省燃費運転評価装置
【課題】 簡単かつ安価な構成でありながら、よりきめ細かく、運転者の運転に対する省燃費運転であるか否かの評価を行うことができる省燃費運転評価装置を提供する。
【解決手段】 このため、本発明に係る省燃費運転評価装置は、運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かを判断し省燃費運転が行われていると判断される場合には省燃費評価点を加点する一方で、省燃費運転が行われていないと判断される場合には省燃費評価点を減点するようにした車両の省燃費運転評価装置であって、運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、車両の走行抵抗に応じて変化されることを特徴とする。
【解決手段】 このため、本発明に係る省燃費運転評価装置は、運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かを判断し省燃費運転が行われていると判断される場合には省燃費評価点を加点する一方で、省燃費運転が行われていないと判断される場合には省燃費評価点を減点するようにした車両の省燃費運転評価装置であって、運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、車両の走行抵抗に応じて変化されることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。例えば、運転状態が省燃費運転であるか否かを判断し、省燃費運転が行われている場合には省燃費運転度合い(評価)を加点し、省燃費運転が行われていない場合には省燃費運転度合い(評価)を減点するような省燃費運転評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、運転者に対して省燃費運転促進のために、省燃費運転ができているか否かを判断し、省燃費運転ができている場合にはエコ運転点数を加点し、省燃費運転ができていない場合にはエコ運転点数を減点し、現在の得点をメーターや外付けの表示器に表示し、運転者に省燃費運転を促すようにした省燃費運転評価装置などが知られている(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−122927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここにおいて、省燃費運転評価装置の一例としては、例えば、運転者がアクセルペダルを踏み込み過ぎてエコ加速度(省燃費走行に適した車両加速度)より大きな加速度が生じているか否かを判断し、踏込み過ぎの場合にはアクセル警報を発することによりアクセルペダルの踏み込み過ぎを是正させるよう運転者に促す一方で、アクセル警報を発生させないような運転態様であったり、或いはアクセル警報が発生しても直ちにアクセル開度を是正するような運転態様である場合にはエコ運転点数を加点するといったことが想定されるが、走行路面勾配が変化した場合や、車両重量変化の大きい商用車(トラック、バスなど)の場合のように車両重量が変化した場合などには、アクセルペダルの踏込み過ぎかどうかを判断することが難しくなる。
【0005】
また、例えば運転者のエンジン回転速度の引っ張り過ぎ(すなわちシフトアップタイミングの遅れ)を防止するため、走行中にエンジン回転速度が所定以上に高くなった場合、シフトアップ警報を発することにより、シフトアップするよう運転者に促すことなどを行なう一方で、シフトアップ警報を発生させないような運転態様であったり、或いはシフトアップ警報が発生しても直ちにシフトアップを行うような運転態様である場合にはエコ運転点数を加点するといったことが想定されるが、走行路面勾配や車両重量などの車両走行条件(車両走行抵抗)が変化する場合があり、例えば従来の手法でシフトアップ警報を発すると、シフトアップ後に車両が力不足に陥り、そのシフト位置(変速段位置)では円滑な走行が行なえなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価な構成でありながら、よりきめ細かく、運転者の運転に対する省燃費運転であるか否かの評価を行うことができる省燃費運転評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明に係る省燃費運転評価装置は、
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かを判断し、省燃費運転が行われていると判断される場合には省燃費評価点を加点する一方で、省燃費運転が行われていないと判断される場合には省燃費評価点を減点するようにした車両の省燃費運転評価装置であって、
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、車両の走行抵抗に応じて変化されることを特徴とする。
【0008】
本発明において、運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、省燃費評価点の大きさに応じて変化されることを特徴とすることができる。
【0009】
本発明において、内燃機関がアイドリング中であることが、省燃費評価点を減点する対象であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、運転者に違和感を与えることなく、よりきめ細かく、適切な省燃費運転を運転者に対して案内することができる省燃費運転案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る省燃費運転案内装置を備えた車両の駆動系及び制御系を例示したシステム構成図である。
【図2】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置において用いられるエコ加速度マップの一例を示す図である。
【図3】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置において実行されるアクセル警報を発する制御を説明するフローチャートの一例である。
【図4】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置においてエコ加速度を車両総重量により補正するための重量ゲインの一例を示す図である。
【図5】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置において車両総重量に応じて変更されるエコ加速度マップの一例を示す図である。
【図6】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置においてエコ加速度を走行路面勾配により補正するための路面勾配ゲインの一例を示す図である。
【図7】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置におけるシフトアップ警報を発する制御を説明するためのブロック図の一例である。
【図8】同上実施の形態に係る変速段位置に応じたシフトアップ回転速度の設定マップの一例を示す図である。
【図9】同上実施の形態に係る省燃費運転評価装置におけるエコ運転カウントアップの一例を説明するためのブロック図である。
【図10】同上実施の形態に係る省燃費運転評価装置においてエコレベル(省燃費評価点の大きさ)に応じた累積時間の設定(カウントアップゲインの設定)の一例を示す図である。
【図11】同上実施の形態に係る省燃費運転評価装置におけるエコ運転カウントダウンの一例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0013】
本実施の形態に係る省燃費運転案内装置を説明するために、車両の駆動系の主要部(内燃機関1、クラッチ機構4、変速機2、車両用(或いは自動変速制御用)電子制御ユニット10、各種センサ類など)の構成を図1に概略的に示すが、図1に示したように、当該省燃費運転案内装置としての制御を司るECU(電子制御ユニット)10には、車速センサ11等の検出信号が入力されている。
【0014】
ここにおいて、符号3はシフト機構であり、符号4はクラッチ機構であり、符号11は車速センサであり、符号12はGセンサである。
【0015】
本実施の形態では、図2に示すようなマップがECU10内のメモリに記憶されている。
このマップには、車速に応じたエコ加速度(省燃費走行に適した目標車両加速度)が設定されており、ECU10では、車速センサ11の検出信号に基づいて取得される現在の車速に基づいてマップを参照して現在車速に応じたエコ加速度を取得し、取得されたエコ加速度と、Gセンサ12の検出信号に基づいて取得される実際の車両加速度と、を比較して、実際の車両加速度がエコ加速度を超えている場合には、アクセルペダルを踏込み過ぎているとして、メーターパネル内やその近傍の運転者が認知し易い位置にアクセル警報を発することで(例えばレベルバーを表示したり、警告灯を表示したり、警告音などを発することで)、省燃費運転を促して運転者にアクセルペダルを戻させるような制御を行う。
【0016】
ここで、アクセルペダルの踏込み量は、運転者の加速要求度合いの一例に相当する。
【0017】
なお、Gセンサ12を省略して、車速センサ11の検出信号(車速)を時間微分して車両加速度を取得する構成とすることも可能である。
【0018】
具体的には、省燃費運転案内手段として機能するECU10では、例えば、図3に示すようなフローチャートを実行する。
【0019】
ステップ(図ではSと記している。)1では、車速センサ11の検出信号に基づいて実際の車速或いは車速に関連する情報(車速関連情報)を取得する。当該ステップ1及び車速センサ11が、車速情報取得手段に相当する。
【0020】
ステップ2では、ステップ1にて取得した車速或いは車速関連情報に基づいて、図2に示したマップを参照して、現在車速に応じて設定されているエコ加速度を取得する。
【0021】
ステップ3では、Gセンサ12の検出信号に基づいて現在の車両加速度を取得する。なお、車速センサ11から求めた車速を時間微分などして現在の車両加速度を取得することもできる。当該ステップ3及びGセンサ12(或いは車速センサ11)が、車両加速度情報取得手段に相当する。
【0022】
ステップ4では、ステップ2で取得したエコ加速度と、ステップ3で取得した実際の車両加速度と、を比較する。
【0023】
当該ステップ4にて、エコ加速度≧実際の車両加速度と判断された場合で、省燃費運転が行われているとして、本フローを終了する。
【0024】
一方、ステップ4にて、エコ加速度<実際の車両加速度と判断された場合には、ステップ5へ進み、ステップ5では、アクセルペダルを踏込み過ぎているとして、アクセル警報を発することで(例えばレベルバーを表示したり、警告灯を表示したり、警告音などを発することで)、運転者に省燃費運転を促してアクセルペダルを戻させるような表示制御を行って、本フローを終了する。
【0025】
上記ステップ2、ステップ4、ステップ5が、省燃費運転案内手段に相当する。
【0026】
なお、本実施の形態において、車速に応じて設定記憶されているエコ加速度は、実験等を行い、実際の走行路における燃費の良い加速度を数値化して用いている。ただし、走行シミュレーション等により燃費の良い加速度を求めてエコ加速度として用いることもできる。
【0027】
本実施の形態では、アクセルペダルの踏込み量、エンジン回転速度、シフト位置(変速段位置)などに拘わらず、車速に応じてエコ加速度を設定するので、低速から高速まで実際に省燃費運転を実現できる加速度を設定できると同時に、円滑な省燃費運転の実現を可能にしている。
【0028】
すなわち、本実施の形態によれば、例えば、同一車速においてシフト位置(変速段位置)が異なる場合やアクセルペダルの踏込み量が大きい場合でも、シフト位置やエンジン回転速度やアクセルペダルの踏込み量に関係なく、車速にのみ基づいて省燃費運転を実現できるエコ加速度を設定するので、省燃費運転のための頻繁な情報提供が行われることがなく、忙しい操作を運転者に対して要求するようなこともないので、適切な情報提示により運転者に違和感を与えることなく、余裕のある操作による円滑な省燃費運転の実現に貢献することができる。
【0029】
ところで、積載量が少なく車両総重量が小さい場合や下り坂の走行時(車両走行抵抗が小さいとき)にはアクセル警報が出やすくなる一方で、積載量が多く車両総重量が大きい場合や上り坂の走行時(車両走行抵抗が大きいとき)にはアクセル警報が出難くなる。
【0030】
従って、よりきめ細かな省燃費運転の実現が要求されるような場合には、車両総重量や路面状況等に応じてエコ加速度を変更或いは補正する構成とすることが望まれる。
【0031】
このような場合、例えば、運転者等が操作画面やスイッチボタン等を介して現在の積載量(予測値など)をマニュアル入力したり、運転者等が路面勾配を予測して路面勾配情報を運転者等が操作画面やスイッチボタン等を介してマニュアル入力し、その入力データに基づいて車速に応じて設定されているエコ加速度を補正(変更)するような構成とすることができる。
【0032】
ところで、車両総重量の変動の大きい大型車などの場合、空車(約6ton)から積車(約25ton)まで、比較的大きな差があるため、実際にはその走行条件では省燃費運転となっていても、頻繁にアクセル警報が発せられる場合があり、またそのアクセル警報に従ってアクセルペダルを戻してしまうと円滑な車両走行に支障を来たすおそれがあるなど、運転者に違和感を与えるおそれがあるため、自動的にエコ加速度を補正することができれば便利である。
【0033】
このため、本実施の形態では、ECU10は、実際の車両総重量を推定により求め、推定結果に基づいて例えば図4に示すようなマップを参照して重量ゲインを取得し、取得した重量ゲインをエコ加速度に乗算等することで、車両総重量に応じてエコ加速度を補正することができるようになっている。
このような構成が、目標省燃費加速度重量補正手段に相当する。
【0034】
車両総重量の推定方法としては、種々のものが採用可能であるが、例えば、特開2002−13620号公報に記載されている変速時車両質量推定方法によって推定される変速時車両推定質量やその平均値を利用することができる。
【0035】
また、例えば、特開2008−201401号公報に記載されている車両質量推定方法を利用することができる。このものは、変速操作開始前(駆動力が駆動輪に伝達されている状態、例えば、クラッチ接続中)の車両加速度と、変速操作中(駆動力が駆動輪に伝達されない状態、例えば、クラッチ切断中)の車両加速度と、から推定される車両推定質量(変速時車両推定質量)dRWMを得て、当該得られた変速時車両推定質量dRWMを平均化し、この平均化された変速時車両推定質量RWMに基づいて車両走行路面の勾配を推定し、当該推定された勾配を加速式の質量公式に代入して車両推定質量dMAMを得て、これを平均化して平均値MAMを得ることにより、車両推定質量を真値に近づけていくといった推定方法で、変速機会が少ない場合でも、高精度に車両質量を推定することができ有益である。
【0036】
このようにして車両総重量に応じてエコ加速度が補正される場合、例えば、図5に示すように、エコ加速度マップ線が車両総重量に応じて変動されることになる。
【0037】
結果として、本実施の形態では、車両総重量が大きい場合にはエコ加速度は小さく、車両総重量が小さい場合にはエコ加速度は大きく設定されることになるため、運転者の加速に対する期待に対して乖離しない範囲で省燃費運転の案内を実現することができることになる。
【0038】
更に、車両総重量(車両質量)が取得されると、運動方程式に従い、走行路面勾配も推定により取得することができる。
【0039】
従って、本実施の形態に係るECU10は、実際の走行路面勾配を推定により求め、推定結果に基づいて例えば図6に示すようなマップを参照して路面勾配ゲインを取得し、取得した路面勾配ゲインをエコ加速度に乗算等することで、走行路面勾配に応じてエコ加速度を補正することができるように構成されることができる。
このような構成が、目標省燃費加速度勾配補正手段に相当する。
【0040】
このように、本実施の形態によれば、車両走行抵抗(車両総重量や走行路面勾配)に応じて、車速に応じたエコ加速度を補正(変更)することができるので、よりきめ細かで精度の高い省燃費運転の案内を行うことができる。
【0041】
本発明は、所謂マニュアルトランスミッションの他、運転者或いは制御装置からの変速指示に従って自動的にクラッチ機構を接断しつつ変速機を変速する機械式自動変速機や、駆動源と変速機の間にトルクコンバータを備えた自動変速機を備えた車両についても適用可能である。
【0042】
また、本実施の形態では、このようなアクセル警報と組み合わせて、シフトアップ警報(運転者にシフトアップを促す警報)を発する構成を採用し、これにより、より一層、きめ細かく省燃費運転を運転者に対して案内することができるように構成されている。
【0043】
すなわち、本実施の形態において、アクセル警報が発せられている状況で、エンジン回転速度が所定以上である場合には、省燃費運転のためにシフトアップ警報を発して運転者がそれに応じてシフトアップを実行しても、加速力に余裕がある状態であるから、車両が力不足となって円滑な走行ができなくなるような状態に陥ることはない。
【0044】
このため、図7のブロック図に示すように、シフトアップ警報を発する図7の条件1として示したように、アクセル警報ON、かつ、実際のエンジン回転速度>シフトアップ回転速度である場合には、シフトアップ警報をONするようになっている。
【0045】
ここにおいて、図7に示すブロック図により奏せられる機能が、シフトアップ警報省燃費運転案内手段に相当する。
【0046】
なお、シフトアップ回転速度は、変速段位置(シフト位置)に応じて予め設定されており、例えば、図8に示すようなマップを参照することで取得することができる。
【0047】
変速段位置(シフト位置)は、シフトセンサ13により検出することができるが、これに限らず、例えばエンジン回転速度(変速機への入力回転速度)と車速センサ11の検出結果(変速機の出力回転速度)から変速段位置を取得することもできる。
【0048】
なお、アクセル警報が発せられている状態、かつ、エンジン回転速度が所定以上という条件だけでは、アクセル警報が発せられていない走行状態ではエンジン回転速度が上昇してもシフトアップ警報が発せられることがないため、運転者に対して省燃費運転を促すことができず燃費を悪化させるおそれがある。
【0049】
このため、本実施の形態では、図7に示したように、条件1に関し、もう一つの条件として、ある程度の大きさのアクセル開度の範囲内にアクセルペダルが踏み込まれている状態(ハーフスロットル或いはハーフアクセルの状態)を検出し、かかる範囲内にアクセルペダルが踏込まれており、かつ、エンジン回転速度(回転数)>シフトアップ回転速度(回転数)である場合には、シフトアップ警報をONするようになっている。
【0050】
つまり、アクセルペダルがあまり踏み込まれていないときは、加速したくないときであるため、低速段を維持してエンジンブレーキを効かせることを優先すべく、シフトアップ警報を発しないようにする一方、アクセルペダルがある程度以上深く踏み込まれているような場合には駆動力に余裕がなく運転者が加速力を欲している状態であるので、シフトアップ警報を発すると運転者に違和感を与えると共に、実際にシフトアップを運転者がしてしまうと円滑な走行に支障を来すことになるおそれがある。
【0051】
このため、本実施の形態では、所定範囲のアクセル開度までアクセルペダルが踏み込まれている状態で、エンジン回転速度が所定以上である場合に、シフトアップ警報を発し、それ以外のアクセル開度では、エンジン回転速度が所定以上であっても、シフトアップ警報を発しないこととして、適切で円滑な省燃費運転を実現することができるようになっている。
【0052】
次に、図7の条件2について説明する。
条件1のみでは登り坂を駆動トルクが高い(アクセルペダルの踏み込み量が大きい)状態で、ゆっくり加速している状態の場合、シフトアップ警報が発せられないままエンジン回転速度が上昇して内燃機関1がオーバーラン(オーバーレブ)してしまうおそれがある。
【0053】
このため、アクセル警報が発せられない状況でも、オーバーラン(オーバーレブ)手前のメモリーされた所定のエンジン回転速度を超えた場合には、シフトアップ警報を発して運転者にシフトアップを促して、内燃機関1のオーバーラン(オーバーレブ)を防止するようになっている。
【0054】
このように、本実施の形態では、アクセル警報が発せられており、かつ、車両の駆動力に余裕がある状態のときに、エンジン回転速度を観察して最大許容エンジン回転速度を超えた場合にはシフトアップ警報を発すると共に、内燃機関1の保護のために、オーバーラン手前でシフトアップ警報を発するようにしたので、運転者の意思を尊重した違和感の少ない、きめ細かな省燃費運転を運転者に対して案内することができる。
【0055】
ここにおいて、本実施の形態では、ECU10が省燃費運転評価装置として機能し、上述したようなアクセル警報及びシフトアップ警報に基づいて、エコ運転度合いの加点・減点を行い、その結果をメーターパネル内やその近傍の運転者が認知し易い位置に表示するようになっている。例えば、評価点をレベルバーを表示したり、ポイントを数字で表示したり、点数に応じて表示灯の点灯数を増減させるなどすることができる。
【0056】
本実施の形態に係る省燃費運転評価装置では、図9に示すようなブロック図に基づいて、エコ運転カウントアップ(省燃費評価点の加点)を行うようになっている。
すなわち、図9に示したように、カウントアップ条件(加点条件)としては、条件A〜条件Cの全てにおいて、「アクセル警報がOFFであること」及び「シフトアップ警報がOFFであること」が含まれていることにより、余分な加速やエンジン回転速度の引っ張り過ぎが生じている場合には加点されないようになっている。
【0057】
なお、本実施の形態では、駆動力に余裕が無い場合は、アクセル警報やシフトアップ警報がONとならないため、登り坂や、積載が多く車両重量が大きい場合でも、無闇に減点されることがないため、路面勾配や車両重量などの車両走行抵抗に左右されない公平な評価を行うことができることになる。
【0058】
ここで、図9の条件Aについて詳細に説明する。
アクセル警報OFF、かつ、シフトアップ警報OFFで、かつ、シフトアップ回転数以下で走行の場合に、加点される。シフトアップ回転数以下であることを条件にしているのは、シフトアップ警報が発せられない条件でエンジン回転数(エンジン回転速度)を高回転側まで引っ張っている状態は、すなわち登り坂を登っている状態であるので、エンジン回転数が低いときは省燃費であるので加点対象とするが、エンジン回転数が所定に高い場合には省燃費ではないので加点対象としないようにしている。ただし、この場合でも、走行性能を優先させるべく、減点対象とはしない。減点されるのを嫌って、極低速となるなど無理な走行等を行うようなおそれも想定されるためである。
【0059】
また、本実施の形態では、法定スピードリミッタがかかっている状態(例えば最高速の変速段より低速側の変速段でリミッタ走行状態(最高速度が所定の法定速度以下となるようにアクセル開度に拘わらず燃料供給量等が所定に制限された状態で、一定車速で走行しているような走行状態))である場合には、加点対象としないし、減点対象ともしないようになっている。
【0060】
次に、条件Bについて説明する。
条件Aとの相違点は、エンジン回転数がシフトアップ回転数以下であるとの条件に代えて、最高速の変速段での走行中を加点対象としている。すなわち、最高速の変速段での走行中の場合は、それ以上シフトアップはできないので、エンジン回転数を低い回転数にすることはできないため、このような状態を加点対象から省いてしまうと、公平な評価を行うことができなくなるためである。
【0061】
次に、条件Cについて説明する。
条件Cでは、可変スピードリミッタ(法定速度以下の設定速度までしか速度が上昇しないように燃料供給量等を制限する制御)の作動中は加点対象とするものである。すなわち、法定速度以下の速度で走行するという運転者の積極的な意思を尊重するためである。
【0062】
なお、本実施の形態では、アクセル警報若しくはシフトアップ警報がONとなっているときは、減点対象とする。ただし、例えば極短時間でアクセル警報若しくはシフトアップ警報がOFFとなったような場合は減点対象としないようにすることもできる。
【0063】
また、運転者のアクセル操作に関わらず、自動的に省燃費実現のためのアクセル操作やシフトアップ制御などを行うエコラン制御が行われている場合には、アクセル警報が発せられても自動的に無駄な加速などは制限されるため、減点対象とはしないようになっている。
【0064】
ところで、上述したような省燃費運転評価装置において、運転者は自己の運転態様が省燃費運転である場合に、エコ運転のレベル表示が高レベルで表示されることとなり、達成感が生じるようになる。
【0065】
しかし、あまり容易に高得点を取ることができてしまうと達成感に欠けるようになって、面白みに欠けるおそれがあり、省燃費運転への関心が薄れてしまうおそれもある。
【0066】
このようなことから、本実施の形態では、エコ運転のレベル(エコレベル、省燃費評価点の大きさ)に応じてカウントアップの困難さを変更するようにしている。
【0067】
すなわち、図10に示すように、エコレベルが大きくなるに連れて、1カウントアップするために必要な、カウントアップの条件を満たした時間の累積時間が長くなるため、1カウントアップされるまので困難さが増すことになる。
【0068】
これにより、運転者には、初めのうちは比較的容易にエコレベルが上がるため、省燃費運転を行うことの楽しみを与えることができる一方で、徐々にカウントアップを難しくすることで達成感を与えることができることになり、以って省燃費運転の促進に寄与するものとなる。
【0069】
なお、例えば、図10に示した曲線の曲率などは、運転者や管理者がマニュアル操作などにより好みに応じて設定できるように構成することもでき、これによりユーザーフレンドリーな省燃費運転評価装置を提供できることになる。
【0070】
更に、本実施の形態に係る省燃費運転評価装置では、以下のような配慮がなされている。
すなわち、内燃機関1をアイドリングで運転することが想定されるが、かかる場合は無駄な燃料消費であるとして、省燃費運転評価装置としては減点対象とする。
【0071】
このため、本実施の形態では、図11に示すように、内燃機関1のエンジン回転速度がアイドル回転で、車速が0km/hである場合には、アイドリングル状態と判断し、このアイドリング状態が一定時間継続している場合は減点とする(カウントダウン)。
【0072】
しかしながら、アイドリング状態であっても、PTO(パワーテイクオフ:エンジン出力を走行以外の動力として取り出すこと)による作業中である場合や、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPR)の再生中である場合や、長時間アイドル制御中の場合は、長時間のアイドリング状態であっても運転者の意思には関係なくアイドリング状態が継続されているため、減点対象とはしないようになっている。
【0073】
このようにすることで、運転者に違和感の少ない省燃費運転評価装置を提供することが可能となる。
【0074】
なお、上述した本実施の形態において、所謂マニュアルトランスミッションが適用可能であり、また、自動変速機が適用される場合には、運転者或いは制御装置からの変速指示に従って自動的にクラッチ機構を接断しつつ変速機を変速する機械式自動変速機や、駆動源と変速機の間にトルクコンバータを備えた自動変速機や、CVTなども適用可能である。
【0075】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
1 内燃機関(駆動源)
2 変速機
3 シフト機構
4 クラッチ機構
10 ECU(電子制御ユニット)
11 車速センサ
12 Gセンサ(加速度センサ)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の制御装置に関する。例えば、運転状態が省燃費運転であるか否かを判断し、省燃費運転が行われている場合には省燃費運転度合い(評価)を加点し、省燃費運転が行われていない場合には省燃費運転度合い(評価)を減点するような省燃費運転評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、運転者に対して省燃費運転促進のために、省燃費運転ができているか否かを判断し、省燃費運転ができている場合にはエコ運転点数を加点し、省燃費運転ができていない場合にはエコ運転点数を減点し、現在の得点をメーターや外付けの表示器に表示し、運転者に省燃費運転を促すようにした省燃費運転評価装置などが知られている(特許文献1など参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−122927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここにおいて、省燃費運転評価装置の一例としては、例えば、運転者がアクセルペダルを踏み込み過ぎてエコ加速度(省燃費走行に適した車両加速度)より大きな加速度が生じているか否かを判断し、踏込み過ぎの場合にはアクセル警報を発することによりアクセルペダルの踏み込み過ぎを是正させるよう運転者に促す一方で、アクセル警報を発生させないような運転態様であったり、或いはアクセル警報が発生しても直ちにアクセル開度を是正するような運転態様である場合にはエコ運転点数を加点するといったことが想定されるが、走行路面勾配が変化した場合や、車両重量変化の大きい商用車(トラック、バスなど)の場合のように車両重量が変化した場合などには、アクセルペダルの踏込み過ぎかどうかを判断することが難しくなる。
【0005】
また、例えば運転者のエンジン回転速度の引っ張り過ぎ(すなわちシフトアップタイミングの遅れ)を防止するため、走行中にエンジン回転速度が所定以上に高くなった場合、シフトアップ警報を発することにより、シフトアップするよう運転者に促すことなどを行なう一方で、シフトアップ警報を発生させないような運転態様であったり、或いはシフトアップ警報が発生しても直ちにシフトアップを行うような運転態様である場合にはエコ運転点数を加点するといったことが想定されるが、走行路面勾配や車両重量などの車両走行条件(車両走行抵抗)が変化する場合があり、例えば従来の手法でシフトアップ警報を発すると、シフトアップ後に車両が力不足に陥り、そのシフト位置(変速段位置)では円滑な走行が行なえなくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる実情に鑑みなされたもので、簡単かつ安価な構成でありながら、よりきめ細かく、運転者の運転に対する省燃費運転であるか否かの評価を行うことができる省燃費運転評価装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このため、本発明に係る省燃費運転評価装置は、
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かを判断し、省燃費運転が行われていると判断される場合には省燃費評価点を加点する一方で、省燃費運転が行われていないと判断される場合には省燃費評価点を減点するようにした車両の省燃費運転評価装置であって、
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、車両の走行抵抗に応じて変化されることを特徴とする。
【0008】
本発明において、運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、省燃費評価点の大きさに応じて変化されることを特徴とすることができる。
【0009】
本発明において、内燃機関がアイドリング中であることが、省燃費評価点を減点する対象であることを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡単かつ安価な構成でありながら、運転者に違和感を与えることなく、よりきめ細かく、適切な省燃費運転を運転者に対して案内することができる省燃費運転案内装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施の形態に係る省燃費運転案内装置を備えた車両の駆動系及び制御系を例示したシステム構成図である。
【図2】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置において用いられるエコ加速度マップの一例を示す図である。
【図3】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置において実行されるアクセル警報を発する制御を説明するフローチャートの一例である。
【図4】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置においてエコ加速度を車両総重量により補正するための重量ゲインの一例を示す図である。
【図5】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置において車両総重量に応じて変更されるエコ加速度マップの一例を示す図である。
【図6】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置においてエコ加速度を走行路面勾配により補正するための路面勾配ゲインの一例を示す図である。
【図7】同上実施の形態に係る省燃費運転案内装置におけるシフトアップ警報を発する制御を説明するためのブロック図の一例である。
【図8】同上実施の形態に係る変速段位置に応じたシフトアップ回転速度の設定マップの一例を示す図である。
【図9】同上実施の形態に係る省燃費運転評価装置におけるエコ運転カウントアップの一例を説明するためのブロック図である。
【図10】同上実施の形態に係る省燃費運転評価装置においてエコレベル(省燃費評価点の大きさ)に応じた累積時間の設定(カウントアップゲインの設定)の一例を示す図である。
【図11】同上実施の形態に係る省燃費運転評価装置におけるエコ運転カウントダウンの一例を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明の一実施の形態について、添付の図面を参照しつつ説明する。なお、以下で説明する実施の形態により、本発明が限定されるものではない。
【0013】
本実施の形態に係る省燃費運転案内装置を説明するために、車両の駆動系の主要部(内燃機関1、クラッチ機構4、変速機2、車両用(或いは自動変速制御用)電子制御ユニット10、各種センサ類など)の構成を図1に概略的に示すが、図1に示したように、当該省燃費運転案内装置としての制御を司るECU(電子制御ユニット)10には、車速センサ11等の検出信号が入力されている。
【0014】
ここにおいて、符号3はシフト機構であり、符号4はクラッチ機構であり、符号11は車速センサであり、符号12はGセンサである。
【0015】
本実施の形態では、図2に示すようなマップがECU10内のメモリに記憶されている。
このマップには、車速に応じたエコ加速度(省燃費走行に適した目標車両加速度)が設定されており、ECU10では、車速センサ11の検出信号に基づいて取得される現在の車速に基づいてマップを参照して現在車速に応じたエコ加速度を取得し、取得されたエコ加速度と、Gセンサ12の検出信号に基づいて取得される実際の車両加速度と、を比較して、実際の車両加速度がエコ加速度を超えている場合には、アクセルペダルを踏込み過ぎているとして、メーターパネル内やその近傍の運転者が認知し易い位置にアクセル警報を発することで(例えばレベルバーを表示したり、警告灯を表示したり、警告音などを発することで)、省燃費運転を促して運転者にアクセルペダルを戻させるような制御を行う。
【0016】
ここで、アクセルペダルの踏込み量は、運転者の加速要求度合いの一例に相当する。
【0017】
なお、Gセンサ12を省略して、車速センサ11の検出信号(車速)を時間微分して車両加速度を取得する構成とすることも可能である。
【0018】
具体的には、省燃費運転案内手段として機能するECU10では、例えば、図3に示すようなフローチャートを実行する。
【0019】
ステップ(図ではSと記している。)1では、車速センサ11の検出信号に基づいて実際の車速或いは車速に関連する情報(車速関連情報)を取得する。当該ステップ1及び車速センサ11が、車速情報取得手段に相当する。
【0020】
ステップ2では、ステップ1にて取得した車速或いは車速関連情報に基づいて、図2に示したマップを参照して、現在車速に応じて設定されているエコ加速度を取得する。
【0021】
ステップ3では、Gセンサ12の検出信号に基づいて現在の車両加速度を取得する。なお、車速センサ11から求めた車速を時間微分などして現在の車両加速度を取得することもできる。当該ステップ3及びGセンサ12(或いは車速センサ11)が、車両加速度情報取得手段に相当する。
【0022】
ステップ4では、ステップ2で取得したエコ加速度と、ステップ3で取得した実際の車両加速度と、を比較する。
【0023】
当該ステップ4にて、エコ加速度≧実際の車両加速度と判断された場合で、省燃費運転が行われているとして、本フローを終了する。
【0024】
一方、ステップ4にて、エコ加速度<実際の車両加速度と判断された場合には、ステップ5へ進み、ステップ5では、アクセルペダルを踏込み過ぎているとして、アクセル警報を発することで(例えばレベルバーを表示したり、警告灯を表示したり、警告音などを発することで)、運転者に省燃費運転を促してアクセルペダルを戻させるような表示制御を行って、本フローを終了する。
【0025】
上記ステップ2、ステップ4、ステップ5が、省燃費運転案内手段に相当する。
【0026】
なお、本実施の形態において、車速に応じて設定記憶されているエコ加速度は、実験等を行い、実際の走行路における燃費の良い加速度を数値化して用いている。ただし、走行シミュレーション等により燃費の良い加速度を求めてエコ加速度として用いることもできる。
【0027】
本実施の形態では、アクセルペダルの踏込み量、エンジン回転速度、シフト位置(変速段位置)などに拘わらず、車速に応じてエコ加速度を設定するので、低速から高速まで実際に省燃費運転を実現できる加速度を設定できると同時に、円滑な省燃費運転の実現を可能にしている。
【0028】
すなわち、本実施の形態によれば、例えば、同一車速においてシフト位置(変速段位置)が異なる場合やアクセルペダルの踏込み量が大きい場合でも、シフト位置やエンジン回転速度やアクセルペダルの踏込み量に関係なく、車速にのみ基づいて省燃費運転を実現できるエコ加速度を設定するので、省燃費運転のための頻繁な情報提供が行われることがなく、忙しい操作を運転者に対して要求するようなこともないので、適切な情報提示により運転者に違和感を与えることなく、余裕のある操作による円滑な省燃費運転の実現に貢献することができる。
【0029】
ところで、積載量が少なく車両総重量が小さい場合や下り坂の走行時(車両走行抵抗が小さいとき)にはアクセル警報が出やすくなる一方で、積載量が多く車両総重量が大きい場合や上り坂の走行時(車両走行抵抗が大きいとき)にはアクセル警報が出難くなる。
【0030】
従って、よりきめ細かな省燃費運転の実現が要求されるような場合には、車両総重量や路面状況等に応じてエコ加速度を変更或いは補正する構成とすることが望まれる。
【0031】
このような場合、例えば、運転者等が操作画面やスイッチボタン等を介して現在の積載量(予測値など)をマニュアル入力したり、運転者等が路面勾配を予測して路面勾配情報を運転者等が操作画面やスイッチボタン等を介してマニュアル入力し、その入力データに基づいて車速に応じて設定されているエコ加速度を補正(変更)するような構成とすることができる。
【0032】
ところで、車両総重量の変動の大きい大型車などの場合、空車(約6ton)から積車(約25ton)まで、比較的大きな差があるため、実際にはその走行条件では省燃費運転となっていても、頻繁にアクセル警報が発せられる場合があり、またそのアクセル警報に従ってアクセルペダルを戻してしまうと円滑な車両走行に支障を来たすおそれがあるなど、運転者に違和感を与えるおそれがあるため、自動的にエコ加速度を補正することができれば便利である。
【0033】
このため、本実施の形態では、ECU10は、実際の車両総重量を推定により求め、推定結果に基づいて例えば図4に示すようなマップを参照して重量ゲインを取得し、取得した重量ゲインをエコ加速度に乗算等することで、車両総重量に応じてエコ加速度を補正することができるようになっている。
このような構成が、目標省燃費加速度重量補正手段に相当する。
【0034】
車両総重量の推定方法としては、種々のものが採用可能であるが、例えば、特開2002−13620号公報に記載されている変速時車両質量推定方法によって推定される変速時車両推定質量やその平均値を利用することができる。
【0035】
また、例えば、特開2008−201401号公報に記載されている車両質量推定方法を利用することができる。このものは、変速操作開始前(駆動力が駆動輪に伝達されている状態、例えば、クラッチ接続中)の車両加速度と、変速操作中(駆動力が駆動輪に伝達されない状態、例えば、クラッチ切断中)の車両加速度と、から推定される車両推定質量(変速時車両推定質量)dRWMを得て、当該得られた変速時車両推定質量dRWMを平均化し、この平均化された変速時車両推定質量RWMに基づいて車両走行路面の勾配を推定し、当該推定された勾配を加速式の質量公式に代入して車両推定質量dMAMを得て、これを平均化して平均値MAMを得ることにより、車両推定質量を真値に近づけていくといった推定方法で、変速機会が少ない場合でも、高精度に車両質量を推定することができ有益である。
【0036】
このようにして車両総重量に応じてエコ加速度が補正される場合、例えば、図5に示すように、エコ加速度マップ線が車両総重量に応じて変動されることになる。
【0037】
結果として、本実施の形態では、車両総重量が大きい場合にはエコ加速度は小さく、車両総重量が小さい場合にはエコ加速度は大きく設定されることになるため、運転者の加速に対する期待に対して乖離しない範囲で省燃費運転の案内を実現することができることになる。
【0038】
更に、車両総重量(車両質量)が取得されると、運動方程式に従い、走行路面勾配も推定により取得することができる。
【0039】
従って、本実施の形態に係るECU10は、実際の走行路面勾配を推定により求め、推定結果に基づいて例えば図6に示すようなマップを参照して路面勾配ゲインを取得し、取得した路面勾配ゲインをエコ加速度に乗算等することで、走行路面勾配に応じてエコ加速度を補正することができるように構成されることができる。
このような構成が、目標省燃費加速度勾配補正手段に相当する。
【0040】
このように、本実施の形態によれば、車両走行抵抗(車両総重量や走行路面勾配)に応じて、車速に応じたエコ加速度を補正(変更)することができるので、よりきめ細かで精度の高い省燃費運転の案内を行うことができる。
【0041】
本発明は、所謂マニュアルトランスミッションの他、運転者或いは制御装置からの変速指示に従って自動的にクラッチ機構を接断しつつ変速機を変速する機械式自動変速機や、駆動源と変速機の間にトルクコンバータを備えた自動変速機を備えた車両についても適用可能である。
【0042】
また、本実施の形態では、このようなアクセル警報と組み合わせて、シフトアップ警報(運転者にシフトアップを促す警報)を発する構成を採用し、これにより、より一層、きめ細かく省燃費運転を運転者に対して案内することができるように構成されている。
【0043】
すなわち、本実施の形態において、アクセル警報が発せられている状況で、エンジン回転速度が所定以上である場合には、省燃費運転のためにシフトアップ警報を発して運転者がそれに応じてシフトアップを実行しても、加速力に余裕がある状態であるから、車両が力不足となって円滑な走行ができなくなるような状態に陥ることはない。
【0044】
このため、図7のブロック図に示すように、シフトアップ警報を発する図7の条件1として示したように、アクセル警報ON、かつ、実際のエンジン回転速度>シフトアップ回転速度である場合には、シフトアップ警報をONするようになっている。
【0045】
ここにおいて、図7に示すブロック図により奏せられる機能が、シフトアップ警報省燃費運転案内手段に相当する。
【0046】
なお、シフトアップ回転速度は、変速段位置(シフト位置)に応じて予め設定されており、例えば、図8に示すようなマップを参照することで取得することができる。
【0047】
変速段位置(シフト位置)は、シフトセンサ13により検出することができるが、これに限らず、例えばエンジン回転速度(変速機への入力回転速度)と車速センサ11の検出結果(変速機の出力回転速度)から変速段位置を取得することもできる。
【0048】
なお、アクセル警報が発せられている状態、かつ、エンジン回転速度が所定以上という条件だけでは、アクセル警報が発せられていない走行状態ではエンジン回転速度が上昇してもシフトアップ警報が発せられることがないため、運転者に対して省燃費運転を促すことができず燃費を悪化させるおそれがある。
【0049】
このため、本実施の形態では、図7に示したように、条件1に関し、もう一つの条件として、ある程度の大きさのアクセル開度の範囲内にアクセルペダルが踏み込まれている状態(ハーフスロットル或いはハーフアクセルの状態)を検出し、かかる範囲内にアクセルペダルが踏込まれており、かつ、エンジン回転速度(回転数)>シフトアップ回転速度(回転数)である場合には、シフトアップ警報をONするようになっている。
【0050】
つまり、アクセルペダルがあまり踏み込まれていないときは、加速したくないときであるため、低速段を維持してエンジンブレーキを効かせることを優先すべく、シフトアップ警報を発しないようにする一方、アクセルペダルがある程度以上深く踏み込まれているような場合には駆動力に余裕がなく運転者が加速力を欲している状態であるので、シフトアップ警報を発すると運転者に違和感を与えると共に、実際にシフトアップを運転者がしてしまうと円滑な走行に支障を来すことになるおそれがある。
【0051】
このため、本実施の形態では、所定範囲のアクセル開度までアクセルペダルが踏み込まれている状態で、エンジン回転速度が所定以上である場合に、シフトアップ警報を発し、それ以外のアクセル開度では、エンジン回転速度が所定以上であっても、シフトアップ警報を発しないこととして、適切で円滑な省燃費運転を実現することができるようになっている。
【0052】
次に、図7の条件2について説明する。
条件1のみでは登り坂を駆動トルクが高い(アクセルペダルの踏み込み量が大きい)状態で、ゆっくり加速している状態の場合、シフトアップ警報が発せられないままエンジン回転速度が上昇して内燃機関1がオーバーラン(オーバーレブ)してしまうおそれがある。
【0053】
このため、アクセル警報が発せられない状況でも、オーバーラン(オーバーレブ)手前のメモリーされた所定のエンジン回転速度を超えた場合には、シフトアップ警報を発して運転者にシフトアップを促して、内燃機関1のオーバーラン(オーバーレブ)を防止するようになっている。
【0054】
このように、本実施の形態では、アクセル警報が発せられており、かつ、車両の駆動力に余裕がある状態のときに、エンジン回転速度を観察して最大許容エンジン回転速度を超えた場合にはシフトアップ警報を発すると共に、内燃機関1の保護のために、オーバーラン手前でシフトアップ警報を発するようにしたので、運転者の意思を尊重した違和感の少ない、きめ細かな省燃費運転を運転者に対して案内することができる。
【0055】
ここにおいて、本実施の形態では、ECU10が省燃費運転評価装置として機能し、上述したようなアクセル警報及びシフトアップ警報に基づいて、エコ運転度合いの加点・減点を行い、その結果をメーターパネル内やその近傍の運転者が認知し易い位置に表示するようになっている。例えば、評価点をレベルバーを表示したり、ポイントを数字で表示したり、点数に応じて表示灯の点灯数を増減させるなどすることができる。
【0056】
本実施の形態に係る省燃費運転評価装置では、図9に示すようなブロック図に基づいて、エコ運転カウントアップ(省燃費評価点の加点)を行うようになっている。
すなわち、図9に示したように、カウントアップ条件(加点条件)としては、条件A〜条件Cの全てにおいて、「アクセル警報がOFFであること」及び「シフトアップ警報がOFFであること」が含まれていることにより、余分な加速やエンジン回転速度の引っ張り過ぎが生じている場合には加点されないようになっている。
【0057】
なお、本実施の形態では、駆動力に余裕が無い場合は、アクセル警報やシフトアップ警報がONとならないため、登り坂や、積載が多く車両重量が大きい場合でも、無闇に減点されることがないため、路面勾配や車両重量などの車両走行抵抗に左右されない公平な評価を行うことができることになる。
【0058】
ここで、図9の条件Aについて詳細に説明する。
アクセル警報OFF、かつ、シフトアップ警報OFFで、かつ、シフトアップ回転数以下で走行の場合に、加点される。シフトアップ回転数以下であることを条件にしているのは、シフトアップ警報が発せられない条件でエンジン回転数(エンジン回転速度)を高回転側まで引っ張っている状態は、すなわち登り坂を登っている状態であるので、エンジン回転数が低いときは省燃費であるので加点対象とするが、エンジン回転数が所定に高い場合には省燃費ではないので加点対象としないようにしている。ただし、この場合でも、走行性能を優先させるべく、減点対象とはしない。減点されるのを嫌って、極低速となるなど無理な走行等を行うようなおそれも想定されるためである。
【0059】
また、本実施の形態では、法定スピードリミッタがかかっている状態(例えば最高速の変速段より低速側の変速段でリミッタ走行状態(最高速度が所定の法定速度以下となるようにアクセル開度に拘わらず燃料供給量等が所定に制限された状態で、一定車速で走行しているような走行状態))である場合には、加点対象としないし、減点対象ともしないようになっている。
【0060】
次に、条件Bについて説明する。
条件Aとの相違点は、エンジン回転数がシフトアップ回転数以下であるとの条件に代えて、最高速の変速段での走行中を加点対象としている。すなわち、最高速の変速段での走行中の場合は、それ以上シフトアップはできないので、エンジン回転数を低い回転数にすることはできないため、このような状態を加点対象から省いてしまうと、公平な評価を行うことができなくなるためである。
【0061】
次に、条件Cについて説明する。
条件Cでは、可変スピードリミッタ(法定速度以下の設定速度までしか速度が上昇しないように燃料供給量等を制限する制御)の作動中は加点対象とするものである。すなわち、法定速度以下の速度で走行するという運転者の積極的な意思を尊重するためである。
【0062】
なお、本実施の形態では、アクセル警報若しくはシフトアップ警報がONとなっているときは、減点対象とする。ただし、例えば極短時間でアクセル警報若しくはシフトアップ警報がOFFとなったような場合は減点対象としないようにすることもできる。
【0063】
また、運転者のアクセル操作に関わらず、自動的に省燃費実現のためのアクセル操作やシフトアップ制御などを行うエコラン制御が行われている場合には、アクセル警報が発せられても自動的に無駄な加速などは制限されるため、減点対象とはしないようになっている。
【0064】
ところで、上述したような省燃費運転評価装置において、運転者は自己の運転態様が省燃費運転である場合に、エコ運転のレベル表示が高レベルで表示されることとなり、達成感が生じるようになる。
【0065】
しかし、あまり容易に高得点を取ることができてしまうと達成感に欠けるようになって、面白みに欠けるおそれがあり、省燃費運転への関心が薄れてしまうおそれもある。
【0066】
このようなことから、本実施の形態では、エコ運転のレベル(エコレベル、省燃費評価点の大きさ)に応じてカウントアップの困難さを変更するようにしている。
【0067】
すなわち、図10に示すように、エコレベルが大きくなるに連れて、1カウントアップするために必要な、カウントアップの条件を満たした時間の累積時間が長くなるため、1カウントアップされるまので困難さが増すことになる。
【0068】
これにより、運転者には、初めのうちは比較的容易にエコレベルが上がるため、省燃費運転を行うことの楽しみを与えることができる一方で、徐々にカウントアップを難しくすることで達成感を与えることができることになり、以って省燃費運転の促進に寄与するものとなる。
【0069】
なお、例えば、図10に示した曲線の曲率などは、運転者や管理者がマニュアル操作などにより好みに応じて設定できるように構成することもでき、これによりユーザーフレンドリーな省燃費運転評価装置を提供できることになる。
【0070】
更に、本実施の形態に係る省燃費運転評価装置では、以下のような配慮がなされている。
すなわち、内燃機関1をアイドリングで運転することが想定されるが、かかる場合は無駄な燃料消費であるとして、省燃費運転評価装置としては減点対象とする。
【0071】
このため、本実施の形態では、図11に示すように、内燃機関1のエンジン回転速度がアイドル回転で、車速が0km/hである場合には、アイドリングル状態と判断し、このアイドリング状態が一定時間継続している場合は減点とする(カウントダウン)。
【0072】
しかしながら、アイドリング状態であっても、PTO(パワーテイクオフ:エンジン出力を走行以外の動力として取り出すこと)による作業中である場合や、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPR)の再生中である場合や、長時間アイドル制御中の場合は、長時間のアイドリング状態であっても運転者の意思には関係なくアイドリング状態が継続されているため、減点対象とはしないようになっている。
【0073】
このようにすることで、運転者に違和感の少ない省燃費運転評価装置を提供することが可能となる。
【0074】
なお、上述した本実施の形態において、所謂マニュアルトランスミッションが適用可能であり、また、自動変速機が適用される場合には、運転者或いは制御装置からの変速指示に従って自動的にクラッチ機構を接断しつつ変速機を変速する機械式自動変速機や、駆動源と変速機の間にトルクコンバータを備えた自動変速機や、CVTなども適用可能である。
【0075】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0076】
1 内燃機関(駆動源)
2 変速機
3 シフト機構
4 クラッチ機構
10 ECU(電子制御ユニット)
11 車速センサ
12 Gセンサ(加速度センサ)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かを判断し、省燃費運転が行われていると判断される場合には省燃費評価点を加点する一方で、省燃費運転が行われていないと判断される場合には省燃費評価点を減点するようにした車両の省燃費運転評価装置であって、
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、車両の走行抵抗に応じて変化されることを特徴とする省燃費運転評価装置。
【請求項2】
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、省燃費評価点の大きさに応じて変化されることを特徴とする請求項1に記載の省燃費運転評価装置。
【請求項3】
内燃機関がアイドリング中であることが、省燃費評価点を減点する対象であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の省燃費運転評価装置。
【請求項1】
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かを判断し、省燃費運転が行われていると判断される場合には省燃費評価点を加点する一方で、省燃費運転が行われていないと判断される場合には省燃費評価点を減点するようにした車両の省燃費運転評価装置であって、
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、車両の走行抵抗に応じて変化されることを特徴とする省燃費運転評価装置。
【請求項2】
運転者の操作に基づいて省燃費運転が行われているか否かの判断基準が、省燃費評価点の大きさに応じて変化されることを特徴とする請求項1に記載の省燃費運転評価装置。
【請求項3】
内燃機関がアイドリング中であることが、省燃費評価点を減点する対象であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の省燃費運転評価装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−12975(P2012−12975A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−148844(P2010−148844)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000005463)日野自動車株式会社 (1,484)
【Fターム(参考)】
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