説明

直流−直流変換回路及びこれを用いた電力変換装置

【課題】従来のチョッパ回路では、直流電源又は直流出力の電圧が高い場合には、ダイオードが高速で逆回復し、またスイッチ素子が高速スイッチングすることになり、ダイオード逆回復時やスイッチ素子遮断時に大きなサージ電圧が発生し、ノイズ発生量が増加すると共に逆回復損失が大きくなる。
【解決手段】直流電源又は直流出力をコンデンサで分割し、スイッチ素子直列回路内部の接続点とコンデンサ直列回路内部の接続点との間に逆阻止形IGBT又は双方向スイッチを接続し、スイッチング波形を2ステップ動作波形とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電源からこの電圧と異なる別の直流を作り出す直流−直流変換回路とこれを用いた電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図8に、特許文献1〜3に記載されている直流電源からこの電圧と異なる別の直流を作り出す従来の直流−直流変換回路例を示す。
図8(a)は特許文献1に記載されている直流電源Edからこの電圧よりも低い直流を作り出す降圧チョッパ回路、図8(b)は特許文献2に記載されている直流電源Edからこの電圧よりも高い直流を作り出す昇圧チョッパ回路、図8(c)は特許文献3に記載されている直流電源Edからこの電圧よりも低い直流又は高い直流を作り出す昇降圧チョッパ回路である。
【0003】
図8(a)は、ダイオードD1を逆並列接続したIGBTS1とダイオードD2を逆並列接続したIGBTS2とを直列接続したスイッチ直列回路と、直流電源Edとが並列接続され、前記スイッチ直列回路内部の直列接続点と負荷LDとの間にリアクトルLが、負荷LDと並列にコンデンサCoが、各々接続された構成である。このような構成において、IGBTS1をオンするとリアクトルLの電流が上昇し、遮断するとダイオードD2を介して還流する。この動作を所定のオンオフ比(デューティ)で繰り返すことにより、コンデンサCoの電圧として直流電源電圧より低い電圧が得られる。ダイオードD2がオンするタイミングでIGBTS2をオンすると負荷LDからの電力を直流電源Edに回生することができる。ここで、リアクトルLの電流がダイオードD2を介して還流している時にIGBTS1をオンするとダイオードD2は直流電源Edの電圧で逆回復しオフとなる。
【0004】
図8(b)は、ダイオードD3を逆並列接続したIGBTS3とダイオードD4を逆並列接続したIGBTS4とを直列接続したスイッチ直列回路と、負荷LDと、コンデンサCoが、各々並列接続され、前記スイッチ直列回路内部の直列接続点と直流電源Edとの間にリアクトルLが接続された構成である。このような構成において、IGBTS4をオンするとリアクトルLの電流が上昇し、遮断するとこの電流はダイオードD3を介してコンデンサCoを充電する。この動作を所定のオンオフ比(デューティ)で繰り返すことにより、コンデンサCoの電圧とし直流電源電圧より高い電圧が得られる。ダイオードD3がオンするタイミングでIGBTS3をオンすると負荷LDからの電力を直流電源Edに回生することができる。ここで、リアクトルLの電流がダイオードD3を介してコンデンサCoを充電している時にIGBTS4をオンするとダイオードD3は直流出力電圧(コンデンサCoの電圧)で逆回復しオフとなる。
【0005】
図8(c)は、ダイオードD1を逆並列接続したIGBTS1とダイオードD2を逆並列接続したIGBTS3とを直列接続した第1のスイッチ直列回路が直流電源Edと並列接続され、ダイオードD3を逆並列接続したIGBTS3とダイオードD4を逆並列接続したIGBTS4とを直列接続した第2のスイッチ直列回路と、負荷LDと、コンデンサCoが、各々並列接続され、前記第1のスイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第2のスイッチ直列回路内部の直列接続点との間にリアクトルLが接続された構成である。
【0006】
このような構成において、IGBTS3をオンにした状態でIGBTS1をオンするとリアクトルLの電流が上昇し、遮断するとダイオードD2を介して還流する。この動作を所定のオンオフ比(デューティ)で繰り返すことにより、コンデンサCoの電圧として直流電源電圧より低い電圧が得られる。ダイオードD2がオンするタイミングでIGBTS2をオンすると負荷LDからの電力を直流電源Edに回生することができる。ここで、リアクトルLの電流がダイオードD2を介して還流している時にIGBTS1がオンするとダイオード2は直流電源の電圧で逆回復し、オフとなる。
【0007】
また、IGBTS1をオンにした状態でIGBTS4をオンするとリアクトルLの電流が上昇し、遮断するとダイオードD3を介してコンデンサCoを充電する。この動作を所定のオンオフ比(デューティ)で繰り返すことにより、コンデンサCoの電圧として直流電源電圧より高い電圧が得られる。ダイオードD3がオンするタイミングでIGBTS3をオンすると負荷LDからの電力を直流電源Edに回生することができる。ここで、リアクトルの電流がダイオードD3を介してコンデンサCoに充電されている時にIGBTS4をオンするとダイオードD3は直流出力コンデンサCoの電圧で逆回復し、オフとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−96966号公報
【特許文献2】特開2008−289326号公報
【特許文献3】特開2008−99518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述のように、いずれの回路構成の場合も、リアクトルの電流がダイオードを介して還流又は出力コンデンサを充電している時に直列接続されたIGBTをオンすると、ダイオードは直流電源Edの電圧又は直流出力コンデンサCoの電圧で逆回復する。直流電源電圧又は直流出力電圧が数百ボルト以上と高い場合には、ダイオードが高速で逆回復することになり、ダイオード逆回復遮断時に大きなサージ電圧が発生し、ノイズ発生量が増加すると共に逆回復損失が大きくなる。また、スイッチング素子のスイッチング時の電圧変化量は直流電源電圧又は直流出力電圧となり、同様にノイズ発生量が大きく且つスイッチング損失が大きくなる。この結果、半導体素子の耐圧はこの電圧に耐える高耐圧品が必要となり、また冷却装置が大型化する問題が生じる。
従って、本発明の課題は、逆回復を緩やかにしてノイズ発生量を低減すると共に逆回復時の損失を低減すること及びスイッチング時のノイズ発生量及びスイッチング損失を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上述の課題を解決するために、第1の発明においては、コンデンサを複数個直列接続したコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続したスイッチ直列回路とを直流電源と並列接続し、前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形スイッチ素子を、前記スイッチ直列回路内部の直列接続点と負荷との間にリアクトルを、各々接続する。
【0011】
第2の発明においては、第1の発明における前記スイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記スイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、逆阻止形スイッチ素子と逆並列に別の逆阻止形スイッチ素子を、各々接続する。
【0012】
第3の発明においては、コンデンサを複数個直列接続したコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続したスイッチ直列回路とを負荷と並列接続し、前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形スイッチ素子を、前記スイッチ直列回路内部の直列接続点と直流電源との間にリアクトルを、各々接続する。
【0013】
第4の発明においては、第3の発明おける前記スイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記スイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、前記逆阻止形スイッチ素子と逆並列に別の逆阻止形スイッチ素子を、各々接続する。
【0014】
第5の発明においては、コンデンサを複数個直列接続した第1のコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続した第1のスイッチ直列回路とを直流電源と並列接続し、前記第1のコンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第1のスイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第1の逆阻止形スイッチ素子を接続し、コンデンサを複数個直列接続した第2のコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続した第2のスイッチ直列回路とを負荷と並列接続し、前記第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第2のスイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第2の逆阻止形スイッチ素子を接続し、前記第1のスイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第2のスイッチ直列回路内部の直列接続点との間にリアクトルを接続する。
【0015】
第6の発明においては、第5の発明における前記第1のスイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記第1のスイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、前記第2のスイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記第2のスイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、第1の逆阻止形スイッチ素子と逆並列に第3の逆阻止形スイッチ素子を、第2の逆阻止形スイッチ素子と逆並列に第4の逆阻止形スイッチ素子を、各々接続する。
【0016】
第7の発明においては、第1〜第6の発明における前記各々のコンデンサ直列回路と並列にコンデンサ電圧バランス手段を接続する。
【0017】
第8の発明においては、第1〜第7のいずれか1項に記載の発明の直流−直流変換回路を用いたことを特徴とする電力変換装置である。
【発明の効果】
【0018】
本発明では、スイッチング素子がオンしてダイオードを逆回復させる時の電圧及びスイッチング素子がオフする時の電圧を第1ステップとして直流電源電圧又は直流出力電圧の半分以下の電圧とし、第2ステップとして直流電源電圧又は直流出力電圧そのものとしている。このため、ダイオード逆回復時又はスイッチング素子オフ時にダイオード又はスイッチング素子に印加される電圧を小さく抑制することができる。
この結果、ダイオード逆回復時の電圧が低い電圧となり、逆回復時のサージ電圧が低く抑制され、逆回復損失が低減する。さらにスイチング素子とダイオードのスイッチング時の電圧変化量が半分以下とすることが可能となり、ノイズ発生量が低減する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1の実施例を示す回路図である。
【図2】本発明の第2の実施例を示す回路図である。
【図3】本発明の第3の実施例を示す回路図である。
【図4】本発明の第4の実施例を示す回路図である。
【図5】本発明の第5の実施例を示す回路図である。
【図6】本発明の第6の実施例を示す回路図である。
【図7】本発明の第7の実施例を示す回路図である。
【図8】従来例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の要点は、直流−直流変換回路として、ダイオードとスイッチ素子との直列回路又はダイオードを逆並列接続したスイッチ素子同士の直列回路の内部直列接続点と直流電源又は直流出力との間に双方向スイッチ又は逆阻止形スイッチを接続し、スイッチ素子のオン又はオフ時前記双方向スイッチ又は逆阻止形スイッチをオンさせ、ダイオード又はスイッチ素子に印加される電圧が、直流電源電圧又は直流出力電圧の半分以下の電圧を短時間経由した2ステップ以上の動作となるようにした点である。
【実施例1】
【0021】
図1に、本発明の第1の実施例を示す。図1(a)が回路図、図1(b)が動作説明図である。直流電源電圧より低い直流出力電圧を得る降圧形の回路構成である。コンデンサC1とC2を直列接続したコンデンサ直列回路と、スイッチ素子(IGBT)S1とダイオードD2とを逆直列接続したスイッチ素子直列回路とを直流電源Edと並列接続し、コンデンサ直列回路内部の直列接続点とスイッチ素子直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止型IGBTB1aを接続する。また、スイッチ素子直列回路内部の直列接続点と負荷LDとの間にリアクトルLを、負荷LDと並列にコンデンサC4を、各々接続した構成である。
【0022】
このような構成において、スイッチ素子S1をオンする時は、直前(数マイクロ秒前)に逆阻止型IGBTB1aをオンし、次にIGBTS1をオンする。スイッチ素子S1をオフする時は、短時間(数マイクロ秒)遅れて逆阻止型IGBTB1aをオフする。ここで、遅れ時間はダイオード又は逆阻止形IGBTが逆回復する時間或いはスイッチング素子のターンオフ時間より長ければ良いので数マイクロ秒程度となる。この結果、リアクトルLの電流がダイオードD2を介して還流している時にスイッチ素子S1をオンする場合、ダイオードD2には最初に直流電源電圧の半分の電圧が印加されて逆回復し、その後直流電源電圧そのものが印加される。この結果、ダイオードD2の逆回復時の電圧は半分になり、逆回復損失が低減される。
また、IGBTS1オフ時の電圧は直流電源電圧から半分の電圧まで一旦低下し、その後零まで低下するので、ノイズとスイッチング損失が低減される。
尚、IGBTS1とダイオードD2の直列接続順序を入れ替えて、逆阻止形IGBTB1aの接続方向を逆方向にしても同様に実現できる。
【実施例2】
【0023】
図2に、本発明の第2の実施例を示す。第1の実施例との違いは、IGBTS1と逆並列にダイオードD1が、ダイオードD2と逆並列にIGBTS2が、逆阻止形IGBTB1aと逆並列に逆阻止形IGBTB1bが、各々接続されている点である。このような構成にすることで、負荷に蓄電池などが接続される場合、負荷側から直流電源側にエンルギーを回生することができる。所謂双方向のチョッパ回路となる。その他の機能は実施例1と同様である。尚、負荷LDとコンデンサC4はIGBTS1のコレクタ端子側(直流電源Edの正極側)に接続しても同様に実現可能である。
【実施例3】
【0024】
図3に、本発明の第3の実施例を示す。図3(a)が回路図、図3(b)が動作説明図である。直流電源電圧より高い直流出力電圧を得る昇圧形の回路構成である。コンデンサC3とC4を直列接続したコンデンサ直列回路と、スイッチ素子(IGBT)S4とダイオードD3とを逆直列接続したスイッチ素子直列回路とを負荷LDと並列接続し、コンデンサ直列回路内部の直列接続点とスイッチ素子直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止型IGBTB2aを接続する。また、スイッチ素子直列回路内部の直列接続点と直流電源Edとの間にリアクトルLを接続する。
【0025】
このような構成において、スイッチ素子S4をオンする時は、直前に逆阻止型IGBTB2aを短時間(数マイクロ秒)オンし、次にIGBTS4をオンする。また、スイッチ素子S4をオフする時は、予め逆阻止型IGBTB2aにオン信号を与えておく。この結果、リアクトルLの電流がダイオードD3を介して負荷側に還流している時にスイッチ素子S4をオンする場合、ダイオードD3には最初に負荷電圧の半分の電圧(コンデンサC3の電圧)が印加されて逆回復し、その後負荷電圧そのものが印加される。この結果、ダイオードD2の逆回復時の電圧は半分になり、逆回復損失が低減される。また、IGBTS4オフ時の電圧は負荷電圧から半分の電圧(コンデンサC4の電圧)まで一旦上昇し、逆阻止形IGBTB2aをオフさせた後負荷電圧まで上昇するので、ノイズとスイッチング損失が低減される。尚、ダイオードD3とIGBTS4の接続順序を入れ替えて、逆阻止形IGBTの接続方向を逆方向にしても、同様に実現可能である。
【実施例4】
【0026】
図4に、本発明の第4の実施例を示す。第3の実施例との違いは、ダイオードD3と逆並列にIGBTS3を、IGBTS4と逆並列にダイオードD4を、各々接続している点である。このような構成にすることで負荷として蓄電池などが接続されている場合、負荷からのエネルギーを直流電源Ed側に回生することができる。その他の動作は実施例3と同様である。尚、リアクトルLと直流電源Edとの直列回路はIGBTS3と並列接続しても同様に実現可能である。
【実施例5】
【0027】
図5に、本名発明の第5の実施例を示す。第1の実施例と第3の実施例を組合せた昇降圧形チョッパ回路の例である。コンデンサC1とC2を直列接続した第1のコンデンサ直列回路と、スイッチ素子(IGBT)S1とダイオードD2とを逆直列接続した第1のスイッチ素子直列回路とを直流電源Edと並列接続し、コンデンサ直列回路内部の直列接続点とスイッチ素子直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止型IGBTB1aとB1bを逆並列接続した双方向スイッチを接続する。また、コンデンサC3とC4を直列接続した第2のコンデンサ直列回路と、スイッチ素子(IGBT)S4とダイオードD3とを逆直列接続した第2のスイッチ素子直列回路とを負荷LDと並列接続し、第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点と第2のスイッチ素子直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止型IGBTB2aを接続する。
【0028】
このような構成において、IGBTS4をオフした状態で、IGBTS1をオンオフさせると第1の実施例と同様の降圧形チョッパの動作となる。また、IGBTS1をオンした状態でIGBTS4をオンオフさせると第3の実施例と同様の昇圧形チョッパの動作となる。各動作は、第1〜第4の実施例と同様である。尚、IGBTS1とダイオードD2の接続順序、ダイオードD3とIGBTS4の接続順序を入れ替えて、逆阻止形IGBTB1a、B2aの接続方向を逆方向とし、直流電源Edの正極側を共通電位としても同様に実現可能である。
【実施例6】
【0029】
図6に第6の実施例を示す。第5の実施例との違いは、第5の実施例におけるIGBTS1と逆並列にダイオードD1が、IGBTS4と逆並列にダイオードD4が、ダイオードD2と逆並列にIGBTS2が、ダイオードD3と逆並列にIGBTS3が、逆阻止形IGBTB1aと逆並列に逆阻止形IGBTB1bが、逆阻止形IGBTB2aと逆並列に逆阻止形IGBTB2bが、各々接続されている点である。各動作は図5と同様であるが、ダイオードD2、D3と逆並列接続されたIGBTS2、S3をダイオードがオンするタイミングでオンさせることにより、負荷LDからの電力を直流電源Edに回生することができる。その他の動作は、第1〜第5の実施例と同様である。尚、直流電源Edの正極側を共通電位としても同様に実現可能である。
【実施例7】
【0030】
図7に直列接続された各コンデンサの電圧をバランスさせるための手段としてのバランサ回路例を示す。第1〜第6の実施例ではステップ状に電圧を変化させているため、コンデンサの電圧がアンバランスになる可能性がある。図7はこのアンバランス電圧を解消するための回路例である。図7(a)はコンデンサCa,Cbと並列に抵抗Ra、Rbを接続する回路構成で、抵抗値を等しくすることにより、コンデンサ電圧も等しくすることができる。また、抵抗値を適宜選択することにより、任意の電圧に分割することもできる。
【0031】
図7(b)は、ダイオードD5とIGBTS5との逆並列接続回路とダイオードD6とIGBTS6との逆並列接続回路とからなるスイッチ素子直列接続回路を、コンデンサCaとCbとからなるコンデンサ直列接続回路に並列接続し、スイッチ素子直列接続回路内部の接続点とコンデンサ直列接続回路内部の接続点にリアクトルLaを接続した構成である。
【0032】
このような構成において、IGBTS6をオンさせるとコンデンサCbからリアクトルLaに電流が流れエネルギーが蓄積され、IGBTS6をオフさせるとリアクトルLaの電流はダイオード5を通ってコンデンサCaに充電される。また、IGBTS5をオンさせるとコンデンサCaからリアクトルLaに電流が流れエネルギーが蓄積され、IGBTS5をオフさせるとリアクトルLaの電流はダイオード6を通ってコンデンサCbに充電される。このような動作で、電圧の高い側のコンデンサから低い側のコンデンサに電荷を移動させるとことにより、コンデンサ電圧をバランスさせることができる。また、コンデンサ電圧を任意の値に選択して、任意の電圧に分割できる。
【0033】
尚、上記実施例には逆阻止形のスイッチング素子として逆阻止形IGBTを使用した例を示したが、逆阻止能力のないIGBTやMOSFETなどと直列にダイオードを接続した構成でも逆阻止形のスイッチング素子を実現可能である。
また、コンデンサ直列回路として、コンデンサを2個接続した例を示したが、直列数を増やして、スイッチ素子直列回路内部の接続点とコンデンサ直列回路内部の直列接続点との間に各々逆阻止形スイッチ素子を接続することにより、スイッチ素子直列回路の各素子に印加される電圧を複数段のステップにすることや半分以下に抑制することが可能である。
【符号の説明】
【0034】
Ed・・・直流電源 LD・・・負荷 L、La・・・リアクトル
C0〜C4、Ca、Cb・・・コンデンサ Ra、Rb・・・抵抗
S1〜S6・・・IGBT D1〜D6・・・ダイオード
B1a、B1b、B2a・・・逆阻止形IGBT

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサを複数個直列接続したコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続したスイッチ直列回路とを直流電源と並列接続し、前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形スイッチ素子を、前記スイッチ直列回路内部の直列接続点と負荷との間にリアクトルを、各々接続することを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項2】
前記スイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記スイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、逆阻止形スイッチ素子と逆並列に別の逆阻止形スイッチ素子を、各々接続することを特徴とする請求項1に記載の直流−直流変換回路。
【請求項3】
コンデンサを複数個直列接続したコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続したスイッチ直列回路とを負荷と並列接続し、前記コンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記スイッチ直列回路内部の直列接続点との間に逆阻止形スイッチ素子を、前記スイッチ直列回路内部の直列接続点と直流電源との間にリアクトルを、各々接続することを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項4】
前記スイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記スイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、前記逆阻止形スイッチ素子と逆並列に別の逆阻止形スイッチ素子を、各々接続することを特徴とする請求項3に記載の直流−直流変換回路。
【請求項5】
コンデンサを複数個直列接続した第1のコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続した第1のスイッチ直列回路とを直流電源と並列接続し、前記第1のコンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第1のスイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第1の逆阻止形スイッチ素子を接続し、コンデンサを複数個直列接続した第2のコンデンサ直列回路と、半導体スイッチ素子とダイオードとを逆直列接続した第2のスイッチ直列回路とを負荷と並列接続し、前記第2のコンデンサ直列回路内部の直列接続点と前記第2のスイッチ直列回路内部の直列接続点との間に第2の逆阻止形スイッチ素子を接続し、前記第1のスイッチ直列回路内部の直列接続点と前記第2のスイッチ直列回路内部の直列接続点との間にリアクトルを接続することを特徴とする直流−直流変換回路。
【請求項6】
前記第1のスイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記第1のスイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、前記第2のスイッチ直列回路の半導体スイッチ素子と逆並列にダイオードを、前記第2のスイッチ直列回路のダイオードと逆並列に半導体スイッチ素子を、第1の逆阻止形スイッチ素子と逆並列に第3の逆阻止形スイッチ素子を、第2の逆阻止形スイッチ素子と逆並列に第4の逆阻止形スイッチ素子を、各々接続することを特徴とする請求項5に記載の直流−直流変換回路。
【請求項7】
前記各々のコンデンサ直列回路と並列にコンデンサ電圧バランス手段を接続することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の直流−直流変換回路。
【請求項8】
前記請求項1〜8のいずれか1項に記載の直流−直流変換回路を用いたことを特徴とする電力変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−139048(P2012−139048A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−290252(P2010−290252)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】