旋回中であるかを検出する。
【0043】
左旋回中であると左後輪11の伝動軸の回転数を検出して、回転数n1がn1≧N1+n0になると、旋回開始から機体が90度以上旋回したことになるので直播装置142を下げる。この直播装置142の下降で枕地が均平化される。
引き続き、左後輪11の伝動軸の回転数をセンサ205で検出して、回転数n2がn2≧N2+n+n0になると、直播装置142を作動させて直播を開始させる。
右旋回の場合にも左旋回時と全く同様の制御が行われる。
【0044】
なお、前記旋回制御時には直播装置142の「下げ」から直播装置142の「入り」までの間に直播装置142の油圧シリンダー46の油圧感度を鈍感(上昇側に切り替わらない)状態にすることでセンターフロート55などを前上がり状態にすることが望ましい。これはセンターフロートセンサー169の制御目標をセンターフロート55が前上がり状態になるように設定することで行え、センターフロート55を前上がり状態にすることで旋回跡を均平にすることができ、枕地処理が容易に精度よく行える。
【0045】
このようにサイドクラッチ(図示せず)が切れている後輪11の伝動軸(ドライブシャフト)の回転数を検出するため、動力の伝わっている後輪11の回転数検出に比べてよりスリップなどの影響を受け難い特徴がある。また、後輪11より回転の速いドライブシャフトの回転数を検出するため、容易にその測定精度をあげることができる。その結果、各植え付け条毎の直播開始がほぼ一定(枕地幅(D)が一定)となる効果がある。
【0046】
また、上記図10に示す一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を上記直播のスタート位置の設定を行うボタンとして兼用してもよい。
このように、畦際から発進して播種のスタート位置の設定を行うボタンと前記一連の旋回制御の諸動作を行う旋回制御のスタートボタン(スイッチ)184を兼用することによりボタン操作の忘れを防止できる。
【0047】
また、旋回制御機能を備えた乗用型田植機の作業機連結部に取り付ける苗植付装置に替えて上記直播装置142を連結した場合には、作業機連結部にある作業機着脱ヒッチ145に苗植付装置が取り付けられたのか直播装置142が取り付けられたのか判別するスイッチを設けておく。そして、作業機着脱ヒッチ145に直播装置142が取り付けられたことが検出されると、該直播装置142の旋回制御時のモードで制御が行われる。
【0048】
すなわち、図11(a)、図11(b)に示すように作業機着脱ヒッチ145に直播装置142が取り付けられると、旋回(図11(a))が終了すると図11(c)の斜線領域で示す無植付区間ができないように(図11(b))自動で種の植え始め位置を早めに実行する(直播位置を苗植付位置より早めに実行する。)。
こうして、直播装置142が用いられる場合には車両が動き始めてから播種を始めるまでタイムラグが生じても、旋回時には無播種区間ができるないようにすることができる。
【0049】
また、旋回制御機能を備えた乗用型田植機の作業機連結部に取り付ける苗植付装置に替えて上記直播装置142を連結した場合には、図12に示すように制御装置170を使って種子繰出用モータ189の作動調整によりオート種子植付位置(直播位置)を植付位置1条分遅くして、額縁落水を行うスペースを確保する。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明は田植機をはじめとして各種の施肥用、直播用又は薬剤散布用の粉粒体の吐出機を備えた作業機として利用可能性が高い。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施例の直播機の側面図である。
【図2】図1の直播機の整地ロータの支持構造の要部背面図である。
【図3】図1の直播機の整地ロータとフロート部分の平面図である。
【図4】図1の直播機の直播装置部分の部分断面拡大側面図である。
【図5】図1の直播機の覆土板の作動連係図である。
【図6】図2の整地ロータの周速と直播機の車速の関係を示す図である。
【図7】図2の整地ロータに代えてロータ設置部に配置した板体の背面図(図7(a))と側面図(図7(b))である。
【図8】図1の直播機の制御系のブロック回路図である。
【図9】図1に示す直播機の旋回連動制御の考え方を示す図である。
【図10】図9の旋回連動制御のフローチャートである。
【図11】図1の直播機の旋回後の播種開始のタイミングを説明する図である。
【図12】図1の直播機での播種開始のタイミングと田植機でのマット植付時の畦際での植付開始のタイミングの違いを説明する図である。
【符号の説明】
【0052】
2 走行車体 3 昇降リンク装置
5 施肥装置 10 前輪
11 後輪 12 ミッションケース
13 前輪ファイナルケース 15 メインフレーム
18 後輪ギヤケース 18a 後輪ローリング軸
20 エンジン 21 第一ベルト伝動装置
23 第二ベルト伝動装置 25 クラッチケース
27(27a,27b) 整地ロータ 28 施肥伝動機構
30 エンジンカバー 31 座席
32 ボンネット 34 ハンドル
35 フロアステップ 36 リヤステップ
40 上リンク 41 下リンク
42 リンクベースフレーム 43 縦リンク
45 スイングアーム 46 昇降油圧シリンダ
55 センターフロート 56 サイドフロート
57 上下動検出機構 60 肥料貯留タンク
62 施肥ホース 61 肥料繰出部
63 施肥ガイド 64 播種用作溝器
65 支持枠体 66 梁部材
66a 突出部 67 支持アーム
68 ロータ支持フレーム 69 エアチャンバ
70(70a,70b) 駆動軸 72 整地装置変速装置
73 チェーンケース 74 補強部材
74a 取付片 75 板体
76 第一リンク部材 77 第二リンク部材
78 スプリング 81 ロータ上下位置調節レバー
82 折曲片 142 直播装置
143 種子ホッパー 144 繰出ロ−ル
144a 繰出穴 144b 繰出ロ−ル軸
145 作業機着脱ヒッチ 146 繰出筒
146a 案内壁面 147 種子打込ロ−タ
147a 突子 147b 種子打込ロ−タ軸
148 放出筒 149 播種筒
150 播種フレ−ム 151 硬軟センサ
153 覆土板 154 跳出ア−ム
154a 繰出軸 154b 基部ストッパ−
155 スプリング 156 カムア−ム
156a カムロ−ラ 158 スクレ−パブラシ
161 ワイヤ 162 アーム
169 センターフロートセンサー 170 制御装置
171 フィンガーレバー 184 スタートボタン(スイッチ)
189 種子繰出用モータ 191 覆土板作動用モータ
193 ハンドル切れ角センサ 194 種子打込用モータ
195 変速ベルコン操作モータ 205 後輪伝動軸回転数センサ
206 θ1,θ2設定ダイヤル 208 N1,N2設定ダイヤル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内に粉粒体を播くための直播装置(142)と該直播装置(142)の前方に直播前の圃場を整地するために回転する整地ロータ(27a,27b)を走行車両に備えた直播機において、
走行車両の車速に応じて車速の増減量に比して整地ロータ(27a,27b)の回転速度の増減量が大きくなるように整地ロータ(27a,27b)の回転速度を変更する整地ロータ変速装置(72)を設けたことを特徴とする直播機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−228638(P2008−228638A)
【公開日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−71789(P2007−71789)
【出願日】平成19年3月20日(2007.3.20)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】