説明

省エネ除湿システム

【課題】制御性及びメンテナンス性を向上させ、イニシャルコストを低減する。
【解決手段】本発明の省エネ除湿システム20は、除湿セクション22の出口側における処理空気の露点温度が所定値の時の、パージセクション23を通過する低温空気が取得したエネルギーと再生セクション24を通過する高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを除湿セクション22を通過する処理空気の風量で除して得たエネルギー収支値と、再生セクション24を通過する高温空気の風量を除湿セクション22を通過する処理空気の風量で除して得た再生風量比と、の第1の関係式を予め格納し、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生風量比と第1の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における処理空気の推定露点温度が所定の露点温度の時の第1の関係式に一致するように、再生風量比を制御する制御装置を備えていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除湿剤が含浸された回転可能な除湿ローターを通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿し、低湿度の環境を提供する省エネ除湿システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、リチウムイオン二次電池や電気二重層キャパシタなどの製造工場では、空気中に含まれる水分が製品の歩留まり・性能・信頼性の低下に影響を及ぼすため、露点温度が−50℃DP以下の非常に低湿度の環境が必要とされている。
【0003】
そのため、従来、前記製造工場には、例えば、図5又は図6に示されているように、ガラス繊維ペーパーやセラミックペーパーにシリカゲルやゼオライトなどの除湿剤が含浸されて円筒状に成形された除湿ローター1を備えた各種除湿システムが設置されている。
【0004】
この場合、除湿ローター1は、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクョン2と、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクション3と、通過する低温空気により冷却されるパージセクション4とを備えており、常時回転しながら各セクション2,3,4において連続的に除湿、再生、パージを行い、低露点空気を供給するようになっている。
【0005】
この種の具体的な除湿システムとしては、通常、図5又は図6に示されている方式のものが採用されることが多い。この方式の除湿システムは、プレクーラー5で予冷除湿された外気(OA)と製造工場からの還気(RA)が処理空気として給気ファン6によって除湿ローター1に供給され、除湿ローター1の除湿セクション2では、前記処理空気中の水分が吸着除去され、アフタークーラー7で冷却された後、製造工場の環境内に供給される。
【0006】
一方、除湿ローター1のパージセクション4を通過した空気は、再生ヒーター8で所定温度(140℃程度)まで加熱されて高温空気となった後、排気ファン9によって再生セクション3に搬送され、除湿ローター1を加熱して水分を脱着させる。その後、再生セクション3を通過した空気は、図5に示されているようにそのまま外部へ排気されるか、或いは、図6に示されているように一部が再生ヒーター8の上流側に戻るように循環される。
【0007】
しかしながら、この方式の除湿システムは、湿分負荷に応じて運転を制御しないため、ランニングコストが高くなるという問題点がある。このような除湿システムでは、最もエネルギー消費量が大きいのは、再生セクション3において除湿ローター1に吸着した水分を脱着する際に消費されるエネルギー(再生エネルギー)であり、この再生エネルギーはランニングコスト全体の50〜60%を占める。一方、必要とされる再生エネルギーは、湿分負荷によって大きく異なり、例えば冬期、或いは夜間の無人時には、湿分負荷が小さくなるため、必要な再生エネルギーは小さくて済む。このため、再生エネルギーを湿分負荷に応じて制御する除湿システムが各種提案されている。
【0008】
例えば、除湿セクションの出口側の露点温度を測定する露点計を設置し、この露点計により測定された露点温度が所定の露点温度となるように、再生セクションを通過する風量(再生風量)、再生セクションの入口側の温度(再生温度)、又は除湿ローターの回転数を制御する除湿システムがある(特許文献1参照)。
【0009】
また、除湿セクションの入口側の絶対湿度(露点温度)を測定する絶対湿度計(露点計)を設置し、この絶対湿度計(露点計)により測定された絶対湿度(露点温度)から除湿セクションの出口側の露点温度を予測し、この露点温度が所定の露点温度となるように、再生風量又は再生温度を制御する除湿システムがある (特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特許第3266326号公報
【特許文献2】特開2007−260506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記した特許文献1の除湿システムの場合、以下のような問題点がある。
【0012】
すなわち、低露点空気を測定する露点計には、通常、静電容量式露点計や鏡面冷却式露点計が使用されるが、静電容量式露点計の場合、測定誤差が大きく応答速度も遅いため、本来の露点温度と異なった露点温度で再生風量又は再生温度の制御が行われ、所定の露点温度より大幅に高くなってしまう可能性がある。
【0013】
一方、鏡面冷却式露点計の場合には、静電容量式露点計と比べて、測定誤差が小さく応答速度も速いが、鏡面の汚れなどにより測定誤差や応答速度が大幅に低下するため、定期的なメンテナンスが必要になる。また、鏡面冷却式露点計の金額は静電容量式露点計よりの約5〜10倍となり、イニシャルコストが高くなるといった問題もある。
【0014】
また、上記した特許文献2の除湿システムの場合、除湿セクションの入口側の絶対湿度(露点温度)を測定するため、上記した特許文献1の除湿システムより測定レンジの高い絶対湿度計(露点計)で測定することができるが、絶対湿度計(露点計)が必要なことに変わりはないため、測定精度、応答性、メンテナンス性及びイニシャルコストにおいて、上記した特許文献1の除湿システムの場合と同様の問題がある。
【0015】
本発明は、上記した課題を解決すべきなされたものであり、測定精度が良く、応答速度が速く、制御性が良く、メンテナンス性に優れ、イニシャルコストが安価な除湿システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記した目的を達成するため、本発明は、除湿剤が含浸された回転可能な除湿ローターを備えた省エネ除湿システムであって、前記除湿ローターは、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクションと、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクションと、通過する低温空気により冷却されるパージセクションと、を備え、前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記パージセクションを通過する前記低温空気が取得したエネルギーと前記再生セクションを通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得たエネルギー収支値と、前記再生セクションを通過する前記高温空気の風量を前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得た再生風量比と、の第1の関係式を予め格納し、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生風量比と前記第1の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が所定の露点温度の時の第1の関係式に一致するように、再生風量比を制御する制御装置を備えていることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、除湿剤が含浸された回転可能な除湿ローターを備えた省エネ除湿システムであって、前記除湿ローターは、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクションと、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクションと、通過する低温空気により冷却されるパージセクションと、を備え、前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記パージセクションを通過する前記低温空気が取得したエネルギーと前記再生セクションを通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得たエネルギー収支値と、前記再生セクションの入口側における前記高温空気の温度である再生温度と、の第2の関係式を予め格納し、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生温度と前記第2の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が所定の露点温度の時の第2の関係式に一致するように、再生温度を制御する制御装置を備えていることを特徴とする。
【0018】
さらに、本発明は、除湿剤が含浸された回転可能な除湿ローターを備えた省エネ除湿システムであって、前記除湿ローターは、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクションと、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクションと、通過する低温空気により冷却されるパージセクションと、を備え、前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記パージセクションを通過する前記低温空気が取得したエネルギーと前記再生セクションを通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得たエネルギー収支値と、前記再生セクションを通過する前記高温空気の風量を前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得た再生風量比と、の第1の関係式を予め格納し、該第1の関係式に一致するように再生風量比を制御すると共に、前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記エネルギー収支値と、前記再生セクションの入口側における前記高温空気の温度である再生温度と、の第2の関係式を予め格納し、該第2の関係式に一致するように再生温度を制御する制御装置を備え、該制御装置は、前記第1の関係式に基づく再生風量比の制御を前記第2の関係式に基づく再生温度の制御より優先して行い、前記再生風量比の制御を行っても、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生風量比と前記第1の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が前記所定の露点温度の時の前記第1の関係式に一致しないと判断した場合に、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生温度と前記第2の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が前記所定の露点温度の時の前記第2の関係式に一致するように前記再生温度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、測定精度が良く、応答速度が速く、制御性が良く、メンテナンス性に優れ、イニシャルコストが安価な省エネ除湿システムを提供することができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態に係る省エネ除湿システムを示す説明図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る省エネ除湿システムにおいて、エネルギー収支値と再生風量比との関係を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る省エネ除湿システムにおいて、エネルギー収支値と再生温度との関係を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る省エネ除湿システムにおいて、再生セクションの出口側の空気の温度と除湿セクションの出口側の空気の露点温度との関係を示す図である。
【図5】従来の省エネ除湿システムを示す説明図である。
【図6】従来の別の省エネ除湿システムを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る省エネ除湿システムについて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施の形態に係る省エネ除湿システムを示す説明図である。この除湿システム20は、シリカゲルやゼオライトなどの除湿剤がガラス繊維ペーパーやセラミックペーパーに含浸されて円筒状に成形された除湿ローター21を備えており、この除湿ローター21はモータ等の駆動手段(図示省略)によって所定の速度で回転される。
【0023】
除湿ローター21は、仕切板などによって、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクション22と、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクション24と、通過する低温空気により冷却されるパージセクション23と、に分割されている。
【0024】
外部と除湿ローター21の除湿セクション22の入口側部分とは第1のダクト25により接続され、第1のダクト25には外部側から空気の流れ方向に沿って順に、第1の風量調整ダンパ(VD)26、プレクーラー27、給気ファン28がそれぞれ設けられている。給気ファン28の下流側には第1のダクト25から第2のダクト29が分岐接続されており、第2のダクト29は除湿ローター21のパージセクション23の入口側部分に接続されている。そして、第2のダクト29のパージセクション23の近傍にはパージセクション23の入口側の空気の温度を測定する第1の温度計30が設けられ、この第1の温度計30には熱電対や白金測温度抵抗体などが使用される。
【0025】
除湿ローター21の除湿セクション22の出口側と低湿度の環境が要求される空間(例えば、ドライルーム)とは第3のダクト31により接続され、第3のダクト31にはアフタークーラー32が設けられている。
【0026】
除湿ローター21のパージセクション23の出口側部分と除湿ローター21の再生セクション24の入口側部分とは第4のダクト33により接続され、第4のダクト33のパージセクション23の近傍にはパージセクション23の出口側の空気の温度を測定する第2の温度計34が設けられ、この第2の温度計34には熱電対や白金測温度抵抗体などが使用される。また、第4のダクト33には再生ヒーター35が設けられ、第4のダクト33の再生セクション24の近傍には再生セクション24の入口側の空気の温度を測定する第3の温度計36が設けられ、この第3の温度計36には熱電対や白金測温度抵抗体などが使用される。
【0027】
除湿ローター21の再生セクション24の出口側部分と外部とは第5のダクト37により接続され、第5のダクト37の再生セクション24の近傍には再生セクション24の出口側の空気の温度を測定する第4の温度計38が設けられ、この第4の温度計38には熱電対や白金測温度抵抗体などが使用される。また、第5のダクト37には排気ファン39及び第2の風量調整ダンパ(VD)40が設けられている。
【0028】
再生ヒーター35の上流側の第4のダクト33と排気ファン39の下流側の第5のダクト37とは第6のダクト41により接続されて循環ラインが形成され、第6のダクト41に循環ダンパ42が設けられている。
【0029】
このような構成を備えた除湿システム20において、第1のダクト25を介して外部から処理空気として導入された外気(OA)はプレクーラー27で予冷除湿された後、給気ファン28によって、回転する除湿ローター21に供給される。除湿ローター21に供給された前記処理空気のうち、所定風量の処理空気が第1のダクト25を介して除湿セクション22を通過し、残りの風量の処理空気が第2のダクト29を介してパージセクション23を通過する。
【0030】
除湿ローター21は、除湿セクション22を通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿し、該除湿された処理空気はアフタークーラー32によって冷却された後、給気(SA)として前記低湿度の環境が要求される空間に供給される。
【0031】
一方、パージセクション23を通過した処理空気は低温空気として除湿ローター21を冷却した後、第6のダクト41(循環ライン)を流通する空気と合流される。そして、この合流した空気は、再生ヒーター35によって加熱された後、高温空気として除湿ローター21の再生セクション24を通過し、第5のダクト37を通り、排気ファン39によって排気(EA)として外部に排出される。この時、第5のダクト37を流通する空気の一部は第6のダクト41(循環ライン)を通り、除湿ローター21の再生セクション24の上流側に戻され、上記したように第4のダクト33を流通する空気と合流される。
【0032】
次に、本発明の実施の形態に係る除湿システム20の制御について説明する。
【0033】
図1に示されているように、除湿システム20には、制御装置43が設けられており、第1〜第4の温度計30,34,36,38、再生ヒーター35、排気ファン39、及び循環ダンパ42はそれぞれ制御装置43と電気的に接続されている。
【0034】
制御装置43には、記憶部(図示省略)が設けられており、この記憶部には、図2に示されているように、除湿セクション22の出口側における前記処理空気の露点温度が所定値(図2では、−50℃DP、−55℃DP、−60℃DP)の時の、パージセクション23を通過する前記低温空気が取得したエネルギーと再生セクション24を通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを除湿セクション22を通過する処理空気の風量Q1で除して得たエネルギー収支値と、再生セクション24を通過する前記高温空気の風量Q3を除湿セクション22を通過する前記処理空気の風量Q1で除して得た再生風量比と、の第1の関係式が予め格納されている。
【0035】
また、前記記憶部には、図3に示されているように、除湿セクション22の出口側における前記処理空気の露点温度が所定値(図3では、−50℃DP、−55℃DP、−60℃DP)の時の、前記エネルギー収支値と、再生セクション24の入口側における前記高温空気の温度である再生温度T3と、の第2の関係式が予め格納されている。
【0036】
例えば、除湿セクション22の出口側における前記処理空気の所定の露点温度が−50℃DPの場合、先ず、制御装置43は、除湿ローター21が運転されている間、次式(1)に従って、第1の温度計30により実際に測定したパージセクション23の入口側の空気の温度T1と、第2の温度計34により実際に測定したパージセクション23の出口側の空気の温度T2と、パージセクション23の入口側と出口側の差圧を微差圧計(図示省略)により実際に測定して算出されたパージセクション23を通過する風量Q2と、から算出したパージセクション23の損失エネルギーと、第3の温度計36により実際に測定した再生セクション24の入口側の空気の温度T3と、第4の温度計38により実際に測定した再生セクション24の出口側の空気の温度T4と、再生セクション24の入口側と出口側の差圧を微差圧計(図示省略)により実際に測定して算出された再生セクション24を通過する風量Q3と、から算出した再生セクションの取得エネルギーと、の差分のエネルギーを、除湿セクション22の入口側と出口側の差圧を微差圧計(図示省略)により実際に測定して算出された除湿セクション22を通過する風量Q1で除してエネルギー収支値を算出する。
【0037】
エネルギー収支値(kJ/m)={(T3−T4)℃)×Q3m/h×ρkg/m×CpkJ/℃・kg}−{(T2−T1)℃×Q2m/h×ρkg/m×CpkJ/℃・kg}÷Q1m/h・・・・・・(1)
ここで、上式(1)中のT1はパージセクション23の入口側の空気の温度、T2はパージセクション23の出口側の空気の温度、T3は再生セクション24の入口側の空気の温度、T4は再生セクション24の出口側の空気の温度、ρは空気密度、Cpは定圧比熱である。
【0038】
また、制御装置43は、除湿ローター21が運転されている間、次式(2)に従って、上記したように実際に測定して算出された再生セクション24を通過する風量Q3を上記したように実際に測定して算出された除湿セクション22を通過する前記風量Q1で除して再生風量比を算出する。
【0039】
再生風量比=Q3m/h÷Q1m/h・・・・・・(2)
次いで、制御装置43は、このように算出したエネルギー収支値及び再生風量比と図2に示す露点温度−50℃DPの時の第1の関係式とにより推定した除湿セクション22の出口側における前記処理空気の推定露点温度が所定の露点温度−50℃DPの時の第1の関係式に一致するように、循環ダンパ42の開度及び又は排気ファン39のインバーター周波数を制御し、再生風量比を制御する。
【0040】
次いで、このように制御装置43が再生風量比の制御を行っても、前記処理空気の推定露点温度が前記所定の露点温度−50℃DPの時の第1の関係式と一致しないと制御装置43が判断した場合には、制御装置43は、前記算出したエネルギー収支値及び再生温度と図3に示す露点温度−50℃DPの時の第2の関係式とにより推定した除湿セクション22の出口側における前記処理空気の推定露点温度が、図3に示す露点温度−50℃DPの時の第2の関係式に一致するように、再生ヒーター35の出力を制御し、再生セクション24を通過する前記高温空気の再生温度を制御する。
【0041】
より具体的には、例えば、制御装置43は、パージセクション23を通過する前記風量Q2と再生セクション24を通過する前記風量Q3が等しくなり、再生風量比が最小となっても、前記処理空気の推定露点温度が露点温度−50℃DPより低いと判断した場合には、再生セクション24を通過する前記高温空気の再生温度を下げるように再生ヒーター35の出力を制御する。
【0042】
このように、本発明の実施の形態に係る除湿システム20によれば、エネルギー収支値と再生条件(すなわち、再生風量比又は再生温度)との関係式を予め求めておき、推定した除湿セクション22の出口側における処理空気の推定露点温度が所定の露点温度より高い場合には再生エネルギーを増やし、前記推定露点温度が前記所定の露点温度より低い場合には再生エネルギーを減らすことで、常に最小のエネルギーで除湿ローター21の再生を行うことができる。
【0043】
また、制御装置43による再生風量比の制御と再生温度の制御とを比較した場合、消費エネルギーの削減効果が大きいのは、再生風量比の制御であるため、上記したように再生風量比の制御を再生温度の制御より優先して行うことにより、公知の従来技術(図5又は図6参照)と比べて40%以上の再生エネルギーを削減することが可能となる。したがって、上記した本発明の実施の形態に係る除湿システム20によれば、大幅なランニングコストの削減を図ることができる。
【0044】
さらに、本発明の実施の形態に係る除湿システム20によれば、制御装置43がエネルギー収支値及び再生風量比を温度計と差圧計の測定値から算出しており、測定精度が良く、応答速度も速いため、制御性の向上を図ることができ、所定の露点温度から外れることなく安定的に低露点温度の空気を所定の環境内に確実に供給することができる。
【0045】
さらに、上記した本発明の実施の形態に係る除湿システム20によれば、従来の露点計を用いる除湿システムと比べて、イニシャルコストの低減化やメンテナンス性の向上を図ることができる。
【0046】
このように、上記した本発明の実施の形態において、制御装置43は、エネルギー収支値及び再生風量比又は再生温度と前記第1の関係式又は前記第2の関係式とにより除湿セクション22の出口側の空気の露点温度を推定しているが、再生セクション24を通過する高温空気が損失したエネルギーだけで除湿セクション22の出口側の空気の露点温度を推定することは困難である。これは、再生風量比によっては、図4に示すように、除湿セクション22の出口側の空気の露点温度に拘わらず、再生セクション24の出口側の空気の温度がほぼ一定となるためである。また、同様の理由により、パージセクション23を通過する低温空気が取得したエネルギーだけで除湿セクション22の出口側の空気の露点温度を推定することも困難である。
【0047】
なお、上記した本発明の実施の形態では、パージセクション23を通過する前記低温空気が取得したエネルギーと再生セクション24を通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを除湿セクション22を通過する処理空気の風量Q1で除して得たエネルギー収支値と、再生セクション24を通過する前記高温空気の風量Q3を除湿セクション22を通過する前記処理空気の風量Q1で除して得た再生風量比と、の関係式を第1の関係式と定義しているが、これは、除湿ローター21のサイズが変わっても対応できるようにしたためであり、例えば、除湿セクション22を通過する前記処理空気の風量Q1で除することなく、パージセクション23を通過する前記低温空気が取得したエネルギーと再生セクション24を通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを前記エネルギー収支値とし、該エネルギー収支値と、再生セクション24を通過する前記高温空気の風量Q3と、の関係式を第1の関係式と定義しても良い。
【0048】
また、同様に、除湿セクション22を通過する前記処理空気の風量Q1で除することなく算出した前記エネルギー収支値と、再生セクション24の入口側における前記高温空気の温度である再生温度T3と、の関係式を第2の関係式と定義しても良い。
【0049】
さらに、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る除湿システムにおける好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。さらに、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。
【符号の説明】
【0050】
20 除湿システム
21 除湿ローター
22 除湿セクション
23 パージセクション
24 再生セクション


【特許請求の範囲】
【請求項1】
除湿剤が含浸された回転可能な除湿ローターを備えた省エネ除湿システムであって、
前記除湿ローターは、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクションと、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクションと、通過する低温空気により冷却されるパージセクションと、を備え、
前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記パージセクションを通過する前記低温空気が取得したエネルギーと前記再生セクションを通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得たエネルギー収支値と、前記再生セクションを通過する前記高温空気の風量を前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得た再生風量比と、の第1の関係式を予め格納し、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生風量比と前記第1の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が所定の露点温度の時の第1の関係式に一致するように、再生風量比を制御する制御装置を備えていることを特徴とする省エネ除湿システム。
【請求項2】
除湿剤が含浸された回転可能な除湿ローターを備えた省エネ除湿システムであって、
前記除湿ローターは、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクションと、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクションと、通過する低温空気により冷却されるパージセクションと、を備え、
前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記パージセクションを通過する前記低温空気が取得したエネルギーと前記再生セクションを通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得たエネルギー収支値と、前記再生セクションの入口側における前記高温空気の温度である再生温度と、の第2の関係式を予め格納し、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生温度と前記第2の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が所定の露点温度の時の第2の関係式に一致するように、再生温度を制御する制御装置を備えていることを特徴とする省エネ除湿システム。
【請求項3】
除湿剤が含浸された回転可能な除湿ローターを備えた省エネ除湿システムであって、
前記除湿ローターは、通過する処理空気から水分を吸着して該処理空気を除湿する除湿セクションと、通過する高温空気により加熱されて水分が脱着される再生セクションと、通過する低温空気により冷却されるパージセクションと、を備え、
前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記パージセクションを通過する前記低温空気が取得したエネルギーと前記再生セクションを通過する前記高温空気が損失したエネルギーとの差分のエネルギーを前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得たエネルギー収支値と、前記再生セクションを通過する前記高温空気の風量を前記除湿セクションを通過する前記処理空気の風量で除して得た再生風量比と、の第1の関係式を予め格納し、該第1の関係式に一致するように再生風量比を制御すると共に、前記除湿セクションの出口側における前記処理空気の露点温度が所定値の時の、前記エネルギー収支値と、前記再生セクションの入口側における前記高温空気の温度である再生温度と、の第2の関係式を予め格納し、該第2の関係式に一致するように再生温度を制御する制御装置を備え、
該制御装置は、前記第1の関係式に基づく再生風量比の制御を前記第2の関係式に基づく再生温度の制御より優先して行い、前記再生風量比の制御を行っても、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生風量比と前記第1の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が前記所定の露点温度の時の前記第1の関係式に一致しないと判断した場合に、実際の測定により得られたエネルギー収支値及び再生温度と前記第2の関係式とにより推定した除湿セクションの出口側における前記処理空気の推定露点温度が前記所定の露点温度の時の前記第2の関係式に一致するように前記再生温度を制御することを特徴とする省エネ除湿システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−34944(P2013−34944A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173208(P2011−173208)
【出願日】平成23年8月8日(2011.8.8)
【出願人】(000191319)新菱冷熱工業株式会社 (78)
【Fターム(参考)】