説明

直線駆動装置

【課題】可動部の傾き、がたつきを抑えた、コンパクトで部品点数の少ない直線駆動装置を提供すること。
【解決手段】直線駆動装置10は、基台12及び可動部20が、可動部20の運動方向の左右側面に外向きに開くU字状の溝14、24を有し、ガイド軸40が可動部20を挟持するようにU字状の溝24に嵌合されて、基台12に取付けられる構成であるため、ガイド部であるU字状の溝24の軸方向の長さを長くすることができ、可動部20の傾き、がたつきを抑えることができる。駆動機構30が一対のガイド軸40、40の間に設けられているため、従来よりコンパクトである。簡単な構造で部品点数が少ないため、組立も容易である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ねじ機構やベルト機構等の駆動機構を有する直線駆動装置に関し、直線運動する可動部をガイド軸によって案内する直線駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
直線駆動装置には、直線運動する可動部が傾かず、がたつくことなくスムーズに動くことが求められている。多くの直線駆動装置は可動部の動きをスムーズに案内するためのガイド部を有し、その一例として、特許文献1、2に示すものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−226572号公報
【特許文献2】実開昭60−3316号公報
【0004】
特許文献1には、可動部の下部にガイド軸を有する直線駆動装置が開示されており、可動部の有する筒状のガイド部をガイド軸に嵌め込み、ガイド部がガイド軸に当接する面積を大きくすることにより、ガイド部の進行方向の長さを長くしなくても、可動部を良好に支持でき、可動部の沈み込みや浮上がりを防止できるとされている。また、筒状のガイド部の外周部の軸心と偏心した軸心を有する内周部を形成すれば、ガイド軸の撓み等によって、可動部がスムーズに移動しなくなった場合でも、ガイド部を外周部の軸心を中心として回動させれば、ガイド部の内周部が偏心回動し、ガイド部とガイド軸との間の隙間が調整されて可動部の良好な移動を確保できるとされている。
特許文献2には、基台の上部に基準ガイド軸及び基準ガイド軸と平行な少なくとも1本のガイド軸が設けられ、そのガイド軸に下向きC形のガイド部が嵌め合わされ、そのガイド部を収納する収納体を介して、上部に可動部が設けられている直線駆動装置が開示されている。ここで、ガイド軸のガイド部と収納体の間に変位吸収部材を介在させることにより、ガイド軸の取付精度が緩和できて、機械加工コストや組立、調整工数が低減できるとされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の直線駆動装置では、可動部の筒状のガイド部にガイド軸が嵌め込まれる構成であるため、組立工数がかかるだけでなく、ガイド部とガイド軸との取付位置がずれていると、ガイド部とガイド軸との間にこじれが発生し、摺動抵抗が高くなり、可動部がスムーズに動かなくなるという問題が発生する可能性が高い。また、筒状のガイド部の外周部の軸心と偏心した軸心を有する内周部を形成することで、前記問題が改善できるとされているが、部品点数が増えることになり、組立工数が増えるだけでなく、製造コストもかかるという問題がある。
特許文献2の直線駆動装置では、ガイド軸のガイド部がC形形状であるため、筒状のガイド部に対し接触面積が減り、摺動抵抗が低くなる。しかし、下向きのC形形状であるため、ガイド軸の平行が保たれていない場合、可動部の進行方向が傾いたり、がたが発生するといった問題がある。また、ガイド部に変位吸収体を設けることで、部品点数が増えることになり、特許文献1の直線駆動装置と同様に、組立工数が増え、製造コストがかかるという問題がある。
そして、特許文献1、2の直線駆動装置はともに、可動部の下部にガイド軸を有する構成であるため、装置全体のサイズが大きくなり易く、コンパクト性に欠ける。また、一般に、ガイド軸のガイド部の軸方向の長さが長ければ長いほど、可動部の傾きやがたつきを抑えることができるが、特許文献1、2の直線駆動装置のガイド部の軸方向の長さはともに短いため、可動部の傾きやがたつきが発生し易いという問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、前述した従来技術の問題点に鑑み、部品点数が少なく、組立が容易で、可動部の傾き、がたつきを抑えた、コンパクトな直線駆動装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、
基台と、駆動機構と連結され直線運動する可動部と、可動部を案内する一対のガイド軸を具え、
前記基台及び可動部が、可動部の運動方向の左右側面に外向きに開くU字状の溝を有し、
前記ガイド軸が前記可動部を狭持するようにU字状の溝に嵌合されて、前記基台に取付けられ、
前記駆動機構が前記一対のガイド軸の間に設けられていることを特徴とする直線駆動装置によって前記課題を解決した。
【0008】
また、請求項2のように、可動部が複数設けられている構成としてもよく、請求項3のように、請求項2において、複数の可動部に対応する別個の駆動機構が設けられている構成としてもよい。
【発明の効果】
【0009】
請求項1の発明によれば、基台及び可動部が、可動部の運動方向の左右側面に外向きに開くU字状の溝を有し、ガイド軸が可動部を狭持するようにU字状の溝に嵌合されて、基台に取付けられ、駆動機構が一対のガイド軸の間に設けられる構成であるため、可動部の下部にガイド軸が設けられる従来の構成に比べて、直線駆動装置をコンパクトにすることができる。また、表1に示すように、本発明のようなU字状のガイド部形状にすることによって、円形状や、下向きC形状のガイド部形状よりも、ガイド軸との接触面積を減らすことができ、摺動抵抗を少なくすることができる。また、両ガイド軸の平行の精度が僅かにずれていたとしても、円形状や、下向きC形状のガイド部形状のようなガイド軸を掴持する構成と異なり、U字状の溝の範囲内でそのずれを許容できるため、ガイド軸のずれによる可動部への影響を少なくすることができる。さらに、U字状の溝が可動部の側面の全長に渡って設けられているため、ガイド部の軸方向の長さが長くなり、ガイド軸とガイド部との接する長さが長くなるため、可動部の傾きやがたつきを抑えることができる。また、対のガイド軸が、基台及び可動部に設けられたU字状の溝に嵌合するように取付けられるというシンプルな構成であるため、部品点数が少なくて済み、組立が容易に行える。
【0010】
【表1】

【0011】
次に、請求項2のように、可動部を複数設けることにより、例えば、複数の生産ラインに対応できる直線駆動装置となる。また、例えば、可動部が2つの場合において、駆動機構がねじ機構の場合、片方の可動部に設けられるねじを逆ねじにする、例えば、ねじ軸の雄ねじ部及び一方の可動部に設けられる雌ねじ部を右ねじにし他方を左ねじにする、また、ベルト機構の場合、ベルトと可動部との連結面を両可動部の相対する面にする、という構成にすれば、請求項1の発明と同じ利点を有するそれぞれの可動部が接近、離反するクランプ装置を構成することができる。さらに、請求項3によれば、請求項2において、複数の可動部に対応する別個の駆動機構が設けられているため、それぞれの可動部の移動可能範囲において、それぞれの可動部を任意の位置に移動させることができる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は本発明の第一実施形態の平面図、(b)は側面図。
【図2】本発明の第一実施形態の要部斜視図。
【図3】(a)は本発明の第一実施形態の正面図、(b)は図1の3−3線断面図。
【図4】(a)は本発明の第二実施形態の平面図、(b)は側面図。
【図5】(a)は図4の5−5線断面図、(b)は5´−5´線断面図。
【図6】本発明の第三実施形態の平面図。
【図7】(a)は図6の7−7線断面図、(b)は7´−7´線断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明の実施例を図1〜7を参照して説明する。但し、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。駆動部には、例えば、エアシリンダ、ワイヤ、ラック&ピニオン、チェーン等が適用でき、また、可動部は3個以上あってもよい。
【0014】
図1に示すように、直線駆動装置10は、基台12と、ねじ機構からなる駆動機構30と、可動部20及びガイド軸40を有する。図示しないモータからの動力がねじシャフト31に伝わり、ボールねじや台形ねじ等のねじ機構によりモータの回転力が直線運動に変換され、可動部20が直線運動を行う。図2は、本発明の第一実施形態の要部斜視図であり、便宜上、ガイド軸40を固定するナット16は省略されている。この図2に示すように、基台12と可動部20は外向きに開くU字状の溝14、24(以下、単に「溝」ということがある。)を有する。ガイド軸40は、これらのU字状の溝14、24に嵌合され、図1に示すようにガイド軸40の両端部からナット16、16によって基台12を挟持するように取付けられている。また、一対のガイド軸40、40が可動部20を挟持しており、可動部20の直線運動はガイド軸40によって案内される。図3に示すように、基台12の溝14の深さが、可動部20の溝24の深さよりも深い方が、ナット16の取付許容幅が大きくなるため、ガイド軸40の位置決めが容易になる。さらに本発明によれば、基台12の溝14とガイド軸40との取付ピッチのずれや、ガイド軸40に撓みが生じた場合等で、可動部20の運動によってガイド軸40に溝14の開口部方向への力が発生した場合のガイド軸の僅かなずれ、また、ガイド軸40の真直度の誤差、ガイド軸40、40の平行度のずれを許容することができる。
【0015】
図4は、本発明の第二実施形態の平面図と側面図である。駆動機構30はベルト機構からなり、2つの可動部20、20aを有している。図示しないモータからの動力がプーリ34に伝わり、ベルト33によってモータの回転力が直線運動に変換される。なお、他方の基台12には従動プーリ35が設けられている。ここで、可動部20、20aとベルト33とは、図5(a)、(b)に示すように、可動部20、20aで相対する面に留め具28及びビス28aによって連結されている。このため、可動部20、20aはモータの正転、逆転に応じて、接近、離反を繰返すことになる。なお、ねじ機構においては、片方の可動部の雌ねじ部22(図3を参照。)を逆ねじにすることによって同じ機能を得ることができる。
【0016】
図6は、本発明の第三実施形態の平面図である。駆動機構30、30aはねじ機構からなり、2つの可動部20、20aとそれぞれ連結されている。図7に示すように、駆動機構30のねじシャフト31は、可動部20の雌ねじ部22と螺合し、可動部20aの孔26aを貫通している。また、駆動機構30aのねじシャフト31aは、可動部20aの雌ねじ部22aと螺合し、可動部20の孔26を貫通している。このため、可動部20、20aの移動可能範囲において、それぞれの駆動機構30、30aを操作して、各可動部20、20aを任意の位置に移動させることができる。
【0017】
以上説明したように、直線駆動装置の基台及び可動部が、可動部の運動方向の左右側面に外向きに開くU字状の溝を有し、ガイド軸が可動部を狭持するようにU字状の溝に嵌合されて、基台に取付けられることで、円形状やC形のガイド部に比べて摺動抵抗を低減させることができ、また、円形状やC形のガイド部のようにガイド軸を掴持する構成と異なり、U字状の溝の範囲内でガイド軸のずれを許容できるため、可動部へのガイド軸のずれによる影響を少なくすることができる。さらに、U字状の溝が可動部の運動方向の左右側面の全長に渡って設けられるため、ガイド部の軸方向の長さが長くなり、ガイド軸とガイド部との接する長さが長くなるため、可動部の傾きやがたつきを抑えることができる。そして、ガイド軸を可動部の運動方向の左右側面に設け、駆動機構を一対のガイド軸の間に設ける構成のため、従来よりコンパクトである。
また、可動部を複数設けることで、例えば、複数の生産ラインに設置される場合に対応できるだけでなく、それぞれの可動部が接近、離反するクランプ装置とすることができる。さらに、複数の可動部に対応する別個の駆動機構を設ければ、それぞれの可動部の移動可能範囲において、それぞれの駆動機構30、30aを操作して、各可動部を任意の位置に移動させることができる直線駆動装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0018】
10 直線駆動装置
12 基台
14 U字状の溝
20 可動部
24 U字状の溝
30 駆動機構
40 ガイド軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、駆動機構と連結され直線運動する可動部と、該可動部を案内する一対のガイド軸を具え、
前記基台及び可動部が、該可動部の運動方向の左右側面に外向きに開くU字状の溝を有し、
前記ガイド軸が前記可動部を狭持するように前記U字状の溝に嵌合されて、前記基台に取付けられ、
前記駆動機構が前記一対のガイド軸の間に設けられていることを特徴とする、
直線駆動装置。
【請求項2】
前記可動部が複数設けられている、請求項1の直線駆動装置。
【請求項3】
前記複数の可動部に対応する別個の駆動機構が設けられている、請求項2の直線駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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