説明

直流電圧変換装置

【課題】小型化および低コスト化を図るとともに、安定した昇降圧動作を実現可能な直流電圧変換装置を提供する。
【解決手段】直流電圧変換装置10は、直流電源Bと、リアクトルLと、第1スイッチング素子S1と、第2ダイオードD2と、第1および第2コンデンサC1,C2とを備えており、直流電源Bからの電圧を昇圧する装置である。第1コンデンサC1は温度上昇により静電容量が増加する一方、第2コンデンサC2は第1コンデンサC1に並列に接続されており、温度上昇により静電容量が減少する。そして、第1および第2コンデンサC1,C2では、温度が変化すると、その温度変化に対する静電容量の変化量が相殺される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直流電圧を変換するための装置に関し、特に昇圧動作を行う装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電池を電力供給源とする電子機器が知られている。このような電子機器では、電池からの供給電圧が電子機器での使用電圧よりも低い場合が多く、この場合には、供給電圧を昇圧させて電子機器へ供給する。また、最近では、電子機器で発電させてその電圧を電池へ供給する場合もあり(充電)、この場合には、電子機器で発生した電圧を降圧させて電池へ供給する。そのため、昇降圧可能な直流電圧変換装置が開発されている。そして、近年では、この電圧変換装置を電車や自動車等に搭載することが検討されている。具体的に以下に示す。
【0003】
電車や自動車にはモータが搭載されており、そのモータは駆動源として用いられるようになっている。例えば、ハイブリッド車は、排気ガスを軽減でき環境汚染を防止できるものとして注目され、実用化されており、ガソリンエンジンとモータとを駆動源として併用しながら走行するものである。
【0004】
自動車の駆動源としてモータを用いた場合、その駆動電圧は、従来では200〜300V程度であった。しかし近年では、自動車の加速力の向上を目指して、その駆動電圧は高電圧に移行しており、今後は500V〜1000V程度の非常に高い駆動電圧が主流となると考えられている。
【0005】
駆動電圧を高くする方法としては、電池の直列数を増加させることが挙げられるが、電池の直列数を増加させると電池の容量が増加してしまう。そこで、電池の直列数を増加させることなく電池から供給される供給電圧よりも高い駆動電圧を得るために、上記電圧変換装置を用いることが考えられている。特許文献1には、昇圧チョッパ回路を用いて直流電源の直流電力を昇圧する構成を備えた電圧変換装置が開示されている。
【0006】
昇圧チョッパ回路は、特許文献1に開示されているように、直流電源と、リアクトルと、スイッチング素子と、コンデンサとを備えており、スイッチング素子がオン状態のときには直流電源からの電力がリアクトルに供給され、スイッチング素子がオフ状態のときには直流電源からの電力がコンデンサに供給されるように構成されている。昇圧時には、まず、スイッチング素子をオン状態にして、直流電源からの電力をリアクトルに供給する。一定時間経過後、スイッチング素子をオン状態からオフ状態へ切り換えると、コンデンサには、リアクトルに蓄積されていた電力と直流電源からの電力とが供給され、その結果、昇圧された電圧が出力される。
【0007】
一般に、直流電圧変換装置の環境温度が上昇または下降すると、コンデンサの静電容量は増減する。そして、コンデンサの静電容量が増減すると、直流電圧変換装置において安定した昇降圧動作を実現することが難しい。そのため、環境温度の変化によりコンデンサの静電容量が変化することを考慮に入れて直流電圧変換装置を設計することが好ましい。例えば特許文献1では、負荷側(モータなど)において、環境温度の変化によるコンデンサの静電容量の変化を抑制している。
【特許文献1】特開2005−354763号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、広い温度範囲において安定した昇降圧動作を実現するためには、負荷側は、綿密な実機評価に基づいた複雑な制御を行う必要がある。その制御は非常に複雑となる場合が多く、その結果、電圧変換装置の大型化およびコスト高を招来する。
【0009】
さらに、制御が複雑であるので、コンデンサの静電容量の変化を充分に制御できない場合が多く、その結果、昇降圧動作の不安定化を招来する虞がある。
【0010】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、小型化および低コスト化を図ることができるとともに、昇降圧動作の安定化を図ることができる直流電圧変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、正の温度特性(温度上昇により静電容量が大きくなる温度特性)をもっているコンデンサと、負の温度特性(温度上昇により静電容量が小さくなる温度特性)をもっているコンデンサとを並列接続することにより、直流電圧変換装置の小型化および低コスト化を図ることができるとともに同装置における昇降圧動作を安定化させることができることを見い出し、本発明を完成した。
【0012】
具体的には、本発明の直流電圧変換装置は、直流電圧を変換する装置であり、直流電源と、直流電源の正極側に接続されたリアクトルと、ソース端子が直流電源の負極側に接続され、ドレイン端子がリアクトルに接続されたスイッチング素子と、陽極端子がリアクトルとスイッチング素子のドレイン端子との間に接続されたダイオードと、一方の端部が直流電源の負極とスイッチング素子のソース端子との間に接続されているとともに他方の端部がダイオードの陰極端子に接続されており、各々が並列接続された複数のコンデンサとを備えている。複数のコンデンサは、温度上昇により静電容量が増加する第1コンデンサと、温度上昇により静電容量が減少する第2コンデンサとを含んでいる。そして、第1および第2コンデンサでは、温度が変化すると、その温度変化に対する静電容量の変化量が相殺される。
【0013】
本発明の直流電圧変換装置によれば、温度の上昇または下降により第1および第2コンデンサの静電容量はそれぞれ増減する。しかし、複雑な制御を行わなくても、第1および第2コンデンサの合成静電容量は、その温度が昇降しても略一定値に保つことができる。
【0014】
なお、このような直流電圧変換装置は、電流の逆流防止手段を備えていることが好ましく、電流の逆流防止手段としては、ダイオードや、ダイオードが逆並列接続されているスイッチング素子や、パワースイッチングデバイスの内蔵ダイオードが例示される。ここで、パワースイッチングデバイスの内蔵ダイオードとは、スイッチング素子とダイオードとが並列に接続された素子である。
【0015】
又、スイッチング素子としては、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)、パワーMOSFET、ワイドバンドギャップ型半導体(SiC、GaN、C)等の半導体素子が例示される。ここで、ワイドバンドギャップ型半導体とは、伝導帯の下端と価電子帯の上端とのエネルギー差、すなわちバンドギャップが2.0eV以上である半導体を意味する。
【0016】
本発明の直流電圧変換装置では、第1コンデンサは、第2コンデンサよりも、スイッチング素子寄りに配置されていることが好ましい。
【0017】
一般に、直流電圧変換装置が動作すると、スイッチング素子が発熱する。また、第1コンデンサのように温度上昇により静電容量が増加するコンデンサでは、その静電容量は低温において温度に対して非線形応答を示す場合がある。このような場合であっても、上記構成によれば、雰囲気温度よりも高温において第1コンデンサを使用することができるので、第1コンデンサの安定化を図ることができる。その結果、直流電圧変換装置の特性向上が図れる。
【0018】
好ましい実施形態では、第1コンデンサ、第2コンデンサおよびスイッチング素子は、同一平面上に配置されており、第1コンデンサは、スイッチング素子と第2コンデンサとの間に配置されている。
【0019】
別の好ましい実施形態では、第1コンデンサは、スイッチング素子に接するようにそのスイッチング素子の上に配置されており、モジュール化されている一方、第2コンデンサは、スイッチング素子と同一平面上であってそのスイッチング素子から離れた位置に、配置されている。
【0020】
また別の好ましい実施形態では、第1コンデンサは、スイッチング素子に接するようにそのスイッチング素子の上に配置されており、第2コンデンサは、第1コンデンサに接するようにその第1コンデンサの上に配置されている。
【0021】
本発明の直流電圧変換装置では、スイッチング素子、第1コンデンサおよび第2コンデンサに冷媒を流すための冷媒経路をさらに備えており、冷却経路の上流から下流へ向かって、第2コンデンサ、スイッチング素子および第1コンデンサが順に配置されていてもよい。
【0022】
上記構成により、第1コンデンサは、スイッチング素子の発熱による熱が伝達されるので高温となる一方、第2コンデンサは、スイッチング素子の発熱による熱が伝達されないので高温となることを抑制される。その結果、第1コンデンサは、第2コンデンサよりも高温となる。ゆえに、直流電圧変換装置の動作時に、第1コンデンサを雰囲気温度より高温で使用することが可能となり、第1コンデンサの安定化が図れる。その結果、直流電圧変換装置の特性向上が図れる。
【0023】
本発明の直流電圧変換装置では、第1コンデンサおよびスイッチング素子を実装する第1の冷却媒体と、第2コンデンサを実装する第2の冷却媒体とをさらに備えており、第1の冷却媒体と第2の冷却媒体との間においては、熱の移動が阻止されていてもよい。
【0024】
上記構成により、第1コンデンサは、スイッチング素子と同一の冷却媒体に実装されているので高温状態に維持される一方、第2コンデンサは、スイッチング素子とは熱の移動が素子されているので低温状態に維持される。その結果、第1コンデンサは、第2コンデンサよりも高温となる。ゆえに、昇圧動作時に、雰囲気温度より高温で第1コンデンサを動作させることができ、かつ、雰囲気温度より低温で第2コンデンサを動作させることが可能となり、第1および第2コンデンサの安定化が図れる。その結果、直流電圧変換装置の特性向上が図れる。
【0025】
本発明の直流電圧変換装置では、第1コンデンサの温度を検出する検出手段と、検出手段において第1コンデンサの温度が所定温度以下であるときには、スイッチング素子をオフ状態からオン状態へ切り換えることを抑制する制御手段とをさらに備えていてもよい。ここで、所定温度とは、第1コンデンサの温度が変化したときに、その静電容量の変化量が温度に対して線形応答を示す温度の下限値である。
【0026】
上記構成により、温度下降により第1コンデンサの静電容量が温度に対して非線形応答を示す場合には、直流電圧変換装置は動作しない。これにより、第1コンデンサやスイッチング素子に過大な負荷がかかることを抑制することができ、その結果、直流電圧変換装置の信頼性の向上が図れる。
【0027】
本発明の直流電圧変換装置では、ダイオードに並列に接続されており、ソース端子がそのダイオードの陽極端子に接続されているとともにドレイン端子がそのダイオードの陰極端子に接続された第2のスイッチング素子と、スイッチング素子に並列に接続されており、陽極端子がそのスイッチング素子のソース端子に接続されているとともに陰極端子がそのスイッチング素子のドレイン端子に接続された第2のダイオードとをさらに備えていてもよい。このような構成により、昇圧運転だけでなく降圧運転を行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の直流電圧変換装置によれば、温度特性を考慮してコンデンサの静電容量を決定する必要がなくなり、余分な設計マージンを削減し、さらには、直流電圧変換装置の小型化及び低コスト化を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0029】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態に限定されない。また、以下の図面においては、説明の簡潔化のため、実質的に同一の機能を有する構成要素を同一の参照符号で示す。
【0030】
《発明の実施形態1》
図1は、実施形態1にかかる直流電圧変換装置10の構成を示す回路図である。
【0031】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置10は、直流電圧を昇降圧させるための装置であり、直流電源Bと、リアクトルLと、第1スイッチング素子(スイッチング素子)S1と、第2スイッチング素子(第2のスイッチング素子)S2と、第1ダイオード(第2のダイオード)D1と、第2ダイオード(ダイオード)D1と、第1および第2コンデンサC1,C2と、コンデンサC3とを備えており、直流電圧変換装置10には、インバータINVおよびモータMOTが接続されている。そして、直流電圧変換装置10では、第1および第2スイッチング素子S1,S2の切り換えを行うことにより、昇圧運転と降圧運転とを切り換えて行うことができる。すなわち、直流電圧変換装置10は、直流電源Bからの電圧を昇圧させて出力できるとともに、負荷側(インバータINVやモータMOT)からの電圧を降圧させて直流電源Bへ供給することができる。
【0032】
また、本実施形態にかかる直流電圧変換装置10では、第1および第2コンデンサC1,C2は互いに並列に接続されており、その静電容量の変化は後述のように相異なる温度依存性を示している。これにより、第1および第2コンデンサC1,C2の温度が変化すると、第1および第2コンデンサC1,C2の静電容量はそれぞれ変化するが、その変化量が相殺される。その結果、第1および第2コンデンサC1,C2の合成静電容量は、温度が変化しても、略一定の値を示す。以下、直流電圧変換装置10について詳述する。
【0033】
図1に示すように、直流電源Bの正極には、コンデンサC3の一端およびリアクトルLの一端が接続されている。コンデンサC3は、降圧動作時において直流電源Bに入力される電圧を平滑化するためのコンデンサであり、その他端は、直流電源Bの負極に接続されている。リアクトルLは、コイルなどの電気エネルギーを蓄積するための素子であり、その他端は、第1スイッチング素子S1のドレイン端子2および第2スイッチング素子S2のソース端子4に接続されている。
【0034】
第1および第2スイッチング素子S1,S2は、それぞれ、例えば炭化珪素(シリコンカーバイド)からなる電界効果型トランジスタであり、第1スイッチング素子S1のソース端子1には、直流電源Bの負極が接続されており、第2スイッチング素子S2のドレイン端子5には、第1および第2コンデンサC1,C2の一端が接続されている。また、第1および第2スイッチング素子S1,S2のゲート端子3,6には、それぞれ、第1および第2制御回路(不図示)が接続されている。なお、第1および第2制御回路については後述する。
【0035】
また、第1および第2スイッチング素子S1,S2には、それぞれ、第1および第2ダイオードD1,D2が並列に接続されている。第1および第2ダイオードD1,D2は、それぞれ、陽極端子および陰極端子を有しており、陽極端子の電圧が陰極端子の電圧よりも高くなったときに正バイアスの電流を流すように構成されている。第1および第2ダイオードD1,D2では、それぞれ、その陽極端子は第1および第2スイッチング素子S1,S2のソース端子1,4に接続されており、その陰極端子は第1および第2スイッチング素子S1,S2のドレイン端子2,5に接続されている。
【0036】
第1および第2コンデンサC1,C2は、一端が上述のように第2スイッチング素子S2のドレイン端子5に接続されており、他端が直流電源Bの負極に接続されており、各々が並列に接続されている。
【0037】
図2および図4は、それぞれ、直流電圧変換装置10が昇圧運転および降圧運転を行う際に、動作する構成要素のみを取り出して記載した回路図である。
【0038】
直流電圧変換装置10は、昇圧運転時(図2)には、直流電源Bと、リアクトルLと、第1スイッチング素子S1と、第2ダイオードD2と、第1および第2コンデンサC1,C2と、負荷Rとで構成され、降圧運転時(図4)には、直流電源Bと、リアクトルLと、第2スイッチング素子S2と、第1ダイオードD1と、第1および第2コンデンサC1,C2と、負荷Rとで構成される。そして、第1スイッチング素子S1のオン・オフを制御することにより昇圧動作を行うことができ、第2スイッチング素子S2のオン・オフを制御することにより降圧動作を行うことができる。
【0039】
昇圧動作および降圧動作を説明する前に、まず、第1および第2スイッチング素子S1,S2のオン・オフ制御を説明する。図3(a)および(b)は、それぞれ、第1および第2制御回路が出力する第1および第2ゲート制御信号の出力波形を示す図である。
【0040】
上述のように第1スイッチング素子S1のゲート端子3には第1制御回路が接続されており、第1制御回路は第1ゲート制御信号を出力するよう構成されている。そして、第1スイッチング素子S1は、ゲート端子3に第1ゲート制御信号が入力されるとオン状態となり、その入力が停止されるとオフ状態となる。同様に、第2スイッチング素子S2は、第2制御回路の出力信号である第2ゲート制御信号がゲート端子6に入力されるとオン状態となり、その入力が停止されるとオフ状態となる。
【0041】
なお、第1ゲート制御信号は第2ゲート制御信号に対して反転しているので、第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2とが同時にオン状態になることはない。
【0042】
さらに、第1制御回路が第1ゲート制御信号の出力を停止してから第2制御回路が第2ゲート制御信号を出力するまでには第1デッドタイム(図3(b)に示すデッドタイム1)が設けられており、同じく、第2制御回路が第2ゲート制御信号の出力を停止してから第1制御回路が第1ゲート制御信号を出力するまでには第2デッドタイム(図3(b)に示すデッドタイム2)が設けられている。これにより、第1スイッチング素子S1と第2スイッチング素子S2とが同時にオン状態となることを確実に防止でき、図1に示す回路が短絡状態となることを防止できる。
【0043】
では、本実施形態にかかる直流電圧変換装置10における昇圧運転および降圧運転の動作を説明する。
【0044】
昇圧運転時には、まず、第1スイッチング素子S1をオン状態にする。具体的には上述のように、第1スイッチング素子S1のゲート端子3に対して第1ゲート制御信号を入力させる。このとき、第1スイッチング素子S1の抵抗を0と仮定すると、リアクトルLと第2ダイオードD2の陽極端子との接続点aにおける電圧は0となるので、第2ダイオードD2には電流は流れない。そのため、直流電源Bの直流電圧 E1 はリアクトルLにのみ供給され、リアクトルLには電流 IL が流れて電気エネルギーが蓄積される。
【0045】
一定期間経過後、第1スイッチング素子S1をオン状態からオフ状態へ切り換える。すると、リアクトルLには電磁誘導が発生して上記接続点aには高電圧の逆起電力が発生する。その結果、電圧高電圧の逆起電力と直流電源Bからの電圧とを加算した電圧が第2ダイオードD2を通して出力される。これにより、昇圧が行われる。昇圧された電圧は第1および第2コンデンサC1,C2において平滑化され、電流 IR が負荷Rに流れる。
【0046】
一方、降圧運転時には、まず、第2スイッチング素子S2をオン状態にする。具体的には上述のように、第2スイッチング素子S2のゲート端子6に対して第2ゲート制御信号を入力する。このとき、昇圧運転時と同じく、第2スイッチング素子S2の抵抗を0と仮定すると、リアクトルLと第1ダイオードD1の陰極端子との接続点bにおける電圧は直流電源Bの電圧 E1 となるので、第1ダイオードD1には電流が流れない。そのため、直流電源Bの直流電圧 E1 は図4に示すようにリアクトルLにのみ供給され、リアクトルLには電流 IL が流れて電気エネルギーが蓄積される。
【0047】
一定時間経過後、第2スイッチング素子S2をオン状態からオフ状態へ切り換える。すると、リアクトルLには電磁誘導が発生して上記接続点bには低電圧の逆起電力が発生し、第1ダイオードD1には電流が流れるようになる。しかし、第2スイッチング素子S2がオフ状態であるので、第1ダイオードD1には、直流電源Bからの電流ではなくリアクトルLに蓄積されていた電気エネルギーが流れる。すなわち、第2スイッチング素子S2をオン状態からオフ状態へ切り換えると、負荷Rに流れる電流量は少なくなり、これにより、負荷Rには、直流電源Bからの電圧 E1 よりも降圧された電圧が供給される。
【0048】
図5は、温度が変化したときに第1および第2コンデンサC1,C2の静電容量の変化を模式的に示すグラフ図であり、縦軸が静電容量の変化量を示しており、横軸がコンデンサの温度を示している。また、実線のグラフが第1コンデンサC1の静電容量の変化を模式的に示しており、一点破線のグラフが第2コンデンサC2の静電容量の変化を模式的に示している。
【0049】
第1コンデンサC1は、例えばアルミ電解コンデンサであり、その静電容量は、温度が上昇するにつれて線形的に増加し、温度が下降するにつれて線形的に減少するが図5に示すように温度t以下では非線形的に減少する。第2コンデンサC2は、例えばフィルムコンデンサであり、その静電容量は、温度が上昇するにつれて線形的に減少し、温度が下降するにつれて線形的に増加する。そして、温度変化による第1コンデンサC1の静電容量の変化量と第2コンデンサC2の静電容量の変化量とが相殺されるように、第1および第2コンデンサC1,C2は設計されている。具体的には、直流電圧変換装置10の環境温度の上限温度および下限温度においてそれぞれ、第1コンデンサC1の静電容量の変化量と第2コンデンサC2の静電容量の変化量とを相殺した値が、室温時における第1および第2コンデンサC1,C2の合成静電容量の5%以下となるように、第1および第2コンデンサC1,C2は設計されている。
【0050】
このような第1および第2コンデンサC1,C2を並列接続すると、その合成静電容量は、第1コンデンサC1の静電容量と第2コンデンサC2の静電容量との和になる。そのため、例えば温度が室温よりも上昇したときには、第1コンデンサC1の静電容量は室温時の静電容量よりも増加し、第2コンデンサC2の静電容量は室温時の静電容量よりも減少するが、第1コンデンサC1の静電容量の増加量と第2コンデンサC2の静電容量の減少量とが相殺されるので、第1および第2コンデンサC1,C2の合成静電容量は室温時の合成静電容量と略同一の値を示す。これにより、本実施形態にかかる直流電圧変換装置10では、温度が変化しても第1および第2コンデンサC1,C2の合成静電容量を略一定に保つことができる。
【0051】
なお、第1および第2コンデンサC1,C2の温度が上昇もしくは下降する要因としては、次に示す2つの要因が考えられる。
【0052】
第1の要因は、直流電圧変換装置10の環境温度が上昇もしくは下降することである。例えば直電圧変換装置10を車に搭載すると、その環境温度の変化が激しい。直流電圧変換装置10の環境温度の変化により、第1および第2コンデンサC1,C2の温度が変化する、と考えられる。
【0053】
第2の要因は、直流電圧変換装置10の動作による第1および第2スイッチング素子S1,S2での発熱である。一般に、直流電圧変換装置を動作させると、コンデンサやリアクトルは熱を発しないが、スイッチング素子は熱を発する。この発熱により、第1および第2スイッチング素子S1,S2の周囲の温度が上昇し、その結果、第1および第2コンデンサC1,C2の温度が上昇する、と考えられる。
【0054】
以下では、本実施形態にかかる直流電圧変換装置10と、図12乃至14に示す従来の直流電圧変換装置80との差異を説明する。
【0055】
従来の直流電圧変換装置80は、直流電源Bと、リアクトルLと、スイッチング素子Sと、ダイオードDと、第1コンデンサおよび第2コンデンサのどちらか一方のコンデンサCとを備えており、図13に示すパルス波形がスイッチング素子Sのゲート端子に入力されることにより昇圧動作を行うことができる。しかし、従来の直流電圧変換装置80を動作させると、以下に示す問題がある。
【0056】
従来の直流電圧変換装置80が第1コンデンサのみを備えている場合、温度変化に対する静電容量の変化量は第1コンデンサの方が第2コンデンサよりも大きいので、温度変化によるコンデンサCの静電容量の変化を制御するための制御回路が非常に複雑になる。
【0057】
また、第1コンデンサでは、その静電容量は低温時には小さくなる。そのため、環境温度範囲が広い雰囲気中において直流電圧変換装置80を使用する場合(直流電圧変換装置80を例えば車に搭載する場合)、その環境温度が室温よりも低温になれば、上記第1の要因に示すように第1コンデンサの温度が室温よりも低温になる。すると、第1コンデンサの静電容量は、室温時の静電容量よりも減少する。これにより、第1コンデンサの周辺素子(リアクトルL、スイッチング素子SやダイオードDなど)に、過電圧が印加され、過電流が流れる虞がある。よって、その環境温度が低温となっても周辺素子に過電圧の印加および過電流の流入を抑制するための制御が必要であり、その制御は非常に複雑である。
【0058】
さらに、第1コンデンサでは、上述のように温度t以下ではその静電容量が温度に対して線形応答を示さなくなり、その結果、その静電容量の制御が複雑になるとともに、昇圧性能および降圧性能の低下を招来してしまう。
【0059】
従来の直流電圧変換装置80が第2コンデンサのみを備えている場合、第2コンデンサの静電容量は、高温時には小さくなり、さらには、温度に対して線形応答を示さなくなる場合がある。そのため、高温時に最適な静電容量値を示すように第2コンデンサを設計すると、常温における静電容量値が大きくなってしまう。一般に、静電容量が大きなコンデンサは、静電容量が小さいコンデンサに比べて、製造が困難であり、さらにはコンデンサの大型化および高コスト化を招来してしまう。
【0060】
また、コンデンサの静電容量を大きくするためには、静電容量の小さなコンデンサを並列接続してモジュール化するという技術があるが、この技術を用いても、並列接続されたコンデンサ間の配線インダクタンスなどが発生してしまい、その結果、装置の周波数特性の低下を招来してしまう。
【0061】
以上のように、環境温度範囲の広い雰囲気中において従来の直流電圧変換装置80を使用する場合には、制御等が非常に複雑となり、装置の性能低下を招来してしまう。
【0062】
さらに、従来の直流電圧変換装置80では、装置の小型化を図るために、コンデンサCは図14(a)および(b)に示すようにスイッチング素子SおよびダイオードDの上部に配置されている。しかし、上述の第2の要因に示すように、直流電圧変換装置80の動作によりスイッチング素子Sは発熱する。よって、従来の直流電圧変換装置80が第1コンデンサを備えている場合には、温度変化による静電容量の変化を制御するための制御回路を厳密に設計しなければならない。また、従来の直流電圧変換装置80が第2コンデンサを備えている場合には、高温時における静電容量の減少を考慮してコンデンサを設計しなければならず、上述のように大型化および高コスト化を招来してしまう。
【0063】
しかしながら、本実施形態にかかる直流電圧変換装置10では、上記説明したように、第1および第2コンデンサC1,C2の温度が上昇もしくは下降しても、その合成静電容量は略同一の値を示す。そのため、本実施形態にかかる直流電圧変換装置10では、従来の直流電圧変換装置80とは異なり、複雑な制御プログラムを用いて温度変化によるコンデンサの静電容量の変化を制御しなくてもよく、また、温度変化に伴う過電圧などの発生を抑制するように回路を設計しなくてもよく、モジュール化による配線インダクタンスの発生を抑制するように回路を設計しなくてもよい。すなわち、複雑な制御回路を用いて制御しなくても、温度変化によるコンデンサの静電容量の増減を相殺することができ、装置の昇圧性能および降圧性能の低下を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態にかかる直流電圧変換装置10では、第1および第2スイッチング素子S1,S2がワイドバンドギャップ型半導体素子からなるので、直流電圧変換装置10を高温状態で、かつ高速スイッチング動作させ、昇降圧動作することが可能となり、リアクトルLと、第1および第2コンデンサC1,C2と、第1および第2スイッチング素子S1,S2とを大幅に小型化することができる。ゆえに、各構成部品の配置及び形状の自由度が向上し、さらなる特性の向上を図ることができる。
【0065】
《発明の実施形態2》
図6は、実施形態2にかかる直流電圧変換装置20を構成する部品の配置を示す図である。
【0066】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置20は、上記実施形態1にかかる直流電圧変換装置10と略同一の構成を有しているが、リアクトルLと、第1および第2スイッチング素子S1,S2と、第1および第2コンデンサC1,C2とがいずれも冷却媒体Hの上に配置されている。以下に詳細に示す。
【0067】
上記実施形態1に記載のように、第1コンデンサC1の静電容量は、高温側では温度上昇に伴い線形的に増加するが、低温側では温度下降に伴い非線形的に減少する虞がある。一方、第2コンデンサC2の静電容量は、低温側では温度下降に伴い線形的に増加するが、高温側では温度上昇に伴い非線形的に減少する虞がある。よって、第1コンデンサC1は高温側で使用されることが好ましく、第2コンデンサC2は低温側で使用されることが好ましい。そのため、第1コンデンサC1が第2コンデンサC2よりも若干高温となるように、第1および第2コンデンサC1,C2がそれぞれ配置されることが好ましい。
【0068】
一般に、直流電圧変換装置を動作させると、上記実施形態1にも記載のように第1および第2スイッチング素子S1,S2が熱を発する。そのため、その熱が第2コンデンサC2よりも第1コンデンサC1に優先的に伝達されるように第1および第2コンデンサC1,C2がそれぞれ冷却媒体Hに配置されれば、第1コンデンサC1が第2コンデンサC2よりも若干高温となる。すなわち、第1コンデンサC1は、第2コンデンサC2に比べて、第1および第2スイッチング素子S1,S2に近い位置に配置されていることが好ましく、本実施形態では、冷却媒体Hにおいて、第2コンデンサC2に対して第1および第2スイッチング素子S1,S2とは反対側に配置されている。
【0069】
以下では、従来の直流電圧変換装置80と本実施形態にかかる直流電圧変換装置20との差異を説明する。
【0070】
従来の直流電圧変換装置80では、上記実施形態1および図14(a)および(b)に示すように、装置のコンパクト化を図るために、コンデンサCがスイッチング素子Sの近傍に配置される場合が多い。しかし、そのコンデンサCが第1コンデンサであれば、温度変化による静電容量の変化を考慮した制御が複雑となる。また、そのコンデンサCが第2コンデンサであれば、スイッチング素子の発熱による容量低下を考慮し、余分なマージンをとらなければならない。
【0071】
一方、本実施形態にかかる直流電圧変換装置20では、第1コンデンサC1が第2コンデンサC2よりも第1および第2スイッチング素子S1,S2の近くに配置されているので、第1コンデンサC1を第2コンデンサC2よりも高温とすることができる。よって、本実施形態における配置では、第1コンデンサC1におけるデメリット(その静電容量が低温側では温度変化に対して線形的に増減しないこと)を補いながら、温度変化による第1コンデンサC1の静電容量の変化量を、温度変化による第2コンデンサC2の静電容量の変化量でもって確実に相殺することができる。
【0072】
なお、冷却媒体Hは、自然空冷、ファンを利用した強制空冷、あるいは内部に冷却水を利用した水冷、などの冷却機能を有する。
【0073】
《発明の実施形態3》
図7は、実施形態3にかかる直流電圧変換装置30を構成する部品の配置を示す図である。
【0074】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置30は、上記実施形態1にかかる直流電圧変換装置10と略同一の構成を有しているが、上記実施形態2と同じく、リアクトルLと、第1および第2スイッチング素子S1,S2と、第1および第2コンデンサC1,C2とは冷却媒体Hの上に配置されている。以下に詳細に示す。
【0075】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置30では、上記実施形態2と同じく、第1コンデンサC1は、第2コンデンサC2よりも、第1および第2スイッチング素子S1,S2の近くに配置されている。具体的には、冷却媒体Hの上に第1および第2スイッチング素子S1,S2が互いに隣接して設けられており、その上に、コンデンサモジュールCMが配置されている。このコンデンサモジュールCMは、第1コンデンサC1を複数に分割し、平面上にモジュール化したものである。また、第2コンデンサC2は、冷却媒体Hの上に設けられており、第1および第2スイッチング素子S1,S2から離れた位置に配置されている。このような配置により、直流電圧変換装置30の動作により第1および第2スイッチング素子S1,S2において生じた熱は、第2コンデンサC2よりもコンデンサモジュールCMへ優先的に伝達され、各第1コンデンサC1にまんべんなく伝達される。これにより、上記実施形態2と同じく、各第1コンデンサC1を第2コンデンサC2よりも高温とすることができる。よって、温度変化による第1コンデンサC1の静電容量の変化量を、温度変化による第2コンデンサC2の静電容量の変化量でもって確実に相殺することができる。
【0076】
《発明の実施形態4》
図8は、実施形態4にかかる直流電圧変換装置40を構成する部品の配置を示す図である。
【0077】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置40は、上記実施形態1にかかる直流電圧変換装置10と略同一の構成を有しているが、上記実施形態2と同じく、リアクトルLと、第1および第2スイッチング素子S1,S2と、第1および第2コンデンサC1,C2とは冷却媒体Hの上に配置されている。以下に具体的に示す。
【0078】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置40では、上記実施形態2と同じく、第1コンデンサC1は、第2コンデンサC2よりも、第1および第2スイッチング素子S1,S2寄りに配置されている。具体的には、冷却媒体Hの上には順に、第1および第2スイッチング素子S1,S2と、第1コンデンサC1と、第2コンデンサC2とが配置されている。このように配置すると、直流電圧変換装置40の動作により第1および第2スイッチング素子S1,S2において生じた熱は、上記実施形態2と同じく、第2コンデンサC2よりも第1コンデンサC1へ優先的に伝達される。その結果、第1コンデンサC1は、第2コンデンサC2よりも高温となる。よって、温度変化による第1コンデンサC1の静電容量の変化量を、温度変化による第2コンデンサC2の静電容量の変化量でもって確実に相殺することができる。
【0079】
《発明の実施形態5》
図9は、実施形態5にかかる直流電圧変換装置50を構成する部品の配置を示す図である。
【0080】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置50は、上記実施形態1にかかる直流電圧変換装置10の構成に加えて冷却経路51を備えている。また、上記実施形態2と同じく、リアクトルLと、第1および第2スイッチング素子S1,S2と、第1および第2コンデンサC1,C2とは冷却媒体Hの上に配置されている。以下に具体的に示す。
【0081】
本実施形態にかかる冷却経路51は、冷媒を図7に示す矢印の方向に流すように構成されており、冷媒は、水や油などの液体であっても、空気などの気体であっても構わない。そして、冷媒経路Rの上流から下流へ向かう方向に順に、第2コンデンサC2と、第1および第2スイッチング素子S1,S2と、第1コンデンサC1とが配置されている。このように配置すると、第2コンデンサC2は、冷媒により一番最初に冷却されるため、充分に冷却される。一方、上記実施形態1に記載のように直流電圧変換装置50が動作すると第1および第2スイッチング素子S1,S2において熱が生じるので、第1コンデンサC1にはその熱により若干暖められた冷媒が通過する。その結果、第1コンデンサC1は、上記実施形態2と同じく、第2コンデンサC2よりも高温となる。よって、温度変化による第1コンデンサC1の静電容量の変化量を、温度変化による第2コンデンサC2の静電容量の変化量でもって確実に相殺することができる。
【0082】
《発明の実施形態6》
図10は、実施形態6にかかる直流電圧変換装置60を構成する部品の配置を示す図である。
【0083】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置60は、上記実施形態1にかかる直流電圧変換装置10と略同一の構成を有しているが、上記実施形態2とは異なり第1コンデンサC1と第2コンデンサC2とは相異なる冷却媒体に設けられている。以下に具体的に示す。
【0084】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置60は、第1および第2の冷却媒体H1,H2を備えている。第1の冷却媒体H1には、第1および第2スイッチング素子S1,S2と、第1コンデンサC1とが設けられており、第2の冷却媒体H2には、リアクトルLと、第2コンデンサC2とが設けられている。そして、第1の冷却媒体H1と第2の冷却媒体H2とは、熱的に分離されている。そのため、第1の冷却媒体H1で発生した熱が第2の冷却媒体H2へ伝達されないので、直流電圧変換装置60の動作により第1および第2スイッチング素子S1,S2が発した熱は第1コンデンサC1に伝達されるが、その熱は第2コンデンサC2には伝達されない。よって、上記実施形態2と同じく、第1コンデンサC1は、第2コンデンサC2よりも高温となる。これにより、温度変化による第1コンデンサC1の静電容量の変化量を、温度変化による第2コンデンサC2の静電容量の変化量でもって確実に相殺することができる。
【0085】
なお、本実施形態において熱的に分離されているとは、第1の冷却媒体H1と第2の冷却媒体H2との間で熱のやりとりが行われないことを意味する。具体的には、熱的に分離されているとは、第1の冷却媒体H1と第2の冷却媒体H2とが互いに物理的に接触していないことを意味し、また、第1の冷却媒体H1と第2の冷却媒体H2とが他の部材を介して連結されていないことを意味する。さらには、直流電圧変換装置60が、第1の冷却媒体H1で発生した熱を第2の冷却媒体H2へ伝達させる伝達手段や上記実施形態5における冷却経路を有していないことを意味する。
【0086】
また、第1の冷却媒体H1および第2の冷却媒体H2はどちらも、上記実施形態2等における冷却媒体Hと同じように、自然空冷、ファンを利用した強制空冷、あるいは内部に冷却水を利用した水冷、などの冷却機能を有する。
【0087】
《発明の実施形態7》
図11は、実施形態7にかかる直流電圧変換装置70を構成する部品の配置を示す図である。
【0088】
本実施形態にかかる直流電圧変換装置70は、上記実施形態1の直流電圧変換装置10の構成に加えて、検出手段CTおよび制御手段GTを有している。以下に具体的に示す。
【0089】
検出手段CTは、第1コンデンサC1の温度を検出し、検出した温度に基づいてコンデンサ温度信号CTSを出力する。
【0090】
制御手段GTは、第1および第2スイッチング素子S1,S2のスイッチング動作を制御するゲート信号GTS1,GTS2を出力するとともに、コンデンサ温度信号CTSに応じて第1および第2スイッチング素子S1,S2のスイッチング動作を制御する。具体的には、第1コンデンサC1の温度が所定温度以下であるとき(具体的には図5に示す温度t以下であるとき)、制御手段GTは、第1および第2スイッチング素子S1,S2のオフ状態を維持する。
【0091】
以上説明したように、第1コンデンサC1の温度が所定温度以下であれば、本実施形態にかかる直流電圧変換装置70は昇圧動作および降圧動作を行わない。よって、直流電圧変換装置70からの出力を確実に安定させることができる。
【0092】
なお、本実施形態において、所定温度は、第1コンデンサC1の静電容量が温度に対して線形応答を示す下限の温度である。
【0093】
また、本実施形態にかかる直流電圧変換装置70の各構成要素の配置は、上記実施形態2乃至7の何れかの実施形態に記載の配置であることが好ましい。
【0094】
《その他の実施形態》
上記実施形態1乃至7において、以下の構成を有していても良い。
【0095】
第1および第2コンデンサC1,C2の具体例は上記実施形態1に記載の具体例に限定されることはなく、温度変化に対する静電容量変化の傾向が逆であれば、如何なるものでも構わない。また、直流電圧変換装置は、コンデンサC3以外に3つ以上のコンデンサを備えていてもよく、その場合であっても、温度変化により、その合成静電容量が略一定の値を示していればよい。
【0096】
スイッチング素子は、炭化珪素からなるとしたが、炭化珪素以外のワイドバンドギャップ型半導体(例えば、CやGaN)からなってもよく、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)やパワーMOSFET等であってもよい。
【0097】
また、スイッチング素子にダイオードが並列接続されている構成を示したが、スイッチング素子にダイオードが内蔵されている構成であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明の直流電圧変換装置は、安定した昇圧動作を実現できるため、ハイブリッド電気自動車もしくは燃料電池やリチウム電池や鉛電池やニッケル水素電池、電気二重層キャパシタなどを搭載した電気自動車の車載電源、エレベータの電源、等々に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】実施形態1に係る直流電圧変換装置を示す回路図
【図2】昇圧動作時における直流電圧変換装置の等価回路図
【図3】図1の実施形態に使用される駆動パルスのチョッパ周期の波形図
【図4】降圧動作時における直流電圧変換装置の等価回路図
【図5】第1および第2コンデンサの静電容量の温度依存性を模式的に示すグラフ図
【図6】実施形態2に係る直流電圧変換装置を示す構成図
【図7】実施形態3に係る直流電圧変換装置を示す構成図
【図8】実施形態4に係る直流電圧変換装置を示す構成図
【図9】実施形態5に係る直流電圧変換装置を示す構成図
【図10】実施形態6に係る直流電圧変換装置を示す構成図
【図11】実施形態7に係る直流電圧変換装置を示す回路図
【図12】従来の直流電圧変換装置を示す回路図
【図13】図12に示す回路に使用される駆動パルスのチョッパ周期の波形図
【図14】(a)は従来の直流電圧変換装置を示す斜視図、(b)はその正面図
【符号の説明】
【0100】
10,20,30,40,50,60,70,80 直流電圧変換装置
1,4 ソース端子
2,5 ドレイン端子
3,6 ゲート端子
51 冷却経路
B 直流電源
C コンデンサ
C1 第1コンデンサ
C2 第2コンデンサ
CM コンデンサモジュール
D ダイオード
D1 第1ダイオード(第2のダイオード)
D2 第2ダイオード(ダイオード)
H 冷却媒体
H1 第1の冷却媒体
H2 第2の冷却媒体
INV インバータ
L リアクトル
MOT モータ
R 負荷
S スイッチング素子
S1 第1スイッチング素子(スイッチング素子)
S2 第2スイッチング素子(第2のスイッチング素子)
CT 検出手段
GT 制御手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電圧を変換する直流電圧変換装置であって、
直流電源と、
前記直流電源の正極側に接続されたリアクトルと、
ソース端子が前記直流電源の負極側に接続され、ドレイン端子が前記リアクトルに接続されたスイッチング素子と、
陽極端子が前記リアクトルと前記スイッチング素子の前記ドレイン端子との間に接続されたダイオードと、
一方の端部が前記直流電源の負極と前記スイッチング素子の前記ソース端子との間に接続されているとともに他方の端部が前記ダイオードの陰極端子に接続されており、各々が並列接続された複数のコンデンサと
を備え、
前記複数のコンデンサは、温度上昇により静電容量が増加する第1コンデンサと、温度上昇により静電容量が減少する第2コンデンサとを含んでおり、
前記第1および前記第2コンデンサでは、温度が変化すると、当該温度変化に対する静電容量の変化量が相殺されることを特徴とする直流電圧変換装置。
【請求項2】
前記第1コンデンサは、前記第2コンデンサよりも、前記スイッチング素子寄りに配置されていることを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。
【請求項3】
前記第1コンデンサ、前記第2コンデンサおよび前記スイッチング素子は、同一平面上に配置されており、
前記第1コンデンサは、前記スイッチング素子と前記第2コンデンサとの間に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の直流電圧変換装置。
【請求項4】
前記第1コンデンサは、前記スイッチング素子に接するように当該スイッチング素子の上に配置されており、モジュール化されている一方、
前記第2コンデンサは、前記スイッチング素子と同一平面上であって当該スイッチング素子から離れた位置に、配置されていることを特徴とする請求項2に記載の直流電圧変換装置。
【請求項5】
前記第1コンデンサは、前記スイッチング素子に接するように当該スイッチング素子の上に配置されており、
前記第2コンデンサは、前記第1コンデンサに接するように当該第1コンデンサの上に配置されていることを特徴とする請求項2に記載の直流電圧変換装置。
【請求項6】
前記スイッチング素子、前記第1コンデンサおよび前記第2コンデンサに冷媒を流すための冷媒経路をさらに備えており、
前記冷却経路の上流から下流へ向かって、前記第2コンデンサ、前記スイッチング素子および前記第1コンデンサが順に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。
【請求項7】
前記第1コンデンサおよび前記スイッチング素子を実装する第1の冷却媒体と、
前記第2コンデンサを実装する第2の冷却媒体とをさらに備えており、
前記第1の冷却媒体と前記第2の冷却媒体との間においては、熱の移動が阻止されていることを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。
【請求項8】
前記第1コンデンサの温度を検出する検出手段と、
前記検出手段において前記第1コンデンサの温度が所定温度以下であるときには、前記スイッチング素子をオフ状態からオン状態へ切り換えることを抑制する制御手段と
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。
【請求項9】
前記ダイオードに並列に接続されており、ソース端子が当該ダイオードの陽極端子に接続されているとともにドレイン端子が当該ダイオードの陰極端子に接続された第2のスイッチング素子と、
前記スイッチング素子に並列に接続されており、陽極端子が当該スイッチング素子のソース端子に接続されているとともに陰極端子が当該スイッチング素子のドレイン端子に接続された第2のダイオードと
をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の直流電圧変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−61472(P2008−61472A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−238736(P2006−238736)
【出願日】平成18年9月4日(2006.9.4)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】