説明

直鎖状アルファオレフィンを調製するための触媒組成物およびプロセス

本発明は、エチレンのオリゴマー化のための触媒組成物であって、R’がアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキル基であり、Xが塩素または臭素であり、mが0から4までである、一般式MXm(OR’)4-mまたはMXm(OOCR’)4-mの遷移金属化合物、および有機アルミニウム化合物と環状アミド、好ましくは2−ピロリドンとの反応生成物を有してなる触媒組成物、並びにこの触媒組成物を利用した、直鎖状アルファオレフィンを調製するプロセスに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エチレンのオリゴマー化のための触媒組成物およびエチレンのオリゴマー化により直鎖状アルファオレフィンを調製するプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
4から20の炭素原子を有する直鎖状アルファオレフィンは、界面活性剤、可塑剤、合成潤滑剤およびポリオレフィンの製造における主原料である。高純度のアルファオレフィンは、低密度ポリエチレンの製造およびオキソ法において特に価値がある。この直鎖状アルファオレフィンは分岐状アルファオレフィンよりも反応性が高い;α炭素での分岐により、反応性は劇的に減少する。この点に関して、6から18の炭素原子を有する直鎖状アルファオレフィンは、特に有用であり、大量に広く用いられている。
【0003】
直鎖状オレフィンは直鎖状アルカンの脱水素化反応による生成物であるが、そのような生成物の大部分は内部オレフィンからなる。アルファオレフィンの調製は、主に、エチレンのオリゴマー化に基づく。
【0004】
これらの直鎖状アルファオレフィンは、通常、チーグラー型触媒の存在下でエチレンの触媒オリゴマー化により調製される。エチレンのオリゴマー化により、偶数の炭素鎖長を有する、幅広いLAO生成物が生成される。近年、メタロセン触媒を使用したより進歩したポリエチレンを開発する傾向により、コモノマーのアルファオレフィンがより一層要望されてきた。コモノマーは、密度を調節し、特に物理的性質を向上させるために、ポリエチレンに使用される。ブテン−1およびヘキセン−1は、高密度ポリエチレン(HDPE)のコポリマーの製造に用いられる。ブテン−1、ヘキセン−1およびオクテン−1は、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)のコポリマーの製造に用いられる。エチレンのオリゴマー化における大きな要因は、所望の選択率と生成物分布を得ることにある。触媒とプロセスの条件が、この分野において重要な役割を果たす。
【0005】
特許文献1には、特殊な二座リガンドと共に均一有機金属ニッケル系触媒を使用することが開示されている。エチレンのオリゴマー化は、1,4−ブタンジオールなどの極性酸素含有溶媒中で行われ、ここで、この触媒は溶性が高いが、最終生成物の炭化水素オリゴマーは溶性が低い。オリゴマー化は、120℃および14MPa(140バール)で行われる。このプロセスにより得られるオレフィンは非常に直鎖状であり、その分子量はシュルツ・フローリー分布にしたがう。したがって、このプロセスには、かなり強烈な圧力と温度の条件を必要とし、アルファオレフィンの幅広い分布を与えるという欠点がある。ヘキセン−1の選択率は約13質量%である。
【0006】
特許文献2には、乾燥ベンゼン溶媒中でアルミニウムセスキクロライドおよびトリエチルアルミニウムと共に無水塩化ジルコニウムを使用したジルコニウム/アルミニウム錯体に基づく触媒系が開示されている。これらの成分は、活性触媒錯体を形成するためにある期間に亘りアルゴン雰囲気下で撹拌される。この触媒には、おそらく調整剤として、チオフェンが加えられる。乾燥ベンゼン中で行われた、120℃および3.4MPaでのオリゴマー化の例は、長い鎖長を有するアルファオレフィンを製造する能力を示しており、その結果は以下のとおりである:C4−14.9質量%、C6−15.1質量%、C8−14.0質量%、C10〜C18−40.2質量%、C20+−14.2質量%およびワックス−1.6質量%。このプロセスの欠点は、軽質アルファオレフィン分画(特に、ヘキセン−1)の選択率が低いことである。別の欠点は、反応温度が高いことである。また、このプロセスの別の欠点は、溶媒として使用されるベンゼンが公知の発癌物質であることである。
【0007】
特許文献3には、アルキル化有機金属化合物、例えば、それぞれ、4,6および8の炭素原子を有する主要な直鎖状オレフィンの選択的生産のための、エチレンのオリゴマー化用の触媒の成分として都合よく使用できるアルキルアルミニウムハロゲン化物と組み合わされた、ジルコニウム系のスルホン酸錯体が記載されている。ヘキセン−1およびオクテン−1の混合物に特別に向けられたそのオリゴマー化触媒のそれらの選択率は、最良の実施例において、それぞれ、39質量%および25.9質量%である。この触媒の欠点は、活性が著しく低いことである。いくつかの実施例によれば、触媒の活性を満足なものとするには、Al/Zr比が高い(100より大きい)必要がある。
【0008】
さらに、特許文献4および5にも、一般式(RCOO)mZrCl4-mのカルボン酸ジルコニウムおよび式RnAlX3-nの有機アルミニウム化合物を含む触媒が教示されている。その触媒系の主な欠点は、ワックスおよび/または高分子(ポリエチレン、分岐状および/または架橋PE)などの望ましくない、問題となる副生成物が形成されることである。ワックスおよび/または高分子は、少量でさえも、形成されると、オリゴマーを製造する技術的プロセス全体に悪影響を及ぼす。何故ならば、副生成物は、C4〜C20オリゴマーの収率とその純度を低下させるだけでなく、反応装置内に蓄積する固体高分子を定期的に除去しなければならない限り、プロセス設備の稼働時間も低減させるからである。なお、その除去は、オリゴマー化プロセスを中断することにより、それゆえ、設備の稼働時間を犠牲にしてしか行うことができない。この触媒系の別の欠点は、助触媒/活性剤の消費量が多いことである。触媒/助触媒の比は、この触媒系におけるアルファオレフィンの分布の変更を可能にする主なパラメータである。この高い触媒/助触媒の比は、分岐状C10+分画の製造を抑えて、低分子量オリゴマーに有利に働き得る。この触媒系を使用して達成できる最大のヘキセン−1の選択率は約18質量%である。
【0009】
特許文献6には、アセタールとケタールの部類から選択された有機化合物とアルミニウムヒドロカルビルの塩素または臭素含有化合物と共に、ジルコニウム化合物からなる触媒の存在下で、エチレンを直鎖状アルファオレフィンに転化させるプロセスが記載されている。この触媒は、軽質アルファオレフィン、主にC4〜C10の形成では選択率は高いが、これらの化合物の中の生成物の分布は、ブテン−1の製造に偏りすぎている。実施例によれば、最も高いヘキセン−1の選択率は約31質量%であるのに対し、ブテン−1の選択率は約43質量%である。このプロセスの別の欠点は、ゆくゆくは反応装置内に蓄積し、長期の製造稼働を妨げる高分子を微量に形成することである。また、このプロセスの別の欠点は、触媒の活性が低いことである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第3644563号明細書
【特許文献2】米国特許第4783573号明細書
【特許文献3】国際公開第03/050126A1号パンフレット
【特許文献4】国際公開第80/00224号パンフレット
【特許文献5】独国特許発明第4338414号明細書
【特許文献6】米国特許第5496783号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の課題は、従来技術の欠点を克服した触媒組成物を提供することにあり、特に、同等以上の触媒活性を提供でき、かつヘキセン−1分画の選択率を増加させる触媒組成物を提供することにある。
【0012】
さらに、エチレンのオリゴマー化により直鎖状アルファオレフィンを調製するプロセスも提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
最初の課題は、エチレンのオリゴマー化のための触媒組成物であって、(i)R’がアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキル基であり、Xが塩素または臭素であり、mが0から4までである、一般式MXm(OR’)4-mまたはMXm(OOCR’)4-mを有する遷移金属化合物、および(ii)有機アルミニウム化合物と環状アミドとの反応生成物を有してなる触媒組成物により達成される。
【0014】
遷移金属化合物がジルコニウム化合物であることが好ましい。
【0015】
ジルコニウム化合物が、式(R2COO)mZrCl4-mを有し、ここで、R2がアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキル基であり、mが0から4までの範囲内の任意の数であるカルボン酸ジルコニウムであることがより好ましい。
【0016】
ある実施の形態において、有機アルミニウム化合物は、一般式R1nAlX3-nまたはAl2313を有し、ここで、R1は、1から20の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、BrまたはIを表し、nは1≦n≦2の範囲内の任意の数である。
【0017】
有機アルミニウム化合物が、Al(C253、Al2Cl3(C253、AlCl(C252またはそれらの混合物であることが好ましく、AlCl(C252がより好ましい。
【0018】
環状アミドが、一般構造
【化1】

【0019】
を有し、x=1から9である触媒組成物がさらに好ましい。
【0020】
環状アミドが、ε−カプロラクタム、2−ピロリドン、γ−バレロラクタムおよびそれらの混合物から選択されることがさらに好ましい。
【0021】
環状アミドが、式:
【化2】

【0022】
を有する2−ピロリドンであることが最も好ましく、ここで、Rは、独立して、水素、1から20の炭素原子を有するアルキル、6から18の炭素原子を有するアリール、7から14の炭素原子を有するアラルキルおよび2から9の炭素原子を有するヘテロシクリルからなる群より選択される。Rが水素であることがより好ましい。
【0023】
触媒組成物は電子供与体化合物をさらに含んでよく、この電子供与体化合物が、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、アニソール、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、チオフェンおよびそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましく、アニソールが最も好ましい。
【0024】
ある実施の形態において、遷移金属化合物と電子供与体化合物とのモル比は1:0.1から1:10までであり、1:0.1から1:2までがより好ましい。
【0025】
別の実施の形態において、有機アルミニウム化合物と環状アミドのモル比は1:(0.1〜1)であり、1:(0.1〜0.5)がより好ましい。
【0026】
本発明によれば、有機溶媒と触媒組成物の存在下でエチレンのオリゴマー化により直鎖状アルファオレフィンを調製するプロセスであって、触媒組成物が上述したようなものであるプロセスも提供される。
【0027】
意外なことに、環状アミドの添加、すなわち、有機アルミニウム化合物との反応生成物により、遷移金属化合物および有機アルミニウム助触媒に基づくエチレンオリゴマー化触媒系の生成物分布を変えられることが分かった。新たな触媒組成物では、アルファオレフィンの純度が高く、C4〜C10分画、特にC6分画の収率が高くなる。そして、これと同時に、反応装置内のワックス/高分子の形成が著しく減少する。それゆえ、本発明では、高収率で、軽質アルファオレフィンのC4〜C10、特に、ヘキセン−1の選択的調製のための触媒組成物を記載する。本発明によるプロセスについて、望ましい分子量範囲内の90%を超える高い線状性の直鎖状アルファオレフィン、例えば、C4〜C10のオリゴマーが製造できる。
【0028】
さらに、この触媒組成物は、高い活性と生産性を示し、所定の分子量範囲の直鎖状オリゴマーを製造するために、従来技術の触媒よりも、比較的少量の助触媒しか必要としないことが分かった。その上、長期の製造稼働が行われるプロセス中に、ワックス/高分子が全く形成されない。
【0029】
直鎖状アルファオレフィンの製造に使用される触媒組成物は、不活性有機溶媒中で使用されることが好ましい。適切な有機溶媒の例としては、トルエン、ベンゼン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、クロロトルエンなどの未置換またはハロゲンにより置換された、芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカンなどの脂肪族パラフィン系炭化水素;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環式炭化水素化合物;ジクロロエタン、ジクロロブタンなどのハロゲン化アルカンが挙げられる。所望のオレフィン生成物に対する選択率を最大にするために、生成物の分子量分布を調節するのに溶媒の混合物を使用してもよい。
【0030】
エチレンのオリゴマー化のプロセスを簡単にするために、遷移金属化合物と随意的な電子供与体化合物を混合し、何も変えずに少なくとも1年間に亘り維持することができる。もちろん、エチレンをC4〜C10アルファオレフィンに選択的にオリゴマー化するために、遷移金属化合物を、電子供与体なく使用して差し支えない。しかしながら、意外なことに、電子供与体を触媒組成物に加えると、ヘキセン−1の選択率に影響を与えずに、触媒活性をさらに少なくとも10%増加させられることが分かった。
【0031】
有機アルミニウム化合物と環状アミドの反応生成物である助触媒は、とても意外なことに、ヘキセン−1の選択率が高く、C4〜C10分画への選択的なエチレンのオリゴマー化に有用であることが分かった。
【0032】
本発明の追加の特徴および利点が、実施例に関する好ましい実施の形態の以下の詳細な説明から明らかになるであろう。
【0033】
実験条件:
全ての材料は、シュレンク技法または窒素充填グローブボックスのいずれかを使用して、窒素雰囲気下で取り扱った。窒素およびトルエンは、プラント供給源から供給され、必要に応じて、分子篩の追加の床により乾燥させた。
【実施例】
【0034】
カルボン酸ジルコニウムの合成は公知の方法によって行った。
【0035】
成分A(カルボン酸ジルコニウム)および成分B(アニソール)を、約1:0.1から約1:10のモル比、より好ましくは約1:0.1から約1:2のモル比で混合した。
【0036】
成分C(ジエチルアルミニウムクロライド、DEAC)および成分D(2−ピロリドン)のトルエン溶液を、約C:D=1:(0.1〜1)、より好ましくはC:D=1:(0.1〜0.5)のモル比で混合した。2−ピロリドンのトルエン溶液を、ジエチルアルミニウムクロライドに、減圧下で、不活性雰囲気(窒素)の存在下で、滴下によりゆっくりと加えた(発熱反応)。
【0037】
エチレンのオリゴマー化を以下のように行った:
調製した触媒溶液(成分AおよびB、CとDの反応生成物)を2リットルのステンレス鋼製反応装置に装填した。エチレンを、所望の圧力が達成されるまで反応装置に導入し、反応中ずっと所望の温度に維持した。エチレンの導入は、反応圧力を維持するのに必要な量で継続した。反応条件を維持しながら、反応を1時間に亘り継続した後、エチレンの供給を中断し、約20mlのエタノールを添加することによって、反応を停止した。反応混合物の温度を10℃にした後、この溶液のサンプルを、反応装置の底部に位置する弁により収集し、ガスクロマトグラフィーにより分析して、形成されたオレフィンの量と種類を決定した。エチレンの過圧をなくした後、反応装置を開き、可能性のある重合生成物について調査した。
【0038】
以下の実施例は、本発明の範囲を説明するために与えられたものである。当業者には分かるように、数多くの変更例が可能であり、それゆえ、本発明の範囲はそれに制限されるべきではない。
【0039】
それらの結果が、表1および2に要約されている。
【0040】
実施例1
200mlのトルエンを250mlの丸底フラスコに入れ、1:0.75のモル比でアニソールと予混された0.24ミリモルのZr(i−C37COO)4をこのフラスコに加えた。次いで、成分C/D=1:0.15のモル比を有する新たな助触媒溶液をこの混合物に加えた。Al/Zrのモル比は20であった。次いで、このように形成された触媒溶液を、不活性ガスを流した状態で、反応装置に移した。反応は、70℃と30バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。269gのLAOが形成され、収率は12294gLAO/gZrであった。ワックスや高分子は形成されなかった。
【0041】
実施例2
200mlのトルエンを250mlの丸底フラスコに入れ、1:0.75のモル比でアニソールと予混された0.24ミリモルのZr(i−C37COO)4をこのフラスコに加えた。次いで、成分C/D=1:0.25のモル比を有する新たな助触媒溶液をこの混合物に加えた。Al/Zrのモル比は20であった。次いで、このように形成された触媒溶液を、不活性ガスを流した状態で、反応装置に移した。反応は、70℃と30バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。122gのLAOが形成され、収率は5575gLAO/gZrであった。ワックスや高分子は形成されなかった。
【0042】
実施例3
200mlのトルエンを250mlの丸底フラスコに入れ、1:0.75のモル比でアニソールと予混された0.24ミリモルのZr(i−C37COO)4をこのフラスコに加えた。次いで、成分C/D=1:0.25のモル比を有する新たな助触媒溶液をこの混合物に加えた。Al/Zrのモル比は20であった。次いで、このように形成された触媒溶液を、不活性ガスを流した状態で、反応装置に移した。反応は、90℃と37バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。155gのLAOが形成され、収率は7084gLAO/gZrであった。ワックスや高分子は形成されなかった。
【0043】
実施例4
200mlのトルエンを250mlの丸底フラスコに入れ、1:0.75のモル比でアニソールと予混された0.24ミリモルのZr(i−C37COO)4をこのフラスコに加えた。次いで、成分C/D=1:0.17のモル比を有する新たな助触媒溶液をこの混合物に加えた。Al/Zrのモル比は40であった。次いで、このように形成された触媒溶液を、不活性ガスを流した状態で、反応装置に移した。反応は、60℃と30バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。129gのLAOが形成され、収率は5895gLAO/gZrであった。ワックスや高分子は形成されなかった。
【0044】
実施例5
200mlのトルエンを250mlの丸底フラスコに入れ、0.24ミリモルのZr(i−C37COO)4をこのフラスコに加えた。今回は、アニソールは使用しなかった。次いで、成分C/D=1:0.15のモル比を有する新たな助触媒溶液をこの混合物に加えた。Al/Zrのモル比は20であった。次いで、このように形成された触媒溶液を、不活性ガスを流した状態で、反応装置に移した。反応は、70℃と30バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。210gのLAOが形成され、収率は9597gLAO/gZrであった。ワックスや高分子は形成されなかった。
【0045】
実施例6(比較例)
200mlのトルエン、0.25ミリモルのZr(i−C37COO)4、およびストレートのジエチルアルミニウムクロライド(DEAC)(Al/Zr=40)を250mlの丸底フラスコ内で混合した。次いで、このように形成された触媒溶液を、不活性ガスを流した状態で、反応装置に移した。反応は、60℃と30バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。370gのLAOが形成され、0.3gの副生成物のポリエチレンが形成された。収率は16228gLAO/gZrであった。GCにより正確に分析できなかった多量のワックスが形成された。
【0046】
実施例7(比較例)
200mlのトルエン、0.25ミリモルのZr(i−C37COO)4、およびストレートのエチルアルミニウムセスキクロライド(EASC)(Al/Zr=35)を250mlの丸底フラスコ内で混合した。次いで、このように形成された触媒溶液を、不活性ガスを流した状態で、反応装置に移した。反応は、80℃と30バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。213gのLAOが形成された。LAOの収率は9342gLAO/gZrであった。微量の固体高分子が観察された。
【0047】
実施例8(比較例)
Al/Zr=17.5であることを除いて、実施例7と同じ工程を繰り返した。反応は、80℃と30バールのエチレン圧力で行った。オリゴマー化時間は60分であった。460gのLAOが形成され、0.2gの副生成物のポリエチレンが形成された。収率は20175gLAO/gZrであった。GCにより正確に分析できなかった多量のワックスが形成された。
【表1】

【表2】

【0048】
本発明の実施例によるオリゴマー化実験により、多量のC6が形成されて、アルファオレフィンの分布(質量パーセント)が改善されるのが表1および2から分かる。さらに、LAO分画の純度は、比較の実施例の結果と比べて、著しく改善されている。
【0049】
先の説明と特許請求の範囲に開示された特徴は、別々と、その任意の組合せの両方で、本発明をその様々な形態で実施するための素材であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレンのオリゴマー化のための触媒組成物であって、
(i) R’がアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキル基であり、Xが塩素または臭素であり、mが0から4までである、一般式MXm(OR’)4-mまたはMXm(OOCR’)4-mを有する少なくとも1種類の遷移金属化合物、および
(ii) 有機アルミニウム化合物と環状アミドとの反応生成物、
を有してなる触媒組成物。
【請求項2】
前記遷移金属化合物がジルコニウム化合物であることを特徴とする請求項1記載の触媒組成物。
【請求項3】
前記ジルコニウム化合物が、R2がアルキル、アルケニル、アリール、アラルキルまたはシクロアルキル基であり、mが0から4までの範囲内の任意の数である式(R2COO)mZrCl4-mを有するカルボン酸ジルコニウムであることを特徴とする請求項2記載の触媒組成物。
【請求項4】
前記有機アルミニウム化合物が、R1は、1から20の炭素原子を有するアルキル基であり、XはCl、BrまたはIを表し、nは1≦n≦2の範囲内の任意の数である一般式R1nAlX3-nまたはAl2313を有することを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項5】
前記有機アルミニウム化合物が、Al(C253、Al2Cl3(C253、AlCl(C252またはそれらの混合物であることを特徴とする請求項4記載の触媒組成物。
【請求項6】
前記環状アミドが、x=1から9である、一般構造
【化1】

を有することを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項7】
前記環状アミドが、ε−カプロラクタム、2−ピロリドン、γ−バレロラクタムおよびそれらの混合物から選択されることを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項8】
前記環状アミドが、式:
【化2】

を有する2−ピロリドンであり、Rは、独立して、水素、1から20の炭素原子を有するアルキル、6から18の炭素原子を有するアリール、7から14の炭素原子を有するアラルキルおよび2から9の炭素原子を有するヘテロシクリルからなる群より選択されることを特徴とする請求項7載の触媒組成物。
【請求項9】
電子供与体化合物をさらに含むことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項10】
前記電子供与体化合物が、酢酸エチル、アセト酢酸エチル、安息香酸エチル、アニソール、テトラヒドロフラン、1,2−ジオキサン、チオフェンおよびそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする請求項9記載の触媒組成物。
【請求項11】
前記遷移金属化合物と前記電子供与体化合物のモル比が、1:0.1から1:10までであることを特徴とする請求項9または10記載の触媒組成物。
【請求項12】
前記有機アルミニウム化合物と前記環状アミドのモル比が、1:(0.1〜1)であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の触媒組成物。
【請求項13】
有機溶媒と触媒組成物の存在下でのエチレンのオリゴマー化により直鎖状アルファオレフィンを調製するプロセスであって、前記触媒組成物が請求項1から12いずれか1項記載の触媒組成物であることを特徴とするプロセス。

【公表番号】特表2011−505244(P2011−505244A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536344(P2010−536344)
【出願日】平成20年11月11日(2008.11.11)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009495
【国際公開番号】WO2009/071164
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(507055615)リンデ アーゲー (29)
【氏名又は名称原語表記】LINDE AG
【出願人】(502132128)サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション (109)
【Fターム(参考)】