説明

相溶性ポリマー加工添加剤

【課題】ポリマー物質の溶融加工性を改良するための相溶性ポリマー加工添加剤を提供する。
【解決手段】ポリアルキレンオキサイドのような潤滑剤及びポリエチレンーポリアルキレンオキサイドブロックオリゴマーのような界面活性剤を含んで成る加工添加剤である。この加工添加剤を、ポリマーマトリックスに添加すると、その溶融加工性が改良される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー物質の溶融加工性を改良するために組成物及び方法に関し、より詳細にはポリマー物質の溶融加工性を改良するための相溶性ポリマー加工添加剤の使用に関する。ある態様では、界面活性剤を潤滑剤と組み合わせて相溶性ポリマー加工添加剤を形成する。好ましい態様では、界面活性剤は両親媒性のブロックポリマーであり、潤滑剤は親水性である。
【0002】
本発明者は、これらの加工添加剤は、インフレーション及び成型フィルム製造に一般的に使用されるポリオレフィンポリマーの加工性を改良するために特別の有用性を有することを見出した。本発明の加工添加剤は、セルロース性物質で充填されたものを含む充填ポリマーの加工性を改良するための特別の有用性も有する。
【背景技術】
【0003】
本発明は、ポリマーマトリックスを加工するためのコスト的に有利な解決方法を提供する。本発明は、溶融加工可能なポリマーマトリックスでの妨害物質の使用、及び従来のポリマー加工助剤及び潤滑剤の性能に及ぼす妨害物質の悪影響により生じる問題点に対処する。特許文献1は、カップリング剤をフルオロポリマーと組み合わせて、高度に充填されたポリオレフィンの物理的性質及び加工性を改良することを記載している。
【0004】
しかし、これらの効果を達成するためには、通常のフルオロポリマー加工添加剤(0.05〜0.1重量%)より高いレベルのカップリング剤中のフルオロポリマー(つまり1〜2重量%)が要求される。これは、特許文献1に記載された加工添加剤が、従来のフルオロポリマー加工添加剤とは異なった機構で機能するからであると推測できる。特に特許文献1の加工添加剤は、混合製剤の溶融強度を増加させて端部が裂けることに対する抵抗を上昇させる。PTFEを含むフッ素含有熱可塑性物質は充填ポリマーの溶融強度を改良し、特許文献1の発明でも使用されている。
【0005】
更に特許文献1は、比較的大きい分子量と高分散性指標を有するカップリング剤を開示している。これは、カップリング剤が、そのエンタングルメント分子量より大きいと、物理的性質を改良するためにより効果的だからであることが当業者に知られているからである。これにより、カップリング剤が、マトリックスと充填材間に良好な界面の結合を与えることを可能にする。
【0006】
しかしそのエンタングルメント分子量より大きいポリマーは、溶融体内で、そのエンタングルメント分子量より小さいポリマーよりゆっくりと移動することが知られている。これらの競合する力(つまり分子量及び拡散力)は、界面張力が小さい面でのカップリング剤の全体の効力を必然的に低下させる。インフレーションフィルム製造の場合、フルオロポリマーは高負荷レベルでは使用できず、これは、そのポリオレフィンマトリックスに対する固有の非相溶性の結果、フィルムに好ましくない曇りを与えるからである。
【0007】
従って1)妨害添加剤や充填材の存在下で、溶融欠陥を排除できる、2)フィルムに曇りを与えない、3)ポリマーマトリックスの機械的性質の悪影響を与えない、及び4)広範囲の加工条件下で有効である、加工添加剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際特許公開第WO20040254268号(サーノハウスら)
【特許文献2】米国特許明細書第4,159,975号(プレトリウスら)
【特許文献3】米国特許明細書第4,013,622号(デジュネアスら)
【特許文献4】米国特許明細書第4,855,360号(デュヘスネら)
【特許文献5】米国特許明細書第5,830,947号(ブロンら)
【0009】
【非特許文献1】C.ラウエンダール、"Polymer Extrusion," 第4版、ハンセン・ガードナー・パブリッシャーズ、2001年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の加工添加剤はこの問題に対し、コスト的に有利な解決法を与える。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ポリマー物質は、溶融加工されると、最終物質中に望ましくない欠陥を生じさせる粘弾性の特性を有する。これは特にポリマーが臨界せん断速度を超える速度で溶融加工されたときに明白になる。 これは押出成型体の表面に溶融欠陥(例えば溶融破損、表面粗さ、端部の裂け目形成、欠陥鮫皮)を生じさせる。
【0012】
共通の溶融欠陥は、押出成型体上の粗い表面で、溶融破損と呼ばれる。溶融破損は主として、ポリマーのレオロジ及び加工されるポリマーの温度及び速度に依存する。この現象は、充填材を含む妨害物質を含有するポリマー物質の場合に特に問題になる。ポリマーシステムに充填材を加えると、全体の溶融粘度が増加し、従ってポリマーの加工を困難にし、かつ溶融欠陥が顕著になる。
【0013】
溶融加工が可能なポリマー物質(以下、ポリマーマトリックスと称する)は、ある種の充填材及び/又は添加剤と混合されることがあり、これは両者が経済性を向上させ、加工される物質に所望の物理的特性を付与するからである。
充填材は、ポリマーホスト物質全体に混合された種々の有機又は無機物質を含む。例えば木質繊維や木粉は、ある種の炭化水素ポリマーとともに含有されて、溶融加工後の建築材料として好適な複合物を形成する。
【0014】
多くのポリマー物質中の溶融欠陥を減少させることができるフルオロポリマー加工添加剤が公知である。この添加剤は、加工機器上に活力のある被覆を形成し、かつ加工機器とポリマー物質間に界面スリップを形成することにより機能する。この場合の界面スリップは、ポリマー溶融物と加工機器間の表面張力、次いでせん断応力として定義される。フルオロポリマーは、熱可塑性組成物の加工性を改良し、溶融欠陥を除去することが知られている物質である。
【0015】
しかしフルオロポリマーは、反応性サイトを有する添加剤や充填材が存在すると、効果が減少するか全くなくなることも知られている。反応性サイトを有する添加剤や充填材は、フルオロポリマーと強い相互作用を起こし、適正に機能することを妨害する。フルオロポリマーは比較的高価であることも知られている。
【0016】
従って、溶融欠陥を除去するためには、より多くのフルオロポリマーを利用しなければならず、コスト的に有利な解決法とはいえない。その型を被覆する動的性質のため、フルオロポリマー加工添加剤は、ある「せん断速度の」範囲内、通常は200 s-1 から2000 s-1のみで効率的であることが知られている。
【0017】
しかし、その特定の加工タイプ、スループット速度及び機器の結果、多くの溶融加工は、ポリマーマトリックスを、高度又は低度のせん断に曝す範囲で操作が行われる。例えば、大きな断面で押出される加工(例えばパイプ押し出し)では、非常に遅いせん断速度(<100 s-1)が使用され、射出成型加工では、非常に速いせん断速度(>200s-1)が使用されることが多い。
【0018】
潤滑剤(ステアリン酸塩、ステアリン酸アミド、ワックス)でも同じ問題が生じる。潤滑剤は、製造される押し出し製品の全体の物理的性質を低下させることがあり、かつ効率的にするために比較的高い被覆レベルを必要とするという問題がある。従ってポリマーマトリックスの物理的性質に悪影響を与えない、費用効率が高くかつ非反応性の加工添加剤が要請されている。本明細書で開示される添加剤は、これらの問題に関する費用効率の高い解決法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
従来のポリマー加工助剤は、ポリマー溶融体と加工機器間に界面スリップを付与できると、溶融加工の分野で一般に認識されている物質である。多くのフルオロポリマーは、ビニリデン・ジフルオライド、ヘキサフルオロプロピレン及びテトラフルオロエチレンのモノマーから誘導されるホモ及びコポリマーに基づいて、前記機能を提供することが知られている。
【0020】
市販の組成物中で使用されると、ポリマー加工添加剤は、フィルム、シート、パイプ、ワイヤ及びケーブルを含むポリマー製品の加工を改良するために有効であることが知られている。組成物中に低レベルでフルオロポリマー加工助剤を添加すると、溶融破損のような表面欠陥を除去することにより、製品の表面品質を改良し、内部及び/又は外部での型のビルドアップの発生を防止し、加工で誘発されるゲル粒子形成を減少させるか解消させることが知られている。
【0021】
このタイプのポリマー加工助剤を使用することにより、溶融体中の圧力と、ポリマー溶融体の見掛け粘度を減少させることができ、これにより押し出しスループット全体に良影響を与え、あるいは利用する加工温度を低下させることができる。本発明の加工添加剤は、効率を改善し、従来認識されているフルオロポリマー加工添加剤より経済的である。
【0022】
しかし、ビニリデン・ジフルオライドを含有するフルオロポリマーのメチレン水素は酸性が強く、水素結合又は酸―塩基相互作用を行うことのできる表面化学特性を有する潤滑剤と強い相互作用を行うことが知られている。この理由のため、この物質は、有機(例えばセルロース性物質)又は無機妨害物質(例えば滑石、シリカ、アルミナ、ガラス繊維)を含むポリマーシステムの加工性を改良することに関して効果がなくなる。
【0023】
従来認識されていたポリマーマトリックスや妨害物質は、溶融加工用に適したポリマー混合物を形成するために利用される。ポリマーマトリックスは、炭化水素又は非炭化水素ポリマーである。ある態様では、ポリマーマトリックスは、オレフィン系ポリマーである。妨害物質は、ポリマー工業で、一般に潤滑剤や添加剤として利用される有機又は無機物質(滑石、雲母、ガラス繊維、アルミナ、シリカ)である。
【0024】
本発明の他の態様では、セルロース性物質が、ポリマーマトリックス中で妨害物質として機能して、ポリマー混合物を形成する。このような混合物は、建築材料として多くの用途が見出されている。しかしポリマーと木の複合体(PWC)は、その組成中に40〜70%の木粉や木質繊維を含むことが多いことが知られている。その結果、PWCの溶融粘度は非常に高く、極端に加工性に欠けることがある。PWC敷板押出しでは、押出体は、端部の裂け目形成として参照される現象を被る。
【0025】
この現象は、加工速度が速過ぎて、押出複合体表面に習慣的で大きな裂け目が生じることにより起きる。本明細書で開示している添加剤は、セルロース性物質で充填されたポリマーマトリックス中のトルクを効率的に減少させ、溶融圧力を減少させ、かつ溶融欠陥を改善する。
【0026】
本発明は、界面活性剤と潤滑剤を含んで成る相溶性ポリマー加工添加剤に関する。好ましくは態様では、界面活性剤は両親媒性のブロックオリゴマーであり、潤滑剤は親水性である。本発明の両親媒性のブロックオリゴマーは、ポリオレフィン相溶性のセグメントと潤滑剤相溶性のセグメントを有することが最も好ましい。
【0027】
このような物質の例は、ポリエチレンーポリエチレン・オキサイドブロックオリゴマー(テキサス州、シュガーランドのベーカー・ペトロライト・インコーポレーテッドで製造)である。本発明で使用する好ましい潤滑剤は、ポリアルキレンオキサイドポリマー又はオリゴマーから誘導される。これらの物質を組み合わせると、優秀で費用効率の高い、ポリマーマトリックス用の加工添加剤が製造される。
【0028】
本発明は、更に新規組成物を溶融加工する方法に関する。本発明で使用できる溶融方法の非限定的例は、インフレーション・フィルム押出し、鋳造フィルム押出し、異形押出し、繊維押出し、射出成型、ブロー成型、回転成型及びバッチ混合のような方法を含む。
【0029】
本明細書で使用される次の用語は下記のように定義される。
「溶融欠陥」は、高温及びせん断力の存在下で、ポリマーマトリックスを加工する際に生じる望ましくない問題(例えば溶融破損、表面粗さ、端部の裂け目形成、欠陥鮫皮)を意味する。
【0030】
「ポリマー加工添加剤」は、組成物に添加されたときに、組成物の溶融加工性を改良できる(例えば溶融欠陥を減少させる)物質を意味する。
「ポリマーマトリックス」は、溶融加工可能なポリマー物質を意味する。
【0031】
「妨害物質」は、除去の加工添加剤や潤滑剤に親和性を有する反応性表面又はサイトを含む物質を意味する。
「溶融加工可能な組成物」は、押出し、又は射出成型のような従来のポリマー加工技術により、特に高温で溶融加工される組成物を意味する。
【0032】
「界面活性剤」は、ポリマーマトリックス中の潤滑剤の分散性及び均一性を、それらの物質間の界面張力を減少させることにより、改良するオリゴマーを意味する。
「潤滑剤」は、ポリマーマトリックスの溶融加工温度より低い融点を有し、かつ溶融加工条件下でその溶融粘度が10000センチポイズ未満である物質を意味する。
【0033】
「オリゴマー」は、その全体の分子量が、対応するホモポリマーに関する臨界的なエンタングルメント分子量、つまり10000g/モルより小さい、一連の結合されたモノマー繰り返しユニット(つまりAAAA)を意味する。
「ポリマー」は、その全体の分子量が、その臨界的なエンタングルメント分子量、つまり10000g/モルでより小さい、一連の結合されたモノマー繰り返しユニット(つまりAAAA)を意味する。
【0034】
「ブロックオリゴマー」は、少なくとも2種の互いに混じりあわないモノマーの繰り返しユニットを含む構造(つまりAAAA−BBBB)を有するオリゴマーを意味する。
「親水性」は、極性(つまり水と混合可能又は水に分散可能)を意味する。
【0035】
「疎水性」は、非極性(つまり油と混合可能又は油に分散可能)を意味する。
「溶融加工可能な組成物」は、押出し、又は射出成型のような従来のポリマー加工技術により、特に高温で溶融加工される組成物を意味する。
【0036】
「セルロース性物質」は、セルロースから誘導される天然又は人工の物質である。セルロース性物質は、例えば木粉、木質繊維、おが屑、経木、農業繊維、新聞紙、亜麻、麻、穀物のへた、ケナフ麻、黄麻、サイザル麻、木の実の殻及びこれらの組み合わせを含む。
【0037】
本発明の組成物は、溶融加工ポリマーマトリックスが付加的に妨害物質を含んでいるときに発生する溶融欠陥を減少させる。本発明の目的のためには、溶融加工組成物は、組成物の少なくとも一部が溶融状態で加工されることができるものである。
【0038】
従来の溶融方法及び機器を本発明の組成物の加工に使用できる。溶融加工方法の非限定的例は、インフレーション・フィルム押出し、鋳造フィルム押出し、異形押出し、射出成型、バッチ混合、ブロー成型及び回転成型を含む。
【0039】
ポリマーマトリックスはホストポリマーとして機能し、溶融加工可能な組成物の主要成分である。従来から溶融加工に適していると認識されている多種のポリマーが、ポリマーマトリックスとして有用である。ポリマーマトリックスは、特にに妨害物質と組み合わされると溶融加工を行いにくいと考えられているポリマーも含み、炭化水素及び非炭化水素ポリマーの両者が含まれる。
【0040】
ポリマーマトリックスの有用な例は、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエーテル、ポリカーボナート、ポリケトン、ポリウレア、ポリビニル樹脂、ポリアクリレート及びポリメタアクリレートを含むが、これらに限定されない。
【0041】
好ましいポリマーマトリックスは、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン(PP)、ポリオレフィンコポリマー(例えばエチレンーブテン、エチレンーオクテン、エチレンービニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(例えば高衝撃ポリスチレン、アクリロニトリルーブタジエンースチレンコポリマー)、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキシド、ポリウレタン、熱可塑性物質、エポキシ樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ビニルエステル及びそれらの組み合わせを含む。最も好ましいポリマーマトリックスはポリオレフィンである。
【0042】
リサイクルプラスチックから誘導されるポリマーマトリックスは、低コストであることが多いため、好ましく使用できる。しかしこれらの物質は、複数の廃棄源から来る物質から誘導されるため、非常に異なった溶融レオロジーを有する。
【0043】
このことが物質を加工する上で非常に問題になる。このような物質を妨害物質で加工することは更に問題である。本明細書で説明している添加剤組成物は、この問題への解決法を提供する。この解決法は、環境へ廃棄する代わりに、非常な低コストでリサイクルプラスチックを有用な製品に変換できるため、重大な商業的有用性を有する。
【0044】
ポリマーマトリックスは、一般的に約30重量%以上の量で溶融加工可能な組成物中に含まれる。ポリマーマトリックスの量は、例えばポリマーのタイプ、妨害物質のタイプ、加工機器、加工条件及び所望の最終製品に依存して変化することを当業者は認識するであろう。
【0045】
有用なポリマーマトリックスは、酸化防止剤、光安定剤、衝撃吸収剤、バイオサイド、相溶化剤、難燃剤、可塑剤、粘着付与剤、着色剤及び顔料を含む種々の熱可塑性ポリマー及びそれらのブレンドを含む。ポリマーマトリックスは、溶融加工可能な組成物中に、粉末、ペレット、粒子又は他の任意の押出し形状で組み入れられる。
【0046】
妨害物質は、一般に従来のポリマー加工助剤の有効性に悪影響を及ぼす、任意の充填剤又は添加剤で、溶融加工組成物で使用される。特に妨害物質は、溶融加工可能組成物の溶融破損に実質的な影響を及ぼす。
【0047】
妨害物質の非限定的な例は、顔料、炭素繊維、ヒンダードアミン系光安定剤、粘着防止剤、ガラス繊維、カーボンブラック、酸化アルミニウム、シリカ、雲母、セルロース性物質、又は反応性又は極性基を有する1又は2以上のポリマーを含む。反応性又は極性基を有する1又は2以上のポリマーの例は、ポリアミド、ポリイミド、官能性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリル酸塩及びメタアクリル酸塩を含むが、これらに限定されない。
【0048】
本発明の一態様では、妨害物質はセルロース性物質である。セルロース性物質は、一般に溶融加工可能組成物中で使用され、特定の物理的性質を与えるか、最終製品のコストを減少させる。セルロース性物質は、一般に種々のアスペクト比、化学的組成、密度及び物理的特性を有する。セルロース性物質の非限定的例は、木粉、木質繊維、おが屑、経木、新聞紙、紙、亜麻、麻、穀物のへた、ケナフ麻、黄麻、サイザル麻、木の実の殻を含む。セルロース性を組み合わせたもの、セルロース性物質と他の妨害物質を組み合わせたものも溶融加工可能組成物で使用できる。
【0049】
溶融加工可能組成物中の妨害物質の量は、ポリマーマトリックス及び最終製品の望ましい物理的性質に応じて変化する。溶融加工の当業者は、特定のポリマーマトリックスの応じた妨害物質の適切な量を選択することができ、これにより望ましい物理的性質の最終製品を得ることができる。一般的に、妨害物質は溶融加工可能組成物中に約80重量%まで添加できる。更に妨害物質は、特定のポリマーマトリックス及び最終製品の用途に応じて種々の形態で添加できる。
【0050】
本発明の添加剤である界面活性剤は、両親媒性となるように選択される。好ましい態様では、界面活性剤は、親水性及び疎水性のセグメントを有する。本発明の界面活性剤は、オリゴマー性である。本発明の好ましい態様では、界面活性剤として、両親媒性のブロックオリゴマーが使用される。
【0051】
本発明で有用な界面活性剤の非限定的な例は、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、末端官能性オリゴマー及びブロックオリゴマーを含む。市販のポリエチレンーポリエチレンオキサイドブロックポリマー及び末端官能性(例えばヒロドキシル、カルボン酸)ポリエチレンオリゴマーは、本発明で特に使用可能な界面活性剤の例である。
【0052】
両親媒性ブロックオリゴマーは、本発明の好ましい界面活性剤である。ブロックオリゴマーは、繰り返しモノマーユニット(例えばAAAA−BBBB)を有するオリゴマーとして定義される。本発明では両親媒性ブロックオリゴマーが好ましい。両親媒性ブロックオリゴマーは、分離された少なくとも2個のブロックを有する。両親媒性ブロックオリゴマーの非限定的例は、親水性ブロック及び疎水性ブロック(例えばポリエチレンーポリエチレンオキサイド)を含むオリゴマーを含む。
【0053】
本発明の潤滑剤は、従来から溶融加工で利用されている任意数の含むである。潤滑剤は、親水性、疎水性又は両親媒性である。潤滑剤の非限定的例は、炭化水素ワックス、ステアリン酸金属塩、ステアリン酸、アルキルアミド、ポリアルキレンオキサイド及びグリコールである。
【0054】
ポリアルキレンオキサイドポリマーは、潤滑性を有することが知られている。特許文献2は、熱可塑性樹脂用潤滑剤としてのポリエチレングリコール(PEG)の使用を記載している。特許文献3は、ポリエチレンフィルムの加工助剤としてのPEGの有用性を記載している。特許文献4及び特許文献5は、フルオロポリマーは、ポリオキシアルキレンポリマーと組み合わされると、特に妨害物質(例えばヒンダードアミン系光安定剤)を含む熱可塑性システム用として相乗効果を有することを教示している。
【0055】
この現象は、極性のポリオキシアルキレンポリマーが、妨害添加剤に優先的な親和性を有し、これによりフルオロポリマーと妨害添加剤間の相互作用を限定し、その効率を改善するからと説明されている。驚くべきことに、本発明者は、ポリアルキレンオキサイドのような潤滑剤を相溶化することにより、溶融欠陥を減少させる効果が大きく改善されることを見い出した。従って、従来の潤滑剤や界面活性剤単独と比べて、相溶性加工添加剤の濃度を低下させて溶融欠陥を減少させることが必要になる。
【0056】
溶融加工可能組成物内に存在するポリマー加工助剤の量は、いくつかの変数、例えばポリマーマトリックス、妨害物質のタイプ及び量、溶融加工機器のタイプ、加工条件等に依存する。当業者は、ポリマー加工助剤を好適な量に選定して、ポリマーマトリックスと溶融加工機器間の界面スリップの所望の減少を達成できる。好ましい態様では、ポリマー加工助剤を、ポリマーマトリックスの0.01から3.0重量%使用する。より好ましくは、ポリマー加工助剤の使用レベルは0.05から1.0重量%で、最も好ましくは0.05から0.25重量%である。
【0057】
潤滑剤と界面活性剤の比は変化する。しかし好ましい態様では、潤滑剤と界面活性剤の比は1:1より大きく、より好ましくは1.5:1より大きく、最も好ましくは2:1より大きい。
【0058】
この溶融加工可能組成物は、種々の方法で調製できる。例えばポリマーマトリックス及びポリマー加工添加剤を、該加工添加剤をホストポリマー全体に均一に分散させられる複合ミル、バンバリ(Banbury)ミキサ又は混合押出成型機のようなプラスチック工業で汎用される任意の混合手段で混合できる。加工添加剤とホストポリマーは例えば粉末、ペレット又は粒状の形態で使用できる。
【0059】
混合操作は加工添加剤の融点又は軟化点を超える温度で行うのが最も好ましいが、成分を粒子として固体状態で乾燥混合し、次いで乾燥混合物を2軸押出成型機に供給して成分の均一分散を行うことも可能である。生成する溶融混合物は、最終製品の形状に直接押出成型されても、所望の粒子サイズ又は粒子分布になるようにペレット化又は他の方法で粉末化されて押出成型機に供給されても良く、この押出成型機は一般に混合物を溶融加工して最終製品の形状とする単軸押出成型機である。
【0060】
溶融加工は一般に、180から280℃の温度で行われるが、最適な操作温度は、組成物の融点、溶融粘度及び熱的安定性に依存して選択される。異なったタイプの溶融加工機器、例えば押出し成型機が、本発明の溶融加工可能組成物を加工するために使用される。本発明での使用に適した押出し成型機は、例えば非特許文献1に記載されている。
【0061】
ポリマーマトリックスは、一般的に約20重量%以上の量で溶融加工可能な組成物中に含まれる。ポリマーマトリックスの量は、例えばポリマーのタイプ、充填剤のタイプ、加工機器、加工条件及び所望の最終製品に依存して変化することを当業者は認識するであろう。
【0062】
溶融加工可能組成物は他の添加剤を含んで組成物に特定の寄与をするようにしても良い。このような添加剤の非限定的な例は、酸化防止剤、潤滑剤、光安定剤、衝撃吸収剤、熱安定剤、バイオサイド、相溶化剤、難燃剤、可塑剤、粘着付与剤、着色剤及び顔料を含む。
【0063】
ポリマーマトリックスは、溶融加工可能組成物中に、粉末、ペレット、粒状又は他の押出し成型の形態で使用できる
【実施例】
【0064】
【表1】

【0065】
[サンプル調製及び特性化]
【0066】
[I.加工添加剤配合]
次のプロトコルに従って加工添加剤化合物を調製した。
加工添加剤及び樹脂(LLDPE)をプラスチック製バッグ中で乾燥混合し、定量供給機を使用して27mmの互いに噛み合った共回転2軸押出成型機に重力下で供給し、3ストランドダイ(ニュージャージー州サマービルのアメリカン・レイストリッツ・コーポレーションから入手)で加工した。
【0067】
全てのサンプルを次の温度プロファイルを使用して、12.5kg/hrの全処理能力で、150rpmのスクリュ−速度で加工した。領域1=150℃、領域2=165℃、領域3=180℃、領域4=190℃、領域5=190℃、領域6=190℃、ダイ=190℃。生成したストランドを押出成型し、1/4“までのペレットにした。
【0068】
[II.異形押出の検討]
押出成型されたプロファイルを、次のプロトコルに従って調製しかつテストした。
木質繊維を0.1mmHgの真空オーブン中200°Fで4時間予熱した。樹脂(PP又はHDPE)及び木質繊維をプラスチックバッグ中で乾燥混合し、定量供給機を使用して27mmの互いに噛み合った共回転2軸押出成型機に重力下で供給し、3ストランドダイ(ニュージャージー州サマービルのアメリカン・レイストリッツ・コーポレーションから入手)で加工した。
【0069】
全てのサンプルを次の温度プロファイルを使用して、12.5kg/hrの全処理能力で、150rpmのスクリュ−速度で加工した。領域1=150℃、領域2=165℃、領域3=180℃、領域4=190℃、領域5=190℃、領域6=190℃、ダイ=190℃。生成したストランドを押出成型し、1/4のペレットにした。
【0070】
次いで複合ペレットを好適な量の加工添加剤化合物と乾燥混合し、2.54cm×0.635cmの異形ダイを装着した27mmの円錐2軸押出成型機(ニュージャージー州サウス・ハッケンザックのC.W.ブラベンダー社から入手)に重力下で供給した。全てのサンプルを次の温度プロファイルを使用して、100rpmのスクリュ−速度で加工した。領域1=140℃、領域2=185℃、領域3=190℃、領域4=190℃。これらの加工条件下における圧力及びトルクを各サンプルについて記録した。生成したプロファイルの表面品質を分析し、溶融欠陥の程度を決定した。
【0071】
[III.キャピラリ押出成型の検討]
樹脂(例えばLLDPE)を好適な量の加工添加剤化合物と乾燥混合し、0.254cmの円形開口を有するキャピラリダイを装着した27mmの円錐2軸押出成型機(ニュージャージー州サウス・ハッケンザックのC.W.ブラベンダー社から入手)に重力下で供給した。全てのサンプルを次の温度プロファイルを使用して、種々のスクリュ−速度で加工した。領域1=145℃、領域2=185℃、領域3=190℃、領域4=190℃。これらの加工条件下における圧力及びトルクを各サンプルについて記録した。生成したストランドの表面品質を分析し、溶融欠陥の程度を決定した。
【0072】
[IV. インフレーションフィルム押出成型の検討]
樹脂(例えばLLDPE)を好適な量の加工添加剤化合物と乾燥混合し、インフレーションフィルムダイと取り出しユニットを装着した1.9cmの単軸押出成型機(ニュージャージー州サウス・ハッケンザックのC.W.ブラベンダー社から入手)に重力下で供給した。全てのサンプルを次の温度プロファイルを使用して、種々のスクリュ−速度で加工した。領域1=145℃、領域2=185℃、領域3=190℃、領域4=190℃。これらの加工条件下における圧力及びトルクを各サンプルについて記録した。生成したストランドの表面品質を分析し、溶融欠陥の程度を決定した。
【0073】
【表2】

【0074】
【表3】

【0075】
【表4】

【0076】
【表5】

【0077】
【表6】

【0078】
上記実施例から、本発明の加工添加剤は、圧力及びトルクを減少させ、妨害物質が存在してもしなくてもポリマーマトリックスの加工性を改良することが分かる。
【0079】
前述した本発明の基本原理及び詳細な説明から、当業者であれば本発明に種々の修正が可能であることを理解するであろう。従って本発明の範囲は、次の特許請求の範囲及びその均等物によってのみ限定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)潤滑剤、及び
b)界面活性剤
を含んで成る加工添加剤。
【請求項2】
潤滑剤が、親水性である請求項1に記載の添加剤。
【請求項3】
潤滑剤が、疎水性である請求項1に記載の添加剤。
【請求項4】
潤滑剤が、ポリアルキレンオキサイドオリゴマー又はポリマーである請求項1に記載の添加剤。
【請求項5】
界面活性剤が、ブロックポリマーである請求項1に記載の添加剤。
【請求項6】
界面活性剤が、ポリエチレンーブロックーポリアルキレンーオキサイドオリゴマーである請求項5に記載の添加剤。
【請求項7】
界面活性剤が、末端官能性オリゴマーである請求項1に記載の添加剤。
【請求項8】
界面活性剤が、5000g/モル未満の全分子量を有する請求項1に記載の添加剤。
【請求項9】
界面活性剤が、2500g/モル未満の全分子量を有する請求項1に記載の添加剤。
【請求項10】
界面活性剤が、1000g/モル未満の全分子量を有する請求項1に記載の添加剤。
【請求項11】
a)ポリマーマトリックス
b)潤滑剤、及び
c)界面活性剤
を含んで成る加工添加剤。
【請求項12】
ポリマーマトリックスが、ポリオレフィン(高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、ポリプロピレン)、ポリオレフィンコポリマー(エチレンーブテン、エチレンーオクテン、エチレンービニルアルコール)、ポリスチレン、ポリスチレンコポリマー(高衝撃ポリスチレン、アクリロニトリルーブタジエンースチレンコポリマー)、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、フルオロポリマー、液晶ポリマー、ポリアミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリフェニレンオキサイド、ポリウレタン、熱可塑性物質である請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
ポリマーマトリックスが、リサイクル物質から誘導される請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
ポリマーマトリックスが、ポリオレフィンである請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
ポリオレフィンが、リサイクル物質から誘導される請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
a)ポリマーマトリックス、
b)妨害物質、
c)潤滑剤、及び
d)界面活性剤
を含んで成る組成物。
【請求項17】
妨害物質が、顔料、炭素繊維、光安定剤、熱安定剤、帯電防止剤、ハイドロタルサイト、粘着防止剤、ガラス繊維、カーボンブラック、酸化アルミニウム、シリカ、雲母、炭酸カルシウムの少なくとも1種、又は1又は2以上の反応性又は極性基を含む請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
1又は2以上の反応性又は極性基が、ポリアミド、ポリイミド、官能性ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアクリレート、及びメタアクリレートを含む請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
妨害物質が、木粉、木質繊維、農業繊維、おが屑、経木、新聞紙、紙、亜麻、麻、穀物のへた、ケナフ麻、黄麻、サイザル麻、木の実の殻、又はこれらの組み合わせを含むセルロース性物質である請求項16に記載の組成物。
【請求項20】
妨害物質が、組成物の0から80重量%である請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
妨害物質が、組成物の25から65重量%である請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
請求項11又は16の組成物を溶融加工して製品を製造する方法。
【請求項23】
溶融加工後に、組成物が、溶融加工による欠陥を有しない請求項22に記載の方法。
【請求項24】
溶融加工が、フィルム押し出し、異形押し出し、射出成型及びブロー成型を含む請求項22に記載の方法。
【請求項25】
当該方法が、フィルム、繊維、建材及び自動車部品の製造に利用される請求項22に記載の方法。

【公表番号】特表2009−536683(P2009−536683A)
【公表日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−509830(P2009−509830)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/011185
【国際公開番号】WO2007/136552
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(508333620)
【Fターム(参考)】